眼くばせするばかりだった。 つ、科学が崩壊してしまうのを恐れたのですねーと宇宙人はいっ 地球人とよく似ていて、きわめて友好的な宇宙人たちとは、すぐた。「私たちは、あなたたちよりいくぶん歴史も長いし、多少ひろ い範囲の宇宙を知っていますから、″偉大な存在″についても、少 なぜこんな近くまで来ていたのに、 さま交流関係が成立した。 今までコンタクトできなかったか、ということに関しては、別に何しくわしく知っていますがーーーああいう存在は、まれではあるが、 この宇宙の中に、時々誕生するのです。しかし、われわれふつうの の矛盾もなく説明がついた。彼らが、単なる老人の想像の産物でな 、実在物であることは、彼らがその種として、何万年にもわたる知的種族は、大てい、その存在をどうあっかっていいかわからず、 結局、むこうの方に、愛想をつかされてしまうのです」 堂々たる歴史をもっていることでもわかった。 突然開始されたこの交流には、科学的にも、歴史的にも、論理的「まったく , ー・・・今になって考えてみると、もしあの力が解明でき、 科学者も政府高官もプロデ = あの力をわれわれの種族全体のものにできていたらーー。これまでつ にも、何の矛盾もなかった。 ーサーも、もう、あのおかしな老人や、その奇妙な予言のことなみかさねられてきた科学なんてものは、別に少しも惜しくなんかあ いオ「これまでの科学 りませんでしたな」ャン博士は弱々しくっこ。 ど、すっかり忘れて、宇宙人のニュースに夢中になっていた。 しかし、三人はちが 0 た。この、地球史上、未曽有の歴史的事件の全体系が崩壊するのに甘んじるか、それとも科学をえらぶか : 、実は、あの老人によってつくられたー 1 ・・それも彼ら三人の、のこれは、われわれ三人だけでは、到底きめられない問題でした」 「そして、あなたたちの科学は、おしまいにならなかった : : : 」宇 ぞみ通りにつくられたものだ、ということを知る三人は どうも 何となく、元気をなくして閉じこも 0 ている三人のところへ、ふ宙人はい 0 た。「それはそれでいいではありませんか ? われわれの歴史は、近道ができないように運命づけられているらし いに、おしのびで宇宙人の隊長がやってきた。 長い坂を延々とのぼって、その先に、飛躍の時がーーあればい 「あなたたちが、あの″偉大な存在〃に最後にお会いになったらし・ では、お邪魔しました。この次はどうぞ、私た いんですがね。 、ということをききまして : : : 」感じのいい背の高い宇宙人は、 肩からかけた言語翻訳機を通じていった。「実は , ーー宇宙を探ってちの星へもおこしください。そして、私たちの星に蓄積されている いた私たちに、この星の知的生物のことを教え、導いてくれたの〃偉大な存在。に関する資料でもごらんになってください : ロックフォール教授はいった。「あなたたちの 「そうですね は、あの方なんです」 星の上ならーーー・同胞に気がねすることなしに、″偉大な存在〃につ それが、あの老人のことだということは、三人にもすぐわかっ いて、おしゃべりができそうですな」 た。そして、老人が、あのキイ山中の堀立小屋から、どこかへ 行ってしまったこ 老人の言を信ずるなら、どこかよその星雲へ とを告げると、宇宙人はがっかりしたように、肩をおとした。 「するとー・ーやはり、あなたたちも、長いつみかさねの上になり立 3 5
外であると同時に、的であるというよりは、考え 方に柔軟性がでてきた、ということの裏づけになり得 空飛ぶ円盤アンケート集計結果 ると思います。 ③の、円盤に関するより一層の研究ーー宀子問的研究 マガジン編集部 が必要かどうか、という事項についても、出た結果は やや意外でした。 必要七〇人 去る十一月、マガジン編集部では、 ( 未から整理すると、つぎの三つに集約されます。 不必要三五人 確認飛行物体俗に空飛ぶ円盤として知られているも ①円盤を目撃したか、しなかったか。 不明一五人 の ) に就いて考えるデータを集める目的で、著名人約 ②円盤の正体は何だと思うか。 と、「必要」と考えた人が全解答者中の五八・三パ 三〇〇人を対象に、アンケートを試みましたが、関係 ③円盤現象の学問的な研究は必要と思うか否か。 ーセントもいたからです。 各位のご協力によりその結果が出ましたのでここに発 ①については、当然のことながら、「目撃しない」 もっとも、これに関しては「必要」グループには圧 表します。 が一一〇通の絶対多数をかそえ、九一バーセント強。 倒的に文学・芸術関係が多く「不必要グループ」に科 まず、アンケートをお願いした対象は、大きくわけこれに、「目撃した」の中の不確実なものを含めると学者が多かったことからみても、データの読み方に慎 れば①文学、芸術関係②科学関係③芸能・スポーツ関九十五パーセントを越します。 重を要すると思われます。つまり「不必要」と答えた 係④その他の四部門になりますが、具体的に数字をあ ②についての答えは、種々さまざまでしたが、これ人のほうが、「必要」と答えた人よりも、より責任あ げれば、つぎのようになります。 を便宜上九項目に分類してみた結果はつぎの通りになる解答を出した、と見られるふしがあるからです。 ①文学・芸術関係一七二名 りました。 最後に、目撃したと答えられた十人の方々のお名前 ①自然現象の誤認三六名 ( 作家・文学者・外国文学者・評論家・画家・彫 と、目撃年月日、場所、宇宙人説に対する肯定、否定 刻家・カメラマンその他を含む ) ②宇宙人の乗物三四名 の態度を書いておきましよう。 ②科学関係 六一一名 ③未知の現象二七名 氏名目撃期日 場所宇宙人説 ( 科学者・技術者・科学評論家 o) ④人工物体の誤認二三名 に対して ③芸能・スポーツ六〇名 ⑤集団幻覚その他心理的現象二〇名 石森章太郎昭和三〇年頃不明肯定 ( 俳優・テレビタレント・一般芸能人その他 ) ⑥地球人の秘密兵器一二名 片岡義男不明 不明不明 ④その他 六名 ⑦虚偽 五名 黒沼健多数 多数肯定 ⑧タイムマシン 1 ー③のいずれにも属さないもの ) 四名 奈良 手塚治虫不明 不明 これに対して、いただいたご返事は ⑨不明 一七名 都筑道夫不明 東京不明 八七名 これらの数字は、いずれも、延人数で、一人で幾通 徳川夢声明治三三年頃東京肯定 十八名 りかを答えたものも、一名と数えてあります。 中岡俊哉昭和三一年頃 北京肯定 十三名 これを、宇宙人の乗物、未知の現象、タイムマシン 双葉十三郎昭和三三 ~ 四年東京肯定 ④二名 など、可能性をもたせて答えられた人と、その他の否 平野威馬雄昭和三四年 松戸肯定 の総計一二〇名で、回収率は約四割。こうしたアン定的見解をとった人とに分けてみると、四六対九六で 森田たま昭和二七年 鎌倉否定 ケートの回収率としては、かなり高い方で、したがっ約半分、さらに不明を後者に入ると考えれば、五六 ( 五〇音順・敬称略 ) て、集計された数字に対する信頼度も、一応標準以上六 / ・ハーセントが否定側にまわったことになります。 文書Ⅱ福島正実 と考えて、、でしよう。 しかし、一方、「宇宙人の乗物」と考える人が三四 つぎに、アンケートの内容ですが、これを質問の方人、全体の約一一〇パーセント弱もいたことは、やや意 2
「なんですって ? 」ミッガもャン博士も、皮肉屋のロックフォール理は認識か、存在か ? 教授も、異ロ同音に叫んだ。 「電波という存在を知らなくても、いくつかの力学法則で、この世 「三カ月後に、通信を送ってくるのは、ほんまの宇宙人や。 まのことが、ちゃんと筋道だてて理解できていた時代もあった。 あ、あんたらが、えらいさわいどるから、また気の毒になって、ほしかし、電波ちうものは、その時も存在した。ただ人間が知らんだ んとに宇宙人をつくっといた」 けじゃった。 その時、誰かが、こういうたらどうじやろ。眼に 「きちがいだ ! 」ミツオは思わずロ走った。 「このじいさんーー・本見ることも、きくことも、さわることもできんけど、とにかくそこ もののキ印だ」 、つま、ある。そ らへんには、感ずることのでけん電波ちうものがし ~ し 「まあ、待ちなさい」老人は怒りもせす、ニコニコ笑って、大きなれを上手につこうたら、何千里もむこうの人間と、 いっぺんに話が 手でミツオを制した。「あんたらのーーー科学ちうものは、厄介なもでける、とな。ーーすると、その時代の人間はいうじやろ。こいっ のやな。光の速さを越えるものはない、ちうことが大前提になっとキチガイとちゃうか ? 感ずることも、見ることもできんものを、 るて ? それやったら、もし、本当に、光の速さより速いものがあどうやって使うことができるんや : : : 」 らわれたら、あんたらの科学はどうなる ? 」 三人は押しだまって、小屋の中にすわっていた。ーー老人は、上 「その時はーーー」ャン博士はロごもった。「科学の体系を、全部く気嫌でニコニコしていたが、三人とも、老人の話しぶりに圧倒され みかえるかーーーあるいは新しい前提に立った科学をつくり上げるか いや、そんなもの、認識できない」 「そうじやろ , 老人はうなずいた。「昔、人間は、科学技術をもた ン 宇宙に知的生命をさぐる なかった。電波なんて認識する方法をもたなかった。 ーーーその時、 シわれわれは孤独ではない 電波は存在したか ? 」 「そんなの、古い詭弁ですよ」とミツオはいった。「発見された時、イ ウォルター・サリヴァン 宇宙の根源的な存在の一つであることも、同時に発見されたんでフ 上田彦二訳四五〇円 ノ 〃地球外に知的生命は存在するか〃この刺激的 「もし、発見されなかったら ? 」老人はいった。「発見されない段 なテーマを追って、第一級の科学ジャーナリス 階で、ほかの星の人間が、何千里もはなれて、話をしているのを見カ トが最新のデータをふまえて現代科学の最先端 たら ? ーー電波というものの存在に対する根本的な認識を欠いた段ャ からその可能性を探り、この人類永年の夢にこ 階で、そういうところを見たら ? 」 ' ' たえる異色作。国際ノンフィクシイン賞受賞 ! 三人は絶句した。ーーそれは、古い設問のむしかえしだった。真 5
「もし、それがほんとうなら : : : 」ロックフォール教授がうめい てしまったのだった。 た。「科学はおしまいだ」 「わしも、最初は、なんでこんなこしになったのかわからんかった 「まあまあーーーわしは何も、あんたらの商売を邪魔する気はない。 ・ : 」老人は薬罐の口からうまそうに茶をのんで、またつづけた。 「最初は、自分に予言の能力がある、と思うと 0 たんやな。ところちょ 0 と助けたろうと思うたことが、とんだ迷惑をかけたな」老人 が、予言やのうて、自分が思うた通りのことが起るんや、ちうことはよ 0 こらしよ、と立ち上 0 た。「罪ほろ・ほしに、何かしてあけ いたらぐあ どうなんじゃ、宇宙人はいた方がええんか ? がわかった。そうわかったところで、別にどうちうことはない。思よ いが悪いんか ? 」 うた通りのことが、実現するいうてもーーーまあ、そうじゃなーーち とヤン博士はいった。 よっとここに落書きしようか、と思うたら、落書きできるのと同じ「そりやいた方が : 「よっしゃーーそんならこうしよう。あんたらの望むような宇宙人 ことで : : : たとえばな、あんた、ここにいる娘ッ子さわってみい を、あんたらの好きなような時に、あんたらのいう通りの方角か これ、錯覚とちがうやろ ! 」 いうてみい。どんなタイ ーニイ・ガールの一人が、笑、よ しオら、地球へやってくるようにしよう。 老人の大きな手におされて、・ハ ーー・・・ミツオは、若い娘の プの宇宙人がいい ? 」 がらミツオのひざにもたれこんできた。 「本当ですか ? 」ミツオは、・ほんやりいった。「あなたはーー・・、宇宙 弾力のある、持ち重りのする肉体を押しつけられて、狼狽した。 「赤うならんでもええがな」老人はワッ ( ッハと笑った。「そちら人の存在を、つくり出すことができるんですか ? 」 「疑い深いな」老人は苦笑した。「好きなようにしたげるがな」 さんも、さわってごらん。何やったらキスしてもええ。おつばいに さわってもええ。連れてかえって、嫁さんにしてもええよ。この 「じゃーー・連中を、次の通信のつく三カ月先より前に、地球へ送達 ところで、今、あんたの膝の上から、そのさせることができますか ? 」 娘、ほんものやろ ? ほうれ : : : 」 「今でもできるよ」と老人は、小屋の外で、空をあおぎながらいっ 娘消して見せよか ? それをすませたら、わし た。「さあ、早う望みをいいなさい。 タイツ姿の娘の体は、 娘の体重が、急に軽くなりはじめた。 あまりちょっかい出しすぎ は、ちょっとよそへ行ってくる。 彼のひざの上で、徐々にすき通りはじめ、ついにかげろうのように て、さわがしうなったからな : : : 」 消え失せた。 幻覚だ : 「悪夢だ ! 」とミツオはうめいた。「催眠術だー 二カ月後ーー・ミツォたち三人が、老人に注文した通りの時刻に、 「困った人やなー、、・」老人は首をふった。「しかし、人間の中に 別に手品をや注文した通りの方角から、注文した通りのタイ。フの宇宙人の宇宙船 も、時々わしみたいなのが生れてくるらしいで。 があらわれ、地球とのコンタクトを開始した。地球上は、それこそ ってるわけでも何でもないんやが、こういうことができるんやか 上を下への大さわぎになったが、三人は、青い顔をして、お互いに ら、どうしようもない」 2 5
船戸我子 ナイコン 3 yakiko FUNATO JAPAN , 物 00 おにぐ 参加者およそ一、七〇〇人。アメリカのまわったが、思ったより閑散としていて、 ーヨークで開催された第二五黄色の地に片目のデザインの〈ナイコン 0 回世界大会は、アメリカのファンを一 3 〉の丸い・ハッジをつけた連中が、そここ 堂に集めて、華やかに、盛大にとり行なわこに屯し、本屋をひやかしたり、おしゃべ れた。このレポートは、友人知己だれ一人りをしたりしているだけであった。今をは としていないこの大会に、日本人の一フアやりの鬚をのばした青年、母親と娘、恰幅 ンとして参加した体験を綴ったものであのいい紳士と、ここに集ってきた人たちの 層は、意外に厚い。黒人もいれば、東洋人 の二人連れもいた。鬚の青年が、二度目に ☆クールな r-n ファッション・ショー すれ違った時に、軽く笑顔をみせる。私も ーヨークは七番街、メーシー百貨店笑顔を返す。 から一プロックという目抜き通りにあるス こんなエ合で、十一時半、大会開幕とな タットラ ・ヒルトン。これが第二五回世っても、登録のために並ぶ人たちの列は長 界大会、通称〈ナイコン 3 〉の会場でく続いているけれど、肝心のポール・ ある。 ムは人影もまばら。大会気分が盛りあが 議長テッド・ホワイト、ゲスト・オ・フ り、老若男女、車椅子の身体障害者まで、 オーナー レスター デル・リイウイル いっせいに、会場の熱気に上気した顔をみ スン・タッカーという陣容で開催されたこせはじめたのは、夜七時半から始った、ギ の大会は、九月一日木曜日午後の登録に始ャラクシー主催の、ファッション・ショー ・ディ まる。通常、労働者の日の週末に催されるの時であった。 しきたりであったが、三日間では、充分に これは未来のファッション・ショーで、 プログラムをこなしきれない、 というわけポール ・ルームの中央にせり出したステー で、前回から、一日早く登録を始め、金、 ジに、入れかわりたちかわり、未来の衣装 土、日、月とまる四日間を、この大会にあを凝らしたモデルたちが現われるたびに、 てることにしたという話である。 フラ・ツシュ ラ物 4 トカし 、っせいに明減す 私が会場に着いたのは、九月一日、登録る。まっ黒な、こうもりに似た衣装、電気 開始の夜であった。この日はまだ、大都会仕掛のドレス、金色の爬虫類を思わせる の一流ホテルのにぎわいこそあれ、大会の服、はてはトツ。フレスまで登場したが、ヘ 匂いは感じられない。翌朝、会場にあてらんてこな浴衣姿に、薄茶色の化粧をほどこ れたポール・ルームとその手前にある大広した東洋の女が出てきて、奇妙なシナをつ 間、アートショーの部屋、関係の書籍 くって、ひっこんでいったのは、興ざめで を展示即売する部屋など、ひととおり見てあった。この姿のどこが未来なのか :
-2 国 は雌大だーーそれが男たち三人の、彼女に対する評価であったらしい。しかし、コン の目にも、イヌになった自分の姿に彼女がショックを受けている様子がはっきりとわ わたしはどうしてこんな姿にならなければならないんだろう。たったふ かった。 たりの男と、同時に浮気をしたという、ただそれだけなのに : コンはまた、苦々 人間というものが、他人の罪に対してはいかに寛容でないか コンは しくそのことを思った。こんなことをして、いったいどうなるというんだ 舌打ちした。われわれ四人の仲を、ますます悪くするだけではないか は、時間管制庁法務官たちの気持がわからなかった。むしろ彼らの常識を疑いたく さえあった。それはもちろん、死刑になるよりはましだった。だが、他にもっと、 しい方法がありそうなものだと思えた。納得のいくまで四人を喧嘩させることによ り、お互いを理解させるーーそんなことが可能だろうか、人間の心理なんて、 そんなに簡単に操作することができるのか、そんな大まかなやり方で、人間同 士の憎悪が理解にまで深まるだろうか、いや、むしろ相手の精神構造を理解す コンはそんなことを考えていた。 ればするほど憎みあうのではないか ・大八車は弦上村に入る小川の橋にさしかかった。 「村が近づいたそ。もうひと息だ。頑張れ , 自分は何もせず、大八車の横をぶらぶら歩きながら。ヒーチ・サムがいっ た。彼はよれよれの単物を着て、腰には荒縄を巻いていた。認識パターンが 人間だったのは、この男だけだった。髭がのび、髮は乱暴に束ねていて、 いかにも薄ぼんやり然としてはいたが、眼だけはサディスティックな形に 吊りあがっていた。唇の縁には唾液の泡が溜っていた。 この男だけは、皆が恐れているーーと、コンは思った。怒りに狂う と、この。ヒーチ・サムという男は兇暴になる、だから彼に対してだけ は、三人とも、連想を控えめにしたらしい、意識的に悪口雑言を浴びせ ることはできても、いざとなれば、無意識の中に抑圧されていた恐怖 が思考感情の飛躍をさえ妨げるのだーーと、そう思った。 7
信源は意外にちかく、アンタレスの方角に、わずか二・五光年ほど宙通信を、三カ月前に予言していた人物が見つかりました ! しか の距離であり、ゆっくり太陽系の方向に動いているらしい。通信文もその予言を、この人物は、三カ月前に、国際宇宙通信学会の総会 の内容は ? ーーーみんなは一刻も早く、それを知りたがった。連邦通席上で、三千人の通信工学者たちの前でおこない、そしてその予言 信研は、全力をあげて、その通信内容の解読にかかっていた。どちは、寸分たがわず、びったり的中したのです。ーーそうですね ? らにしても、それが地球文明程度に高度な、知的生物が発したことフォン・シュミット博士 : : : 」 はたしかであり、したがって有意味であることもたしかであった。 「その通りです : : : 」老齢のフォン・シ = ミット博士ーー通信学会 信号は、ひずんでいたが、方式で送られており、解読はの運営責任者だった、この高名で、世間知らずの媒体理論の大家 時間の問題だろう、といわれていた。ーー解読され次第、い「を送は、迷惑そうに、白い鬚で包まれたロをもぐもぐさせた。「まこと らねばなるまい。相手に、こちらがその通信をうけとったこと、 に遺憾きわまることに : いや、つまりそのーーー・わしのいいたい ここにーー・銀河系のはずれに、その通信を理解できる知的生物がい のは : : : 」 ることを、早急に知らさなければならない。相手が待ちくたびれて「ありがとうございました、フォン・シ = ミット博士ーーー博士は、 スター しまわないうちに : 。二・五光年ぐらいの距離なら、あの恒星送この予言がなされた、国際通信学会の運営責任者のお一人であり、 信計画ほどの大規模な送信設備をつくらなくても、今ある設備を大予言の証人であります。博士お一人でなく、当日三千人の出席者 急ぎに改造して、何とか通信を送れそうだった。 それにしてもが、すべて証人となるでありましよう。その時の状況を、大会の進 相手が通信を発してからすでに二・五年たっており、今ただちに通行一切を記録したビデオテープより再現してお目にかけます : : : 」 信を送っても、それが相手に送達するまでまた二・五年かかる。 「どういうつもりなんですかね ? 」ミツオは、何となくいたたまれ ーそれまで、むこうは待っているだろうか ? ないような気持ちで、テレビバネルを顎でさした。「この特番プロ デューサーは いったい何をねらってるんでしよう ? あまりは そしてーーー二百五十億の地球人のうち、三千人の人々は、もう一 つの奇妙な懸念に胸をふさがれていた。もしーーーもし、これがあのでに、センセーショナルにやられると、その影響がいったい、どう いうふうにはねかえってくるか : : : 」 奇妙な老人の予言通りだった、ということが一般に知れたら 「待ちたまえ」ロックフォール教授も、腕を組んだまま、深刻な顔 ったいどんなことになるのか ? 「みなさん ! ビッグ・ニュースですー ・ z ・、惑星間つきで画面に見入っていた。「ほら、あのオッさんが出てくる。 ニース・サービスの特権ですーこ宇宙人よりの通信はいる、のニー彼がいったい、どんなことをいうか、だ」 — Z e サービスは、この宇宙通信がはいるや、 ュースで地球上が湧きかえってから二十二時間後、ついに学者たち「みなさん の懸念していたことが起った。地球Ⅱ月総合ネットワークのテレビ ただちに鋭意、三カ月前の奇跡の予言者をさがしもとめ、ついに日 画面で ) ニュースアナは、興奮した口調でしゃべった。「今回の宇本のキイ半島山中の小屋に住んでいた予言者を見つけ出して、この イラタープラネット 4
日本 SF シリーズ : : : ・透明受第に際第・ 4 ・ , ・エスパイ 4 をまま ! ー 4 ー一 : 第幻影の構成・村車・ を : ・ : : をそンゴルの強光を田を , ー 空間と時間と、無限大と無限小 と、機械と人間と、文明と未来 と、死と生と・・・・・現代人の知性 と感覚に訴えるあらゆるイマジ ネーションの世界を描く、本邦 初の本格的 S F 長篇シリーズ ! 新刊 丐の首風雲金求筒井、 暗黒星雲中に群がる三百の惑星世界、馬首星域の風雲 は急を告げた。そしてその夏、施球人の支援を受けたト ンビナイ共甅軍カ咽家軍を襲撃、ついに戦争力始まっ た。寺の新鋭作家がはなっ異色長篇 ! Y 4 0 0 モン・コつレの残 ) ヒ 豊田有恒 人間そっくり 安部公房 百億の昼と千億の夜光瀬龍 幻影の構成周村卓 \ 370 呆なき流れの果に 小松左京 48 億の妄想筒井康隆 Y 0 透明受月台佐野洋 \ 3 工 . スノヾイ 小松左京 Y 3 たそカゞオしに還る 光瀬龍 350 夢魔の標的星新一 300 復活の日 小松左京 \ 3 地球強奪計画都筑道夫 Y 2 、。。既刊 \ 0 300 Y400 続刊
響立贇第画第三 ( 1 ス ~ ミを一新 : 3 かれた、二百二十階建ての〈通信情報ビル〉の廊下を奥へむかって 歩いて行き、エレベータ , ーホールの方へ曲ろうとした時、さすがに 守衛も警備員も気がついて、あわてて声をかけた。 「おい、君 ! 」と警備員はいった。 「あんた、誰だ ? 無断ではいってもらっちゃ困る ! ーと守衛も叫 んだ。 老人は、あともふりかえらず、手をふって何かいった。 ここでも、報告の時、意見がくいちがった。ーーー守衛は、その老 人が、 「かまわん、かまわん」 といった、というし警備員の方は 「だンない、だンない , といったと、いい張るのである。 しかし、それも、まあ、ど うでもいいことであろう。 守衛と警備員が、エレベーターホールにかけつけた時は、もう老 しまったドアの上で最上階行きの急行エレ 人の姿はなかった。 ーベーターの、渦巻き型の階数指示燈が、水車のように目まぐるし く回転しているばかりだった。 折から、〈通信ビル〉二百二十階の大会議場では、三千人の参加 者を集めて、「国際宇宙通信会議 , の第三・四半期定例会合が行わ れている所だった。 - とせり出し式の壇上にたった、地 「現在進行中のこの計画は : 球連邦通信研究所開発部の、若き第五企画課長ハラ・ミツオは、エ プロジェクゾョン・第ード レクトロ・ルミネッセンスを使った、巨大な投影板の上の、 スケッチと数式を、レーザー・ペンの光点でさししめしながら、淡 3 3
「この天体は地球と呼ばれているのか。ここをわれわれは『青の入ずだ」 江 ・幻・ 3 』と呼んでいる。遠いむかし、われわれの祖先がこの天アスカリはかれらに背を向けて、イグルー〈ともど 0 た。背後か 6 ら熱線の火矢がとんでくるのではないかと思ったが、そんなことも 体を訪れたことがあり、その呼び名が今でも伝わっているのだ」 よ、つこ 0 「それも伝えておこう [ イグルーの内部では部下たちが銃眼に顔をおしつけてひそひそと かれはほっとしたようにいくぶん体をちちめた。 ささやきあっていた。 「一つだけたずねたいことがある」 部下の一人が、入ってきたアスカリをふりあおいで首をかしげ 「なんだ ? 」 た。かれは以前、宇宙船の建造所の技術者だったことがある。 「われわれはこの『青の入江・幻・ 3 』へ二度探検隊をよこした。 こうし 「哨兵長、あの宇宙船は省型単格子反射タイ。フという型式で、二 ところが二度ともその結果が異なってしまった。最初は、生物とい えばただ白い花をつけた植物だけしか存在していない草原。二度目千年ほど前に大量に造られた太陽系外宇宙船ではないかと思われま は、荒れ果てた廃虚だった。い 0 たいそのどちらがこの『青の入江すが。今では太陽系内にはほとんど残「ていない旧式な構造のもの です」 ・幻・ 3 』の実体なのだ ? 」 「二千年前というと」 アスカリはしばらくたらてからうなずいた。 第三次統合戦争からもすでに遠く、疲弊した太陽系を見棄てて、 「それはおそらく防禦機構の幻覚効果ではないかな」 多くの人々を乗せた幾つもの船団が、辺境のさらにむこうの宇宙の 「幻覚効果 ? 」 「そう。太陽系外人類、といっても、今ではほとんどたがいに地球常闇へ去っていったあのころのことだ。 人類だという意識はないが、それだけに地球へ接近してくる宇宙船「それも報告しておこう , に対しては、まず自動防禦機構がはたらくようになっている。地球アスカリは電話機をとり上げた。部下の一人が息をはずませて、 の現実的なすがたはなるべく知られたくないからだろう。地球には手まわし発電機の ( ンドルをまわしていた。 もはや昔の面影はないからだ。人類にとっても他の高度な知能を持「哨兵長 ! 」 銃眼をのそいていた部下がさけんだ。 っ生命体にとっても、草原はなんの意味もなかろうではないか」 「やつらの一人がやってきます ! 」 「そうだろうか ? ま、それはそれとして、二度目のものは ? 」 アスカリはイグルーの外へ出た。かれらの一人が青い照明弾の光 アスカリは小さく笑った。 芒の中を、右に左に体をゆらめかせてこちらへやってくるのが見え 「それがこの地球の実状さ」 た。その姿を見たとき、アスカリの胸にはじめて強烈な恐怖がわい 「あれが ? 」 た。信じ難いものがそこにあった。葉のようなものを幾つもまと 「あなたがたにとっても、ここは決してすみよいところではないは