「こ電気人間 いや、電波人間ーーー生体電気を利用し、強い生体電 し出される、遺伝研からの中間報告を鞭でさしながらいった。 の通り、ヘンウィック青年の身体構造は、どの部分をとってみても波発振器官をそなえて、不可視帯電波を、生きることに利用しはじ 数百ポルト、数アン。ヘアもの大電流を放電したり、蓄電したりするめた知的生物ーーーちょっと考えると、それなら、われわれ人類だっ ために、非常にうまくできあがっています。ーー内臓諸器官も、こて、おなじことではないか、身体器官として内蔵するか、道具や機 うう条件に適合するように、きわめて特殊化し、発達していま械として、外部におくかだけのちがいにすぎないではないかと思え す。ということはーーむろんほかにもたくさんの特徴がありますがるがーー・しかし、そんなアナロジイではすまないような、なにか不 これだけみてもわかるように、 ヘンウィック青年は、われわれホモ気味な予感を、ぼくはスクリーンにうっし出される〈中間報告〉か 冫。し力なるこ この新人類こま、、、 ・サビエンスの中から、彼一人だけが、突然変異としてうまれてきら、ひしひしと感じとっていた。 たわけではなく、かなり前から、ホモ・サビエンスの亜種、乃至はとが可能か ? 。、ネルを見ていたランべール博士がい 変種として、ホモ・サ。ヒエンスから分離し、その方向への進化の道「局長ーー・ーグラフィック・ / A 」、つ田つ ? ・ った。「修正パターンがおくられてきたようだね。 を歩みつづけてきた種族の一人であることをものがたっています。 ミスの 中南米地域は、コン。ヒューターの保有台数がすくないのに、 それから、脳、および中枢神経系統ですが それまで、クーヤの体の解剖パターンだったのが、この時突然、発生率が異様に高いような気がするが : たしかに : ・ほくたちは、グラフィック・パネルを見た。 ミナは思わず顔をそむけた。 クーヤの脳の実物がうつった。 「ごらんのように、大脳前頭葉は、きわめて特異な発達形状を見せンべール博士のいうように ています。頭蓋骨は、われわれよりずっとうすく、そのかわり、そ「〃電波人間〃が、一代きりのミ = ータントではあり得ないとする れなりにきわめて丈夫にできていてーーこのうすさが、外見上われとーーー〈ンウィック青年の同類たちは、この地球上のどこかに、大 ところでヘンウィック青年 われとかわらないのに、大脳容積を大きくし、かっ、こういった奇勢いる、と考えねばなるまいね。 は、たしか、、ポリヴィアの出身だったと思ったが : : : 」 妙な器官の発達をゆるしていたと思われます。ーーー・脳橋付近にも、 われわれにな性質不明の器官ができていますが・ー・ーこれと、後局長の顔に、サッと緊張が走 0 た。 と局長はヴィジフォー 頭部の頭蓋骨に、きわめて大量の金属がふくまれていることとあわ「重要な御指摘です。ランべール博士 : せて、今、ドラリ = くんからきいた、″生体電波通信器官〃の仮定ンのボタンに手をのばしながらいった。「さっそく、その方向でし いま、ドらべてみましよう」 をいれると、どうやら納得がいきそうな気がします。 ( 次号完結 ) ラリュくんの仮説を、遺伝研に知らせてやりましたから、これらの 正体不明の器官類を、その仮定のもとに詳細に検討しはじめている はすです・・ : : 」 20 ー
り原告、ロヅトにとって人間だと認められる人物に対する危害でとを余儀なくされたとすれに、かれが人間に有利な判決を行うのは しよう」 心条です」 「それならだね」とロ・ハ ートスンはいった。「もしあれが口をつぐ「人間は不可能なことをすることができる、とラン = ングはいっ んでいれば、ロボットに危害がおよぶことを説明してやれない た。「なぜならわれわれは人間の心理の複雑さをことごとく知りつ のかね ? 」 くしているわけではない、人間の心のなかで何が不可能で何が不可 「ロボットは人間ではありません、ロポット法第一条は、普通能でないかわれわれにはわかっていない。ところがロ求ットなら何 法と同様に会社を人間とは認めません。それにこの特別の禁止命令が不可能であるかわれわれは知っているのだ」 を解くことは危険です。命令をあたえた人間なら最少の危険でくい 「とにかくそれを判事に納得させるかどうかが問題です」と弁護士 とめられるでしよう、なぜならそれに関するロポットのモティベー はげんなりしたようにいった。 ートスンがうなるようにい ションはその人間に集中されるからです。それ以外の力法ではー 「しかし君の言葉通りだとするとーロバ った。「納得させられるとは思えんな」 ー」彼女はかぶりをふり、内心の昻ぶりをおさえかねるように、 「わたしはロポットを破壊してしまいたくはありません ! 」 「いずれわかりますよ。しかし当面の苦境を知り、それを認識なさ ラニングがその問題に水をさした。「イージイが告訴されているるのは結構ですが、かといってあまり気をおとされても困ります ような行為を犯すことはロポットには不可能であると証明するよりよ。わたしだってチェス盤の駒のうごきは数年先まで見こしている 仕方があるまい。われわれにはそれができる , つもりなんですからーとロポ心理学者に向って大きくうなずきなが 「そこなんですがね」と弁護人は当惑顔でいった。「あなた方にはら、「ここにおられるご親切なご婦人のお力を拝借しましてね」 ラニングは二人の顔をこもごもに眺めた。「そりやいったいどう それができる。ィージイの状態、イージイの心理状態の性質を証言 いうことかね ? こ できる唯一の証人はロポットの社員です。しかし判事はその証 言を偏見なしに受けいれることはできないでしよう」 だがそのとき廷丁がドアから首をつきだし息をかすかにはずませ 「専門家の証言を否認できるのかね ? 」 ながら、審理の再開を告げた。 かれらは着席し、この事件をひきおこした張本人を仔細に眺め 「その証言によって納得させられるのを拒否することによって。そ れは判事としての権利です。 = ン ( イマー教授のような人間が多額た。 サイモン・ニンハイマーは砂色の髮をふんわり生やした頭と、鉤 の金のためには名誉もかえりみない人間であるかどうかを判断する ために、判事はあなた方技術者の専門的発言を受けいれはしないの鼻ととがった顎と頬のこけた顔の持主であり、また、それがほとん です。判事もまた人間ですからな、つまるところは。もし不可能など耐えがたいまでの正確さを求める人間といった印象をあたえるの ことをする人間と不可能なことをするロポットのどちらかを選ぶこだが、話のなかで重要な言葉をいう前に必すといっていいほどロご 6
れたわけではなかった。三月三日、ラニング博士の最初の電話を受 「これは脳髄の陽電子バターンに組みこまれていて絶対に遵守され 0 けた瞬間から、かれは相手の説得に屈服したのを感じ、そしていまねばならないのです。第一条はロポットの存在の第一義であって、 5 不可避的な結果としてロポットと向いあっている自分を発見したのあらゆる人間の生命と幸福を擁護するという建前です」かれはロを である。 つぐみ頬をなでたのち、「これはできうれば全地球の人々に納得し 間近かに立っているそれは途方もなく大きくみえた。 てもらいたいことなんですよ」 アルフレッド・ラニングは鋭いまなこをロボットに注いだ。あた 「どことなく恐ろしそうな感じがする」 かも輸送中に損傷をうけなかったかどうか確かめるとでもいうよう 「そうでしよう。しかし外見はどうあれ、とにかく便利なものだと に。それからその猛々しい眉と白髮のたてがみを教授のほうへふり いうことはたしかですよ」 むけた。 「使い道がわからん。われわれはその点について話しあったが結論 「これがロポット号です、一般用に使えるモデルの第一号ではでなかった。ともあれわたしは実物を見ることに同意した、そし すよ . かれはロポットをかえりみて、「こちらはグットフェロウ教ていま現に見ているわけだ」 授だ、イージイ」 「ご覧になるばかりでなくもっとほかのこともしましよう、教授。 ィージイの声は落ちついたものだったが、教授がたじろぐような何か本をおもちですか ? 」 唐突な喋り方だった。 「もっていますよー 「ごきげんよう、教授 , 「ちょっと拝見ー ィージイは身長七フィート、標準的人間のプロポーションをそな グットフェロウ教授は目前に立ちはだかっている人間の形をした えているーーそれがロポットの売りものであった。それと陽電鉄の塊りに目をあてたまま腰をかがめた。そして足元の書類鞄から 子頭脳の特許権の所有がかれらロポットに関する実際的な独占権と書物をとりだした。 一般コン。ヒ = ーターに関する準独占権とをあたえているのである。 ラニングは本を受けとると背表紙を見た。 ロポットをコンテナから出した二人の男は外にでた。教授はラニ 「〈溶液における電解物質の物理化学〉。結構でしよう教授。あなた ングを見、ロ飛ットを見、それからまたラニングに視線を移した。 はこれを任意にえらばれた。このテキストは、わたしが指示したも のではありません ししてすね ? 」 「危険はないんですな」とかれはお・ほっかない声でいった。 「わたしより危険はありませんよ」とラニングがいった。「わたし「ええ」 ラニングは本をロボット N 号に渡した。 なら煽動されればあなたを撲るかもしれない。ィージイはそれがで きません。ロポット法三原則はご存知だと思いますが」 「ええそれはもう」とグットフェロウはいった。 教授は心なしとびあがった。 「だめだ、それは貴重な本なんだ」 0 、、
が出ていることを、不審に思う者はいない。 この建物自体がこの情ん、例外はありますがね。たとえば、個人がおのずから集団的であ る、一人の人間に大勢の人間が同居している、というようなばあい 報局のものなのだから。 ですね。だがこんなことはめったにありません : ・ : ・」 オフィスのドアから吹いてくる秘密めかしいにおいは、。ヒーター 一番おしまいの言葉はあいまいに鼻の下に消えたが、ほかの言葉 ・ブレイゲンの趣味に合っていた。いちばん鋭いそして本物の感覚 そういう状況は大衆の前で演説することに馴れている人のように、節まわしをみ は、人間が自分の名前を名乗らない方がいいという、 がもたらすものである、といつもおもっていた。だから、いまかれごとに、かるくかれのロをついてでた。 「まったくおっしやるとおりです、大佐 , は自分の名を名乗らないで、前もって謎のような表情をつくりなが ら、玄関の横の小さいドアにまっすぐ足をはこんだ。 。ヒーターは力をいれて答えた。そして〃それ〃に当ったあの運命 数秒ののち、ピーターは高速リフトで用のある階に飛びあがつの日にはじまる自分の体験を物語った。いまにしておもえば一連の た。キャビンは音もたてずにかれを一室にはこび、すぐ開閉壁の中事件において、かれにとってほんとの祝日は、カジノでの成功だけ であった。フロナ・メッソンのずるさ、ウオイノフとの衝突におけ に消えた。。ヒーターの目の前に、中年の男がすわっていた。 る敗北、恥ずべき逃走、国境でのあやしいできごとーー・ーそういった 「大佐ーー」 しいかけると、男はいすからすこし腰をうかし、ちらっと会釈しショックは、敵手アブラハムスとマロリーを消すという成功をもの としても、埋めあわせがつくものではない。 、 ~ しし / ノ て、すぐまたいすにもどり、ロばやこ、 「わしのことは大佐とだけ呼びなさい。それでじゅうぶんだ」 大佐は象牙のホルダーをみがきながら、だまってきいていた。 「わかりました、大佐」古なじみのようなうちとけた調子で、ピー 「するとあなたは同郷人が気の毒ではないのかね ? 」ふいに大佐は ターは答えた。そしてもう一つのいすを目でさがした。いすはみつきいた。 からなかった。そこで。ヒーターはすこし大きい声を出した。「わた「あんなやつらをだれが気の毒におもいますか ? 」ビーターはめん しはブレイゲンです」 くらった。「とくに、あの新聞記者ですよ。素手で立ちむかって、 くらか態度がかわったおあつらえむきに、弾丸に当った。あなたは新聞をお読みにならな 大佐はまゆをよせて、ビーターを見た。い ようである。ビーターはなにか当てがはずれたように感じたが、まかったんですか : : : 」 「ばかげた仕事だ ! だあわてなかった。 「つまり、あなたはご自分の才能を当方に提供なさった。それは賢大佐ははげしく口を入れた。声が無気味にかすれていた。ピータ 明なことです。こういう ーはおどろいて相手の顔をみた。顔はしかめつつらになっていた 大組織になると、局外の人は、それがひじ ように有能な人であっても、ついみのがしてしまうものですからが、大佐はすぐ気をとりなおした。 ね。汰躰局外者はその人人の能力によって評価されます。もちろ「ところでそのウィリアム・ヨリッシ = とかいう黒人はいまどこに 7
ュノ・カ まで、君が、被害者チャールズ・モーティマーくんの研究と、犯行 予期したほどの動揺は、一座にはあらわれなかった。 列席の学者の何人かの表情はこわばり、何人かは息をのんだ。 の性格から、〃犯人探知器のアイデアを思いついた経過を、説明 ・ほくらとて、今さらそのことをきかされたところで、それほどおしてあけてくれないか ? 」 どろきもしなかった。 この異常な事件に対するヴィクトールの強心臓では、ぼくらの仲間でも最右翼に列するヴィクトールも、 分析、クーヤの最期の時のあの異様な光景を見れば、クーヤがあた これだけ錚々たるメイ ( ーの前で一席ぶつ段になると、いささかあ り前の人間ではないということは、誰にもすぐ感じられたことた。 しゃべりはじめると、すこしどもっ がって、顔が赤くなった。 しかし、精密な、分析解剖をうけて、その結果をつきつけられる さいわいなことに、彼がアドルフに最初のアイデアをしゃべ ク と、やはりかなりなショックではあった。ーーー染色体数ー った時、それから・ほくをテストしたあとでふるった長広舌が、テー 、・ほくたちと同じ人類ではなかった ! 彼はーーーもし、 プに残っており、小まめなアドルフが、それを整理編集してあった。 その染色体数異常が、彼一人の畸型的なものでなかったら : : : 彼そこで、彼は、しゃべるかわりにそのテープを流しながら、要所 は、〃新人類〃の一人なのだー 要所を補促した。ーー最初、若い学徒の″推理を、ほほえみなが 「ちょっとーーーサ ーリネン局長 : : : 」フランケル博士の言葉を、まらきいていた大学者たちも、途中から、はっきりと興奮の色を見せ るできいていないみたいに、グラフィック・パネルの、点をうたれはじめた。中でも、とりわけはげしいおどろきの色を見せたのは、 た世界地図に見入っていた、ランべール教授が、ぼつんといった。 フランケル所長だった。 「あの地図の上の点は , ーー発生地点をしめすだけですかな ? 」 「まってくれ ! ーと、所長は、興奮して、太い指をパシッー ッ なるほど : : : そいつは気がっかな 「そうです」と、。ハネルをふりかえりながら、局長はいった。「な と鳴らした。「そうか ・デテクティヴ にカ ? 」 カったたがーーー君は、ほんとにいわゆるべ 「なんとなく : ・ 。あで、犯人が″電波人間〃であることを、つきとめたのかね ? ・ーーチ : 地域がかたよっているような気がするが れを、その地域のコン。ヒ = ーター保有台数に対する、事故発生のわャーリイという学生は、こういうことを予期しないで、そういう人 り合いで修正して、表示しなおすことができますかな ? 」 間について研究をしていたのかね ? 」 「できます。ーーやらせてみましよう 「・ほくの場合は、ある程度、事実の総合、によって、犯人の姿をう き。ほりにすることが可能でした」ヴィクトールは、上気した頬でい そういって、局長は、卓上ヴィジフォーンで、ニューヨークの— った。「しかし、チャーリイの場合は彼は、純粋な抽象思考によっ O アメリカ本部をよび出すと、こちらの意向をつたえた。 「五、六分で、修正したパターンがおくられてきますーそ ういうて進化の可能性を検討しているうちに、そういう形の人間の存在し と、局長は、・ほくたちのかたまっている方をむいて、 得るーーあるいは出現し得る可能性というものを、描き出すにいた円 「ドラリュくん : 、といった。「遺伝研からの中間報告がはいるったのです。そして彼が純論理的に考えていたような存在がー・ーも ホモ・サピエンス
なと命令しなすった。その命令はイージイの内部のポテンシャルをか。あれはあなたを告発するためではなく、あなたを弁護するため 沈黙の方向にセットアップしました、それはそれを破ろうとするわだったのです ! かれがあなたの罪をかぶろうとしたこと、あなた れわれの努力に対抗する十分な力をもっていたのです。もしわれわはあれに関係ないのだと否定しようとしていたことは、数値的に示 れがそのまま押しきればかれの頭脳はこわれてしまったでしよう。 すことができます。ロボット法第一条がそうすることを要求したの しかし証人席のあなたはご自分でより高いカウンター・ポテンシです。そのためにかれは嘘をつきーー自分を破減させ・ーー会社へ金 ャルをおっくりになった。あなたは、あの本の問題の箇所を挿入し銭的な損害をあたえることを辞さなかった。それらはあなたを助け たのは、ロ、ポットではなく自分だと世間の人は思うだろうから、自るという目的のもとには価値のうすいものだったのです。もしあな 分は仕事より大切なものを失うだろうといわれた。名声や地位や尊たがほんとうにロポットとロポット工学を理解なさっていれば、か 敬や人生の目的を失うだろうと。自分の死後、自分の名は埋もれ、れに喋らせるようなへまはなさらなかったでしよう。だがあなたは 人々の記憶から失われてしまうだろうといわれた。こうしてより高理解しておられなかった。わたしにはその確信があったので、弁護 い別のポテンシャルが、あなたご自身の手でセットアツ。フされた士にもそう請けあったのです。あなたはロ、ポットへの憎悪に目がく それでイージイは喋ったのです」 らみ、イージイが人間のように行動し、あなたを犠牲にしても自分 「おお、なんということだ」・ニンハイマーは顔をそむけた。 を弁護するだろうと思ったのですね。そこであなたは恐怖のあまり キャルビンは容赦しなかった。「なぜかれが喋ったかお判りですかれをどなりつけーーあなたご自身を破減させておしまいになっ た」 円 「いまにあんたのロポッ ニンハイマーは憎しみをこめていった。 、と思う」 トがあんたに刃向い、あんたを殺せばいし 価「馬鹿なことをおっしやるものではありません」とキャルビンはた しなめた。「さあ今度はなぜあなたがあんなことをなさったのかう 売力がいましよう」 発 ニンハイマ 1 はそっとするような歪んだ笑いをうかべた。「あん 国 ぐしこ、わ 全たの知的好奇心のために、偽証の告訴を免除してもらうネー ま たしの心を解剖してみせなければいかんのかね ? 」 「何とでもおっしやって下さい」とキャルビンは無表情にいった。 「説明して下さい」 「そうすれば将来アンチ・ロボット攻勢に対してもっとうまくたち SFM 1968 夏の臨時増刊号 特集 0 大宇宙を馳せる / シネラマく 2001 年宇宙の旅 > 原作 宇宙のオデッセイ / クラーク 協力せよ , さもなくば / ヴォクト わが名はジョー / アンダースン ジャックポット - / シマック ほか小説・読物を満載 / ■ 5 7
眠薬を飲んでぐっすり眠るんだ。車にまかせておけばまちがいな「家へ帰れば、かかりつけの医者が来てくれる。力になってもらえ 。わかったかね ? 」 たら恩に着る」 「ぼくを逮捕しないのか ? あんたは警察の人間だろう ? ぼくは真剣な表情だった。「急ぎの用事でもあるのかね ? 」 罪を犯したんだぜ」 「べつにないが : : : 」 生田はおどろいたようにいった。青白い顔が。ヒク。ヒクひきつって そこへ警察車が通りかかった。這うようにスビードを落して、車 の窓から警官が呼びかけた。 「どうしろというんだ。。 ふちこんでほしいというのかね ? 」 「なにかあったのですか」丁寧な口調だった。生田に声をかけたの 「こんな車に乗っているが、ぼくはただの人間だ。ぼくを特別扱い だが、警官の服は疑い深げに私の顔を睨んでいた。生田は頭を振っ こ 0 にしないでくれ」 私が生田にはっきりと興味を感じたのは、この一言だった。彼の 「いや。友人と話をしているだけですよ」 睡眠不足でやつれた顔には、明確に贖罪意識があらわれていた。 警察車はゆっくり走った。警官は首をねじまげて執念深く私を凝 「警官として、義務をはたせというのか。しかし、あいにくだが、視していた。 私は警察の人間じゃない。あんたを告発する証拠もないし、その意「家まで送 0 て行こう。どこに住んでいるんた ? 」 志もない。あんたがカン・ハ ーランド家の娘と結婚している人間だか「ローレル・スプリングス : : : 」 らじゃないんだ・せ。同じあやまちを何度もくりかえすような人間に 私は自分の車に場所を教え、尾いてくるように命じておいて、生 は見えないからだ」 田の車に乗った。まさに女王の品位を持った車だった。こんな車に 「・ほくがカン・ハ ーランドの娘婿たとわかってたのか ? 」 とっては、手動で動かされるのは侮辱にちがいなかった。 「カン・ハ ーランドは億万長者だからな。知りたくなくても、自然に 「まだあんたの名まえを聞いていなかった : : : 」 お・ほえるのさ。では、さよなら。車をだいじにしたまえ。その車は 生田の表情はさらに病的になっていた。意味もなく痩せた指の長 女王のようにあっかわなきゃいけない」 い両手を動かしていた。どう扱っていいかわからないといったよう 私は自分の車にもどりかけた。 「待ってくれ」と、生田が呼びかけた。 「アーネスト・ライト」と、私はいった。 「頼みがあるんだが・ : : ぼくといっしょに来てくれないか。ひとり「どんな仕事をしてる ? 」 で帰れそうもないんだ。助けてもらえたらありがたいんだが。歩く「失業中なのさ , 力も残ってないんだ」 「仕事を探してるのかね ? 」 「医者のところに連れて行こうか ? 」 「いすれ、そのうちにね」 4 2
飛躍的断定をすることを許してくださるの結果も、その推理を支持するようです。とにかく、ヘンウィック し、今の段階で、こういう 青年の体内には、筋肉や、内臓の一部を変化させた、デンキウナギ ならばーーー実際にいたのです。それも彼のすぐ傍に : やシビレエイのような、かなり大容量の蓄電器官があったようで 「新人類の出現の可能性と、その考え得るパターンの考究などとい おそらく彼は、筋肉の運動につれて う学問の〃遊び〃は : : : 」ャング教授が、愛弟子に対する哀悼の意す。それも相当発達した・ : をこめたような沈痛な声でいった。「要するに、彼や、彼らのよう発生する電気も蓄電できたでしようし、また、電線などにさわっ な、若い学生たちの〃頭の体操〃の一種であり、〃思考の遊び〃だて、充電することも可能だったでしよう。それ阜ーー絶縁性の高い ゴム靴をはいて、化繊の衣服を着ていれば、その摩擦たけで、相当 しかし、彼がその抽象的可能性に と一般に思われていました。 ついて考えついた時、実はそれが、遠い未来において、実現される量の電気を発生蓄電することができたでしようね」 それで、クーヤはいつも、あ かも知れない、といった呑気な話ではなくて、すでにわれわれのすそれでーーと、ぼくは思った。 人間の推理力や想像力の方ついゴム底の靴をはいて、音もなく、猫のように歩いていたのかー ぐ傍に、出現していたのですね。 それでーーー彼の最後もよくわかるような気がした。あるいは、 が、事実におくれていたわけです」 覚悟の自殺だったのかも知れない。彼の死んだ今となっては、たし 「ですが、そう断定することは、まだ尚早ではないでしようか ? 」 かめようもないのだが、最後に警官を、電撃によってはねとばして 生物学のドライエル博士が、半信半疑といった表情でつぶやいた。 「彼ーーーヘンウィック青年が、実際に〃電波をあやつることのでしまったあと、すっかり放電して、からっぽになってしまった体内 きる、新種の人類である、ということが、直接的に証明されたわけ蓄電器に、充電しようとして、あやまって高圧側にふれた、という ではないでしよう ? ドラリュくんも、せつかくの〃検出器〃で、 ことも、充分考えられることである。そして ぼくは、突然妙なことを思い出してしまって、なんとなく、襟も 彼の出している電波を検出したわけじゃなし : : : 」 ゅうべ、フウ・リャンが、酔っぱらってし 「いや , ーー・それは、検出されたんですーとデイミトロフが口をはさとがそそけ立った。 んだ。「ぼくとアドルフは、あのさわぎがあった時、現場へ検出器やべったが、彼女がクーヤに惚れて、くどいた時、クーヤはいった 〃ぼくに惚れると危険だよみと : をもち出したんです。ーーー指向性アンテナで、彼の出している電波らしい。 は、はっきりキャッチでき、記録もしました。数キロサイクルかんな〃人間発電器″を相手に、セックスなどした日にはーー・そりや ら、数メガサイクルまで、非常に幅のひろい変調が、彼には可能だ 〃しびれる〃かも知れないが、へたをすると一命をとりおとす。 ったようです。それにーーーあの ()5 〃ロポットに〃指令〃を出そのことを、となりのフウ・リャンにそっと耳うちすると、彼女 したものと思われる部分も、記録されています」 は、最初は赤くなって、ぼくの腿をつねったが、次の瞬間、気がっ いたと見えて、まっさおになった。 「それから ・とフランケル所長は、アイドホールスクリーンを 指さした。 T 今ここに、中間報告が送られつつありますがーー・解剖「それから・・ーー」とフランケル教授は、アイドホールで次々にうつ こ 8 2
「スパイデル ! 出てきたのかね ? 」 学会ではたつぶりと弁明を用意しておいたほうがいいそ ! 」 「いやちがう。いまカリーブランドだ」ス。ハイデルの声はわなない 「スパイデル、聞いてくれーー・」 ていた。 だがスパイデルはすごい勢いでスイッチを切ったのでプレイトの 「で、なぜ電話を ? 」 残像が十五秒も輝いていた。 「君の新刊を拝見したところだ、ニンハイマー、君は頭がおかしい ニンハイマーは問題の本を読みながら赤インクでアンダーライン のかね ? 気がちがったのかね ? 」 をひきはじめた。 ィージイと再度対面したかれは感情を明らかにおさえていたが、 ニンハイマーは顔をこわばらせた。「何か おかしな唇は蒼白だった。問題の本を手わたしながらかれはいった。「五六 ところがありますか ? 」かれは驚いたように訊ねた。 二頁、六三一頁、六六四頁、六九〇頁のアンダーラインの箇所を読 「おかしなところだと ? 五六二頁だが、ぼくの論文をあんな風にんでくれないか ? 」 曲解するとはいったいどういうつもりかね ? 犯罪者的性格は存在ィージイは四度、警見した。「はい読みました、ニンハイマ 1 教 せず、真の犯罪者は法律を強要するものだなどという主張がわたし授」 の論文のどこに書かれているのかね ? ここだ、ちょっと引用する「これはわたしの原稿とはちがうね」 「はい、教授、ちがいます」 「待った ! 待った ! 、とニン ( イマーは叫びながらその頁を探し「君がこう書き変えたのだね ? 」 た。「ちょっと待ってくれ ! ちょっと待って : : : 何ということ「はいそうですー 「なぜだ ? [ 「それで ? 」 「教授、あなたの原稿のこれらの部分は、あるグルドプの人間にと 「ス。ハイデル、どうしてそんなことになったのかわからん。わたしってはなはだしく礼を失しています。かれらに危害をおよ・ほすこと はこんなことは書かぬ , を避けるためには書き変えたほうが望ましいと考えました」 「しかし現に印刷されているではないかー しかもこの曲解は最悪「なぜこんなことをした ? 」 のものではないのだ。六九〇頁を見たまえ、イベイティフの発見に 「ロポット法第一条は、人間に危害をおよぼすこと、またその危険 ついて君がやった焼き直しをかれが読んだらどうなると思う , ニを石過することによって人間に危害をおよぼすことを禁じていま ンハイマー この本はこういうたぐいのたわごとばかりで、さつばす。社会学界におけるあなたの名声を考え、またあなたの本が学者 りわけがわからんしろものだ。どういう魂胆かは知らんが とにの間に広く読まれることを考えますと、あなたが言及された多数の かくこの本はマーケットからしめだすより仕方あるまいな。今度の人間に対しかなりの危害が及ぶものと考えられます」
にしろ反訴はなさらないでしようね。あなたが偽証罪で刑務所へ送侮蔑をこめて彼女を見つめた。 られることのないように、わたしどももできるだけのことはするつ彼女は動じない。「単にそう見えるだけですわ、ニンハイマー博 7 もりです。わたしたちは復讐者ではありませんから」 士。二十一世紀の人間のことをほんとうに心配するなら、まずロポ 「ああそれでわたしは偽証罪で拘留されなかったんですね ? 不思 ットのことを心配しなければなりませんよ。あなたがロ、ポット工学 議におもっていた。しかし」とかれは苦々しけに、「なぜあなたは者ならおわかりになるんですが。 復讐しなければならんのだ ? ほしいものは手にいれたろうに」 「ロポット工学の本はたくさん読んだが、ロポット工学者だけには 「ほしいものの一部だけ」とキャルビンはいった。「大学は前より なりたくないとっくづく思いましたな ! 」 はるかにいい値段でイージイを雇ってくれるでしようね。それに今「おやロポット工学の本は一冊しかお読みにならなかったんでしょ 度の訴訟が隠れた宣伝になって、さらに新しい型をこうした悶着を そんなことで何がわかるものですか。あなたは、ロポットにい くりかえさずに他の研究機関に送りこむことができるでしよう ろいろなこと、たとえば本を改竄するようなことも、適宜に命令を 「それでわたしに逢いにきた ? 」 あたえればできるのだということはおわかりになった。人に知られ 「ほしいもののすべてが手に入ったわけではないからです。わたしぬように、あることをまったく忘れろとロポットに命令することは はなぜあなたがあれほどロポットを憎んでおられたかその理由を知不可能であるけれども、黙っていろと命令することは可能であると お思いになった。それは間違いでした」 りたいのです。この訴訟にお勝ちになってもあなたの名声は傷つい たでしようね。あなたが手に入れる金もそれを償いはしないでしょ 「あんたはかれの沈黙から真実を推測したのだな」 う。ロ、ポットに対するあなたの憎悪が、ああした行為にあなたをか「推測ではありません。あなたは素人でいらっしやるから、ご自分 りたてたのですか ? 」 の意図を完全に隠すことができなかったのです。わたしの唯一の問 「人間の心にも興味がおありですか、キャルビン博士ーとニンハイ題は事実を判事に証明することでした、あなたは軽蔑なさったロポ マーははげしい侮蔑をこめていった。 ト工学に対する無知から、御親切にもわたしどもを助けてくださ 「ロポットの福利におけるかれらの反応に関する限りにおいてありる羽目になりましたわね」 ますね。そのために人間の心理学も少々学びましたよ」 「この話し合いには何か意味があるのかね ? 」とニンハイマーはう るさそうにいっこ。 「わたしをトリックにかけるぐらいだから充分でしよう」 「あんなことは別に難しいことではありませんよ , とキャルビンは 「わたしの方にはございます , とスーザン・キャルビンはいった。 もったいぶらすにいった。「難しいといえば、イージイに危害をあ「あなたがロボットというものをまったく誤解していらっしやるこ たえないようにすることでした」 とをわかっていただきたいのですよ。あなたはイージイに、あの本 「まるで人間より機械の方が大事というロぶりだ」かれは猛々しい の改竄についてだれかに喋ったら、自分は仕事を失うのだから喋る