「魚の出てきた日」のあとがきの註文あり。引受けてしまう。 るわけにはいかんのではないか。 垂水より、母来る。夜、生島治郎より架電。 三月二十八日 ( 木 ) 四月三日 ( 水 ) 「晋喜老」、思ったよりも枚数を費し、カが入る。 文藝春秋へ行き、「漫画読本」上野氏と連載打ちあわせ。一回二 十二、三枚で、心理学講座にしようと決定。オール讀物鈴木氏に 三月二十九日 ( 金 ) 「晋喜老」戯曲式に書きなおす。おかげで他の原稿が間に合わなく「晋喜老」渡す。 なりそうである。 四月四日 ( 木 ) 生島治郎より架電。新居を拝見に、秀和レジデンスまで歩いてい 三月三十日 ( 土 ) 。、い住まいである。 星新一協会賞受賞パーティ。於日活ホテル。 三一書房の人とレオンで会い、ショート・ショート集の打ちあわ そのあと山珍居で作家クラブが集り、星さんを祝う。 せ。 夜、星新一、大伴昌司、高松女史などと深海魚へ行き、飲む。 四月五日 ( 金 ) 三月三十一日 ( 日 ) オール讀物鈴木氏とレオンで会う。「晋喜老」の朝鮮人問題の部 星新一、小松左京、大伴昌司、高松女史とティファニーで会う。 分、抹消してくれとのこと。 高松女史のマンションへ行き、麻雀。 生島治郎がレオンへ出てきたと電話してきたので、また出かけて いって話す。 註・よく飽きないものである。 四月一日 ( 月 ) 四月六日 ( 土 ) 二階にクーラーを取りつけ、ついでに物置小屋、本棚を作っても 「晋喜老」脱稿。 らう。 文春へ、書きなおした「晋喜老」を持って行って渡す。 四月二日 ( 火 ) とうとうャングエースの原稿を書く暇がなくなり、豊田有恒にあ 註・「晋喜老」は結局、主人公が朝鮮人なのでまずいということ と始末を頼む。豊田君了解してくれてひと安心。 3
田宮氏一家、年始に来訪。 ンでまた麻雀となり、夜の三時まで。 光子、妊娠らしい だいぶ遊んでしまった。 註・田宮さんは母方の叔父で三井船舶総務部長。 一月六日 ( 土 ) 夜の十一時ごろ、小説現代の宍戸氏より架電。月末までに四十枚 一月二日 ( 火 ) たのむとのこと。急な話なので困ってしまうが、書かなければしか 豊田有恒宅へ、光子同伴。 たがない。電話のかかってきた時間といい、どうせ老大家があけた 星新一、平井和正夫妻も来て、たちまち麻雀。 穴かなにかの穴埋めだろう。皺寄せは若手に向かう。 宍戸氏、済まながって、これから戸川昌子の店で飲もうと言い出 一月三日 ( 水 ) す。「青い部屋」で宍戸氏と飲む。 星新一、豊田有恒、平井和正、文春の高松繁子女史来訪。光子、 女史よりハンドバッグ貰う。 一月七日 ( 日 ) 夜、女史のマンションへ押しかけ、麻雀。 婦人公論用の架空ルポ「蒸発ののち」を書く。 一月四日 ( 木 ) 註・「人間蒸発株式会社」と改題。 短篇集用の書きおろし「さらにひとつの日本」を脱稿。 一月八日 ( 月 ) ラソディ 註・「さらにひとつの日本」は、のち「色眼鏡の狂詩曲」と改鈴木氏より架電。オール讀物の杉村編集長の意見で、「アフリカ 題。 の爆弾ーを「アフリカ・ミサイル珍道中」に改題せよとのこと。短 篇集収録の際、題をもとへ戻すのは差支えないそうだ。いやなタイ 一月五日 ( 金 ) トルだが、雑誌の場合、派手な題の方がいいというので、しかたが . ない。そのかわり「珍」の一字だけはなんとか省いてくれとけんめ 文春へ行き、松浦氏に「さらにひとつの日本」の原稿を渡す。 いに頼む。 中山義秀が「ベトナム観光公社」を読み、わけがわからんといっ て首をひねっていたという話を鈴木氏より聞く。 「マッド・タウン」第九回入稿。 夜、小松左京から呼び出しがあり、ニュー・オータニへ行く。星 新一、平井和正、豊田有恒、高松女史も来ていて、女史のマンショ 一月九日 ( 火 )
三月十七日 ( 日 ) と。こちら、恐縮。 せつかく資料を集めたのだからと思い、「新・日本海海戦、は自「懲戒の部屋」書きなおす。 分なりに書いてみよう。 三月十八日 ( 月 ) だんまつまさいけのくらしほ 金喜老事件のパロデイ「晋喜老ーを書きはじめる。オール讀物に 註・のち「地獄図日本海因果」を書いた。 渡してみよう。 三月十三日 ( 水 ) と三月十九日 ( 火 ) オール讀物にと思って「新・日本海海戦」を書きはじめたが、・ うもよくないので、やつばりやめる。スラン。フか。 サンデー毎日「・」入稿。高 1 コース連載第一回 星新一、小松左京と「青い部屋」で会う。水割り六杯。そこから「デラックス狂想曲」入稿。 旺文社「時」より、新宿ルボの依頼。及び六月末までに六〇枚の 宝石の河手氏につれられて「深海魚」へ行き、水割り四杯。 短篇という注文。引受ける。 夜、眉村卓より電話。豊田有恒と三人「深海魚」で飲む。水割り 三月十四日 ( 木 ) 漫画サンデーの人と新宿へ行ぎ、水野良太郎を加え、打ちあわ四杯。さらに「青い部屋、へ。サンケイの岩崎氏、小説現代宍戸氏 せ。「ベトナム観光公社」漫画化を決定。 など来る。水割り七杯。 註・このころから、酒量を気にしはじめている。 三月十五日 ( 金 ) サンデー毎日西山氏より架電。・三枚という依頼。 三月二十日 ( 水 ) 読書人の批評第一回入稿。 岡田真澄とサソリ座公演「夏」を新宿へ見に行く。主演の加賀ま りこに紹介してもらう。彼女も「億の妄想」を読んでいた。あ 註・この年、週刊読書人に一年間、批評を続けた。 と、真澄とシシリー亭へ。 三月十六日 ( 土 ) ・、高 1 コース連載第一回「デラックス狂想曲ーな三月二十一日 ( 木 ) サンケイ新聞岩崎氏より電話で、星新一「進化した猿たち」書評向 ど書く。 の依頼あり。
も同様の電話。 小説現代宍戸氏よりも、おくやみの電話あり。 一月二十六日 ( 金 ) 光子と一緒に五時の新幹線で大阪へ。宝塚ホテルに一泊。 一月二十三日 ( 火 ) 生島治郎、星新一より、おくやみの電話。 註・宝塚ホテルはわれわれが結婚式をしたホテルである。 光文社宝石の小檜山氏が、ショート・ショートを依頼してくる。 高 2 コースの読切小説を入稿。 一月二十七日 ( 土 ) 関節炎を治してもらいに病院へ行ったら、尻へでかい注射を打た宝塚ホテル。之隆、結婚式。テーブル・スビーチをする。 れた。 松野の父母と垂水まで六甲山系をタクシーでドライヴ。牧場へ帰 夜、松浦氏がゲラを持って来宅。打ちあわせ。 選考の際の様子を聞く。委員のほとんどが「面白かった」と言っ たらしい。大佛次郎が「稀有の才能」と言ったとか。いちばん悪い 註・之隆はいちばん下の弟。兄弟四人が全員、宝塚ホテルで結婚 評価を下したのが海音寺潮五郎であったそうな。 している。松野家は妻の実家である。牧場は垂水にある。 註・高 2 コースと高 1 コースをごっちゃにしていて、どちらに連一月二十八日 ( 日 ) 載し、どちらに読切りを書いたのか、よくわからない。 光子と喜美子さんをつれて三の宮へ行く。靴とネクタイを買う。 一月二十四日 ( 水 ) 註・喜美子さんは妻の妹。このころはまだ結婚していなかった。 松浦氏来宅。短篇集の最終的検討。さすが文春だけあって、本作 りが念入りである。束見本をもらう。 一月二十九日 ( 月 ) 光子を実家に置いて一足先に帰京。 「マッド・タウン」第十一回入稿。 推理作家協会報の座談会に出席。都筑道夫、生島治郎。三人が次 夜、豊田有恒宅へ。平井和正、伊藤典夫来て、麻雀。 号の編集委員である。 一月二十五日 ( 木 ) 夜、星新一より呼び出しがあり、小松左京と共に高松女史のマン 創映というところから、オール讀物に載った「アフリカ・ミサイションで麻雀。大勝。 ル道中」を映画にしたいと言ってきた。 る。 4
小説現代宍戸氏来宅。「懲戒の部屋ー入稿。 三月二十四日 ( 日 ) 夜、河出書房久米氏と「青い部屋」で飲んでいると、星新一、 松左京、その他勢どやどやとあらわれる。生島治郎、高松女史「時」の新宿ルポを書く。 も来る。全員高松女史の部屋へ押しかけ、ふた組にわかれて麻雀。 生島氏、やつばり強い 三月二十五日 ( 月 ) 「晋喜老」を書く。だんだん面白くなってくる。 三月二十二日 ( 金 ) 小説新潮の横山氏より、三十枚という依頼あり。小説新潮は没に三月二十六日 ( 火 ) しないので安心して書ける。資生堂 p-æ誌より、一枚という依頼。 文春「漫画読本」より小説連載の依頼。「フレッシュマン」より 夜、「時」の人たちと「ぼろん亭」で待ちあわせ。真鍋博も来依頼。 る。写真を撮り、新宿探訪。「 p-4 0 g-q 」「—»-i ・ 0 ー 「時」新宿ルポ入稿。「資生堂」入稿。 「シシリ 1 亭」と飲み歩く。 註・この時、資生堂 p--æ誌用に渡した原稿は、文章をすべて談話 体に変えられ、内容も変えられて掲載されてしまった。どこかへ 提訴しようかと思ったが、当時まだ文芸家協会に入っていなかっ 三月一一十三日 ( 土 ) たため、あきらめた。 サンデー毎日のパーティに出席。 終ってのち、村島健一、六浦光雄、永田カ各氏とタクシーに同 三月二十七日 ( 水 ) 乗、吉原へ。酔狂連の赤線忌に出席、どんちゃん騒ぎとなる。 松竹から「アフリカの爆弾」を映画化したいといってきた。以 終ってのち、安達瞳子とタクシーに同乗、四谷「まろうど」へ。 各氏と落ちあい、さらに飲む。隅で安達瞳子といろいろ話す。野坂前、創映というところからも話があったことを伝えておいた。 昭如、傍へ来て邪魔をする。藤島泰輔も来る。 ずっと一緒だった鈴木氏から、ずっと前に渡してあった短篇「血註・「アフリカの爆弾」は、このあと羽仁プロからも渥美清主演 で映画化したいという話があった。この時も、創映、松竹からす の記憶」はオール讀物向きではないと言い渡され、がっかりする。 でに話があることを伝えておいた。ところがその後、三社からは なんの音沙汰もなかった。じつにいい加減なものである。このあ 註・「血の記憶」は、のち「アフリカの血」と改題、小説新潮に いだ佐木隆三の事件があったが、あれだって一方的に佐木を責め 掲載した。 る 2
註・レオンというのはこの頃に新しくできた、青山通りの喫茶る。心から、めでたいめでたい。 店。以後、・ほくは毎日のようにこの店に通うことになる。 三月三日 ( 日 ) 二月二十九日 ( 木 ) 光子と渋谷へ「俺たちに明日はない」を見に行く。まことに面白 宝石の谷口氏他二名とレオンで会い、新・日本海海戦のうちあわ いが、女優の演技は評判ほどではない。男優の異常性格者ぶりの方 せ。三月の予定は、もう、ぎっしりである。 、カ、つきし 「魚菜ーのショート・ショート 「亭主調理法」入稿。 三月四日 ( 月 ) 三月一日 ( 金 ) 松浦氏に電話すると、短篇集「アフリカの爆弾」の発売、また遅 「魚菜」やつばり原稿を返しに来た。編集長が、読むなり顔色を変れるらしい。十二、三日ごろだということである。 えたという。庖丁は神聖だというのである。それならぼくのところ「発見の会」瓜生良介より電話あり。戯曲、まだ書く暇が作れない へなど、頼みにくる方が悪い。だいたい作家の作風も研究せずしてかとの催足。暇になるどころかだんだん忙しくなる。もう、約東し 安易に原稿を頼むなどは ( 以下十七字削除 ) 。書き直してくれとい てから一年になる。 うのだが暇もないし、ことわり、あと始末を豊田有恒に頼むことと「シチズン・タイムス」のショート・ショート入稿 する。 新雑誌ャング・エースが四月末までに四十枚頼むとのこと。引受註・「シチズン・タイムス」は海外用誌。ここへ書いた「時 ける。ポケット・。、 / ンチという新雑誌からも電話あり。 の女神」は英文に翻訳され、その後ショート・ショート集「にぎ やかな未来」に、はじめてもとの形で収録された。 夕方、豊田有恒、伊藤典夫、平井和正来宅。三晃社の人も来る。 豊田、伊藤両氏と合作の「のすべて」の原稿、ほとんど渡す。 題は「教室」に改題。 三月五日 ( 火 ) 夜、星新一より架電。「青い部屋」に赴く。 讀売新聞の評論を書く。枚数が少く、味もそっけもないものにな ったので、もう少し面白くしよう。 三月二日 ( 土 ) 高 1 コースの人が来て、連載の打ちあわせ。 三月六日 ( 水 ) 星新一より架電。推理作家協会賞をとったとのこと。さては昨夜豊田有恒、伊藤典夫とポーリングに行く。 そのことが気にかかっていたのか。界からは初めての受賞であ三晃社より架電。「教室」の伊藤典夫の原稿だけがやや難解 に 9
「新婦人」のエッセイ入稿。可愛い女の子が原稿をとりに来た。 夜、星新一より架電。青山通りで星さんの車を待ち、「青い部 「マッド・タウン」第十回入稿。 屋」へ。星さんは富士真奈美をつれていた。「いい男でしよう」と とから、もし直木賞をとれたら次の日の朝テレビに か「直木賞とるんですよ」とか「笹沢左保よりもいいでしよう」な 出てくれといってきた。時間を聞き忘れ、もしると困るなと思っどと言うので困る。星さんの冗談、富士真奈美にはまったく通じ たが、どうせ受賞はしない。 ず。ぼくの耳もとに口を寄せ、「人間って、恥らいを忘れたらも 光子、つわりが激しくて料理ができない。昨日の雑炊がうまかつう、おしまいね」などと言う。やつばり女は駄目。あとで星さんに 聞いたら、昼間彼女とした対談で意見が完全に対立したのだとのこ たので、つれて行ってやろうとしたが場所がわからない。木村氏に と。 電話する。「あの雑炊を妻に食べさせてやりたいので」と言ったた め、嘲笑される。 戸川昌子が丸山明宏を紹介してくれる。握手をしたが、家に帰っ 五番館の場所は四谷三丁目であった。 てからも香水のいい匂いが抜けていない。風呂には右手を使わずに 入る。寝てからも匂いを嗅いでいたら、光子が怒って掌にボマ 1 ド をこすり込んでしまった。 一月十七日 ( 水 ) 文藝春秋へ行き、短篇集のあとがきを入稿。ゲラ刷りをもらって 一月二十日 ( 土 ) 帰宅。 夜、星新一、豊田有恒、平井和正来訪。徹夜麻雀となる。 註・このころは、直木賞情報が聞きたいのと、社屋が近くにあっ た関係で、やたら文春まいりをしている。 一月二十一日 ( 日 ) 別冊文藝春秋用の「君発ちて後」を書く。次第に婦人公論用の ルボと内容が似てくるので困る。 一月十八日 ( 木 ) 河出書房の久米氏来訪。長篇の書き下しを頼まれる。一応引きう けるが、いつになることやらわからぬと言っておく。 g-q 界で、い 一月二十二日 ( 月 ) ちばん長篇書き下しに向いているのは誰かとくので、平井和正た膝関節炎が出た。それでもじっとしていられず、跛をひきながら と答えておく。 ゲラ刷りを持って文藝春秋へ。鈴木氏が藤島泰輔に紹介してくれ て、話がはずむ。 高 2 コース連載第一回「超能力ア・ゴーゴー」入稿。 家で仕事をしていると、七時四十五分、松浦氏より「直木賞は野 一月十九日 ( 金 ) 坂昭如、三好徹の二氏に決定」との電話あり。八時半、鈴木氏より
「あなたがた、今日、競馬に行きましたね」ひどく単調だが、おっ かぶせるような調子である。 「竸馬で、もうけッたでしょ ? 」 「え ? そうでしょ ? 」 「あンた、一体誰ですか ? 」負けじとばかりに私もおっかぶせた。 「われわれが竸馬に行こうとどうしようと、それがどうしたという んですか」 「あンた、あの : : : その : に乗ったでしよ。そうでし よ 薄気味わるそうに、簾畑がじりしりと後退した。 「ハスに乗ったのがどうたってンです ? 」私はあびせかけた。「え 「あんなことされては困るのです」 「困ろうと困るめ工と、こちとらの知ったこっちゃないですよ」わ れながら乱暴だとは思いつつ、私は切りかえした。そしてつづけ た。「だけどなんで困るんです ? 」 「困ります、本当に困ります」 「だから、何故困るかって聞いてるんですよ」古矢が言った。 「あんたたちや一体何者なんです ? そいつをはっきりさせて貰お うじゃないですか」私がたたみかけた。 「この世界のものではありません」と相手。 「それじや火星人か」やけになって私は噛ました。 「この空間のものではありません」と、相手はあくまで無表情であ る。「くわしく説明しているひまはありません。もうけッたお金出 しなさい」 「なにを言ってやがるんだ ? 」古矢があびせた。「なんの権限があ って、あんたはそんな口をきくんだ ? ええ ? 」 進化した 猿たち 星新一 く好評発売中〉 たのしいアメリカ漫画と、工ッセイストと しても名高い著者との絶妙なコンビネーシ ョンで、すべてのホモサビエンスに捧げる 進化した猿たちの、進化した猿たちによる、 進化した猿たちのための本 ! 全三巻各 260 円
その意味でロポットは、現代における人間の情念を仮託されたもものです。人為的、あるいは必然的な物理化学的原因で自然の秩 のでこそあれ、現代機械工学者たちがいじっている不細工な省力化序の失われた状況をーーたとえば地球が高温多湿となり、その結果 マシンとは、むしろ無縁のものなのです。 水球となってしまった世界や、さらにはすべてのものが結晶化して もちろん、現代が科学・技術の時代である以上、そこには水準以いく 世界などを執拗に追求すゑ ( ラードの手法は、そうした異常な 上の洗練された authenticity がなければならないが、それは、ウ状況を設定することによって、そのなかに動く人間たちの行動や心 エルズの言葉を借りれば、 good, gripping dream であればいいの理をはっきりと浮き彫りにしますが、そのみごとな にと、く です。繰り返します。われわれにとって必要なのは、テクノロジー に欠けている情景描写は、同時に作者の心象風景でもあり、現代に ではない。むしろテクノロジーの発展とともに人間が不可避的に疎生きる繊細で敏感な人間の内的世界を定着させることにかなりな程 ラ 1 ー長ー 外されていかざるをえないこの時代を主体的に生きるために必要な度成功しているのです。そしてそれは、。ハ ・のいう「外宇宙」 スベキュレーションなのです。こうした傾向は、最近の co ーーー・と についての科学的認識と、そこから生まれる芸術的直感によっては ・ウェープの名で知られる作家群の作品において、いつじめて可能たった ぼくはそう信じたいのです。それこそが、 そう顕著になりつつあるようです。 をしてたらしめるもっとも大切な要因だと。 「外なる現実と、内なる精神とが、出会い融け合う場所」としての いくらいってもいい足りません。これはぼくが最近思っているこ 「内宇宙」こそがのめざす新領域でなければならないと説くパ との一端にすぎません。 ラードなどはそうした傾向を代表する作家として大いに着目したい また、時と場所とを改めて、語り継ぎたいものだと思います。 ~ 福島の処女短篇集『ハイライト』 ( 三一書 一房 ) の表紙カバーに、・ほくはつぎのような提灯持。 " ミスタ。の道・抄 - ちの文章を書いた。 「福島さんはオニである。泣く子も黙るのオ ~ 石川喬司 一ニである。いつだったか星新一と小松左京が酒の " 〔短篇集『ロマンチスト』 ( ハヤカワ 席で〈にもそろそろ飽きてきたから、別の儲一 ・・シリーズ ) あとがきより〕 け口を考えようや〉と冗談口をたたいたことがあ った。そのとき福島さんは実に悲しそうな目をし ~ 佐野洋のに『氏の時計』というのがあ数多くの見えない時計を所持しており、敢然と時た。その目を・ほくは一生忘れることがないだろ一 ~ る。美術雑誌の編集長氏が、別々な時刻を示す間に挑戦している。ひとつの時計は少年雑誌の連う。福島さんがいなかったら、日本の読書界は、 ( 十数個の時計を身につけ、時間のトランスフォル載小説の締切り時間を告げ、ひとつの時計は >< テという″夢の文学″の楽しさを知らないまま - - マシオンを企てて、奇矯な言動をする話である。 レビの座談会への出席をうながし、ひとつの時計ですごしたかもしれない。 ( 中略 ) ~ われらの氏こと福島正実《マガジン》編集は早川書房の重役会の開始を知らせ、ひとつの時星新一や矢野徹がルートを拓き、小松左京が万 ~ ・長に会うたびに、・ほくはこの話を思い出す。目が計は : 能プルドーザーで地ならしをし、光瀬龍がヘリコ一 - 澄んでいて女の子にもて、はなはだ多忙である、 それほどの″お忙が氏″でありながら、氏の身。フターで測量し、眉村卓が貨物列車で資材を運 ということ以外に、二人の氏にはそれほど共通辺には常にある静けさがただよっている。その静び、筒井康隆がロ笛を吹きながらスポーッカーを一 - 点はないのだがーーともかくわれらの氏もまたけさは一体どこから来るのか ? 飛ばし : : : という例の・ほくのランド案内記ふ ・を第す第ま寥 幻 6
二月二十一日 ( 水 ) 夜、光子と三人で近くの「よし橋」へ行き、しゃぶしゃぶを食べ 夜、豊田有恒宅へ。矢野徹、平井和正。朝まで麻雀。 る。面白い話を聞く。 註・よく飽きないものである。 二月二十六日 ( 月 ) 三一書房へ行き、畠山さんとショート・ショート 集の打ちあわ 二月二十二日 ( 木 ) せ。タイトルは「にぎやかな未来」がよいだろうということにな 夜、新宿で松浦氏、短篇集「アフリカの爆弾」の装幀をしてくれ る。 る杉村篤に会う。 早川書房へ、短篇集用の切抜きを持って行く。タイトル未定。 松浦氏を誘「て「青い部屋」へ。あとから文學界豊田氏もや「て高松女史、オール讀物に書く「筒井順慶」は、中篇にして週刊文 くる。 春に連載しろと電話してくる。しかし鈴木氏には、書くと約束して しまっている。あちら立てればこちらが立たず、筒井順慶の心境。 二月二十三日 ( 金 ) 夜、星新一、小松左京、眉村卓他と「青い部屋」へ行き、戸川昌 新宿紀伊國屋二階・フルックポンドで宝石小檜山氏と会う。ショ】 子も加え五時半ごろまでどんちゃん騒ぎ。 ト・ショート入稿。 アート・シアターで大島渚「絞死刑」を見る。一カ所、ドタ・ ( タ二月二十七日 ( 火 ) のいい手法を使っていた。ロビーで永六輔を見かけたが、憶えてい 二日酔いで頭ふらふら。こんなことがいつまで続くのか。週刊誌 ないだろうから挨拶はしなかった。 や新聞からのコメントの電話、やたら多し。仕事できす。 二月二十四日 ( 土 ) 二月二十八日 ( 水 ) 「魚菜」のショート・ショート、 思いがけず面白いものができた。 讀売新聞から、と社会科学についての評論を書けといってき ただ、編集部で面白がってくれるかどうかは疑問。料理を茶化して いるからだ。タイトルは亭主調理法にしようと思う。 之隆夫婦、新婚旅行の帰りにやってきた。グアム島に四日いた : 、ほとんど雨だったという。 二月二十五日 ( 日 ) 問題小説の編集長たちとレオンで会う。五月末までに一本書いて 岡田真澄に誘われ、彼が司会する男性ファッション・ショーへ行くれとのこと。枚数制限のないところがよろしい。引受ける。 。終ってから家へつれて帰る。彼の車は真紅のツー・ドア。 8