十二時 - みる会図書館


検索対象: 魔頂チョモランマ
227件見つかりました。

1. 魔頂チョモランマ

ヤク工作員の活躍 二十一日は、ヤク工作員一一名とシェルバ一一名、そして隊員一一名がヤク道を作りに行った。大矢、近 藤は、そのままべ】スキャンプ入りする。すでに二人は、十四日にべースキャンプに上がり、ここで 一泊し、十五日にヤクを連れて、帰ってきている。高度にも慣れてきている。近藤は元気たったが、 二十一日にそのままべースキャン。フへ入るようにといったときには、入るんですかと不満気。樫原も べースが遠い、遠いと言い出した。何となく沈滞気味。私と大蔵でテントに戻ってから、前回の隊員 は先へ行こう、行こうと言うので大変だったのに、何だ、今回の隊員は、と話していたら、それが聞 こえたらしく、翌朝、がんばって行って来ますと張り切ってみせた。どっちが本当かわからない。 近藤、大矢は無事べ】スキャン。フ入りした。二十二日。昨日の努力でべースキャンプまでの道はで きた。ヤク工作員たちも今まで動いていなかったこともあり、わりとスムーズに動くという意思は示 した。しかもヤク工作員は十三名雇っているはずなのに、数えてみたら十七名いる。ただし、いつも のことながら、河原に陽が当たってくる十時をすぎても、また彼らはテントの中から出ようとしな 。私をはじめ、隊員たちおよびサーダー シ = ルバたちは、みな八時モーニング・ティー、八時半再 食事、九時からは外に出ているというのに。張さんが、パジェロに乗ってすごい勢いでヤクを探しにン いった。この寒さのためにヤクがロンブクまで降りてしまったという。もう陽もさんさんとテント場モ に届き、十時半を過ぎた頃やっと、遙かかなたの河原の斜面のところに、ポッポッと黒いものが見えチ 始めた。ヤクである。これが、ノソノソとやってきた。

2. 魔頂チョモランマ

「ただいま、リッジの所です。あと五 ~ 六ビッチで 0 2 です。あと二時間はかかるでしよう」とりあ えず光が見え、動いているということは、スリツ。フ事故等ではないことが分かり、一安心したが、そ れにしても遅い。寒さもきついし、かなり消耗しているはずだ。 2 から下がって、サポートするよ う要請する。 では大蔵が、再び外へ出て、から出たヘッドラン。フの光と福島の光を確認した。十時十分、 0 3 から明日の行動があるので、先に寝るとの交信がはいったが、近藤から、「シュラ 1 フを忘れて 来ちゃった、シュラーフがないよー」とも言って来た。 福島のことで頭がいつばいだったが、緊張したムードをリラックスさせるために、わざとこんなこ とを言ってくるあたり、近藤らしい。からでは手の出しようはないし、先に寝てもらった方がい いのだが、でも彼らも気になるらしく、十時三十分「シュラーフがないよお」と来た。 01 からは 「ただいまドッキング、リッジの所です」との交信あり。十一時、 01 から見あげて、あと一。ヒッチ 半くらいとの交信あり。十一時四十五分、 2 から、まだヘッドランプの光が見えませんとあった 後、十二時ジャスト、ただいま到着しましたときた。 一人で o にいた私は、背をまるくして、膝をかかえながら、この交信を聞いていた。 01 ~ 2 間の氷壁は急峻で、登るのに時間がかかる。前回も、八時間、九時間かかっていたが、今回のように 午前十一時頃出て、夜中の十一一時までというのは最長新記録。 「日の出るのが遅いので、朝は出にくいでしようが、明日は各キャンプとも早めに出て、明るいうち についてください」と念をおし、まずは安心して一日を終わる。 140

3. 魔頂チョモランマ

受け、「え 1 、風が強くて予定では七時半に着くつもりが、この時間になりました。撮影もありまし たので」「撮影は 01 から 0 2 まで明るいうちに全部とらなければならない」彼はめげずに風のせし だと言った。 とりあえず、着いたばかりだろうからと落ち着いたところで、もう一度交信しようと十時半を約東 した。十時半、交信したが出ない。十時四十五分交信が通じた。早川が一一一一口、「お互いに夜遅く疲れ ていますので、時間を守ってください」と言ってから、明日の荷上げの荷物の件や、シェルバにもた せる荷の話などをして、これで本日の交信終了。 隊員の食欲旺盛ぶり 十一月十四日。朝九時の交信が大蔵からバッチリ入った。もう支度が出来たと言って来た。「食事の 支度をシェルバにまかせなかったので早く出来ました」昨日 01 ではシェルバの食事の支度が遅れた ので出発が遅くなったのだと言う。彼は何か注意すると必ず、なぜそうなったか理由をいうが、でも 私の言ったことは内心では分かっている人間だ。それを知っているから私もフンフンと聞いていた。 貫田パーテイからもすでに準備済みと言って来た。本日はルートを延ばして、もどるとのこと。早 ず 近藤はまだ寝ている。シ = ラフの頭のところから、規則正しい白い息がフ 1 フーと垂直にはき出け されていた。 / ノカモーニング・ティを持って来てくれた。朝食を終わってテントの外へ出 十一時近くに、シェレ。、 : た私は、インデエラを先頭に荷上げに出るシェルバ四人を見送り、装備関係、食料関係、シ = ラーフ〃 に

4. 魔頂チョモランマ

今日はそれほどでもない。よかった。今日も強風だったら彼らは本当に帰って来られなくなってしま % うかもしれない。 ルートに目を合わせる。でもマイナス三〇度ほどの気温だから、レンズが体温ですぐくもり、 よく見えない レンズをふくと氷がとれてくる。指が凍傷になるかと思うほど冷たくなるまでレンズ におしつけ、それを繰り返してから目にもって行く。それでも数秒でくもる。繰り返し繰り返し見 る。の黄色いテントが、半分ほど雪にうまって、それでも白んだ光に蛍光色を発しているように 見える。小さなうさぎ菊の花弁が一つ、氷の斜面にはりついているように。 ルートを追って目を上げる。白い斜面に岩が一つ。そしてその下に二つ並んでいる。右側の三段の 岩壁帯の一番下の岩壁から左に目を移すと、あれい昨日まではそこには何もなかったはずの白い斜 面に、上は細く、下は太い小さな黒い影が見える。あれだ、あれがテントだ。きっとあれが二人のか ぶっているテントた。交信は出来ないが、テントがある。飛ばされていないというだけでも少しは安 心した。手足のこごえにもめげず九時三十分までずっとテントを見つめていた。その間、交信はな 十時、十一時、眠っていられなくなった隊員も交代で双眼鏡でのそいている。十二時が過ぎた。状 況は変わらない。サーダーが e へ荷を取りに二十五日から降りているので、すぐシェルバに 01 まで上がってもらうよう頼んでくれと貫田に言う。彼らの足なら、荷物を背負わずにいけば、今日中 にに ( 行けると田う。 貫田は、まず自力で降りてこられるだろうと言ったが、一時になっても行動していないのはおかし

5. 魔頂チョモランマ

に出来るだけ下って来ても、にはとどかないから、途中で一泊することを考え、ビークには遅く ても十八日までに登らなければならない。登頂した後は、各キャンプを撤収してこなければならない から、その日を入れると十七日までに登らなければならないことになる。この悪天候が一週間続くと 考えると、十二、三日ごろまでは風と寒さが続くだろう。登頂のチャンス日は、どんなに遅らせても 十七日までという限度がこちらにはある。 みんなに、い つを登頂日にしたらいいか、勘で判断してもらった。近藤が十七日と言った。福島が 十五日、樫原は十六日 : 。それそれまちまち。福島の十五日と、私の十五日が重なり、多数決で十 五日に上につくように、最終パーティは十日に出ることにした。私の考えの十五日というのは、単に 天候を考えただけではなく、十五日ならまだ十六日、十七日と余裕を見られることと、その後、キャ ン。フの撤収をして荷下げをする時間もとれるからという意味もあった。 悪天候がやってきた ! 十二月十日。近藤、福島、大矢、樫原がを出発。貫田は左手の中指の凍傷がまだ治らず、フィ ックスにエマールをかけることも出来ないのでリタイヤする、と昨夜言った。本人からは言いにくい だろうと思い、私が「貫田君は指を切る気はないので行かないそうですから : : : 」とおどけて言った吮 つもりが、本人は「そんな言い方ないじゃないですか」と怒り、「みなさんに申しわけありません」 と隊員たちには謝っていた。とっても真面目な人間たちばかりだ。私は今回の遠征で何回かそう思っ魔 たことがある。目的地まで行けなかったり、体の調子が悪いとき、悪天のためでも彼らは帰って来

6. 魔頂チョモランマ

を補修 十一月十九日。一夜明けて風はおさまった。 (-)* の早川からの交信あり、こちらから本日入り するよう指示、なお 0 2 もそしてその次の 0 3 も、きっとテントが雪でつぶされたり、ポールがおれ たりしている可能性大だから覚悟して行くように言う。 十一時、再び 01 より交信あり、酸素マスク、レギュレーターが雪の下、どの辺にあるかとのこ と、酸素関係を取り扱っていた貫田からシェルバテントと隊員テントの間にあると答える。再び交信 あり、装備がほとんど雪の下、この場所はもう放棄し、雪洞を掘るか、雪原にテントを移動するしか ないと、つ。 昨夜、サーダーとの話で、もし風がおさまれば、ハイ。ヒーシートをミンマが補修することになって いた。本日が風強く無理なら明日、いずれにしても風がおさまったら補修という話にしてあったの で、そのことを伝えたが、早川は、ハイ。ヒーシートはズタズタで補修は無理といってきた。雪洞を掘 ると主張した。私は、後のことは後から行く人間にまかせてに行くよううながした。早川になに かを指示すれば、後は考えるだろうと思ったのだ。しばらくして交信あり、スコツ。フがなく仕事がは ず かどらないという。装備のことについては全部細かくノートにつけ、どこにあるかを全部知っていけ て、ス = , プなどにないことが分か 0 ている彼がス = ' プを上げてくれと言 0 てきた。大蔵パー ティにもなるべく早く来るようにとも。そして十二時過ぎ、本日はの再建でには上がらない と言ってきた。彼の性格から、の装備すべてを掘りおこし、なくなったものも把握しなければ納 こ

7. 魔頂チョモランマ

て行ったという。普通、ルートを延ばす時、キャン。フからすぐ新しいルートとなる一日目は十 ~ 十二 。ヒッチと大〕にルート がのびるが、翌日からはすでに延ばされた十 ~ 十一一ビッチをたどった後、さら にその上へと延ばすので、四 ~ 五。ヒッチとなるのだが、二日目で七ビッチ延ばしたということは相当 頑張ったことになる。したがって 0 3 、 0 2 、 01 と下がってくるのにかなり遅くなることが予想さ れた。八時の交信後八時半、北壁を見に行ったところ、のあたりに、ヘッドランプの光を見た。 あそこからではあと一一時間はかかるなと思い、九時半ごろ北壁を見に行った。 0 2 、 01 間にヘッ ドラン。フの光が二つ見えた。あれ、本日の貫田パーティは三人のはずなのに。テントの中で水を作り ながら十時半再び見に行った。 01 から北壁に取りついて五 ~ 六ビッチ目の所にヘッドラン。フが一つ 見える。おかしいなあ。迎えに出てみようと思い、紅茶の魔法ビンを手にするが、よく考えて見る と、この大雪原、いたるところにヒドンクレバスがある。 0 から 01 への道とは違う。下手に動し て私がクレバスに落ちたらと思うと、出かける気になれず思い止まり、お湯が沸くのを待っことにし た。シェルバたちは、すでに七時ごろ食事を済ませ、十時には寝てしまった。 シンシンとした寒さと暗さの中で待っていると、十一時ごろ福島、大矢が相次いで帰って来た。ま ずはテントの入口から手を出し、福島にはミルクティ、大矢には希望の砂糖もはいっていない・フラッ ず クティを渡した。 ( イ。ヒーシートでおおわれた広場で登攀具をはずし、リラックスした格好になったけ 福島、大矢がテント内に入って来た。 「やあ、オレは先に降りたんだけど、壁の下で電池がなくなり、隊長を呼・ほうかと思ったんだよ」 福島が例によ 0 て冗談とも本気ともっかないしゃべり方で話しはじめた。結局、大矢が来るのを待 0 に

8. 魔頂チョモランマ

12 月 16 日 , プ气 , : ,. ーを - 、、ま、ゾからアグ ' ク てきた 12 月 11 日 , c 4 から。

9. 魔頂チョモランマ

向けてのルート工作、そしてその後、氷壁を 0 3 、 0 2 と通過して 01 まで下がって来て、北壁の下部 から雪原をテクテクとまで歩いて来たのだから、相当疲れているはず。それなのにこのふざけぶ り。本人は前回、荷上げを目的として協力隊員という形でチョモランマ隊に参加していたのだが、今 回もやはりキヨーリョク隊員だという。キョ ーリョクの字が今回は″強力〃なのだと日本にいる時か ら誰彼かまわずに言っていた。それだけの自負が、まだ余裕のあるところを見せたのか。 の屋根の下に入ると風はなく、プルーの天井の下、テントを背にした中央で、早川が座り込ん ていた。ンエレ。、・、 / , 力あまいミルクティを持って来てくれて、飲み終わっていないのに、「サープ、テ ーシューズをはいてリラックス イ」と次をすすめてくれる。靴をぬぎ、テントシューズの上にオー し、隊員テントに入る。固型燃料をたいてテント内をあたため、改めて早川に、明日からのシェルバ に託す荷上げの荷物の件を話す。彼らがに着いたのが五時、そのままへ下ることは充分可能 だったが、 , 彼らも明日、の荷の選択をしてくれるということで、今晩は三人で o—に泊まること にする。 七時の交信、 0 2 へ向かった大蔵パーティはまだ 0 2 にとどいていないようす。昨夜、福島の到着 が十一一時だったことで心配した貫田パーティは、昨夜の寝不足が今日にひびいたのではないかと思っ ず け たが、もう 0 3 についていた。福島も元気とのこと。 負 八時の交信、 0 2 のトランシー ッテリーおちしていて、こちらの声は届いているらしい が、返事が雑音のみ、どうも樫原だけがテントに入っているらしい。「アキ ( 樫原 ) さん、いまテント に居るのはアキさんだけですか。もしイエスなら二回、ノーなら一二回発信ボタンをおして返事して下

10. 魔頂チョモランマ

の荷が吹きとばされたー 十一月二十四日。天気悪し。チョモランマの上部三分の一は雲におおわれ、風に飛ばされて西から 東へ流れる雲の合間に、時折。ヒークが見える。本日も登攀の条件としてはよくない 、と思いつつ、九 時のトランシし ( ー交信。の貫田パーテイからは、昨夜シ = ラーフが不足たった件、、酸 素マスク等、装備の不足品について次々と言ってくる。これには意外な気がした。チョモランマを見 上げて天候を心配しているに比べ、壁の中の当事者たちはもっと現実的で、天候については関係 なく、上へ行くことのみを考えているのか。 十二時、本日は貫田。 ( ーティにシ = ルバが同行している。 o«から先で使用する酸素を荷上げして いるが、前回の荷上げの時、すでに 0 4 用のテントおよび登攀具のすべては 0 4 に上がっているの で、隊員が先行し、シェレ。、 : ノ一カ 0 4 地点に着いた時、テントサイトを決定してあげれば、テント場作 りにシ = ルバの手を借りられるから、楽になるはずと考え、隊員に先行するよう言ってあったが、 o 3 から貫田が交信してきた。 「まだ、を出ていないのですか」「テントの中はごちやごちゃ、かたづけるのに手間どりました」 なお、酸素用のレギ、レーターやマスクの位置、使用不能の物の整備などに手間どっているという。 下ので考えると、狭いテントの中なので簡単にかたづけられそうに思うが、七五〇〇メートル付 近で薄い酸素 ( 空気 ) を吸いながらだと、ちょっと動くにも ( ーゼーゼー、それに一つの物を持 っと瞬間に手が冷たくなって、その手をあっためながらの作業は遅々として進まない。おまけに低酸 182