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検索対象: SFマガジン 1968年2月号
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1. SFマガジン 1968年2月号

北川幸比古 立されようとする新しい機運のひとっとみていいだろ 児童文学に関係したことなど、お退屈か、と思う。 児童文学よりも範囲をひろげて、児童文化一般という とむすんでいた。 ことにしても、ふつう、関心を持つのは、くみしやすい 上品な教養だと考えた若い女性か、ちょうど本を読む年あれから三年あまりたった。 頃のこどもを持った親たちか、まあ、そういうごく一部今年、盛光社は「 ~ 木来を予測する日本のヴ = ルヌ 代表作家川人の竸作 , とうたって、ジ、ニア川巻を の人だけである。関心のある人は例外だ。 しかし、この一文は児童文学に関係していると同時出した。矢野徹、光瀬龍、中尾明、福島正実、筒井康 に、に関係している。半ばは、おたいくつではない隆、眉村卓、豊田有恒、北川幸比古、内田庶、小松左京 はずである。もしまた、少年少女向きなどは関心がという顔ぶれである。 また同じ盛光社から「ロケットに怪獣におばけに : ・、いたしかたがないけれども、そ 無いといわれるならは の人はのすべてを語る資格を放棄したことになるの子どもの夢を大きくはぐくむ本格的創作童話」とい う低学年向きシリーズも出版された。今までに 9 巻。顔 ではないだろうか ? マガジン一九六一年八月号に氏が〈児童文学界ぶれは北川幸比古、寺村輝夫、佐藤さとる。古田足日、 石森章太郎、谷真介、福島正実、今江祥智、筒井康隆。 の新機運〉という一文を書いている。 一九五六年石泉社刊〈少年少女科学小説シリーズ〉を岩崎書店では中・高学年向き〈世界の名作〉 % 巻 かわきりに、講談社刊〈少年少女科学冒険全集〉、一九を大好評のうちに完結。さらに来年は創作もふくめて へ絵童話〉巻、ジュニア向き文庫巻を発刊 六〇年岩崎書店刊〈少年少女宇宙科学冒険小説集〉、一 また少年誌、学習誌でたえまなく大量にの 九六一年講談社刊〈少年少女世界科学名作全集〉とつづするといい、 せていた短篇の優秀作品アンソロジー 3 巻も進んで いた出版を紹介して、 「こうした少年むきの企画が、ほとんど切れずに続いるという。 いていることは、が児童文学の一ジャンルとして確業界の隆盛というべきである。 児 ) ( 文 ) ( と ) ー 57

2. SFマガジン 1968年2月号

も、次第に真剣な関心を示さざるを得なくなった。一流有力誌が競 Saucers の中で、それまでに集積した資料を丹念に分析し、 って特集記事を組み、写真を載せ、 >ßO 関係書がそくそく発刊さなるものの正体は結局次のいずれかだと主張した。 れ、中には年間ベストセラーの六位に食いこむものまで現われた。 ①ロケット、人工衛星、気球、飛行機など既知の人工飛翔体の誤 その多くは、国民の不安を代弁して、空軍や科学者のこの問題に対 認 する曖昧な態度を追求したものだった。そしてついには、国会の軍②流星、火球、惑星、特別な形の雲、稲妻などの誤認 事委員会に、空軍 ③幻日 ( 空中に浮かぶ微細な氷粒の層に陽光が反射して生する ) 、 長官が引っぱり出 気温逆転層 ( 暖かい空気の上に冷たい空気が重なっている層 ) されて議員に問い に地上の光 ( 車のヘッドライトなど ) が反射したものなど、特 軍れ 海さ つめられるほど、 殊な光の反射・屈折現象の誤認 国表 「 O の正体を 同公 ④網膜上の傷、ゴミなどが原因の錯覚 ので 突きとめろ」とい ⑤心理的原因による幻覚 中示 練指 う世論は高まって ⑥嘘偽の報告。写真などもすべてト 訓の でき ぎたのである。 とくに気温逆転層の反射現象は、わざわざ実験で確かめた上での 近き 独創的な主張である。 いったい O この種の説明の中で、 O の特異な行動を説明できる有力な説 一統る の正体は何だろう として最近とくに関係者の注目を浴びているのは、高名な科学雑誌 ダ大い かこれまでに提 ニ。て Aviation Week and Space Technology のエレクトロニクス関係 のれ 出された解釈は、 トもわ担当編集者フィリップ・クラスのいいだした 0 Ⅱプラズマ体説 のたい である。 大別して次の五つ ルれと ジら真 に分けられると思 プラズマ体とは、平たくいえば超高温の発光するイオンガス体 ラ撮写 プら で、自然には雷雨の際にしばしば発生する″球電みという形で知ら まず第一は、 町れている。球電現象は、最近にな 0 てその小規模なものを実験室内 幻船家 0 はまったくの 月測国で作ることに成功したため、実在を確認された現象だが、クラスが 2 観“ そこに着目したのは、たまたま前記のエクゼター事件の際、 0 誤解の産物ーーー幻 年学め 科たが目撃されたのがほとんどすべて高圧送電線の付近であったことに 覚、錯覚、誤認な 四のた 気づいたからという。 いし偽の報告が 「高圧線に沿って発生した荷電粒子を含むイオン化空気のコロナ放 る解釈である。も 電が、何かのはずみで電線から離れて動き出したものが、 0 の ちろん、これは現在多くの科学者がとっている見方で、その筆頭に正体だ。コロナ放電は、座埃や塩分、時には昆虫が電線に付着した あけられるのは、、 ート大学天文台長、天文学、宇宙物理学界際に発生する」とクラスは主張する。 5 2 の第一人者といわれるドナルド・メンゼル博士だろう。 0 現象に、心理的な側面からア。フローチを試みる学者もい メンゼルは一九六三年に著わした労作 The WorId of Flying る。意外に思われるかも知れないが、先年物故したスイスのカール

3. SFマガジン 1968年2月号

外であると同時に、的であるというよりは、考え 方に柔軟性がでてきた、ということの裏づけになり得 空飛ぶ円盤アンケート集計結果 ると思います。 ③の、円盤に関するより一層の研究ーー宀子問的研究 マガジン編集部 が必要かどうか、という事項についても、出た結果は やや意外でした。 必要七〇人 去る十一月、マガジン編集部では、 ( 未から整理すると、つぎの三つに集約されます。 不必要三五人 確認飛行物体俗に空飛ぶ円盤として知られているも ①円盤を目撃したか、しなかったか。 不明一五人 の ) に就いて考えるデータを集める目的で、著名人約 ②円盤の正体は何だと思うか。 と、「必要」と考えた人が全解答者中の五八・三パ 三〇〇人を対象に、アンケートを試みましたが、関係 ③円盤現象の学問的な研究は必要と思うか否か。 ーセントもいたからです。 各位のご協力によりその結果が出ましたのでここに発 ①については、当然のことながら、「目撃しない」 もっとも、これに関しては「必要」グループには圧 表します。 が一一〇通の絶対多数をかそえ、九一バーセント強。 倒的に文学・芸術関係が多く「不必要グループ」に科 まず、アンケートをお願いした対象は、大きくわけこれに、「目撃した」の中の不確実なものを含めると学者が多かったことからみても、データの読み方に慎 れば①文学、芸術関係②科学関係③芸能・スポーツ関九十五パーセントを越します。 重を要すると思われます。つまり「不必要」と答えた 係④その他の四部門になりますが、具体的に数字をあ ②についての答えは、種々さまざまでしたが、これ人のほうが、「必要」と答えた人よりも、より責任あ げれば、つぎのようになります。 を便宜上九項目に分類してみた結果はつぎの通りになる解答を出した、と見られるふしがあるからです。 ①文学・芸術関係一七二名 りました。 最後に、目撃したと答えられた十人の方々のお名前 ①自然現象の誤認三六名 ( 作家・文学者・外国文学者・評論家・画家・彫 と、目撃年月日、場所、宇宙人説に対する肯定、否定 刻家・カメラマンその他を含む ) ②宇宙人の乗物三四名 の態度を書いておきましよう。 ②科学関係 六一一名 ③未知の現象二七名 氏名目撃期日 場所宇宙人説 ( 科学者・技術者・科学評論家 o) ④人工物体の誤認二三名 に対して ③芸能・スポーツ六〇名 ⑤集団幻覚その他心理的現象二〇名 石森章太郎昭和三〇年頃不明肯定 ( 俳優・テレビタレント・一般芸能人その他 ) ⑥地球人の秘密兵器一二名 片岡義男不明 不明不明 ④その他 六名 ⑦虚偽 五名 黒沼健多数 多数肯定 ⑧タイムマシン 1 ー③のいずれにも属さないもの ) 四名 奈良 手塚治虫不明 不明 これに対して、いただいたご返事は ⑨不明 一七名 都筑道夫不明 東京不明 八七名 これらの数字は、いずれも、延人数で、一人で幾通 徳川夢声明治三三年頃東京肯定 十八名 りかを答えたものも、一名と数えてあります。 中岡俊哉昭和三一年頃 北京肯定 十三名 これを、宇宙人の乗物、未知の現象、タイムマシン 双葉十三郎昭和三三 ~ 四年東京肯定 ④二名 など、可能性をもたせて答えられた人と、その他の否 平野威馬雄昭和三四年 松戸肯定 の総計一二〇名で、回収率は約四割。こうしたアン定的見解をとった人とに分けてみると、四六対九六で 森田たま昭和二七年 鎌倉否定 ケートの回収率としては、かなり高い方で、したがっ約半分、さらに不明を後者に入ると考えれば、五六 ( 五〇音順・敬称略 ) て、集計された数字に対する信頼度も、一応標準以上六 / ・ハーセントが否定側にまわったことになります。 文書Ⅱ福島正実 と考えて、、でしよう。 しかし、一方、「宇宙人の乗物」と考える人が三四 つぎに、アンケートの内容ですが、これを質問の方人、全体の約一一〇パーセント弱もいたことは、やや意 2

4. SFマガジン 1968年2月号

た。全電子脳ネ , トワークーー地球をおおう巨大な " 大脳組織。とは、まだ = ーモアのセンスはありませんからねーー・・そのわれわれに 考え、蜘蛛の巣システムを、この " 地球脳。にとりつけられた、新したところがー・・・あの時会議場にいた三千人の人々が、やはり意識 しい知覚器官だと考えてください」ミツオはちょ 0 と舌をしめしの奥に、何か強烈な印象をやきつけられてはいたのです。ですか た。「そして、この " 大脳。は 1 ー、あの三カ月前の国際会議の、全ら、 0 , クフ・オール教授は、三カ月目には何となくおちつかない気 分で、センターに現われた。ほかの電波天文台の連中も、みんなそ 過程もやはり、記憶していたのです・ : うだったでしよう。この老人の堂々たる態度、朗々として、人を強 「すこしわかりかけてきた : ・ : ・」とロックフォール教授はうめい く魅了するような音声は、三千人の関係者の意識の底に、強い集団 「まだよくわからん : : ・・」とヤン博士は首をふ 0 た。「そのこと暗示をかけた。そのことが、また電子脳ネ , トワークに影響もした なによりも、重要なのは、おそらくその時、会議を でしようが が、どうして、電波のま・ほろしと関係がある ? 」 記録していた電子脳が、同時に強烈な暗示にかかってしまい、三カ 「いいですか ? ー、・・今の″地球脳〃は、昔の簡単なコン。ヒ = ーター とちがって、その大規模な集積効果によ 0 て、人間の大脳と、きわ月後、老人のいったあの時刻に、一種の後催眠現象を起してしまっ めてよく似た機能をもちはじめている、ということを考えてくださた、としか考えられません」 。無差別的にはい 0 てくる情報の重要性の等級判断もする、。 ( タ「信じられん : ・ : ・」ャン博士は首をふ 0 た。「この人はーー電子脳 ーン認識もやる、未解析問題の、一時棚上げなんて芸当もやってのに催眠術をかけたのか ? 」 ける。ーーー規模こそバカでかいが、人間脳にそっくりなはたらきを「彼ぐらいの、何というかーー・強烈な説得力、精神力をもっている この″地球脳〃はやりはじめているんです。ところでーーー人間の脳人間なら、そのくらいのことはできたでしよう」ミツオは、ちょっ ニイ・ガールに鼻毛を切ってもら の働きの中で、一つ、奇妙な現象があります。人間が本来、知覚しと老人をながめた。老人は、。 ( ー いながら、気持ちよさそうに眼をつぶっている。「″地球脳〃には、 ないものを、知覚したように感じたり、実際に起らなかったこと を、まざまざと見たりするのは、いったいどういう場合でしよう ? 」冗談やナンセンスについてのセンスがありませんからーーーおそら 「錯覚・ : : ・幻覚 : : ・・」ャン博士はつぶやいた。「いやーー・・わか 0 く、その記憶を消去しないで、未処理ということで、どこかに おそらく宇宙通信ーー・蜘蛛の巣計画に関係のある項目として、記録 た ! ・・ : : 催眠術だ ! 」 計画そのものに、電子脳はかなり動員 「その通りです」ミツオはうなずいた。「直接的な証拠はありませしておいたのでしよう。 ん。しかし、追試をや 0 てみたらー・・、き 0 とその可能性が立証されされたし、そこで計画に関係ある情報一切が、動員されるたびに、 この記憶もひつばり出されては、また棚上げされ、次第に表層ちか ると思います。あの国際会議の席上で、この老人が登場した時は、 われわれくに出ていたんでしようね。時刻が近づくにつれて、その記憶は、 われわれも一種異様な、そして強烈な印象をうけた。 はすぐあとで、それを笑いとばしてしま 0 た。しかし : ・ : ・電子脳に重みをましてきた、と考えられます。 " びくびく屋。が、計画され 9 4

5. SFマガジン 1968年2月号

クロニスタ 年代記作者ベルナール・ディアスは、マリンチェが生いたちなどを 口にしたがらなかったと記述している。彼女を奴隷の境遇におとし いれたアステカという国家を、憎悪していたからであろうか ? そ れとも、幼い彼女の手から母を奪ったと伝えられるアステカ貴族 に、復讐するためだったのであろうか ? いずれも推測の域をでな マリンチェは、歴史上、まったく謎の女なのである。 ただ、コルテスに従ってからのマリンチェの行動は、はっきり記 録されている。彼女は、アステカに関係のある人間、場所、風物な ど、すべてを憎悪していた。その激しさは、時にはコルテス以上で あった。コルテスの征服と殺戮の動機は、かならずしも憎悪からで コンキスタドーレス はない。新大陸の征服者たちを評価するとき、異常な金欲、物質欲 だけを動機と考えることは正しくない。 コルテスやインカを征服し た。ヒサロに共通していた動機は、異教徒をすべて邪教徒とみなし、 キリスト教こそ唯一の教えであるとする熱狂的な信念であった。そ れは、過去において領土の大半を回教徒の支配下におかれたことの ある、スペインという国の特異性が生んだ狂信である。 コルテスは、しばしばキリスト教徒特有の気まぐれから、敵将を 放免しようとしたりすることがあった。そういった気まぐれを押し しつもマリンチェのほ とどめ、残虐な方法で処刑してしまうのは、、 うであった。 それは、マリンチェの言動として記録されているものであるが、 マリンチェに扮しているロミナには、その言動をそのまま演ずるこ とによって、ある効果を期待していた。 タイム・トラベラー コルテスの死の謎、それには、時間旅行者が関係しているに違い ない。かれらは、歴史上の有名な人物を殺害して、歴史の流れを改 変して、未来へつづく進路を変えようとしているのである。 7 203

6. SFマガジン 1968年2月号

向から入 らしいですね。だから、 ()n の読者層とい ト松あと何がやりたい ? うのは、まだいくらでも開拓できるという っていく 筒井どうなるかわかりませんよ。 福島矢野さんのご発言がないな。この感じだな。 あいだ、いいたくていいたくてしようがな筒井・ほくは新劇関係の人とっきあいが いようなことを、飲んだときうけたまわっ多いんだけど、もっと新劇青年にいけるとれんです 思うな。 たけど。 矢野いやもうだめ。あとは墓場へ入る 、よね、日下武志 小松芝居の関係はいし 一のみ。功成り名遂げて死ぬだけだ。 ( 笑 ) なんか r-k 大好きだし。 舞伎で巐 福島それにしちゃ、まだだいぶ溜って眉村広報関係も多いよ。 ますな、お仕事が。七、八冊はかかえてい 筒井演劇雑誌に、強引に的戯曲ををやっ てもわか るんしゃない ? 載せるとか。 るかもし ~ 矢野それは福島さんだ。いま・ほくは何福島どうかな。 一もなし。 筒井小松さんなんか書けば載せるでしれない。 一福島うそっけ : : : ( 笑 ) 福島 石川このあいだ矢野さんと一カ月ぶり 福島いや、演劇畑全体のムードとしてそうだな、 に会ったら本を十冊くらい貰った。昨年では tn なんて見下けてるという感じじゃな元来 co 何冊くらいになったの。 いかな。今をときめくこの下司めという感みたいな のもある 矢野この暮で五十五、六冊かな。今年じで : 石川喬司氏 ( 左 ) 、眉村卓氏 筒井しかし、的な要素を持った戯ね。「鳴 だけだったら十冊ぐらい。 神ーとか : 石川このあいだ書店の人に聞いたん曲を書く人はだいぶいるんじゃない。 だけど、『火星のプリンセス』ね、あれ新 小劇場運動をやろう 石川今まで、活字と電波だけ使って らしく出したでしよう、Ø社で前に出してか。 (f) 小劇場というのをつくってさ。 をやって来たわけだけれど、直接観客に しいかもしれ 働きかけるかたちでやるのも、 ~ るのに。あのときあれはずいずん売れたか筒井いろいろ動きはあるんですよ。 ら、ま発見の会といって売りだしかけてる劇団ない。 ファンは ト松ロコミで宣伝するってわけだな。 があって、例の賞をとった今野とか瓜生と みんな買 かいった人たちがやってる。そこで、今度講談なんていうのもいしオ 福島だれか、『太陽と砂』は読んだ ? ってしま一度をやりたいといっているんですが ったのかね。ここで今までやったのが「ゴキプリの例の政府の五〇〇万円懸賞の。 と思って造り方 , だとか「一宿一飯ーだとか変った眉村ああ、あれ。半分読んで、もうい やになってやめた。 たら、まものでね。 福島全くひどいね。あれで五〇〇万円 だずいぶ眉村だからね、あるいは、テレビ・ド 方かすめとったんだからね。 ラマなんかに後おしするよりもそういう ん売れた 星新一氏 0 9

7. SFマガジン 1968年2月号

かしら」 ある日、知り合いの目を避けるため、郊外の書店をまわっての帰 冫いいだした。「もう一カ月以上にもなるの くらい喫茶店での奇態な討論で、恵子は主張した。「もっといろ途、恵子が予定のようこ んな本を読んで、真剣に考えましよう に、まだどうすれ。よ、 をししか判らないなんて : : : こうなればもう、直 もはや私たちにとって、なぜ私に超能力がそなわっているかとい観的に行動をおこすほかはないわ」 「行動を ? どういう行動を ? 」 うことは、関係がなかった。私たちはそれをいかに有効に社会のた 恵子の変化におどろき、しかし救われた気分で私は訊ねた。「教 めに使うかを考え、実行するのだ。 えてくれ。もうこんなことはごめんだ。何をすればいいのか、それ 私は新聞や雑誌を注意して読み、学校を卒業して以来開かなかっ た本に、また目を通しはじめた。ときにはお互いに学ぶところがあだけを教えてくれ」 ると考えた本を いつも恵子のほうが多かったがーー、突きあわ「あす、うちが新製品の発表会をやることは知 0 ているわね」恵子 はいった。「そこへうちのお得意様の幹部たちがみんな来るのも知 せ、読み耽った。それでも問題は複雑になるばかりだった。社会主 っているわね」 義や共産主義の本をメモし、無産党のパンフレットを集めてようや く手がかりをつかんだと思うと、恵子が民族主義や国家主義の本を知らないわけはなかった。 十数冊持ち込んで来た。整理がっかないうちに自然科学系統の書物「その幹部たちを倒すのよ。集まっているときに倒すの」 「しかし」 に見るべきものがあることを知った。哲学書はおろか、宗教関係の 膨大なストックが出来あがった。学校を出るまで〇 x 式かそれに準腑におちなかった。「それじゃ、前にきみがいったことと違うじ じる程度の勉強しかしなかった私には、消化しきれなかった。しきゃないか。かれらだけを倒したところで : : : 」 れなかったが、恵子の期待を裏切ることはできないので、あとから「もう選定はやめるのよーだしぬけに恵子は紅潮した。「片つばし あとからと詰め込んでいった。私に協力するつもりか、恵子はどのから手をつけていくほかはないわ。その手はじめよ 「なぜ ? な・せ、あすの発表会からはじめなければならないんだ 系統の書物にも問題点を発見し、その書物を弁護した。 堂々めぐりだった。 私は混乱した。 「そのお客のひとりにーー・」突然恵子はみごとに羞恥のしなを作っ しいえ、これは私怨だけどー 何が正しいのか、まったく判らなくなってきた。今まで単純に正た。「わたしを・ : すでに一カ月以上っきあって来た私にはいっさいが判った。恵子 邪を区別していた私がはずかしかった。何もかもがからみ合ってい ' るのだ。誰もかれもが真正の善人でもなく悪人でもないのだ。考えと何か関係を持った男がその中にいるのだ。 「ーーーすると」 れば考えるほど錯綜していくだけであった。 「わたしたち、袋小路に入ったのかしら」

8. SFマガジン 1968年2月号

もの、知的生物のしわざだと考えることだろうー ると、想像力もすっかりお手あげみたいだ」 「宇宙計画の大きなっきあげ要素になるなーーえ ? 」 「こっちだって、はっきりした出発点があるわけじゃないさ。ミッ 「おっしやるとおり、宇宙計画の大きなっきあげ要素だねー クル・フェルからおりたあと、あの荒れ野で起ったことを別にすれ ばな」 ジョンがそれを本気では信じていないらしいのに、私は気づい た。短刀直入に質問を向けると、彼はこう答えた。 「まだあの記憶喪失がこれに関係あると思ってるのかい ? 」 「奇怪な状況に合うように作られた突飛な解釈だよ。だが、これ以「わからないんだ。一つだけ、わかっていることがある。あの十三 あざ 外を考えようとすると、もっと気違いざたになる。要するに、自分時間の空白と、背中にむかしあった斑について思いあたる解釈は、 がどんな立場に立って眺めるかという問題なんだ。今までなかったどれもこれも宇宙生物なんかよりずっとものすごいものだというこ ような出来事が起ると、たいていの科学者はもっとも抵抗の少ない とさ。われわれの持っている概念が、とんでもない方向に迷いこん でしまう危険を感じる」 思考の筋道を辿る。先入観の訂正のもっとも少ない解釈を認める。 ・ほくが今やっているのも、それさ , 「つまり、どんなふうに ? 」 「だが信じてはいないんだろう ? 」私はさらに押してみた。 「普通にあるを考えてみたまえ。その現状を分析してみよう。 「・ほくにとって、ある特定の解釈を信じるか信じないかは、感情とはほかの何にもまして、人間以外の生命形態について関心を示 いうよりも方法の問題の問題だよ。ぼくが感情的な人間だったら、す分野だろう。地球に現在ある生命形態は、もちろん博物学とか動 今きみに話した考えにたぶん全面的に賛成しているね。だが、ぼく物学の領分なので、は空想上の生命形態を扱おうとする。とこ はいつもこういうふうに考える。ある物事がこちらの予想通りに展ろがを読むと、そこにあるものは何た ? 人間以外のなにもの 開したら、もっとも抵抗の少ない筋道に沿って考えをすすめる。こでもないじゃないか。に登場する生物の脳みそは、本質的には こまでは、みんなと同じだ。だが、推論が大きく狂うようだった人間の、のなんだ。そんな脳みそを大きなトカゲのなかに放りこ ら、おかしい点をこう説明する。そもそも発想が正しくなかったんむ。そしていっちょう出来あがりだ。また、トカゲみたいな恰 だと。つぎはぎ仕事はやらないよ、今までの立場をすこしだけ変え好に関心がないときには、ただ人間そっくりの生物のなかに人間の ヒューマノイド ヒューマノイド てすませるようなことはね。ぼくは網をひろげる、できるだけ広げ脳みそを入れて、類人生物と呼ぶ。話を進ませるために、類人生物 るようにする・ は普通、人間より知能が高く、工学技術もより優れていることにな そのころには、ー , 私の目も暗闇になれた。私たちはさっきよりずつ っている。さて筋書きはとみれば、わが愛すべき優秀なる人間種族 と確かな足どりで広い草地を進んでいた。 が、外敵の脅威をいかにまぬがれたかだ。つまるところ、インディ 「あまりしつつこくききたくないんだが、その網というのはどんな . アン対カウボーイの新版だな。 ここから、すこし話はまじめになる。こういう単純な考えが 恰好なんた ? 他の世界の生物以上に常識はずれで奇妙なこととな 303

9. SFマガジン 1968年2月号

「」人びとはそうさけんで、たちま ち店頭に列をつくる。 「」別の人たちは高慢ちきな顔をし て、ふふんとせせら笑い、その前を素通り していく。 を第一一文学と見る懐疑論者と批評家 のあいだに、論争がおこる。 そこで、この論争をもって紹介に代え る、と新聞は前おきして、ベストセラー (-D を語っていく : 批評家ーーーまだ名前もよく知られていな い作家の処女出版が〃ベストセラーズに はいった、というのはたいしたことだ。そ のわけを考える必要があろう。 懐疑論者「なに、わけもなにもあるもん か。ジャンルというよりも、″ソヴェト 文庫〃というタイトルのせいさ。ビレン キン著〃火星のなぎさなんて、なんの意 味もありやしない」 ビレンキンの短篇集が大当りしてい るのに、そのビレンキンが無関係だなん て、そりやちと君のいい過ぎだろう。しか し原則としては、もっともな点もある。 という言葉はたしかに読者に魔術 的に作用する。 「そこだよ。そういう作用がどれほど害毒 を流してるか。ワッと煽っておいて、読者 にイカモノをつかませるくらい、やさしい ことはない。それをまた出版社が利用する 気 んだから、やりきれないよ。太陽が消える といった種類の宇宙のスー。 ( ー恐怖、スー いや、君のま ーマン、それからまた : ・ えだが、の本質はシチくどく手のこん だそういうトリックにあるんじゃないカ 古いな、君の考えは。君だって、え らい学者や文学者を軽率な人間とは思わな いだろう。そういう人たちが近頃はよく をを読んでるんだぜーー・ブラッドベリ、レ ム、ストルガッキー兄弟などの作品には、 分別盛りの愛読者がたくさんいる。 だが、話をビレンキンにもどそう。この 本の成功にはもう一つ、出版社の信用もあ る。が若き親衛隊〃社はソヴェトの総 本山だからな。 「それなら〃火星のなぎさ〃はそこでどん な位置を占めるんだね ? 」 べつに目立つほどではないが、 し独自なものがある。この作者の最初の 短篇が雑誌にあらわれたのは、一九五八 年だ。 ところがその後の十年間に、の役割 と意義ははげしく一変した。今日では は思いっきの科学Ⅱ技術的仮説のうっとう しいくりかえしを採らない。は二十世 紀の真剣な哲学的、社会的、倫理的問題 に、ますます深入りしている。そこに成功 のカギがある。もちろん、大文学になるの

10. SFマガジン 1968年2月号

竜と水との関係は、アジアにおいてさらにはっきりしてくる。古 かんはっ 来旱魃になやまされることの多かったアジア大陸としては、もっと ものことである。雨を呼ぶ力をもつものとして、竜はインドではむ しろ信仰の対象であった。悪の具現としての性格は影がうすい。八 大竜王などは恵みの雨をもたらす神格であったが、その反面、民衆 の素朴な二元論は、嵐を起こして災害を加える悪竜をも考えていた。 勝手といえば勝手なものである。仏教の公式世界観にあっては、竜 は、四天王の一人で西方の守護者広目天の部下とされていた。 古代中国でも、竜の地位は高かった。麒麟、鳳凰、亀とならんで 四霊にくわえられ、古くから天子のシンボルであった。太古には御 る。これは明らかに民間信仰に発したモティーフで、恐の骨がそ心氏という官職があ 0 て瓰の世話をつかさど 0 たともされている のむかしシナで医薬の原料として尊重されたことと思いあわせるもちろんその信仰の根底には、やはり雨ごいがあ 0 たとみられる。 つまり、アジア大陸東部における竜のイメージは、オリエント以 と、興味深いものがある。 西のそれとはいささかちがうのである。東方の民は、人間以外の、 ここにあげた例はすべて、民族大移動時代に生まれた英雄叙事詩もしくは人間以上の力と戦うかわりに、協調しようとっとめたので あろうか。いわゆる民族性の差が、こんなところにも顔を出してい の産物だが、このほかにも、いま言及した民間信仰のものがある。 一一元論とかいうむずかしいものに関係なく、太古から単純な人びとるのであろうか ? これはなかなかおもしろい研究テーマといえよ が心に描いてきたイメージである。その多くが、洋の東西を問わ - す、水に関係することはふしぎである。たとえば、アル。フス山中の わが国ももちろん竜の話にとぼしくはない。古いところでは、古 湖には竜がすんでいて、そこに石を投けると、どんなに晴れていて とよたまひめ 石をぶつけられた竜が怒 0 てからだを事記に豊玉姫の伝説があゑ彼女は海神豊玉彦神の娘であ 0 たが、 もかならず雨になるという。 ひこほほでみのみこと 動かし、そのため水沫が生じて霧をつくり、それが凝固して雨とな山の神彦火火出見尊に嫁し、やがて陸〈来て子を産むことにな 0 ところが好奇 こ。ただし、夫は産屋を絶対にのそいてはならない るそうだ。 心は人間だけのものではなく、夫は思わすもタブーを犯してなか アメリカ・インディアンのある部族の神話によると、彼らはかっ て地底に住んでいたが、巨竜のひき起こした大洪水のため、地表に 移らなくてはならなくなったそうである。 ・ 4 〈ハヤカワ・ノヴェルズ〉 明日起るかもしれない戦慄すべき物語′ カリプの監視 エド・マクベイン / 久良岐基一訳四五 0 円 冷酷な元海軍士官によって指揮された一団がフロ 現代の不 リダ・キーズを急襲し、乗っ取ったー 安定な世界情勢を是正し、アメリカの威信を世界 に示そうとした超愛国者達を描くサスペンス小説