アイデア - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1968年3月号
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1. SFマガジン 1968年3月号

質問 3 「は現実を、世界と私たし、感じとるのに、ストルガッキー兄弟の 思いますか ? もしそうでなければ、 のちの社会の諸問題を、科学進歩の諸傾向を『神であることはむずかしい』がたいそう の本命はどこに ( アイデア、ストーリー おもしろさ、など ) あるとお考えですか」研究するのに、役立っと思いますか ? も役に立った、と私は断言することができ る」ミヌシンスクの地質探検家。 ここでもアイデアが優勢である。大なるしそうなら、具体的にどういう点で ? 」 ーマニズムのアイデア。とはいえ、こ イエスが圧倒的優勢。ノーは t-n を娯楽「 ()n はいちじるしく私の知識欲をひろけ 冫ーいかな手段とみるか、あるいは「役立たない、と時間と空間の問題、相対性理論、量子理 れを一つの傾向にまとめるわけこよ いうよりも、頭がおかしくなってしまいま論、新しい仮説、ミクロ世界、天文学など における達成を、もっと広く知りたいとい 「あれこれの社会現象、事件、技術的発す」 ( さきほどの師範女子学生 ) の類で、 ほかに同調者はいない。 う気持にかりたてた。他の諸条件のもとに 明、哲学的見解などが世の中にあらわれる 門題になんの関心 ことを、前もって予言するようなアイデ 「道徳的倫理的設計に役立つ。科学進歩にあったら、私はそういうロ たいする信念がかたまる。人間はけっしても寄せなかっただろう。への愛情 ア」これは二九歳の電気技術者。 「 r-n の価値はアイデアにあると思いまけものにはならないだろうーー・エフレーモそれは学問への愛情、世界認識への志向の フ、ストルガッキー兄弟、レム、・フラッド 第一歩であった」五七歳の機械技師。 す。どんなりつばな包装も、中味の代りに ヘリ、シェクリイはそう説得する。どんな 「ぼくにとっては、学校ではあたえられな はなりません」三一歳の地質学者。 いったん発生した理性生 「ぼくは芸術的価値がの本命だとは思条件においても、 いなにか新しいものにたいする興味です」 活は、けっして消えることはないだろう」 いません、正直いって」一六歳の生徒。 一六歳の生徒。 クラスノヤルスクの新聞記者。 しかし反対意見もある。 「いいを読むと、現代生活をも別の時 「に芸術的価値が不足していたら、ど 「は人間を観察者に、関心をもつ人代の人間として眺められるようになる。す ーあるいはアイ んなにおもしろいストーリ っそう強 に、探求家にする」三〇歳の電気工学技手。るといまの生活で悪いものは、い 「は世界の諸問題を考えさせ、日常のく神経を打ち、よぎものはいっそう強く喜 デアも台なしです」二八歳の無電技手 9 のおもしろさにひかれあくせくから離れて、自分と環境を別の方びをあたえる。だからたったいま読んだよ 「やはりストーリー 面から、たとえば、未来から、あるいは逆 うな、そうう 生活が早くくるように、戦 ますね。特にめでたしで終らないのは困り に過去から観察させ、そしてなにか新しい いたくなる」トリョフゴルクの二一歳の労 ます」二二歳の工業専門学校学生。 目で自分の現実を評価させる」二七歳の数働者。 別の面からの答でしめくくりをつけよ 学女教師。 「いろんな種類のとなじむにつれて、 「本命は人生、人生の諸法則の研究に もとづくその真実性にある。このことは「は好きだ。考えさせるがゆえに、好人生の諸現象を真剣にながめ、まわりに興 作品を読むと、私はいつもそれ味あるものを見出すことを教えられる。 の位置からの後退を意味しないが、絶対きだ。いい に該当する科学書をひらいて、その作品には理性の無限の可能性への信頼をよびお に血の気のないでっちあけのシチュエーシ ョンを、作品から減らすようにはなるだろとりあげられたアイデアと問題を、いっそこし、愚鈍で紋切型の思考から脱却させ うよく理解しようとっとめる」六一一歳の動る」三六歳の将校。 うー二一歳の学生。 「いいを読んだ後、きまって、なにか この学生がいちばん問題の急所を衝いてカ技師。 るようである。 、ことをしたい 、自分の国のため、さら 「ファシズムのような歴史の現象を理解 8

2. SFマガジン 1968年3月号

ろいろな人間が、ゾロゾロと立ちあがる。 に、凍てついた光があたりを照らしていた。 ぼくは、まわりを見まわした。とても広いところだ。ぼくは、透まるで、チンドン屋のコンクールみたいだった。ます、ぼくのと 明なプラスチックの箱のなかに寝ていた。縁起でもない。まるで棺なりにいた男は、色のついた羽毛の冠をかぶって、インディアンの 桶みたいなものに入れられている。ぼくのまわりには、同じような酋長みたいな格好をしていた。そのとなりの男は、中世の騎士みた いな格好をしている。そして、そのむこうの男は、頭にターンを プラスチックの棺桶がズラリとならんでいる。 まいて、槍をもっている。 「ここは、三〇二三年のテラボリス。ゾンダール星人迎撃のため、 ・ほくは、気がちがったんじゃないかと思った。気がちがえば、 cn 過去の人間を収容し、ただ今、蘇生中 , ーになったの ぼくの頭のなかで、へんな考えが浮かんできた。ゾンダール星マガジンの原稿を書かなくてすむ。もし、・ほくが。 ( ーにユなっ 人 ? マガジンに書くつもりのアイデアだろうか ? だが、そなら、女房は、マージャンどころじゃなくなる。毎日、 んなアイデアは考えても見なかった。ど、、 オししち、まだ一枚も原稿をた・ほくの相手をして、オママゴトをしなければならなくなる。 圭ロいてないのは、アイデアがまとまらないからだ。ところが、ゾン 「ハオ、オマエ、変ナ服キテル」 ダール星人に関して、・ほくは、いろいろなことを知っていた。 とっぜん、となりのインディアンが話しかけてきた。 ゾンダール星人というのは、銀河系の中心部にあたる核恒星系か「あんただって、変な格好してるさ , らやってきた地球外生命である。かれらの太陽が超新星となって爆。ほくは言いかえした。ぼくには、インディアン語は判らないし、 発してから、この珪素系節足動物は、第三渦状枝の局部恒星系に侵むこうには、日本語が判らないだろう。それでも、話しは、ちゃん 入し、定着すべき惑星を探しているのだった。そして、ゾンダールと通じた。 星人は、地球から八十四光年はなれた獅子座のアルフア・レグルー 「ワタシノ格好、変ナイ。アタリマエ、アル。ワタシ、アパッチノ ス系の惑星に基地をつくりあげたのである。 酋長ジェロニモアル ・ほくの頭のなかに、、 しろいろなデータが、スラスラと浮かんでき「えつ、ジェロニモだって ? ホントカイ、それは ? 「ア。ハッチ、嘘ッカナイ。白人、ミナ嘘ッキ。オマエ、白人チガ た。いったい、なぜ、・ほくが、こんなことを知っているのだろう。 本で読んだこともないし、誰かに教えられた覚えもない。まったくウ。ワレワレ友ダチ」 ジェロニモは、親愛の情をこめて、。ほくの肩をたたいた。ぼ 知らない間に、誰かが、そのゾンダール星人に関するデータを、ぼ くの頭のなかに、むりやり押しこんだみたいだった。 って、ダンプカーにぶつけられて、アパッチと友だちになるなん とっぜん、・ほくをとじこめていたプラスチックの蓋が、。 ( タンとて、思ってもみなかった 開いた。ぼくは、死人みたいに寝ているのに耐えきれなくなってい そのとき、ぼくたちの眼のまえに、二人の男が現われた。二人と たから、すぐ立ちあがった。・ほくのまわりの棺桶のなかからも、 も、肝心なところだけ、メタリックな布でおおっているだけの裸に

3. SFマガジン 1968年3月号

と思ったのだろう。 うか疑問なほどの、珍らしいチャンスだからだ。 あれから、また二年、・ほくは、なんとかマガジンにカム・ ( ッ ところが、星さんは、勝っても相変らず悠然として、とりたてて たいじん クできた。単行本も、四冊になった。 騒いだりしよ、。 大人の風格じゅうぶんである。 ぼくは、マガジンのアイデアを考えながら、コツ。へパンを噛しばらくして、小松さんが現われた。界の怪腕小松左京氏 は、顔なじみの編集者 e 嬢を同伴していた。 りつつ四畳半のアパートで原稿を書いていた時代の悪夢を、いつの まにか想いだしていた。 ぼくは、泡くって玄関にとびだした。ぼくの最後の頼みの綱が、 マ 1 ジャンの勝敗も気になってきたので、ぼくは、みんなのとこ小松さんだからである。小松さんといっしょに、のこと、文明 ろへ戻った。 論のことなど話しあっていると、とても参考になるし、そこからア イデアが生まれることもある。 、もう我慢できない。ポンです。ポンだよ。ポンしますよ , 筒井さんが、破れかぶれの声をだした。 小松さんの偉大な体は、ぼくにとっては、とっぜん具現したもう この人のマージャンは、まったくセオリー無視の戦法だから、わアイデアの神のごとく思えた。 きで見ていると楽しい。自分の手にほれこむと、まわりの情勢が判 だか、この日の小松さんは、論をまともに語りあえる状態で らなくなるナルシズムと、メチャメチャにさらして和了しようとすはなかった。赤い顔をして、ちょっと足もとがふらついている。 るスラブス・ティック精神。まるで、筒井のエッセンスを、マー 「あの、のあり方について : : : 」 ジャン台の上に移しかえたような、楽しいマージャンである。 「ダメだよ、それ捨てちゃ、ほら、こうすれば、ちゃんと立直にな ジャン たいじん それにひきかえ、星さんの雀風は、まったくの大人マージャンるだろう」 で、ポンされても悠々せまらず、自分のペースを崩さない。 ぼくが話しかけても、小松さんは、伊藤くんのコーチに夢中にな 「立直にするかな」 っている。 星さんが牌を横に倒した。うしろから見ている伊藤典夫が、騒ぎ「あののあり方ですが : アイネ・ナハト・イン・モンテカルロ はじめた。 「モンテカルロの一夜 : : : 」 「あれ、ツモっちゃったぞ」 小松さんは、歌いだした。懐しのドイツ映画はなやかなりし頃の 星さんは、まるで他人事みたいに、ふしぎそうな顔で、もってき主題歌である。 タオパイ サンアンコ たドラの七万を場にさらした。倒牌すると、手のうちに、三暗刻と博識多才な小松さんから、アイデアをせしめようとする、ぼくの チーマン スーアソコ ドラの七万が二枚あった。役満の四暗刻である。ぼくの家のルール最後の望みは断たれてしまった。 ダス・ギブト・スア・アインマル では、役満は五倍満貫としている。一般には、三倍としているが、 「ただ一度だけー 五倍くらいの価値がある。一年間マージャンをしても、できるかど 小松さんは、今度は、会議は踊るの主題歌にとりかかった。 リーチ ぐげん リーチ 9 5

4. SFマガジン 1968年3月号

「そこでじゃ、その三国人のベストロ強盗は、ア。 ( ートの古ぶとん「かまうもんかい。どうせ、今日は、小松さんと遊ぶんだ。いそい の下に、。 へストロを隠しとったのじゃ。わしや、無我夢中でやっとで帰ったって、気になって書けるもんかー ばかりに組みついた。すると、その三国人、女房は日本人で美人じ平井さんが、伊藤典夫に威勢をつける。 やったが、えーと、なんちゅう男だったか、金山でもない、金田で 小松さんが上京してくると、・ほくたちは、いつもホテルに集ま もない、えーと : : : 」 る。作家同士で、・ハカ話に興じあって、大声でわめきあう。 「金村でしよ」 基地反対などと正面きって騒ぎたてるからいけないので、いっそ アメリカの基 のこと、日本中の空地を基地として分譲したらいい。 女房が、うんざりした顔で、助け舟をだした。 「そうじゃ、そうじゃ、その金村が、五尺八寸はありそうな大男地のとなりが、ソ連の基地で、そのまた隣りが中共の基地というこ とになれば、核戦争がおこっても、日本だけは絶対に安全である。 で、わしや、こう振りまわされてのう : ・ 老刑事は、変テコなゼスチュアをまじえて、真顔で話をつづけという奇妙な論理を展開してみせたのは、博識多才な小松さん。 生命短かし、タスキに長しという、さつばり訳のわからない、そ る。女房は、笑いたいのを、じっと我慢している。あとできくと、 女房は、ぼくが帰ってくるまで、延々三時間も武勇伝をきかされてれでいてなんとなく楽しくなるような珍妙な警句を合成したのは、 ショートショートの第一人者星さん。 いたのだそうだ。 ぼくや平井さんは、もつばら腹の皮をよじって笑いころけるほう t.n マガジンのアイデアを考えなければいけないというのに、・ほ にまわる。 くも、老刑事の武勇伝をきかされる破目になった。話が前後してい / カ話で明けてしまうだろ て、整理されていないから、さつばり要領を得ない。三国人のベス今夜も、どうせ、いつものように、く う。マガジンのアイデアのことが気がかりだったが、ぼくも覚 トロ強盗の話をききおわったら、くらくなりはじめていた。 そこへ、平井和正から電話がかかってきた。われらの愛すべき小悟をきめた。 松左京さんが、ホテル・ニーオータニにとまっているから、夜に 「例のフレッド・ホイルの傑作、実によかったよ。原作もいいんだ なると呼びだしがかかってくる。それまで、伊藤典夫をよんで、マろうが、翻訳がすばらしかった。実に名訳だ、まったく名訳だ」 ジャンをしようという。 「ほんとですか ? 」 平井さんは、エイトマンそこのけのスビードでやってきた。伊藤伊藤典夫は目を輝かせた。 典夫は、それから三十分ばかり遅れてやってきた。 「そうともさ。あれを訳せるのは、あんたしかいないよ。それに、 「スキャナーの原稿が残ってるんですよ。あと本を二冊よまな話は別だが、ご馳走がつくってある」 いと、書けないんですから」 伊藤典夫は、名訳のべタホメとご馳走の両面作戦にひっかかっ 伊藤典夫は、しょぼくれた声をだした。 て、しぶしぶマージャンを承諾した。 7 5

5. SFマガジン 1968年3月号

ンの怨みがこもっているのだ。 筒井さんに電話すると、小松さん、星さん、矢野さんといっしょ しばらくして、電話がかかってきた。筒井康隆、星新一、矢野 5 に、少年雑誌の座談会に出席しているということだった。 そこで、筒井さんたちの連絡を待っことにして、足りないメイハ徹、大伴昌司の四氏である。今、ホテル・ニ = ーオータニにいる ーを、ぼくの女房でまにあわせることにした。 が、まもなく、・ほくの家へ向かうということである。小松左京氏 は、原稿料とりたての債権者会議で、つぶれかけた出版社を相手 うちの女房は、博打が大好きで、作家クラブの皆さんから、 まくさい ばくさい に、奮闘しているということだった。 博才ならぬ博妻という異名をちょうだいしている。 とにかく、ぼくたちは、マージャンをはじめた。・ほくは、とても四氏が見えたので、適当にメン。ハーを入れかえた。 ハンチャン ついていた。三半莊すっとトップだった。 女房は、伊藤典夫に約東のご馳走をたべさせるため、メン・ハーか ら抜けて、台所にたった。 平井さんは、鳴かず飛ばずで、僅かにプラスだった。この人は、 ・ほくは、 r.nræマガジンに書くアイデアを考えようと思って、メン マージャンをはじめてから、まだ十回目くらいである。その間に、 ターサンユアン ・ハーから抜けた。 大三元を二回も和了したのを初めとして、何度かプラスになってい トイトイホンイツ る。たいていの人は、覚えたての時期に、かならず対々や混一に凝金星に住んでいる砂漠ネズミという生物が、観光客にのまされた って、やたらに手を場にさらしたがるものである。だが、平井さんウイスキーのため、突然変異をおこして、人間に戦いを挑むという のマージャンは、あくまで平和リーチを主体にしたものである。よ話は、どうだろうか ? まてよ、まえに似たような話を書いた。い ビンフ く考えてみたら、平井和正の頭文字をとると、平和になる。平和のくら考えても、アイデアがまとまらない。ぼくは、以前、あるプロ ダクションに勤めていた頃のことを想いだした。そのちょっと前、 役が好きなのも当然である。 冗談。 よともかく、これだけの僅かなキャリャーで善戦しているの・ほくはマガジンに何度か書くことができ、ある大衆文芸誌から だから、この人は、ギャンプルの天才に違いない。 注文をもらって、有頂天になってした。作家として飛躍するチャン 今日の被害者は、もつばら伊藤典夫だった。 スだった。だが、その仕事を最後に、一年七カ月というもの、小説 ー・ハックを、ペラベラ読んでいたとと名のつくものは、なにひとっ書けないというスランプが、ばくを 中学時代から、のペー いう、かっての天才少年も、今年二十四才、あいにく中国語には、襲ってきた。 まったく弱いらしい。しかも、スキャナーの締切りが迫ってい そのあいだに、・ほくがしたことといえば、その。フロダクションで るので、おちおちマージャンもしていられないらしい。やたらに振っくっていた、テレビ・アニメーションのシナリオを書くことだけ りこんで負けてばかりいる。 だった。・ほくのところへやってきた眉村さんが、かれの短編がのつ ているマガジンを見せたとき、・ほくの眼から、口惜し涙がポロ スキャナーが、マガジンの読者の眠に触れるまでには、 このような悲劇が生まれている。あのコラムの紙面には、マージャポロでた。きっと眉村さんは、ぼくをはげましてを書かせよう ばくち ビンフ

6. SFマガジン 1968年3月号

る読者によって書かれた。それを統計表に ″若き親衛隊〃社のアンソロジイ『フ のせることはできない。大部分を「イエ アンタスチカ一九六六年』 ( 前号『ソ連 ス」あるいは「ノー」にまとめることはで の近況』参照 ) 第一巻と第二巻に読者世 きない。 もともと質問がイエス、ノーを当 論調査の結果が発表された。作家ウラ てにしていなかった。読者は大いに批判 ール・サフチェンコ ( 『プロクシマ目 し、提案し、新しいテーマについて論じて 指して』、 t-n 戯曲『新兵器』など ) はこ れを整理し、圧縮して月刊誌〈知識はカ〉 さて、はじめにもどって、質問 ( 現在発行部数七十万 ) の一九六七年八月 号に紹介した。以下はその概要である。 「あなたがでいちばん興味をもつのは か、人物か、科学 何でしよう。ストーリー 調査に応答をよせたのは一一二名。わず 的アイデアか、科学的問題か ? 」 か二十万足らずのアンソロジー部数を思え どれにも興味をもつが、さらにこれに叙 ば、これはかなりたのもしい反響といえ 情詩、ユーモア、風刺 ( 風刺であって、 る。まず、おしまいからはじめよう。 ロディではない ) をプラスすることが望ま 質問 8 しいという。しかし質問をまっすぐに受取 「あなたの年令、性、教育、 いちばん興味をもつのはアイデア 職業は ? 」 だ、とずばり答えた人もいる。「ストーリ 読者とはいったいどんな人か ? 最 ーのためばかりに提出されるのではないア 低は一三歳、最高は七二歳。いちばん多い イデア・ : 」これはウクライナ・の建設技 のは一五 ~ 二五歳で、五二名。 師。 教育ーー・準中等二一名、中等三八、準高性ーーー男八七、女二一一、不明三。 等一二、高等三八、不明三。 これはすべての男性を大いに悲しま「人間とそれに関係するあらゆる問題」と 言えたのはオレホウオ・ズエフ市の師範学 職業と社会的位置ーーーここにはないものせる関係といわなければならない。 こうしていま観客席の顔を思いうかべて校の女子学生。また三六歳のレントゲン科 はない。旋盤工、製鉄工、組立工、電工、 医師は「哲学的社会問題こその主目標 みよう。年令では″古典〃ジャンルよりい 機械工などの労働者。大学や高専の学生、 だと思う」といっている。 大学やエ専の先生。教師。軍人。技師。医くらか若い。ただし一〇〇 % 若いのではな 質問が予期するよりももっと深くつつこ 師。図書館員。物理学者。生物学者。経済くて、ほんのわずか若いだけである。もっ 学者。ジャーナリスト。ヒッジ飼い。言語 と正確にいうなら、観客席を構成するのんだ答をひき出したのは、チタの二〇歳に 学者 : : : そして消防士ひとり。まるでノアは、認識と実践において、アクチヴな年令なるヒッジ飼いの娘ーーー「別の視野から世 のはこ舟だ。特徴といえば、都市で働いて層である。教育水準はかなり高い。もちろ界をみて、おどろいて、そしてそのおどろ る人が優勢なことだが、それには、現在ん、ほかのジャンルの読者よりは、はるかきを人びとに伝えることができる、そう が田舎へまわるまでに途中でほとんどな に高い う別人の目で世界を見ること」 くなってしまう事情を考える必要がある。 質問 2 ーーー芸術的価値がの本命たと 応答の大部分は、内外のに通じてい ゾ連の 9 「世論調査、 9 9

7. SFマガジン 1968年3月号

技術的アイデア、未来科学の物語、異常な 需要がない電気アイロンを五十万近くも う。ほとんどすべての読者グループが、い 状況のなかでの人間の行動などをもとめてまの co の弱点として、未来社会の得心のこしらえたら、その工場はたいへんなスキ いる。文学者と人文科学系の学生はなによ く人間像の欠如をあけている。作者はそャンダルになるだろう。ところがここでは りもまず科学の発展の社会的影響に興味をこに読者にたいする義務を見なければなら需要がない本を五十万近く出しても、さし もち、その次にパラドクス性、つまり見馴 て問題にもならない ! れた事物にたいする意想外の見解をもとめ 部会は六〇〇〇の読者アンケートを研究何を望むか、という質問にたいするもっ ている。 した。応答を分析しているうちに、読者に とも典型的な答をまとめてみると、だいた い次のようになる。 普遍的な文学公式というものを固執するよる (-•og-k 評価の量的測定という問題が、し 「 ()n 作家はごじぶんの仕事にもうすこし 批評家などは、生けるはでっちあけ公せんに発生した。その本をよんだ読者の 真剣になっていただきたい。未来の社会と 式のワクにおさまるものではないという単数、肯定的評価の数、否定的評価の数 この三つの基本指標をもとにして、「読者未来の人間にもっと . 注目していただぎた 純な真理に、そろそろ気がついてもいいの 知覚係数 , といったものが算出された。こ 。もっとずっと大胆に、独自の考えを打 ではないか ちだしていただきたい」 の係数に応じて、表をつくってみた。 なにが読者をまんそくさせないか ? ここにも同じ意味の答はない。ただ読者 表がソヴェト作家の本からはじまったの これが読者一二五人の意見である。もち グループ七つのうちの三つが、第一に新しは心強かった。ストルガッキー兄弟の長篇ろんいろんなニュアンスはある。「まずは いアイデアの不足を指摘している。ところ 『神であることはむすかしい』である。工じめに駄作をたたきつぶせ」という人があ 「学問の視野をひろけるように」と注 が文学者だけは一般意見に賛成しない。 フレーモフの『アンドロメダ星雲』も高い の主な欠点は洗練された文学語、胆の太評論をえた。世に出て一〇年、りつばに時文する人があり、ときにはやや興奮して さ、鮮明な性格の不足にあるとみている。 の試練にたえたといえよう。ここでは作家「 x x なんかを出版するやつがあるか」と 読者の意見によれば、 r-n の前には三つ部会の意見と読者大衆の評価が一致してい食ってかかる人もある るのはおもしろい でも、そう手つとり早くいくものではな の緊急課題がある。まず第一に、すりへつ たスト 、。いまのところ、批評も出版もの分 ー丿ー運びのいたちごっこから飛び 一方にはまたジャーナリズムに大いにさ ださなければならない。統計が歌うことがわがれながら、全然低い係数しかえなかっ野ではいちじるしく主観的であり、むら気 できるとすれば、それはこう要求するだろた本もある。そこでこういう問題がおこるであって、読者の意見を耳に入れるふうは 。「新鮮さ ! 新鮮さ ! 筋肉の、脳の、 読者に歓迎されないような本を、なせない。部会は今後、社会学的研究の裏づけ があれば、そ ういう意見がとりあけられる 血液の新鮮さ、音楽と言葉の新鮮さー 大部数出版するのか ? ことを期待したいと思う。 次に、 co の純文学的「指数ーを高める ま ふしぎな状態が生じる。 ()n はない、 ことが非常に重大であることは、 いうまで 部会はまた批評においでも、読者の好み たはあり余っている。たとえば書店の もない。 まったく、くだらない屑があまり棚に『神であることはむすかしい』はなのシステマチックなそして客観的な研究の にも多すぎる。 必要ということが、したいに優勢になって ところがフランスの、フランス いくことを期待している。 第三に、新しい人間を提出すること カルザックの『宇宙のロビンソン・』 ( 四一 これはおそらく一番なすかしい課題だろ五〇〇〇部 ) は棚にねむりこけている。 、 0 ー 03

8. SFマガジン 1968年3月号

「ほほう、過去の英雄を未来に連れていって、宇宙人と戦わせるんそんなことはない。 この原稿は、マがジン三月号に載ることに ですね。ポール・アンダースンばりのアイデアで、おもしろいじゃ なっている。もし、この原稿を載せなければ、未来の歴史が変って ないですか」 しまうのだ。 福島さんは、こころよく OX してくれた。「作家クラブの面 この変テコな原稿は、なんだ ? マージャンを知らな / し / し 面が登場するのも結構ですが、それはそれとして、として、小 い人が読んだら、おもしろくないに決まっている。スペース・オペ 説として完成したものでなければいけませんよ」 ラアレルギーの女性ファンが読んだら、ヒステリーをおこす。歴史 くぎ さすがは、名編集者である。福島さんは、一本釘をさすこと忘が性に合わないという人は、きっと、怒りだす。タイム・トラ れよ、。 最近の・ほくは、初期のアイデアストーリイから脱皮して、 ベルがお気に召さないファンは、きっと怒鳴りちらすだろう。内容 新しいレ。ハ ートリイを作りだそうと、必死になっている。時間テー が、すこしふざけすぎていると文句をつけるファンも、でてくるだ マを扱った作品を、なるべく読みやすく、軽いタッチで書、て、 く。難しい話を難しく書くことは、・、 / 力でもできる。難かしい話を だから、人気力ウンターでは、ビリになるに決まっている。そう どうせ、ビリになるんだ。 いかに判りやすく書くかというのが、作家の腕の見せ所である。 だ、そうに違いない 読者のなかには、難解なもの即ち高度な内容を持ったものと錯覚 、 : まくは、三十 でも、それは、ぼくのせいじゃない。言っとくがを している人たちも少くない。 一世紀から持ちかえった、一九六八年三月号のマガジンに載っ 福島さんは、ともすればペダントリイ過剰になって、小説的完成た、ぼく自身の原稿のコピーを、ただ書きうっすだけなのだから : ・ 度にかける傾向のある、ぼくの筆のすべりを戒めたのだろう。 帰って、原稿を書くことにしよう。もっとも、書くといっても、 マガジン三月号の原稿は、あの三十一世紀で見せられている し、コビーも、もらってきてある。 ぼくは、ただ、そのコピーを原稿用紙に写せばいいのである。 や、どんなことがあっても、写さなければいけないのだ。この原稿 は、やがて三十一世紀に伝えられ、地球の運命を救うことになるの だから : しかし、こんなことでよいのだろうか ? これでは創作ではな こんな安易な気持でいてよいのだろうか ? もしかすると、こ れから書くーーいや、書き写す原稿は、ポツになるのでは : 7 7

9. SFマガジン 1968年3月号

「ばか野郎、気をつけろ ! 」 るだろう。 ダンプの運ちゃんは、大声でわめいてから、車を動かした。 ぼくは、盟主ゲルセンのところへ行った。「二十世紀に帰してく そうだ、ぼくは、三十一世紀から戻ってきたのだ。きっと、時空 ださい」 「いやいや遠慮なく、この時代に滞在してください。あなたは、今転移装置によって、もとの時間に送りかえされたのだ。 ・ほくは、うしろの車にフォーンを鳴らされていることに気づい 回の勝利の功労者なのですから・ : この未来人は、まだ、・ほくが遠慮していると思っている。べつにて、エンストしたエンジンをかけた。二本の排気管から、チューン ノイズ 謙譲の美徳を発揮しているわけじゃない。ほんとうに帰りたいだけアップしたぼくのグロリアのエキゾースト音が、ここちよく湧きあ なのである。 がってくる。 「ぼくは、まだ、マガジンの原稿を書いていません。・ほくが原ぼくは、おもいきり、アクセルを踏みこんで、車をスタートさせ 稿を書かないと、予言の書は、後世に伝えられなくなるんですよ」 「なんですと、予言の書は、まだ書かれていないと ? それは、困 る。あの書が、この時代に伝わらぬとなると、ゾンダール星人と戦渋谷の契茶店カーネギー・ホールに入ると、眉村卓氏が待ってい う方針がたたなくなるのですぞ」 いつも深刻な顔をしていた た。を連載していた時は、 盟主は、ほんとうにびつくりしたようだ。「方法は、ひとっしか が、さすがに肩の荷がおりたのだろう。とても機嫌がよかった。 ありません。・ほくを二十世紀のあの時間にもどして下さい」 「今度の上京は ? 」 「仕方がありませんな。ほかの過去人は、もともと天の世界では戦 「第二短篇集のリストを持ってきたんです。あれから短篇がたまり 死しているはずですが、あなたは違う。よろしい、お帰ししよう ましてね、七百枚ちかくあるんです。 0 が終って、ほっとし 未来人は、やっと承知した。 ましたよ。長篇を連載していると、やけに短篇のアイデアばかかり 浮かんできて、困るんです」 眉村さんは、嬉しそうである。きっと、連載を終って、短篇を書 けるのが、たのしくて仕方がないのだろう。とても仕事のすきな人 ぼくみたいな怠け者は、眉村さんを見習わなければいけない。 学習誌の編集者を待っているという眉村さんと別れて、ぼくは、 カーネギー・ホールをでた。 早川書房について、福島さんとあって、原稿の相談をする。 「こんちくしよう、どこに目をつけてるんだ ! 」 ぼくのすぐまえに、巨大なダンプカーが、急停止して、運転手が ー・ミラーが、あと十センチくらい どなっている。左側のフェンダ でダンプの前輪にぶつかるところだった。 「ここは、どこだ、いったい、どこなんだ」 6 7

10. SFマガジン 1968年3月号

「三月号の原稿は、いかがですか ? 」 そうなると、ぼくのレ。ハートリイで残っているのは、タイム物と マガジン編集部の森さんは、近くの喫茶店チョダで、ぼくに いうことになる。だが、この時間テーマというやつは、あまり書き 5 言った。 すぎると、だんだんパターンが似てくる。しかも、・ほくが書くタイ ム物に、ユーモアをいれると、ふざけているとか、読者を・ハ力にす 「それが、まだ、ぜんぜんアイデアが見つからなくて : : : 」 るななどという投書が、マガジン編集部に殺到し、人気力ウン 「しかし、締切りは、もうすぐですからね , 「えーと、タイム物で、こんなのは、どうでしよう ? 古代マヤ帝ターの順位が、最下位になる。 国に潜入したタイムパトロールが、まちがって自分で歴史を変えて締切りが、だんだん迫ってくる。書店のアンソロジーから、ぼ しまうというストーリイです。つまり、われわれの歴史そのものくの原稿が無断ではずされる。留守のあいだに、空巣がしのびこん タイム・トラベラ が、時間旅行者なしでは成立しなくなってしまうという、逆説の面で、女房の装身具いっさいを盗んでいく。車の車検が切れる。住民 税の督促がくる。住宅ローンの返済期限が近づく。となりの犬が咆 白さを狙いたいんですが : 「待ってくださいよ、そんなストーリイを前に書いたことがあるでえる。女房が泣きわめく。 しよう ? 」 最近ろくなことがない。 ・ほくは、家へ帰った。 森さんは、首をかしげながら、ぼくの説明をさえぎった。 「しかし、あの時は、アステカ帝国が舞台だったので、今度は、マ家では、北沢署の刑事が待っていた。 ャ帝国を舞台にしようと思って : : : 」 このあいだの空巣の捜査状況を、知らせにきたのである。 「いやあ、マヤだろうとアステカだろうとかまわないけど、アイデ事件があってから、捜査関係の係官が、入れかわり、立ちかわり アが似ているというのがちょっとこまりますね。ほかには、なにやってきた。はじめにやってきたのは、近くの交番の巡査で、それ か ? 」 から、いかにも駈けだしらしい若い刑事、空巣のべテランらしい主 「それじゃ、テレビのチャンネルに時空転位装置がしかけてあっ任刑事、そして、本庁の盗品故買専門の刑事という順序で、あとへ て、だまされた主人公が未来へつれていかれるという、タイム・チ いくにつれて、係官の格があがり、それに従って目付きが鋭くな る。 ャンネルの話は : : : 」 ぼくは、勢いこんで喋りはじめたが、森さんは、首をひねったま その話を平井和正にしたら、そのうち、警視総監がやってくるか ま黙りこんでしまった。そのうち、ぼくは、だんだん悲しくなってら、楽しみにしてろと冗談を言われた。残念ながら、警視総監は、 きた。 まだやってこない。 高校時代、・ほくの物理の点数は、十点法で三点だった。石原さん今日きたのは、まえに指紋をとっていった、北沢署の捜査係だっ の書くようなハ ードなは、とても書けそうもない。