第「」第 どんどん腐っていくぞ。おまえ の高慢面がニ目と見られぬ化物 面になるのをとっくりと眺める お時はもう我慢できなかった。 女賊の毒々しい嘲弄を許せな かった。女が女に対して加える 侮辱の醜悪さを憎んだ。 お時の手が、帯の問にはいっ た。出てきたときはべアトリス の釵をんでいた。 金ざしの冴えた光は、真名児 の黄色い恐ろしい目を圧倒的な 光輝の中に消し去った。 ペアトリスの強烈な残留思 念は、女賊の念力を粉砕した のである。 天井近い梁から逆さまに吊り さがっていた黒装束の女賊は もんどりうって墜落した。 7 0 ・ 、 0 異様な呻き声をはなって床を ころげまわる。苦悶にのたうち ながら、黒装束をかきむしり、 ひき裂いた。素肌がむきだし になる。 お時の肉体から腐爛の変色は あとかたもなく消えさり、女賊 の肉体にそっくりそのまま転移 していたのである。 女賊は、狂ったような 恐怖の眼で、おのれの肉体に 生じた異変を見、泣き喚いた。 顔に手をあてると、頬から顎に かけて麾爛した皮膚がずるっと 剥け、ポロキレのように垂れ さがった。身体中から腐汁が したたり落ちていた。 生き腐れになって行〈、のは、 真名児自身だったのだ。 ー 03
討上ー当にや お時の喉から悲鳴がもれた。蛇たったのだ。血が逆流した。 死にものいで振りはなそうともがく。全身が氷結したかと思う ほどのいやらしさであった。 蛇は意外な重さとカのさでからみつき、はなれようとしない 顔の一匹をむしりとると今度は腕に巻ざっくのだ。お時は転倒し て裾を乱した。足首まで太い蛇がまつわりつき、お時は発狂し そうであった。 甲高い嘲笑が耳に入らなかったら、お時は悶絶していたかも しれない。悪意にみちた笑声が、平手打ちを食ったほどの効果を およばした。粉々になっていた理性が一気に凝集する 9 「やつばり女だねえ、 おまえも : 冷笑まじりの声は女のもので あった。お時は化石したように、 もがくのをやめた。その女の 言一声が、魔的な力の行使者だとさ とったのである。四肢にからむ 一蛇など、この危険な敵にくら べれば物の数ではない。 みもの 「けっこうな見物だねえ。 ~ 、一あられもなく裾前を乱して、 とち狂ってさ・ : ・ : 大事なところ までまる見えじゃないか : 女の声が嘲ける。 「だれ卩おまえはだれ」 お時は汗に濡れた蒼白な顔を 振り動かした。蛇をまつわらせ 一「 ~ たまま半身を起す。 「六人もの腕ききをさ、あっさ り地獄へ送っちまったほどの おまえも、ただの女なみ 恐ろしいのかえ ? 可愛い じゃないか 「どこにいる ? 出ておいでよ」 お時は激しくいった。勝ち気 な千波の気性が女の嘲笑によっ てあおりたてられ、心の表面に 躍り出てきたのだ。負けて たまるものかと思った。それは、 同性への反発心がよらしめた . 第を、 3 潭准 、 1 い 龜第籥、 は、ん : う - イ請 1 江ょミエ←
ロ 1 レ・タビはその男のほうをみて聞えよがしにつぶやいた。男ビはあとあとまでふしぎに君った。しかしその時はそれ以外に答え メイン・ストリート は汚い笑い方をしてみせ、あきらめたように大股で主走路へむかようがなく、出むかえた従者のように腰をかがめて鞄をもちあげよ 3 うとした。 った。そのあとの二人も似たり寄ったりだった。悪事の限りを尽し、 「オレン。オレンさま」 遂にまともな社会では生きられなくなったこの世の脱落者たちだ。 とてつもなく大きな叫び声だった。 ロ 1 レ・タビは目的の四番目が出て来るのを待ちかまえ、かすかに 「ホギー。まあホギーじゃないの」 舌で下唇をしめした。買った情報によれば、最後に出て来るはずの 人物は女だった。・ キメルは極端な女ひでりだ。どんなご面相だろう女がそれに答えた。一瞬静まり返った広場に走路の音だけが聞 と、女なら値打があった。十分五クレのセックス・マシンから一時え、ホギーと女の靴音がそれに重なった。 「オレンさま。オレンさまーーー」 間五十クレの売春婦まで、ギメルでいちばん安定した商売はセック ス屋たった。新来の女と契約を交せば、ホギーみたいな連中の五倍ホギーはそう言い、泣きはじめていた。 「ホギー。あなたこんなところにいたの」 のみいりにはなるはずだった。 アン しかし太陽の光を背に、その女が現われたとき、ローレ・タビは「オレンさまこそ、どうしてギメルなどへ」 いつもやるヘつらい顔も忘れ、かけ寄ろうとさえしなかった。体が「ホギー。あなた元気なの。少し痩せたようだけどー 「よかったわ、生きていてくれて。ホギーが連中につかまったって 痺れたようになって動けなかったのだ。新来者はみなローレ・タビ のような古手のギメル人にとって別世界の人間に違いないが、それ いうを聞いたのよ。もう会えないかもしれないと思ってたのよ」 以上に彼女は別世界の人間だった。顔にも体にも、床に落ちる影に 「なんとか逃げのびたんです。もう少しでつかまるところでした」 けが ローレ・タピはほっそりとしなやかな女の体をだきしめているホ さえ、汚れというものが見当らなかった。大きな鞄を両手にぶらさ げ、それをローレ・タビのすぐ前に置くと、肩をすくめて笑いかけギーに対して、猛烈な嫉妬を感じていた。それは男としての嫉妬と て来た。 いうより、恐れげもなくこの清らかな女に触れて行ける、ホギーと 「乗物はないのかしら」 いう人間の善良さに対する嫉妬だったようだ。 「ホギー、この方をどこへおつれしたらいいんだ」 その声は細く柔かく、そして澄んでいた。 ロ 1 レ・タ・ヒは既得権を主張するように、重い鞄をもちあげて高 「ギ、ギメルにはそんなものないんです」 ローレ・タ。ヒは気押されて口ごもり、弁解するように言った。 圧的に言った。 「ローレ・タ・ヒ」 「あらあら。こんな重い荷物、どうしましよう」 物柔らかで、そのくせずしりと胆にひびく声で名を呼ばれた彼 「私がお運びします」 な・せそんなへりくだった言い方をしてしまったのか、ローレ・タは、ハッと目を丸くし、下唇を噛んでゆっくりとふり向いた。すぐ
物ド物 = を義をス : 立ツ 新き ! をさこい 一を二 。醜態 ものだったかもしれない を見られ嘲けられた屈辱と怒り でかっと全身が熱くなった。 くちなわ 「蛇はね、暖くって柔らかい 穴が好きなのさ。女の隠し所 がね : : " ・そうら、おまえのあそ こを狙って鎌首をもたげてる よ。一度もぐりこんだら、どう やったって出てこないのさ。ひ つばればそれだけ奥へもぐり こむ。臓腑を食い破って、腹の 中まではいってくよ」 女の声は残忍そのものだった・ 「蛇なんかちっともこわくない わよ」 お時はそれでも両股を絞め つけながら、強気にいった。 「それより姿を現わしたらどう なのさ。つまらない蛇使いの姐 さん。乞胸の乞食女とまちが えられるよ」 「生意気いうんじゃないよ」 女はかっとしたよ、つである。 「わたいのは、そんじよそこ らのくだものとはちがうんだよ」 「おや、気位が高いのね。投銭 じゃお気に召さないという のカ ? ・」 「畜生ー・わたいをだれだと 思ってやがるんだい。なめや ごうね
る女だ。渡してもあんたのものになり切るかどうか」 二人の足はドームの中心部へ向っている 9 「組むと言ってもお互いに何の保証もないわけだ。話はまとまりそ「色男ぶるなよ。ニヒルが売物のハンフ・ガート氏じゃないか。そ れに、オレン・リードと言えども女だ。それもとびきり女らしい女 うもない」 ・こ。リヒドーまリヒド 。理性をねじ曲げるテもないではない」 「まとまるさ」 「あんたはどうやら本気らしいな」 「え」 「このク・ロドレはクアン爺さんを提供し、その上北気閘の通行権「はじめから本気でかかってるよ 9 それにこの取引が無理だとも思 と外域用の車輛を出す用意がある」 っていない。儂は君にはじめから関心があった。人間的に共感でき しい 9 だから君という男をずつ る部分があった 9 好きだと言っても、 「本気か」 「本気だよ」 と観察していたのさ。君はアクナル : ハサックの宝のためならオレ ン・リードだって手放すだろう。そうでなかったとしたら、儂は君 「何を要求する気だ。店か。店じや小さすぎると思うがな」 「オレン・リード」 という男を見損ったことになる 9 君に失望する前に、儂自身に失望 ク・ロドレはさり気なく言ったが、ガートはギクリと足をとめしてしまうよ」 た。何歩も先きへ進んでからク・ロドレはたちどまり、手まねきを「あんたはギメルがいちばん似合う男だと思っていた」 した。「驚くことはない。それに早く爺さんを見舞ってやりたいか「当ってる。悪の巣で上品にふるまうことは、宮廷で貴族の信望を らな」 集めるよりむずかしい。ところが儂は貴族たちより悪人たちのほう ガートは緊張した表情で追いついた。 が好きなのだ。一しかしそろそろ疲れが出る頃だ。儂の立場は、疲れ たらそれでおしまいだ 9 ムニか、君か、それともあのローレ・タビ 「この話はあの女が持って来たんだ」 か。誰かは知らないが誰かに儂は殺されてしまう。金と女、そして 「いいもんだな、恋人同士というのは」 「古いことだ。ここへ来る前に切れていた」 ギメルの外の社会。アクナル・・ハサックの宝は、たとえ半分にせよ オレン・リードをかざるにふさわしいと思わないかね」 「しかし追って来た」 「そうじゃない。あいつは本気でダリドと戦っている」 「判った。・はじめてあんたの本音が聞けたらしい。オレン・リード 「ほう。・それなら問題はないじゃないか。儂にくれ」 はいつでも渡す。取引は早い方がいい」 「金と女か。わが尊敬するギメルの警視総監閣下も、所詮は人の子「儂にしても、彼女を自分のものにしきる時間が欲しい。ああいう というわけだ」 女性をこなすには、ギメルの方がやりやすいからな」 「オレン・リート ・。儂はなんとしても手に入れたい」 「しかし生き物だ。人間だ。それも手に負えない一徹なところがあ
お時は嘆息するようにいった。真名児の目 は、お時が髪を掻きあげる手もとの釵に灼き ついていた。ぎらぎら光っている。 「姐さん、わたいはこれからどうすれば よろしいので ? 」 「おまえはもう白蛇の真名児じゃないのだよ。 おまえの身柄は、白狐の参次おかしらに あすけよう。でも、おまえの性根は容易な ことじゃなおりそ、つもないねえ」 お時はロ許にかすかに笑みを刷い大。この したたかものの女妖盗が、しんそこから恭順 すると考えるのは浅はかというものであった。 「わたいは姐さんの手下 : ・ : ・生き死にを忘れ て働きますほどこ しおらしい口ぶりであった。 ト 0 「およしよ、おまえの腹のうちはお見通し なのさ。痣をとってもらうまでは辛抱しよう し J ・い、つのだろ、つ」 「そのような・ : ・ : 「だけど、これだけはいっておくよ、真名児。 おまえの幻術はあたしの許しがないかぎり 使ってはいけないよ。もし禁を破ったら、 そのときは、おまえは本当に生き腐れになる」 お時の表情には、常にない凄みがあった。 それはまさに、禍津神のお波という女頭領に ふさわしい迫力であった。おそらく女盗賊 白蛇の真名児との死闘に膠利を得たことが 生んだキャリアの重みであり、自信だったの 十つ、つ 0 これだけの殺 人が起きなが ら店の者たち がだれひとり 気づかなかっ たとは : 思議でござい ます ! 山本さま
スミスという女が唄っている。今から七十年ほど前 彼は、腕を動かして円盤の端に載せた。数秒経っと、何やらおそ「・ヘッシー・ ましい音がラッパから流れ出した。ひび割れ、すり切れ、埃まみれに、世の中からもてはやされた女でな。序でに言えば、肌のいろは 2 サウンド の、要するに疲れ切った音で、どうやらそれはひとりの女の歌声らわしと同じじゃ。わしは今でも、これを聴くことを無上の楽しみに あぶら しかった。音の質のみならず、声や歌いつぶりそのものも、乾いてしておる。この歌はな、わしの魂のむだな脂肪をそぎおとしてくれ るのじゃよ。 さびついているようだった。 わしがこれらを″財産″と呼ぶ訳が分ったかな」 、あんたは邪魔なひと パパ、あんたは邪魔なひと 「ええ」俺は呟いた。 あんたより好い人、どこにでもいる 「よく分りました」 「ところで、お若いの」老人は至極ていねいに箱のふたを閉じなが ら言った。 いいとこないひと、荷作りなさい 「おまえさんはまさか " スタッグ″に会いに行くつもりじゃあるま いいとこないひと、荷作りなさい いな」 ママの欲しいのは甲斐性のあるひと ・ハバ、あんたは行っていいのよ 「 , ーーじつはそのつもりですが、何故です ? 」 「この若い娘さんが」と、老人はスターシャインにちらりと片目を つぶって見せた。 わたしは若くて、血潮の熱い女 「突然真夜中にわしを訪ねて来てな。連れと一緒に″スタッグ″の わたしは若くて、血潮の熱い女 ところへ赴く途中だが、先き行きを占って欲しいとのことじゃっ あんたはこの熱はさませない、ダディ あんたはいいとこないひと、これほんとよ : そこでわしは本来は苦手だが、未来を読むほんの真似ごとをして その歌声は物憂く投げやりで、そっとするほどェロティックでも あり、熱いと思えばつめたく、燃えていながら醒めていた。そして見たわけじゃよ。どうもおまえさんの行く手は涅槃境と言うわけに しゆったい ひどく澄み切った悲しみをたたえていた。そしてひどく澄み切った は行かんな。この世の定めを外れた奇怪な出来ごとが出来する卦が 出ておる : ・ 悲しみをたたえていた。俺は思わず目を閉じた。 おまえさんはそいつに巻き込まれるそ。この若い娘さんはどうも 唐突に歌はおわり、老人の呟きが聞えた。 それがお気に召さんらしい。なぜそうなのかはわしの知ったことで : エーメン」 をオしがな」 俺は瞼をひらいたが、それはきわめて嫌や嫌ゃながらだった。 「これは・フルースと言うものじゃ」老人が沈んだ声で言った。 老人はホッホッと奇妙な音を立てて笑い、意味ありげな目付でス ニルヴァーナ
がって : : : ゆるさないト 6 ー・」 女の声は冷たい激怒をこめた。 「生かしちゃおかないからね」 「こそこそ隠れて空威張りしな いでさっさと出といで」 と、お時は挑戦する。 「投銭の一文だってありやし ないよ。いっ乞胸女になりさ がったのさ。白蛇一味の各 蛆さんの名がすたるんじゃな いのかえ ? ・」 「わたいを知ってたのかい ? ・」 意外そ、つであった。 「そんなことは先刻ご承知なの さ。近ころ世を騒がす大女盗賊 白蛇の真名児が、けちな蛇使い とは - 知らなかったけどね」 真名児はもう挑発に乗らな かった。冷静さを取り戻し たのだ。 「そうかえ・ : ・ : おまえもただ ものじゃないとは田っていたが : 知らなかったねえ、おまえ はどの凄腕がいちとは。どんな ニっ名でお盗めしているんだい ? ・ がつがみ 「 : ・・ : 禍聿神のお波という女 白波さ。もつばら上方でお盗め してたのさ」 お時は女賊をよそおうことに した白狐の参次に世話に 、なったことが役に立つ。 7 「とんと聞かないねえ、そんな名は。どこのおかしらの下に るんだい ? ・ と、真名児。 「あたしは流れ盗めのひとりばたらきなのさ。ともかく、この杉 田屋はあたしのロ。同じ稼業とわかったら、さっさと引き退っ たらど、ったえ」 お時が高飛車に出る。 「そうはいかないよ。こちらはお江戸で名を売った白蛇の真名 児だよ。けちなねすみばたらきの駈けだしにしてやられたとあっ ちゃ、大恥かくんだ。気の毒だが、まがつがみのお波とやら、 圧一〈叩はも、り、つト 6 。宀見伍しな 「白波稼業の仁義はどうでもいいというのかねえ。畜生ばたらき の盗人のいいそうなせりふじゃないか : : : だけどおまえの手下は この通りのざま、おまえひとりであたしを殺れるのかえ」 恐ろしく冷酷な含み笑いが陰々とお時にこたえた。 「白蛇の真名児の恐ろしさをたつぶりと思い知らせてやろうよ。 この世の地獄にたたき落して、なぶり殺しにしてくれる : と、にわかに、お時の四肢に巻きついていた十匹近い蛇が するするとはなれ去っていった。急速に土問を這って壁際に 向う。そして先を争って壁を這い登りはじめた。 蛇の群れの行方を思わず目で追ったお時は、蛇どもが天井に消え たあとの壁に、ふいにばちっと開いた金色の瞳に視線を吸い つけられた。 それは双児の月のように妖しく光っていた。その目には虹彩も 瞳孔もなかった。・ ヘアトリス王女の白光を放つ目に似ていたが、 比べようもなく邪悪な妖しさであった。・暗黒の地底を徘徊する ものの、魔性の目であった。 あいつ、、
て自分ともひととも付かねえものになってるちゃねえか。おめえの 「宇宙だの物質だのって難しいことはおれにや解らねえが、その原 その「・ほく」てのは一体何なんだ。何でもその「ぼく」が誰でもね子の組合せみてえなものがまた出来るってのは、たとえて云えば何 へえ わけ えおめえの中へ入ったんだ。なんにも理由なんかねえちゃねえか。 かが煮つまるような事だろう ? かゝる時間はみな同じなわけだ。 てんで 人はみんな各自に我れで自分でおれで僕だろう。どうしておめえのしてみれやあとから死ねばこっちへはあとから出てくる訳で年だっ だけがおめえのだけの・ほくなんだ。おめえの前世だって、ひとのやって下になるーー早苗さんちゃねえナ」 を夢みてえにごっちゃに見たんちゃねえ証拠こそどこにもねえゾ」 「でも先に死んでは終着の一致がむづかしいョ。相手の行先があと からでなくては知れないでしよ」 「もう一つ - おめえの探そうってえ前世の女はナ、おめえが押勝「そんなこと知るもんか ! 」と銀次郎ははねつけて、「宝さがしの でねえかぎり、こっちへ来てるかどうか分らねえぜ。おめえはその舟に乗るんちゃねえや。おれの言いてえのはナ、ぶじ出てきた二人 が、年下からちや年上が分らねえだろう、って事なんだ。おめえ、 女がおめえの後追ったのを見届けちゃいねえんだ」 自分より世ノ中識ってれや悪賢こくもなってる年上の相手がすっか 私は大地の崩れつゞけるのを感じながら、必死に抗弁した。「でもり把めるか ? 爺ィさまからは若い奴は見通しだ。、だがその逆は利 小枝はかならず会うために必ず死ぬと言ったんだ。それも自分から」かねえんだョ。おめえだって俺が分っちゃいねえ。苛められて泣く ならず 「押勝の女もそう言ったろ ? 」と銀次郎は皮肉に頷きながらきゝ返ことなんかねえ只の無頼者だと思ってやがるきりだろう。それでも いけどョ」 した。「だがナ、そんな事はどの女だって言うんだぜ。一一世三世、 未来永却あなたのものです、てな事ほざく口の下から、生だか性だ か、活力が一つ足りなきやプイとわき向いて逃出すワナ、女なんて 「あとからしかと見定めずに、さきに・違う所へ行っちまっちや仕 やつはヨ。だからおめえ、うぬが先立っときにやきまってあの世で様がねえとおめえは云いたいんだろうが、狙い定めた弓だってそう めかけ 待ってると吐すくせに、相手が娑婆で浮気しようが妾会社を作ろう思う通りに中りやしねえワナ。確実にしたけれや先に出て、先んじ が、化けて出るのも忘れてやアがらア。『必ず会う ! 同じ世に出た年上の目で探すのヨこ世紀さがそうと万世たづねようと、宇宙 て探してみせる ! 』と言ってその通り実行してるのは、おめえの話の時からすれや纔かの間のこったろう。本当にやる気の女ならそう あま いろをんな ちゃ押勝の情婦た。篠原の娘ッ子ぢゃねえ」 してるゼ」 「というのはだョ、よしんばその小枝とかが約束どおりに後追った「だから、その「声」とやらの言うとおりに此世へ来て探している としたところで、あとから死んだんちゃ探せねえからだ」 というのは、おれに言わせれやその冴子ってほうだーーそれをおめ 2 「え 」私は驚きっゞけた。 えのほうでも探すんだナ」 つか
「ガートか。それはむずかしい。あの男の用心深いのはギメル中の 0 てギメルを脱け出した時持「て出たのは、二十万か三十万だと聞 いている。それだけでも他の星へ行けばひと財産なのだ。それを逆 人間が知っていることだ。で、ガートの何が知りたい」 「あんたが案内したんだから、多分あんたが一番詳しいだろう。ガに五十万クレもギメルへ持ちこんだとは、とても信じられないこと だった。たとえば一時間五十クレの淫売女が、その一時間分を持っ 1 トの店へシケ込んだあの新入りの女のことだ」 て外の星で生活したとすると、優に二カ月は高級ホテルで寝起きで 「ああ」 ク・ロドレは大けさにうなずき、「オレン・リードさんのことだきる計算だ。 な。大した美人だ。どうやらクオレあたりの人らしいが、それにと「まだ随分持っていたようだ」 ク・ロドレはそう言ってクスクス笑いはじめた。「その星間信用 ほうもない金持らしい」 「金持ち。このギメルへあの女はそんな大金を持 0 て来てるのか」状がしこたま入「た重い鞄を、なんとあのローレ・タ・ヒがガートの 「そうらしい。儂が知っているだけでも、彼女は五十万クレの星間店まで手も出さずに運んでやったのだからな」 「たしかでしような、それは」 信用状を持っていたよ」 ムニは貪欲そうな目を剥いて言った。組野で下品で向うみずで、 「五十万クレの」 ム = は大声をだした。ちんびらの戸ーレ・タビがうまく立ちまわ頭の回転が早いだけにク・ 0 ドレにはどうにもやり切れない相手だ 0