「。フレートを端末においてください」とマシーンはいった。 ものをむき出しにしていた。おれはその笑った顔を見たとたん、そ わら いつの臭い一物を鼻先におしつけられて嘲笑われたみたいな気がし カウンターの奥のにある浅い凹みから、おれは自分のカードを て、反射的に画面にむかって唾をはきかけた。 とり上げ、かわりにレートを鎖についたままおいた。 「ええ、います : : : 」とマシーンはたくさんの目ン玉を。ハチパチ点「ようし、もういい : ・ : 」おれは胸のむかっきをおさえて、袖でロ をふいた。「もういいっていってるんだ。早くそいつの小汚ねえ面 減させて答えた。 「 - しかにこのエリアに登録されています」 を消しちまえ ! 」 「ありがたいこった : : ・」おれはニャリと笑った。「で、どこにい こうこなくっちゃ : : : と、おれは鎖の先のプレートを、胸とシャ る ? 」 ツの間にしまいながら、ロを歪めて思った。 ーーあの畜生なら、や 「それはわかりませ。おとつい、 三十キロほどはなれたステーシ りがいがあるってもんだ。手強そうで、海千山千で、情容赦ないし ョンで、カードをつ、っています」 たたかものらしいが、それだけにこっちだってやりがいがある。 「それはど 0 ちの方だ ? 」 外へ出ると、手に入れた中古のモトシクロが、山のように荷物を 「南西です。ですけ・、今はどこにいるかわかりません」 つんで待っていた。あちこちうす汚れているが、まだ結構頑丈そう そいつはどんなやっ 「お前、データをもっているんだろう ? だ。おれはそいつのリモコン繰縦器をひつばり出してエンジンを始 ・こ ? 強いか ? 」 動した。それから馬の手綱をひくようにモトシクロを後にひつばり 「すごいですよ。も息子を三人殺しました」 ながらゆっくり歩き出した。モトシクロはごろごろとついてきた。 そうこなくっちゃ・ : : と、おれはまた歯をむき出して笑った。や つばり本人でなくち張りあいがない。顔も知らないが、どうせおれおれはすぐ南西の方へ行かず、ゆっくりとステーションの裏手の方 へまわって行った。裏手には、このステーションへ来ている動力ケ 同様の青二才の兄弟。、そいつにとってかわっていたんじゃ : ー・フルが、沙漠の砂にもぐりこんでいるのが見えた。おれは光線銃 「どんな面をしてるだ、写真はあるんだろう ? 」 をぬくと、まずその動力ケープルをうち、つづいてステーションの 「ちょっと待ってくこさい」 屋根の、レーダーやビーコンのアンテナをうちおとした。これでス マシーンはビイビ鳴ると、正面の O に一枚の男の写真をう テーションの中でまぬけ面しているマシーンは死んた。奴がどんな っし出した。 肥て、でかくて、鬚だらけで、見るからに凶悪 自己防衛装置をもってるか知らないが、もとをやられちやどうにも そうな面だった。黒髪に黒い鬚、それに黒い帽子をかぶって黒い なるまい。 シャツを着ている。そいつは歯の一本欠けたロをあけて笑っていた が、その笑いはちっともそいつの凶悪な感じをやわらげてやしなか おれは横手にアームロックでつながれている新品の。ヒカビカした た。かえってそいつの内面にかくされている残忍さ、冷酷無情モトシクローー誰かのあすかりものだといっていたが、そんな事は かまったことじゃない の傍へ行き、まだ後生大事にハンドルを さ、胸のむかっくような卑劣邪悪さ、蛇のような執念深さといった 0
をつかみ、たらりとぶらさげた。頭はまだひょろり、ひょりと舌ををむけて、おれの乗「てきたモトシク 0 をのそきこんでいた。 「ひどくのりつぶしたな : : : 」と、そいつはおれに背をむけたまま 出し、顔を近づけると、かみつこうとしてカッと口をあけた。 いった。「もうガタガタだ : : : 」 おれは、大声で笑った。 おれは光線銃をぬこうとした。まだ背中の方にまわっていたがぬ 「どうだ、うす・ほけの芸無し野郎 : : : 」 だが、おれの腕は途中で凍りついた。 おれはかみつかれないように注意して、そいつの顎の関節をつかけない事はなかった。 そいつは背中を見せたまま、光線銃をぬいており、そのオレンジ 蛇のロは、だらりと み、ヘし折るようにしてはずしてやった。 色の集光レンズが、おれの眉間をびったりとねらっていたからだ。 ひらいて、閉じなくなった。 そいつはゆっくりこっちをむいた。おれのモトシクロのサイドバ それから、のど首の所に爪をた おれはまた大声で笑った。 ッグからとり出したサラミを左手にもって、ロを動かしていた。 て、指を奥につつこんで骨をつかむと、びーツと一気に骨をぬきと ーひげだらけの凶悪無残な面の中で、唇たけがいやらしくボッテリ 骨なしの肉筒の上についた頭は、まだ生きてひ ってやった。 くひくしていた。ナイフをつか 0 て腹を一文字に裂き、血と肉をざと赤い。その唇は脂だらけで = チャ = チャ光り、強靱な顎が、サラ ミをゆっくりとかんでいた。そいつの顔を見たとたん、今度こそお っとこそげとると、おれは頭が前にくるようにそいつを腰にまきっ け、むすんでベルトにはさみこんだ。それから。ヒン。ヒンはねているれの体の中の、血液という血液が、瞬間冷凍されたみたいに凍り上 後半身をつかんで、しつ。ほの先をたたき切り、ガラガラ鳴る鈴をベ 「こりやおれの車だぜ : : : 」とそいつは、変におだやかな声でいっ ルトにつるした。 「よくもガタガタにしてくれたな : : : 」 その時になって、どっと汗がふき出した。血だらけの革手袋の甲た。 ガラガラ蛇の眼と、二メートルへだててにらみあって平気だった で顔の汗をぬぐうと、おれはモトシクロの方に、五、六歩もどりか ールはなれて見たとたん、心臓を氷の手 だが、おれの足は、六歩目か七歩目でびたりととまつおれが、そいつの眼を六メ けた。 でわしづかみにされたような気がした。 それも、この世で一番ものすご こいつは正真正銘の毒蛇た。 おれのモトシクロの所に誰かいた。 いやつだ。 「おやし : おれはがたっく胴をなんとかひきしめようとしながら、やっとか でかい男だ 0 た。身長もあ「たが横幅もすごい。肩なんかもり上すれた声でい 0 た。 とたんにやつは、体を折るようにして、〈工〈〈へへ、というよ って、体重は百キロをこえていそうたった。黒の帽子に黒のシャツ、 その笑い声は うな、なんともいやらしい笑い声を爆発させた。 生皮のチョッキ、黒のズ求ンといった黒ずくめの男は、こっちに背 こ 0 ごろ 3
トのソーダ割りか ? 」おれはマシーンの横面に唾をはきかけた。 「テキーラだ。早くしやがれ」 マシーンは、それこそ蛙の面に水という風に、テキーラのグラス と氷水のはいったジョッキをすべらしてよこした。お愛想のレモン 沙漠をころがして行くと、やくざなモトシク tl が、またオー ヒートし出しやがった・・ーー腹をたててエンジンに陲をひっかけてやと岩塩もついていたが、おれはレモンの切れつばしを床にたたきっ ったが、むろんそんなもの何の役にも立ちゃしない。チュンと鳴っけてふみにじり、岩塩をかじって酒をのどにほうりこんだ。ーー機 て、くさい煙と白っ・ほいかすがこびりついただけだ。長い間、日中械にあたったってしようがないことぐらい、おれにだってわかって 五十度近い沙漠をころがしつづけて来たんだから、ばてるのも無理 いた。だが、この二日、気晴しにぶち殺すねずみ一匹、鳥一羽にも はない。冷えこむ夜をえらんでころばせれば、長持ちするってんだ出あわなかったので、おれはむしやくしやしていた。おまけにこの が、そんな事知った事じゃない。夜走ろうが昼走ろうが、おれはお暑さだ。暑さにゃなれていたが、この沙漠を三日ぶつつづけて昼間 れの好きにする。ビ 1 コンはさっきから近くにステーションがあるぶっとばすなんてきちがい沙汰をやったので、頭に来ていた。三日 事を示していたし、おれはかったるいのはきらいだから、かまわず前、ちょっと寝心地のいい岩陰を見つけたので寝すごしちまい ぶっとばした。エンジンは悲鳴と煙をあげはじめ、ス。ヒードはおち日が高く上って、おれの寝ている所にさしこみやがったので、それ てきたが、おれはかまわずアクセルをし・ほりあげた。モトシクロは でお太陽の野郎にむかっ腹たてて、煙のたってるフライバンみたい 死にかけのじじいみたいに、のどをぜい・せいいわせて、それでもス な昼の沙漠をぶっとばしつづけた。寝すごしたのは、自分のせいだ テーションまで丘一つこえて、二キロメートルを、よたっきながら が、おれが腹をたてたのは、寝てるおれを照らしつけやがった太陽 やっと走り通した。おれはもうもうと青い煙をたてているモトシク だ。ーーー光線銃がとどくなら、太陽の野郎だってぶつ殺してやりた ロの奴を、先に鉄板のはいった・フーツで、思いきり蹴りとばして中 ) v' つ、・こっこ 0 へはいっこ。 「この糞野郎 ! 赤ッ尻 ! 」おれは沙漠をぶっとばしながらぎらぎ 「酒と氷水だ」おれはカウンターのむこうにひかえている間ぬけづら煮えたぎっている太陽にむかってわめき、本当に二発ほど太陽に らのマシーンにいった。「それからよ、外のオンポロに冷却液とハ むかってぶつばなした。「殺せるもんなら殺して見やがれ ! まん づら イドロックスをくれてやれ」 まる面の芸無しめ ! 」 「あのモトシクロ、だ、ぶばててますよ : : : 」建物から、フレキシ 「酒は何にしますか ? 」 づら ばんだい面で、ちゃちなビーズ玉みたいなこけおどしのランプを・フルアームとパイプをのばして、おれのオンポロをいじっくってい 「・ハルプとイグニッション たマシーンが、まのびした声でいった。 ちかちかさせたマシーンは、びいびい声でいった。 がやきついてます。とりかえなきや : 「いきなお兄いさんは、何をのむかよ。くそあついからペ。ハ てんと けっ 6
の砂の中から、鎖についた。フレートを見つけてひろい上げた時、おひろくなっている高台の上にモトシクロをとめ、岩に体をかくしな れの膝はどうしようもなくふるえ出した。鎖はひきちぎられていた がら、道を見おろす所まで体を低くして走って行った。ーー道は岩 3 、。フレートにはのマークが刻印され、うちこまれているナン・ハ 場の、ほんの四、五メートル下を走っていた。石ころと砂ばっかり 1 は、おれのやっと同じだった。 で、草も木も一本もはえていない道が、ゆるくうねってひろがって ン」いう事は こいつは、おれの前に殺された見た事のないおれ いた。その向うに、岩が何層にもけずられた崖がおちこんでおり、 ロのこちらからは、赤茶けた対岸の岩肌が見えた。断崖の下から、ごう の兄弟であり、そしてこれをやったのは : : このものすごい ごうと音がきこえたが、水は見えなかった。 乾くような殺しをやったのは、やつなのだ ! おれは大きな岩の横にはらばって双眼鏡を眼にあてた。ーーー眼下 の道の、もと来た方角は、一キロ以上も見わたせたが、やつはまだ 見えなかった。反対側は、五、六百メ 1 トルむこうで岩の陰にまわ その日ついに、おれはやつを一時間そこそこという所にまで追いりこんでいたが、そちらにも見えなかった。おれは用心して、石の 一つを道の上に投げてみた。石はほこりだらけの道をすべって筋 つめた。あるステーションで、ほんの一時間前、やつが立ちょった これならやつのシクロがまだ通っていないのは確実 とマシーンが教えてくれた。そして、立ち去った方向には、四十キをつけた。 ロはなれてステーションがあり、そこまでは一方が岩山、一方が深だ。ゅうべの風がふりまいた砂の上に、轍のあとは一つもついてい い渓谷をうがっ谷川がつづいており、 いわば一本道だった。やつのない。 これまでの移動ス。ヒードは、平均して十キロだ。今からとばせば、 おれは時計を見た。前のステーションから二十キロほどの地点 やつよりは先 途中で追いつける。だがおれは、やつを待ち伏せしたかった。そので、おれはその距離を四十五分でとばして来た。 ためには岩山の間をとおる、ひどい道をきちがいみたいにぶっとば に来ているはずだ。そして、やつは、いずれにしてももうじきく なければならなかった。 る。「お迎え」の準備をしてやらなくちゃなるまい。双眼鏡をしま そして、おれはそうした。 って、モトシクロの方にひきかえそうと体を起した時、頭の上で、 中古のモトシクロは、もう足手まといだった。それにもうそれほシ = ウシュウと歯の間からもれる笑い声のようなものがした。はっ ど、大荷物をひつばって行く必要はない。「大詰め」は眠と鼻の先と身がまえると、傍の岩の上から、どさっと何かが眼の前におちて なんだ。おれは必要最少限の荷物を新しい方のシクロにつみ、中古きた。 はステーションの裏の扉から蹴おとした。それからきちがいみたい カタカタカタというような、かわいたくるみの殻をたくさんせわ な曲乗りで、やけた岩のころがる細い上り下りの山道をぶっとばししなくふるみたいな音をきくまでもなく、おれの眼の前わずか二メ た。あれはてた一本道を見おろせる所までくると、おれはちょっと ートルの所にとぐろを巻いているのは、体長三メートルはありそう
つかまえているロックをやき切った。それからステーションの倉庫真理たという事をつかみとりもした。ほかの奴もそれが当り前の事 ハイドロックス にはいり、もう一本の飲料水のガロン罐と、燃料の壜二本、それだと信じていたし、おれも信じていた。 にサイド・ハッグにはいるだけの線源をとり出し、新品のモトシクロ もし、このあたりでミイラになる奴が、おれの知らない につんだ。線源の一つの安全キャップをはすし、テキーラグラスのおれと同じような目的をもったーー・おれの兄弟だったら、おれのし た事は、はっきりとおれの得になる。もし、赤の他人だったら 受け皿の上にのせて倉庫の入口の日かげにおいた。まわりにハイド てんと ロックスの壜をいつばいならべ、最後にカウンターからとって来たそんな事知っちゃいない。沙漠のお太陽も禿鷹も、別におれの肉親 日と、そうでない奴を区別しないだろう。 大きめの氷の塊を、受け皿の上に、線源とならべておいた。 おれだってしない。 かげだったが、このあっさじゃ、のんびりもできない。おれは新品 のモトシクロにまたがると、中古シクロの操縦器を手にもって、す たこら逃げ出した。一キロほど行った時、暑さでとけた氷の水が、 受け皿の中で線源をショートさせ、背後でものすごい爆発がおこっ た。おれはシクロを砂丘のむこう側へつつこみ、とびおりて顔を伏日中の気温は幾分さがったが、くそ面白くもない沙漠はきりもな くつづいた。くたらない景色には、餓鬼の時からなれつこになって せた。一キロはなれて、砂まじりの衝撃波が、おれの帽子をふっと いたが、おれの育った場所よりも、まだくだらない風景というもの ばし、つづいて爆風が砂を吹きちらした。ハイドロックスが何本あ がある、という事をはじめて知った。見わたすかぎり、のべっとし ったか知らないが、派手にやったもんだ。赤黒い焔と黒煙がぐわっ た灰色の砂がつづき、赤茶けた石がごろごろころがり、たまに地下 と宙天にふき上げ、建物の屋根がロケットのようにまっすぐやけた だれた青ガラスみたいな空へふっとぶのが見えた。おれは砂をはら水のありそうな所には、無愛想でグロテスクで、棘だらけで、あち こち癩病やみみたいに白くただれたサポテンが、阿呆みたいにつつ って立ち上ると、帽子をひろい、またモトシクロにまたがった。へ ッ たっているだけだ。ねじくれまがって、葉らしい葉もない、灰緑色 あとからきた奴は、こ と肩をすくめたい気持ちだった。 のへんにあるはずのステーションが、土台だけになっているのを見の灌木が、ところどころに・ほさっとはえている。砂はカンカンにか たまってくるくせに、一風吹けば眠もあいていられないような、熱 てふったまげるだろう。水がなくて、エンコして、沙漠の中でひか らびて、ミイラにでもなりやがれ、だ。こちらはもういただくだけく細かい粒がとんでくる。タン・フリング・ウィードがころがってく のものはいただいた。むろん、ぶっとばしたって直接的には何の得る事もあるが、およそあんな馬鹿げた草は見たことがない。時々の もない。だが、直接的にではなくとも、とにかく他人の不利益は自こっている岩山もぎざぎざしているだけで、味も素っ気もない。そ おれは小さい時から、そう教えられたし、何百遍とのくせ人がの・ほろうとすると、とてつもない岩のかけらをふらせた 分の得だ。 りしやがる。 なくいやというほどその事を思い知らされたし、自分自身でそれが 2
: いたくなるほど笑っちまった。間もなく自分に起る事がわかってただけだ 0 た。 それからすごい、舌の根がしゆっと音をたててかわくような、残 2 いれば、そんなに笑えなかったろうが : なにもこんな事ばかりや 0 て、くそ面白くもない沙漠をあそびま忍きわまる殴り合いがはじま 0 た。とりわけ手の早い方は、体つきに 涼しいタ方、明方、灼けつくような似あわずよくや 0 た。考えつけるだけの、ありとあらゆる卑劣な手 わっていたわけじゃない。 日中だ「て、おれは一一台のモトシク 0 をころばせて、あちらのステをつか 0 ただ。だが、体重の差はいかんともしがたく、その面は ーシ = ン、こちらのステーシ ' ンと、やつのいそうな場所をさがし次第に血まみれにな 0 てい 0 た。ほかの奴らはとめようともせず、 ゲラゲラ笑いながら何かわめいていた。ーー・最後まで見すに、おれ てあるいた。やつらのたむろしていそうな場所ものそいてあるいた。 一度、高台の上から、谷間のわずかな灌木のはえているあたりは腹ば 0 た崖 0 ぷちから起き上 0 た。 , ・ー、結局やつらの中に、やっ はいなかった。だが、やつらがどんな連中で、やつはその中でも相 に、やつらの一団らしい姿を見かけた。おれは崖の端に腹ばいにな 0 て、双眼鏡をむけた。まさかこんなあたりまで、おれが二台目の当なものだろう、という事はわか 0 た。殴り合いにな 0 たら、こ 0 ちに勝ち目はない。体重はどいつもおれより二十キロは重いだろ モトシクロをまき上げたような、弱虫のへなちょこ野郎どもがはい う。その上にしたたかだ。だが、光線銃なら、なんとかさしで行け りこんでいるわけはないと思ったが、それならそれで、またちょっ べてん だが、いたのはやつらだ「た。六人いるかも知れないし、頭なら、も「と行ける自信がある。ーーー蝎や毒 とした気はらしになる。 た。みんなでかくて、ひげ面で残忍で、獰悪な面がまえだ 0 た。片蛇よりも 0 とたちの悪い、陰険きわまる野郎ばかりそろ 0 ている未 見ている成年グループの中で、三つの上の連中にだってこと頭に関しては、 眼の奴、顔にすごい傷のあるやっ、片耳のないやっ、 ただの一度もひけをとった事のないおれた。このおれの、旅仕度た うちに、腹の底に冷たいものが湧いて来た。ぶるっちゃいけないと 思いながら、あんな連中を、一ペんに大勢敵にまわしたら、いくら 0 て、本当はおれのものじゃないんだ。みんなに見せびらかして、 ホスのやつを途中で待ち伏せ、そ 自慢たらたら出かけようとした、 : 、という事を、 おれがきちがいみたいに荒れくるっても勝目はない つくり頂戴しちまったものだ。求スは裸にむかれ、肋骨二本を折ら しつかり自分にいいきかせていた。見ているうちに、一番でかいの と、一番手の早そうなのが何かいいあいをはじめた。陰悪な顔つきれて、どこかの崖の下にころがしておいた。今までころが 0 ている とするなら死んでるにちがいない。 で二言三言いいあらそったかと思うと、手の早そうなのがコ 1 ヒ】 べてん とおれは心の中で叫びながら、まだぶる そうさ、頭でこいー をばっとでかい奴の顔にひっかけた。ひっかけると同時に、そいっ っていた。それがにさわって八つ当りしたかったが、そこでさ は光線銃をぬきかけた。だが隣にいたやつが、その光線銃を持った 手を蹴り上げた。でかいのが、おそろしいストレートを相手の顎にわいじゃ、谷間のやつらに見つかる恐れがある。距離ははなれてい くれた。まともにくら 0 たらす 0 とんで顎の骨が折れていたろうるから、つかまる恐れはなさそうだが、地理不案内の立場は不利 八つ当りできないため、むしやくしやは胸の中でこりかた が、運のいい事に相手は後へよろけて、ストレートは肩先へはいっ
「酒だ」とおれよ、つこ。 。しオ「ここに新しい奴はおいてるか ? 」 背後でモトシクロが、しめ殺されそうな音をたてるのを、おれは 「中古ならおいてますが : : : けっこう走れますよ」 。ヒリつく酒を舌の上にころばせながらきいていた。 「さっき見たが裏の方にビカついたのがあったじゃないか」 せきこむようにエンジンがかカり、死にそこないの心臓のような 「あれはあすかりもんです」 音が、今にも消えそうになり、また打ちはじめ、大きくなったり小 「じゃいいよ。中古をくれ」おれはカードを出して、カウンターにさくなったりしながら遠のいて行くのを、ゆっくり耳でたのしみな おいた。「それからなー・ーそいつに水を三ガロンと、酒二本、食いがら、おれはのどのやけるような酒をのみくだし、それからろくす 物を三、四日分っんどいてくれ。光線銃と線源半ダースも : ・ つぼふりむきもせずに、戸口へむかってぶつばなした。一発でポロ ドロックスも五本ばかりくれ」 機械は白煙をあげて木っ端みじんにふきとんだ。ーー燃料の残り 「そんなに ? 」マシーンはビイビイいった。 と、距離の計算をわずかにまちがえて、砂まじりの爆風が、戸口の 「それじゃ、あなたはのれませんよ」 所までやっととどいたが、おれのすわっている所までとどかなかっ 「いいってことよ ! お前の知った事か ! 」おれは氷水の半分はい たので、気分をこわされることはなかった。いまいましいポロ機械 ったジョッキをカウンターにたたきつけた。ジョッキはこなごなにがふっとぶと、それをまき上げた時に、前歯を三本へしおって、き われてすっとんだ。「機械はいいつけられた通りやってりやいいんんたまを片方ふみつぶしてやったへなちょこ野郎の面のことも消え だ。つべこべぬかすとまぬけ面に熱いのをたたっこむそ ! 氷水てさつばりした。 と、それから酒だ」 「次のモトシクロに、品物をつみましたが ! 」 マシーンは、意見はいうがロごたえはしない。だから、人間とも とマシーンはいっこ。 何とかやって行けるんだろう。それでも、その「意見」が気にいら「けっこうーー・ところでちょっときくが : : : 」 ないというんで、ぶちこわされたマシーンだって多い。意見などい おれは首にかけた鎖をひつばり出し、その先についた金属のプレ わせないようにすりやいいんだが、それではマシーンの値打ちは半 ートをカウンターにおいた。 減してしまう。痛し痒しってとこだ。何だって世の中ってやつは、 「わかってるだろう ? これと同じゃっを持っている男をさがし こうも腹ばかりたつようにできているんだろう。 ているんだ」 「表のポロを走らせな」カウンターの上の破片をかたづけて、三杯「 ( ンテ心ングですね ? 」 目の酒と二杯目の氷水をすべらしてよこしたマシーンに、おれはい 「よけいな事いわなくたっていいんだ。このうすのろ ! 」おれはカ った。「沙漠の方へむけて、まっすぐ走らせるんだ」 ウンターに二つめのジョッキをたたきつけた。「きかれた事に答え 「エンジンがやけてかかりませんが : : : 」 りやいいんだ。さあ、どうなんだ。このあたりにいるのかいないの 9 「そこを何とかするんたよ。・・ーー早くしな」
と音をたててくだけた。入れ歯型をした小さな毒液筒だ。おれは、 おれはそれから時間をかけてゆっくりいたぶってやった。股倉を エリアでそいつを見た事がある。先のぎざぎざが皮膚にささった銃でぶっとばし、顔に小便をひっかけた。最後に、まだ意識のある < マ 1 クのプレ 1 トを、や とたん、内部の高圧ガスで猛毒液が注射される。おやじは舌で筒のうちに、頭をでかい岩でつぶした。 尻についているバルプをおして、毒液の半分を口にふくみ、筒をおつの胸からひきちぎったのはそのあとだった。頭をつぶしちまわな れにむかって吹きつけると同時に、血まじりの毒液を吐きかけたの いうちは、安心して手が出せなかったのだ。 おれは大満足で自分のマークのプレートをはずし、プレート 顔の右半分の皮膚が、みるみるはれあがるのを手袋の甲でぬぐうをつけた。 ニタニタ笑いに頬がゆるみ、胸は満足感でふくらん というと、おれは一かかえもある岩をもち上げて、ゆっくりおやじ の方に歩みよった。おやじは何かわめいたが、おれはおやじの膝を これでおれは一人前になったんだ。りつばな「おとな」、男一匹 うちぬいた脚の脛の上に、胸の高さから岩をおとした。 になったんだ。 あとはこのプレ 1 トをねらってくる、見た事の ししが、ゴリラとガ 骨のくだける音がして、おやじはのどの裂けるような声を出しない兄弟どもに、とられないようにすりゃあ、 ラガラ蛇のあいのこのような、おやじをやつつけた事で、おれはお それをきいて、おれは笑った。おれの中の「毒蛇」も、大口をあれと同年配の連中なんか、屁でもない自信がついていた。 けて笑っていた。 おれはもう一つの岩をかかえ上げると、今度プレートの事に気をとられていたおれは、エンジンのスタート音 は掌が半分ふっとんだ左腕の上におとした。三箇目の岩に、のこっ をきいて、はじめてもう一人の野郎がすぐ近くにいた事に気がつい た脚の膝の関節の上におとした。右手はもう毒がまわって動かせな た。やせて、おそろしくのつぼで、ごっごっしていて、その眼と来 たら、無表情で禿鷹みたいだった。やつは一台のモトシクロにまた リモコンで がり、もう一台を・ーーおそらくおやじのやつだろう 「殺せ ! 」おやじは汗と血にずくずくになり蛇毒で半分くろずんだ 顔を左右にふって、かすれた声でわめいた。「は、はやく殺しやがひつばっていた。そして、おれの二台のモトシクロをそれぞれスタ 1 トさせ、リモコンを自分の車に連動させてひつばって行こうとし 「いいとも、おやじさん : : : 」おれはやさしい声でいった。「今すていた。 ぐ、らくにしてやるよ」 「待て ! 」おれはあわててどなった。「そいつあおれの車だ : : : 」 「それがどうした ? : : ひょっこ : ・ : 」男は・ほそぼそした声でいっ おれはおやじの血みどろの顔に光線銃をつきつけ、額をねらっ た。おやじは歯をくいしばって顔をそむけた。額をうちぬくふりをた。 9 して、おれは腹を二発うってやった。おやじはわめき、おれはまた ひょっこといわれて、おれはカッと来た。だが、すぐ、自分がそ 3 腹をかかえて笑った。 うじゃない事に気がついて、胸のマークプレートをつき出して見 こ 0 ! 」 0
と、そいつのちぎれたしつぼの所をふみつけ、・フーツの鋼鉄の爪先かまれたら、おしまいだった。虫けらどもは、がつがっと降って湧 いた肉の山にかじりついていた。早くも蟻同士、蛾と毒蜘蛛との間 の角で、しりの方をすこしばかりちぎりとった。やつは、体をくね らせ、また靴にかみつこうとしたが、もう毒牙はもげてしまってい に喧嘩がはじまりかけていた。沙漠じやめったに幸運にめぐりあわ たし、かんだってプーツの上だ。しりから血をしたたらせ、赤いもない。めぐりあっても、仲間同士やほかの動物どもとの、そして、 のをひきすって、なお逃げようとするやつを、おれはそうやって、何も彼もかわかして吹きとばしてしまう残忍な太陽と風との競争が 爪先の角で、少しずっちぎって行った。とうとう腹から下がなくなひかえている。がつついたり、腹をたてたりするのはむりもない。 ってしまい。頭と胸だけになったのに、そいつはなおも身をうねら モトシクロをふかした時、岩かげをまわって一羽のスナバシリが せ、のこった前肢たけで砂をかいて、逃けようともがきつづけ、そ姿をあらわした。おれはそいつの首をふっとばした。鳥はきらい だ。奴は善良そうな顔をして毒を持っていない。 禿鷹ならまだ れでも少しすっ砂の上を動いていた。 「へえ、えらいもんだな : : : 」おれはそいつの前半分の傍にしやがましだが。 みこんで眼をまるくした。「腹から下がなくなっても動けるのか い ? どうだ、ちぎれたしつ。ほとくつつけてやろうか ? 」 それにしても沙漠の中では、何だってこう毒をもった生き物がう もう外へ長く、吐き出す力はなかったが、その黒い鼻面の先に、 じゃうじゃいやがるんだろう ? ーーー おれはそれから十五センチもあ 黒っ。ほい舌先が少しのそいていた。おれはそいつのロが開けないよるムカデにかまれた。大した事にならなかったが、おれは痛さのあ うに片手でおさえ、もう一方の手で、その舌先をひきちぎった。ひまりころげまわり、腹だちまぎれにムカデの出て来た小さな岩山 き出せば、もっと長くちぎれたのだろうが、別にそこまでする気はを、線源をつかってぶっとばした。あとで思えばこの沙漠では、こ なかった。おれは岩にもたれてちぎった毒トカゲの舌先を、眼にちんな馬鹿な事をしちゃいけなかったんだが : 。ある岩陰で寝よう かづけて、と見こう見した。何だか妙なものだ。そうしているうちとした時、バルーンテントの中にまで、蝎が一匹まぎれこんで来や に、トカゲがもがきながら、砂にうずもれた岩の上に来たので、ろ がった。おれは革手袋をはめてそいつをつかまえーーすごくでつか くにそちらを見もせず、踵で頭をふみつぶした。 いやつだったーー毒針のついたひんまがった尾をちぎりとってやっ あくびを一つして、モトシクロの所にかえって行く時、ふりむく 毒針をとってしまえば、はさみなんざこわくも何ともな と、赤や灰色の、ぐじゃぐじゃに砕けた肉塊となった毒トカゲのま 。おれはそいつを外に投げ出しながら、毒針をとられた蝎って、 わりに、蠅たか虻だか、黒い羽虫が集まりはじめ、でかい顎を持つどうなるんだろう、と考えた。またはえてくるんだろうか、それま た毒アリもむらがって来た。そのうち、おれのよりかかっていた岩でに仲間に殺されるんだろうかー・ー獲物をとつつかまえて、刺し殺 のすき間から、おれの掌ぐらいありそうな、毛むくじゃらのタランそうとしても、尾がないんだ。さぞかしあわてるだろう。その事を 3 テュラぐもが出て来たのには肝を冷やした。 あいつに頸筋でも思うと、おれは急におかしくなって笑い出した。笑って笑って、腹
ここでは、地面も岩も、植物も動物も、何にかも灼かれ、ミイラ だが、こいつはとんだ誤算だった。おれはその太っちょ野郎を甘 になる寸前までカラカラに乾かされ、生きるか死ぬかの瀬戸際にい く見ていた。毒トカゲってやつは、つぶれたソーセージみたいなぶ 2 つも立たされているため、いじけて、苛酷で、意地悪で、愛想なしざまな恰好で、短い四肢でよちょち歩いてるが、かみつく時は意外 になってしまっている。 だが、おれにはその方が、い っそ気楽にすばやいんだ。黒い、 長い舌を、ペろり、ペろりと出して、おれ な感じだった。好きにゃなれそうもないが、べたっかれるよりやまの近づけた小枝の先を見ていたそいつは、いきなり、大口をあけ しだ。おれは酒をのみ、水をのみ、岩陰にテントをはって飯を食て、シャーツと声をたてながら、おれの顔にむかってとびかかって 眠り、モトシクロをころがしつづけた。 サポテンの仏頂面来た。黒い口がばくっとひらかれ、下顎のまがった毒牙が、毒液 をしたたらせながら、眼をねらって来た。おれはあわててとびすさ に出くわすと、時々にさわって、光線銃でぶっとばした。幹に、 、手にもった枝でそいつをはらったが、カラカラに枯れた枝は、 梟のすんでる穴を見つけたりしたら、のがす事はなかった。 ビスケットみたいにくだけちった。それでも肘をあげて、何とか顔 そのほかの面白い事といったら、とんど何もなかった。おれは 時折りむかっ腹をたてて、岩やモトシクロを蹴っとばした。すぐ頭をやられるのはふせいたが、のけそったとたんに、石につまずい にくる点では、人後におちない方だったが、こう毎日腹をたてつづて、後ざまにひっくりかえり、そいつは宙からおちて来ながら、お け、おまけにそいつが情容赦ない太陽にじりじりあぶられつづけるれの太腿にがつぶりかみついた。 と、怒りがだんだん煮つまって、まっくろでねばねばしたやにのよ もしおれが、ズボンの上から、荒皮の蔽いをあてていなかった うな毒にかわって行くみたいだった。 ら、一たまりもなくやられていたろう。毒トカゲの毒は、かなり簡 五日間もころがしつづけて、その間獲物らしい獲物は、毒トカゲ単に人を殺す。だが、そいつは太腿の所の荒皮に牙をくいこませた ものの、とても皮をつきやぶれず、ぶらさがったまま意外に重い体 一匹だった。いやにまるまる肥って、七十センチもあるそいつは、 おれはカッとなって、そいつのしつぼをつ 赤い岩の上にいて、黒っぽい鼻先から、黒くて長い鞭のような舌をくねらせていた。 まだら を、するり、するりとのそかせながら斑点にかくれてどこにあるんかみ、もぎはなして岩にたたきつけようとした。するとそいつのし 毒トカゲのしつ。ほでもちぎれると つ。ほは、すぼっとちぎれた。 だかわからない小さい眼で、おれの方を見ていた。こいつ、眼をつ けやがったな、とおれはつぶやいたが、こんなやつをまともに相手は知らなかった。そのポテポテしたしつ・ほを砂にたたきつけ、今度 にする気は起らなかったので、岩の間にはさまっていた細い枯枝をは両手でそいつのふとった胴をつかみ、強引にひきむしって岩にた たきつけた。ぐぎつ、と音がして、荒皮にくいこんだ下顎の毒牙が つかって、その生意気な、赤つぼい眼をつぶしてやろうとした。 「そんなけつめどみたいな眼を持ってたってしようがねえだろう」おれてのこり、そいつは岩にべしやりとあたって砂におちた。一瞬 と、おれはそいつにいってやった。「ほれ、もう一一度とまぶしくな動かなくなったように見えたが、すぐ短い四肢を懸命にばたっか せ、体をくねらして逃げ出そうとした。おれはゆっくりちかづく いようにしてやらあ」 がん