火星人たちは小声で躡き合った。トライヤ 1 は手を拡げた。 「ナニスルカ ? 」 その火星人たちは一人として絵の意味が分らなかった。突然トラ イヤーは顔を輝かせて家を出ていった。そしてポール遊びをしてい ケネディは手に汗をかきながら、これが最後の絵になるといいと た子供を連れて帰ってきた。少年の姿を見ると、火星人たちはお互思いながらーー新区画が生まれてくる絵を描いた。そこから指カ線 いに頷き合った。 が、建設の奇蹟の源へ発しているのを描いた。 子供は絵をじっと見つめたが、肩をすくめ、床にポールをはずま「機械た」ケネディは囁いた。「町の一画を造り出せる機械は「ド せながら、火星人の言葉の、鈴の鳴るような調子でまくしたてた。 】クとドークの宇宙船を破壊するに充分な武器と力を造り出すこと はっきりしたニュアンスをもっ鈴の鳴るような調子は、非常に鋭敏もできるはずだ。機械はどこにあるのだ ? 」 間近に迫った敵をたおすために、自分の目で見た奇蹟にからむ巨 で、人間の耳では聞きとることができなかった。火星人たちは耳を 傾けていたが、ケネディを振り返った。その火星人たちの眼の色で大なエネルギーを使うのがケネディの計画だった。 「機械 ? 」トライヤーの声は言葉の意味をとりあぐねていた。 よく分ったということをケネディは知った。 ンナ機械 ? 機械ナイ」 「あの連中に分らなかったのに、子供が分っちまったんだ」と、ケ 「機械がないって ? 」ケネディはしわがれ声でいった。心の底でト ネディはぶつぶついった。ひどく居心地が悪かった。 「助ケテ」トライヤーが舌の上でその言葉をころがした。トライヤライヤーが嘘をついているに違いないと思った。機械がないはずは ーは今、その意味をさとり、ショックを受けたのだ。その顔には苦ない。たぶんトライヤーはケネディを追い立てている強制がどんな 痛の表情が浮んでいた。火星人たちが、その本筋の意味から、捕捉に強いものであるか理解できなかったのだ。 そこでケネディは最後の絵を描いてみせた。そこではドークがナ 的な第二義的な意味へとたどって、関連した意味合いをつかもうと その言葉を調べているのがケネディに分った。もし、誰かが危険にイフを握っていた。しかし今、そのナイフは子供の喉元に向ってつ さらされており、助けが必要ならば、もし誰かが、危険に遭遇してきつけられているのだった。 いるなら、それは何かが誰かを脅かしているからだ。何がケネディ 絵が残酷でメロドラマチックだったので、ただの絵というより を脅かしているのか ? も、いきいきしたものだった。そしてそれは意味を誤解されないよ ケネディは、ドークとその宇宙船の絵を描いた。ケネディはドー うに、ひどく程度の低い表現をしていた。その基本になっている考 クにナイフを握らせ、一方に、ナイフに脅かされているケネディ自えは、死というもの、ナイフというもののむごたらしさだった。絵 身の絵を描いた。火星人の子供はおびえたようだった。しかしケネを説明する火星人の子供の声は、夜中に目を覚して恐しさのあまり ディはこの絵も説明した。火星人たちは少なくとも、ドークがケネ鳴いている、脅えた小鳥のように哀れを誘う響きがあった。子供は ディを、そして自分たちをも脅かしていることを理解した。 その意味があまりにもよく分ったのだ。子供の静かなすすり泣きの
ていたカービン銃に目を向けると、かれの問いかけた意味内容が了「ああ、それは冠詞というものだ。おまえの言うことはだいたい察 解できたらしかった。 「イヤ、射タナイ。キミ ( 死ナナイ。キミプしがつく。それにしても、英語には不慣れなようだが ? 」 その生物は、もういちど奇妙なふうにかれの顔を見つめた。 ・射チ : : : コロシハ・ : シナイ」 「ソレハ一部分ニスギナイ」とっぜん、言葉が継がれた。「モット そいつはありがたい ワーナーは皮肉つぼくひとりごとを言っ た。ついでにその銃を棄ててくれれば、もっとありがたいんたが。総体的ナ意味デダ。ヒトッノ、ソノ、イヌ、ジ = ウコウイウモノ 「ソウ力」幽霊はそうこたえると、向きをかえ、注意ぶかくカービヲ何ト呼・フノダ ? 」 「言葉というものだ」しばらく首をひねっていたワーナーが、やっ ン銃を幹に立てかけてから、さらに一歩二歩あとずさりした。「サ ア、ココへ 」その言葉とともに、指が伸びて、ワーナーの隠れと口をひらいた。 「コド・ 「ソウ力、コト・ハ力。ロッテクレ : ハ」と、幽霊は言った。 ている樹木の前面を指し示した。 : ワタシニ・ : : ・話シテクレ : ・コト・ハヲ知リタイ」 「でてこいといのか ? 」 ワーナーはほんの一瞬だけ、幹に立てかけられてあるカービン銃 「出テキテホシイ」 ・ : これならひと飛びで手 ワーナーは熟慮した。このおそるべき生物の能力について、何ひへ目くばせした。一五から一六フィート : が届くかも知れない。しかし、よしんば手が届いたにしても、わず とつ見当がっかないとは言え、そいつがどうやら人間らしいことー ーすくなくとも、そいつの隙をつくことぐらいならできそうな、人か一秒以内に銃を握る必要がある。 「銃ニサワルナ」と、幽霊がいった。 間らしい弱点を備えていることには確信があった。だから、もしか ワーナーは、思わずニャリとした。「なんてことだーーおまえ ( しつかは相手のう れが長ながと会話をかわしつづけていられれ・よ、、 は、人の心が読めるんだな」 しろへまわって、あのカービン銃を奪い返す機会がめぐってこない とも限らない。そうなれば、二つにひとつの道ではあるが、とにか「ヨメル。ワタシハ聞キーー・見・ーー・読ム。ココロヲ、ソウダ。ワ 」か くこの悪夢に決着をつけることができるだろう。かれは立ちあがっタシハココロヲ読ム。キミノココロヲ。キミハ・ れはワーナーの顔を見つめた。「キミガカンガ工、ワタシガ読ム。 ソウダ」 : デキナイ・ : : ・銃フトルコト : ・ 「キミニハデキナイ。キミニハ・ 「テレバシーか ? 」ワーナーは相手に教えこむような口調で問い正 : ソノ銃ヲトルコトハデキナイ。ヒトッノ、ソノ、イクッカ / コウイウモノヲイヤ、コウイウモ / ハ」と、幽霊がいった 「ソウダ、テレ。ハシーダ。キミガ送リ、ワタシ : : ワタシガ 411 」 ウイウモ / ハ何ナノダ ? ナニヲ意味スルノダ ? 」 「受けとると言いたいのか ? 」 「何だって ? 」 「ソウダ。キミガオクリ、ワタシガウケトル。ワタシガオクリ、キ 「ヒトッノトカソノトカ言ウモノダ」 9
宙』 LIVING というサインがある。 ( カット参照 ) SPACE とい また、ヘルメットつきの方は、その集音マイクらしきものの下に 宀 う作品の絵だ入っているのたが、縮写されるとはたして判読できるかどうか ? 画 が、どうやら 一九五六年三月号の表紙の老人も、インストルメント・カフをつ ュ シそれほど環境けている。サインはカイハスのヘリの下部にある。これはクリフォ ム はきびしくな ード・シマックの『宇宙のヴァン・ゴッホ』 THE SPACEMAN'S 工 いらしく、手 VAN GOGH という作品を扱っている。老人の名はルーベン・ク レイ。銀河系の惑星を次から次へとさまよいあるいて、すばらしい ッ袋もつけてい カ レないし、宇宙作品を描き残して消息を絶った。 服も軽装であ話は、この老人の跡を追って二十年間も惑星から惑星へとあるき タる。胸の上部まわっているラスロップという男が、やっとのことで、ルーベン・ についているクレイがその最後をすごした惑星へたどりつくところからはじま る。まったく無名の小さな惑星なのである。ラスロップは宇宙船を 丸いものは、 外部の音を拾降りると、村の方へと小道を半日もあるきつづけ、やっとのこと う集音マイクで、住民である、この緑色をした小猿みたいなやっと出会わす。 「あんたはもう一人と似てる」 だろうか。 エムシ = ウ「クレイだろう ? 」とラスロップ。 Z 「あなたはもっと若い」 イラーのこの : 種の絵でたの「若いよ。たしかに。すこしだけどな」 「その通り」と住民は外交辞礼のつもりらしい しみなのは、 「病気じゃないね」 彼のサインが Ⅱどこに入って「健康だ」 「クレイは病気たった。クレイは : いるかをさが すことであ彼等の言葉に死ぬという単語はない。終ったとか、つづかなかっ る。とんでもた、といった意味である。もちろんそれで意味は十分通じた。 ないところにさりげなく入っているのである。ステ , ーションの内部「俺も知っている。そのことについて聞きたくて来た」 「われわれと一緒に住んでいた」 これは土星の重力場を調査するためのステーションで、窓外に 見える白く太い線はお粗末ながら土星の輪であるーーーの絵では、窓「きみたちは彼を , ーー」彼らには埋葬する、とか、墓とかいう言葉 枠についている機械の上に、まるでネ 1 ム。プレートのようにはない。 1 4
きまい。あとは手を伸ばすだけだ、そんな簡単な動作のできない理動にかられた。しかし、声の調子で、今も一度見すかされているの 由がどこにあろう ? 前にも一度、不意の行動でこの二人のドリー だ。同じことがまたおこらないと、どうして言えよう。男の冷やや フ族をたじろがせたことがある。アンガーンの娘にーーー彼女は否定かな顔からは何も読みとれなかった。 ているがーーー銃の狙いを定める機会を与えてやったあのときだ。 「でも」と女が言った。「彼の説得にウィリアム・リー を使うこと 丿ーの見守る前で、男は機械から目を離した。男は唇をす・ほめはできるわ」 た。口を開いたのは、マーラと呼ばれる女のほうだった。彼女は薄口調はおだやかだが、その言葉にリーはショックを受けた。歪め 闇の中に立ったまま言った。 られてはいるが、そこに希望を見出したからだ。それが彼の行動の 「どう ? 」 意志を木端微塵に打ち砕いた。目的ははるかかなたへ遠のいた。彼 は今しがたまでのかたい決意を意識の中にふたたび固着させようと 男は眉を寄せた。「正確な住所は、この記録にはのっていない。 どうやら、この星系では小惑星の開発は進んでいないらしいな。思努力した。レコーダーへ視線を集中したが、女の声がまた聞えてき っていたとおりだよ。とにかく宇宙旅行がはじまってから、まだ百た。そして彼の思考は、その言葉に含まれた身近な意味以外には、 年なんだ。人間は「惑星と木星衛星の探検、開発で手いつばいとい何もとらえられなくなっていた。 うことだ」 「リーは、殺すには惜しい奴隷よ。血とエネルギーはいつでも取れ 「それくらいのことなら教えてやったのに」とリー。 るじゃない。まず、例の輸送船パイロットを見つけるために、彼を もう少しレコーダーの片側に移動することができれば、男が手をユーロ。 ( まで連れていって、それからアンガーンの小惑星まで同行 伸ばすだけでは届かない位置に来て、行動も楽になるのに させるのよ。もし彼が内部を調べることができれば、あたしたちの 男は続けた。「だが、木星の月ューロバからアンガーンのところ攻撃もかなり楽になるわけだし、新しい武器が用意されていれば、 へ食料や雑貨を輸送している男の記事が出ている。こいつを : それを知ってたほうがいいでしよう。大銀河人の科学を過小評価す るのはいけないわ。もちろん、リー うう : : : 説得して、案内させよう」 を泳がす前に、彼の心に手を加 「そんな説得にのらない人間だっていることが、そのうちわかるえて、このホテルの部分でおこったことの記億を消してしまうのは ・ハーだということを、リー さ」とリーは言った。「その男にどんな圧力をかけるんだ ? 彼に当然だけど。アンガーンが銀河オ・フザー が知ってるのはまずいから、サイコグラフの記録を書きかえてもっ 母親がもういないとしたらー とまことしやかなものにしてしまうのはどうかしら。明日、目をさ 「大事なものがまだあるわよーーー生命 ! 」女がそっと言った。 「あんたを一目見れば」とリーは言いかえした。「どっちみち自分ましたときには、リーには新しい目的ができているのよ。ごく単純 が殺されることはわかる」 な人間の衝動に基づいたものがいいわね、あの娘を愛してしまった 3 言いながら、彼は左に一歩移動した。その行動の釈明をしたい衝とか」
宇宙船のコントロール・ルー人内部の沈黙は続いた。それは、娘て」 が宇宙船にはいった後に訪れた静けさと不思議によく似ていた。た . 「おれだって待つのは好きじゃないさ」と男。「よしーー」 リーは、あけつばなしの入口へ だ今度その静けさを破ったのは、娘たった。わずかに呼吸が乱れてもうまごまごしてはいられない。 いるが、それでも冷静で、力強く、大胆たった。「あたしは警告すと身をおどらせた。一瞬、夜会服を着た男と女の姿が眼にはいっ るために来ただけで、命令を押しつけに来たんじゃないわ。それた。男は立っており、女はすわっていた。きらめく金属的な背景 に、あなたたちが十五人分の生命エネルギーを補給しているのならも、意識のうちにあった。さきほど、その一部を見たにすぎなかっ いいけど、そうでなければ、何もしないほうが身のためよ。あたし たコントロール・ポードは、輝く計器類に埋めつくされた巨大な装 置であることがわかった。しかし、そんなものには目もくれず、彼 だって、そちらの正体を知ったうえで来たんですからね」 は叫んだ 「どう思う、マーラ ? この女がクラッグ族なのは、まちがいない 。オしか ? 」男「そこまでだ。手をあげろ」 か ? もっと高度なレネル・タイプだという可能性よよ、 それは、不意打ちのはずであり、状況の鍵を握っているのは彼の の声である。娘の言い分は認めた様子だが、そこには相変らず嘲り と、何物も抑えることのできない意志と、すさまじい確信がこもつはずだった。しかし、そう思ったのは、ほんの一瞬にすぎなかっ ていた。 た。誰一人として、彼のほうを向いたものはなかった。ジールと呼 の、いばれる男は、あの娘とむかいあって立っている。マ 1 ラと呼ばれる ところが、大立回りを目前にしているにもかかわらず、リー から脅威はとっぜん遠のいていた。彼の記者の頭脳は、今ここでお女は深い椅子に腰をおろし、金髪の頭をその背にもたせかけて、美 こっているできごとの途方もない意味を考えるほうに、いやおうなしい横顔を彼のほうに向けていた。彼のひとときの勝利感を打ち砕 いたのは、その女だった。女は彼を見ようともせず、男装した娘に くねじまげられていた。 言った 十五人分の生命エネルギー すべてがそこにある。想像を絶することだが、それで何もかも説「連れが、こんな間抜けな人間の男でかわいそうね。怪我しないう 明がつく。血液と生命エネルギーを吸いとられた二つの死体、たびちにさっさと逃げるように言ってあげたら」 ごめんなさい、あなたを巻添えにしてしま たび引合いに出される銀河オブザー 1 という言葉、その指令で動娘が言った。 って。あなたのはいってくる動きは、みんな聞かれ、観察されてい いている娘。彼は、女が話しているのに気づいた。 「クラッグよ ! 」女はきつばりと言った。「言いわけなんか気にし たの。あなたの心がこの情景に慣れたときには、もう遅すぎたの ちゃ駄目、ジール。知ってるでしよう、あたしは女には敏感なのよ」 ) ーっていうの ? 」女が問いつめるように言った。「はいっ よ。嘘ついてるんだわ。あたしたちが慌てふためくと思ってのこの「彼、 こやってきた馬鹿な女よ、きまってるわ。好きなように殺しちゃってきたとぎ、どうも見た顔だと思ったわ。新聞のコラムに出ている
「船から八人の男が」プラウントはあえいだ。「われわれを襲いま 声が部屋いつばいにひろがった。 した。アンダースは殺されたようです。私は逃げてきたんです」 トライヤーはすぐに子供のそばに跪いて、囁き、軽くたたきなが プラウントの頬は何か溝を掘ったようにえぐられていた。血がま ら、何も心配しないでいいんだよ、と話した。他の火星人たちは周 だ切り口から滴っていた。 りを取りかこんでいた。ケネディは忘れられていた。火星人たちは 闇の中で人間の声が呼んだ。駆けてくる足音が聞えた。 子供の肩をたたいてやっていたが、子供の心はしすまらなかった。 しまいに一人がやけを起して子供の手をとると部屋の外へ連れ出し「後をつけてきたんです」・フラウントは囁いた。 「ドームの中に入れ」ケネディが言った。「早く ! 」 ・フラウントが動いた。しかし駆けよってきた足音の方が早かっ トライヤーは眠を燃やして立ち上った。ケネディはかって怒った た。薄暗闇の中から強力な懐中電燈が、目のくらむような光の洪水 火星人というのを見たことがなかった。これで怒った火星人を一人 をはき出した。 見たことになる。 「そこを動くな ! 」声が命令した。 「アナタ、子供コワガラセタ ! 」トライヤーは怒った。「アナタ / 「銃を持っているんです」プラウントが囁いた。 タメ、子供、一生ュガンデ育ツ。子供、忘レナイ」 それはまるで地獄への告発のように聞えた。ケネディの声は感情「そうだろう」ケネディが答えた。ケネディは振り向き、ドームの 中に向って呼んだ。「トライヤー ! 」答えはなかった。駟けよって をこらえた悲痛な声であった。 「すまない。私は私に押しかかっている圧力を示そうとしたんだ」くる足音が歩道に近づいた。 「手を上げろ ! 」銃が二人を狙っていた。二人は手を上げた。指が ケネディは自分が描いた絵を指さした。「これは私の子供だ」 トライヤーはその意味を了解した。明らかにトライヤーは最後の二人のポケットを検べた。 絵の子供の意味が充分に分っていなかったのだ。トライヤーはそれ「何も持っていません」声が言った。 「トライヤー ! 」ケネディがもう一度呼んだ。 を見た。その顔から憤怒の情が消えていった。そして少しずつ暖か 「黙れ ! 」拳がケネディのロに飛んだ。 い同情の念が怒りにとって変った。トライヤーは理解したのだー ー・ドーク。捕まえました」 ケネディは顔の汗をふいた。ケネディは闘いに勝ったのだ。伝達「ミスタ 「ケネディを捕まえたか ? 」ドークが闇の中からきいた の道がようやく開けたのだった。 外の闇の中に、人の走ってくる音と、「ケネディ」と呼んでいる「捕まえました」 ケネディは自分を叩いた男を殴った。ケネディの内で荒れ狂って しわがれ声が聞えた。 いた欝慣、感情の嵐すべてが殴る力を与えたのだ。男は後ろざまに ・フラウントの声だった。 続けて二度とん・ほ返りをうって倒れた。 ケネディは扉を開いた。 4
すでに翻訳されているハインラインの『異星のも関心が深く、イギリスにおけるその 客』ーーこの傾向のロ火をきったのは、これかもし運動の中心に立つ一人で、現在は、暗 れない そして『月は無慈悲な夜の女王』、フラ殺されたマーチン・ルーサー・キング ンク・ しハートの『デューン』 Dune ( 1965 ) 。以牧師を記念する文学賞の設立に力をい 上はどれもハードカ・ハー版で四百ページ前後の長されている ( キング賞については、昨年 ・か亠めり、リ」、れ , もヒュ ーゴー賞を受賞したが、このグの春、朝日その他の新聞の海外トビッ ル 1 。フにもっとも新しく仲間入りしたのが、六九年クス欄で報じられたので、ご記憶のか 度の長篇賞に輝く、ジョン・プラナーの『ザンジ・ハたもおられるかもしれない ) 。こんな ーに立っ』 Stand on Zanzibar ( ダブルディ社 ) 経歴からもわかるとおり、プラナ である。 は、精力的な活動にかけては現代英米 全訳して約千七百枚、普通よりひとまわり大きい界でも五指に数えられる作家であ ( ードカ・ ( 1 版で五百二十四。ヘージのこの長篇は、る。彼なら、そんな未来全体小説を書 びとロで言ってしまえば、二十一世紀初頭を舞台にいても不思議はなさそうだ。 題名の意味は、こんなところから出 した全体小説だ。 プラナー作『ザンシ′ ・ヾーに立っ 四十年先の世界を描いた全体小説 ? 多くのている。地球上の全人類を立たせたま 作家の共同作業ならともかく、一人でそんなものがま一個所に集めると、イギ屮スのワイト島 ( 面積一「『ザンジ・ハ ーに立っ』は、 いうなれば一つの長篇 書けるのか、とあなたは思うかもしれない。社会の四七平方マイル ) にすつぼりはいってしまうという小説と、 いくつかの短篇小説と、一連のエッセイ あらゆる事象をまとめて整理し、さらにその資料か俗説がある。だが、それは第一次大戦当時の話であと、無数の断片的情報を、一つの文学的な構築物と ら四十年未来の世界を外挿し、そのなかで数十人のって、一九六〇年代後半の現在では、一三一平方マして組みあげたものだ」とスビンラッドは言う。 登場人物を動かしながら、読者の興味を惹く物語をイルのマン島にもおさまりきらないくらいだ。だ「その意味では小説ではない。これは、単行本のか 進めていかねばならないのだ。まず、並の人間ではが、二〇一〇年ーー・・この小説の時代ではーー人口はたちにした映画なのだ」 不可能な仕事だろう。 それよりはるかに増え、六四〇平方マイルのザンジそれは、七ページにわたる目次を見るとはっきり だが、どうやらプラナーはそれにある程度成功しー島ぐらいの土地が必要になるにちがいない。 とわかる。目次は四つのセクションに分かれ、もっ ノン・ノヴェル たようなのだ。一九三四年、イギリスに生まれ、十プラナーはこの小説を″非小説″と呼んでいる。とも重要な登場人物ドナルド・ホーガンとノーマ 七歳で最初の長篇を出版し、五八年から本格的に書アメージング誌昨年九月号の書評欄で、これを読んン・ ( ウスが活動するセクションの見出しは「コン きだして、この十年間に出した単行本が五十冊 ( そだノーマン・スビンラッドがうまい解釈をしているテ」 Coutimuity この部分が長篇小説。そして ェッセイ類は「情況」 Context のセクションにま のうち九十。 ( ーセントは ) 。また、平和運動にのでそれを抜き書きしながら話を進めていこう。 0 0 0 0 0 0 ・を ZANZIBAR A NOVEL BY JOHN BRUNNER 7
トキ、ワレワレは免疫体ヲ持タナカッタ。ソノタメニ、多ク / 仲間持タナカッタ」 ガ死ンダ。草ャ木、コノ地上ト全ク変ワラナカッタガ」ーーー発光す「ある種の宗教と考えてもいいのか ? 」 る手が、ゆ 0 くりと動いて、周囲の植物を差し示したーー「アノ星幽霊は、ーナーの大脳から送られてきた言葉を含味した。 ノ植物ハ毒ダッタノダ。ソノ植物ヲ食べタ動物ハ、体内ニソノ毒フ 「シュウキョウニ近ィモノダ。キミタチモ・ : コレニ似タモノヲ持 貯エテイタ。ワレワレ人類モ殆ドガ死滅シ、生キ残ッタノハホン ッティル直接手デ触レルコトハデキナイガ、ソレデモ、常ニ尊 ノ僅カトナッタ」 ク偉大ナモノヲ何ト言ウノダ ? ソウダ、宗教モソウダ。ダガ、 「適者生存の法則というわけだな」ワーナーが必要もないのに口をマダアル。愛、誇リ、勇気、ソレカラコレ ( ナンダ ? ジソンシ はさんだ。 ント呼プノカ ? ソウダ、ワレワレモソレヲ持ッティル。ダガ、ソ 「イヤ、ホウソクデハナイ」生命体は、白い巻きタ・ハコが入って いレ ( 自分ヒトリノ自尊心デ ( ナイ : : : 民族ゼンタイノ自尊心ナノ るはずの箱から、一本の青いタ・ ( 「を取り出しでもしたように、大ダ。ワレワ」人類ガ獲得シタモノ ( 、 ソノ中核的ナ意味ニヲイテ、 声を上げた。「ソレハ均衡ダ。死ヌモノト生キ残ルモノトノ間ニハ ソレラ全テノモノニョク似テイタ。ダカラ、全テノ人間ガ同ジコト カラレル均 ' 衡ダ。 ヲ感ジ、同・、、ダケノ分ケ前ニアズカルコトガデキタ。地球ハワレワ シッペイ 生キノコッタ者 ( 僅カダッタ。疾病 = 蝕サレ、チカラヲ失ッティレ = トッテ尊イ場所ダ。ワレワレノチカラト、ワレワレガ弱化シ ッタ。生キ残ルタメニ / 、、ハゲシク戦ワネ。ハナラナカッタ。ヒトッ タトキ得タチカラノ源泉ナノダ。イマ、ワレワレハ勢力ヲ盛リ返シ ヒトッ世代ガ進ムウチニ、仲間 ( イヨイヨ少ナクナッティッタ。思タ。ワレワレノ肉体 ( チカラヲ取リ戻シ、地球へノ信念モサラニ強 考ヲ : : : 機械ヲ造ル方法ヤ、機械ヲ造ルタメニ知ラネ・ハナラヌ原理固トナッタワレワレガ努メテヤマナカッタノハ、 モウイチド新シ ヲ、イツノマニカ忘レティッタ。ワレワレガ再ビチカラヲ取リ戻スイ飛行機械ヲ建造デキルョウニナルマデ、知能ヲミガキ直スコトダ ソタ。ワレワレ、 ソレヲャッタ。 , い マデ、ナガイ時間ガカカッタ。ソシテ、チカラガ戻ッタトキ、ワレ ′サナモノガ、一人乗リニ . シテ ワレハ変化シテイタ。 ハ巨大ナ、コノワタシトッテモーー大キスギル大キナ機械ヲ」 自分タチガ変化ヲ遂ゲタコトヲ、ワレワレハ知ッテイタ。自分タ 「おれたちも、それとよく似た文明を持ったことがある」ワーナー チノ生マレタ星ノコトモ : : : 自分タチガカッテ強大ナ種族ダッタコ が思考をめぐらしながらこたえた。「たとえば、政治と宗教が同一 トモ。マタ、ワレワレガチカラヲ望ンディルコトモ。多ク / 世代が視された文明や、慣習と法規が崇拝から発生した文明など、いろい 過ギ行クアイダ、病ガチデ虚弱ダッタワレワレ、、 / アル偉大ナモノろとな」 ノ記憶ヲ子孫ニ伝工続ケタ コノホシ、コノ地球ノ記憶ダ。ココ 「スウ ( ィネコレ ( 崇拝デ ( ナイ」 しんとう ワレワレガ生マレタ星ダ。ココハ ワレワレ / 母ナル故地ダ。 「崇拝しゃないって ? それじゃあ、日本の神道のようなものか」 ナガイ、ナガイアイダ、ワレワレハ コノ信念ョリモ崇高ナモノヲ ワ 1 ナーの調はぶつきら・ほうだった。「祖先崇拝のな」 ヤマイ
ソ連の I-L 一雑叫 に多いのだ。少なくて数十万、多いものになれば、『技術青年』や 『世界めぐり』などのように一〇〇万を遙かに越える雑誌も少なく よい。発行部数の比較はともかくとしても、他の国ではあまり例を 編集部からソ連の雑誌について書けといわれたが、これがそ見ないこういう事情もあって、それなりに需要を満しているため れですと紹介できる雑誌が、実はソ連にはない。しかし、を載に、専門誌が出版されるのが遅れているとも考えられる。 イスカーチェリ 時どき日本でいわれているように「官僚統、売手市場、用紙不 せている雑誌はたいへん多い。主なものを挙げれば、『探求者』 ューニイ・テ ゥーカ・イ・ジーズニ 「技術青年』『知識はカ』『世界めぐり』『科学と生活』『若い技足」などのお家の事情たけによると考えるのは、少し考え過ぎでは ウラルスキイ・スレド・ヒイト カスチョール ーツニク ないだろうか。とはいえ、まったく専門誌を要求する声がな 術者』『。ヒオネール』『たきび』『ウラルの猟師』などがある。だ が、こうして、誌名を並べてみたところで、ほとんどの読者にと 0 く、読者が現状で満足しているとは考えられないし、事実、そうい う要求のあることも聞いている。したがって、当然、将来われわれ ては縁の遠いロシア語の雜誌であれば意味のないことに違いない。 どうにも比較のしようが無い雑誌もあるが、だいたいの感しは、日のマガジンとは違「た性質と役割を担って現われることになる と思う。 本の『自然』『科学朝日』『子供の科学』『新潮』などの雑誌に、 イスカーチェリ というわけで、ここでは特にに力を入れている『探求者』を ほ・ほ毎号連載、短篇、中篇が載ると考えていただければおおよその この雑誌は、前にも紹介されたに 主として取り上げて、紹介したい。 見当はつけていたたけるかと思う。 たた全然比較にならない点がある。どの雑誌も発行部数が桁外れこともあり、マガジンにもこの中からいくつかの作品が翻訳さ 世界展望 当を
苑 「これはロポット・タイ ばたたいた。「他人よりちょっとくわしい計 驚いた声でいった。 ムマシンなんだ。人間が行くんじゃない。機算をして学位をとるのは、日本人のわるいく せだ。・ほくのはそんなんじゃない」 械だけが行くんだ」 「それしや意味ないじゃよ、 「じゃあ、どんなんだ ? 」 わたしは自分のことを非難されたような気 わたしは、拍子ぬけして、椅子にもどりな がして、はなじろみながら、ききかえした。 がら、頬をふくらませた。 「だからいったろう ? 」ワカマツはおちつい 「データを送ってくるんだよ」 た口調だった。 「ミニスカートの研究なん ワカマツは、学生時代とかわらないしん・ほ うづよさで、説明した。 だ。タイムマシンはその必要上っくったん 「機械だけが過去や未来に行き、そこで得た 情報を四次元ーーっまり時間軸ーーーを通して 「おとなしく聞いているから、最初から話し 現在に伝送してくるんだ。立体テレビ信号もてくれ」 送ってくる」 わたしは、外は雨だし、今夜は泊ってゆく ことにきめてこういった。ワカマツは話しは 「そうかわかったよ、時間にそったデータ 通信なんたな」わたしは、ようやく研究の概じめた。 要がっかめた気がして、くわしい解説を求め 「マルクスは偉大な思想家たったが、・ほくら 「ーー立体テレビという四次元の情報を からみると、じつに非科学的そのものだ」 四次元を通して送る装置だからたいへんだ「同感だ」 な。設計言算も複雑なんだろう ? 」 「とくに、宇宙人の存在や、人類の生物学的 「次元が多いからちょっと大変だった」 不平等性、そして超人類への的進化の問 「四次元と四次元で八次元になるわけか」 題を故意か偶然か、避けている点に不満があ 「四次元の四次元乗で二百五十六次元になるる」 んだ」 「常識的な見解だ」 「そうか : : : 」 「ところで、人類は、今後、生物学的に平等 な方向に進化してゆくだあうか、それとも、 わたしは、満して、のびをした。 「その文献よりっとくわしい計算と実験にその逆だろうか ? 」 よって、研究を発展させ、学位論文にまとめ 「よくわからん」 「・ほくは平等な方向に進むという仮説をたて ようってわけだ。やったなあ ! 」 「ちがうよ」ワカマツは悲しそうに、眼をし た。その仮説のうらづけとなる現象のひとっ 8