例にもれずーー・髪はなく、無数の小じわが皮膚にきざまれていた。 そして、愛、大いなる熱波となってほとばしりくる、男と女の情熟 けれどとてもおおらかに人々にわらいかけ、とおりかかる若いシュ的な所有愛、人間がその「兄弟ーを愛するときのようにはなまぬる 6 キー人もほほえみかえした。 くない愛の気持ちが読みとれた。これは、本物の、燃えさかる感情 頭にはグリーシュカをのせていた。 で、わたしはそのなかにお・ほれとりかこまれて、焼きつくされそう それを見たら、ぞっとすることだろうと思っていた。そんなことにすらなった。彼らは自分たち自身を愛し、すべてのシュキー人を はなかった。やや心が動揺したが、それはただ、その意味を知って愛し、グリ 1 シュカを愛し、おたがいを愛し、そしてわたしたちを いるからだった。寄生体は深紅にかがやくねとねとしたかたまり愛していた。わたしたちを愛していた。彼らはわたしを愛してお で、その大きさは、シュキー人の一人の後頭部についた鼓動するい り、それはまるでライアがわたしを愛しているのと同じほどに、熱 ・ほのようなものから、いちばん小さな者の頭部と両肩をまるで修道 、荒々しい思いだった。そして、その愛とともにわたしは、所属 衣のようにおおい、したたって広がり赤くうごめいているものまでの意識と、わかちあう気持ちとを読みとった。そしてその四人は一 あった。グリーシュカは、シュキー人の血液中の栄養分を一部うば人ずっそれそれ別の人格なのに、 一つのものであると思っており、 って生きているのだ。 それそれがおたがいのものであり、グリーシュカのものであり、そ それも、ゆっくり とてもゆっくりとその寄生主を食いつくして、みな一人すつが独立した人格でわたしが彼らの心を読むよう には相手の心を読むことができないのに、全員がいっしょで、一つ す。 ライアとわたしは、その何ャードか手前でたちどまり、彼らが鐘にむすばれているのだった。 を鳴らすのを見ていた。ライアは厳粛な表情を見せていたが、おそそして、ライアは ? わたしはシュキーから目をそらし心を振 らくわたしもそうだったのだろう。ほかの人々はみな笑顔で、鐘のりむけてライアに視線をやった。顔面は蒼白だったが、ほほえみを うたう歌は、喜びの歌だった。わたしはライアの手をきつくにぎつ浮かべていた。「美しいわ」その声は小さくてやさしく、いぶかし た。「読んで」とささやいた。 げだった。愛の思いにうずもれながら、わたしはなお、どれほどに 二人で読んだ。 わたしがライアを愛しているか、そしてどのようにわたしが彼女の わたしについては、鐘が読みとれただけだった。鐘の音ではな一部であり彼女がわたしの一部であるかを、わすれてはいなかっ しいや、そうではなくて、鐘の感情、鐘の情緒、かがやくばかり に鳴りひびく喜び、叫びひびいてとどろく音の大きさ、〈参加者〉 「なにがーーーきみには、なにが読みとれた ? 」うちつづく鐘の音に の歌、まとまり分かちあう意識を読みとった。そして、その〈参加負けまいと、わたしは声をはりあげてたずねた。 者〉たちが鐘を振るときに感じていること、幸福感と予感、人々に ライアは、ぬぐいさろうとでもいうように頭をふった。「あの人 自分の満足をそうそうしく語りながらいだいている恍惚を読んだ。 たちは、わたしたちを愛している。それはあなたにもわかったにち
何も言わなかった。ただライアをみつめ、唇をしめした。そして悲 「何を言うつもりなんだ」 「午後のこと。あのあとわたしは混乱していて、とてもこわかっしんた。 わたしの目のなかに心の痛みを見たのだろうと思う。あるいは心 た。なぜかはわからなかったけれど、考えたの。わたしが心を読ん でいたとき、ロ・フ、わたしはそこに、〈参加者〉たちといっしょにを読んだのだろうか。彼女はわたしの手を引きよせ、さすった。 「まあ、ロ・フ。おねがい。あなたを傷つけるつもりはなかったの。 いて、あの人たちと、あの人たちの愛を分かちあった。本当にそこ にいたの。もどってきたくなかった。彼らをおいてたちさりたくなあなたたけのことじゃない。わたしたちみんなのことを言っている のよ。あの人たちにくらべて、わたしたちにはなにがあるの ? 」 かったの。出てきたときはとても孤独で、とても切りはなされてい 「ライア、きみがなにを言おうとしているのかわからない」わたし るような感じだった」 「それはきみが悪い」わたしが言った。「言ったじゃないか。きみの心の半分は、泣きだしたい気持ちだった。のこりの半分は、さけ びたかった。その両方の気持ちをおさえ、平静な声音で言った。け はあまりにもいそがしく考えすぎるんだ」 「言った、ですって ? ことばがなんの役にたつの。ことばは伝達れどわたしの内部は平静ではなかった。まったく平静どころではな 手段ではあるかもしれない、でも、本当のことがったわるの ? わかった。 たしは〈能力〉を訓練されるまえから、そう思っていた。そのあ「ロ・フ、わたしを愛している ? 」もう一度。あやしみながら。 と、わたしには、心を読なことが真の伝達手段であるように思え「愛している ! 」熱烈に言った。挑戦した。 た。だれか他人に、あなたのような人に接触できるのだから。で 「そのことばには、どういう意味があるの ? 」彼女が言った。 も、今はそれもわからなくなってしまった。〈参加者〉が鐘を振る「その意味を、きみは知っているはずだ」わたしは言った。「ばか ときは、ロ・フ、とても一体感にみちあふれているのよ。とても強く な、ライア、考えてみるんた ! 二人でしてきたすべてのこと、 むすびあわされている。まるでわたしたち二人が愛しあうときみた っしょに分けあったすべてのことを、思いだしてくれ。ライア、そ いなの。そして、あの人たちは、おたがいに愛しあってもいる。それが愛だ。そうなんだ。わたしたちは幸運だ。お・ほえているかい。 して、熱情的に、わたしたちを愛してくれている。わたしが感じたきみが自分でそう言ったんだ。〈普通人〉はただ、手で触れ、声で のはーーーわからないわ。けれど、ガスターフソンは、あなたが愛し語るしかなく、そして暗闇にもどる。おたがいをみつけることすら てくれるのと同じように深く、わたしを愛してくれている。そうじむずかしい。彼らは孤独だ。いつも。手さぐりするだけだ。何度も 何度も、一人ぼっちの小部屋から這い出ようとし、何度でもそれに ゃない、彼のほうが愛しているわ」 そう言ったとき、彼女の顔は蒼白で、目は見ひらかれ、焦点をう失敗しつづける。きみに話そうとしなかったことはなにもないし、 しなって、さびしさにみちていた。わたしはといえば、とっぜん悪分かちあおうと思わなかったこともない。そのことは以前にも言っ たけれど、それが本当だときみは知っており、わたしの心を読むこ 感をおぼえ、心のなかを一陣の冷たい風が吹きぬけたようだった。 8
「幸運なことよ。普通人には、ことばしかない。とてもあわれな普 えていた。わたしのことを知りもせずに、わたしを愛してくれ、わ 通人。ことばだけでなぜったえられるの。どうや 0 て知るの。いっか「てくれた・ーーまるでわたしたち二人の仲のように。それが も離れ離れで、近づきあおうとしては、失敗している。愛しあうとわからないわ。混乱してしまう。つまり、あなた以外の人から、そ き、行きつくときにも、あの人たちはい 0 しょになれない。とてもれほどに愛されるなんて、思 0 てもみなか 0 た。そしてあの人たち 孤独だと思うわ」 はとても近くにいて、とても親密だった。あなたと手をとりあい よこ : : ・心の平穏をみだすような調子がこめられていた。ライおしゃべりしているだけでは、さびしいという気持ちにな 0 たの。 アの、幸せにかがやく瞳をのそきこんで、それについて考えた。 あんなふうに、あなたと親密になりたいと思った。あの人たちが分 「そうかもしれない」と最後に言った。「けれど、普通人たちにと かちあう姿を見て、一人・ほっちでいることがたまらなくむなしいも 「ては、それほど悪いことではない。ほかの方法を知らないんだのに思えたのよ。そしてこわか 0 た。わかるかしら」 し、努力して、愛するんだ。ときには、溝に橋がかけられることも「わかる」とわたしは言い、手と心との両方で彼女にやさしく触れ ある」 た。「理解できる。わたしたち二人は理解しあっている。〈参加 「目と声によ 0 てのみ、そしてふたたびおとずれる暗闇と沈黙」ラ者〉たちと同じように、普通人には不可能なかたちで、わたしたち ィアは引用したが、その声は悲しげにやわらかたった。「わたした はいっしよなのた」 ちのほうが幸運だわ。ずっとたくさんのものをもっているもの」 ライアはうなずき、ほほえんで、わたしをたきしめた。たがいの 「わたしたちのほうが幸運だ」繰りかえした。心をのばし、彼女を腕にいだきあい、眠りに落ちた。 読んだ。その心は満足感の霧がみちたなか、さびしい気持ちで乞い ねがう切望のやさしい香りがただよっていた。にもかかわらす、そ また夢を見た。けれど今度も、夜明けにはその記憶は失せてしま こにはなお、今はもう失せてしまったなにかべつのものの痕跡がか っていた。とてもいらいらさせられた。その夢はすてきな、気持ち すかに残っていた。 のいいものだったからだ。とりもどしたいと思うのに、どんな夢だ わたしはゆっくりとすわりなおした。「さあ」とわたしは言っ ったかすら思いだせなかった。寝室は、陽光をさんさんと浴びてい た。「きみはなにか心配ごとがあるね。それにさっき、この部屋にたが、わたしのうしなわれた夢にくらべればくすんだものに見え もどってきたとき、なにかをこわがってした。・ 、 - とうしたんだ ? 」 「はっきり、わからない」という声にはとまどいがあらわれてい ライアもあとからおきてきて、また頭痛をうったえた。今日は枕 た。ライアはとまどっていた。そこでわたしは読んた。「こわかつもとのペッドスタンドのところに薬が用意してあり、そちらに顔を た。けれど理由はわからない。たぶん、〈参加者〉のことよ。あの向けてしかめ、一錠飲んだ。 人たちがわたしを愛する気持ちがどんなに強いものかを、ずっと考「シ = キーのワインのせいにちがいない」わたしが言った。「ワイ こ 0 0 7
わ」彼女はやってきて、わたしの手をとった。「今日はどこに行くった。シ = キーンタウンで珍しいものは、たしかに地球人だけでは よ、つこ 0 / 、刀ュノ 「シュキーンタウンだ」わたしは答えた。「あの〈参加者〉という 交通手段はほとんどが徒歩だが、小さな木製の車もごくふつうに のをつかまえてみよう。きのうの〈集会〉では、一人も見わけられつかわれている。荷役につかわれるシュキーの動物は、病気になり なかった」 かけの大きな緑色のイヌのような外見だった。二匹一組で車につけ 「ちがうわ。あの〈集会〉なんかは、これから〈参加者〉になろうられ、引くごとにうなり声をあげた。そこで、当然のことながら、 とするシュキー人のためのものよ」 人間はその動物を〈うなり屋〉とよんだ。うなるだけでなく、しょ 「わかっている。でかけよう」 っちゅう糞をした。そのにおいと、行商人がはこぶかごのなかの食 わたしたちはでかけた。とちゅう四階の〈塔〉内食堂で遅い朝食料品、それにシキー人自体のにおいとで、町は強烈ににおってい こ 0 をとり、ロビーにおりて係の男にわたしたちのエアカーをおそわっ た。緑色のスポーツ型四人のりで、ごくふつうの、地味なものだっ 音もしており、たえまない騒音がつづいていた。子どもはさけん た。歩いていけば土地の様子がもっとよくつかめるだろうと思い、 でいて、おとなのシュキー人は、大声で、うなり、きしり声をあけ シ、キー人の都までの全部をェアカーでは行かなかった。丘のつらており、うなり屋がうなり、それの引く車は砕石を踏んでがたがた なりを一つこえたところでおり、あとは歩いていったのである。 と音をたてた。ライアとわたしは、静かにそんななかを手をとりあ って歩きながら、観察し、音を聞きわけ、においをかぎ、そして : : ・読んだ。 人類の町はまるで人もいないようだったが、シュキーンタウンに シュキーンタウンに足を踏みいれたときわたしは、心の耳を開放 は活気があった。砕石を敷いた道は、煉瓦とか、くだものや衣類を にし、歩くにつれてすべてのものがながれこむにまかせて、焦点を いれたかごをかかえていそがしげに行き来する異星人の群れでいっ さだめず受容した。感情の小さな泡の中心となっていて、シュキー 。よいだった。どこにでも子どもたちがおり、そのほとんどははた、 人が近よるたびにさまざまな思いがわたしをおそい、そして遠ざか だった。環になってわたしたちのまわりを駆けまわる橙色のエネル ギーのかたまりで、かなきり声をあげ、うなり、わらって、わたしるとうすれていった。おどる子どもたちは何重もの環になってわた たちの手をひつばるという動作を、同時におこなっていた。子どもしをとりかこんでいた。わたしは感情の海をおよいでいた。おどろ たちはおとなとはちがうようたった。たとえば、赤い髪はまだらかされていた。 で、肌はずっとなめらか、しわもなかった。ほんとうにわたしたち わたしがおどろいたのは、そういう感情がみな、ごくなじみ深い のことを気にしているのは、子どもたちだけだった。大人のシ = キものだったからである。以前にも、異星人の心を読んだことがあ ー人は仕事をつづけて、いつもただにこやかに笑顔を向けるだけだる。易しいこともあれば、むずかしいこともあったが、一様に楽し 0 6
た。そして、ライアが、その〈能力〉でその半分でも他人のことをことで、自分の勇気を誇りにしている。妻はいるが、子どもはな 6 し 5 知っているのだろうかと思った。演壇の男は、聴衆の全員が、今こく、それは悲しんでいる。妻とすらすら話をすることができず、 こで、彼の人生をたどってくれることをのそんででもいるようだっ っしょにいても心は離ればなれで、夜間に妻は涙をながす。そのこ こ 0 とも悲しいが、しかし彼は妻を傷つけたことはなくて : : : 」 何時間もつづいたように感じられたが、やっと結末にたどりつい これも、何時間にもわたってつづいた。いらいらする気持ちがま た。「〈結合〉のことを言いはじめました」ヴァールカレンギが小 たつのってぎたが、無理にそれは押しころしたー・・ーあまりにもこれ さな声で言った。「彼は〈参加者〉になるつもりで、そのことに喜は重要な問題だからだ。ヴァールカレンギのことばと、片目のシュ びを感じている。それは、ずっと以前から乞いこがれていた。悩みキー人の語る物語に心をゆだねた。それほどたたないうちにわたし はもう失せ、孤独な思いももう感じなくてすみ、すぐにもこの聖な は、周囲の異星人たちと同様、話に心を釘づけにされた。ドームの る都の街角に出ていって、喜びを鐘にたくして鳴りひびかすのだ。 なかは、暑く、息苦しく、ほとんど風もなかった。短衣がすすにま そして、何年かのちには〈最後の結合〉にくわわる。つぎの世で彼みれ、汗まみれになってきたが、その汗にはまわりで押しあう異星 は、兄弟たちといっしょになるだろう」 人のものもふくまれていた。だがそのことにわたしはほとんど気が しいえ、ディノ」こんどは、ローリイがささやいた。「彼の言うつかなかった。 ことを人類のことばでくるんでしまってはいけない。彼は自分の兄 二番目の演者も、さっきとおなじように、〈参加者〉になること 弟になる、と言っているのよ。同時に、兄弟たちが、彼になる、とと〈最後の結合〉に近づくことを長々とたたえて、話を終えた。最 いう意味ももっているけれど」 後までわたしは、ヴァールカレンギの通訳をあまり必要とさえしな ヴァールカレンギは笑顔を見せた。「わかった。きみが、そうだ シュキー人の幸福感を、その口調に聞きとり、身のふる と言うのなら : ・・ : 」 わせかたに読みとることができたのである。それとも、無意識のう 太った農夫は、突如舞台から姿を消した。聴衆が揺れうごき、別ちに、心を読んでいたのかもしれない。こんなに距離がはなれてい の人物が登場した。背はもっと低く、すごいしわだらけで、片方のては、対象人物の感情がよほど激しく揺れうごいているのでなけれ 目は大きな空洞になっている。語りはじめたが、はじめはためらい ば、わたしは読むことはできないのだが。 がちで、それからなめらかな口調になってきた。 三番目の演者が登壇し、前の二人より大きな声で話した。ヴァー 「今度は煉瓦ェで、いくつものドームをてがけて、この聖都に住んルカレンギは同じ調子をたもった。「こんどは女性です」と言 0 でいる。何年も前に、ドームから墜落し、鋭い棒で突かれて片目をた。「夫のために八人の子を産み、四人の姉妹と三人の兄弟がい うしなった。痛みはとても大きかったが、一年で仕事にもどり、 る。一生をすっと農業で暮らしてきて : : : 」 〈結合〉の繰りあげを乞うことはしなかった。ひじように雄々しい とっぜん彼女の話はピークに達し、長い大騒ぎは幾語かの鋭い甲
高い笛を吹くようなことばで終わった。そしてだまりこんだ。聴衆ヴァールカレンギが手をふってだまらせた。「聞いてください」 いっせいに、叫び声でそれに応じた。〈大殿堂〉は、気味悪く彼は言い、通訳をつづけた。 ヴァールカレンギの、だんだんしわがれてくるささやき声の通訳 こだまする音楽でみたされ、周囲のシュキー人たちは揺れうごき、 笛のような声でさけびはじめた。演壇の女は疲れはてた様子でそのをとおして、わたしたちは彼女の物語に耳をかたむけた。彼女の話 がもっとも長く、三人のうちでいちばんむごい内容だった。話しお ざわめきを見おろしていた。 ヴァールカレンギは通訳をはじめたが、とちゅうで言いよどんえると、またつぎの人物が登壇したが、ヴァールカレンギはわたし いの肩に手をおき、出口へとさそった。 だ。言いなおしはじめるまえに、ローリイがわってはいった。「 夜の冷たい風が氷のように肌をうち、急に、汗でびっしよりだと まあの女は、大きな悲劇のことをしゃべりましたー小声で言った。 いうことを思いだした。ヴァールカレンギは急ぎ足で車に向かっ っしょに痛みを感じているというこ 「聴衆は、感じた悲しみと、い た。背後からはまだ、舞台の話が聞こえ、シュキー人たちはつかれ とを叫び声で表現しています」 「そう、同情をです」ヴァールカレンギが、たちなおってつづけた様子もなかった。 た。「あの女性がまだ若かったころ、弟が病気にかかり、死にそう「〈集会〉は何日間も、ときによっては何週間もつづきます」ェア カーにのりこむと、ローリイがそう言った。「シュキー人は、やっ になった。ほかの小さい子どもたちから手がはなせなかったので、 両親は彼女にその弟を聖なる丘につれていくように言った。しかしばり交代で聞きます。一言も聞きのがすまいとするのはおそろしい 彼女は運転をあやまって車をこわし、弟を平地で死なせてしまつほどですが、けつきよくはつかれはてて、出て一休みし、そしてま た。〈結合〉できずにこの世を去ったわけです。彼女は自分を責めたもどってくるのです。まったくねむらすに一つの集会をずっと聞 くことができれば、賛嘆されます」 ています」 ヴァールカレンギは、車を上昇させた。「わたしはいっか、それ その女はまた話しはじめた。ローリイがわたしたちに身を寄せ、 やわらかい声音の小声で、訳しはじめた。「弟は死んだ、とまた言をやるつもりです」と言った。「二時間以上はいたことがないけれ っています。彼女があやまちをおかし、弟を〈結合〉に参加させなど、薬を飲んでおけば、できると思う。わたしたちが彼らの宗教 そして : かった、弟は今切りはなされて、孤独で、そして : に、もっと深く参加すれば、地球人とシュキー人の相互理解は深ま るでしよう」 「来世をうしなっている」ヴァールカレンギが言った。「来世をう「いや」とわたしは言った。「ガスターフソンもたぶん、そう考え たにちがいない」 しなってしまった」 ヴァールカレンギは軽い笑い声をあげた。 「そのことばで完全に意味がったわるでしようか」とローリイが言 「ええ、だが、わたしのばあいは、そこまで深くつきあうつもりは った。「来世ということばの内容は : : : 」 7 5
は、どうしてもそれに関連した、かたちははっきりとしないが気がそこから先はあきらかにされていないのである。そして地球時間で 0 3 かりなことを想起してしまうのだった。 五年ばかり前に退役し、連邦経営機構参与におさまったもののよう あのとき、巡察官の通告の前に、司政庁には、もう三人が来ていであった。この参与としての仕事についても、かんじんなことは何 たのだ。ひとりはヤン・・タイツ日であり、もうひとりひとっ分らないのだ。その部分に関しては、一般照会を許していな はシュレイン・ cn r.n ・カルガイスト日 O だった。この二人は連いのである。 そんな人物が、な・せ、しかもこんな時期に、ラクザーンに来着し 邦軍星域群統合参謀本部のメン・ハーであり、何も気にすることはな いが : : : あとの、エリオルツ・・ナクダザインという人物が、 たのかというマセの疑問は、つのるばかりであった。あの日来着し 心の隅にひっかかって、どうしても消えないのである。 たエリオルツは、まだラクザーンにいるはずである。宙港の記録に といえば、大物だ。 よれば、エリオルツは退去していないのだ。ひそかに軍用宙港であ 大物でありながら、マセはその名を聞いたことがなかった。 るツラツリ第二宙港から出て行ったのなら別だが : : : 依然滞在して あの折、トド巡察官は、エリオルツ・・ナクダザインが、退いると解釈するほうが自然であった。 役の連邦軍•< CQ であるといった。連邦軍だというだけなら、何ラクザーンにとどまって、何をしているのだろう ? 何をするつ も妙なことはない。に次ぐ階級のーーー将軍だ。将軍だが : : : マもりなのだろう。エリオルツの消息は、軍のべールにかくされて、 セは連邦軍の全将軍の名前を暗記してなどはいなかったから、知らっかみようがないのだ。 なかったのも当然といえる。司政官というのは、連邦軍について、 そのエリオルツ・・ナクダザインと、連邦軍の時ならぬ ( マ 直接関係がなければ、そんなに知識を持ってはいないものだし、マ セがそんな見方をするのは、実は見当外れである。連邦軍にとって セもそのひとりであった。基本的な事柄たけをマスターしておけ何がいつが大切なのか、彼には知る由もないのた。マセ自身にもそ ば、あと、必要に応じて調べられるそんなものを、覚えることはなれは分っていた。分っていながら、なお、時ならぬという印象は拭 いのである。連邦軍などよりも他に、頭に叩き込まなければならぬえないのた ) 分駐と訓練との間に、何かの関連があるのだろうか ? ものは、 いくらでもあったし、これからもあるのだ。 いずれ、近い将来に、このラクザーン上での出来事の中に、エリ ォルツ・ << ・ナクダザインは、大きな影を浮びあがらせてくるの もっとも、マセは、エリオルツ・ << ・ナクダザインについて、 一応、 (-nO—に調べさせることはしたのである。それによると、エだろうか ? 端的にいえば、司政官の作業に影響のある何かをはし リオルツは 、かたち通りのコースを踏んで将校に任官し、あちこちめるのだろうか ? の星域で、あるときは参謀として、あるときは司令官として勤めあ分らない。 げ、その後連邦軍総統括本部に何年か配属されていたというのであ分らないままに、マセは、今もまた、エリオルツのことを、頭の 記憶ケースに戻すしかなかった。 る。それ以上のくわしいことは、不明であった。軍の機密として、
」行 希望した。これを聞いた中将、反対するかと思ったが、 飛行家アンゼルス。 本旅 日婚 ここで反対したら話は先へ進まないというわけで両手を「私、残念ありますね。私、世界飛行家オーソリチー、 の新 後のあげて大賛成。 今度競技会、日本の婦女に負ける、私、面目潰れまし 百年 「うむ、おもしろい。雪よくいった。わが国飛行界奨励た。雪子嬢無くなる、私、やはり一等飛行家ありましょ 「百 かどわか 刊 のため、この父が許す。進んで女飛行家となれ。さすがう。誘拐す : : : 身を汚す、一生社会へ出られないように 増 ぎんたま は乃公の娘だ、えらい、えらい。なぜ、お前は睾丸を忘する、私の望むところあります」 れて生まれてきたのだ」 めちゃくちゃなことをいって、支那人の張という男 人イ 本の 「ホホホホ、それは妾の罪ではございませんわ。阿父さに、雪子を誘拐して強姦させようと狙っていたのだ。 日載 それから二日後。シェラコドレ山脈のふもとのホテル 及掲んと阿母さんが悪いのでございませんか : : : 」 本号 に泊った夜、雪子はとうとう、悪漢張にさらわれてしま 日集 というわけで、雪子さん。あまりにもものわかりのい った。だから、ダ・フルべッドに寝ていればいいのに、別 い父を持っていたので、あっという間にアメリカはサン チャゴのカーチス飛行学校に入学。二年間の勉強がすむ別の部屋にいるからこんなことになるのだ。 と、ワシントンで開かれた英米独仏露日が参加する万国「コリヤ、支那人待てツ、悪人待てツ」 飛行大競技会に、ただひとりの日本飛行士として参加す新納八郎、叫んでみたが、待つわけはない。張は雪子 ると、なんなく優勝。たちまち一万ドルの賞金を手に入を大きな箱に入れると、背中にしよって山の中に逃げこ んでしまった。 れた。 そこでその賞金で自分の飛行機を買って、世界をまわ って日本に帰ろうと思ったが、注文した飛行機が手元に くるまで三カ月かかる。しかたがないから、アメリカ各 地を旅行してみることにしたが、ひとり旅はつまらない ので、飛行学校に雪子同様甯学していた日本人青年新納 八郎という男性と旅にでた。二十歳の女の子が、若い男 と一緒に旅にでるなんてやばいんじゃないか、と心配す る・ほくを軽蔑の眼で見て、ふたりはアメリカからメキシ 「避暑旅行ですから、なるべく田舎にいきましよう」 なんていいながら、べンソンという街のホテルにやっ てきた。ところで、ここで雪子を待ちぶせしていたの が、万国飛行競技会で雪子に敗れ二位になったロシアの おっか おとっ 9 9 5
し、まだほかのものを検討しています。売れゆきは上々です」 いだ研究しました。歴史上のどんな宗教にも似たものはありませ 「今日の夕食で、地元の産物はいろいろ味わえるでしよう」ヴァー ん。古代地球にもこういうのはありませんでした、まったく。人類 4 ルカ。レンギが言った。 「冫ユキ 1 ンタウンの一、二カ所に行く市内、の接触したどの種族にも、ないです。 観光を準備しました。この大きさの植民地としては、ここの夜の街それに、〈結合〉のことを言えば、これを地球のいけにえと比較 するのは、・ はとても楽しいものです。御案内しましよう」 せんぜんまちがっています。古代地球の宗教では、神々 「けっこうですね」わたしが言い、ライアもほほえんだ。市内観光をなだめるために、いやがる犠牲者を一人二人、いけにえにしまし につきあおうというのは思いやりのあることだった。たいていの普た。多数の人々に神の慈悲を乞うため ( 少数者を殺したのです。そ 通人は、能力者がそばにいると落ちつかず、なにかしてほしいことしてその少数者はたいてい抵抗しました。シュキー人はちがいま があるととんでくるが、それが終わればできるかぎりすばやく逃げす。グリーシュカは、すべての者を召します。そしてみな、喜んで だすのである。普通人はまず、我々とっきあうことはない。 おもむくのです。レミングみたいに、あの寄生体に生きながら食わ 「さて、問題ですが」ヴァールカレンギはグラスをおき、椅子の上れるために洞窟へとでかけていくのですから。すべてのシ、キー人 で上体をのりたして言った。「〈結合崇拝〉のことはご存じですか」が、四十歳になると〈結合〉に参加し、五十になるまえには〈最後 「シュキー人の宗教の一つですね」ライアが言った。 の結合〉に向かいます」 わたしはとまどった。「わかりました」言った。「そのちがい 「いや、シュキー人の唯一の宗教です」ヴァールカレンギが言いな おした。「全員が信者なのです。この惑星には、異教徒はいない」 は、理解できます。けれど、だからどうだというんですか。それが 「その問題をとりあげた書類を読みました」ライアが言った。「一 問題になりますか。その〈結合〉はたしかに野蛮なものだとは思い 字一句余さすに」 ますが、しかしそれは彼らのなかたけの問題でしよう。フランガン 「どう思いますか」 人の食人儀式より悪い宗教だということにはならないのではないで わたしは肩をすくめた。「残酷で、原始的です。しかし、わたしすか」 ヴァールカレンギはグラスをあけて立ちあがり、 ーのほうへ行 の知っているほかの多くの宗教にも似たものはあります。けつきょ った。お代わりを自分でつくると、さりげないともいえる口調で言 く、シュキー人の文明はあまり進歩していないということでしょ う。人間のいけにえを要求する宗教は、古代の地球にもありましった。「知るかぎりでは、フランガンの食人宗教は、人類を改宗さ せようとはしていない」 た」 ヴァールカレンギは頭をふり、グ・アリイに目をやった。 ライアはびつくりしたようだった 8 わたしもびつくりした。すわ ・「いや、あなたにはぜんぜんわかっていない」グアリイが、グラスりなおし、目を見はった。「なんですって ~ 」・ ~ を絨毯の上において言いだした。「この宗教を、わたしは六年のあ ヴァールカレンギは、グラスを手にして席にもどった。「人間の
だろうか。たぶんグリ 1 シ、カはその犠牲者に、忘却と、甘く知覚「 のない休息と、争いの終結とをもたらしたのだろう。 一つためしてみることにした。「あなたの頭についているそれ は」鋭い声で言った。「それは寄生体だ。今もあなたの血を吸い それで生きているのだ。成長するにつれて、ますます、あなたが生 きるのに必要な養分をうばってゆく。そして最後にはあなたの細胞 組織を食いはじめる。それがどれほど苦痛なものかは知らないけれ ど、ついには、あなたは死んでしまう。今すぐに〈塔〉にもどって 医者に切りはすしてもらわなければ、だが。あるいは、自分でひき はずせるかもしれない。なぜためしてみないんだ。ただ手をのばし て、ひつばるたけのことた。やってみたまえ」 わたしは、何を期待していたのだろう。相手が荒れ狂うことを か。恐れることをか。それとも、嫌悪感を抱くことだろうか。なに も出てこなかった。カメンツはただ、ロいつばいにパンをつめこ み、わたしに向かってほほえんだ。そして読みとれるのは、愛と、 喜びと、ほんのすこしの憐れみだけだった。 「グリーシュカは殺しません」最後にそう言った。「グリーシュカ は、喜びにみちた幸福な〈結合〉をつくりだしてくれます。グリー シュカをもたない者だけが死ぬのです。その人々は : : : 孤独です。 そう、永遠に孤独なのです」彼の心のなかで、なにかがとっぜんの 恐れにふるえたが、しかしそれも急速に消えさった。 わたしはライアに目をやった。からだは硬直し、目は狭められて いて、まだ読んでいた。振りかえって、また別の質問を口にしよう とした。けれど〈参加者〉たちがとっぜん鐘を鳴らしはじめた。シ ユキー人の一人がはしめ、鐘を上下に振って単調な鋭い鐘の音を出 した。それから、もう一方の手を振り、また最初のを振り、あとの 読者の要望にこたえ 刊行ペースを年 7 冊にアップ ! 出版史上最大のスケールを誇る大銀河ドラマ 衾宇宙英雄ローダン・シリーズィ ヒ金仮地 壬ロ牟ア元姿 ュ星面球 肓ポ刊ト刊な ツラき近プのの死 刊 ノ決イす トン攻予 テ撃定他の闘ン 装ル 幀訳、ダー スイ ートまじ、 四怖 ク 依松ラル イ要 絶 タ 光谷ント 隆 = 三一」 び 3 7