をつかみ、たらりとぶらさげた。頭はまだひょろり、ひょりと舌ををむけて、おれの乗「てきたモトシク 0 をのそきこんでいた。 「ひどくのりつぶしたな : : : 」と、そいつはおれに背をむけたまま 出し、顔を近づけると、かみつこうとしてカッと口をあけた。 いった。「もうガタガタだ : : : 」 おれは、大声で笑った。 おれは光線銃をぬこうとした。まだ背中の方にまわっていたがぬ 「どうだ、うす・ほけの芸無し野郎 : : : 」 だが、おれの腕は途中で凍りついた。 おれはかみつかれないように注意して、そいつの顎の関節をつかけない事はなかった。 そいつは背中を見せたまま、光線銃をぬいており、そのオレンジ 蛇のロは、だらりと み、ヘし折るようにしてはずしてやった。 色の集光レンズが、おれの眉間をびったりとねらっていたからだ。 ひらいて、閉じなくなった。 そいつはゆっくりこっちをむいた。おれのモトシクロのサイドバ それから、のど首の所に爪をた おれはまた大声で笑った。 ッグからとり出したサラミを左手にもって、ロを動かしていた。 て、指を奥につつこんで骨をつかむと、びーツと一気に骨をぬきと ーひげだらけの凶悪無残な面の中で、唇たけがいやらしくボッテリ 骨なしの肉筒の上についた頭は、まだ生きてひ ってやった。 くひくしていた。ナイフをつか 0 て腹を一文字に裂き、血と肉をざと赤い。その唇は脂だらけで = チャ = チャ光り、強靱な顎が、サラ ミをゆっくりとかんでいた。そいつの顔を見たとたん、今度こそお っとこそげとると、おれは頭が前にくるようにそいつを腰にまきっ け、むすんでベルトにはさみこんだ。それから。ヒン。ヒンはねているれの体の中の、血液という血液が、瞬間冷凍されたみたいに凍り上 後半身をつかんで、しつ。ほの先をたたき切り、ガラガラ鳴る鈴をベ 「こりやおれの車だぜ : : : 」とそいつは、変におだやかな声でいっ ルトにつるした。 「よくもガタガタにしてくれたな : : : 」 その時になって、どっと汗がふき出した。血だらけの革手袋の甲た。 ガラガラ蛇の眼と、二メートルへだててにらみあって平気だった で顔の汗をぬぐうと、おれはモトシクロの方に、五、六歩もどりか ールはなれて見たとたん、心臓を氷の手 だが、おれの足は、六歩目か七歩目でびたりととまつおれが、そいつの眼を六メ けた。 でわしづかみにされたような気がした。 それも、この世で一番ものすご こいつは正真正銘の毒蛇た。 おれのモトシクロの所に誰かいた。 いやつだ。 「おやし : おれはがたっく胴をなんとかひきしめようとしながら、やっとか でかい男だ 0 た。身長もあ「たが横幅もすごい。肩なんかもり上すれた声でい 0 た。 とたんにやつは、体を折るようにして、〈工〈〈へへ、というよ って、体重は百キロをこえていそうたった。黒の帽子に黒のシャツ、 その笑い声は うな、なんともいやらしい笑い声を爆発させた。 生皮のチョッキ、黒のズ求ンといった黒ずくめの男は、こっちに背 こ 0 ごろ 3
下からデレゾングを見上げました。王様は聴聞室の王座にすわってました。いつもは花瓶が置いてある王座の前のテープルの上に、今 いましたが、頭上の壁には、ヴァール王の祖先、ザ・フテ ィール王のは銀のお盆があってその上に総理大臣の首が、胴体を離れたとたん 角笛がかけてありました。二番目の王座には、ロテール出身の王の にこの上に落ちたといわんばかりの、理智のかけらもないうつろな 愛妾イレプロがすわっています。これがすんぐりとした中年のロテ表情を浮かべて、のっているのです。 1 ル女で、毛深く、出っ歯ときている。この女のどこがよくて王様当然のことながら、ヴァール王の御気嫌はうるわしくない。 ま : いや、中年に達した王様は、おそらく美人にあきて、まった 「なんでしようか、王様 ? 」デレゾングは、総理大臣の首と王様の く反対の女に趣きを求めたのでありましよう。あるいは、ロテール顔とをかわりばんこに見ながら、うかがいました。 の高官コネス。フから、狩りの最中に夫が事故死して、未亡人になっ ヴァール王は言いました。「うん、魔術師君、わしの愛妾イレプ てしまった妹イレ。フロを、無理矢理におしつけられたが、そのうち口がな、お前さんも知っとるしやろう。そのイレプロがな、お前さ に王様は、この女が好きになってしまったのかもしれません。 んだけしか満たしてやることができない欲望を抱いておってな」 それともロテールの魔術師の僧侶の手が、このへんてこな事件の 「なんでございますって、陛下 ? 」とっさに感ちがいしたデレゾン グは、春の食用蛙のように目玉をむきました。というのは、ヴァー 裏でうごめいているのか。とにかく、魔術師とか化け物のたぐいが 関係あるというなら、ヴァール王が、イレプロと、ロテール人の前 ル王は、自分の女を他人と共有することについては、これつぼっち 夫との間にできた若い息子を、自分の後継ぎときめたことについ の寛大さも持ちあわせていないことで、つとにその名をはせていた 、ーレムの中で、誰がといって、このイレ て、説明もっこうというものです。もっとも、噂にたがわず、王様のです。それに、王様のノ がほんとうにそんなことをしたのならの話ですがね。 ( デレゾング。フロくらい、いただきたくない女はいよ、。 は、その息子がここにいなくて、やれやれと思いました。もっと 王様は言いました。「タンデイラの女神の第三の目にはまってい も、ロテールの女四人が、ありあまるほどの毛皮にくるまって、イる宝石が欲しいというのじゃ。ロテールにあるあの神殿を知っとる レ。フロの足もとにうずくまっていますが ) 。 じやろう ? 」 とにかく、ここには自分には解らないなにかがある、とデレゾン「存じております、陛下」とびきり愛想のいい笑顔をつくりながら グは思いこんでいました。それが解りさえすれば、言うことはない も、デレゾングの心臓は、膝のあたりまでおっこちてきました。こ のだが : ・ 今のところは一応、ロテールとロルスクの間には平和れでは、イレプロとねんごろになるほうがまだましというもので 条約が結ばれているけれど、ヴァール王がロテ 1 ルを襲って掠奪しす。 こあきんど たあの暴挙を、彼らが忘れているとは思えないのです。 「この肝っ玉の小さい小商人めが」とヴァールは首を指して、「こ とにかく王様の前にひれ伏して、さて頭をあげてみると、はじめの話をもちかけたところが、宝石は持ち出すことができないとぬか 7 には目に入らなかったしろものがあるのに、デレゾングは気がっきしおった。だから、身の丈をちちめられることになったのじゃよ。
脱ぎ捨て、裼色の引き回しをまとい、きやはんをつけてさまよえる二十年ないし三十年ごとにからだをとりかえながら、かならす彼ら 楽人の身なりをととのえていた。手には、小型のルートを持ってい のゆく先をつきとめた。そしていま、われわれはまたしても、この 邪悪なふたりに接近しつつあったのだ。暮色が深まり、雪の舞い落 やがてわたしは、わが無頼漢一味の首領、エックハ ードという名ちる中を城へむかって登っていきながら、こんどこそ彼らを逃がし の尾羽うちからした殺し屋にたずねた。「きみのしなければならぬてなるものかと、わたしは誓っていた。 ことは、はっきりわかっているな ? 」 オットー伯爵配下の兵士たちは、夜を迎えて大きな門を閉じる前 彼は、きつばりとうなずいた。「おれと手下たちは、日が暮れた に、われわれふたりの吟遊詩人が城門へ入ることを許してくれた。 あとであの城まで這いの・ほり、あんたの召使いが内側から裏門を開われわれはその夜、広い陰うつな、石造りの食堂で召使いたちにま けてくれるのを待ってりやいいんだろう。だが、あの城からかっさじって、なま煮えの牛のすね肉の大きなかたまりをむさ・ほり食い らったものはすべて、おれたちのものになるとな ! 」 その骨を放り出すと、大たちが跳びついてきて奪いあった。 「略奪品はすべてきみたちのものた」わたしは請けあった。「スサ 食堂の奥にある一段高いテープルの上手にオットー伯爵とガルダ ンとわたしは、なにひとついらない」 夫人がついていた。 .. 彼の端正な顔には、権力者の傲慢さがみなぎつ われわれふたりは、雪の積った浜辺の森の中に彼らを残して、細てい、ガルダ夫人は、たぐいまれなる美貌の持ち主たったーーーエタ い道を城へむかって進んでいった。もう、闇が忍び寄っていた。い インはいつでも、もっとも美しいからだを選んでいた。しかしわた まひとたび、わたしの胸は期待に高鳴っているのだった。かならすしは、彼らのおごりの裏にかすかに不安が沈潜しているのを感じた この何千年間、 / 果たさねばならぬ復讐がいまひとたびわたしの目の前に近づいてい 彼らにつきまとってきた、追われるものの消し るのだ。カルナスとエタインがローマ帝国からわたしのもとを逃れがたい不安だ。わたしはといえばたたひたすらに、このわたしウリ て以来、三十世代の時が流れていた。くる世紀もくる世紀もスサンオスがやがてはカルナスの頭に叩きこんでやるであろう短剣のこと とわたしは、ただひたすらにふたりのあとを追いつづけた。そしばかり胸に秘めつづけてきたのだった。 て、その間にローマは、たび重なる蛮族の攻略のもとに崩壊してい 食事がおわりに近づくと、わたしは、スサンにちょっとした合図 たのだった。 を送った。スサンがこっそりと食堂を出る。やがて、わたしの予期 わたしは二度、いま少しで彼らを掌中にするところだった。一度していたとおり、オットー伯爵がその夜城へやってきた吟遊詩人 は、ジョヴィアンの統治するビザンチンで、いま一度は、コルドく に、音楽を所望した。わたしは、ルートを両腕に抱えて高壇のすぐ でカルナスがムーア人のある首長のからだに入りこんでいることを下まで進み出た。そして、彼らの顔をまともに見つめながらルート 発見したときのことだが、いずれの場合も彼らは、わたしの目をくの弦を掻き鳴らし、歌った。 らまして逃げ出してしまったのだった。しかしスサンとわたしは、 「はるか昔、はるか彼方の西の海に、国があった」見あげる彼らの 3 3 7
おれをぎよっとさせた。あのタランテュラにおそわれてきちがいみ先 ? ほまで皮アかぶってんだろ」おやじは赤い。ほってりした唇を歪 たいになった晩、岩のむこうできいた笑い声だ。 めていった。「マシーンをぶつこわしたり、人の車をかつばらった 3 とすると、あれは、笑いハイエナなんかじゃなかっこ。 り、どういうつもりでえ。おまけにその車ときたら、おれがマフラ 「またこんなへなちょこかよ : : : 」そいつはぶッとサラミのかみか 1 を修理させようと思っておいといたやつだ。こんなので走りまわ けっ すを吐きすてた。 六メートルはなれて、かるく吐きすてただけった日にゃあ、沙漠中にきこえちまわあ。 ケッ ! 尻っぺた青 のように見えたのに、そいつはものの見事におれの左眼にびしやり いひょっこのくせして、すごむ柄かよ、馬鹿らしくって、へどが出 とあたった。「おれの伜どもと来た日にゃあ、どいつもこいつもビらあ。このおやじさんはな、おめえがマシ 1 ンをこわした次の日か リッとした奴なんか一人もいやしねえ。おやじが泣きたくならあー ら、ちょいちょいあとをつけてたんだ。それをこっちのあとをつけ ーあんまり種をまきすぎて、汁がうすくなっちまったかな」 た気でいやがる。あんまり間がぬけてるんで、むかでだの蜘蛛だの 「まだわからねえ。せ : : : 」おれは深呼吸して、どきっきをとめよういれてやってるのに皆目気がっかねえ。一人寝でさびしそうだった あに と努力しながらいった。「四人目は、ちっとは骨があるかも知れね から、お前の兄さんの骨を横にうめてやったのに、まだ気がっかね えぜ」 え。そんな甘ちゃんじゃな、おい、とてもこの沙漠で、おとなの仲 「五人目よ : : : 」おやじは、右手で光線銃のねらいをつけたまま、 間にはいってくらして行けやしねえよ。親の慈悲で、おれの手でひ サイドバッグから酒壜をとり出しながら冷ややかにいった。「おめねっといてやらあ。ありがたく思え」 えがおれのけつをまぬけ面して追いまわしている間に、反対側で一 「なるほどね」おれはが冷たく、こわばってくるのを感じなが べてん 人かたづけたーーーおめえよりは、ちっとは頭の切れる野郎だったら、むりにうす笑いをうかべていった。「すると、さっきのガラガ ラ蛇も、とうさんの贈物ってわけかい ? 」 テキーラの壜のコルクを口でくわえてぬいてブッとはき出す。ひ「とうさんてよばねえでくれ、情なくって涙が出らあ」おやじは本 げたらけののどをあおむかせてゴクゴクのむーー・だがその間も光線当に泣きそうな顔をして見せた。そっとするような顔だった。 銃はおれの眉間をねらったまま、ビクリとも動きやしない。飲みお「ヘッー この甘ちゃんの、へなちょこ野郎の、大薄のろの、皮 わると、手の甲でロをふいて、シ = ウシ = ウというような妙な笑いもろくにむけてない、どチンピラがおれの伜だって ? そんな事、 声をたてた。 仲間にも話せやしねえ。お前でも一人前にこれが欲しいのか ? 」 その声をきくと、また身ぶるいがした。それはさっきーー・ガラガ そういって親父は、まだ半分以上はいっているテキーラの壜を、 ラ蛇がおちてきた岩の上からきこえてきた笑い声だった。 彼の岩に。ほいとほうり出すと、シャツの胸から、鎖についた。フレー トをひつばり出し、おれの眼の前にちらちらさせた。 「一人前にいきがってどたばたしやがって、やる事なす事、まるで 鐱鬼だあーー・・それでも、もう毛がはえてんのかよ。見せてみろい おれと同じ番号で、ーー成人のマークのはいっているやつだ。 アルト ごス
がる。 その事に気がつくと、ロがひとりでに歪み、ふいに泣きたくなっ 2 こういった連中に、おれはその後何度もおそわれたし、ほかにも た。泣きたいなんて気持ちになったのは、たえてない事だ。・ーー餓 いろんな目にあった。岩蔭を見つけて、ほっと一息いれていると、 突然傍の崖の上から、でかい石がおちて来て、もうちょっとで頭を鬼ン時 : : : たしか五つの時、エリアにほうりこまれて三年目だ。 : ・年上の連中五人に、よってたかって体中黒あざになってはれ上 つぶされそうになった。どういうわけだか知らないが、ロをしめて おいたはずの・ ( ルーンテントの中に、でつかいタランテ = ラが三匹るほどぶちのめされ、裸にむかれ、ごみすて場のくさったごみを、 ももぐりこんでおり、その二匹が、寝ていたおれの胸の所にはいののど一ばいにつめこまれて以来だ。その時だって、泣きたくなった ・ほっていたこともあった。おとなの掌ほどもあるまっ黒な毒蜘蛛のが、大声あげて泣きやしなかった。涙がこ・ほれたが、それはごみの 赤く燃える単眼と、二十センチの間隔でにらみあう事を考えてみる中にくさった魚の骨があって、そいつがのどにひっかかったから おまけにもう一匹は、おれのなき出しの右手のそばを、つだ。その時以来、泣きたいなんて気持ちになった事はない。泣きた くなる前に憎悪するようになっていた。それがどうだ。もう小便く つ、つつ、と動いているのだ。 その時ばかりは、おれも、全身が氷のような汗で金しばりになっさい鼻たれ餓鬼じゃなし、こんないい年になって、たかが虫けらの た。毒蜘蛛は、ちょうどおれの鳩尾よりちょっと上のあたりで、毛二匹や三匹で、肝がちちみ上「て小便をもらしたり、泣きたくな 0 おれは情なさに汗をかきつづけ、自分のみつ むくじゃらの脚をふんばり、一対の毒牙をひくひくさせて、おれのたりするなんて ! ーー・ 顔を十個もある眼で見つめていた。右手の所の蜘蛛の毛が、おれのともなさに腹がたっと、また泣きたくな「た。 「くそッ : ・ : 」おれはあたりかまわず大声でわめくと、ごしやごし 手のふちにちょっとさわった。 どうやってその場をのがれたの やになっこくルーンテントをけっとばした。「畜生 ! ばかやろ 、刀 はっきりお・ほえちゃいない。左手の所においてあった帽子をつ かったのはたしかだが、胸の毒蜘蛛が顔にとびかかるのを、はねてう ! 死んじまえ ! 」 自分の腑甲斐なさに対する怒りで、おれはカッカと来ていた。ラ よけたのか、帽子で顔をおおってよけたのか、皆目わからない。と イトをつけ、べしゃんこになった毒蜘蛛の死骸をつまみあげ、そい にかくおれは、かまれてもいないのに、かまれて舞踊病にでもなっ たように、テントの中でなちゃくちゃにあばれまわった。何だかわっの毒牙をさぐって、自分の腕にカ一ばいっきさした。ーーー鋭い痛 けのわからない事をのど一杯にわめいたらしい。蜘蛛が三匹、ペちみがはしって、みるみる左腕が黒くはれ上りはじめた。二の腕まで ゃんこになり、脚が・ ( ラバラになったと気がついたあと、また恐怖しびれはじめ、腕全体がぬけるほど重くなって来た。だが所詮、死 の発作がお〕そって来て、助かったのに、わめきながら地団駄ふんんだ毒蜘蛛だ。死にはしまい。おれはもう一度・ ( ル】ンテントを蹴 だ。そうでもしなきや、全身のふるえがとまらなかったんだ。全身とばすと、右腕でぬきうちに光線銃をぶつばなした。至近距離なの 冷たい汗が滝みたいにながれ、おまけに小便をぐっしよりもらしてで、テントは一瞬にもえ上った。
られる男たちだ。その追撃者をおびやかしたものは何なのたろう ? 「追いてこい ! 」 かれは相手を見た。闇のなかではほとんど透明に思える厚い灰衣無一一一口のまま案内者の衣をつかみ、ライコンを肩ににないながら、 をまとった、中背の男だったーーー端整な、まるで彫像のような表情エラークは前進した。案内者がいったいどうやって闇のなかを先導 をもっ白い顔が見えた。やわらかい声がひびきでたとき、白い仮面していけるのか、道という道をすっかり憶えこんでいるからでない のなかにとっぜん黒い眼窩があらわれた。「衛兵から遁れてきたのかぎり、エラークには理解の及なない謎だった。しかし、その通路 だな、しかし、もう細剣の要はない わしは友だ」 はーーーそれがもし通路ならのはなしだがーー進むにつれてどこまで 「そういうおまえは いや待て、立ち話ししている間はないのも、うねうねと曲りくねっていた。やがてエラークは、どこか広び ど。礼をいう。また会おう」 ろとした場所へ出たように感じた。たぶん洞窟にはいったのだろ エラ .1 クは身をかがめ、もういちどライコンをかつぎあげた。小 う。足音もどこか違ったひびきをあげる。闇のなかからは、不明瞭 男は目ばたきし、ろれつのまわらぬ調子ではちみつ酒の追加を要求なささやき声がきこえてきた。 していた。武具をつけた足音が、性急な雷鳴のとどろきに似たひび ささやきは、かれの知る言語を用いたものではなかった。そのか きを徐々に高め、急速に近づく松明も、三人の周囲に光斑を投げかすかな震動が、奇妙なふうにかれを襲い、エラークの眉間をせばめ レイー・ヒア けた。 させ、空いた手を思わず細剣の柄にかけさせた。かれはいらだちな 「ここに隠れていれば」と、灰色の甲胄を着けた男がささやいた。 がらロをひらいた。 「ひと安心というものだ」 「ここに誰がいるのだ ? 」 かたわらの石壁に黒い長方形のはざまが口をあけているのを、エ 闇のなかの案内者が、その奇怪な言語をつかってなにごとか叫び ラークは知った。男は、その入口に躊躇なく跳びこんだ。エラーク たてた。ささやきは、とたんに止んだ。 ちょうつがい があとを追った。目に見えないとびらが錆ついた蝶番をきしらせ「味方が集まったのだ」暗闇から、声がそっとささやいた。「目的 て締まったとき、かれらはそのまま完全な闇に包みこまれた。 の地は、もうまもなくだ。あと何歩かすすめばー・・ーー」 やわらかい手が、エラークの手に触れた。いや、ほんとうこ手ど 冫オ何歩かすすんだあと、ふ、こ丁 : し冫火力かがやきでた。かれらは、岩壁 ったのだろうか ? いましがたかれが触れた肉体の持ち主は、およをくりぬいて作った小さな長方形の部屋に立っていた。油灯のかが そ人間と名のつく形態に属するものではないのだという、信じがたやきを受けて、硝石の壁がしっとりと照りはえている。洞窟の石床 い感覚が、一瞬かれを襲ったーーーやわらかすぎるし、冷たすぎるのを横ぎって、ちいさなせせらぎが流れ、壁の基部に口を空けた小穴 だ ! その物体の感触に、かれの膚はわなないた。その手が引っこのなかへ、小鬼の嘲笑に似たひびきを発しながら、そそぎこんでい てのひら み、つづいて灰衣のひだがエラークの掌に当たった。かれはそれる。とびらが二つ見える。灰衣をまとった男が、いまそのうちのひ をつかみとめた。 とつを締めようとしていた。 レイピア っ 362
りたて、神殿に捧げられる銀や香料の分配にまでロをさしはさみおとではみなたまされてきた。人を欺く才にかけてはマルグリスに敵 ります。こやつの富には、いまは没したアトランティスの大王の金 うものはない。だが、たた 」っ二人だけ真実を見抜いているものがこ 5 《 0 銀財宝といえども足もとにもおよびませぬ : : : 恐れおおくも、殿下こにおる。サイクロ。フスの瞳を通して、マラナ。ヒオンは遙かなもの や隠されたものを観察しておる。いまも、彼は昔からの仇敵たるマ の先代さまといえども同様でございます、ガデイロンさま」 ルグリスをさぐっているのじゃ」 「マルグリスの年齢は月ほどもあるとやら」四人目がロごもりつつ とわ マラナビオンは屍衣のような衣服をまとった体を少し震わせ、千 言った。「あやつは永久に生き続けましよう。よこしまな月の妖術 によりて死を打ちまかしました。死の霊は、やつの城砦で他の奴隷里眼の装置から目を上げたが、その明るい琥珀色の瞳のなかに測り と同じく囚われの身となって酷使され、マルグリスの敵にのみ死を知れぬ闇がうかがわれた。 . あたえるていたらく」 「マルグリスの様子をさぐっていたところだ」彼は密議にもどって 言った。 「このようにして、幾度となくやつを盗み見ているうち、 「おおむねそれは事実じゃ」不吉な音をたてて息をしながら王は言 っこ 0 「ところが、いまある大きな疑惑が生じておる : : : 他でもなやつの得意とする魔術の極意を学びとりたいと考えるようになっ た。わしは、昼も、夕刻も、燈火すら点さずに深夜までやつを観察 マルグリスが死んだのではないかというのじゃ」 一同のあいだに震えが伝わった。「それにしても」マルグリスのしつづけた。さらに夜明けから、陽の光が薄く射すまでも観察をつ 不死を確言した妖術師がいった。 「かようなことがいったいどうづけた。 して言えるものか ? やつの塔の扉が今日は日没後も開きつばなし だが、いつでもやつは塔の高天井の一室にある象牙細工の座にす になっているからか。海神につかえる僧侶が、真珠と紫貝の贈り物わったまま冥想にでもふけるごとく、渋面をしているたけだ。また をたずさえてマルグリスの御前にたったとき、やつがマストドンのやつの腕は怪獣を彫り込んだ肘当てにおいたまま、眼は開いたまま 牙によって作られた高い玉座に坐ったままなのに気づいた。やつはで、まばたきもせず東洋風の窓を通して流れゆく雲間に星のまたた く空の彼方に釘づけになったまま。 いつものように高慢にも口も開かす、類猿人の召使が、命じられも このように、わしはやつを丸一年と一ヶ月のあいだ見張ってい せぬのに入って来て、真物を運び去った」 「おりしも、今宵」別の者が口をきった。「わしはあの黒い塔の不た。一日も休まず、召使の怪獣どもは、贄をこらした酒肉を器に盛 減の灯火が、邪神ターランの眼のごとく、船下の夜空をこがして燃って捧げるが少しも手がっかずに下げられていた。しかも、唇の動 え上るのをみた。妖術師が死んだのなら出てくるはすの使い魔どもきや体を揺するのさえこれつぼっちも見たことがない。 が塔から離れもしない、かりにそうであるなら闇の中でもやつらの ついに、マルグリスは死んだという結論しかわしにはでてこなか 呻き声や哀歌が人々の耳に入るはずだが」 った。ひたすら、やつの邪悪さと、魔術への図抜けた才による効力 し、カ冫 、こも」ガデイロンはきつばりとした調子でいった。「このこ によって蛆虫もっかす、いまだに体もくずれず、腐敗もまぬがれて よわ ラン・フ ・せい かな
: いたくなるほど笑っちまった。間もなく自分に起る事がわかってただけだ 0 た。 それからすごい、舌の根がしゆっと音をたててかわくような、残 2 いれば、そんなに笑えなかったろうが : なにもこんな事ばかりや 0 て、くそ面白くもない沙漠をあそびま忍きわまる殴り合いがはじま 0 た。とりわけ手の早い方は、体つきに 涼しいタ方、明方、灼けつくような似あわずよくや 0 た。考えつけるだけの、ありとあらゆる卑劣な手 わっていたわけじゃない。 日中だ「て、おれは一一台のモトシク 0 をころばせて、あちらのステをつか 0 ただ。だが、体重の差はいかんともしがたく、その面は ーシ = ン、こちらのステーシ ' ンと、やつのいそうな場所をさがし次第に血まみれにな 0 てい 0 た。ほかの奴らはとめようともせず、 ゲラゲラ笑いながら何かわめいていた。ーー・最後まで見すに、おれ てあるいた。やつらのたむろしていそうな場所ものそいてあるいた。 一度、高台の上から、谷間のわずかな灌木のはえているあたりは腹ば 0 た崖 0 ぷちから起き上 0 た。 , ・ー、結局やつらの中に、やっ はいなかった。だが、やつらがどんな連中で、やつはその中でも相 に、やつらの一団らしい姿を見かけた。おれは崖の端に腹ばいにな 0 て、双眼鏡をむけた。まさかこんなあたりまで、おれが二台目の当なものだろう、という事はわか 0 た。殴り合いにな 0 たら、こ 0 ちに勝ち目はない。体重はどいつもおれより二十キロは重いだろ モトシクロをまき上げたような、弱虫のへなちょこ野郎どもがはい う。その上にしたたかだ。だが、光線銃なら、なんとかさしで行け りこんでいるわけはないと思ったが、それならそれで、またちょっ べてん だが、いたのはやつらだ「た。六人いるかも知れないし、頭なら、も「と行ける自信がある。ーーー蝎や毒 とした気はらしになる。 た。みんなでかくて、ひげ面で残忍で、獰悪な面がまえだ 0 た。片蛇よりも 0 とたちの悪い、陰険きわまる野郎ばかりそろ 0 ている未 見ている成年グループの中で、三つの上の連中にだってこと頭に関しては、 眼の奴、顔にすごい傷のあるやっ、片耳のないやっ、 ただの一度もひけをとった事のないおれた。このおれの、旅仕度た うちに、腹の底に冷たいものが湧いて来た。ぶるっちゃいけないと 思いながら、あんな連中を、一ペんに大勢敵にまわしたら、いくら 0 て、本当はおれのものじゃないんだ。みんなに見せびらかして、 ホスのやつを途中で待ち伏せ、そ 自慢たらたら出かけようとした、 : 、という事を、 おれがきちがいみたいに荒れくるっても勝目はない つくり頂戴しちまったものだ。求スは裸にむかれ、肋骨二本を折ら しつかり自分にいいきかせていた。見ているうちに、一番でかいの と、一番手の早そうなのが何かいいあいをはじめた。陰悪な顔つきれて、どこかの崖の下にころがしておいた。今までころが 0 ている とするなら死んでるにちがいない。 で二言三言いいあらそったかと思うと、手の早そうなのがコ 1 ヒ】 べてん とおれは心の中で叫びながら、まだぶる そうさ、頭でこいー をばっとでかい奴の顔にひっかけた。ひっかけると同時に、そいっ っていた。それがにさわって八つ当りしたかったが、そこでさ は光線銃をぬきかけた。だが隣にいたやつが、その光線銃を持った 手を蹴り上げた。でかいのが、おそろしいストレートを相手の顎にわいじゃ、谷間のやつらに見つかる恐れがある。距離ははなれてい くれた。まともにくら 0 たらす 0 とんで顎の骨が折れていたろうるから、つかまる恐れはなさそうだが、地理不案内の立場は不利 八つ当りできないため、むしやくしやは胸の中でこりかた が、運のいい事に相手は後へよろけて、ストレートは肩先へはいっ
恐れ、身を引く許しをガデイロンから得た五人の妖術師のなかの二が最上の方法だと考えた。いかなる挑戦や妨害があろうと彼らの目 人が、しばらくして心臓をむしられて死んでいるのを一つ目巨人の的は、万能の決して誤らぬ予言者としてあまねく知れ渡るマルグリ スの宣託を問うことだった。 眼球を通してマラナ。ヒオンが確認していた。 その二人は、ニゴンとファステュールという名の兄弟だった。彼サスランの向かいにある海から刻々吹きわたる風が、天空自由に らは自分たちの臆病さを深く恥じて、残った者にたいする負い目を飛翔する悪魔の軍隊のように塔の周囲で音をたて、妖術師の長いマ 一挙にはね返し、名誉挽回をはかって大胆な計略を案出した。 ントをひるがえして顔々にまとわりつかせた。しかし、広い門をは 不吉な星のかがやきと海からの雲が飛んでいる、月のない夜が再 いるともう突風の音も消えてもはや風にわすらわされることもなか び街に訪れたとき、ニゴンとファステュールは暗い通りを抜け、サ った。わずか一歩入っただけで、彼らは大墳墓に入ったような沈黙 スランの心臓部に位置するけわしい丘までやってきた。その上に、 につつまれた。彼らのまわりには、貴金属や伝説に材を得た飾りの ほとんど記録にさえ残っていない遠い昔から、マルグリスの不気味ついたつづれ織りと、貴重な宝石によるモザイク模様のついた黒大 な塔が立てられていた。 理石の女像柱が変らぬ燈火のなかで浮き出していた。あたりには死 丘は一面に糸杉が密生し、真昼の太陽のもとでさえ、その茂みはの香油のような馥たる芳香がたちこめていた。 魔法の煙幕をひいたように暗く陰気たった。両手を使ってよじ登っ 思わず長怖の念にとらわれながら、あまりの静けさに不自然さを てゆくそのさまは、塔への通路となっている金剛石の階段上をよぎ感じていた。しかし塔の表玄関がマルグリスの怪物によって守られ る夜の霊さながらだった。はげしい夜風に揺れた枝が、彼らに打ちていないことで彼らは大胆になって居住区に通する大理石の階段を かかるたびにぎよっとしてすくみ上がりながらもニゴンとファステのにつていった。 こうこうたる燈火の光に照らしたされて、そこかしこにはかり知 ュールは階段を登っていった。顔に打ちかかる大粒の海のしすくが まるで悪鬼のはく唾におもわれた。森の中は呪わしげな吐息や奇怪れぬ不思議な宝石がみられた。真珠と白珊瑚で魔術師のルーン文字 きんしゅう なうめき、母鬼から迷った小鬼のたてるようなすすり泣きなどでみを加工した象牙の燭台、銀と錦繍による奇怪な絵のある織物、魔よ めのう ちみちていた。 けの宝石を散りばめた洋銀の小箱、翡翠と碼瑙による小神像、金と 塔の灯が、ゆれる枝の間を通して見えたが彼らが登れば登るだけ象牙細工の大きな悪鬼像。ここには長年のあいだに集められた山ほ 再ひ彼らは自分たちの無鉄どの略奪物が、まったくそんざいにおかれていた。しかも、そこら それも遠ざかってゆくような気がした。一・ 砲ぶりを後悔した。しかし、さしたる傷も負わず、また妨害も受けの盗人でも勝手にもち出せるかのように見張りもなしでおかれてい ずに、風の吹きすさぶなかで静かに燈火に浮かびあがっている開きる。 つばなしの正面までとうとうたどりついた。 財宝を目のあたりにし、欲望を刺激されながら、何の妨害も受け 彼らは、よこしまなその計画にもかかわらず、大胆に押し入るのることなく室から室へとゆっくり二人の妖術師は上っていった。そ サイクロプス 354
空間。久しぶりの宇宙。ムーンロケットが無重力空間の定期航路 宇宙スティション行きの連絡船が、すでに紫色の焔を吹きだして いる。しばらく現われなか 0 たアアがまた気まぐれをおこしたを進みはじめた頃、は、地球のことを忘れかけていた。そこに残 してきた少女とその弟のことが気がかりだったが、それ以上に宇宙 のだ。 の感覚が、彼を興奮させていた。 アンアンが、でつかい漫画本の頁をめくる。アンアン は、船内で一晩ねむった。目覚めると、スクリーンに映った月 面は、すぐ目の前だった。は物慣れた動作で、船内靴をはき、通 は、お菓子をポリポリと食べている。 と水と悪霊の力とによって破壊されてしまった。 ーガイスト現象に悩まされ、幽霊の姿をしばしば目 イギリスの都市には、どこでもそれそれ一軒ぐら 保険会社や警察、水道局や消防署その他から調査 いは幽霊屋敷と称するものがある。だが、こんなこ撃した。いつもツィードのトップコートを着て現わ に来た者たちはだれも、この破壊の原因をつきとめ れたが、時には、テニス用のスポーティーな服装のと とはちょっとめずらしい ることができなかった。なにしろまったく火の気の 「チャーリー 」という愛称をもったきわめて活動的きもあ「たそうだ。しかし現われる前に、土のすえ ないべッドが急に燃え出し、その上の枕は逆にグッ たような悪臭がし、その不快さにたえられず、クー な幽霊の出る家の話がはじめて新聞に紹介されたの ショリと水に濡れ、しかもその水はいったいどこか ー一家もその家を立ちのいた。 は、一九六五年三月。その年フィッシャーという一 さて話の場面を変えよう。キングスカースウ = にらしたたり落ちたのか見当もっかないという不可解 霊家が、イギリスのポストン・スパルにあるその家に な事件が、あいついで起ったのだ。またバクスター はデヴォン州の海岸線に接した、快適な小村だが、 幽引っ越してきたときのことだ。 一髪おかしなことに飼犬が妙にその家を嫌「て、夜はそこに三百年ほど以前に建てられた古い一軒の屋敷夫人は幽霊も目撃した。背の高い金髪の若い男で、 トップコートと帽子をつけ、彼女に、いたずらっぽ があった。それをアラン・ディヴィスンという夫妻 決して屋内で寝ようとしない。そのうちに、テープ く笑いかけたという「その後彼女の家は、悪魔ばら ルがひ「くり返 0 たり、赤ん坊の寝ている小さな寝がアバートに改築し、アパート業を始めたのだが、 いの儀式で清められ、そのおかげか不可解な現象は 台が、とんでもない方に移動したりという、いわゆせ 0 かくのこの商売も、説明のつかない物理現象が 次第に遠のいて起らなくなったが、ふたたび我が家一 一けるポ ~ ターガイ = ト ( 騒霊 ) 現象が起き始め、とう連発して、廃業の危機にさらされることにな 0 た。 ディヴィスン夫妻の休験したことは、いろいろな点にもどる前に、夫人は相当な修理をその家にほどこ とうその幽霊が家人たちの眼の前に姿を現わした。 で、ポストン・スパルでのフィッシャー一家らの体さなければならなかった。 一軒それはツィードのト , プ 0 ートと、それによく似合 驚くべきことは、この三軒の家に出た幽霊は疑い 験に似ていたのである。ポルターガイスト現象のほ 三う帽子をかぶった金髪の青年だった。フィッシャー もなく、すべて同一人物だったことである。三軒の かに、実際に幽霊も目撃されているが。それはプル 一家は、その青年を「チャーリー」と呼ぶことにし ーにゴルフズボンといういでたちの金髪の若家の住人はたがいに知りあってはおらず、三つの事 たという。フィッャー家では、このことを新聞など の住人たち件の関連性についても、まったく知らされていなか い男だったという。また、このアパート 一怪には出したがらなか 0 たのだが、あるとき訪問客が った。にもかかわらず、フィッシャー家、クー が、悪臭がすると苦情を言い出したが、それは土の 界チャーリ ーを目撃してしまい、その客の口から新聞 家。ディヴィスン夫妻。それにバクスター夫人から に発表されてしま 0 た。そのことでチャーリーが腹すえたような不快な匂いというのだ 0 た。 別々にとりつけられた証言によると、幽霊はすべて ここで舞台は一転してヨーク市の郊外にうつる。 を立てたのか、それ以来、煙突から煉瓦やすすが落 「チャーリー 」にまちがいなかった。 十カ月間ほどというもの、そこに住むエリザベス ちて来たり、水道管が破裂したりというように荒れ ーリーが互いに遠く隔たった三 しかし、なぜチャ ・バクスター夫人は「心霊カからの総攻撃」の恐怖 方がさらに一層激しくなり、フィッシャー一家は、 にたえてきた。ところが一九六一一年十一月にいたっ軒の家をかけもちで荒しまわ 0 たのか ? 生前は、 ついに立ちのく以外に仕方がなくなった。 て事態はいよいよ深刻化し、とうとう彼女の家は火どんな人物だ「たのかはま 0 たく不明である。 ー一家も、ポルタ その次に引っ越してきたクー