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検索対象: 英雄都市のバカども3 ~アルコ・ホール三番街の何でも屋~ (富士見ファンタジア文庫)
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1. 英雄都市のバカども3 ~アルコ・ホール三番街の何でも屋~ (富士見ファンタジア文庫)

「それは それは、まるで、天使の羽のように優雅に舞っていた。 それは、夕日の中を飛ぶ南国の鳥のように、鮮やかだった。 それは、全ての疑問に対する答えだった。 「それは リツツちゃんの、初めてのプラジャーなんです " " 」 まぎ しゅんかん その瞬間、オリービー以外の広場にいる全員が紛れもなく : : : 時が止まったのを感じて いたことだろ、つ。 てんとう 心も体も固まり、空白になり、ただ台の上で転倒していくリツッと、タ焼け空を舞うか せの わいらしくもちょっとだけ背伸びしたデザインの小さなプラジャーを目で追うだけ。 ・ : 頑張った少女のおめかし、あのオリービーとの買い物、記念日、リツツの赤い顔、 ど中身を言っちやダメだと言った彼女、必死に取り返さんとした理由 : : : それら全てに対し、 こうにゆう 「少女の初プラ購入記念日』というこれ以上ないぐらいにしつくりする解答を提示された 都今、誰もが思った。 雄 英 と。 ャベ工 : そしてーーやっちまったぞ、と。 ドデ、という音と共に、リツツが処刑台の上に倒れ、顔を伏せた。 がんば ゅうが たお

2. 英雄都市のバカども3 ~アルコ・ホール三番街の何でも屋~ (富士見ファンタジア文庫)

持ちの入った品を得ることこそが何よりの快感でーーん」 おど シュウズウジオの体を数本の矢が襲う。彼は空中で踊るようにして身をくねらせ、かろ うじて全てをかわすものの、屋根の上を転がった。 「矢だとここの自警団は飛び道具は使わないと聞いて : : : なに : : : 何だ、これは ? 」 シュウズウジオが膝立ちのまま、どこかへと視線を向けたまま固まっていた。追い掛け あしもと たが ていたモルトとライは互いに顔を見合わせ、彼の足下の民家をぶつ壊して地面に叩き付け てやろうかとも思ったが、 何故動きを止めたのかがわからなかったので、あえて今回は二 人共に民家の屋根の上へと壁の配管を蹴りつけるようにしてのばった。 けいかい シュウズウジオを左右からむようにして屋根へ上ると、彼を警戒しつつ : : : その視線 3 の先を見やる。 、も : じわりと滲むようにその どそして、モルトとライは、驚愕するシュウズウジオと違い 顔に笑みを浮かべたのだった。 の 市 : 忘れてたな、ここがリキュールだってことを 雄 しず 英 シュウズウジオ、ライ、そしてモルトの視線の先にあるのは沈む太陽とタ焼け空、赤く 照らされる家々の屋根 : : : そして、その屋根の上に無数に立ち並ぶシルエットだった。 ちょうとう たんけん 先のピーちゃんとは違い、彼らは全員が家々の屋根に足を着け、手には長刀から短剣、 なぜ こわ

3. 英雄都市のバカども3 ~アルコ・ホール三番街の何でも屋~ (富士見ファンタジア文庫)

212 プレンデッドは冷静に足下のそれも切断しようと長柄刀を振るうのだが ふうりふおうふいりふおうふおくふあんさい 「グリコウ国万歳リ」 やけど 火傷男は、プレンデッドを捕まえると同時に彼を空へと引っ張り上げ : : : そして、見晴 らし台から、自ら飛び降りた。 魔力が枯渇しては戦えないと判断し、命を使ってこちらの戦力を削りに来たのだ。 プレンデッドは空中で長柄刀を鞭に叩き付けるものの、空中では踏ん張りも利かず、技 が甘い。切断できない。冷静な彼もさすがに目を見開いた。 コーンが走る。まだ、間に合う。長柄刀を振りかぶる。だが、その時 : : : 背中に鋭い衝 撃が走る。そして、自らの腹から飛び出す、石の剣を見た。 か あぐら 油断した。力量の差に胡座をかいてしまった。命を懸けた相手を甘く見てしまった。 あきら ずい 賊や犯罪者なら、力を使い果たせば諦める。だが、彼らは骨の髄まで兵士だったのだ。 も・つてん っ 当たり前に命を懸ける。それが、盲点だった。コーンは長柄刀を背に回して己の背に突 のど き刺さっている剣を砕き、斬る。その際に傷口が拡がり、喉の奥から血が溢れ出た。 し か 血を噛み締めつつ、追撃を仕掛けてきた男の首に、長柄刀を叩きつけ、その体を見晴ら し台の外へとぶっ飛ばした。 全ては一瞬。、、こが、 オその一瞬が致命的だった。 つか ちめいてき ひろ あふ 0 おのれ

4. 英雄都市のバカども3 ~アルコ・ホール三番街の何でも屋~ (富士見ファンタジア文庫)

もし、これを覆すとするのならば : : : モルトの全てを話さなくてはならないだろう。し しやくほう かしそれでも状況をひっくり返すのは難しいと思えた。しかも、仮に釈放されたとしても : 全てを話せば、この街にはいられなくなる。 いっか来ると思っていた別れが、こんなにも早く : : : それを思うと息苦しさを覚えた。 「なあ、モルト」 するど こぞう ライの目が、鋭い。たかだか一一歳の小僧がするような目ではなかった。 しんしよく 三年寝食を共にしたせいもあるが、それ以上にヘタなことを言えばすぐにバレてしまう ような : : : そんな気がした。 だからこそ、モルトは沈黙という回答を準備していたのだが 「犯人はどんな奴だったんだ ? 」 ライは、いきなりそんなことを言った。 うんぬん 自分はやっていなし 、、人はすでに中にいて云々 : : : という、モルトがコーンに絞り出 すようにして語ったのをこの少年は聞いていないはずだ。つまり、ライが知っているのは モルトが店主の死体が転がる花屋からナイフを手に血まみれで大通りに現れ、若い自警団 たた 員二人を叩きのめした : : というだけのはずである。それなのに : ふつう 「あのさ、ライ。 ・ : 自分で言、つのも何だが、普通、最初に俺が犯人か否かを疑うべきじ

5. 英雄都市のバカども3 ~アルコ・ホール三番街の何でも屋~ (富士見ファンタジア文庫)

118 まい。この街を去ってしばらくしたら、別人の名と風体で訪れるぐらいが関の山だ。 その時、この小さな花びらはどれだけの実を結んでいるのだろう。モルトは少しばかり おも さみ ちくびつつ 寂しげに、そんな自分の未来を想った : : リツツの乳首を突きながら。ついでに人差し指 と親指で挟んでみ 「んん、つ : : : モルトお : やり過ぎたか ! グーにした両手で両目を擦り出すリツツに、モルトは己の内で舌 打ちを放った。 つつ やり過ぎた。出来心とはいえ、眠る幼女の乳首を突き、あまっさえちょっとつまんでみ たりしたことで : : : 起こしてしまうとは何たることだ。 あきら だが、まだどうとでもなる。可能性とは諦めない心を燃料に燃える炎だ。それはモルト の歩もうとする道ーー未来をいつだって明るく照らしてくれる。 今ある全ての力を用いて極めて高速にワンピースのズレを直し、それと同時に掛け布団 を両手で持ち、表情筋の全てを意識で支配する。 ほほえ そっと掛け布団をリツツに被せると共にモルトは柔らかに微笑み、噴き出そうになって ひ いた冷や汗を毛穴を閉じるイメージを強く意識することで内々に閉じ込める。 「・ : ・ : ど、つしたんだい、 あせ さ 0 きわ かぶ こす ふうてい おとず ほのお おのれ

6. 英雄都市のバカども3 ~アルコ・ホール三番街の何でも屋~ (富士見ファンタジア文庫)

ちからっ いしだたみ ひざっ ついにカ尽きた。ここまでだ。少年は濡れた石畳の上で膝を突く。 あれから何百キロ走ってきたのか。この酷い豪雨の中をどれだけ駆け抜けてきたのか。 逃げに、逃げた。ひたすらに逃げた。仲間から、仕事から、全てから。身を守るための武 器一つを除いて、全てを捨て、ゴミを漁って身なりを変え、走りに走った。どこへ行こう としているのかもわからず、何をしたいのかもわからず、ただ、逃げたのだ。 逃げた。瞼に焼き付いた赤色から。それを為してしまった己から。そして幼い少女の喉 いちげき きよ、つだい に突き刺した一撃から、兄妹同然の仲間達を裏切ってしまった己から。 走った。逃げた。ひたすらに。・ : だが、それも、もう終わりだ。 よさめ したたあまつぶ あの日と同じような夜雨の中、少年は地面に両手を突き、鼻と顎の先から滴る雨粒が地 面に垂れていくのを見ていた。 視界がかすむ。プーツの中でぐずぐずになっている両足の裏、その痛みも今は遠い。 終わりだ。いや、あの夜、すでに自分は終わったのだ。ならば、これでようやく 第三話上編『 G 「 a もモルトとリキュール自警団』 あさ ごう・つ のど

7. 英雄都市のバカども3 ~アルコ・ホール三番街の何でも屋~ (富士見ファンタジア文庫)

遠方の地よりはるばるやって来たこの地で、小柄で、ともすれば少女として扱われかね きがい ない彼女か、一人で生きていくには相当な気概なくしてはやっていけないのだろう。 きぶ そんな中で生来の気っ風の良さを見せ、親しまれ、自分より大きい男達はもちろん、年 上の者達にさえ姐さんと呼ばれるようになった : : : そんなこの街での在り方は、彼女にと って特別な価値を持つものなのかもしれない そこまで考えた時、サシャの中にあった止める気は萎えた。何が大事かは、周りが決め : しかし : るのではなく当人が決めるものだ。 「いいでしよう。何でしたらあなたがお支払いした借金と利子、全額お返しもしますよ」 かわぶくろ 護衛が中身の詰まった革袋を取り出し、カウンターに置いた。 「 : : 畆と気前がいいのだな、ヒオチとやら」 「金貸しは小回りと信用が第一にして全てですからね。彼女が全てを擲ってきているので すから、こちらも同等のものを張って相手をしてやるのが筋でしよう」 ヒオチは店の隅に落ちていたガーナの財布からコインを一枚抜いた。ロテ国の一番大き おうひ けもの な硬貨である。王妃シャルロッテの横顔が刻まれ、反対には神聖な獣であり、ロテ国の守 げんじゅう えが 護者とされる伝説上の幻獣コアラの顔が描かれたコインだった。 「コイン・トスでいいでしよう。表裏で互いに賭け、私が負ければカウンターの上の金を こうか こがら

8. 英雄都市のバカども3 ~アルコ・ホール三番街の何でも屋~ (富士見ファンタジア文庫)

314 「きっと、いっ来たって同じように迎えてくれますよ。いつだっててんやわんやで、楽し ごこち くて、大変で、にしくて : : : でも不思議と居心地がいい、そんな : いろんな人が集まって、いろんなことが起こって : : : 全てが溶け合って、一つになる街。 誰であっても、トラブルさえも笑って受け入れてくれる、そんな 「そんな : : : 私の街です , 手にした白い花に視線を落とせば、浮かぶのは笑顔。 はな さび 離れる寂しさが湧いても、それ以上に胸に浮かぶのは再会への期待。 おも サシャは想う。 必ず、帰ってこよう。この街へ。 この、リキュールへ。 いそが むか 〈了〉

9. 英雄都市のバカども3 ~アルコ・ホール三番街の何でも屋~ (富士見ファンタジア文庫)

特殊な街であるくせに、どこにでもありそうな、ありふれた : : : そんな街。 きょてん 辺境の地にある、物流の重要拠点たる街。しかしながらそうであるが故に様々な人や物 が入り込み、誰もが故郷を思い出せる不可思議な街ともなっていた。 旅人や商人にとっては、この街を訪れることが首都間の旅における最大の楽しみだとす る者も少なくない。 様々な土地の人が行き交い、様々な物産が取引され、そして : : : それら以外の望まれざ るものもまた : 毎日のように巻き起こる様々な事件、事故、問題 だがそれでもなお、そこに住む人達にとって、全ては当たり前の日常でしかない もそれが、リキュールという街なのだ。 カ の 市 都 雄 英

10. 英雄都市のバカども3 ~アルコ・ホール三番街の何でも屋~ (富士見ファンタジア文庫)

317 あとがき 思います。一巻ではサプ主人公みたいだったものの、それ以降不思議と出番のなかったマ ドラーとクリミオの短編とかもあったりしますので、オススメです。 では、そろそろ謝辞の方をば。 えが 今回もまた美しいイラストを描いてくださいましただぶ竜さん、表紙のリツツ、大変か わいくて最高です ! 本当にありがとうございました ! 意外とタブレットなどのガジェットとジャパニーズ・ホラーが好きなファンタジスタ桑 みな ずる 水流さんを始め、校正者さん、印刷所の皆さん、さらには本書を大勢の方に届けてくださ かか る書店員さん : : : 関わってくださった全ての皆様方、まことにありがとうございます。 そして、最後となりましたが、この本をここまでお読みいただきました読者の皆々様 ・本当にありかとうございます ! 皆様の支えがあってこそ無事にこうして本を出すことができます。感謝してもしきれま せん。今後ともアサウラをよろしくお願いいたします。 ではでは、また次にお会いできることを祈りつつこの辺で。それではまた ! り・ゅ、つ アサウラ くわ