足元の土をしばらく眺め、それから、まぶしそうに目を細めて頭 らの前に寄り集って来た。 上を振り仰ぐ。 父です 幹と幹とのあいだを結ぶ、頭上の太い枝のひとっから、淡褐色の 母です の伯父、従姉、従兄、その夫、その妻、その息子、その娘 : : : 彼ら「三ヶ月前、母方の親戚で行ったひとがいるの。交通事故だったけ れど。まだ、七つの男の子たったわ」 彼女らが、にこやかに男にあいさつを送る。 まぶしそうな目の表情、静かだがよく透る声、痩身だが不健康で「かわいそうにな」 「でも、すぐに帰って来るわ」 、どこか樹液のにおいのする体臭ーーー老若男女、それそれ、 それにふさわしい顏立ち、動作にかかわらず、はなはだしく似通っ「魂がか ? 」 女は男の顔を見、ゆっくり横に首を振ると、男をうながす。 てみえる雰囲気の、それら家族たちが、男の前に現われ続ける。 「行きましよう」 やがて、それら、あいさつを終えた家族たちは、また、三、 「きみのお父さんも言ったな。お祖父さんが、今日から帰って来る 五、五、林のむこうへ遠ざかって行く。 「じつは」 「そうよ。今日から祖父は帰って来るの。どういう意味かは説明で 女の父が言う。「一年前の今日、わたしの父、この娘の祖父が、 きるわ。でも、言葉で分ってもらっても仕方がないの。あなたには 行きましてね」 自然に分ってもらいたいから」 「ええ。彼女からうかがいました . 「いまに自然に分って来るのか ? 」 「祭りには加わっていただけますかね」 「そうよ。あなたの躰がそれを知るの」 「祭り : : : 」 「躰が ? 」 「そうです。一年前に行き、今日から帰って来るのです」 「そうよ。あなたの躰がそれを知れば、あなたは、家族の一員にな 今日から ? れるわ、 男は傍らの女を振り返る。女は男の腕を取って言った。 「いまから、お祖父さんのところまで行くの。そうすれば、自然に 分るわ」 結び合った林のあいだ、しっとりと湿った土を踏んで、彼らは歩 きはじめていた。幹の連なりはどこまでも続く。 ふっと女が立ち停った。 枝から垂れて来た気根のひとつが、がっしり土中に根を降して、 若い幹に変化しはじめた周辺、一団の家族が集っていた。 6 3
マセは頷いた。 方の都合のいいときに、こちらから出向こうというかたちでの申入 例によって、の適当な判断ということになる。 れだったのである。 ( この点、マセは、巡察官の同意はすぐに得ら しかし、それにしても、巡察官がそういう会見の方法を選んだの れると確信していながら、自分がやはり相手の機嫌を損じるような という気にな 0 ているのか、などと考えたものはなぜか : : : マセには推測出来なかった。というより、想像を逞し 真似はしたくない、 くすれば、いろんな可能性は考えられるかも知れないが : : : 彼は巡 であった ) トド・ 4 ・カーツに 込察官が訪ねて来ると察官の真意について考えをめぐらす程、 それが、こんな夜明け前に う一時間後には、夜は明けはじめているであろうが : ・ : ・そんな早関する知識を持 0 ていないのだから、単なる想像に終ってしまうの がおちであろう。この点ではも同様かも分らない。いずれに 暁、しかも巡察官のほうから出向いて来るとは、予想外であった。 「巡察官のトド・・カーツは、昨晩司政官がお寝みにな 0 せよ、顔を合せればそれは判明することなのであり、今必死にな 0 て考えることもないのであった。 た直後に、このことを連絡して来ました」 は補足する。「私は司政官が巡回から帰着したばかりであ「巡察官との会見には、第二サロンを選びました」 と、「よろしいですか ? 変更あるいはその他のご指示 り、その時刻にはまだ眠っておられる可能性があるのを指摘しまし たが、巡察官は、司政庁に来て司政官がまだお寝みだったら、起きがありますか ? 」 「それで結構、 られる迄待っとの意思を示しました。そこで私は、すぐにはこのこ その部屋は、前に巡察官が通告をしたあのサロンである。マセに とを司政官にご報告せず、巡察官来訪予定時刻の一時間三十分前か は別段、文句をいう筋合いはなかった。 ら、先般ご指示の方法による起床要請を行ったのです」 巡察官と第二サロンという結びつきを思うと、マセ 「ーーーなるほど」 。思考の憶え描き金 最【鍋専十四色使用変形版価 2800 円 イラスト界のバイオニアが繊細で秀麗なイラストレイションと奔放 なイマジネイションを駆使して織りなす四十二の宇宙改造計画 ! 早川書房 9 2
疲れだ。 が、自分にとってもそれ程重く、大きなものであった、ということ なのか ? 睡眠をとらなければならない、と、彼はふっと思った。 とはいえ、まだ余力はありそうなのだから、眠る前に、少しでも彼はデスクに吐き出されて来る資料をおもむろにつかみ取った。 仕事を片づけておくべきである。 「見よう」 夜はまだ明けていないはずであった。私室の中は暗く、枕元の時 彼は、低くいっこ。 計はたしかに夜明け前の時刻の数字を鈍く光らせている。 「分りました。ただちにお届けします」 それにもかかわらず : : : めざめの音楽が鳴っているのだった。か いうと、 cnOr-«の声は消えた。 なり前から鳴っていたのかも知れない。熟眠のための処置をしたと マセは、軽く息をついた。 はいえ、マセにはまだ眠気と疲労が残っているのである。 全身から何かが脱落して行く感じがあった。そしてその脱落にと しかし、この時刻にこんなやりかたで起すには、相応の理由があ もなって、身体がゆっくりとあたたかくなるのが分る。彼は、これるに違いない。緊急の、強引に司政官の目をさまさせるような用で が緊張のとけたときの生理作用であるのを知っていた。 はなく、どうにも司政官がめざめなければその場合は起すのを諦め やはり、していないようで、緊張していたのだな。 るという、いわば準緊急の事態がおこったことを意味している。巡 マセは、そんな自分をやわらかく受けとめ、気持をほぐしてくれ察官のあの通告以来、彼は、絶対に起床しなければならぬ緊急事以 るような者が、まわりにはいないということを、考えるともなく考外にも、それに準する連絡があればなるべく早く知りたいというこ えていた。きようの行進もそうだが : ・ : どんな仕事をやってのけてとで、このシステムを設けたのであった。 も、ねぎらい、慰めてくれる者はいないのだ。 それが、巡回を終えて司政庁に帰着したその夜明けに発動される 待て。 とは : : : 何事がおきたのだろう。 マセは、背をしゃんと伸ばした。 マセは、枕元のスイッチに指を当てた。 それが、司政官というものではなかったのか ? 司政官にとって部屋の照明が、あかるくなった。 はそれが当り前なのではなかったか ? それを覚悟し、そのつもり「おめざめですか ? 」 で、職責をはたし、ことに当っているのではなかったか ? 壁のス。ヒーカーを通じて、が呼びかけて来た。「 ar-q 泣きごとめいた思考は・ ・これは、どこから忍び込んだのだろが、ご連絡したいことがあるそうてす。ここで r--nat--( と代りましょ うか ? それとも公務室へお出向きになりますか ? 」 疲れのせいか ? すぐに着替えて公務室に入るには、まだ疲れはきっかった。 あるい。 : : こんな気分になったというのは : : : 結局、あの行進「ここで聞こう」 7 2
「ガスターフソンにも、信じられなかっ 「ええ」ライアは言った。 ど、短期間の、探検基地の司政官としてそこにいたの。家族はソア 惑星に住んでいた。短期間の訪問旅行だ 0 たけれど、宇宙船が墜落た。その前は、ナイトメアの出来事以前には、彼らはとても幸福だ 7 した。ガスタ 1 フソンは狂ったようになって、手遅れになる前にそった。彼は奥さんを愛しており、みんなじつに親密で、彼の前途も こに行きっこうとしたけれど、彼はまちが「た潜水服をつかみ、胚とても有望だ 0 た。彼はナイトメアに行く必要はなか 0 たのよ。そ 種にそこでとりつかれたの。彼が行きついたときには、みんな死んこが、だれにも制御することのできない惑星だ 0 たから、彼は挑戦 でしま 0 ていた。彼は大変な痛みにおそわれたわ、ロプ。病気のせした。それも、彼の悩みの理由なの。彼はいつもそれをわすれな 、。彼はーーーみんなはーー」ロごもった。「彼らは、自分たちが幸 いもあるけれど、それよりは家族をうしなったことの痛手が原因だ った。彼は心から家族を愛していて、事件のあとは人格がかわって運だと思っていた」そう言って、彼女は沈黙した。 しまった。いってみれば、報酬として、つぎの任地にシ = キーをあ言うべきことばがなかった。だまったままで運転し、ガスターフ たえられた。彼の心を墜落の惨事からひきはなそうとしたのだけれソンの苦痛がどれほどのものなのだろうかと、お・ほろげながらに考 ど、いつでも彼はそのことを思いつづけた。その情景をわたしは見え、感じた。しばらくして、ライアが口を切った。 「それで全部よ、ロ・フ」その声はまた、やわらかく、ゆっくりと、 ることができるわ。生き生きと。彼はわすれることができなかっ た。子どもたちは船内にいて、壁で安全をたもたれていたのだけれ考え深げになっていた。「でも、今は彼の心は平穏よ。今でもまた ど、生命維持装置が故障して、窒息死してしまった。そして彼の奥事故のすべてを、そしてどんなに苦痛だったかをおぼえているけれ ど、前のようにはなやんでいない。今はただ、家族の人たちがいっ さんはーーーそうよ、ロブーーー彼女は潜水服をとって助けに行こうと したのだけれど、外にはやつらが、あのナイトメアにいた巨大な虫しょにいないことを悲しんでいるだけ。そして〈最後の結合〉にい っしょにはいれないことを悲しんでいるだけなの。あのシュキー人 の女と同じように。おぼえている ? 〈集会〉にいた人のことよ。弟 わたしは大きく息を吸いこみ、すこしばかり気分が悪くなった。 のことをなげいていた人」 「食人虫だ , わたしは、くぐもった声で言った。書物で読んだし、 立体画面で見たことがある。ライアが、ガスタ 1 フソンの記憶のな「お。ほえている」わたしは言った。 かに見た情景を想像することができたが、気持ちのいいものではな「あれと同じよ。そして、彼の心もあけはなされている。カメンツ の心よりもずっと。彼が鐘を鳴らすときには、心の全部の層から障 かった。彼女の〈能力〉をもっていないことがうれしかった。 「ガスターフソンがついたとき、やつらはまだーー・まだいた。そう壁が消えて、表面の層に出ている、愛と、痛みと、すべてのことが 全部本当なの。彼の人生全部よ。わたしは、一瞬のうちに、彼の全 なの。彼はやつらを、音波銃で殺したのよ」 彼は〈結 わたしは頭をふった。「そんなことが本当におこったなんて、と人生を分かちあった。それに彼の思いのすべても : 合〉の洞窟を見たことがある : : : 改宗するまえに、一度はいったこ ても信じられない」
「はなしてよ」 にかまた、あたらしい作戦でもかんがえているのだろうか。 「いいから、ちょっとこいよ」 「だけど、別居してるじゃない」 「しいたいことがあったら、法廷でいえばいいじゃないの。そのた しばらくたって、冴子は・ほんやりといった。 「そんなこといったって、週に一度はおもしろくもない裁判があ めに裁判してるんだから」 みんながそろそろと、はいっていく。 る。その前の日は、アパートへ泊まりにくるじゃないかー 「もたもたしてて、やってられないよ、こんな裁判。おれがいま、 「あなたがネボスケだからよ」 「まあ、いいさ、どっちでも : : : 痛いか ? 」 なにかをいいたいとおもう。それをいえるのは、一年も二年も先の ことになるんだから。わすれちゃうよ、自分でも何をいいたいの彼は彼女が立ちあがるのを助けた。 「たいしたことないわよ、こんなの。あんたが顔をひどくなぐった か」 「わすれるくらいなら、それはたいしたことじゃないって証拠よ」ときにくらべたら・ : : ・それより、あそこがヒリヒリするの。男と寝 「それはちがうだろ、。ハ力」 たのは七カ月ぶりだもの」 「おい、ほんとうかい ? 」 「ハカってなによ」 「わかってるくせに、くだらないことをいうからさ。おい、おれた とすると、例の凄絶なケンカの四カ月前ということになる。冴子 は、こたえない。 ちだけで、はなしをつけよう」 「いやよ。そんなにつかんじゃ、痛いじゃないの」 「おれたちはずいぶんながいあいだ、やってなかったんだな」 だが、冴子にも男はいるはずだ、と彼はかんがえた。 「痛いようにしてるんだ」 彼は冴子をひきずって、裁判所の裏庭へでた。授業をエスケープ「あのひとは、おにいちゃんの友達よ」 してるような気分だ。そのせいで、妙な気をおこしたのかもしれな「あのひとってだれだ ? 」 おまけに、きようの彼女は髪をまんなかでふたつに分けてむす見すかされたような気がして、彼はあわててタ・ハコをくわえた。 「決まってるじゃない。荷物をとりにいったとき、エア・カーを運 ぶ、女学生みたいにみえた。グレイのひだスカートなんかはいて。 彼は植込みのかげで、妻を強姦した。まだ籍をぬいたわけではな転してたひとよ」 「ああ」 いから、妻であることにかわりはない。 「訴えたってムダだよ」彼はファスナーをあげながらいった。「お彼はあいまいに返事した。彼女はおれにほれている、という確信 がふたたび彼をつつんだ。だからといって、うれしくもなんともな れたちはまだ、夫婦なんだから」 。しかし、安心感をお・ほえるのはなぜだろう。かって自分のもの 8 「ふん」 冴子は半身を起こして、傷だらけになった脚をながめている。なであったものを他人が所有しても、貸してやったという感じしかし
そんな考えごとをしているうちに、彼の意識はしだいにはっきり「でも、それで済ませるあなたではありますまい」 しはじめ、いつものように動きだしていた。 トド巡察官は続けた。「率直にいうと、私は、雑音の入らぬうち 時刻を見ると、の連絡があってから、五分以上も経過してに、あなたとお目にかかりたかったのです」 いる。 「とは ? 」 マセは、相手の眸を見た。 彼は着替えにかかり、眠気を完全に吹き払うための処置を受け、 公務室へと、出て行った。馴れたこれら一連の動作は、ほとんど考相変らず静かな、何を考えているか分らぬ眸だ。 えなくても出来るので : : : 公務室に入ったときには、巡察官来訪予それをまたたかせて、 定時刻迄、まだ優に三十分はあり、その時間を利用して彼は、巡察「その前に、私は、あなたのご用件というのを伺わなければなりま せん」 官との会見のための確認打合せを、とすることが出来た。 トト巡察官はいうのだった。「この会見の目的からいっても、ま 巡察官は、予告よりも、五分早く、司政庁前に姿をあらわした。 た、話の順序としても、そこからはじめるべきだろうと思います。 : こちらから申しあげて差支えなければ : : : 緊 ご用件というのは : 「本当のところ、私としては、こういう強引な訪問はしたくなかっ たんですがね」 急指揮権の確立のための保証ですか ? 」 「おっしやる通りです」 挨拶を終り、腰をおろすと、トド巛 廴察官は微笑含みで静かにいい マセは答えた。 だした。「しかし、あなたが昨夜帰着なさったことが分っており、 その翌日、つまりきようからは極度に忙しくなられることがたしか巡察官が先にいいだしたのは、別に不思議でも何でもない。今の な以上、出来るだけ早いうちに、お会いしたほうがいいと考えたのこの時期に、司政官が巡察官と会見するとすれば、それ以外にはま ですよ」 ず考えられないからである。 「それだけの理由で、ですか ? 」 「分りました」 マセは、先方から来たことや、こんなに早くという言葉は使わず 巡察官は頷いた。「それでは一応、形式にのっとって、すでにわ に、しかも相手を責める調子にならないよう、気をつけながら反問れわれには分り切っていることですが、それが必要な理由をしるし た書類をお渡しいただくことから、はじめましようか」 トト巡察官は、まだ微笑していた。いや、心もちほほえみは濃く書類はすでに出来ていた。マセはそれを渡し、巡察官は受取っ なったようである。 て、ページを開いた。 〈以下次号〉 「そう申しあげたほうがよろしければ」 ・、 0 3
いうのも、ケイヴはその水品球に愛着があるからだ 前々回 ( 七五年八月号 ) 、前回 ( 七六年三月号 ) 料理に関心をもっていたからである。 に続き、おもしろさについて。前々回はストーリイでは、僕がいま関心をもっているのは何かというった。水品球をのそきこむと、そこには、異国の風 のおもしろい作品 "Venus on The Half Shell' ・と、いろいろあるが、まずでありミステリであ景がうかびあがるのだ。しかし、ある日、よんどころ を、前回はストーリイ・プラスの作品 "The Fo- る。だから、このふたつがからまりあった〈ミない事情からケイヴはその水品球をセント・キャス rever War" を紹介した。実はこのへんで、ストーステリ〉 ( アシモフの諸作やハリスン『人間がいっリン医科学校助教授、ジャコビイ・ウェイスにあず リイがおもしろいとはどういうことなのか、なぜ波ばい』などだ ) が大好きなのである。 けることとなった。ウェイスとケイヴは水品球を詳 トーリイをおもしろいと感じるのか、と今回はミステリではないけれど、とミスしく調べ、そこにうかびでる風景が火星のものだと 瀾万丈のス いった根元的な問題にも触れるべきなのだろうが、テリの古典をいっしょにした作品をとりあげよう。知った。そして、彼らは火星の生物の姿も目撃した 僕の手には負えなくなりそうだし、今のところ人間 "Sherlock H01mes ・ s 「 a of The 「 or 一 d ・ ) といのである。やがて、ケイヴは水晶球を店に戻し、昔 、昨年九月にワーナー・ブックスからべー どおりの生活が続いたが、ある日ケイヴはぼっくり の本能に根ざしているのではないかとしか言えないい ック・オリジナルで刊行された。今年はじめ、熱心死んでしまったのである。ウェイスはあわてて水品 ので、そのへんは勘弁していただく。ストーリイ・ プラス >< のとは何かということには末尾でふれるなシャーロッキアンである友人からこの本を見せら球を買いとろうとしたが、それは他の古物と共に、 ことにして、今回は別のおもしろさについて考えてれたとき、僕は思わずニャリとしたものだ。名探偵グレイト・ポートランド通りの同業が買いとったあ みたい。 の代名詞ともいえるシャーロック・ホームズの名とであった。ウェイスはさっそくその店へ行った 英語の一 n ( eres ( 一 ng にはおもしろいの他に、興味に、・ ()D ・ウエルズの『宇宙戦争』のタイトレ : ノ力が、水晶球は売れたあとであった。買ったのは、長 があるといった意味もあるが、その点である。つま合体しているのだから。なかは五部の中篇からなっ身黒髪の男で、灰色の服を着ていたという。 り、ある物に対して興味・関心をもっていればいるていて、第一部は "The Adventure of The Cr ・以上が「卵型の水品球」のあらすじだが、『シャ ほど、その物をおもしろく思うのではないか、と思 ystal Egg" といって、これまたホームズものに多ーロック・ホームズの宇宙戦争』は、長身黒髪の うのだ ( この点、興味ある方、つまり、おもしろそい「 : : : の冒険」というタイトルに、ウエルズの短男、つまりシャーロック・ホームズが水品球を買う うだなと思う方は、福田定良氏の『〈面白さ〉の哲篇『卵型の水品球』をくつつけてある。さっそく内ところからはじまる。彼はいまダイヤモンド盗難事 学』 ( 平凡社 ) を御覧いただきたい ) 。例もあげよ容を御紹介したいのだが、その前に、『卵型の水品件を追っていて、このグレイト・ポートランドの古 トーリイをおさらいしておきたい。 物屋を見張っているところなのだ。盗人はダイヤを う。先日、僕は国分寺にひっこした。自炊しなけれ球』のス ばならなくなって、料理に関心をもった。そして、 ロンドンに、ケイヴという古物商がいた。その店この店に売りにくるはずだとホームズはにらんでい 荻昌弘、池波正太郎、檀一雄ほか各氏の、男の書い先に、卵型の水晶球がかざってあった。もちろん売る。案の定、犯人はやってきた。そいつはなんと、 た料理の本が十数冊、本箱に並ぶこととなった。ど物なのだが、客がそれを買おうとすると高い値をふ ハドスン夫人 ( ホームズの大家さん ) の元亭主だっ の本も、たいへんおもしろく読ませていただいた。つかけて、いっこうに売ろうとしないのである。とた。ホームズはダイヤをとりかえすとポケットに水 登驅 -- 0 0 0 0 0 0 もしろさ 見 2
女の祖母、女の父、母、上の姉、その腕に抱かれた乳児、その姉 の夫、下の姉、兄、弟ーー男と女が到着すると、一団の家族は微笑耽美の異才深井国の華麗なイラストレーションで贈る を浮かべ、それそれ軽くうなずいて来た。 めくるめくファンタスティック・アドヴェンチャー 「これらが家の樹だということは、娘からお聞きになりましたか 女の父が男に言い、ゆっくりと、つながり結び合った林を見まわ 〈階層宇宙〉シリーズ す。 ・・ファーマー / 浅倉久志訳 「ええ」 「これらの幹に、すべて、ちがった名がついていることは ? 」 「いや、まだ聞いていませんでした」 「名もついているし、生きてもいるのです。もっとも古い幹の中に 階層宇宙の創造者′ ート・ウルフの前に開かれ 平凡な大学教授、ロバ は、もう誰も名をおぼえていないものも数多いのですが。たとえ た神秘と冒険に満ちた階層字宙の門ロ。 \ 320 ば、このむこうの太い幹は、もう三百年も前から、生きている幹で 異世界の門 ところどころ瘤を作り、よじりねじれた太い幹を、女の父ば指し 父ュリゼンの奸計に愛する妻を奪われたウルフは 死の罠が待ちうける世界へと旅立った。 \ 300 示し。「あの幹の名などは、もう分りません。男の幹であること は、むろん、分っているのですが」 階層宇宙の危機 「樹に男女の別があるんですか」 階層字宙に侵入した人造頭脳人と対決する冒険者 「そうです。かたちでも、おおむね分るのですが、乳を出すか、出 キカハと、美貌の上帝アナーナの一一人。 \ 3 5 0 さないかではっきり、それが分るわけです。あまり古くなりすぎる と、かなり乳の出がわるくはなるんですがね」 地球の壁の裏に 人造頭脳人を追い地球へもどった冒険者キカハが 女の父はあたりを見まわし、数メートル先の幹のひとつに視線を 四つどもえの大乱戦にまきこまれ奮戦。 \ 330 送りながら続けた。 「あの幹は、どこかやさしい肌でしよう ? あれは、わたしの曾祖 ハヤカワ文庫 母の樹です。百年にもなっていない樹なので、まだ、きっと乳も出 るでしよう。わたしは子供の頃、あの樹の乳ばかり飲みに来ては、 9 3
「ありがとう」わたしは言った。「では、またあとで」ビュースク行った。 「よかった」彼女が言った。「あなたのいうとおり、彼、ちゃんと リーンをばちりと消し、寝室にもどった。 ライアはべッドの上に身をおこし、シーツで腰をおおっていた 9 薬をおいてあったわ」 わたしは横に腰かけ、キスした。ほほえんだが、キスにはこたえな「徹底的にやる種類の男なんだ」 かった。「やあ」とわたしは言った。「どうしたんだー 彼女はほほえんだ。「そうね。でもシュキー語については、ロー リイのほうがよく知っている。彼女を読んだの。きのうの通訳のな 「頭痛がする」こたえた。「脱酔薬は二日酔をふせぐと思ったの かで、ディノは二回まちがえた」 そんなことにわたしも、漠然と気がついていた。ヴァールカレン 「理論上、そのとおりだ。わたしのはよくきいた」戸棚に行き、な 「このへんに頭痛薬があるだろギを信用しないというのではない。みんなの言うところによれば、 にか着るものをさがしはじめた。 彼はまだ四カ月しかここにいないという ( ンディキャップのもとで う。こんな明白なことを、ディノがわすれるはすがないー 「ほかになにか読んだか やっているのだ。わたしはうなずいた。 「ううん、そうね。どれか服を放って」 彼女のツナギの服をつかんで、部屋のこちらから投げた。わたし 「いいえ。演壇の人たちを読もうと思ったけれど、距離が遠すぎた が着ている間に彼女はおきあがってその服にすべりこみ、洗面所へ 世界 c.nLL 情報 がはの金流最会が , て 6 紹とクでフ人 , 1 一れつ , どわで 2 にや」。一よンにジ」一一ア第フ , 。は場と場税が , 大い し年で 一ル , 場がのヨそはやなた。 イ 3 篇はだ口にモう。タ賞ダア と本欄てョテ戦入た定一 , が便誌ついテⅱ長判う「作「ふたンフン , スめ回会こ会のスも , し O のた新ル一と秋ら ( 会 ( 本 0 一ホ作 , れ予 = がと一雑ななシ。評よた原のないアルアプイ年 2 ) . ). つはドユつのい 大」号なユ同大てい , ニたこタにし 吮前るれン中んひフダ・ンル 3 第 ニに宙りしずをしぬ一 ()n とて * , 肥いさス映どを・ンルヤ・が , る * 0 な度万ニも年な 1 前た月宇こ申か場定かャ新これ 1 どが。て開リ放 ( 目クガ一キ年氏いに今う。明は 1 いるは害 ンとるい公ェビ版がツ「ボ・・今ンて更 い 1 ( にへつ会決っ。チたうさ ス一ク週たてのク , 者が遽がいるのつま表会がい傾も・レ画 , イる , イ O ( キし . 変ががといの実 。ル得回めたルるてる る一 2 れれこッ照催い急と追いめだし発大トてにでンテ映がロれはデ れョかささ , レ参主あ , こがてた定てだ * ースれ「 , 本ラ , 場いヒらの・ン人一獲 * たしテれせなで さ「一ず告定がト欄うりてす更つの予つま リさのン日一か劇なびえるグイ 5 トが第のえホささとのる ハほのらよ与いイグの・氏 ( れ伝・出て売るあ 催たユわ宣予ル・本よ折っ移変な者表どは界補ト賞マ 主いニのをにテ一号るてなにのと加発も日〕世候一篇ド , の」かおしてレ・ン一会そお一にわ竸なは 大おでロりあ , にで てて於日期場ホタ前えぎにム備 , 参でに期日回賞ネ長ルでや」ンわイ対っプルト・ / 「」犬ソかジにがス・一イ * 界の欄プ売をもと話 つめ , 定延会・ス ( 加す前ア準め , 会紙い * 6 一ミラ、 よっ日予期 , ン「」を低りシうた果大白し ~ 第ゴノュ・部ルとイのタ献あ・ノ・ラ世産本ンめ者でこな ・・の倒のテた係合のり にあ四 , 無はトた会限がまロなた結のが新 2 る一がビ一マ一年。ハたン貢に・ 口を ~ がん由ルれ大制数あコもしのこて。月れ、篇ネョラボ少・しアの補 , ラレはツ年ル号ンの関場とか 。フ目 , ぜ理ヒかンにの月・とりこたべだ 9 かヒ 5 りジド一「イ理フへ候ンド回ッ明テ月オ納 , のあが 注月介っ・開ア数そカクにきますけ開のはは ( ラるテ料イのスシン 1 リホ 7 フ滞れ悪の気 S F 工クスボとワールドコン 9 5
マセはやはり無表情であった。ロポットたちと同じ無表情であっとして行動しはじめるため、そのために必要なら、近年作られて来 た。司政官なのだ。司政官はそうでなければならないのだ。 たそういう軽いイメージが、結果として消えてしまっても、仕方が 2 あと十メートル。 ないのではあるまいか ? すべての好ましい条件を、全部身にまと マセは進みつづけた。 うなどということは、出来ないのだ。むしろこれから自分がやらな 群衆の沈黙は、もはや、自発的なものではなく、支配されての沈ければならないことを考えるとき、このほうが、仕事がやり易くな 黙の観を呈していた。 るのではあるまいか ? あと五メートル。 これでいいのだ。 三メートル。 マセはひとり頷くと、公務室に向った。 一メ 1 ート - レ 0 椅子にすわる。 最後のーーーそして司政庁玄関ポーチに最初にかかったマセの靴音「報告します」 が変り、彼はそのまま玄関に入って行った。 の声が、壁のスビーカーから流れて来た。「行進が終了し 背後で、呪縛から解きはなたれたかのような、群衆のどよめきがましたので、警備に動員した部下たちを司政庁前に集結させ、本来 あがり、たちまちそれは、最初の、怒号と叫び声の寄せ集めに還元の持ち場に帰しますが : : : その前に何かご指示がありますか ? 」 して行くのが分った。 「いや、ない」 ひょ 0 としてーーーと、マセは、やはり同じ歩調で司政庁の中を歩答えてから、マセは、呟くようにいった。 きながら思 0 た。これは、今度のこの行進は、司政官や司政機構と「ご苦労だ 0 た。今回のこの行進は成功だ 0 たと思うが、どうだ いうものの存在を人々に強烈に焼きつけ、司政官の力というもの を、あらためて考えさせる目的で決行したのである。それが往時の は、 cnOH らしく応じた。 司政官のイメージと重なれば良いと期待したのである。だが、ひょ 「私は自己の任務をはたしただけです。今回の行進についてのデー 0 として = = : 自分はやり過ぎたのかも知れない。予期した以上の効タを収集しておりますので、集計し総合して分析が出来次第、ご報 果を、それも、人々に、司政官とその配下のロポットたちに対する告します」 一種の恐柿を植えつけたのではないか : : : 司政官というイメージの「頼む」 うちにあったに違いない親しみやすさとか、気易さといったもの 「承知しました。 ご帰着後に見ていただく資料の用意が出来て を、吹き飛ばしてしまったのではないか、と思った。 おりますが、ごらんになりますか ? 」 子ー、刀 それもやむを得ないのではあるまいか ? 司政官が本来の司政官 マセはすぐには返事をしなかった。めまいをお・ほえたのである。 」 0 、 0