多年生 - みる会図書館


検索対象: 百姓伝記 下
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1. 百姓伝記 下

もぐさを作る事 一、もぐさ種両種見へたり。葉の大にしてやう大まかにきれ、くきのふ〈艾。よもぎの異称。き く科の多年生草本。葉は香 ときあり。また葉小葉に見へてえうのきる & 事こまかなる有。同じ味ひ気を有し、若葉を餅に入れ、 成長した葉は「もぐさ」と なれども、葉のちいさきはにがみ多く、ほしてもむに真多く、にほひふする。もぐさはこれに火を 点じて灸治に用いる。 九「様」か。かたち、さま。 かきゃうなり。大葉なるはにほひうすく、にがみもすくなく、ほしても 一 0 「よう ( 様 ) 」であろう。 一一しん。葉の繊維。もぐ むにわた少なし。土地の善悪にもよるべし。耕作してやしなひするもの さとなる部分。次のわたも 同じ。 にはあらず。屋敷・畠くろ・藪下・木の下・垣くろに植て、ふだん目前 に見て薬なり。ごぎうと云て似たる草あり。是も喰ふものなれど灸もぐ一 = 御形。ははこぐさ。ぎ く科の二年生草本。春の七 さも取置にとりちがヘることなかれ。巣鷹をうぶたつるに、かやのうち草の一つとして食用。 一三産立つ。子供を養う。 作にもぐさを敷、うぶたつる。自然余の草あればはしにくは〈、脇へよせ、一 0 嘴。くちばし。 菜其処へはよらざるなり。 山ごぼうを作る事 十 巻 一五山牛蒡・やまご・ほう科 の多年生草本。栽培して巨 一、山ごぼう薬種には商陸と云。耕作むつかしからず。また地を費し、 大な根を利尿薬に用いる。 多く作るものならず。垣ぎは・軒下などに植置べし。土地あさき処は根葉は食用。唐牛蒡。 165 一四

2. 百姓伝記 下

174 其後夜露にさらし、手置せよ。土民のつねに用る田笠は、針遠くぬい目 ちょうほうしごく 多からねば、さらさぬ鬼すげを以てぬいたるがつよし。重宝至極の水草 芝を植る事 一いね科の多年生草本。 路傍・原野いたる所に自生。 一、芝を植るに、水つきをこのむ芝と、水をきらふ芝あり。水つきに植堤防などに植えて、土の崩 壊を防ぐ。 = 芝の自生している場所。 てよく、つかひてつよき芝は、水と塩と両方かねたる入江の芝間、また 三底本「かりややす」と は海辺の川岸にはヘる。山にあるかりやすか、野原にあるかるかやのごあり、祭本による。かりや すはいね科の多年生草本。 とくそだっ芝あり。潟などの水けさす処へは種を求め植べし。大小の繩茎は細くて直立し、高さ約 一メートル。茎・葉は乾し て黄色の染料とする。 になひっかふに、重宝なる水草なり。 四刈萱。いね科の多年生 草本。宿根から茎葉を叢生。 高さ約一・五メートル。 ふといを植る事 五太藺・莞。かやつりぐ さ科の多年生草本。沼沢に 自生し、また水田に栽培さ 一、ふといと云て、葉はなくして、つねの畳の表を織るいの如くふとく れる。茎は細長い円柱形で 長く生るあり。池端・川はたに植て、土をあらはざるかこひとなる。まさ約二メートル。下部に 褐色の鱗片葉があり、通常 の葉をかく。花筵を編むに た深田などのあぜ境目のしるしに植てよし。 用いられる。 六防ぐためのもの。 ハいナこ 四

3. 百姓伝記 下

-4 8 の葉かすいせんの葉を見るやうにあっく、色あひくろく、ひたものいづ る葉っよく、根ぶしより子さき出、しげりふしたつまで、うぶ葉青く、 子そだちもおや麦も切りそろへたるごとく一そろひにのび、丸根のとき にくわんざうのはヘ出をみるごとくねふとく、根はらみの時にはこゑた おぎ る芳をみるごとく、本穂はらみになりて荻・すゝきなどの穂に出るやう に、穂さきさしては切そろへたるやうに、色付に随て根より一同にあか くなり、つぶさきいら / \ として、穂ごとにしゐななく、穂もからも葉 もきつねいろにかりしほをもちてふしをれせず、かり跡も小よしなどを = 刈りしお。刈取りの適 期・頃あいの意であるが、 ここでは刈取る時、左で稲 刈りたる跡のごとく、こわくくじけざるを上麦と知るべし。 麦を握る所であろう。 一、小麦をば猪・山鳥のすきて喰ふものなり。山畑にては作にくし。大 麦を草麦の時、猪・うさぎくらふものなり。種のうちには雉子・鳩・雁 0 底本「厂」の下に「鳥」 を書く。 びろい喰ふ。また川端・池端・在家遠き処にては鶴・雁・鴨付くものな 五鳥獣をおどすもの。 り。おどしをよくすべし。山畑には火をいけ、鹿屋をつくり、夜々おは 大鳥獣を追う人の泊る仮 すべし。ぶきこんにてはなりがたし。山方の土民は平場の作毛ぶたんれ小屋。仮廬。 セ不気根。根気がない。 んなり。また里方の土民は山中の作り不案内なり。あらしこ・下人も我 々が在所近辺の人を召つかひたるがよし。 こ 一萱草。ゆり科の多年草。 = 蘆である。芳はいね科 の多年生草本。水辺または 原野に自生。

4. 百姓伝記 下

青苧を作る事 四あおそ 一、青苧は実をとり置、春のひがんのうちまき、夏土用に至りてかり取、 0 苧麻 ( ) 。いらくさ 科の多年生草本。茎の皮か 其まゝ日にほし、其後水にひたし、ほと・ほして皮をむきて、上皮を竹へら繊維をとる。 まあさ らにてこきとり、水にて渋を洗、真麻となる。また年々根を九十月にほ りてわけ植、ほえを出させ、夏土用にかり、また秋の末にかり、両度真五株から発生した新枝。 麻を取、此麻を以布を織に、分てつよし。 えちご しなの こうずけ 土地にきらひなくはびこるものなり。越後・信濃・上野、此国々の土民 襍能つくり得て、国々へ出すなり。 きわたを作る事 六きわた 一、木綿を蒔に土地にきらひあり。黒ぶく土・赤土・青真土・黒真土・ ねばり土・日やけ地・しつ気地・風影・ものかげ・片さがり地・山畑み なあしきなり。ねばりなき白真土・砂地・小石地相応地なり。春の土用 かけ 四五日を懸蒔初め、夏の季に入五七日のうちまきしまひたるがよし。は 117 大一年生の綿、草綿であ

5. 百姓伝記 下

152 み付る。しらずして人くらひ、毒にあたるとなり。赤葉になりたるをよ くとりすてて喰ふべし。 あさっきを作る事 一、あさっきは植時分、わけぎ・にんにくなど & 同事にて、秋のひがん一浅葱・糸葱。ゆり科の 多年生草本。葱類で最も細 。地下の鱗茎はラッキョ のうちに植るなり。畠をうち、土くれをよくこなし、うねをほそくさく ウに似て、外皮紅紫色。葉 取植よ。ひとふさづ & 植ればほそし、つぶ / \ をわりて、一粒づ & 植れも鱗茎も食用。別称せんば んわけぎ・せんふき。 ばふとくはヘ出るなり。植て後上こやしに不浄をかけて置べし。種を取 = 分葱・冬葱。ゆり科の 多年生草本。草は細く、短 に四月の末五月に至て葉あかくしほれたをるゝ。うすく土をかぶせ、葉円筒状で叢生。球茎の外皮 は赤褐色。 かこ をまげ付、年をよらせほり出し、日によくほし、籠に入、火をたく上に つるし置べし。夏のうち実をすりてひや汁のからみとして、土民の喰ひ ものによし。 らっきょを作事 三薤。ゆり科の多年生草 一、らっきょはあさっきに似て葉ながく、少平みあり。作りゃう・植時本。地下に白色の短紡形 の鱗茎がある。別称おおに ら・さとにら。 あさっき同事也。土民このみて作るものならず。 ひら

6. 百姓伝記 下

172 よしを植る事 一、よしを植る事、冬春のうち古根をほり、何地へもうっすべし。先水一葦・蘆・葭。あし。 ね科の多年生草本。水辺に 自生。 つきをこのむものなり。種三色見へたり。ふとく長くなると、地をはい てつるになると、ほそくて長くなるとなり。三種ともにとりゑあり。ふ = 取得。長所。 三汁つき、水分のじめし とよしはかわける野山へもはヘわたる。小よしはしるつき・水のうちば めとある土地。 かりにはヘるなり。また水つきをはいて、ふしごとより根の出るよしあ り。三種ともに池川の水よけによきなり。また野原屋敷の水つきかこひ 0 水除。水の防除。 に植、馬草にかり、秋はまたかり取、家のふきかやに用ひ、薪の料にも 用るなり。先小よし・大よし・はいよし共に川端に植、洪水・満水の時、 堤・土手くづれずして宝土を損せざる大徳あり。 荻を植る事 五いね科の多年生草本。 水辺または原野に自生。屋 一、荻・萩山にもはえ出る。萩は一円に水付に植るものならず。水をき根を葺くのに用いる。 六数珠玉・蒼苡。いね科 の多年生草本。畑地などに らふ、野山草のるいなるべし。荻は水つきをこのむものなり。葉は蘆に 自生。卵形の堅い果実を結 ふ。ハトムギはこの変種。 似てあっく、さながらすゞたま草を見るがごとし。必水つきに蘆とはヘ 五おぎ 四

7. 百姓伝記 下

せうぶを植る事 一、せうぶを植るに土地にきらひなし。雨池・堀岸・河岸土くづれ損ぜセ菖蒲・白菖。てんなん しよう科の常緑多年生植物。 る処々に、根のはる事かぎりなし。また水なき処へも生のぼるそ。雨池葉は芳香があり、根茎は薬 用。 などのちいさき池にはいむべし。はヘしげり水をへらすものなり。 くわいを植る事 へ慈姑。おもだか科の多 一、くわいを作る事種両種あり。然ども何国にも白くわいばかりつくり、 年生草本 ( 黒慈姑はかやっ 黒くわいをばっくらず。白くわいの葉おもだかに似たり。黒くわいの葉り草科 ) 。水田に栽培し、 地下の球茎は食用。 九味。えぐい味。あく は畳をるいのごとく、白くわいは生にて喰ふに少ゑごみあり。黒くわい と、も が強くてのどをいらいらと 集 はあまみばかりなり。ゆでゝ菓子に用ひ、いりて喰ふ共よし。土地にき刺戟するような味。 草 らひあり。石地につくりほりにくし。砂地にては根大きになり得ず。春 水 水ふかき処に植てほりにくし。沼ふかき所に植て地そこへ入、ほりがた 巻し。ねば真土・黒ぶく・さら真土にてもあれ、あまりどろふかならぬ、 下岩土などのやうなる、かたき、水のほしよき処相応せり。冬春極寒な どにどろふかく、水ふかなる処へ人を入てほるは、辛苦なることなり。

8. 百姓伝記 下

154 ふきを作る事 一蕗。きく科の多年生草 一、ふきに種色々あり。まづ水ぶきと云て大きにそだち、にがみすくな 本。茎は甚だ短かく、地上 く、味ひ能ふきあり。はヘ出る時にくきうすむらさきのごとく見へて葉に出ない。早春葉に先立。 て、根茎から大鱗状苞をも やわらかなり。ふきのとうもっく / 、 \ 出のとき、むらさき色なり。次につ花茎 ( ふきのとう ) を出す。 花茎と葉柄を食用とする。 一一花茎の苞がゆるまない また地ぶきあり。味ひにがみ多し。こやしてもそだちかひなし。くきも で、尖って出る時のさま。 はヘ出より青し。また山ぶき・野ぶきあり。くきみちかく葉もあっく、 地ぶきより猶すちおほく、こわくにがきことかぎりなし。はヘ出のくき あかく見へる。水ぶきの種をもとめ植べし。 一、ふきをつくるに、畠をくれて植るに及ばず。畠のヘり / 、、に植て耕 = 特定の畠を蕗用にあた えて。 作すべし。根さす事多く、はびこるそ。秋冬のうちにやしなひを置けば、 春に至てこゑる事かぎりなし。 しそを作る事 一、しそを作るに土地にきらひなし。然ども土のかろき処は葉うすし。 日かげ・ものかげもせい高くなりて葉うすし。両方ともににほひすくな 四紫蘇。しそ科の一年生 草本。葉は広卵形、紫紅色 で芳香がある。球状の小果 を結ぶ。葉と果実とは芳香 があり食用香味料とする。

9. 百姓伝記 下

にらを作る事 四 四韮。ゆり科の多年生草 一、にらを作るに、何国いかなる村里にも植すと云事、大小農共なし。 本。葉は扁平・細長、肉質 多くは居屋敷まはりの畠のヘりに植置て、耕作なしに捨置、かり取喰ふ。で柔かい。強い臭気がある。 別称かみら・こみら。 畠の土ながれずしてよし。然どもにらほそくこわし。年々植直してよし。 めうがを作事 一、めうがは何国いかなる村里にも、溝のヘり・家の軒下などに必植付 = 襲荷・茗荷。しようが 科の多年生草本。筍状の若 い葉及び花穂に独特の香り にして置。其なり / \ につくる尤よし。粮のたすけにならず。自然とち あり、食用に供す。 ゃうさいにつかふなり。 作一、めうがを作るに、十月の前後葉のしほる & 時ほり出し、根をさきて、 菜毎年植直してよく子出る。夏めうが・秋めうがと云てわせ・おくあり。 然ども秋めうがにもひたもの麦ぬかをかぶせ置ば、夏めうがとなる。夏 巻めうがも植付のまゝをけば、秋めうがとなる。 153 五 かて

10. 百姓伝記 下

176 木の下・藪下、作毛ならざる地に植よ。 なきりを植る事 一、なきりを植るに土地にきらひなし。がまのごとく育ち、葉の両脇の こぎりはのごとし。川岸・池端の水ふせぎに植て、土地を洗流さざるか こ いによし。薪の料になる。其ほか何にもならざるものなり。 せきせうを植る事 一、せきせうの種色々あり。土民の用るは大せきせうを植べし。山間な どの雨池・石地などにて、くづるゝ処の水付、また沢水・池水のあまり て地を破る処に植て、地をしめさせ、石をとち合よ。四季ともに水のつ く処には古根をさき植よ。井のもとなどの、土うくやきながれ、小石ち る処に植てとち合よ。赤葉さい / 、取てすて、葉をかりたるがよし。こ ゑては益なく、やせては根しげくなりてよし。 一、家内に火をたくけぶりは目の毒なるが、悪煙をばせきせうふせぐと なり。また一寸のうちにふし九つあるを薬種に用る。小せきせう・唐せ 一なぎりすげ。かやつり ぐさ科の多年生草本。高さ 約三十センチ、葉はすすき に似て非常に硬い。菜切り を意味する。 = 石菖。てんなんしよう 科の多年生草本。しようぶ に似て、香気があるが小型。 根茎は薬用。