土地 - みる会図書館


検索対象: 百姓伝記 上
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1. 百姓伝記 上

はかどることなし。然ども田は真性にして米の性よく、味ひも能也。黄 一田植のさいに苗の折れ ること。 色・赤色・白色三色の土地につくる米は多年蔵に置に、虫指事なく、ほ = うり んほちにならず。青色・黒色二色の土地に作る米は虫さし、ほんほちと 四金属類の塩分の多く交 一さしおれ なる事はやし。稲をも虫喰折・指折するそ。畑作毛にも青・黒真土の所、じ。ていることをいう。 五鑪粉。金属を鑪で削っ たさいに出る粉末。 やまひ付事多し。また黄色・赤色の真土畠につくるごぼう・大こん・か 大底本・祭本のまま。 ぶら・ふり・なすび・木ふり・タがほ・かも瓜・にんじん、にがくして「て」は「たる」であろう。 セ梨子地。蒔絵の一種。 くらはれず。共土地には渋多く、かわける所をみるに、銅かしんちうの下に塗りこんだ金銀粉が漆 をとおして斑にみえるのが、 やすりこを合してごとく、またさびたるなし地を見るやうなり。かやう梨の肌に似ていることから へ山の尾根通りの先端部。 なる田畠、多くは何国にも山の尾崎・山間にあり。打ひらきたる宝土に 九あしく 九その土地で取った種子 が悪い はすくなし。また色々種悪敷、やしなひ悪敷して、上地にうへてもにが 一 0 「作る米 : : : たがはざ るものなり」は、それそれ くなる物多し。 の色の土地に作った米の質 右五色の宝土に作る米、土地の色あひにたがはざるものなり。ためしは、土の色合に応した性質 をもつものであるの意。 知べし。田畠共に農圃・古農の伝を学び、田をかへし畠をうち、作毛を = 畑のことである。以下 は畑や熟練した農民に聞け ととってもよいが、著者は 仕付、耕作こやしをせば、万物わくがごとくしげり、厚味を得べし。 この語を熟練した農民の一 表現とみているとも考えら れる。 青・黄・赤・白・黒の小砂地の事 一 = 小砂まじりの土。 五 四 あじわ

2. 百姓伝記 上

そもそも 抑此世界と申は、北西地ひろくして、日月のめぐりすくなき故、寒 はなはだしく 一土地一般に対して、農 気甚敷して、万物生じ、実なる事うすし。南東は宝地せまくして、日 ニいっ耕の目的に使いうる土地を 宝地と本書ではよんでいる。 月のめぐり多く、陽気甚しく、能万物生じ、実なる。中にも日本国は一 一一国土の全体の意。 きかい 器界の東面にあたり、しかも東海のうちにあり。かるがゆへに万物生じ、 三万物を生ずる五元素た 実なる事異国に勝れたり。東西へ長く、北南へは短く、薩摩の磯を頭とる木・火・土・金・水の五 つは、相剋する性をもっと これにより し、奥州の浜を尾となし、臥たる竜のごとし。依 / 之水多くあり、水多きともに、他のものを生む性 ( 五行相生 ) をもっとする。 故諸木多し。水性木也。諸木多き故陽気甚し。木性火なり。陽気甚しき「春秋繁露』五行之義によ れば、「木生 / 火、火生 / 土、 故に土多し。火性土也。土ふかく多き故に金多き本朝也。土性金と相生土生」金、金生汞、水生 レ木」としている。海中の めでたき する本地、目出度事かぎりなし。土は中央にして土用にしよくし、黄色島なるゆえ水多しとしたあ じようほう と、五行の最終である水か らはじめて、各元素が生ず にして味ひ苦く、角なる事地の御定法也。 るとしている。この上の句 で水生木を説明して、これ 論 を性であるとする。 陰陽の宝地 性 四この土地。当地。 地 三五行の中に位する。五 みなみちたか 田一、北地さがりにして南地高なるを陰地としれ。南地さがりにして北地行説では方位では中央、五 色では黄、五味では甘にあ てる。 三高なるを陽地としれ。東地さがりにして西地高なるを中陽の地と思へ。 大方位で中央にあたるこ 西地さがりに、東地高なるを中陰の地と知れ。陰地は万物生じ、実なるとから、東・西・南・北を 従えて四角というのであろ 事うすし。陽地は万物生じ、実なる事多し。 ぎたち 一ほうち

3. 百姓伝記 上

一、谷土と云ひて、沼川の流いっとなく平地になりて、ねばき土あり。 すこし 色は五色の外にも色々有べし。へな土よりかろく、少土あらくみへる。 是も瓦に作る土のるいなり。また壁土などに砂を合し用るなり。作毛仕五「ど」。底本「土」。祭本 による。 付土には小砂・荒砂・ごみあくたのくさりたるを合せ、万物を蒔付、植六作物を作る土。耕作用 の土。 付よ。上田畑となるべし。塩のさし入江の土は、またかくべつなり。 一、青・黄・赤・白・黒の土地の、とっとかろくして、のこぎりくずを水に セことごとく集まる。 入るゝ如くなる土地あり。元来木・かやのくさりこそりて有 / 之所なり。 真土のるいまじわれば、かたく、おほくなれども、一円の木の葉・かや ^ おもくの意。重粘。 の葉はくさりてもおもくならず。無性地にて其儘は作毛蒔付・植付する 事不 / 叶。ねば真土を合しては上田畠となる。 一、青・黄・赤・白・黒の地に雲母を粉にしたる如くの所あり。土地おもけ れ共、一円に土気なく、水に入ればそのまゝしづみ、跡すむ。一円に作 九田畠に起し、つくって。 一 0 農耕を続けて土をなれ 田毛のならざる土地なり。 さす。 一、真土一円にまじはらず、小石・小砂の合したる土地多し。色は五色 = 底本のまま。祭本も同 巻 じ。前後の関係からは「元 共にあるべし。田畠にして真性地なり。作りこなすに随て上田畠となる。来」か。 一ニ土が釀酵するように変 化し、こなれる。 元木小石・小砂はおもき故、鍬数・鋤数・まくわ数の入に随ひて、土わ 1 一一口

4. 百姓伝記 上

102 かやの木を植る事 一、かやの木を植る事、実植・取木・さしきになる。そだちやすき木な 材木に用、つよき事かぎりなし。木木の実はちいさく、皮うすなり。 若木の実は皮あっくして、渋多きなり。秋にとりてほし、俵にして水に つけ、上かわをさる。また土にいけても、上かわをさるなり。田畑のく ろに植て、落葉くさりかね、土地やせるなり。 栗の木を植る事 、くりの木は土地にきらひありてそだちかね、虫喰ひをりて、大木と ならず。砂地・石地・くろぶく土をきらふなり。鉄の多き土地に相応な り。また土に渋多き所よし。暖国は悪し。寒国はよし。大栗・小くり色 々有、用木には小栗の木よし。実も小栗味ひょし。 蜜柑を植る事 つかふ。

5. 百姓伝記 上

一、小砂に木の葉・かやの葉くさり合たる土地は、厚実なけれども、万 物共に生出能して、そだちよき物なり。根へ入物の品々みな根入よし。 谷合川の流の淵・崎抔にいっとなく砂流込て、田畠にこしらへたる宝土 なり。何国いかなる村里にもおほからず。田をかへし、畠をうつにやわ らかに、耕作むづかしからず、やしなひょくきゝ、つくりよき宝地なり。 一園芸用に用いる作り土 しのぶ土のるいとしるべし。 の類であろう。砂土に木の 一、ねばりつよき土地の青・黄・赤・白・黒の色みへ、共内に金銀のいさ ) 」葉のくさ。たもの、堆肥の 乾かしたものを鉢植用に使 のごとくひかる宝土あり。成程真性地なり。田をかへすにかたく、畠を うつに岩をきるごとく、万物生付あしけれども、性能、こ・やし・やしな 三厭くこと無し。肥料を ひにあく事なし。国々所々に多からぬ田地也。 どれほど多く入れても大丈 へな土といひて、鳥もちをにぎるごとくなる、ねばき土地あり。其夫である。 色は五色あり。またむらさき色・ねずみ色、様々の色ありて、なる程こ まかなる、まじりなき土にて、かわらをやく土に用る。ぬれてもひても こなれず。かわらにはうすにてつき、また土座の上にてふみこなしてね四土間 る。作毛の仕付土に共まゝ成がたし。古農・老農に尋ならひ、余の土を 合し、またこやし・やしなひに土地のやはらぐ色々をして厚実を得よ。 など

6. 百姓伝記 上

らん事うたがひなし。 春のいろたかきひくきはなきものを おのづからなるくさもしげれり セ田にあって穂が出てい 〇種もみを出穂のうちにてゑりとれば るときに。 まじりなくして米そよくなる 古農の伝に云、米は土地の善悪によりて、色々種かはり、悪米となる事へ品種の特性がなくなる よき こと。 多し。出穂の時は見わけよし。わろきまじわり穂をぬきすてゝ、能穂を九その品種の特性を備え ひとひま ない変った穂。 種に用れば、次第に米も大しぼになりて、米をこしらゆるに人隙もすく一 0 大粒。 = 籾を玄米にし、玄米を 白米にし、選別する過程を なく入也。田の出来・不出来によるべけれども、百歩の田にて籾壱石ほ 抄 同 ど有べし。是を半分、穂さき斗を種に用ゆる時、三百歩壱反にして壱町 百程の苗可 / 有 / 之。然ば百歩の稲を、出穂の時分ゑるはいと安くして、壱 代 苗町の米を、念を入こしらゆるは損多し。先大切の田に悪米をつくりて、 一 = 伊勢の、とくに伊勢神 巻米すくなきこと、国民の費なるべし。昔は伊勢稲ばかりありしかども、 宮より出るとされる稲の品 世々に種かはり、当時は稲の名国々里々に多くして、共名しるしがたし。種についての信抑・伝説を 示すものであろう。 2 稲を植るに、上々の土地壱歩に八十かぶ、中の土地に百かぶ、下の土地 いるなり 七では 九

7. 百姓伝記 上

田畠をわかつ事 一、田は水の有処を貴しとする故に、壱畝壱歩の霎土も中く・ほなるをよ しとする。 一、畠はかわけるを貴しとする故、壱畝壱歩の宝土も中高なるを吉とす。 一、田も畑も同じ土なれども水ある所を田になし、水なき所を畠になす。 田には徳多く、畠には損毛多し。 山谷・田畑陰陽をわかつ事 一、東地さがりにして、西南北に野山有を中陽の宝土としれ。山高くし = 次出の原山と区別して、 刈敷や刈草取の対象となる かならす 諸木のある山の意。 ては必陰地多かるべし。平山をかゝゑたるが上田畠多し。 一、南地さがりにして、東西北に野山有を大陽の宝土としれ。東南に初 て陽気めぐる。南枝花はじめてひらくならひ、天地の御定法にて水多し。 一、西地さがりにして、東南北に野山をかゝへたる所、中陰の土地とし 三前出の野山に対して、 れ。原山をかゝへたる所ならば陽地多かるべし。 草刈に適しない草生の乏し 一、北地さがりにして、東西南に野山をかゝゑたる所、大陰の土としれ。い山であろう。 一宝地 ( 前出 ) と通じ用い られる。

8. 百姓伝記 上

168 時は、むしわき出る。年越につくる作毛の根こやしにして、土地やわら ぎ能もの也。然ども土地の性・不性によりて損毛有 / 之。 一、不浄はよく万物に根をはらせ、実を入る & こやしなり。作毛により て時あしく置時は、共作毛かれうする。しつけ地に用るに、必作毛損ず。 古農の可 / 得ニ伝受一ものなり。 一こうみ 一濃厚な味。またそのよ 一、不浄を万作毛のこやしに用るに、つねに厚味を喰ひ、魚類を喰ふも うな食物。 のゝ不浄は、作毛によくきくこやしとなる。つねに素食をふ人の不浄 = 粗食。質素な食物。 三はんじよう は作毛こゑる事すくなし。依て繁昌の地ちかき所の不浄を取て、田畑を三にぎわいさかえる土地。 城下町・宿場・港町などで 作り、万作毛を耕作する村里は、五穀・せんざいをおもふまゝに作り得あろう。 る。 一、不浄を水田にうつに、おもくして流すたる事なし。然ども稲にきゝ 四いがか かぬるものなり。井懸り自由の宝地は水をおとし、こやしをうちてほし つかせ、又水をかけては稲よくもてる也。 一、不浄を作毛に用るに、四季共に諸虫多し。土民たるものは、一日に 二度も三度も、不浄坪ごとを棒を以かきたてゝ、やわらげ、諸虫をすり ひしぎ・くさらする事専一也。 五 ニそしよく 四用水のかけ・ひきが自 由になる土地。 る。 三底本「棟」。祭本によ

9. 百姓伝記 上

120 あじさいを植る事 一、あじさいはさしき・取木・実植になる。庭木なり。土地にきらひな 、何地にも生る。 にわざくらを植る事 一、にわざくら、わけ木・とりき・つぎ木になる。大木になる事なし。 つぼきなり。花にいろ / 、あり。土地にきらひなくそだつものなり。土 民このみて植るものに、かやうなる庭木のるいは、みな遊民のなぐさみ一底本・祭本ともに「植 るものに、かやう」と続く。 「に」のあと「あらず」が に、もてはやすものなり。 欠落であろう。 百性伝記巻之四終

10. 百姓伝記 上

西北むきの山合田へは天地の御定法にて水出る事すくなし。水のすくな き所物生〔、、 00 事うす」。 一、東西南北に野原をかゝゑたる田畑は陰陽まじへたる宝土なり。必中 くぼなる土地なるべし。野山のヘりは薄田畠にして、中く・ほなる所、上祭本「蒔田」とあるが、 底本をとる。地味のやせた 土多かるべし。 土。 大表土、作土。 一、東西南北に高山をかゝゑたる田畑、日影多くして陰地なり。 一、西北地さがりの小谷田、皆陰地也。 セ「の」底本なし。祭本 一、東南地さがりの小谷田、皆陽地なり。 により補う。 へ低温の害により、作物 一、東南に物影有 / 之田畠、皆陰地なり。 が十分結実しないで、青立 ちになる事。 一、山谷田の地はひゑたち多し。常に水つく事多し。大谷田は各別の儀九または「ふけた」。地 の深い湿田。 一 0 作物の十分に生育しな 論 い土地。後出「うつけ地の 事」をみよ。 性一、山谷田の地は深田多し。不性地としるべし。 一いカカ = 用水路灌漑の田。 田一、井懸りの田は真性地多く、 一 = 作物の生育のよい土地。 いなご地あるべし。 一三てんすいがか 一三その土地に降る雨水の 溜まったものによって稲作 一、天水懸りの田は日損多く、かた土多かるべし。 巻 をする田。 一四旱魃の害。 贏粘土分が多く、乾くと -0 かたい土。 四 九ふかた 一五 五 わ 四山田や谷田か。あるい は後出の小谷田に対して傾 斜の急な谷田の意か。