地球 - みる会図書館


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1. SFマガジン 1968年10月号

空想自然科学入門 地球から宇宙へ 生命と非生命のあいた 空想天文学入門 ハヤカワライフラリ 絶讃発売中 アシモフ : 空想自然科学入門シリーズ 最新の科学の話題を空想の翼にのせて語る / 小尾・山高訳 / 300 円 字宙と地球にかんする珠玉のェッセイ集 / 山高昭訳 / 330 円 生命現象の神秘と驚異と SF 作家のエスプリ / 山高昭訳 / 430 円 アシモフがあなたを字宙へ誘う / 草下英明訳 / 300 円 フランク・エドワーズ : 超自然の謎シリーズ 人智を超えた世界の奇現象 70 話 / 斉藤守弘訳 / 290 円 科学的解明を拒むショッキングな出来事 / 矢野徹訳 / 280 円 神秘と謎の異色ドキュメント / 庄司浅水訳 / 290 円 不思議な人間の驚異の記録 54 篇 / 北川幸比古訳 / 320 円 しかもそれは起った 科学に挑戦する 世界は謎に満ちている 超能力者の世界 0 好評既刊 生命の母なる海の全てをえがく世界的ベストセラー ! われらをめぐる冫毋 レイチェル・カーソン / 日下実男訳 / 320 円 水晶の中の未来 ワシントンの予言者“の信じれぬ実績のかすかす ! ルース・モンゴメリイ / 坂入香子訳 / 290 円 S F 界の第一人者が綴る開けゆく宇宙時代への展望 ! 宇宙文明論 アーサー・ C ・クラーク / 山高昭訳 / 280 円 米国大統領暗殺者たちの人問像を追求する問題の書 ! 暗殺者 ・ドノヴァン / 笠井真男訳 / 300 円 ロ / ヾ

2. SFマガジン 1968年10月号

イレーネわたくし、街娼だったのです。 イレーネお望みなら。 ウット ( はけしく ) 望みます。あなたにはわれわれの使命の意 沈黙。 、。いったん宇宙船にもどり、明日また 義がよくお分りでないらしし 来ます。そのとき誰と交渉することになるか分らないが、われわれ ウッドあんた : イレーネ国家主席と話していらっしやること、お忘れにならなの提案を金星住民に伝えることだけは確実にやっていただきたい。 ようこ。 イレーネそれほど大事とお考えになるなら。 ウッドマダム。もう一度約東しますが、戦争でわれわれの側に 立てば、地球にもどれるのですそ。 イレーネわたくしたち、もどりたくございません。 沈黙。 ウッドマダム、いまやすべての人びとの名においてお話しにな っていることをお忘れになってはいけない。あなたが個人的理由か 重い息づかい。 らもどるのを欲しないことは理解できます。しかし、地球で自由の マンネルハイムカルシウム注射です。 ため、尊い生活のために戦ったおかげで金星に流された人びともい ウッドどうそ。 るのです。そういう人たちは帰りたいでしよう。 マンネルハイム酸素をもう少し部屋に入れます。 イレーネ帰りたがっている人など、一人も存じません 宇宙空間担当相暑い : : : 暑い しゆっというかすかな音。 マンネルハイム閣下、宇宙空間担当大臣が失神なさいました。 ウッドどんなあんばいかね、宇宙空間大臣は ? ウッドマンネルハイム、診察してさしあげろ マンネルハイム感心しません。 マンネルハイム宇宙船にもどらなくては、閣下。大臣の生命が ウッド国防大臣は ? 危険です。 国防相ウッド、 わたしももうだめだ。汗がすごい。あんたの顔マンネルハイムそれほどでもないようです。火星担当次官が発 も死人みたいだそ。 進のとき発作を起こしました。 コステロ。出発しよう。 ウッド気のどくに。どうだ ? ウッド ( やっと声になる ) よろしい イレーネ、わたしの提案は金星住民に伝えていただけますな ? マンネルハイム絶望的です。 マンネルハイム第九の録音であります。ヴェガ号のウッド閣下 の私室。金星上空千五百キロメ ] トル。

3. SFマガジン 1968年10月号

本事件の被告であるロポット・機械人間株式会社は、事件の理学教授が、まず喚問され、グッドフ = ロウ 好物 ) の名を汚すよ うな表情で型通りの宣誓を行った。 審理を陪審員ぬきの秘密裁判にもっていくだけの力をもっていた。 またノース・イースタン大学も、それを阻止する運動を強力に推慣例の冒頭訊問の後、検事はポケットに手をつつこんでいった。 進しようとはしなかった。理事たちはロボットの非行に関する事件「教授、ロポット号の雇用問題が最初にあなたの関心をひい たのはいつでしたか ? その前後の状況を話してください」 : 、たとえ非行自体はきわめて稀れであるとはいえ、社会にいかな る影響を及・ほすかということを十二分に知悉していた。そしてまた グットフェロウ教授の骨ばった小さな顔は不安な表情をうかべた が、円満な顔つきでないのはほとんど前と同様だった。 かれらの脳裡にまざまざとうかぶのは、アンチ・ロポット暴動が突 かれはいった、「わたくしはロボットの研究所長であります 如としてアンチ・サイエンス暴動に変ずるやもしれぬという危惧で アルフレッド・ラニング博士とは、職業上の接触があります、また あった。 またハ ーロウ・シ = イン裁判長によって代表される政府も同様に親しい知己でもあります。それゆえ、かれからかなり奇妙な提案を 事件の隠密裡の処置を切望していた。ロボットも学界も敵にま受けましたときには、若干の寛容さをもって耳をかたむけたのであ ります。あれは昨年の三月三日 わすにはまずい相手であった。 「二〇一二三年の ? 」 シェイン裁判長がいった、「報道関係者も傍聴人も陪審員もいな いのであるからして形式的な手続きは最少限にとどめ、ただちに審「そうです」 「お話を中断して申しわけありません。その先をどうそ」 理の核心に入りたいと思います」 いいながら硬ば 0 た笑いをうかべた、恐らくこの要請教授はひややかにうなずき、事実を確実に思いだすために顔をし かれはそう がいれられるという見込みははなはだうすかったからであろう。そかめ、やおら語りはじめた。 こでかれはせめて居心地よくすわろうと法衣をかきよせた。顔はさ グットフェロウ教授は不安な気持でそのロポットを見つめた。そ えざえとした赤、顎はふつくらと丸く、鼻は雄大、とびはなれてつ いている目は明るい色である。大まかに見ても司法官の尊厳とはほれはロボット貨物の地球内輸送管理規定にしたがって、コンテナに いれられたまま地下の倉庫に運びこまれていた。 ど遠い顔であり判事もそれはわきまえていた。 ーナ・ ( ス・亶・グットフェロウ、ノース・イースタン大学の物かれはそれが到着することをあらかじめ知っていた。不意をつか 9 4

4. SFマガジン 1968年10月号

カールは・ハ力のようにうなずいた。 を発見した頃のことでした、われわれの母星から〈能力人〉が移住 「やはりそうでしたか」と小男。「で、失礼ですが、どちらへお越を始めたのはー 「移住 ? 」カールは茫然とききかえした。 しで ? 」 筋道立った答えを得るまでに、小男はその質問を二度くり返さね「いま、あなたがたがなさっているのとおなじようにね」小男はい うと、メガネをはずして、ていねいにぬぐった。「原子力の解放に ばならなかった。最初にショックからさめて、ロがきけるようにな ったのはファーディーだった。 つづく突然変異は、つねに〈テルスカのカ〉に対してある程度の統 「アルフア・ケンタウリ系で、居住可能惑星を見つけたいと思って御能力を持っグルー。フの進化を生みだします。そして、未来の時点 での〈普通人〉との関係が問題になり、〈能力人〉は来たるべき闘 るんですがね」 スウイスカム氏はくちびるをつ・ほめた。「一つあるにはあります争を避けるために、多くの場合、ひそかな移住に踏み切るのです。 が、ちょっとまずいですな。〈原始族〉のための特別居留地になっしかし、これはまちがいですよ。ケンタウリ第三惑星をごらんにな てましてね。銀河系評議会があなたがたの植民にどんな態度を示すれば、わたしのいう意味がはっきりします。なんと陰気くさい場所 だろうと、感じられることでしよう」 か、なんともいえません。もちろん、最近は人口も減るいっぽう で、南の大陸など、無人地帯同様ですが」彼は言葉を切ると、しば山高帽をしつかりかぶると、彼はあいそよく手を振って姿を消し らく考えた。 一同の静粛を求めて両手を上げたカールの目には、荒々しい光が 「そうだ、こうしましよう。フォーマラウトへ着いたら、扇形区行 政官に連絡をとって、意見を打診してあげます。では、ほかに約東宿っていた。 「一つだけ教えてくれ。この五分間、おれはほんとうに山高帽の小 もありますので、そろそろ失礼しますよ。なにしろ、わがグリタス ・クイン・ ( ック・スウ = ンチ社は、時間の正確さをモットーこ男と話していたのか、いなかったのか ? 」 しておりますのでね」 四十八時間後、一行はケンタウリ第三惑星に別れを告げ、これか 小男がチョッキのふところに手を入れようとしたとき、カールは らの方針を決定するため、自由空間に停止した。一族の未来を討議 その肱をつかんだ。安心のいく手ごたえがあった。 「われわれは気が狂 0 てしま 0 たのだろうか ? 」一行の指揮者はすするため前部観測室に集「た人びとは、落胆し、当惑した表情だっ こ。 がるようにたずねた。 「いやいや、とんでもない , スウイスカム氏は穏やかに手を振りは「あそこで見てきたもののことをいくら話しあっても、時間のむだ らった。「あなたがたは、われわれより数千年後の発達周期に属しだ」カールはいった。「それより、適当な惑星の見つかるまで、こ ておられるだけのことですよ。あなたがたの祖先がやっと火の用途のままほかの太陽系をめぐり歩くか、それとも地球へ戻るかを、 セクター 6

5. SFマガジン 1968年10月号

しるアメージングにサイエンス・アンド・インヴェンション、ラ る ジオ・ニュース、ラジオ・リ スナーズ・ガイドそしてフレンチ・ヒ この次のページに、ほ・ほ目次とおなしレイアウトの題字が上にぎ ュ ・タイム・マネー ーマーとスペアー ・メーキングとくる。十数年て、その下がガーンズックの論説になる。その間に例の Extrava ・ 後にはここにセクソロジーも加わるわけだが、これはこの際あまり gant Fiction Today... :. CoId Fact Tomorrow 「今日の奇想天外な 関係がない。 る空想も明日は冷厳なる事実」という標語が入っている。論説につ さてこの三月号にはウエルズの『花咲く奇怪な蘭』 The Flower ・ いては前に紹介したからとばすとして、。ヘージをめくると、 よ本編に入るわけである ing Strange Orchid とヴェルヌの『世界の支配者』 The Master of the World の連載第二回、そしてガーンズバックの『ミュンヒ、 本編の紹介は今回に限り省略するが、ガーンズ・ハックは掲載され サる全作品に、それそれ簡単な前説をつけている。これがたいへんお ウゼン男爵の科学的冒険』の再録が芯になり、他にそのマッド・ もしろいのであるとくに今になってこれを読むと、ガーンズ・ハッ イエンティストものと、『太陽へ一千万マイル』 Ten MilIion MiIes Sunward 、 『副衛星』 Sub SatelIite の計六編がのっている。この クがどこに着目してその作品を掲載したのかを、お・ほろげながら理 目次のとなりには次号予告として、ウエルズの『ぎたるべき日の物解することができる。たとえば『太陽へ一千万マイル』という作品 語』 The Story of the Days to Come などが紹介されている。 は、地球が数年後に彗星と衝突することがあきらかになり、なんと 次の二頁がまた広告。ラジオの通信教育だが、ここにうつっている かしなければならないというわけで学者がさんざん智恵をし・ほった おやじは今日もポビュラー ・メカニクス誌あたりに依然として登場結果、こんな手を考えた。カスビ誨と黒海の間に連河をつくり、カ して、エレクトロニクスの勉強をすると金がもうかると宣伝してい スビ海の水を全部黒海へ流しこんでしまうというのである【 ) そうす れば地球自体の質 アメージング一九二八年三月号の目次と論説の。ヘージ 量の分布が変化す るから地軸がぐら つぎ軌道が変化し て : : : というので あるガーンズ・ハ ックは前説のなか で「秀逸な着想で あり読者を強くひ きつける作品では はたして あるが、 科学的に可能であ るか否か、よく考 0 S ル弱 9

6. SFマガジン 1968年10月号

「こ電気人間 いや、電波人間ーーー生体電気を利用し、強い生体電 し出される、遺伝研からの中間報告を鞭でさしながらいった。 の通り、ヘンウィック青年の身体構造は、どの部分をとってみても波発振器官をそなえて、不可視帯電波を、生きることに利用しはじ 数百ポルト、数アン。ヘアもの大電流を放電したり、蓄電したりするめた知的生物ーーーちょっと考えると、それなら、われわれ人類だっ ために、非常にうまくできあがっています。ーー内臓諸器官も、こて、おなじことではないか、身体器官として内蔵するか、道具や機 うう条件に適合するように、きわめて特殊化し、発達していま械として、外部におくかだけのちがいにすぎないではないかと思え す。ということはーーむろんほかにもたくさんの特徴がありますがるがーー・しかし、そんなアナロジイではすまないような、なにか不 これだけみてもわかるように、 ヘンウィック青年は、われわれホモ気味な予感を、ぼくはスクリーンにうっし出される〈中間報告〉か 冫。し力なるこ この新人類こま、、、 ・サビエンスの中から、彼一人だけが、突然変異としてうまれてきら、ひしひしと感じとっていた。 たわけではなく、かなり前から、ホモ・サビエンスの亜種、乃至はとが可能か ? 。、ネルを見ていたランべール博士がい 変種として、ホモ・サ。ヒエンスから分離し、その方向への進化の道「局長ーー・ーグラフィック・ / A 」、つ田つ ? ・ った。「修正パターンがおくられてきたようだね。 を歩みつづけてきた種族の一人であることをものがたっています。 ミスの 中南米地域は、コン。ヒューターの保有台数がすくないのに、 それから、脳、および中枢神経系統ですが それまで、クーヤの体の解剖パターンだったのが、この時突然、発生率が異様に高いような気がするが : たしかに : ・ほくたちは、グラフィック・パネルを見た。 ミナは思わず顔をそむけた。 クーヤの脳の実物がうつった。 「ごらんのように、大脳前頭葉は、きわめて特異な発達形状を見せンべール博士のいうように ています。頭蓋骨は、われわれよりずっとうすく、そのかわり、そ「〃電波人間〃が、一代きりのミ = ータントではあり得ないとする れなりにきわめて丈夫にできていてーーこのうすさが、外見上われとーーー〈ンウィック青年の同類たちは、この地球上のどこかに、大 ところでヘンウィック青年 われとかわらないのに、大脳容積を大きくし、かっ、こういった奇勢いる、と考えねばなるまいね。 は、たしか、、ポリヴィアの出身だったと思ったが : : : 」 妙な器官の発達をゆるしていたと思われます。ーーー・脳橋付近にも、 われわれにな性質不明の器官ができていますが・ー・ーこれと、後局長の顔に、サッと緊張が走 0 た。 と局長はヴィジフォー 頭部の頭蓋骨に、きわめて大量の金属がふくまれていることとあわ「重要な御指摘です。ランべール博士 : せて、今、ドラリ = くんからきいた、″生体電波通信器官〃の仮定ンのボタンに手をのばしながらいった。「さっそく、その方向でし いま、ドらべてみましよう」 をいれると、どうやら納得がいきそうな気がします。 ( 次号完結 ) ラリュくんの仮説を、遺伝研に知らせてやりましたから、これらの 正体不明の器官類を、その仮定のもとに詳細に検討しはじめている はすです・・ : : 」 20 ー

7. SFマガジン 1968年10月号

んが、その知識を得た上で、相手をたおすかたおさないかは、あな題です。そしてまた、人類が、科学者をみな殺しにしても、これま た方の政治的判断にもとづくことです。われわれもまた、場合によた一向かまわない : ・ほくたちは、若干息をのむような思いで、この二人の問答をきい っては、政治的ーーーあるいは道徳的に、さばかれるかも知れない。 ていた。 しかし、われわれのたっている立場は、そういった次元の問題と、 普辺生物学ーー・・その学問の性格が、教授をして、これだけ思いき 原理的にちがうということです。こんなこと申し上げるのは、むし ったことをいわせたのだろうか ? 日ごろ、どちらかといえば無ロ ろ、釈迦に説法かも知れないが : 「なるほど サーリネン局長の眼が、キラッと光った。「たとで、内気そうに見えるヤング教授が、これほどはげしいことをいう え、この事件が、いわば人類の興亡にかかわるような性質のものでのは、はじめてきいた。その断定的な口ぶりの底に、なんとなく、 ひやりとするような無気味なものが、感じとられたのはーーーそれは あっても ? 」 ぼくらがまだ若く、血の気が多いからだったろうか ? 「そんなことを、おききになるのは、少しおかしいですな、サー だがしかし、ヤング教授の言葉には、科学のーーー学問というもの ネン博士 : : : 」と、ヤング教授は、微笑をうかべながらいった。 の本質の一端がのそいているような気がした。 「科学は、人類の減亡をすくうために、一肌ぬいだりしませんよ。 ーの、論じっくされ、 ちょっときくとそれは、・ウェ 科学の応用は、人類をすくいもし、またほろぼしもするでしょ しかし、教授の肉声 うが、科学そのものにとって、人類は、地球上に新生代第三期以降ふるされた没価値論のようにもきこえた。 アンチ・エクジスタンシャリスム で語られたその言葉の底には、反・実存主義的なひびきーーーという あらわれた、体毛のすくない、直立二足歩行性の、大脳前頭葉のい ェクジスタンシャリスム・ド・ヴィジオネール この〃種″の興よりは〃見者の実存主義〃とでもいうべき、徹底的な〃非参加 ちちるしく発達した、霊長類の一変種にすぎない。 の決意〃があふれているような気がした。 亡を、支配する法則には興味があっても、減ぶのを防ぐことには、 人間に、はたしてそんなことが可能だろうか ? それほど関心はありません。むろん、われわれも人間である以上、 ・ほくらには、まだわからなかった。 そんなことは、これま 同種の運命について、若干人間的感情を動かされはしますがね・ : 自分で自分の首をしめる形によってか、あるいは他者にほろ・ほで、考えてもみなかったことだった。だが、その時、・ほくたちは本 されることによってか、あるい内部から腐っていくことによって来ならばとうの昔に知っていなければならないことを、あらためて か、いずれにせよ、人類はほろびることになるでしようが、生物の思い知らされたのだった。 中の、隆盛をきわめたある〃種〃が減亡することは、長い地球の生大学で学ぶということーー・高等教育をうける、ということと、学 問の道をえらぶ、ということとは、本来まったく、別の次元に属す 物史上、一向めずらしくないことですし、できればその際、冷静な 観察者でありたいと思うだけです。ーーー人類がほろびようがほろびるものだ、ということを : まいが、そんなことは、科学にとっては、一向に痛痒を感じない問 大学教育をうけるものは、全世界で何千万といるだろう。またそ 掲 8

8. SFマガジン 1968年10月号

ュノ・カ まで、君が、被害者チャールズ・モーティマーくんの研究と、犯行 予期したほどの動揺は、一座にはあらわれなかった。 列席の学者の何人かの表情はこわばり、何人かは息をのんだ。 の性格から、〃犯人探知器のアイデアを思いついた経過を、説明 ・ほくらとて、今さらそのことをきかされたところで、それほどおしてあけてくれないか ? 」 どろきもしなかった。 この異常な事件に対するヴィクトールの強心臓では、ぼくらの仲間でも最右翼に列するヴィクトールも、 分析、クーヤの最期の時のあの異様な光景を見れば、クーヤがあた これだけ錚々たるメイ ( ーの前で一席ぶつ段になると、いささかあ り前の人間ではないということは、誰にもすぐ感じられたことた。 しゃべりはじめると、すこしどもっ がって、顔が赤くなった。 しかし、精密な、分析解剖をうけて、その結果をつきつけられる さいわいなことに、彼がアドルフに最初のアイデアをしゃべ ク と、やはりかなりなショックではあった。ーーー染色体数ー った時、それから・ほくをテストしたあとでふるった長広舌が、テー 、・ほくたちと同じ人類ではなかった ! 彼はーーーもし、 プに残っており、小まめなアドルフが、それを整理編集してあった。 その染色体数異常が、彼一人の畸型的なものでなかったら : : : 彼そこで、彼は、しゃべるかわりにそのテープを流しながら、要所 は、〃新人類〃の一人なのだー 要所を補促した。ーー最初、若い学徒の″推理を、ほほえみなが 「ちょっとーーーサ ーリネン局長 : : : 」フランケル博士の言葉を、まらきいていた大学者たちも、途中から、はっきりと興奮の色を見せ るできいていないみたいに、グラフィック・パネルの、点をうたれはじめた。中でも、とりわけはげしいおどろきの色を見せたのは、 た世界地図に見入っていた、ランべール教授が、ぼつんといった。 フランケル所長だった。 「あの地図の上の点は , ーー発生地点をしめすだけですかな ? 」 「まってくれ ! ーと、所長は、興奮して、太い指をパシッー ッ なるほど : : : そいつは気がっかな 「そうです」と、。ハネルをふりかえりながら、局長はいった。「な と鳴らした。「そうか ・デテクティヴ にカ ? 」 カったたがーーー君は、ほんとにいわゆるべ 「なんとなく : ・ 。あで、犯人が″電波人間〃であることを、つきとめたのかね ? ・ーーチ : 地域がかたよっているような気がするが れを、その地域のコン。ヒ = ーター保有台数に対する、事故発生のわャーリイという学生は、こういうことを予期しないで、そういう人 り合いで修正して、表示しなおすことができますかな ? 」 間について研究をしていたのかね ? 」 「できます。ーーやらせてみましよう 「・ほくの場合は、ある程度、事実の総合、によって、犯人の姿をう き。ほりにすることが可能でした」ヴィクトールは、上気した頬でい そういって、局長は、卓上ヴィジフォーンで、ニューヨークの— った。「しかし、チャーリイの場合は彼は、純粋な抽象思考によっ O アメリカ本部をよび出すと、こちらの意向をつたえた。 「五、六分で、修正したパターンがおくられてきますーそ ういうて進化の可能性を検討しているうちに、そういう形の人間の存在し と、局長は、・ほくたちのかたまっている方をむいて、 得るーーあるいは出現し得る可能性というものを、描き出すにいた円 「ドラリュくん : 、といった。「遺伝研からの中間報告がはいるったのです。そして彼が純論理的に考えていたような存在がー・ーも ホモ・サピエンス

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ンをずらりとならべたパネル、テレックス、模型電送装置といった ーグ教授、医学部遺伝研のフランケル所長など数名、そして、局 4 ものは、すべて完備していた。この会議室は、また、国際通信特別長とリンフォード博士 : : : どうやら、前々から、サーリネン局長の 9 回線につながっていて、いながらにして、全世界の大学、全世界の影の〃ブレイン〃だった人たちがほとんどと見え、ぼくたちがおず 重要官庁と、即座に連絡がとれる。 この会議室の一廓が、そのおずと〃大会議室〃にはいっていった時には、もう黒板をかこん まま学長室になっていて、学長は、やろうと思えば、この大会議室で、四、五名の学者が何か議論をしており、それにサーリネン局長 の施設を、自分の部屋から利用できた。 もくわわって、しきりに何かまくしたてていたし、そのほかにも、 三人、四人とかたまって、話しをしていた。 世界各地の有名大学でも、これほど完備した会議室をそなえてい る所はなかった。 こんな″情報センター〃式の会議室は、今の ノーしオし力と思ってさが ほくたちは、その中に、ナハティガレよ、よ、 ところまだ、モスクワにもパリにもなくて、日本の、富士学園都市したが、賢者の姿はなく、そして会議がはじまっても、彼のあらわ に、これよりもうちょっと小規模のものがあるだけである。アメリ れる気配はなかった。 それにしても、集ったメンパーの顔ぶれ コムサット 力のベル電話会社と、—ee それに通信衛星会社が共同出資してでと、雰囲気のものもしさま、、 ~ しったい何事がおこったのかと思わせ インターナショナル・インフォーメーション きた、 ( 国際情報サービス ) の寄贈になるもので、今はた。キャンパスでおこった、いわば″ささやかな〃事件が、国際科 インフォーメーション・アンド・コ 押しも押されもせぬ、世界的—OA ーー・・つまり、情 報学警察局長を出馬させ、世連検察機構を動かし、世界連邦総裁をま ミュニケーション 通信デザイナーとしてから独立し、世界連邦本部、南極きこみ、そして、しずかな、一見牧歌的なのどけさにみちたヴァー ーシティ・タウン 開発本部、月日宇宙ステーションⅡ地球間などの、情報通信施設をジニア大学都市に、錚々たる世界の頭脳を急拠集合させるにいた デザインしたロッド・ ハリスンの、最初の仕事だった。 たとえ、 リやモスク : いったい、あの″事件みの中に 午後三時からの″秘密会議みには、ぼくたちサ・ハティカル・クラ ワにおける同種の事件と一連のものであったにせよ これほどの スの八名をふくめて、二十数名の人々が出席した。 頭脳と機構を、″極秘裡に″動員させるにいたるほどの、要素が、 いったいどこにあるのか ? サーリネン局長の妄想でなければ、 ぼくたち八名の″青二才をのそいては、テレビや、写真で知っ ている、錚々たる大学者や、名前をきいて、ああ、あの人が、と見いったい何が起りつつあるのだろうか ? なおすようなばかりで、ぼくたちは勢い、隅っこにかたまっ て、小さくならざるを得なかった。ー」・ロンドン大学の人類学の・ハ 会議は、最近の会議の通例として、開会の辞もなにもなく、い リイ教授、ケンブリッジ大学の生物学のドライエル博士、パリ大文なりはじまっていた。 サーリネン局長は、短かくヴァージニア 化人類学のランべール教授、その他ノールウェ ソ連の学者たちにおける事件の経過を報告した。メン・ハー各自の席のテーブルにく それに 0 のメン・ハ ー二名ーー・・これがヨーロッパ勢だつみこまれた、四面のヴーアーには、事件の要点が一目でわかるよ た。地元からはメイヤー学長、ヤング教授をはじめ、生化学のロンうにレイアウトされた報告書がうつっており、その上を、赤い光が テレフォン

10. SFマガジン 1968年10月号

S CDETECTOR でたあ 筒井康隆が『アフリカの爆弾』で再び直木賞 ( 第五た筑摩書房版に収録されていた四篇 ( アメリカ月世界 ES FROM BEYOND. 67 ・川村哲郎訳・同・ 2 十九曰Ⅱ四十三年上半期 ) 候補にノミネートされた探検隊が発見した月の生物は実はソ連探検隊たったと 7 0 円 ) は、ごそんし〈インべーダー・シリーズ〉の いう「月世界人」、無重力の人工衛星でハネムーンを第二巻侵入者のひきいる怪物群と、地球の生物たち が、予想通りまたしても見送りになった ( ) 今回は審査 むかえる「愛と重力」・自分が行なった超自然的な治が丁々発止と渡りあう第二部「同盟者」がひろいもの 員諸氏、どんな講評を楽しませてくれるか。 療を信じられないで悩む司祭の物語「奇蹟」、エネルで、なかなか読ませる。 ーズ』 (THE ギーを物質に変えようと試みた科学者たちがもたらし・・ラッセル『宇宙のウィリ 日本作家の短篇集が二冊 た〃あペこべのヒロシマの悲劇んを描く「 E 日 mc2 」 ) SPACE WiLLIES. SIX WORLDS YONDER, 福島正実『ロマンチスト』 ( 早川書房・ 3 3 0 円 ) に、新しく中篇「果てしない夜」 ( タイム・マシンで「 8 ・永井淳訳・創元推理文庫・ 210 円 ) は、徒手空 は、『ハイライト』『 TJ の夜』につづく、この 過去から来た男と未来から来た男がパリのテラスで騒拳、口先ひとつで敵の捕虜収容所から脱出してみせる ″のオニ″の三冊目の短篇集である幻世紀の大 ぎをまきおこす ) と小品「完全なロポット」「賢者の地球軍偵察。ハイロットのユーモア冒険談「宇宙のウィ ーマニズムの落し穴を描 津外航船の乗組員たちのヒュ ーズ」 ( 中糯 ) のほか、「ウェイタビッツ」「地球 支配」が加えられている。訳者もいうとおり、これら ーをはめ、電子挿花のお師 いたタイトル・ストーリ の作品は「科学に仮託した明確な寓意小説」であるの絆」「極秘指令」「二番煎じ」「完全犯罪」「ディアポ 匠さんの心の奥を覗きこんだ「花の命は短くて」、コ が、のひとつの方向を示す試みと受取ることもでロジック」の六短篇をおさめた、ユーモア集であ ン。ヒ、ーター時代における人間の主体性を問いかける きるたろう。なお『猿の惑星』の創元推理文庫版 ( 大るこの作者のものとしては、『金星の尖兵』あたり 「ラダイト計画」、未来ルボタ , ・ジ , 「東京二〇一〇久保輝臣訳・ 160 円 ) が出たが、これはフランス版より質が高く楽しめる 年」など二十の短篇と、「怪獣プーム考」「にお 原典からの翻訳である。 ける言語思想の欠落」など七つのエッセイをおさめて フィリップ・・ディック『太陽クイズ』 ()O LAR / ミスターの道」で、・ほくは ある。巻禾の「 / LOTTERY. 55 ・小尾芙佐訳・早川書房・ 270 雑誌《南北》に連載された稲垣足穂の『僕の〃ュリ それに 「めまぐるしく変貌する社会の中での人間 ーカ〃』が本になった ( 南北社・ 980 円 ) 。「星につ 円 ) は、すべてがクイズ機械によって支配されている 焦点をあて、〈未来ビジョンの、 : ッシング・リングを二十二世紀を舞台にした一種の冒険である。作者いて、天体について、無限について、生と死について ・ : 闇の彼方への思考を強靱に展開し、先駆者から錬 埋める〉作業に、作者は本格的に取組みはしめた」はこの娯楽小説で、例のゲーム理論の未来社会への = 「その路線は、期せずして、福島が育てた作家たクストラボレーシンを試みている。一応読ませる金術の時代を経て現代の先鋭の成果に至る〃天文学 ちの誰も手をつけていない処女地がカ・ハーす が、あまり成功作とはいえない。ヴァン・ヴォクトの史〃を考察しつつ自らのコスモスを現前する宇宙文学 べきであり、だけがカ・ハーできる空白を埋める役 ーですね ) のついた 『非の世界』を下敷にしているように思われるが、の傑作」という謡い文句 ( オー 割を果すことになりそうである」と書いた。ご参照い ド・・ノッタ ェッセーで、「彼らはいかにあったか」「 あの作品の持っていた活力はここにはみられない。 ただければ幸甚である ジャック・ウィリアムスン『宇宙軍団』 (THE ー宇宙模型」「 ( ップルⅡヒ = ーメーソン速度距離関 星新一『マイ国家』 ( 新潮社・ 320 円 ) は、十三 LEGION OF SPACE, 34 ・野田昌宏訳・同・ 3 係」「ロ・ ( チ = フスキー空間を施りて」の四部に分れ 冊目のショート・ショ ト集で、三十一篇が収録され 00 円 ) は、なっかしのスペース・オペラ〈宇宙重団ている。『一千一秒物語』の作者に関心の深い向きに ている。十三冊目ともなると、もうどう紹介して、 しいシリーズ〉の第一作である。三十世紀の太陽系守護部は見逃がせない著作だろう。なお《南北》 7 月号は、 のか、作品はあいかわらず新鮮なのに、評者の言葉の隊・宇宙軍団の若きホープ、われらがジ , ン・ウルナ足穂に関する小特集を組んでおり、作品年譜が便利 万がマンネリになってしまう。ともかく名人芸としか ーが、宇宙三銃士とともに、太陽系征服をたくらむ怪 いいようのない珠玉篇そろいで、・ほくには「ねむりう 物メドウサと戦うお話。「サイエンス・フィクシ , ン科学読みものでは、 Z ・コールダー編『二十年後の さぎ」「宿命」「雪の女」「マイ国家」「儀式」「いと呼ばれるこの新しい文学のす・ヘての読者と作家たち世界』Ⅲ (UNLESS PEACECOMES. 田・赤木 いわけ幸兵衛」「うるさい相手」の七篇がとりわけ楽にーーー拡大し増大する知識の宇宙に、神秘と驚異と冒和夫訳・紀伊国屋書店・ 450 円 ) が圧巻。未来編の しかっこ。 険を探り、ときには、科学が人間の生活と精神に及・ほ前提条件ともいうべぎ〃戦争は回避できるか〃という す多大な影響について、観察し、予測しようとする、問いかけのデータを提供したもので、核兵器、宇宙兵 翻訳が六冊。 ビエール・プール『 E Ⅱ m 象』 (CONTES DE これらの方々に本書を捧げる」という献辞がついてい器、海中蛾争、化学兵器、生物兵器、ロポット兵器、 L ・ ABSURDE. ・大久保和郎訳・早川書房・ 33 る。テレビの深夜劇場の楽しさであり、古めかしさは地球物理戦争、究極兵器などの各項にわたって専門家 が報告を行なっている ( ・イギリスの週刊誌《オ・フザー 0 円 ) は、『猿の惑星』や『カナシマ博士の庭園』で否めない。 ー》に連載中から話題になっていた論文集である おなしみのフランス作家の短篇集である。十年前に出キース・ローマー『宇宙からの侵入者』 (ENEMI- ・こ 0