稲 - みる会図書館


検索対象: 百姓伝記 上
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1. 百姓伝記 上

一馬耙の歯数の異なるも る田は、万ぐわ段々にして、四五へんまでもしろをかきて徳実を得る。 のを色々備えて。 一一有利な収穫。 万ぐわの子拾本・拾二本までに及ぶべし。万ぐわあしく、しろをあしく できる 三苗が活着して、再び成 かきて田うへにのぞみ、はかどることなく、稲の手なをりあしく出来な 長をはじめること。 。大方子は八本に定る也。 四代掻をするとぎにつけ 一、しろ鞍は荷物をつける鞍より、とっとちいさく、かろくこしらへる。 る鞍。馬耙を引く繩を馬体 はだもわらにてかろくこしらへ、むながい・腹帯・しりがいみな繩にてに結ぶためのものである。 五「る」を底本では「馬」 と明記する。「こしらへ、 こしらへ用ゅべし。引なわのながきは、牛馬の足草臥、しろかくことは 馬はだも」とも読めるが、 かどらず。またみちかきは、万ぐわを牛馬にとられ、農夫のうで草臥る「る」の筆初の太いのを「馬」 のくずし字と読み誤ったも のとみて、祭本に従う。 & 物也。 六胸繋。馬の胸からくら ばねに掛けわたす組紐。 一、はなざをの事、すぐなる竹を、六尺にも七尺にも切て、つなっけの セ鼻竿。馬耙・犂を使う めだけ 穴を竹の本にあけ用ゅべし。ふしののびたる女竹をよしとするなり。歩時、牛馬の進行方向を正す ため、農具の使い手の外に 数・反数のしれがたき田を、畠竿にて間数を覚知る。また我々が田のさロ取が一人っくが ( はなと りともいう ) 、ロ取とくっ かいをしるために、はな竿の尺を定るよし。七尺に切用てよしと云。竿ばみを結ふに使う竹竿。 九 へ祭本も同じ。「鼻竿」 のみちかきは、馬のけあげはなとりにかゝり、あるきがたし。また長きの誤。 九灌水した泥田を歩く馬 がけあける泥。 は馬のロまはりにくし。いづれに付、六尺より七尺迄のうちなるべし。 一 0 ロ取 ( 「はなざを」注参 照 ) に同し。 二寸四五分より三寸まはりまでの竹なるべし。 一 0 くたびれ

2. 百姓伝記 上

134 ならびに ら并木のまじはりたる草は、はゞせまく、渡りみちかきがっかひょし。 一「地芝をめくる」とは、 一じしば また地芝をめくるには、はゞのせまき、なる程渡りのながき、あっかま草生のよくない、地面にヘ ばりついた草を土とともに よし。いづれにつけても、なまかねにてうち、みそを付、塩をつけ、ゑ根元から刈りとること。ほ じり草などともいう。 = よく鍛えない鉄。 んせうをつけて、ひとはやきにしたるは用にた & ざるものなり。大切な 三一刃焼。銑鉄をぎたえ や これに練鉄を焼き合せた上、 る道具にてあれば、高直にかまはず、念を入うたすべし。鑓・長刀・箭 刃をきたえるのでなく、生 あそばされ つかわされる の根までためしに被 / 遊、代金高くかちに被 / 遣にをひては、ものきれな鉄に直に刃先だけを焼きき たえて刃をつけることであ ろう。みそ・塩・陷硝をつ らずと云事なし。 けるのは、さびを出させる 一、土民鎌を用る事、稲・麦其外の物をかり、草をかる鎌の外に、竹木ためであろう。 四物切れならす。物が切 をもきり、また用心むきに手鎌と云て、分限相応に二丁も三丁も五丁もれない。 五万一の警戒。 大身のまわりに常におく 拾丁もうたせ、たしなむべし。田まはり・畠まわりをするに腰にさし、 鎌の意。 七農業用水の異常・盗難 鋤・鍬をかつぎ、先々にて畠のくろ、田の落込土、其外作毛のかせにな その他の異常を注意するた めの田畑の見廻り。 る事を、日々によくすべし。土民は鎌の外田畠へ持あるくものなければ、 ^ かせは枷、自由を東縛 ゆるさず持あるき、木・かやをきりて、田地のかこひとすべし。また昼するもの。作物のさわりに なる邪魔もの。 九田畑の障害を除いて、 夜のかぎりなく夏は田に水をひく。山方の土民は麦作より秋毛にいたる 作物の生育によいようにす 一ニしようるい まで、作毛の番を勤め、猪・猿・諸鳥を追ふものなれば、不慮なる生類べし。 一 0 放さず。 よき = 昼夜の別なく。 にあふこと度々なり。依て手鎌は能かちに念を入させうたすべし。はゞ ね 五 四

3. 百姓伝記 上

くものなり。石もこなれ、砂もこまかになるそ。 一、海辺の入江いっとなく田畠にこしらへたるは、大方こは真土地。田一とくに重粘な土。 = 土壌中の可溶性の塩類 には塩穴あき、渋道血筋のごとくに見へ、土地に黒色指てみへ、ねばり ( 主として食塩 ) がとけ、水 多し。真性地なり。畠はかたくして、日でりにのそみて、霜の置たるやが流れたあとの穴。 三土壌中の塩類が示す着 色の痕跡。 うに見へる。日にてられて、地底の潮上にあらはるゝ也。必海辺の田に 四海水中にとけた各種塩 は渋多く有ゅへ、赤米多し。稲は小穂にして、もてる事甲非なし。小穂類が、毛管現象で地表にあ らわれる。先の「霜の置た るやう」は、日照によって なる故取実すくなし。畠作毛は万生出よからず。根しまり過て、ながく 水分蒸発して結品状となっ た様子を示す。塩害地の典 のびること不 / 叶。年数重りては上田畠となる。 型的な姿である。 M 「甲非なし」。底本のま 一、荒磯の潮打越の砂、山間冬春風に随て火払ふて、ぐぼくなり、にご ま。甲斐なし。ききめがな い。前後の記述からみると り有小砂たまり、また雨水たまりて、諸草はヘしげり、芝間となる所、 十分に茂らないの意。 海辺多し。其所を田畠にこしらへ、作毛を蒔付・植付するに、荒磯の浪大窪く。〈こむ。 セ芝の生えた場所。 高く打折からは、地底よりしめり、指浪無 / 之海のしづかなる時は、かわ ける土地多し。必田畠共に渋多きものなり。万作毛取実すくなし。 一、荒磯の打よせは岩か小石か荒砂に定たるものなり。入江の潟は定り へ洪水の押しだした土砂 の堆積した地形。 て小石・ねば土多し。大河の流込は洲崎となる定法也。 九川の流れの淀んで深い 九ふちせ 一、大河小河の流、いっとなく淵瀬もかはり、川筋ちがひて古川となり、淵と、早く浅く流れる瀬と。 三しぶみち 四しお

4. 百姓伝記 上

根をしめる事不 / 叶。其土を冬田かへし、土をねかしては猶不性地とな 三荒おこし ( 田かえし ) 以 みすみち 後ながく放置しておいては。 る。水つき流るゝ所は水道の筋つき、日でりに望ては上土しろ色になり、 四のぼり ゑみめ付て、次第に土昇すはりて、こひゞゑみとなる。其所へ水つけば、 四底本やや不明なるも、 祭本により「土昇」とよむ。 ゑみめより土やはらぎくづれ、天を水にたてたるやうなり。やしなひき土が浮ぎ上がりながら固ま る意。或いは「土旱」にて、 ゝかねて稲もてる事かひなく、しかも小穂にしてかいら大きにみへ、米かわくことか。 小さくひびわれること。 ちいさく黒色さし、米の跡先とがり、目大きにして筋ふかく、青米・し 大「水つけば、ゑみめよ り : : : やしなひきゝかね いな多く、白米につくにくだけ、つきべり多く、焼ほしの食はふゑず、て」。このうち「ば、ゑみ めより : : : やしな」祭本に ゆとりめしにしてはうざゞけ、むさしまして多月蔵に置けば、ほんほちなし。 セ焼は炊、炊干の飯。釜 米と云ひて、すっからに成、腹へる事かぎりなし。畠をばかれ土をうちで炊いた飯。蒸した強飯に 対していう。 て、雨にたゝかせ、やすませて、平になし、うねをたて五穀万物を植も へ湯取飯。水を多く入れ て炊いた後、再び蒸した飯。 九うじゃうじゃになる。 しよ、まきもせよ。かる土雨にて随ひて下へくゝり、おもき土上に残る。 論 一 0 なさくるしさがましの 地田かへすにも、畠をうつも土地やはらかにして、大小農骨折事すくな意か。 = 「土」底本なし。祭本 により補う。 三寒国は十月より年明二月迄、雪降っむによりて、麦畠に霜柱たゝず。 雪にて地を押付る、徳なり。暖国の麦畑は霜柱立て、地を持上、諸作毛 の根をあらしてやさしかるゝ。土かろくしてしまりなき故なり。夏作毛一 = 「やせさせ」か。 九 ふり 七たき

5. 百姓伝記 上

一祭本も同じ。ここの耕 なくつかふ故損じ安し。柄も平もつよくすげべき也。普請に耕作耕作の 作は、農耕作業一般であろ 。前後を通じての意味は、 鍬・すきをつかひ、損じてはたちまち耕作の時をそくなり、大損なり。 土木工事に使役される場所 鍬のかきたるは土に入事すくなし。そりたるは土に入過て引越すに不は農民が選ぶわけこよ、 ないため、農耕用の農具は / 叶。田夫の腕よはる物なり。然ども其徳々備はれり。御武家にもそり破損しやすい。破損すれば、 農耕の適期を失う。土工用 に特に強い器具を用意して つよなる太刀・かたな遣得給へるもあり、そりなきをこのみ給ふもあり。 おけの意。 = 欠け損じたのは。 みな / \ その徳そなはれりとみへたり。 四とうぐわ 三引きおこす。 一、唐鍬を用る事、地がねの長さ八九寸、一尺一二寸に及ぶべし。柄を 0 重く、鋭利な土木用・ 開墾用の鍬。 とをす所のひつをまげ、ひつにはり用よ。わかしつぎは損じ安し。耕作 = 唐鍬には木の平を用い ないで柄をさしこむのに鉄 につかふは刃さきうすく、ゆがねもうすく渡すべし。普請につかふをば製角型の部分を作り用いる。 これをいう。 刃さきせまく、ゆがねあっくうつべし。刃さき三寸より四寸に及ぶべし。大金属の端を白熟して、 これを重ね、 卩いて接着さ ひろきには徳すくなし。石地・かた真土をほりおこし、また地をふかくせること。 もつばら ほるに徳あり。うねせま作毛の耕作するに能もの也。専新田畑・新切「うねせま作毛の耕作」 九 とは、畝間を狭く作付けた りに用る。また普請道具に用る事多し。木の根・石をほりをこすに其徳作物の中耕。刃幅が狭いの で使いやすいという意味で 備れり。柄は樫の木をすげてよし。惣て鍬・かまの柄けづる事あらけれあゑ へ開墾。 九土木工事の道具。 ば、手のうちそんずる。茶碗のかけたる角々、またさめのかわ・かるか 一 0 わらしべ。稲の穂の芯。 やの根・わらのすくべ・とくさ・むくの葉を以、毎度するべし。挽木を = 鋸にてひき切。た材木。 五 一一ひぎき

6. 百姓伝記 上

一、黄色なるねばりなき、地ふかき宝土を一番と定めよ。稲子地に似た 九一粒の種が万億になる。 。万木諸草能生じ、そだっ。五穀みのる事、壱粒万億の土なり。 まっち 普通一粒万倍という。 豊産 一、白色なるねばりなき、地ふかき宝土を二番と定めよ。黄色真土の次の意。 かわらず 也。万木諸草能はヘ付、ひとなる。土こゑては黄色真土に不 / 替宝土也。一 0 成長する。 一、赤色なるねばりなぎ、地ふかき宝土を三番と定めよ。真性地なるゆ へに、万木諸草生ひ付安し。然ども土をこやすに性をへんぜず。作毛の 一一肥料を施しても土に吸 着されない。「土にしみつ やしなひ、土に合せず。依 / 之水をよく澄し、宝土こゑることすくなし。 かず」とあるのと同じ。 然ども古農の伝を学び、田をかへし、畠をうち、種を蒔て、耕作・こや一 = 土を水に交ぜたばあい 土粒が直ちに沈澱して、懸 しをせば、黄色真土・白色まっちにおとるまじ。上土のうち三番と定め濁状態にならないこと。 一三田の土をうち返す。耕 す。 よ。厚味なしといふ事なし。 一四豊かなみのり。好収穫。 一、青色なるねばりなき、地ふかき宝土を四番と定めよ。万木諸草よく一 = 「よくはえ付」と同し 論 で、種子がよく発芽し、 ~ 田 がよく活着し、成長する。 付、そだっといへども、厚味なし。真土のうちの不性地也。地やはらか 笑さつばりぎかない。一 田なる故、耕作には手間不 / 入。こやし・やしなひの一円にきかぬ土地な向にきかない。 宅水の流れさること。排 一セみずひき 三り。畠は水引あしく、しつけがちにして、日てりつめてはまた作毛のい水 天茂る。 たみつよし。田も稲もてる事すくなく、しかも小穂にして、米不性なり。一九貯蔵して古くなり、赤 黄色となった米。ばん。ほち 米ともい・う。 青真土の米は、多年のたくはヘとならず。虫指、ほんほちとなる。 つき 一四 一六いちえん

7. 百姓伝記 上

いすれ 一、青・黄・赤・白・黒のねば真土何も真性なれども、善悪の次第あり。一 番に黄色土、二番に白色土、三番に赤色土、四番に青色土、五番に黒色土、 いずれ 九生付・そだちのよしあ 万木諸草の生付・そだち、順々土色を論ずるごとくなり。何も土民のほ しは、以下順々に土色別に まず 記すとおりである。 ねをり・苦身、此五色の土にとゞまる。先田をかへすに鍬とをりにくし。一 0 苦心。 一一土をこなす。鍬の背で 鍬を引をこすにをきかね、土鍬に付てをちかね、足ふみをするにふみに 土塊をたたき、こなす。 一一こてぎる 一一一田植前に田に水を入れ、 くゝ、小手切に土こなれず、しろをかくにまんぐわとをらず、耕作に草土を細かにして田面をかき ならす。 の根をしめ、ゆびいたみ取にくし。土手に付ては鳥もちか餅をにぎる如一 = 馬耙。田の代掻 ( ) 一六ひとびまいる のみに使う。 くむづかしく、人隙入事多し。日損に望みては上土よりかたまり、ゑみ一四作物の植えられている 間を打ち、除草する。ここ われて、稲の小根みなきれいたむ。水をかけ、こやしをするに、ゑみめでは田の草取の意味。 田のあぜ、又は傾斜地 いへ合事をそくし、畠は濡地をうつに鍬に土付、鋤をくはヘてをきず。の田を仕切る土手であろう。 その土手に水でねった土を かれ土をうつに岩をきるごとくにして手いたみ、土をこなすにこなれざ塗りつける事。 一六人手間がかかる。 性れば、横っち・手つちを以たゝきこなす。作毛を仕付るに葉くびをしめ、底本のまま。臨みて。 ニニてんじよう 一へ土に裂目ができる。 田種物を蒔に時分あしければ天井をはりてはえず、うねをけづるに土ぬれ一九底本・祭本のまま。 つき 「し」は衍字であろう。 三ては鍬に付けづられず。かれ土は鍬とをりかねてうで・ほねいたむ。ぬ = 0 乾燥した土を耕す。 一 = 横槌。後出巻五の項参 れ土の草を取に草の根に土付てをちず、其まゝ畠に置にはえ付。かれ土照。 もって 一三土の表面がかたまり、 の草をとるに根しまり、ぬけず。草取を以ほれば、石をけづる様にして、板のようになること。 = ロ 一五どて つけ

8. 百姓伝記 上

集 一人糞尿のことであるが、 百姓伝記不浄集序 同時に肥料の意味につかう。 四せっちんさいじようとうえんこうこう 不一、土民たらんものは、身上分限相応に、雪陰・西浄・東垣・香々を = しんだい。資産。財産。 三身の程。身分。 処々にかまへ、不浄を一滴すつべからす。不浄とは大小便の儀なり。屋 0 以下いずれも便所。そ ゃうち の各の説明は本文の次項 敷・家内に不浄を麁相にすつるは、第一きたなし。土民は四季ともに万にある。 よろす 五粗末なこと。そこつ。 物をつくり出しわざとする。不浄は皆以土をこやし、万作毛をやしなふ。六業。仕事。職業。 一、牛馬野かいの事 一、はいの事 一、油気・塩気の事 一、山野原芝を焼事 ておき 一、潮の事 一、不浄手置の事 一、こやしのうちへ虫わかぬ薬の事 一、すゝをこやしにする事 さくげ こしらえ 一、諸作毛に病付時、薬の事一、諸こやし拵ゃう品々有事 一、不浄集ケ条熊余 / 之 目録終 五そそう ニしんじよう三ぶんげん

9. 百姓伝記 上

156 巻六不浄集 百姓伝記六不浄集目録 一、不浄処の事 一、ほりまやの事 一、湯殿の事 一、井のもとの事 一、ながしの事 一、外田不浄つぼの事 一、馬屋の事 一、ごみ・あくたこやしに用る事一、作毛からの事 一、ぎよべつの事 一、海草の事 一、万木若葉の事 一、目 ( 類の事 一、山芝・野芝の事 一、諸草の事 一、諸鳥のふんの事 一、さゝの葉の事 ふるかべっち 一、す & かやの事 一、古壁土の事 ふじようしょ そとだ

10. 百姓伝記 上

巻五農具・小荷駄具揃 155 わせたるが徳分多き也。 へ舟形・箱形の厩の飼料 一、すそ舟の事、何木にてもあれ、子をあっく、端をひきくして、そこ 入れ。この巻の目録には をあっき板にてこしらへ、たがふとくゆひ用べし。大木を以ほり、ふね「すて舟」とあり。 にもしたるがよし。そこのうすきはふみぬく事はやし。端の高きは馬の 足入かねてあしき也。 一、むちの事、竹の根にふしのこみたるを用てよし。武家に用らるゝこ と具足の数に入ものなり。馬をのり、まねぐりをするに、むちなくして はなりがたし。先むちを馬にそへ持事定法にて、あくまをのそくいわれ 九 あり。依て馬追ふものいかやうなる木竹のずはヘにても持もの也。 百姓伝記巻之五終 ます は幹。 九細く長くのびた枝また