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検索対象: SFマガジン 1973年1月号
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1. SFマガジン 1973年1月号

く同れ曳う 視そ声がくの何でり視ま いしき目き 、だも攻私さ線るおペ早準るずに銀 ! て、でか 線のの を大記院院。か撃はすをき嬢っ苗こより窺次 る運視ずっ りさ念されう廻っ郎 ! 転て、た 注き憶でのこも的ぞ ぐながロだの見でくん注まんににしては 手いジの の眼なをれお透はりそど意にりは倣して、萎 サがるツは ででいきに嬢かなとのはを礼に うていま縮 ッ代だと運 。立たっし サ弁け我転 、相ほくもささかし視我は ! の 場 去鞄かた んれった線々ら 吉手ど とす々手 。が子わを儀の とてた 帰かるをだ 祥にでと つをにま いしが視私供ずさを感 院えよ た肩なゝ 天真あは なっ の実るほ第うま、線のら、せし謝 つうにた へっチ よの。と人いおはうに相たたの もかたラ てに う告そんはそそたえ浴変が気 ちけ。と ・刺お 勉言 な白しど家、うれゞでびら つ、し嬢 持 ろ直そお 強 美をてなで一な畏詮停とせずおそが でた銀貫さ んしれ嬢 人要いく ? たほん議止まてつ嬢しあ もの次くん 、かさ 課だ郎よは いどですっそきさてる 以仲らん で求つ いすも私と私にいるたのとん皆の 下間慌を 業つにうひ なる只なはだ感るよ。上おはをだ 大のて見 でたとなと が浸じど知けじ此うをすそなろ ま詮言 勢かて上 も ら透つはらにら方な げ・げ しつ鑿も よんらう 、的とそなでれにだわうなペ もに手る な何た的ロ 、のいなるはけたな事てと あな 、隠でよ さをとなを

2. SFマガジン 1973年1月号

おもて ひき かう・ヘ 一一将は第つき面に嘲りの笑をうかべて答へなしつ。「そはまた何の見てしまま、我は血流たちまち頭より退去りて心遠くなりゆきぬ。 らう 雨でムる。世を騒がする嵐の雨とは乱がはしきお振舞ーーとまれひ矢はさらに何本も飛来りてわが胸を貫きたり。 けみ と検分仕る。その旨仰せつかって参り外へばーーー」 「わが君ー・小枝はお約束を守りまする ! 」 いまは何をか言慥らむ。 敵兵の手中に身をもがきっゝ叫ぶ声、あやに遠のきっゝ聞えけ 「近よるな ! 」 と我は祭壇のまえに立はだかりて制しつゝ、片手に懐ろなる大臣「応 ! 待ってゐるそ ! 」 の茶包みをさぐり求めぬ。それとなく眼を配りて見てあれば、御供我はしか呼び返しつゝ、蹌踉めく足を踏みしめて壇にたどりつ ぬさ かわらけ かはらけ そなへたる下ノ壇の、幣垂るるあひの真中に土器の皿おきて、そのき、後はたゞ冷たき夢心地のうちに包みを土器のうへに重ね、太刀 ふく あれ 上にわが持来りし白絹の袱ひろげたるありきーー渠なり。我は包みの柄かしらもて残んのカかぎり打叩きぬ を取出しぬ。 目の前一面に真白なる火立ち・ : 我は、その真只中に砕くるご 「之なるは隋唐の火薬そーー近寄らば投ぐるー・功逸って怪我すなとく気 : ・ 「何とな ! 」 将は色をなしつゝ刀に手をかけぬ。「抵抗はゞ討てとの御諚でム る ! お退きめされ ! 」 四 「のかぬ ! 」 我は一歩づゝ横ざまに壇へ近づきっゝ、己れも太刀を抜きて声荒「あぶねえー・怪我をするーー」 げたり。「汝らこそ命惜しくば退けー・京まで引退いて帝と坊主に という声して抱止められし目をあぐれば、銀次郎の顔むづかし気 あや しれ 1 」と ふけ 言ふがよい " 国を危むる情痴非望に耽らば耽れ、日 / 本は押勝のあに覗きこみ居れり。 とゆく者に事は欠かぬとナ ! 」 「ばかやろう ! 帽子も提袋もおきっ放しで駈出しちまやがって しやっ ラきばし 「這奴ー・」 帚星がどうしたってんだ。星なんそどこでだって見られるちャ 将は歯軋りして罵りぬ。「もはや容赦はならぬーー射れ ! 」 ねえか , 兵どもの矢をつがへ、三郎の刃をぬきてその中へ躍り入る姿見「あゝ銀さんか」ーー我はふかき吐息つきぬ。 ゆると同時に、カッと熱き物いくつか我胸を打叩きて、全身の気力「銀さんかもねえもんだ。てめえみてえなウスラトンカチどうでも や 一時に喪はるゝを覚えつ。 いゝけどョ、何だか気病みじみてやがって様子が変だし、袋にや銭 へえ 三郎の斬られい小枝が己れの胸を刺さんとして兵に抑えらる & をでも入ってやしねえかと思うから追かけて持ってきてやれア、い つはもの さから たち いさほはや よろ 222

3. SFマガジン 1973年1月号

あやめぐさ ひ、菖蒲川べりに美しく咲きむるゝので知られてゐる。我れはかねも女心の不思議なるは、人も馬も変らざるにや。をかし。 み、そを見んことを望みたれば、一つにはその下心あって出たので我はいたう腰打ちて歩みかねたれども、さいはひ里長の家ちかう ある。 して、こゝに数日とゞまりて身を養ひえたり。美しき乙女は小枝 9 おとゞしゃう 大臣の荘は、久米、檜坂、篠原、伊沢などの里に分れゐてる。菖主が娘にして、終始われに侍して至らぬかたなく、我はっとに本復 くさ 蒲はもちろん沢辺に咲けば、伊沢にむけ檜ノ坂の山をこえているとしてもなお種々に作病して篠原にやどりつゞけぬ。里長はしかすが こし き、とっ・せん大臣の出ましに行遇ふのたのであった。噂のとほり、 に以前より我の隣庄にあるを知りたるめり、なにやかや言ひ慥らへ ゑま 笑み押照るがごとき好男子。丈高く、髭濃くして、一瞬こちらが畏ては小枝と時すごさうずる我を、笑ひて咎めざりけるのみか、つゐ 縮ろぐほどの美丈夫である。もとより荘などに越さるるお身ではな に三郎来りて荘につれ戻されしのちも、我の渠女が許に呼ばふをゆ いが、このときは・当時なにやらしきり諸方に走せ渡らせられ、近るしき。 くへ御用のひま立寄れしときく。いまにして思へばそれも心にあた かくて佗しかりしわが里住ひは、通ふにやすき隣りの荘の知るべ やくさ る " 兵をつのって居られたのた。 を得て、たのしき日々をおくるうち、さしもながん \ 患みける心の さきの 大臣の馬が、いかゞはしたものか、ゆきなりに花子へ掛りきたつ病もしだいに薄れゆき、夜ごと我を悩ましきたりし妖しき前世の夢 なづき た。乗り手の制止もきかうとせぬ。 どもも、ようやく我が脳を去りそめて、新しき友たちと美しき恋 幸か不幸か、花子はまだ小娘で、その事を識らぬ。なれど悧淡も人、心やさしき人々に囲まるゝ暮しにしみみ、と生き甲斐をなんお のゆゑほどようあちこちと小廻りに逃げてゐるうち、詮なき事かばゆる、第二の人生を踏出すことを得たり。 とゞろ しあはせ な、石に躓いて我を落したのである。 その貧しくとも心満ちし、さゝやかなる幸福の頭上に、音も轟に いかづち 「あぶない、怪我をする ! 」 霽天の霹靂のおちかゝりしは 晉石多き場所であった。はじめは笑ひてありける人 ~ も、我落ち この年、この月 ~ のたま あゝ天平宝字八年九月廿日 ! て失気するに及んで直立ち、大臣はさ日ひて供人に我をはこばする 一方、地下の者をよばしめ、我の介抱を命せられしのちもなお暫し 止まりて様子をごらう・せられ、わが無事なるを見てはじめて駒を返「若、たいへんでムりますそ ! 」 その日もまた篠原にありしわが許へ血相かえて花子をとばしきた されしと承る。 おとゞ をかしきは花子が大臣の葦毛の去るを慕ひてしきり啼きつることった三郎は、つねのごとくには膝もっかず、かたはらなる小枝を押 「アラはや去なせられますのくるごとくにしてわが二ノ腕をつかんだ。 になん。迷惑したりとこそ覚ゆるに、 まいす ゑ い」と言わんばかりとつおいつ行戻りして鼻を鳴してけるは、あと「恵美の大臣は事にやぶれさせられました ! 売主めが先んじて兵 あるじ 追ふにも主すて置きかねて、「早く乗れ」としいふなんめり。さてを動かし、上皇より謀叛の宣旨ゆすりとって討手をむけたものでム おとゞ おとゞ おとゞ いで はれ わか おと す はつか きっ さえ 幻 2

4. SFマガジン 1973年1月号

がら、またほしげに我を見返し、「さうちゃ、せめて栲の君なられし姉君なりき。 「輿もお目見えも、どちらも成りませぬとーー」 りとご対面叶はぬか、伺ひませう . たあ やすどの と涙ながらに告げられて姉君は、「これを栲衾さまがーー」と、 と寝殿がりいそぎ入られぬ - 。 我は己れ生れしわが家にありて、両親に見えもならぬ自らの身を何やらな革袋に重き物を我手のうちに押入れられて、あとはたゞ忍 すま び音に袖を濡らしたまひぬ。 悲しく思ひっゝそれに坐ひっゞけぬ。 「さらば冴子さまーーー」 「なに、捨ノ君が ? 荘より ? 院子の垣かげに家司か僕婢の居るめりして、小声に我の奪すなる姉とはよべぬ身なれば、姫とも言ひかねてさる常のごとく暇を告 左なり。我は捨てられし・この国の主の裔なり。げて我は立上りつ。 声きこえつ。 すぐせさだめ くさかべ わが日下部の家は、人皇第四十代天武ノ帝の御子にして元正・文「何事も宿世の定命にい。左なお歎き下されますな」 こと 「お許のやうに素直になれぬ妾は、なんといふ罰当り・・ーーこと姉は 武両帝の父君なる草壁王より出たり。この短命の家系は、次代すゝ ちげはた おりめ んで臣籍に下りてより、我までたゞ祖父君をへだつるのみなれば、袖の中より歎かるゝには、「いっそもう、地下の秦部の織女になと さすれば好むとき好む人許ゆけませう。その篠原とや や & 寿命をとり戻してんごと人の欣びあへるも束の間、わが母ぎ成りたい ! ひと めをと ふた らの女のもとへ思ひのまゝに通ひ得さする二郎どのは、妾よりはし み忌はしくも双児生みたまひぬ。それを我と姉君の男女ノ双子 ! お倖せかも : : : 」 下々にいふ畜生腹なり。 いみはら 親びとは限りなく歎きたまへども忌は祓はざるべからざれば、姉家司どもの手前ありけり。何か悩ませらるゝ由おわすにや、また めのと 君をのこして我を里に下したまひぬ。越前なる我家の荘・柴の家族一しきり涙したまふ姉君を老女の手にのこして、我は愛の代りに黄 は、ちかごろ名を斯波の字にあらため、勢ひすこぶる盛んなれ金恵まれし父母の家を立出たり。 三郎は随身に故里の者ありとて、我をまっ間に我家のちかき消息 ば、我はこの族長にやしなはれて何不足なく育ちぬれど、ふしぎな ちょう しんわづらひ る心の疾患ありて、たえす奇異なる前世の夢のみ見て現っとの境さをくさぐさ仕入れたりけり " それによれば去にし年我家の重陽の かな だまらぬ病になやみき。さきに述べたるごとく、恵美ノ大臣との事宴に恵美の大臣見えて、姉君もてなしに箜篌など奏でまゐらせ、親 わざ よりしてフトそれも癒え、斯波の人 ~ より姉君にあらで我の出され君も興ぜられてのすゑ女童のこらず歌舞しけるに、大臣姉君の伎芸 ちょ たるは、日下部は女を皇にるゝ定めなるが故と聞かされて珥をことのほか賞でたまひ、「宝子さんよりよほど巧い」と褒められ けるとか。宝子さんとは長れ多くも当上皇の御名なれども、大臣も を分けしも漸くこの程のことなり 上皇もともに幼きころは聖武帝好ませられし流行りの歌舞お慰みに 詮なき事どもをそゞろに思ひ追ひてける我は、やにはに まゐらせけるおん仲なれば、この言葉もものゝ弾みに出たるめり。 「お悼はしさははや ! いつのまにかたち戻そのとき姉上はお褒めを卑下したまふがてそれとなく嗜めまゐらす と熱きものに抱きしめられて再び驚きぬ したうど ふた まみ あるじ ことより こし おとゞ ふる めのわらは がり 2 ー 5

5. SFマガジン 1973年1月号

物ド物 = を義をス : 立ツ 新き ! をさこい 一を二 。醜態 ものだったかもしれない を見られ嘲けられた屈辱と怒り でかっと全身が熱くなった。 くちなわ 「蛇はね、暖くって柔らかい 穴が好きなのさ。女の隠し所 がね : : " ・そうら、おまえのあそ こを狙って鎌首をもたげてる よ。一度もぐりこんだら、どう やったって出てこないのさ。ひ つばればそれだけ奥へもぐり こむ。臓腑を食い破って、腹の 中まではいってくよ」 女の声は残忍そのものだった・ 「蛇なんかちっともこわくない わよ」 お時はそれでも両股を絞め つけながら、強気にいった。 「それより姿を現わしたらどう なのさ。つまらない蛇使いの姐 さん。乞胸の乞食女とまちが えられるよ」 「生意気いうんじゃないよ」 女はかっとしたよ、つである。 「わたいのは、そんじよそこ らのくだものとはちがうんだよ」 「おや、気位が高いのね。投銭 じゃお気に召さないという のカ ? ・」 「畜生ー・わたいをだれだと 思ってやがるんだい。なめや ごうね

6. SFマガジン 1973年1月号

て自分ともひととも付かねえものになってるちゃねえか。おめえの 「宇宙だの物質だのって難しいことはおれにや解らねえが、その原 その「・ほく」てのは一体何なんだ。何でもその「ぼく」が誰でもね子の組合せみてえなものがまた出来るってのは、たとえて云えば何 へえ わけ えおめえの中へ入ったんだ。なんにも理由なんかねえちゃねえか。 かが煮つまるような事だろう ? かゝる時間はみな同じなわけだ。 てんで 人はみんな各自に我れで自分でおれで僕だろう。どうしておめえのしてみれやあとから死ねばこっちへはあとから出てくる訳で年だっ だけがおめえのだけの・ほくなんだ。おめえの前世だって、ひとのやって下になるーー早苗さんちゃねえナ」 を夢みてえにごっちゃに見たんちゃねえ証拠こそどこにもねえゾ」 「でも先に死んでは終着の一致がむづかしいョ。相手の行先があと からでなくては知れないでしよ」 「もう一つ - おめえの探そうってえ前世の女はナ、おめえが押勝「そんなこと知るもんか ! 」と銀次郎ははねつけて、「宝さがしの でねえかぎり、こっちへ来てるかどうか分らねえぜ。おめえはその舟に乗るんちゃねえや。おれの言いてえのはナ、ぶじ出てきた二人 が、年下からちや年上が分らねえだろう、って事なんだ。おめえ、 女がおめえの後追ったのを見届けちゃいねえんだ」 自分より世ノ中識ってれや悪賢こくもなってる年上の相手がすっか 私は大地の崩れつゞけるのを感じながら、必死に抗弁した。「でもり把めるか ? 爺ィさまからは若い奴は見通しだ。、だがその逆は利 小枝はかならず会うために必ず死ぬと言ったんだ。それも自分から」かねえんだョ。おめえだって俺が分っちゃいねえ。苛められて泣く ならず 「押勝の女もそう言ったろ ? 」と銀次郎は皮肉に頷きながらきゝ返ことなんかねえ只の無頼者だと思ってやがるきりだろう。それでも いけどョ」 した。「だがナ、そんな事はどの女だって言うんだぜ。一一世三世、 未来永却あなたのものです、てな事ほざく口の下から、生だか性だ か、活力が一つ足りなきやプイとわき向いて逃出すワナ、女なんて 「あとからしかと見定めずに、さきに・違う所へ行っちまっちや仕 やつはヨ。だからおめえ、うぬが先立っときにやきまってあの世で様がねえとおめえは云いたいんだろうが、狙い定めた弓だってそう めかけ 待ってると吐すくせに、相手が娑婆で浮気しようが妾会社を作ろう思う通りに中りやしねえワナ。確実にしたけれや先に出て、先んじ が、化けて出るのも忘れてやアがらア。『必ず会う ! 同じ世に出た年上の目で探すのヨこ世紀さがそうと万世たづねようと、宇宙 て探してみせる ! 』と言ってその通り実行してるのは、おめえの話の時からすれや纔かの間のこったろう。本当にやる気の女ならそう あま いろをんな ちゃ押勝の情婦た。篠原の娘ッ子ぢゃねえ」 してるゼ」 「というのはだョ、よしんばその小枝とかが約束どおりに後追った「だから、その「声」とやらの言うとおりに此世へ来て探している としたところで、あとから死んだんちゃ探せねえからだ」 というのは、おれに言わせれやその冴子ってほうだーーそれをおめ 2 「え 」私は驚きっゞけた。 えのほうでも探すんだナ」 つか

7. SFマガジン 1973年1月号

「だってあれは姉さんで : : : 」 た。「おれは何だか骨抜き土鰌みてえなお前が気になって、嫌いち ゲイ ひび きゃうだい 「姉さんも兄様さんもあるか ! 」銀次郎は容赦しなか 0 た、「前世ゃねえが、それだけにもう俺なんぞと付合「てお前の世渡りに罅割 かたき は姉弟でもこの世では仇敵夫婦かもしれねえちゃねえか。だい一おらせたくねえ。裁判がすんでどこへ遣られるか分らねえが、おれも めえはその二郎とかちゃねえんだョ、解らねえ野郎だナア。その証もう居所は知らさねえから、おめえも来るなーーちやアナ ! 」 すえまご 拠にやおめえはその何とか王の裔になりながら、まるきりそいっ 「銀さん待って ! 」 の生きた気心を感じてやしねえちゃねえか。そのくせ始めつからひ私はさっそく骨抜きぶりを発揮しながら涙声でひきとめた。 とりで承知して押勝の代弁ばかりやってる " つまり、どういう訳だ「お別れの前にもう一つだけ " それちや銀さんの言うとおりぼく か知らねえが、おめえはわきから前世の自分を見たんだヨーーもうが押勝だったとしたら、そうだとばかり・ほくが思っていた銀さんは 行けよー 誰なの ? それから実はぼくちゃなかった日下部の二郎は ? 」 「わかったよ、銀さん」 もう行きかけていた銀次郎は扉のてまえで振返って「知るもんか 私は行きたくなかったので急いでそう答えた。「ほんとにそうか ! 」と言った。そして もしれない そうします」 「ー・そんな事だれに分る ! 」 銀次郎はだまって饅頭をまた一つ食い、ロの中でなにか聞取りに と笑ったが、そこには言い難いある凄惨な悲哀が籠っていた。 くいことをぶつぶつ呟いたが、それはどうやら「遠い所をわざわざ「だがもうこれつきり会うこともねえだろう。お別れの印にきよう 来てくれて有難え」という事なのらしかった。 の礼をしておくとサ、ご推量どおりおれがその二郎という泣虫かも かわ しゃうね 「おめえは倖せ者だよ・・ーー」 知れねえョ。性根が逆だというだろうが、世が易れや性も変るだろ さら 彼は残りをまたあとの楽しみのために包み直すことに熱中するふう。この極道曝していても無え親の恋しい俺にくら・ヘて、 ( それだけ つよ りして私の視線を避けながら言った。「おめえみたいに世の中がどの探し物に親が入ってねえおめえはよっぽど毅いかも知れねえぜ」 んなに辛く当っても恨まずにいつも人を愛したがっていられたらナ私は「それは : ・」と事情を説明しかけたが、彼は「マアいゝャ どうしてもそうは出来ねえ奴のほうが多いんだ。人生なんて凧ナ」と遮った。「そんなこと議論したって仕様がねえ」 みてえなんだからナアー・てめえは好き勝手に大空を飛んでるつも「それより絮公」と彼はつづけた、「いまの差入れの礼をやるから りでも、なーにチャンと線に繋がれていてどこへも行けやしねえん耳かッぼちってよく聴きな " 早苗さんはナア、おめえの話のとお まぎ り名が紛れてこんぐらかっている。小さい枝の字でもねえ。おめえ だ。そしてそいつが切れれや : : : のたれ死によ ! 」 ひと そう言って彼は立上った。 のは「冴子」だ。『瑳絵子』という女がこっちにいてやつばし探し てるぜーー字は違うがナ」 「おめえ、もう来ねえほうがいゝそ」 と彼はじぶんから石守に切上けの合図をしながら私を顧みて言っ 足下が再度ゆらいだ。

8. SFマガジン 1973年1月号

な・せか、もの忘れがひどくなって、その上、目がれわれ ) が、この、このどことも関われないとい みえなくなったり、耳が遠くなったりしつつあるのう、のれんに腕押し的現実のことだし、これはいっ わたしは、これからやってくる新たな十年 で、大量のメモ用紙が緊急のものとなり、なにか指たい、・ とうなっているんだろうと、ポケーツとタバ 間について、どうも、大変楽観的に思っていま の間からこぼれる砂をつなぎとめでもするように、 コでもふかしているのです。今年、・ほく ( あるい す : : : これから先、何十年かについてもそうで 大量のメモが書き散らされるのだが、それはいつは、われわれ ) は、全ての事件から完全に疎外されすが : : : しかし、わたしは、わたしの熱情を共 も、どこかへ紛失していって、あるいはメモ用紙でた。そして、・ほくには、なにも起きなかった。 に持ちあわせない人々と対決し続けます。彼等 あったような大量の紙片が、いつのまにか部屋一杯先日、ライザ・ミネリの『キャパレー』を見て、 は、陰気で、いくじのない人間のように見えま なんとなく″、、 に床をかくしていることに気付く毎日なのだ。 ししなあ″と思ったし、『ラスト・シす、そしてわたしは、その理由を知っているつ だが、今年 ( 今号から見れば去年 ) 、どれほどのヨウ』と『イージー ・ライダー』の二本立てを見もりです。 ( 《「『大事件』」》 ) が、ポッパッしたか、それはほとて、前の方は″こってるけど、つまんねえなあ″と んど、いくつかの一面全頁的大事件を、ひどく遠い思い、後の方は、もう四、五回目に見たのに、あの 多分、もしわれわれが、彼等をもっとよく知 所まで押し流してしまったほどの事件洪水だった頃の全ての矛盾が、 この映画が、五月革命の不 りはじめたら、われわれは彼等を問題外のもの し、恐らく、そのなかには、相当に重要な事件もま吉な予兆を負って、変てこな高揚のあったあの時期として笑いとばすことができるでしよう : : : あ じっていたであろうに、・ほくはもう、そんなことま - 一を余りにも見事に、その製作者と主演者達の思わく るいは、少なくとも、電波や、われわれの新聞、 で忘れてしまって、・ほくにとっての今年は、いかにを突き破って象徴していることによって、全く完全雑誌の頁から追い払うことができるでしよう。 も小さな幸福とか不幸とか、小心なおごりや、ちつに見え見えになるのを眺めながら、″へ】え、そう ( 一九七〇年、七月一一〇日、米国火器小売商協 ぼけなジェラシイなんかの、 ミニアチュアな、うすですか : ″という感じなのだ。それよりもずっと 会第七一回総会での、ま LOOK 当誌編集者ト かわせんべいなのだ。 月に、『わらの大』と『ソルジャー・ポーイ』を見 マス・シェパ ードの演説 ) 過去の圧縮された記憶断片群が、もし正当に輝いていた時も、全然知らなかった『ソルジャー・ポー ていたものなら、いまは恐らく、なんとも言えないイ』という大傑作映画にぶつかって″すごい、すご昔、ある大学の研究会に、反主流一分派とし ような時代にちがいないのに、物理的な質から、一 4 と思っていて、でもやはり、そんなものはもて『環破連 ( 環境破壊連盟 ) 』という組織があって、 体なにがどうなっているのか、見分けるのはほとんう、カンフルにならないのだ。 そのクラブが伊豆方面で合宿する頃になると、「科 どできないようにも思えるのだ。・ほく自身がひどくな・せなら、もう、今、状況をいくら正確に捕えよ学文明が、人類を打ち破った偉大な記念碑である いかがわしくなっていることを認めつつ、それでもうと、それが何の役にもたたないことを知ってしま″田子の浦″を視察しよう」などと提起して、その なお、この世界が微妙な所で、・ほくの識閾の外に出てったのだし、誰かの書いた傑作劇画『光る風』のよ頃話題のかたすみでふくれあがり始めた公害問題 行ってしまったことの方を、・ほくは選ぶこともでき一うに、ひどい絶望と無力だけが、この一服のたばこ一を、先見的かっジャーナリスティックに突破してい る。それはもっとも単純には、・ほく ( あるいは、わの友となるのだ。 た。それは余りにも幼なすぎたか、進みすぎていた (D ス、きナ 1 何のために 0

9. SFマガジン 1973年1月号

歌読ませられ、大臣また之に詫まり入る返歌をなされて、父母ぎみ うたげ けそく も宴の首尾にことのほか御気色目出度かりけるとなんーーーその後姉 君のもとへ大臣が通はせられるのである。この恋は双方こよなう熱 し、とか。 「なんとマア ! 」 我は重なる奇縁にあいたロも塞がらぬ思ひして叫んだ。「恵美の 大臣と姉君がに」 「さればーーー」 三郎は不興げであった。「都にて確かむるまではと控へをりて あ ふが、大臣の評判はやはりこなたでも悪しうムる。天寵笠に着て驕 さから 暴きはまりなく、少しでも反対へばたちまち官を逐ふげに侍る。京 ではみな悪宰相としかよばぬとやら」 「そんな事はない ! 」 我は不知々々にその人を弁護なす語気つよめぬ。 こゝろ 「気は激しきか知れぬども、仁義の精神はしかと持ったるお人ち あらあら ゃ。粗暴しきは上皇 ( 孝謙帝 ) のお振舞が面白からぬゅゑそ。三郎 そなたゑみ とてそうであらうが " はじめは天ケ下に二人ない色男。、「汝の笑に は敵ひませぬ」と恵美押勝の名下されて、小皺ふえての仏いちりに 新渡の座主が弁才ふるふと、こんどは其方にへたりついて此方は。ほ をなご 女子にかやうな仕打されては、仮にも臣下ちゃだけ鬱憤のやり 場があるまい。臣下といふけれどな、かのお人は鎌足公の曾孫で、 さきのおとゞ 上皇も光明さまの御子なれば同じこと、前大大臣たち fi) こら からすれば従兄妹どしちゃ。従妹にふられたは催ふとしても、素姓 . の知れぬ成上り坊主に見代られたが我慢ならうかテャ。弓削とぬか すからには部の民ちやろ」 「叱ッ ! 人が聞きまする」 おとゞ へ とこ かばひ ケンプリッジ『アベイ館』の怪奇 イギリスのケンプリッジ市にある の十月から一九一一年まで同館に住 数々の歴史的建築物の中に、十六世んだ同市ペンプローク・カレッジの 紀の末に建てられ、現在ケンプリッ評議員・ O ・ロウソン氏夫妻とそ ジ民族博物館の管理の下にあるアベ の四人の子供の体験談である。 イ館というのがあるが、この館に これについては、ロウソン夫人が は、時々不思議な出来事が起こる。 一九 0 八年の春に書いた詳しい覚書 かって、同市にあるゴンビル・ア と、ストラットン氏が一九一三年の ンド・カイアス・カレッジの元教授五月に同僚・バロウ氏と共にロウ で、一九五三年から一九五五年にか ソン氏から聞いた記録が主な資料に けて例の由緒深き英国心霊研究協会なっている。 の会長であった故・・・スト それによると、当時同館で最もひ ラットン氏は約四十年の長きに亘っ んばんに起こった不思議な出来事と て、その綿密な資料蒐集につとめた して次の三つがあげられる。田いっ が、生前、これを公表するかどうか も後肢で立って、せわしなく階段や について、それがその後に同館に住部屋の中を走りまわって消えうせ みつく人々の眼に触れることによっ る、大きな野兎のようだが、耳の短 て、以後現象の内容に影響を及ぼす い何とも描写のできない「動物」の おそれがあると考え、公表しなかっ 出現、図暗い所にばかり現われるの た。 で、はっきりとした描写はできない ところが、彼の死後一 0 年以上た が、何か黒っぽい服装をした「尼 ち、この幽霊屋敷のことも何度か新僧」のような感じの幽霊の出現、 聞に大きく載るようになったので、 3 怪音。 今さらこれを内密にしておく必要も 「動物」については、それが初めて なくなり、教授の遺した資料簿に基見えたのは一家がそこに住むように づいて、最近その主要点が協会の会なって半年ばかりたった頃のことで 報上に発表された。 ある。ロウソン夫人が、当時やっと それによると、同館に起こる現象三歳になるかならぬかの長男ジョン は多種多様で、過去百年近くに亘っ 君がいきなり居間へ飛んで行きキョ て入れ替わり立ち替わり起こってき ロキョロあたりを見まわすのでたず ているが、その中で最も確実な資料ねてみると、入口に小さな茶色いも として残っているのは、一九〇三年のがいて、それが窓の所まで走うて 幻 6

10. SFマガジン 1973年1月号

額 にそ じ男 けを は 汗魅 た逆ヵ しな がせ 違ん び あ、を な長 つれ ギせ でそ い今 、く 、来 なな と る後 か付 わ噛 ば神女そ がが にけ きそ 鋭び っ話 て彼 出 彼れ は十 し ・奇、メ 始た なび 女ぬ る呟 は危 め唇 そ に瞳 彼険 震カ の見 。ら をな 挑存 目守 夢カ がき だ間 発在 冫こ 病カ は 者な らナ 悩ナ の呻 切張 の ・色 . みッた と視 め襲 梨を口 、な 浮 な線 穂動 て来 せルし肢を び し、を 彼 、銛 っ半 。か た裸 - ド . え の に の ア ン て っ を 、作 動 の う ら は に俺向 は 金舌 。手て腕 持 ち ん 両 手 で そ の 柄 を り し め る と 先 を 喉 握 、つ た さ、右・ じ わ と 動 き た 握遊す よ う き で 首彼を ロ ン ア カ : み し め か き を も ら し だ っ た に し 分 は 所 の つ じ が だ う よ た れ 流 が 間 。時 ぶ い ず た つ手た 。動 く と そ の 気 利 刃 と な つ て 俺 を り 裂 く 力、 の よ う だ イ奄 る 幕 、は い と を 本 能 お し ぇ 嵐 の ひ た つ り カ : な え と り り 気 大大な に よ 舞 ム の装塑 の出置像そ を の く ナよ ら ば よ う に た た り の 表 情 と 周 の の 原 の の 男 は リ シ ャ の ふ一碧 節 ま う よ な 帯わフ・ま だ 「昜 。浮 き のれ彫立た て い る と ら せ 囲組カたみて にた ま ま っ て た 矛 1 -. い妙 な を光ル 景 っ かた置 い体結 を 卓月 ふ り は 。ほ ト の し、 び - そ、 ん な 真 : 似 が 出 へ じ り じ り り し な カ : ら 彼 女 が た る ま ん も の を 持 っ い た な そ の カ の 強 さ を 試 し て お歯そ ぎ り 、交は ん カ : ら は た ん と い た 力、 し し明手 ら よ と て た の が で に の な お せ の 俺 は ・お待たせしましたーソビエト宇宙画集再入荷 星は我等を待っている 人気 SF 画家ソコロフと宇宙飛行士レオーノフ描く 原色 22X25CE 星への道 02 月・ 107 頁 3 , 330 円 104 頁 3 , 330 円 囹お買い上げの方には , ソコロフとレオーノフ の SF 画 ( 12 枚 ) のソ連製カレンダーを差し上 げます。ご注文はもよりの書店 , または小社 各氏激賞 福島正実氏石森章太郎氏 星新一氏手塚治虫氏 神田売店 , 通販係へお願いします。 神田売店 通販係 ナウカ 森優氏真鍋 千代田区神田神保町 2 ー 2 豊島区南池袋 2 ー 30 ー 19 ( 264 ) 0021 ( 981 ) 5261 博氏 振東京 替 80147