あたしたち 超能力者は 総力を結集して 幻魔一族の 侵略に 対抗しなければ なりませんっ 地球エスパー戦団を組織したルーナは、同志を集 めるべく、テレ。ハシー放送を行うと同時に、幻魔一 族に宣戦布告する : 幻魔大戦は すでに はじめられて いますっ エスパー戦団は 幻魔一族に 宣戦を 布告しますっ 幻魔よ されつ あたしたちの かほそいさけびか いっカ 全宇宙をとよもす 聿波となって 幻魔一族を かんせんに ほ - つむりさる その日を・ 0 165
これでは、何のことかわからない。だが、誰かのいたずらでない ことは、同封されていた無制限旅行クーポン券でわかった。は信 用されているのだ。理由は : は、運ばれてきた合成ビール のほろ苦い味を口の中で噛みしめながら、じっと考えこんでいた。 それから、は立ちあがった。彼は決心したのだ。はまっすぐ 少女のところに帰った。むろん理由はいえなかった。彼女は驚い て、泣き出しそうになった。 「月へいらっしやるの。そんなところに」 「さあ、皆目、見当もっきません」 「でも、やむをえない用事ができたんだよ。すぐにもどってくる。 は礼をいってその場を辞した。何かの間違いだろう、きっと。 いね。心配などしないで待っているんだ」 は足早に、ベルトウェイに乗った。スロープの上層階にデパート 「ああ、待って。一緒に宇宙港までおくらせて」 がある。は、そのビャーショップに腰をおちつけた。それから、 旅立ちはあわただしかった。チュープタクシーの中で、少女はず はもう一度、宛名が間違いなく自分であることを確かめて、封をつとの手を握りしめていた。は、宇宙港の両替所へいって、ク 切った。 ーポン券の最初の一枚をひきさいて金にかえた。それをそっくり少 三折りにした金のふちどりのある専用便箋を開いた。文面は簡単女に渡した。 「こんなに」 「いいんだ。生活費のたしにしなさい。それから、むこうについた らすぐ連絡する。しゃあな」 は、姉弟に手をふった。 「坊や、おみやげ買って、帰ってくるからな。お姉ちゃんのいいっ けをよく守るんだそ」 「うん。坊や、いい子しているよ」 「そう、留守の間、おじちゃんの代りを頼んだぜ。坊やは男だから な」 「わかったよ。その代り、おみやげをどっさりだよ。月って、おも ちゃの国なんだろう」 「ああ、そうだ。おじちゃんのいく月は、漫画のお国なのさ」 は、思わず微笑みながらいった。子供の信じている月と本物の 月はもちろんちがっていた。でもも昔は、やはりそう思っていた のた。月は夢想の世界だ。 突然、アンアンがクスクスと笑いだした。どこかで。ア ンアンの軽やかな声がきこえる。そうでもないわよ。月は 漫画のお国なのよ。玩具のお国なのよ : ・ ・こっ、こ 0 至急、貴殿と面談したし。直ちに月へ直行されよ。宿 泊はマンダリンホテルと指定する。なお、この件につ いては、秘密厳守のこと。 以上 ・・プラトン ⅱ 6
した」 ったけの夢ゃうらみがこもっているんだ。それも人間のものばかり とはかぎらねえんでな」 「それはさそ痛かったろう」 「きさま ! 」 ジャンク屋は作業手袋をはめた手で、肉の薄い顔を押しぬぐっ ヒノのこぶしは空を打ったつおそらしい疲労が濁水のように湧きた。 上ってきた。 「こんなこと、たびたびあるのか ? 」 「まあな」 「おれは本気で痛かったろうと言っているんだ」 ジャンク屋は立ち上った。 ジャンク屋はヒノのうでを自分の肩に回した。 「船倉を封じてくる。あとで中のものは全部、宇宙空間へほうり出 「歩けるか」 してしまう」 ヒノはほとんど引すられるように操縦室へ移った。 床に横たえられたシクの体はすでに冷たくなっていた。ヒノは自「コ・ハたちの遺骸もか ? 」 「ああ」 分の心をおさえるのに残ったカのすべてを使わなければならなかっ 「シクか ! 」 「夢ならなぜもっと早くさめなかったんだ ! 」 ジャンク屋の顔に茫漠たる表情が浮かんだ。 ジャンク屋が吸水びんに入った水を持ってきた。 「ああ。ヒノ。それがいちばんいいんだ。いちばんいいんだよ。そ 「ヒノ。おそらくそれは夢じゃないだろうな。ほんとうにあったこれはいろいろなことがあるもんだぜ」 となんだと思うよ」 こんな商売をしているとな。それはおのれに向って言ったものら しかった。 「夢じゃない ? 」 「ああ」 「いろいろなことがよ」 ジャンク屋は薄い肩をす・ほめるとドアをしめて出ていった。 ジャンク屋はヒノのロもとで大きくゆれながら水量を減らしてゆ おれもやっといっしょにどこまでも行ってみようか。 く吸水びんに、見るともない視線を当てつづけていた。 それはあの連航部の回廊や、揚水ポンプの噴き上げる霧雨の中に 「夢じゃないって ? 」 帰るよりも、ずっとたやすいことのようにヒノには思えた。 「こんな商売をしていると、それはいろいろなことがあるものだ ・せ。いろいろなことがな」 エドカー・ライス・ハロウズ \ ー 70 「おれが見たのは : : : 」 ま . ・時に忘れられた世界 「ヒノ 0 しし 、よ。おれには興味がないんだ。中古宇宙服というやっ 今なお怪猷と原始人の支配する太古そのままの島ー は以前に何を積み、どこへ行ってきたのかわからないものな。あり △・ っ ~
外国の 戦闘艇が 迫って来る てめえらは 勝手に飛びまわって おきながら 自分で飛行を禁止して いるわれわれが たまに飛ぶと 目のいろ変えて かみついてきやがる おいつける ものなら おいついて見ろ ゃいこのくそ まあ まあまあ 人それぞれ 者 - えがちがい すぎるから それはそれで ナニ ) 右翼だと ? おまえもわしにさから - っ のか ? 宇宙へたたき だすぞこの野郎 外国にいちいち文句 いわれる都市に ダレがしたやい 空間曲線が 、つらカえしに なっていくわ教授 こ、れはど、つい、つ い、 わからん 前に飛はした 無人探索船も こうなった とにかくこれで 目的地へつくん 目的地へついたら もうニ度と この船は動か 地球へはもどれん というわけだ ノノ 258
「見そこなうんじゃねえよ。ジャンク屋 ! どんな型の宇宙船だっ たり体力を消耗したりしたのではないようだ」 「シクが体力を回復したらくわしく聞いてみよう」 てすみのすみまで知りつくしているおれだぜ。どこにどんな部品が 「それがいし 。出発た」 あるかぐらいちゃんとわかってら」 ジャンク屋が勢いよく立ち上った。 ジャンク屋はそれには応じようとしなかった。手の物体を見つめ 「その前にこいつらの死体を始末しなければいけねえな。よし、休る彼の眼が異様に見開かれ、照明灯の光を受けてうるんだようにか 眠カプセルに入れて低温をかけて凍結させよう」 がやいた。とっぜん、コウエンの体が大きくゆらめいた。コウエン ヒノとコウエンがコの体をかかえ上げた。 のさけびが広い船倉にこだました。ヒノが抱き止めるよりも先に、 「ヒノ。コ・ハが何か握っているそ」 コウエンの体はひどい音をたてて床に倒れた。ヒノの、薄れてゆく だらりと垂れたコ・ ( の右手の、固く握りしめた指の間から、小さ視野のすみでコウエンが奇妙な舞踊手のように手足を打ちふってい な錆色の物体がのそいていた。 「何だろう ? 」 「みんな。操縦室へ後退しろ。いそげ ! 」 ヒノはシクの体を床におろすと、硬直した指を押し開いた。 ヒノは必死にさけんだ。しかしすでに肺の中はからつ。ほになって 長さ五センチメートル、幅も厚さも三センチメートルほどの小さ いて声をし・ほり出そうとしても吐く息すら出なかった。ヒノはヘル な箱のような物体だった。手にのせると、思いがけない質量感が感メットをぬぎ棄てると背中のエア・ポンべからのびているチュ 1 プ じられた。箱を造っている材質は金属ともプラスチックともっかなをむしり取ってくわえた。そこまでだった。 い極めて硬い物質だった。錆色に見えたのは、表面に鉱石の細片と 思われる徴粉が附着していたからで、それをかき落すと沈んだ銀色 の地肌があらわれた。どこにも継目がない。それは三人の手から手 へ渡った。 右には百メートルほどの高さの低い丘陵が長くつづいていた。そ 「何かの部品たろうか ? 」 の山すそはゆるい傾斜をたもちながら、ヒノの立っている草原を形 コウエンが首をふった。 作り、さらに左方へふたたび傾斜をまして落ちこんでいった。い たん落ちこんでいった傾斜はふたたび立ち上って遠い対岸を形成 「いや。ちがうな。こんなものは見たことがないそ」 し、その先は低くつらなるゆるやかな丘になっていた。広い谷間 「おまえの知らないものだってあるだろう」 ジャンク屋がてのひらにのせた物体を、値踏みするように目の高を、かなりの河幅を持った水流が右に左にくねりながらのびてい さまで上げて視線を据えた。コウエンがむっとしたように声の調子る。その谷の開けたかなたに、ひとすじの銀色にかがやく地平線が を変えた。 けむっていた。おそらく海であろう。 っ 8
しよくんは なにゆえに エスパー戦団 なるものを 士ロ成し 幻魔一族に 対抗しようと するのであるか このとき、ドクタ ・タイガーの権謀術数が効を 奏し、地球エス。ハー戦団は、 ^ 人類の敵〉という汚 名を刻印されることになった。 相次ぐ悲惨な天災害は、幻魔に楯突く不心得者ど もの責任だというタイガーの悪意にみちた宣伝が、 混乱した人心をとらえたのである。 心ならすもエス。ハー戦団は、味方であるべき地球 人の軍隊と闘わねばならなかった。 なにゆえに 強力無比な 宇宙の支配者 幻魔大王に たてつき いかり・ ) カお・つ するのであるか 機甲師団が すでに ホテルの周囲を びっしりと とりかこんで いるわ フラフ : 「・も 0 ドク タイがーの さしがねよ 抵抗すれば あたしたちを 全減させる 気よー ふん そんなこと させるもんか 166
行為が終り、女が鏡にむかって、いなの浮んだ顔を直している Ⅲは女の背面を眺めていた。それはあさ黒かった。何かが、そ 0 月の光は、深い渦巻きの底のまた底までもとどいているようだっ月、 こにあるはすなのに。でもわからなかった。さっき、は、女のし た。だのに、わしにははっきりと見えるものは、何ひとつなかった よ。濃い霧が全てを包みこんでおり、あらゆるものの上に、素敵なしむらの、柔らかく暖かいに内面におりていった。彼が、そこで探 虹がかかっておった。回教徒の「時」と「永劫」をつなぐったってそうとしたものは、一体なんであったのだろうか。それは、物の確 ひとつの路筋といおうか、あのたより気のない細い橋みたいだっ実なあかしであった。確かに、それはそこに、あったような気もし た。霧と中そうか、水しぶきと申そうか、とにかくそいつは、漏斗た。でもそれは一瞬の仮現でしかなかったのた。それが、彼がいま のどでかい壁と壁が、淵の底でぶつかりあうとき、湧きおこってお懸命に求めているものたという、証拠はなかった。女はやがて、安 ードレスで、すべてをおおいかくしてしまうだろう。部 だが、その水しぶきから天にもとどけと物のペ 1 るのは確かじゃった。 ばかりに湧きおこっているものすごい轟音は、とても話そうたって屋そのものや、調度の類や、その他の物も、変貌してすべてを隠そ うとしていた。すべてが、きちんとした輪郭を持った、表面的な秩 話しきれるものじゃない。 ポー「大渦にのまれて」 序の元に還ってしまうのだ。世界そのものが、こうしての願望を あざわらうかのように、するりと逃げていってしまうのだ。世界 よ、 いま女が化粧しているように、つんととりすましたよそゆきの 貌にもどるのだ。でも、それは存在ではない。が探している存在 風の中に誰かいる そのものではないのだ。 ギレヴィク「地球」 鏡の中の女の顔には、人生のあかみたいなものがたまっているよ はまた失敗した。 うな気がした。そこで、ちらりと視線があった。 金髪女は四十ちかい街の女で、まだ若いには親切だったが、そ「何か、喋ったらどうなの : : : 」と女がいった。「あんたも失業者 こには彼が探しているものはなかった。女の皮膚はたるんでいた。 垂れさがった乳房の先端についていた乳首のまわりが、大きく黒す「そうです」とはいって、うなずいた。 んでいた。たるんだ下腹部やウエストのあまりくびれていない肉の鏡の中にかすかな微笑が浮んた。同類に対する一種の共感かもし 存在に、は探していた証拠を発見しようとあがいたが、無駄におれない。 わった。 「失業する前は、何をしていたの」 「土木技師です。宇宙にいました」 肉塊のような女は、下肢を開げてを受け入れたが、はついに 「そう、あたしの死んだ亭主も宇宙にいたわ」 見出すことはできなかった。 地球
らぬ眼でヒノを見、それからべッドのかたわらに立っているシクを 見つめた。 「宇宙船乗りを募集しているんだ。それが五人もよ ! おまえにも びようのついた靴で鉄のラッタルをかけ上ってくるけたたましい 知らせてやろうと思って走ってきたんだ」 音響が、がたびしと部屋をゆり動かした。壁がわりのプラスチック 「それはこうしちゃいられねえや」 のパネルがたわみ、表面の油紋のような反射光が流れるようにくず ヒノは女の体から抜きとった。丸めて女の腰の下におしこんでい れてそれまでとは異なった模様を浮かべた。 た自分の衣服をずるすると引き出すとそのまま足を通した。上着を ヒノにはその靴音が誰のものか、よくわかった。 びるがえすと、浸み通った女の体液が強酸のようにヒノの鼻孔を刺 なんだろう ? いやにあわてているが ? した。はき古したプーツに足を入れると、どかどかと走り出した。 ヒノが動きをとめると、女はヒノの背中にまわしたうでに力をこ女が何かさけんだが、ドアのしまる音にかき消された。 めた。のけそっていた首をかろうじてもたげて、声にならない声で「どこでだ ? 」 ヒノをうながした。乳房の間から流れ出た汗が方向をかえて体の脇「集会所だ」 へ伝っていった。女は切なそうに声を上げ、自分からはげしく動き 二人はラッタルを三段すっかけおりた。せまい回廊をゆき交う人 はじめた。 人を突きのけ、はねのけ突風のように走った。集会所は二層上だっ そのとき、ドアが開いてシクがとびこんできた。ふいごのように た。リフトははるか上層にあってしかもなお上へ向っている。待っ 息を吐きながら作業衣のそででひたいを押しぬぐった。 よりも階段を使った方が早い。二人は急な階段を息せききってかけ 「ヒノ ! そんなことをしている場合じゃないそ ! 」 上った。 肩の上下とともに声が乱れた。 「もうきまっちまったんじゃねえかな」 「どうしたんだ ? いったい」 「心配するのはあとにしろ。とにかくいそげ」 運航部のオフィスがつづく長い一画を走りぬけ、十字路を右に曲 シクは片手を上げてここからは見えないどこかを指さした。 ると急に人のざわめきが高く聞えた。 「募集しているんた ! 」 「募集 ? なにを ? 」 そこは以前は連航部の倉庫だったところでいっからとなく集会所 「いるんたとよ ! 宇宙船乗りが」 「なに ? 」 と呼ばれてそれに近いはたらきをしている広場たった。 「いるいる ! 」 ヒノは腹筋の運動のようにはげしく転動していた女の腹をびしゃ びしやとたたいた。女は動きをとめ、乱れた髪の中から焦点の定ま 黒山のように集った男たちの、こちらに向けられた背にただなら 6 5
風は谷間から吹き上げ、そのたびに草原は白い葉裏を見せて波をに接する空のきわみだけが明るいオレンジ色に染っていた。いくら 、つ果てるともなくつづいていた。 歩いても草原は同じように、し うった。 キ、キ、キキ、キ 足もとが暗くなってきた。ヒノはとっぜん足をうばわれて草の上 かすかな音が足もとから這い上ってきた。眼を落すと、それは風に転倒した。雨に削られたらしい浅い没孔に、かけわたされたよう で小さな薄刃のナイフのような葉がヒノの・フーツに触れて鳴ってい な細い植物の根が彼のプーツをからめ取ったらしい。ヒノは二、三 るのだった。 度足に力をこめて強く引張った。しかし細い根は意外に強じんでか 風がやむと死のような静寂が周囲をつつんだ。 えってヒノの足首の筋肉に不自然な力を加える結果になった。ヒノ はその場へ腰を落して・フーツにからんだ細い根にナイフを当てた。 「どこだろう ? ここは」 ナイフはすべって根の一方を握った彼自身の指を傷つけた。もう一 このような風景はヒノには全く記憶がなかった。 陽は天頂よりかなり低いところにあった。時計は二十三時を指し度ためしたが結果は同じだった。直径五ミリメートルにも満たない ていた、それは時計が狂ってしまっているのであろうと思った。ヒ細い根の網たったが、おそろしくくてなめらかだった。ヒノは火 ノは太陽の位置から、おそらく今は午後、それも日没までそう間も星のエリシウム砂漠の北に群生しているモウコジャコウソウの地下 茎を思い出した。それは時に砂漠の地下十メートルにも達するよう ない頃と判断した。 な長い復雑な分岐を持っていた。しかし組織は水気をふくんで意外 「それにしても・ : ・ : 」 波打っ草原はただ一種類の植物で占められているようだった。短にもろく、薄刃のナイフでも十分に切り刻むことのできるほど柔軟 い葉柄を持った単子葉植物が葉裏をひるがえすたびに、銀色の柔毛なものだった。 とっぜん、ヒノの胸に記憶の一部が閃光のようによみがえってき が美しい光沢を放った。 「どこだろう ? 見たこともない所だが」 火星の : このような所は太陽系の中では地球以外には考えられなかった。 モウコジャコウソウの : 月の乾燥凍土、火星の砂漠。金星の熱あらしに木星のメタンの海。 幾十度となくゆききしたそれらの惑星とは全く異なった明るい自然「そうだ ! おれは火星にいたのだ。そして宇宙船に乗って : : : そ 冫いたような気 はこれは地球以外のものではなかった。 れからどうしたのだろう ? 誰かほかにもいっしょこ ヒノは草原を進んだ。どこへ何をしに行くのか、自分でもわからがするが」 ヒノは両手で頭をおさえた。その手を離れたナイフが細い根の網 なかったしわかろうとする意欲さえわかなかった。 陽はしだいに左方の遠い丘陵の陵線に近づき、谷間から吹き上げの間へ落ち、キラ、と光ってすぐ見えなくなった。ヒノはそれ以 る風は氷のような冷気をはらんできた。空は濃い藍色に変り、陵線上、立ちもどってこないおのれの記億のもどかしさにけもののよう 2 8
A N 0 A20 R. L_ 、 E. 深夜の大西洋上空を、華麗 な航空灯を輝かせて、ジェッ ト旅客機が横切って行く。 一等ラウンジには、乗客の 関心を一身に集める美少女の 姿がある。プリンセス・ルー ナ : : : 中央ヨーロッ ハの小国、 トランシルバニアの第一王女 だ。 ^ ヨーロッ ハの宝石〉と うたわれている彼女は、国王 の名代として訪米の途中にあ 乗客が寝静まった後も、王 女は窓外の暗い虚空に目を投 げ、もの思いにふけっていた。 彼女は、これからある異変が 自分の身に生じることを知っ そうだ。プ 未来の予知 ンセス・ルーナは霊能者と しても有名だったのである。 しかし、彼女といえども、こ の旅行が、百億光年の大宇宙 を戦場に闘われる凄絶な大戦 争、 ^ 幻魔大戦〉に、辺境の 一惑星にすぎぬ地球が巻きこ まれる動乱の序曲になろうと は、曲歹にも思わぬことであっ 146