イスナード - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1969年2月号
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1. SFマガジン 1969年2月号

だした。ラタンボル 2 の父親は、惑星ザミーンの宇宙軍で 7 の階級 6 インファント・スター誕生 にあったが、テラ星と戦ったプロクシマ戦役で死亡している。だか 2 「インファント・スター」と言って大気が広く拡がっている。このこと ら、この青年がテラ星占領に狂喜しているのも、うなずけないこと ( も、テレビや映画の子役タレントの から、この形の星は、まだ平衡状態 ではない。 ことではない。 つまり、 0 引 ここに言うのは、正にまで達していない 真正銘の「幼児の星々」っまり、生星よりもさらに若い星、だと考え だが、イスナード 6 は、無慈悲に青年を追いたてた。 れて間もない星々のことである。 られている。 「ラタンポル 2 、命令を実行しないのか ? 」 昔の天文学では、宇宙の星は大昔 天文学者たちは、この OCQ 星とウ 一度に生成され、以来それそれに進ルフ・ライエット星がどこからどの をし半りました」 化してきたもの、とされていたが、 ようにして誕生するのか、を知りた 青年士官は、夢から覚めたような顔つきで敬礼し、司令室を出て 現代の天文学では、星は今でも、次がっているのである。もちろん、あ から次へと生れてきているもの、と る程度の見当はついている。 . しュ / 考えられている。 星と星との間の空間に、或いは星 イスナード 6 は、暗い気持だった。今後の占領行政のうえで起こ しかし、その誕生率は昔ほどに高星をも包みこんで、ごく稀薄なガス たん くはない。今では我々の銀河系で年の雲が、いたるところに認められ るのであろう、不愉快な出来事の数々を考えると、ひとりでに暗澹 に一「三個ずつ新らしい星が生れてる。これらの雲は、主として水素原 とした気持になってくる。 子から成り立っているから、それが 黜来ているもの、と考えられている。 では、そんな星は、どんな所から発する波長二十一センチの電波を巨 総司令のムラドベイ 8 をはじめとして、士官や高級将校のほとん どのような過程を経て生成してくる大な電波望遠鏡によってキャッチす ど全員が、惑星テラについて無知に等しい。もちろん、惑星テラの ることによって、その分布や、密 のか ? 例えば、星と呼ばれる一群の度、温度、移行速度などを決定する 地理や工業力などについての知識が、まったく不足しているわけで おとし 星がある。これらの星は、太陽の約ことができるのだ。 そうした測定の結果、これらの雲 。ない。だが、それらの知識は、惑星テラを故意に貶めるための文 百借の質量と、約百万借の明るさを うの は、銀河系の中心から大きく彎曲し もち、太陽の約百万借の速さで内部 書や宣伝文などから、そのまま鵜呑みにして仕入れたものである。 の燃料を消費するため、全燃料を燃つつ四方に伸びる大きなラセン状の 腕の形に分布していることが判明し かれらのなかに、惑星テラの住民を個人的に知る者など、かれ自身 やしつくすまで約百万年の期間しか ない。これに対して太陽は、その内た。このラセン状の腕というのは、実 を除いては一人として見当らなかった。 は「腕」と言うよりも「オビ」と言 部の燃料を ( 水素原子四個をへリウ 敢えてそういった人選に基いて惑星テラ派遣軍を編制したのは、 った方がよいくらいで、幅が広くて ム原子一個に変える核融合反応で ) 使い切るのにほぼ百億年かかる予定薄く、その切断面は幅六〇〇パーセ 惑星ザミーンの首長シカンダル川の故意であったかも知れない。惑 ク ( 一・ハーセクは三・三光年 ) 厚さ で、現在すでにその半分ほどを使い 星テラをよく知る者は、すでに敵星同調者として公職から遠ざけら 一五〇。ハーセク程度である。 切ったところだからそれにくらべて 銀河系の星の多くはこの腕の中に 冖生れてから百万年たっていない れているような有様だった。 集中しており、その他の星も、それ 星ははるかに若い星といえる。 またウルフ・ライエット星とよばを中心にして分布している。我々の 派遣軍の人選にシカンダル川の作為が加わっていることは、さき れる一群の星は、明るさも表面温度太陽系も、このような腕の一つの内 ほどの士官ラタンポル 2 を見ても明らかだった。あの青年のよう 側の端に位置しているのだ。 も OQ 星と非常によく似ているが、 このごく稀薄なガス雲こそ、星々 ) その周囲にかなりの騒擾状態にある に、父や兄弟を失った者の名が、身上調書に多く見られる。当然、

2. SFマガジン 1969年2月号

次の瞬間、その男の姿は消えうせ、ベトンの上に両手をあげた男のを越えるだろうが、今とな 0 ては、その人たちの身の上にも、ここ と同じ変化が起こっているに違いない。 死の影が、どす黒く刻印されていた。 その他の九十九・九パーセントにの・ほる人々は、自動供給機構を イスナード 6 は、呆然として立ちつくしていた。 持っドーム都市のなかで、あらゆる生活を保障されている。かれら は、異星人の占領下においても、ぬくぬくと生きていけるだろう。 6 アストロゲーター だが、宇宙を翔けることに全精力をそそいできた航宙士にとっ 地球人の航宙士が監禁されたのは、地下二十四階の倉庫のなかて、退屈きわまりない幽囚の生活は、死にまさる苦痛に違いなかっ だった。ここには、予備の核発電炉が置かれていたことがある。こた。かれらは、天翔ける無頼の狼。決して平穏無事な生活を甘受で きる人々ではなかった。 のプロックは、もともと居住区として造られたものではないから、 かれらの憤懣は、あの憎むべき敵ザミーン星人に向けられ、やが 幽閉された人たちは、しだいに不満をつのらせるようになった。 ポリスチール 周囲の壁には、重合鋼の支柱が露出して、装飾の影すらも見あたて矛先を転じて、ザミーンに追従し、易々として占領を許した副盟 主グランストンに及んだ。かれらの大多数は、徹底抗戦を叫んでい らない。じめじめした床は、凹凸の激しい打ちながしのコンクリー た人々である。グランストンの説得によって抗戦を断念したもの トのままで、ほとんど排水設備すらない有様だった。高い天井に は、かすかな明りがともっているだけで、その光さえも、支柱を結の、その結果かれらを待ちうけていたのが、地底の地獄の生活だっ びあわせるケしフルやワイヤーのため、ややもすれば遮られがちでた。 ある。 まっさきに、グランストンに対する不信を表明したのは、ヤン・ ポリスチール このプロックは、使用されなくなってから、すでに半世紀近い星ホルバイン老人だった。年老いたサイボーグ航宙士は、重合鋼の支 よこげた 霜を経ている。滲出する地下水に浸された半分近い部分は、とても柱のあいだの横桁にとびのり、叫びはじめた。 アストロゲーター 居住できそうもない。幽囚の航宙士が身を寄せあっていたのは、 「わしは、グランストンの優柔不断には、とても我慢できん。なる かって予備核炉がすえてあったという架台の部分だった。 ほど、星間連合軍と戦えば、われわれの多くが傷つくだろう。ある この地底の牢獄は、中世の強制収容所を思わせる陰湿な場所だっ いは最悪の場合には、反陽子弾の攻撃を受けた地球は、新星のごと こ。 く砕けちるかも知れぬ。だが、もし、わしの手に反陽子弾を搭載し 全地球百億の人口のうち、この宇宙市に住んでいる人間は、僅かた宇宙船団を預ければ、同時に惑星ザミーンをも新星にして見せよ 一千万人にすぎない。その一千万人のうち、地上要員や生産要員なう。たとえ、地球人類の九十九パーセントが失われようと、あの 5 どを除いた生粋の航宙士は、五万人足らずであろう。もちろん、時、憎むべき青面鬼と戦うべきであった。グランストンは、太陽の アストロゲーター 地球上各地の宇宙基地にいる航宙士を加えれば、その総数は十万光にも腰をぬかす、臆病なモグラモチに過ぎんのだ。もし、わしが アストロゲーター ポリス ログ・ウルフ