ーをす リキュール周辺地図 " く = ロテ国首都方向 A オードピー国首都方向 リキュール ロテ国領土、。境オードピー国領土
236 かがいたんじゃ、ダメなんだ : : だから、な、リツツ : : : 」 「やだ " 】」 モルトの体にしがみつく、リツツの手は強く彼の服を握っていた。行かせない、絶対に 放さない : : : そんな気持ちを表すかのように、ギュッと。 この街は、どうかしている。 世界の裏側を駆け抜けてきた、そのために、今回の事件に巻き込んでしまった : いうのにライは、リツツは、みんな、誰もかもが、自分を受け入れてくれようとする。 さそ ゆだ それは甘い誘い。身を委ねてしまいたくなる。 : しかし、だからこそ、この街を、住 民達を愛するのならばこそ : : : 自分はここにはいられない 人と物の出入りが激しいこの土地ならば、いずれまた、過去からの手が伸びてくる。そ して自分を捕まえ、汚泥の中へと引きずりこもうとするだろう。だから : 「ダメ、行っちやダメリ 行かせないもん " " 自警団が嫌なら、嫌でいいから ! 他のお リキュールが嫌ならアルコ・ホールに来ればいいでしょ」 仕事探せばいいでしょ あっか どうもリツツの中ではリキュールとアルコ・ホールは別の街という扱いのようだ。実際 にはリキュールの中心街をアルコ・ホールと呼んでいるのだが・ 小さい子にはわからな いのだろ、つ。
・第三話中編『 G 「 a も牢獄の少年達』 かっ あらなわしば 荒縄で縛り上げられた血まみれのモルトを担ぎ上げ、コーンは人垣を押しのけつつ、自 とちゅう 警団本部を目指した。途中、場の混乱を抑えるために動ける若手をかき集め、アルコ・ホ たた きゅうか ール中に配置するよう指示を出す。休暇中の連中も叩き起こそうかと思ったが、現場で別 れたプレンデッドがすでに声をかけてくれていたようだった。 花屋店主の殺害 : : : 。大勢が行き来するリキュールだ、事件が起こるのは致し方のない かか めずら 3 ことではあるし、殺人が極めて珍しいというわけでもない。だが、事件に自警団員が関わ どった、しかも誰の目から見ても犯人としか思えぬ身なりで大通りに現れ、駆けつけた団員 二名を倒したとあっては、騒ぎにならないわけがない 都モルトは見習いの見習いといったところだし、血まみれで人前に出た時は長柄刀を持っ 英てはいなかった : : だが、顔は知られている。 しんらい 治安を預かる自警団への信頼、そしてリキュールの安全だとするイメージ : : : それらだ いのちづな けは何があっても守らねばならなかった。流通を命綱とするリキュールにあって、それら きわ さわ ろうごく おさ ひとがき
目次 あらすじ 第一話『三つの依頼』 第二話『雨の夜の女』 第三話上編『 Grasp モルトとリキュール自警団』 ろ・つごく 第三話中編『 Grasp 牢獄の少年達』 あまつぶ 第三話下編『 Grasp 星空に雨粒』 ぼ・つけん 第四話『勇気と冒険の記念日』 第五話『リキュールという街』 あ一とが医 137 新浦 8 315 期 245 173
となり ライ しかしながら、とモルトは隣を歩く少年を見て思う。自分の体がこうなのはわかる。が、 こんなハ ードな食事を幼年期から続けているクセにどこにもライの体に無駄な肉がっかな すなおすご たくわ いのは素直に凄い。食事から得たエネルギーが筋力として蓄えられ、カとして見事に消費 ねんれい されているのだ。だからこそ、この年齢でありながら、そこいらの大人はもちろん、ちょ ようへい せんとう っとした傭兵や軍人相手でも対等以上にやり合えるだけの戦闘力を持っているのだろう。 「それに街の住民としての登録をすれば、正式な自警団員 : : : じゃなくて、正式な自警団 員見習いになれるんだろ。何でしないんだよ」 「そりや : : : 俺は、根無し草というか、迷い大みたいなもんだからさ。こうして自警団で やっかい 厄介になってるけど : : : 」 リキュールにおける自警団の重要性は高い。それは特殊な立地に関係があった。 リキュールは大国二つの首都間を最短で繋ぐルート上にあり、一〇〇〇年前の戦争で荒 れ果てた土地が広がる中にある、オアシス的なスポットなのだ。故に街は流通で潤ってい おとず るのだが : : : 訪れるのは善意ある人と幸福を含んだ物だけではない。街の住民より、旅人 すさ の方が多い街である。何もしなければ治安はあっという間に乱れ、街は荒むことだろう。 それらに対応するために、街の規模からするとリキュールはかなり大きな予算を組んで、 しんらい 強力な自警団を抱えている。一人一人の質の高さと共に、絶対の信頼がおけるようにと思 かか つな ゆえ
うれ : とい、つか、助かる。 これもまたサシャには嬉しゝ リキュールの中心街であるアルコ・ホールの外であるにもかかわらず、少々家賃は高め だが、それを差し引いても悪くない部屋だ。サシャはそう思っている。とても安心できる。 実際、リキュール出身であり、実質的に街のトップである議長マドラーもこの平屋の一 つに住んでいる。つまり、地元の人間があえて選ぶだけの価値があるのだ。 しかし、そんな部屋であっても : : : 雨の重圧からは守ってはくれない。 きんばっかんざし サシャは白に近い金髪を簪でまとめ、カラフルなマフラーを巻き、腰に刀を帯びて、逃 げるように部屋を出た。 傘を差して、雨の中を歩む。室内で感じたままに、街は静まり返っていた。 リスク くらやみ こ・つや 荒野を行く旅人にとって太陽の光がどれほど有益で、夜の暗闇はどれだけ危険があるか のぼ ど考えるまでもない。だからこそ日が昇ると共に旅人は動き出し、彼らを相手にする関係で 住民達もまた動き出す。つまりリキュールの朝は早いが、それに比例して夜も早いのだ。 ひとけ 市人気のない道ばたで、夜の雨の冷たさに身震いしながら、歩みを速めた。 あんびてい とびら 英明かりを、そして人の気配を求めるようにしてサシャが扉を開いたのは : : : 安美亭だ。 どころ 来客を告げるように、木製扉に取り付けられたカウベルが鳴る。食事処が好んで取り付 ける柔らかな黄色い魔光球の光が溢れ、サシャを包んだ。 かさ やわ あふ みぶる
サシャに限らないのだが、 リキュールにおける何でも屋というのは、大抵の場合アル けいじばん どコ・ホール内をうろうろしていれば簡単に見つけることができる。仕事の多くは掲示板に カたよ 頼るのだが、そこに仕事がない、割の悪いのしかない場合は、固定客を持たないサービス の 市業であるがために人通りの多いところをフラフラしていることが大半である。 英人が多ければ必ずトラブルは起こるもの。それこそが何でも屋にとって飯の種なので、 ぶち かせ 流し歩いているだけでその日の食い扶持ぐらいは稼げたりするものである。 しよくぎようがら また職業柄、何でも屋はリキュールの住民や、街をよく利用する商人に至るまで顔が知 「 : : : となると俺はモラセスを応援せにゃならんか : いや別に公平にする必要はない んだけどもさ。よし、こ、つしよ、つ。リツツ、少一し切を任せる もはやどちらを優先するとしても問題が起こる気がしたので、モルトは一計を案じるこ とにした。そう、サシャをこの場に連れてくるのだ。どちらかを優先するよりも、同時に やってしまう : : : というより、責任をさっさとぶん投げるのが一番だ 言い合いを続けるモラセスとクアトロを背に、モルトは安美亭を後にしたのだった。 たいてい
もう一〇〇年の時は必要だと言われている。 しかしながら、その不毛の土地こそが二国の首都を最短で結ぶ最重要ルートだった。そ れ故に、必然として人や物の多くがここを通るのだ。 かこく そして、その過酷な道の中央に、それはあった。 深い森を引き連れた山が一つ。その麓に長い歴史を持っ街、リキュール。 まりよく ふきゅう あが 魔力が普及するより前、はるか太古より、少数の民族が山を崇めて生活していた集落で あり、かっての大戦においてはロテ国の最前線基地ともなった、そこ。 うた あっとうてき てつべき それはロテ国最強と謳われた軍勢が、その圧倒的な力でもって鉄壁となり、オードビー しんこうではなくじ 国軍の侵攻の出端を挫き、さらに国だけでなくその豊かな山や森までをも守り抜いた、奇 せき 跡の領域だった。 とくしゅ そんな特殊な歴史を持ち、今や世界中の人や物が行き交う街となったリキュール。そこ みりよく そろ 0 には不思議な魅力があると人々はロを揃える。それは 『どこか、懐かしい感じがする』 どこの誰であっても、まるで一度は訪れたことがあるような : : : そんな街。 ゆえ だれ なっ おとず
匕年前のリキュール 、、オリーピー メ XX X メ X X X メ X X X * メ X X X X X X
「旅の商人らしいが、この街でうまく商機をつかんで、多額の利益を出したそうだ。強力 3 な自警団が目を光らせるリキュール内はいいとしても、荒野に出ると : ・ : それで、いつまで行ってるんだ ? 」 「いい仕事だな。ったく。 うで やとう たやす 野盗の集団が現れようとも容易く退けられ モルトはもちろんだが、サシャも腕は良い。 る。 : が、問題は、それぐらいのことをやってのける連中が自警団を始めとして、この 街には無数に存在しており、大した売りにならないことであった。 だから、護衛の仕事というのはリキュールではクおいしい % 仕事に当たる。 「さてね。少なくともロテ国の首都まではいくし、商談次第ではその先にも付き合うかも しれない。ア。ハ 1 トは昨夜解約して、荷は貸倉庫の一角に押し込んだが : : : まあ大したも しだい のはないし、風向き次第ではーー」 「帰ってこないなら、仕事の奪い合いが減ってありがたいんだがな」 ぜひ そう言われると是が非でも帰って来たくなる、とサシャは笑う。そして、実は急な仕事 あいさっ で友人らにろくに挨拶も出来ていないんだ、と彼は申し訳なさそうに続けた。 「生まれも育ちもってんなら話は違うが、俺達みたいに流れて住み着いた連中なら、大し て気にされないさ。だから、そんなに気に病むことじゃない さび 「・ : ・ : それは、何だか : : : 寂しいな」 こうや しだい