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検索対象: SFマガジン 1968年2月号
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1. SFマガジン 1968年2月号

耳にあてた貝は、恐ろしい減亡の 歌をいつまでも響かせていたーーー昔 は今、今は昔・ ・昔は今、今は昔と 引いては寄せ、寄せて かな風の音は何かを訴えるかのようだったのだ。 は引く。白い泡を噛む波。遙かなる故郷の海辺と 「なにが聞こえる ? 」 同じだ。わたしはその砂浜に落ちていた白い貝殻を拾いあけて耳に と、わたしの耳もとで声がした。だがわたしは黙っていた。ゆっ あてた。 くりと振り向いた目の前で老人はかすかに首を振った。 なみざい 聞こえてくるのはもとより波騒の音だけのはずだが、なぜかそこ 「わしはこわい : この星は、わしたちの昔なのか、それとも遠い うめ には悲しみに似た何かがあった。波の音は呻くようだったし、かす未来なのか ? 」 貝穀の歌カゞ聞える 矢野徹 画☆中島立靑イ尻 22 ー

2. SFマガジン 1968年2月号

故国への帰還を前にした今、わたしは砂浜に立っている。目の前 に引いては寄せ、寄せては引く波。 わたしは白い貝殻を耳にあてて、波と風の音に耳を澄ませた。わ れわれは人類が発生したと思われる起源の地を探がして二百五十年 という大旅行をつづけ、やっとこの星へやってきた。かれらもまた 起源の地を探がして旅立ったかも知れない。そして、ひょっとする と、起源の地としてアンタレス第三惑星を見つけたかも知れない。 わたしは波と風に慄然とさせる鞭のような音を聞いた。われわれが われわれ全員が今までに最大のショックを受け、沈黙の中に長い戻ったとき、故郷の町は存在しているのか ? この星と同じことに 時が過ぎてゆき、そして騒然となった。われらアンタレス地球人のなっていないとだれが言えるのだ ? 神話と全く同じだったのだー あの星とこの星をつなぐ糸の上をビンポン玉のように往復するの そしてまた、アンタレスへもどる日が近づいたころ、最後の決定が人類の宿命かも知れない。糸とは、リ = 工、輪廻。わ 打が見舞った。 たしは言語にも輪廻のあることを知った。 西経一三五・五度、北緯三四・七度にある「センリヤマ」という 貝殻から聞こえる音は、まるでタイム・マシンのうなる声のよう 古代遺跡が発見され、そこからまたタイム・カプセルが出てきたのだった。 だ。ここにはすべてのヤポン系言語の起源があり、そのあたりは大「昔は今、今は昔 : : : きみはぼく、ぼくはきみ : : : 昔は今、今は昔 と。 昔、日本と呼ばれ、この惑星における強国のひとつであることが分 かった。地理的には一握りほどのこの小国がそれほどの強国であっ 貝殻は恐ろしい減亡の歌を、いつまでも響かせていた。 たことからして、現在のアンタレス系においてャポン系言語が勢力 を占めている理由は分る。 だがわれわれが本当に驚いたのは、そのカプセルの中から出てき た古代人の記録に混じっていた「貝穀の歌が聞こえる , であった。 それは実に、われわれ自身のことだったのだ。 この発見は新しい恐怖、人類の持っ永遠の謎をふたたび投け与え こ 0 7 SF マガジン用の美麗・堅牢な特製フ ァイルです . 簡単な操作で 6 冊ずつの スマートな合本にすることができます 価 130 円送料 40 円 229

3. SFマガジン 1968年2月号

もの、知的生物のしわざだと考えることだろうー ると、想像力もすっかりお手あげみたいだ」 「宇宙計画の大きなっきあげ要素になるなーーえ ? 」 「こっちだって、はっきりした出発点があるわけじゃないさ。ミッ 「おっしやるとおり、宇宙計画の大きなっきあげ要素だねー クル・フェルからおりたあと、あの荒れ野で起ったことを別にすれ ばな」 ジョンがそれを本気では信じていないらしいのに、私は気づい た。短刀直入に質問を向けると、彼はこう答えた。 「まだあの記憶喪失がこれに関係あると思ってるのかい ? 」 「奇怪な状況に合うように作られた突飛な解釈だよ。だが、これ以「わからないんだ。一つだけ、わかっていることがある。あの十三 あざ 外を考えようとすると、もっと気違いざたになる。要するに、自分時間の空白と、背中にむかしあった斑について思いあたる解釈は、 がどんな立場に立って眺めるかという問題なんだ。今までなかったどれもこれも宇宙生物なんかよりずっとものすごいものだというこ ような出来事が起ると、たいていの科学者はもっとも抵抗の少ない とさ。われわれの持っている概念が、とんでもない方向に迷いこん でしまう危険を感じる」 思考の筋道を辿る。先入観の訂正のもっとも少ない解釈を認める。 ・ほくが今やっているのも、それさ , 「つまり、どんなふうに ? 」 「だが信じてはいないんだろう ? 」私はさらに押してみた。 「普通にあるを考えてみたまえ。その現状を分析してみよう。 「・ほくにとって、ある特定の解釈を信じるか信じないかは、感情とはほかの何にもまして、人間以外の生命形態について関心を示 いうよりも方法の問題の問題だよ。ぼくが感情的な人間だったら、す分野だろう。地球に現在ある生命形態は、もちろん博物学とか動 今きみに話した考えにたぶん全面的に賛成しているね。だが、ぼく物学の領分なので、は空想上の生命形態を扱おうとする。とこ はいつもこういうふうに考える。ある物事がこちらの予想通りに展ろがを読むと、そこにあるものは何た ? 人間以外のなにもの 開したら、もっとも抵抗の少ない筋道に沿って考えをすすめる。こでもないじゃないか。に登場する生物の脳みそは、本質的には こまでは、みんなと同じだ。だが、推論が大きく狂うようだった人間の、のなんだ。そんな脳みそを大きなトカゲのなかに放りこ ら、おかしい点をこう説明する。そもそも発想が正しくなかったんむ。そしていっちょう出来あがりだ。また、トカゲみたいな恰 だと。つぎはぎ仕事はやらないよ、今までの立場をすこしだけ変え好に関心がないときには、ただ人間そっくりの生物のなかに人間の ヒューマノイド ヒューマノイド てすませるようなことはね。ぼくは網をひろげる、できるだけ広げ脳みそを入れて、類人生物と呼ぶ。話を進ませるために、類人生物 るようにする・ は普通、人間より知能が高く、工学技術もより優れていることにな そのころには、ー , 私の目も暗闇になれた。私たちはさっきよりずつ っている。さて筋書きはとみれば、わが愛すべき優秀なる人間種族 と確かな足どりで広い草地を進んでいた。 が、外敵の脅威をいかにまぬがれたかだ。つまるところ、インディ 「あまりしつつこくききたくないんだが、その網というのはどんな . アン対カウボーイの新版だな。 ここから、すこし話はまじめになる。こういう単純な考えが 恰好なんた ? 他の世界の生物以上に常識はずれで奇妙なこととな 303

4. SFマガジン 1968年2月号

別あるには違いないが、どこへ行きつくというものでもなかった。 ョンに警察のことを話した。そして彼の同意を得ると、半マイルほ とっぜん私の注意は、近づいてくる足音にひきつけられた。私はど戻ったところにある公衆電話に車を走らせた。私は九九九番を回 寝袋を脱けだすと、マッチ箱を見つけ、料理用ストーブの上につるし、当直の巡査に、ジョンが現れたこと、一時的な健忘症にかかっ されている小さなガス・ランプに明りをともそうとした。まだもそたらしいが今は回復していることを告げた。トレイラーに戻ったと もそやっているとき、ドアがあいた。やっと明りがっき、人影はジきには、ジョンはぐっすりと眠っていた。 ョンだとわかった。 , 彼の顔と私のとのあいだは、一フィートも離れ翌朝の出発は、非常に遅れた。今いった理由もあるが、もう一つ ていなかった。最初の晩にすでに気がついていた、あのすこし心配には、昨夜の警部がまたたずねてきたからである。北部への旅を再 げな表情は、今はもっと目立ちはじめている。 開したときには、陽は中天にあった。ジョンと警部とのあいだにど 「どこにいってたんだ ? 」と私はきいた。 んな話がかわされたか、私は知らない。二人はいっしょに散歩に出 彼はトレイラーにはいり、寝台にどしんとすわると、ブーツの紐かけ、一時間ほどして戻った。その一時間を、私はトレイラーを掃 をほどきはじめた。 除してつぶした。いずれにしても警部は満足したらしく、私たちの 「わけがわからないんだ、。 ティック。本当に」 ほうもそれで充分だった。 私としては、もっと問いつめたい心境だった。だが、もしジョン私たちはグラスゴーの中心部を通り抜けた。ロック・ローモンド ロックは、スコット のいっていることが本当なら、もし彼にも説明がっかないのなら、 ) への道も、わりあい簡単に見つかった。できるも ランド地方の湖や潟 つつこむのは無意味なことである。おそらく一種の記憶喪失なのだのならグレンコーまで行こうというわけで、たくさんのキャンプ地 ろう。一時的に記憶を失うような体質がこれまで彼にあったのか、 を通り過した。クリアンラリックまでがいやに遠いように思った 私は知らない。だが少くともそれは、可能性のある解釈の一つだっ が、ティンドラムへの道も覚えていたよりやや長かった。やがて私 ムーアは、』ースなどの ) にさしかか 0 た。 た。あらかじめ何の訓練もしておかず激しい運動をしたのが、こんたちはラ / , ク・ムーア ( 茂る荒れ野を意味する な発作をひきおこしたのだろう。いずれにしても彼は無事であり、 明るいうちにグレンコーへ着こうと、私たちはあせっていた。ど いちばんの問題はそれで解決した。 をしいかはわかっていた。旧道にのりいれ、キングズハウス う行けま、 「腹はすいてるか ? 」 亭から二マイル行ったところにある新道との交差点まで辿り着くの 「ペこペこだ」 だ。そこに着いたときには、夕暮の最後の光も消えていた。トレイ 静かさと食物が今の彼には必要なような気がした。私自身、もう ラーを引っぱって、これ以上複雑な動きをするのは不可能だった。 一度の軽い食事に反対ではなかった。私は驚くばかりの精力を見せ旧道をすすむ以外に方法はない。ということは、ここから出るとき 5 8 てテーブルを支度した。数分後には、食欲をそそゑすばらしいにトレイラーが逆の方向を向いていることを意味する。二人でそれを 2 おいがトレイラーに充満した。ジョンは言葉少なに食べた。私はジ回さなければならないわけである。車がその奥にあるのも不都合だ

5. SFマガジン 1968年2月号

のためになるように、社会の悪を作り出している人間を殺す : : : こ なたには人を殺す能力があるのよ。犯罪者になることもなしに : ・ それを、社会正義のために使うのよ。世の中の不正のもとになってれは、立派な使命じゃないかしら。あなた、今の生活で満足 ? 今 いる人間をとり除くのよ」首にかかった手に、カが加わった。「わの世の中で満足 ? そうじゃないでしよう。どこか不公平だと思わ ない ? 何かがおかしいとは思わない ? その原因を突きとめて、 たし、協力するわ。津島さんのその使命に協力する」 相手に引き寄せられるまま、私は恵子の顔に顔を重ねた。吸い込みんなのしあわせのために、社会に有害な人間を倒すのよ」 「きみのいうことは、わかる . まれて行きながら : : : どこか金属の味のする接吻であった。 私はうなずいた。「だが : : : それはむつかしいことだよ。何が社 : かりにそれがわかっても、ぼくの超能力は、そう簡 会に有害か : 衰弱し、漂流していた毎日に、ふたたび光が射し込んで来た。 ほとんど毎日、仕事が終ると、ふたりはどこかの喫茶店で会っ単には動かないんじゃないかな。今までにだって、たった三回しか た。店は恵子の指定。巧妙なので決して他の社員に出くわすことが経験がないんだ」 「勉強して」 なかった。 腹の底へしみ込むと、アベック喫茶特有の灯溜りの中、恵 「秘密にしなければ」 と恵子はいう。 「ただでさえ噂がひどいんですもの。わたしたち子は澄んだ目を私に向けるのだった。「勉強して、何が本当に害に の仲が噂どおりの不真面目なもののような印象を与えることは、避なるのかを知って : : : 真実の怒りを向ければいいんじゃないかしら けなくちゃいけないわ」 ・ : ね、津島さん」魅力が歯とともに開く。「わたしね、実は、本 最初の日、恵子は一冊の本を持って来た。 当に尊敬できる人と結婚しようと、そう決心していたの。世間には いろいろ尊敬に値する人はいるけど、これほどの仕事をやりとげる 超能力の謎。 会社の仕事に関係のないそんな書物は、読もうという気になった津島さんにくらべたら、ものの数じゃないと思うわ」 「ほくに出来るだろうか」 こともなかった。 恵子が読めというので、私は読んだ。生物が発声器官や視覚や嗅「やって」 覚などの通信器官によらずに信号を遠隔伝達するというテレ。 ( シ恵子は私の手に手を載せ、「それがやれるかどうか・ : ー、にはじまって、予知とか念力とか透視とかのことが、漠然とししの返事」 た説明のしかたで書かれてあった。漠然とはしていたが、私が超能「プロポーズの ? 」 「そうよ」 力者のひとりだと恵子のいう意味は、理解できた。 抗し得ぬ微笑。「わたしも協力するって約東したでしよう ? 」 「その力を、有意義に使うのよ , 恵子はささやいた。「それも、私怨では不公正よ。本当に世の中 : ・が、わた

6. SFマガジン 1968年2月号

向から入 らしいですね。だから、 ()n の読者層とい ト松あと何がやりたい ? うのは、まだいくらでも開拓できるという っていく 筒井どうなるかわかりませんよ。 福島矢野さんのご発言がないな。この感じだな。 あいだ、いいたくていいたくてしようがな筒井・ほくは新劇関係の人とっきあいが いようなことを、飲んだときうけたまわっ多いんだけど、もっと新劇青年にいけるとれんです 思うな。 たけど。 矢野いやもうだめ。あとは墓場へ入る 、よね、日下武志 小松芝居の関係はいし 一のみ。功成り名遂げて死ぬだけだ。 ( 笑 ) なんか r-k 大好きだし。 舞伎で巐 福島それにしちゃ、まだだいぶ溜って眉村広報関係も多いよ。 ますな、お仕事が。七、八冊はかかえてい 筒井演劇雑誌に、強引に的戯曲ををやっ てもわか るんしゃない ? 載せるとか。 るかもし ~ 矢野それは福島さんだ。いま・ほくは何福島どうかな。 一もなし。 筒井小松さんなんか書けば載せるでしれない。 一福島うそっけ : : : ( 笑 ) 福島 石川このあいだ矢野さんと一カ月ぶり 福島いや、演劇畑全体のムードとしてそうだな、 に会ったら本を十冊くらい貰った。昨年では tn なんて見下けてるという感じじゃな元来 co 何冊くらいになったの。 いかな。今をときめくこの下司めという感みたいな のもある 矢野この暮で五十五、六冊かな。今年じで : 石川喬司氏 ( 左 ) 、眉村卓氏 筒井しかし、的な要素を持った戯ね。「鳴 だけだったら十冊ぐらい。 神ーとか : 石川このあいだ書店の人に聞いたん曲を書く人はだいぶいるんじゃない。 だけど、『火星のプリンセス』ね、あれ新 小劇場運動をやろう 石川今まで、活字と電波だけ使って らしく出したでしよう、Ø社で前に出してか。 (f) 小劇場というのをつくってさ。 をやって来たわけだけれど、直接観客に しいかもしれ 働きかけるかたちでやるのも、 ~ るのに。あのときあれはずいずん売れたか筒井いろいろ動きはあるんですよ。 ら、ま発見の会といって売りだしかけてる劇団ない。 ファンは ト松ロコミで宣伝するってわけだな。 があって、例の賞をとった今野とか瓜生と みんな買 かいった人たちがやってる。そこで、今度講談なんていうのもいしオ 福島だれか、『太陽と砂』は読んだ ? ってしま一度をやりたいといっているんですが ったのかね。ここで今までやったのが「ゴキプリの例の政府の五〇〇万円懸賞の。 と思って造り方 , だとか「一宿一飯ーだとか変った眉村ああ、あれ。半分読んで、もうい やになってやめた。 たら、まものでね。 福島全くひどいね。あれで五〇〇万円 だずいぶ眉村だからね、あるいは、テレビ・ド 方かすめとったんだからね。 ラマなんかに後おしするよりもそういう ん売れた 星新一氏 0 9

7. SFマガジン 1968年2月号

「この天体は地球と呼ばれているのか。ここをわれわれは『青の入ずだ」 江 ・幻・ 3 』と呼んでいる。遠いむかし、われわれの祖先がこの天アスカリはかれらに背を向けて、イグルー〈ともど 0 た。背後か 6 ら熱線の火矢がとんでくるのではないかと思ったが、そんなことも 体を訪れたことがあり、その呼び名が今でも伝わっているのだ」 よ、つこ 0 「それも伝えておこう [ イグルーの内部では部下たちが銃眼に顔をおしつけてひそひそと かれはほっとしたようにいくぶん体をちちめた。 ささやきあっていた。 「一つだけたずねたいことがある」 部下の一人が、入ってきたアスカリをふりあおいで首をかしげ 「なんだ ? 」 た。かれは以前、宇宙船の建造所の技術者だったことがある。 「われわれはこの『青の入江・幻・ 3 』へ二度探検隊をよこした。 こうし 「哨兵長、あの宇宙船は省型単格子反射タイ。フという型式で、二 ところが二度ともその結果が異なってしまった。最初は、生物とい えばただ白い花をつけた植物だけしか存在していない草原。二度目千年ほど前に大量に造られた太陽系外宇宙船ではないかと思われま は、荒れ果てた廃虚だった。い 0 たいそのどちらがこの『青の入江すが。今では太陽系内にはほとんど残「ていない旧式な構造のもの です」 ・幻・ 3 』の実体なのだ ? 」 「二千年前というと」 アスカリはしばらくたらてからうなずいた。 第三次統合戦争からもすでに遠く、疲弊した太陽系を見棄てて、 「それはおそらく防禦機構の幻覚効果ではないかな」 多くの人々を乗せた幾つもの船団が、辺境のさらにむこうの宇宙の 「幻覚効果 ? 」 「そう。太陽系外人類、といっても、今ではほとんどたがいに地球常闇へ去っていったあのころのことだ。 人類だという意識はないが、それだけに地球へ接近してくる宇宙船「それも報告しておこう , に対しては、まず自動防禦機構がはたらくようになっている。地球アスカリは電話機をとり上げた。部下の一人が息をはずませて、 の現実的なすがたはなるべく知られたくないからだろう。地球には手まわし発電機の ( ンドルをまわしていた。 もはや昔の面影はないからだ。人類にとっても他の高度な知能を持「哨兵長 ! 」 銃眼をのそいていた部下がさけんだ。 っ生命体にとっても、草原はなんの意味もなかろうではないか」 「やつらの一人がやってきます ! 」 「そうだろうか ? ま、それはそれとして、二度目のものは ? 」 アスカリはイグルーの外へ出た。かれらの一人が青い照明弾の光 アスカリは小さく笑った。 芒の中を、右に左に体をゆらめかせてこちらへやってくるのが見え 「それがこの地球の実状さ」 た。その姿を見たとき、アスカリの胸にはじめて強烈な恐怖がわい 「あれが ? 」 た。信じ難いものがそこにあった。葉のようなものを幾つもまと 「あなたがたにとっても、ここは決してすみよいところではないは

8. SFマガジン 1968年2月号

っていいんじゃないかな ト公は、 小松がっちり書けるのはどんな人たち 2 ますます隆盛で、 がいます。石森章太郎、浅野りじも書いて 氏そのために質的に 正低下しているとい 和って憂えていると手塚どこまでがマンガといえるか 井話を聞いたんだけが問題でね。 平ど、斎藤さん、ど 小松原作者ぬきで tn マンガ書ける人 さ。いろいろいえばきりがないけど、通俗 うですか。 斎藤 ( 守 ) 質的的常識的な意味でマンガの書ける人。 手塚石森章太郎のほかには桑田次郎か 低下だなんていわないよ。 星どこか侵略して取るか。 ( 笑 ) 。その な。あと、さいとう・たかをが : 眉村はじめから悪いですか。 斎藤 ( 守 ) いや、すこし変って来たんじほかイラストレーターとして、たとえば水 △怪獣プームとマンガ▽ やよ、 野良太郎みたいな人がいますよね。山田風 / し、刀 AJ ・ 眉村少し変って来た。どうにもならな太郎がだと思えば、白土三平もマ 福島今年は相当の怪獣プームだったけ ンガだし。 いところへ : ど、これは社会現象としていつまで続く 小松しかし山田風太郎や白土三平の場 小松こりやいかん、われわれは自己批 か。大伴さん、どうです。 と合は還元するところが洒落気であるとか怪 大伴さあ、そんなもの、あったんです判をしよう。三角帽子をかぶって : ころで福島さん、今まで日本人の書いた短奇であるとかだから、これは少し除外した か。知りませんよ。 ほうがいいんじゃないかな。あなただって 篇長篇の総数というのはわかりますか。 小松なにいってやがんだ。 ( 笑 ) 福島石原藤夫氏がリスト作ってますアトムが怪奇ものに還元されたらいやな気 大伴もう終っちゃったでしよう。 ( 笑 ) それよりも、海外のテレビや映画で作よ。毎年平均うちの場合は七 ~ 八〇篇、今持がするでしよう。 サル、ワ までの総計は五〇〇篇ぐらい、それに外側手塚そりやそうだけど。 品が非常にふえますよ。ュニ・ハ での生産を入れると七、八〇〇篇はあるん矢野マンガが問題になるのに、な ーナー、それに ()5 もフォックスもね。 ズを来じゃないかな。ショートショ それに新らしい会社が r-n のシリー ートは別としぜ子供の文学のほうのが問題にならん のか、それがわからんな。 てね。 年からやるという。 ト松それはやはり、活字ジャ】ナリズ 矢野怪獣が主人公でなくて出てくると 小松漫画というのは最近どうなの ム自身の中に含まれてる問題じゃないです いうのならいいでしよう。 手塚けつぎよくね、いわゆる漫画かね。だから、逆に、子供のほうがマ 福島「シービュー号」にも毎回のように 出てくる。ああ、ちょうど怪獣の話をして家が出ないんだ。マンガの分野での小松左ガジンを読もうとする。 京みたいな人が出てくればまたどっとつづ福島この前の図書新聞で、鳥越信が書 一いたら怪人が現われた。斎藤さんどうそ。 ステリ いてたんだけど、要するに彼は、ミ いて出てくるということで、ちょうど今 ( ここで斎藤守弘氏出席、つづいて豊田有 児童文学というのは成立しないが v-v 児童 日、マガジンが出発した頃の感じとい 一恒氏、石原藤夫氏出席 ) 氏 康

9. SFマガジン 1968年2月号

方からの大氷河が、にわかに視野いつばいにひろがった。人る 物れ 西の空のくらいさび色のタ映えが、大氷河の上縁をふしぎ 植ば , 呼 な紫色に染めていた。地平線の一方から一方へ、長く長く てとた つづくその氷の壁は、まるで一枚の長大な金属の板のよう て』っ 捨江立 に永遠の静けさと硬さをたたえて天と地をかぎっていた。 を入旅 その北の空から、時おり氷のようにつめたい風が雪をま郷のと 故青へ いて平原を吹きわたってきた。そのたびに風のぶつかるむ ゅ , の き出しの岩角は笛のようにするどく鳴った。その風はとき びは説 に谷の奥深く入ってきて、両側の高い岩壁から小石や岩片減間伝 をころがし落す。その乾いた音が、谷底でひときわ高いひ びきとなって終るまで、谷あいに住むものたちは浅い眠りからさめった。 て体をもたげては耳をかたむけるのだった。 こうして谷の出口に立って見る 今、頭上の空ははかりしれない暗黒の深みをたたえ、星さえまばと、平原の果てにつらなる大氷河は、日一日とこちらへ近づいてく らだった。 るのが見てとれるような気がした。しかし実際にはそれは百年間で 老シシはできるだけ体をちちめて表面積を小さくするとともに、 五十メートルも進むかどうかという早さにすぎなかった。鉄壁のよ 背中からっき出した葉状体ですっぽりと体をつつんで、深奥に浸み うなその大氷河が、大平原を呑みつくして、今、老シシの立ってい こむ寒さに耐えていた。葉状体の表面に密生しているやわらかい繊る台地の縁にまでたとりつくには、まだ長い長い年月がかかるだろ 毛が体温の発散をふせいでこころよかった。むかし、その葉状体の う。しかし、たとえどれだけ長い年月を要しようとも、結局は時間 本来の目的のために、頭上いつばいにさし上げて陽光を受けとめての問題にすぎないのだった。 いたときには、その表面の繊毛は翳となって光をさまたげ、老シシ この谷は三方からの氷河の攻撃にさらされていた。東と南は、そ たちはそれを遺伝学的な方法でとりのそくことを真剣に検討したもれぞれ二百キロメートルもはなれた所にある高山に源を発する帯状 のだった。老シシはそのころのことがむしようになっかしかった。 の氷河によって閉ざされ、その先端はすでにこの大平原深く進入し タイぎー 繊毛をとりのぞく方法はついに見あたらず、その失敗が今では部落ていた。とくに南からのものはこの谷間のはずれからひろがる針葉 の仲間たちにとって、保温のためのかけがえのない手だてとなって樹林をおしつぶし、徐々に谷のむこう側の入口に接近してきてい 5 た。東からの氷河の動きは左右にわかれて大きく谷を迂回し、平原 5 老シシは、もはやあのようなときは、二度とこないであろうと思の中央部を目ざしていた。これはさらに大規模な危険をはらんでい

10. SFマガジン 1968年2月号

ような感じだった。 ミツオは思わず、地球上および地球近儚空間の全電波望遠鏡の配 「おぼえてますよ , と彼はいった。「それで ? 置図をしめす、グラフィック・パネルの方をふりかえった。一つ一 「ほら、あの妙なじいさんのことーーー」 つの電波望遠鏡のむいている方角をしめす、矢印のマークは、つい 自分でも、 ミツオは、不自然なほど大きな声で笑い出した。 さっきまで、てんでんばらばらの方角をむいていたのに、今見る いっせいにある方角をさしはじめている。 その笑い方が不自然だということカ : 、はっきり意識されたが、どうと、 さそり座の見え しようもなかった。 ない半球にある矢印までが、ためらいがちに、そちらの方角をむこ 「いや、あの時はまったく傑作でしたね」とミツオは笑いに身をようとしている。 まったく、ちょ じりながらいった。「そういえば思い出した。 「ふだんは、それぞれの天文台が、自主的に電波望遠鏡を操作して いるはずだったね」と教授はいった。「もし、どれか一つが、それ いとした珍事件だった」 「しかしだな : ・ と教授は、頸筋をかきながらいった。「君は気らしい信号をキャッチした瞬間に、全部が自動的に連動しはじめ る。 だのに、なぜ、どの天文台でも、この時刻に、さそり座の にならなかったかね ? まったく・ハカげた話だがー・ーー」 どの天文台の責任者 「気にならなかったかって ? 」ミツオは、また毒々しい笑いを爆発方角に望遠鏡をむけはじめているんだ ? も、何となく、あのことが気になった証拠じゃないかね ? 」 しいかげんにしてくださいよ、教授。また、 させた。「そんな 今度はぼくをからかおうっていうんですか ? 」 ミツオは、何となくなま唾をのんで、標準時時計を見あげた。 「そういうつもりじゃないんだがーー今日、ここへよったのも、今あと、十数秒で、あの老人があらわれた時刻だ。ーー奇妙なこと どきになって、何となく、あのじいさんの言葉が気になってねーとに、今になって、あの会場に老人の登場した時刻を、自分がはっき 教授は、また時計を見た。「ぼくはーーーあのじいさんの現われた時りお・ほえていることに気がついた。あの老人の異様な風態と、きく ものを、あたたかい光のしぶきの中に包みこんでしまうような、朗 刻をお・ほえてる。もうじき、あの時から、きっちり九十日目だ」 : と彼は 「冗談じゃありませんよ、教授 : : : 」と、ミツオはなぜか自分が動朗たる音声が、あざやかに思い出されてきた。まさかー : そんな・ハ力なー 揺するのを感じながらいった。「いくらなんでもーーーあんな気ちが田 5 った。 いじいさんのいったことを : : : 」 標準時時計の針は、なめらかに動いて、十数秒はまたたく間にす 「ばかげてる、とは、私も思うよ」と教授よ、つこ。 。しナ「だけど、どぎ、そして何事もなく、さらに十秒がすぎようとしていた。 うにも気になって、どうしようもないんだ。それにーー・どうやら気 何事もなく : : : ふいに、またきちがいじみた笑いがこみあげ にしているのは、私だけじゃないようだ。でなきや、あれだけの数てきた。彼は笑いといっしょに、何か痛烈な冗談を、ロックフォー の電波天文台が、どれもこれも、みんなこの時間に、さそり座の方ル教授にぶつけようとした。 角をむくはずはないんじゃないかね ? だが、その時、突然強い黄色の閃光が、巨大なドームの中にかが 9 3