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検索対象: SFマガジン 1971年10月臨時増刊号
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1. SFマガジン 1971年10月臨時増刊号

いささか酔いすぎているのではなかろうかとクロべは思った : ね ? もし、考えていないとしたら、それは、人間の運命に保険を かけないでばくちをやるのと同じことといえないだろうか ? ふ よみがえってくるそのシーンを押し潰そうとしながら、彼は個室 ん、もちろんそのぐらいのことは、きみたち知性派は予想している へとすべり込んで行った。苦笑まじりに、軍人というのは所詮はあ というだろうないずれにせよ、きみたちは制度化されたエリート 。ハトロール隊長だって同類、いやそれよりもま で、制度化されたエリ】トは、つねに時代を超えられないという宿んな連中なのだ : だレベルの低い一族なのだと自分にいいきかせようとする。 命を背負っている、そのことを忘れちゃいけないんた」 とクロべは思う。が、そう だが、それがどうしたことか ( 多分、これからの相手のいない食 たしかにそれはいえるかも知れない、 思うと同時に、彼は司政官というものが、現時点では必要なのだと事、孤独な調整と検討の作業にひきつづく、これもひとりきりの眠 積み重ねられた、さらに積み重ねられるであろう現実 いうことをも知っていた。たとえ、ワンポイント・リリーフだとしりという ても、司政官が連邦に求められていることには違いないのだ。 を、ふと実感したせいかも知れない ) いやに迫真力を持って響いて くるのだ。こういうふうに機械を指揮し機械にかこまれているうち 「さて、と」 カルガイストは、ゆらりと腰をあげた。「ま、こんなことをべらに、自分も機械同様陳腐化して行くのではあるまいか ? 高度のテ べらと喋って、許してくれたまえ。わしは、人間がまだ足跡を印しクニックに支えられた司政官だからこそ、適応性を欠いているので リートに過ぎないの ていない惑星を数多く見て来た。人間とはまったく思考形態の違うよよ、 をオしか ? 司政官とはつまりは、一過性のエ 生物にも、いろいろと出会った。だから、きみたちのように純粋培ではあるまいか ? カルガイストは、あるいは正しかったのかも判 らない : ・ : そんな気がして仕方がないのである。 養された人間よりは、すこしばかりたくさん″もしも″というケ】 スを考えることができるだけなのだ」 その中で自分はいったい何なのだ ? 何を持っている ? テクニ ックが通じなくなったとき、テクニックというものを取り去った自 低い笑い声をたてて、 「それにもうひとつ、わしの孫のひとりが、きみの後輩として、司分ははたして何であり得るのか ? 政技術を学んでいる。わしはその希望を耳にしたとき、頭からどな何もないのではないか ? りつけ、徹底的に反対したが、奴は聞き入れようとはせす、結局養何かーーすくなくとも、ひたむきに追い求めているものが、自分 にはあるのか ? 成所に入ってしまいおった。どうやらわしは、その孫にいいたか た事柄を、きみにむかって並べたてていたらしい。ま : : : それだけありはしない。 突然、彼は、何かが欲しいと思った。司政官としての技術、外か のことだと解釈してくれ」 カルガイストは、あやふやな動作で片手をあげ、部屋を出て行っら与えられた使命ではなく、自分の内部から湧きおこり、自分を駆 8 り立てるもの、それが欲しいと思った。そして、出来ることならそ た。もうひとっパーティをこなさなければならない人間にしては、

2. SFマガジン 1971年10月臨時増刊号

と音をたててくだけた。入れ歯型をした小さな毒液筒だ。おれは、 おれはそれから時間をかけてゆっくりいたぶってやった。股倉を エリアでそいつを見た事がある。先のぎざぎざが皮膚にささった銃でぶっとばし、顔に小便をひっかけた。最後に、まだ意識のある < マ 1 クのプレ 1 トを、や とたん、内部の高圧ガスで猛毒液が注射される。おやじは舌で筒のうちに、頭をでかい岩でつぶした。 尻についているバルプをおして、毒液の半分を口にふくみ、筒をおつの胸からひきちぎったのはそのあとだった。頭をつぶしちまわな れにむかって吹きつけると同時に、血まじりの毒液を吐きかけたの いうちは、安心して手が出せなかったのだ。 おれは大満足で自分のマークのプレートをはずし、プレート 顔の右半分の皮膚が、みるみるはれあがるのを手袋の甲でぬぐうをつけた。 ニタニタ笑いに頬がゆるみ、胸は満足感でふくらん というと、おれは一かかえもある岩をもち上げて、ゆっくりおやじ の方に歩みよった。おやじは何かわめいたが、おれはおやじの膝を これでおれは一人前になったんだ。りつばな「おとな」、男一匹 うちぬいた脚の脛の上に、胸の高さから岩をおとした。 になったんだ。 あとはこのプレ 1 トをねらってくる、見た事の ししが、ゴリラとガ 骨のくだける音がして、おやじはのどの裂けるような声を出しない兄弟どもに、とられないようにすりゃあ、 ラガラ蛇のあいのこのような、おやじをやつつけた事で、おれはお それをきいて、おれは笑った。おれの中の「毒蛇」も、大口をあれと同年配の連中なんか、屁でもない自信がついていた。 けて笑っていた。 おれはもう一つの岩をかかえ上げると、今度プレートの事に気をとられていたおれは、エンジンのスタート音 は掌が半分ふっとんだ左腕の上におとした。三箇目の岩に、のこっ をきいて、はじめてもう一人の野郎がすぐ近くにいた事に気がつい た脚の膝の関節の上におとした。右手はもう毒がまわって動かせな た。やせて、おそろしくのつぼで、ごっごっしていて、その眼と来 たら、無表情で禿鷹みたいだった。やつは一台のモトシクロにまた リモコンで がり、もう一台を・ーーおそらくおやじのやつだろう 「殺せ ! 」おやじは汗と血にずくずくになり蛇毒で半分くろずんだ 顔を左右にふって、かすれた声でわめいた。「は、はやく殺しやがひつばっていた。そして、おれの二台のモトシクロをそれぞれスタ 1 トさせ、リモコンを自分の車に連動させてひつばって行こうとし 「いいとも、おやじさん : : : 」おれはやさしい声でいった。「今すていた。 ぐ、らくにしてやるよ」 「待て ! 」おれはあわててどなった。「そいつあおれの車だ : : : 」 「それがどうした ? : : ひょっこ : ・ : 」男は・ほそぼそした声でいっ おれはおやじの血みどろの顔に光線銃をつきつけ、額をねらっ た。おやじは歯をくいしばって顔をそむけた。額をうちぬくふりをた。 9 して、おれは腹を二発うってやった。おやじはわめき、おれはまた ひょっこといわれて、おれはカッと来た。だが、すぐ、自分がそ 3 腹をかかえて笑った。 うじゃない事に気がついて、胸のマークプレートをつき出して見 こ 0 ! 」 0

3. SFマガジン 1971年10月臨時増刊号

アミラの後輩が、元木に再び戻って、やわらかな花びらを育てはじのではあるまいか ? アミラは人間ではない。アミラは植物なのだ。 「これらの花は、まだ本当にわ めているのを示していうのだった。 その植物に対して : : : 彼は、低いうめき声をあげた。 たしのコロニーのものではありません。わたしはこのコロニ 1 の最 自分がやろうとしていることは、はたして可能なのだろうか ? 後の一体でしたから、他コロニーの幼生体を受け人れなければなり ませんでした。かれらは自立体を終り、花として飛び、もう一度こ自分を含む司政官たちがやろうとしている、共感による連帯を持っ こへ幼生体で帰りついたとき、わたしのコロ = ーの成員になるのでた統治など、あり得るのか ? す。それを見届けるまでは、わたしの使命は残っています。使命を いや。そんな : : : 真の連帯などというものが、異種生命間に成立 するのか ? 考えかたも生活環もことなる生物どうしが、結び付い 終えたらーー・」 たりするのか ? 「花になるんだね ? 」 : と、クロべは、また、ふっと思う。この司政官制度 「ええ。休息するのです」 あるいは : というような、一見、他生命体のことを考慮し、理想的な統治形態 「花になれば、きみの意識はなくなるんだろう ? 」 を作りそうな制度も、あるいはこれも、地球人類の独断だったので 「今のわたしはいなくなります、 いや統治などということを考えている限り、そん はあるまいか ? 「それで何とも感じない」 : カルガイ なものは成立し得ないのではあるまいか ? あるいは : 「感じません」 ( 満足したような感情 ) ストや、あのパトロール隊長のほうが、的確に合目的的に支配する のではあるまいか ? 睡魔が濃くかぶさって来たので、彼はそれ以 いつのまにか、が促眠装置を作動させたのだろう。彼は、 : と、彼は思上、考えつづけることができなかった。 うとうととしている自分に気がついた。アミラは : あす、考えよう。 う。あと一シーズンか二シーズンか : : : そのうちに花になるだろ う。そのときには、彼は、語り合うべき対象を失うのだ。 だがそのあすも・ : : ・多分、ひどく重いのであろう。 そして、その次の日も : ・ 飛翔したアミラは、どこへ行くのだ ? どこへ着地し : : : どんな 精虫に入り込まれて : : : 彼は唇を噛みしめた。花と化したアミラの彼は眠った。 内部に、あのみにくい本能だけの精虫が入ってゆくのを想像しては彼の夢の中でも、花びらは飛翔をつづけていた。その花びらの中 に、アミラがいる。彼はそれを仰いでいるだけであった。彼は永久 ならなかった。それを想像すると、彼は気が狂いそうになるのだっ に花びらになれない。そして、アミラも永久に人間にはなれないの 嫉妬か ? 嫉妬かも知れない 9 が、司政官のために、照明をくらくした。 自分は : : : アミラを、いっか人間の女のように考えはじめていた

4. SFマガジン 1971年10月臨時増刊号

すわ。そうすればわたくしたち、いつまでもそうやって若く、不減られるのは〈守護者〉のわたしと、わたしの助手のカルナスのふた のまま生きつづけることができるでしよう」 りきりだった。 「エタイン」わたしは、きびしく彼女にいった。「おまえは、自分 アトランティスしゅうでふたりの男だけが、かってはこれらの鍵 でなにをいっているのかわからないのだ。そのような不死は、人間まで到達する方法を知ることを許されていた。実は、この大きな梁 のもつべきものではない。そうやって生きつづけようとする人間 というのが、わが大地の下に燃える膨大な、猛烈な火山力を引いて いたのだ。われわれは、時に応じてこの火山力を利用する必要があ は、この上なく不浄な罪をおかすことになるのだよ。われわれは、 生まれて年をとり、死んでいくのだ。永遠に生きていこうとして、 るいつ。ほう、その扱いかたをまかりまちがえば重大な悲劇を招来す 他人のからだを盗むのはいけないことなんだよ」 るということを知っていた。だから、〈火山力の守護者〉とその助 エタインは、表情ひとっ変えずにわたしをじっと見つめた。やが手は、これらの鍵をよく警戒し、管理していたのだった。 ていった。「あなたは、わたしを愛していないのね、ウリオス。わ エタインは、この真ちゅうの柱のかたわらに立ち、カルナスが熱 かりましたわ」そして、つかっかと部屋を出ていった。 心に彼女のほうへ身を傾けていた。彼が彼女に話しかけ、彼女がそ れをきいている。ふたりとも熱中していたから、わたしの近づいて わたしは、自分の仕事にとりかかった。そして、彼女はすぐにあいくのがきこえなかった。 んな気ちがいじみた妄想のことなど忘れてしまうたろう、自分は真「もしあなたがわたしの妻たったら、わたしは、あなたがウリオス 実以外のなにものも彼女に告げてはいないのだと、おのれにいいきにやってほしいとお頼みになったことをことわったりはしなかった かせた。だが、仕事をしていながらもつねに彼女の顔が目の前に浮でしよう」と、カルナスが彼女に話していた。「不減の若さと美が かんでくるのだった。そこで、ついにわたしは、器材を放り出して彼の意のままになるというのに、なぜあなたが年をとり、しわを寄 しまい、彼女の心を傷つけたつぐないをしようと実験室を出ていつらせ、死んでいかねばならないのです ? このわたしになら、そのような不滅の若さと美をあなたにさしあ 彼女の部屋をつぎつぎあたってみたが、エタインの姿はなかっげることができますよ、エタイン」と、彼が熱心につづける。「脳 た。結局、建物じゅうを捜してやっと、建物の下の広大な地下室、移植の手順については、ウリオスから充分に学んでいますからね」 〈火山力の部屋〉で彼女を見つけた。この部屋は、建物の下の堅固「ならばおまえは、今後いっさいウリオスから学ぶことはあるま な岩場を掘削した丸天井の広い地下洞窟だった。 い」わたしは、冷やかにいった。 カルナスがくるりと向き直り、ギョッとして立ちすくむ。エタイ 部屋の中央部には太い真ちゅうの柱が立っていてその頂部から両 側へ大きな梁が走って地中へ没していた。この柱の内部には、〈火ンは、 ( ッとして顔をあげたが、表情ひとっ変わらなかった。 わたしは、ドアを指さした。「カルナス、出ていくのだ ! おま 山カ〉へ通じるドアがあって、つねに鍵がかかってい、これを開け 320

5. SFマガジン 1971年10月臨時増刊号

があり、男たちが戦いに馬を駆る広大な平原がある。教えてくれ、 王宮と評定議会の日課は無視されるようになった。人民たちは密 かに不平を鳴らした。カルの駿馬は、、 しらだたしげに廐舎でひづめ 他の者より遙かに賢い道師よ、教えてくれ、我々の世界の彼方に を踏み鳴らし、戦士たちは、賽を振って博奕にふけり、互いに目的 も、世界は存るのか ? 」 のない議論を戦わせていた。カルは気にとめようともしない。時 魔道師が答える。 「眼というものがある。ごらんになるがいし . には、何か、底知れぬ、考えもっかないような秘密を発見する寸前 「見ることこそ、信ずること」 にいるような気がすることもあった。もはや、鏡の中の像は、自分 時はきていく。カルは、依然として、自分を映しているツザン ・トウーンの鏡の前に腰をおろして、それを凝視している。或る時自身の影とは考えられなかった。それは、カルにとっては、外見的 には同一であるが、根本的には、遠く離れた両極のように、カル自 には、何か硬質の、手を伸ばせばすぐ底に触れることのできるよう なものを見ているような気もする。かと思うと、また別の時には、身とはかけ離れた存在であった。その像は、カルには、自分自身の 眼の前に底知れぬ深みがよどんでいるようにも思える。ッザン・トものとは違う個性を持っているように思えたのだった。カルがその ゥーンの鏡は、まるで海面。その深みを見抜くことができぬときに鏡の像にまったく由来しないのと同じように、その像のほうでもカ は、斜めにさしこむ太陽の光線にさらされた海の水面のように、そルに由来しないかのようであった。やがて、日毎に、カルは、自分 して星のきらめく闇のように、硬い。またある時には、陽光が海面が真に生きているのはどちらの世界なのであろうか、疑いを抱くよ を照らし出し、そのはかり知れぬ深淵の姿に、見る者が息をのむとうになった。自分が、他者の思いのままに呼び出される影なのであ きのように、巨大に神秘的に見える。それが、カルの凝視しているろうか ? 妄想の世界に住むもう一人の自分の代りに、自分自身 が、現実の世界の投影なのであろうか ? 鏡であった。 いったい何が見えるのか、カルはしばらくの間でよいから、鏡の ようやく、王は、ため息とともに立ち上がり、依然としてその不 思議に心を奪われたまま、ツザン・トウ 1 ンの館を去った。そして彼方の相手の人格にのりうつってみたいと、思うようになってき た。しかし、この扉の彼方へ首尾よく入りこむことができたとして 再び、カルは万華鏡の館を訪ねた。次の日も、その次の日も、カル はやってくると、何時間もの間、鏡の前に坐ってすごすのであつも、再び戻ってくることができるのであろうか ? 移動した世界と た。瞳が鏡の中からカルを見つめる。それはカル自身の眼と同一の同じ世界を見ることになるのではないだろうか ? 自分のいた世界 ものであった。しかし、それでもなお、カルはその違いを感じとつは、単なる幻影像でしかなかったのか ? どちらが現実で、どちら が幻影なのか ? カル自身のものではない現実性が、そこにあったのだ。 ていた 冫ーいかにしてそのような考えや、夢が自分の心の内 何時間も何時間も、カルは、不思議なほど熱心に、鏡の内を凝視し或るときこよ、 たものだ。何時間たっても、何時間たっても、反射像はカルの視線に忍びこんでくるのかということについて想いをめぐらし、また或 るときには、それが自分自身の意志からくるものなのか、それともー を見返してくるのだった。 引 3

6. SFマガジン 1971年10月臨時増刊号

自分は、あの自立体ーーー出会った地区の名を借りて、ひそかにアど餓えていたのだ。それを彼はしだいに悟るようになって来たが、 ミラと呼ぶようになったあの自立体に、本来の真正サルルニアの姿しかし、頭の中では頑として、そうではないそれが目的ではないと 0 しいつづけたのである。 を見たと信じ、あの自立体と接触することで、真正サルルニアの本 質を探れると考えたではないか。 だから、彼はス。ヘンサ 1 に、その交流の体験を話そうとはしなか そして、自分が没入して行ったのは、真正サルルニアの象徴としった。それを話せばス。ヘンサーはこちらの気持などお構いなく、た ずね、実験を繰り返そうとするであろう。それがたまらなかった てのアミラではなく、個体としてのアミラだったではないか。 そのおかげで、自分はいま、揺れている。自分がはたして司政官し、第一、自分の心の恥部をさらけ出すことになるのが、とても耐 えられなかったのである。 の名に値するかどうかを疑いはじめているではないか。 はっきりいえば、彼の司令官というポストに対する背信は、この 彼は、また顔をあげて、夜空をおおう花びらを眺めた。五分以上 もそうしていてから、やっと思い切って、空の遮光化ボタンを押しときからはじまっていたのだ。 て、立ちあがった。 アミラは、いわゆる x x x x 系統のコロニーと、よくたたかって いた。たった一体しか自立体がいないコロニーが、そこまでやれる 4 とは信じられないが、事実だった。アミラはその素早い動きとあく ☆☆☆☆ なき努力で劣勢をカバーし、隣接の大コロニ 1 の侵略を許そうとし もう寝たほうがいい時刻だったが、彼はまだ促眠装置を作動するなかった。そればかりか、そのシーズンのうちに反撃に転じて相手 気にはなれなかった。もう少し、考えつづけたかったからである。 を苦しめ、ついには大コロニーの元木を撤退させるところまでこぎ 彼は機会をみつけては、あの自立体ーー、アミラのところへ行くよっけたのである。そうなると、スペンサーの興味は、他のコロニー うになった。同行するやス。ヘンサーには、例の争いのその後の他の事件に移り、クロべは研究所の協力なしにアミラのところへ 行かなければならなくなってしまった。彼はロポット官僚たちをい の経過を観察したいからだと説明したが、実のところ、アミラとい いくるめ、だしぬき、時には高圧的に命令して、ほとんど定期的に うものをとおして元来そうであったに違いない真正サルルニアの性 格を知り、そこから、今後の司政のありかたを探るつもりだったのアミラに会いに行った。 である。 自分はたしかに、司政官としてのっとめをはたすために、アミラ との会見をつづけたのだ。すくなくとも最初のうちはそうだったの 本当はそうではなかったはずだ。彼は、ひとたび味わったあの交だーーベッドに腰をかけたまま、彼はそう思った。 それがそうではないと自分でも認めなければならなくなったの 流、どういう原理でなされるのか判らないがあの心の触れ合いとい うものを求めていたのではないか ? 彼はそれほど不安で、それほ はいつごろからであろう。第四回目の飛翔のときだったか ? そ

7. SFマガジン 1971年10月臨時増刊号

ところで ゼ .3 自分が 殺されたのに かかわらず 安楽死した カり 由いこんでいるラ 気楽なのが いるんだ くる死者には ま、色々な のがいて・ね でもそんな ほとんどの 連中は ここで罪の 生ロ白を してゆくがね またそれから 自分の 犯罪歴という のをひたかくし るやつもいる 226

8. SFマガジン 1971年10月臨時増刊号

ひろがり、全天を埋めつくして流れてゆく異形の生物たち。直径二 メートルか三メートルの花びら。赤や黄やら紫やらの、ありとあら 7 CN ゆる色彩が、数秒ごとに変色しながら、あたかも地球の伝説に残る なぜ、あんな光景に、心を動かされなければならないのだろう いなごの大群のように流れてゆく、交配のための大旅行。 と、彼はまた思うのだった。はじめてあれを目撃したときから、 それは、全体として、おそるべきハーモニイを作りあげている。 つもそうなのだ。はなやかなくせに、へんにものがなしい、へんにあちらの大群が黄金色をしているときには、頭上のそれはまったく 露骨なあの光景は、つねに彼を狼狽させる。そして、彼の深奥に眠の白色で、ずっとかなたの数万片は空よりも濃い・フル 1 でーーそい っている何かがめざめて、陰々とした声で啼きだすのが感しられるつが時々刻々、空全体のたえず変化する模様となって、地平へ、地 のだ。そのたびに彼は、自分をどう制御したらいいか判らぬとまど平へと移ってゆくのだ。今年の、午後からしだいに数を増したそれ いに陥ち込んで行くのだった。 は、いまのタ焼けのさいちゅうも、そして、夜になっても夜明けに もっとも、正確にいうと、今では最初のころとはことなった状態なっても、 : : : 今の烈しい風がつづくあいだ : : : 数日間の季節風の になっている。はじめよりはもっとねじれた、もっとひがみっぽい あいだはいやでもつづく大群の : : : 生殖のための大移動。 ものに変質していることを、彼はあきらかに自覚していた。 かれらにとって、その″浮上″が、解放であるのか終末であるの それは、アミラのせいかも知れない。 か、あるいは恍惚の境地か苦難の行為であるのかーー地球人である あれが : : : あの、天空をおおって押し移るあれが、アミラの一族彼には、見当もっかなかった。つかなかったが、すくなくともそれ であるという事実が、自分の判断のパランスを歪めているのであろは、理性的存在としては。ヒリオドを打っことであり、はるか昔から つづいて来た種族の魂の、その呼び声に身をゆだねることであると あれほどの理性を示す連中、彼にとってはアミラによって象徴さは承知している。 れるあの生物たちが、結局のところ本能への欲求に抵抗できず、天そのときのかれらは、どんな気分なのであろうか ? へ舞いあがってゆくことに対して : アミラもやがては、ああして空をただようのであろうが、そのと き、何を考えるのだろうか ? 自分は単に、嫉妬をお・ほえているだけではないのか ? 自分は、嫉妬を感しているのか ? 彼はまた自分の心に問い直し てみる。あれがアミラの一族であるとしても、アミラはまだ今回は タ焼けがはじまった空には、無数の色片が浮いていた。一年 ( とその中にくわわってはいない。あそこにはアミラはいないのだとい いっても、地球人の標準からすれば、四カ月そこそこにしか当たら いきかせてみても、やはり : : : いずれはそうなるに違いないのであ ないのであるが ) に一度、はげしい季節風に乗・つて浮かびあがり、 り、ああいった生殖の方法がアミラにとって生得のものであると考

9. SFマガジン 1971年10月臨時増刊号

年かのあいだは、ナポレオン戦争の激動の波が四囲に広がってい んだ。そのとき銃声が起こり、彼が地面に沈んだ。 き、われわれの捜索は頓挫させられた。そして、十九世紀の百年間 「スサン ! 」わたしは叫び、ポケットから自分の拳銃をとり出す 4 っ ) を通じてふたりは、われわれを逃れつづけたのだ 0 た。帝政 0 シアと、召使いのうつぶせにな 0 たからだ越しに、たてつづけに発砲し で一度われわれは、いま少しでふたりを押えるところだったが、また。 んまと逃げられてしま 0 たのだ 0 た。それから十二年間、彼らの足われわれを狙い射ちした、暗い横丁の中のふたりは、わたしの銃 どりは杳として知れなか 0 た。その後につかんだ足どりは、どうや弾を浴びて転倒した。わたしは、スサンの弛緩したからだの上にか らわれわれを英国のある政治家のほうへと導いているようだった。 がみこんだ。 そしていま、わたしと召使いは、その政治家の当世風の屋敷へと向 ひと目見ただけで充分だった。弾丸が二発とも彼の頭蓋を射ちぬ かっているところたった。 き、脳にめりこんでいた。わたしは、相棒を永遠に失ってしまった のだ。 「スサン、どういうわけかわたしには、この長かった追跡もいよい よおわりに近づいているような気がするんだよ」と、わたしはいっ 目まいを感しながら、わたしは、横丁の中でこと切れているふた りの男を見つめた。ありふれた型の人間、たくましい、残忍な面が 「わたくしめも、なんだかそのような気がいたしますです、御主人まえのロンドンの前科者た「た。 さま いままでに味わったことのない気持でございますよ」 そのときわたしは、カルナスとエタインがわれわれの近づいてき われわれは、暗い通りの角を曲がった。爆弾の炸裂音よ、、 ーしまでたことを攵 日り、この男たちを雇ってわたしを殺させようとしたのだ は遠のいていたが、だれひとりあえて表へ出てこようとするものはと吾った。このうえは、ロンドンでカルナスと = タインを捜し回っ ひとりもいなかった。そして、われわれが暗い横丁の入口をよぎ 0 ても無益というものだった。彼らは、逐電してしま「ているたろ たとき、不意にわたしは、その奥でわたしの頭をもろに狙っているう、わたしはそう思った。 二挺の拳銃がびかっと米るのをかいまみたのだ。 わたしの見当ははずれていなかった。 ~ 彼らを捜しにいってみる 自分のほうから少しでも動きをみせては、身の破滅たとわかってと、その英国人の政治家と夫人は、姿を消していたのだった。 した。いよいよここで、失われたアトランティスの復讐は遂けられ彼らの足どりを追いはしめる前に、わたしは、六十世紀ものあい す、わたしの罪はあがなわれぬままに、追跡がおわってしまうのか だわたしについてきてくれた忠実な、意志堅固な相棒をとある英国 と、一瞬、苦い思いが稲妻のように閃いこ。 の墓地に埋葬した。彼の墓の上に、碑銘を刻んた石を立てた 二挺の拳銃が火と鉛を吐き出した。しかしスサンは、わたしと同 「アトランティスのスサンーーー忠実なる僕」 時にそれらをみとめてい、わたしの前へ跳び出していた。 いまひとたびわたしは、ふたりの足どりを追いはじめた。いま 「御主人さま、お気をつけくださいませ ! 」跳び出しざま、彼は叫や、求める彼らをすぐにも見つけ出さねばならない、さもないと永

10. SFマガジン 1971年10月臨時増刊号

黒色火薬が 入っている こいっから 6 個の シリンダーの穴へ 定量の火薬を 流しこみ 鉛の弾を 6 発おしこんで 4 よーくつ - かためる そして 同発や水にぬれるのを ふせぐためにグリースか ペーストを ノつめて 最後に雷管の キャップを とり・つける 0 6 発撃ったら またはじめから . 」 \ 、やりなおしだ つめかえるより 早く敵が来たら 台ジリで プンなぐれ そこで おもむろに 撃鉄をあげて ぶつばなすのだ 火薬を使い はたすか銃が壊れて しまったら こん棒でも歯でも ツメでもとにか′、 自分のカで 自分と女を守れよ 考えた だけで 血わき 肉おどるが 十ニ組 よーく顔を みておくが きみらの悪い くせでお互い 関心もはらわ なければ顔も 見よ、つとも 266