ジャ呀クはヘスペロスに、遭難した宇宙船の位置をたずね、そこ瀕死の二人も助かって、めでたしめでたし。少年向ぎだから、この 2 程度の掘りさけでいいのだろうが、長篇の長さにするために、暗黒 へ連れて行ってくれと頼む。へス。ヘロスは宇宙船の位置を知ってい るらしいが、そこへ連れていけという頼みには、はっきりした返事星雲へつくまでに不必要に手間どるのが気になる。 しかしこれ以上、宇宙生物が人間的になると、ちょっといたたけ 力 / し へス。ヘロスは「天使」たちのあいだでは出来そこないで、 なくなる。 この暗黒星雲から追放されてきたところなのだ。だがジャックは、 五十年代のはしめごろまで大量にを生産していた・スプレ 自分が地球人の代表としてここへ来たこと、宇宙船の発見は地球人 イグ・ディ・キャンプに、『無頼の女王』 Rogue Queen ( 1951 ) と との友好関係を結ぶうえに重要な意味を持っていることをへスペロ ・ハウチャーが戦後 t-n いうかなり有名な長篇がある。アンソニ スに納得させる。これに対して、ヘスペロスは意外な交換条件を持 レイなんかまでべた・ほめ ベスト浦のなかに挙けており、ウィリー・ ちたす。地球へ連れて行ってほしいというのだ。承諾しないわけに しているので、どんな傑作だろうとわくわくしながら読みたしたの 〈スペロスは宇宙船に乗りうつり、それを破壊された宇宙船が漂だが : 地球人がオルマズドと名付けた地球型惑星に住む卵生哺乳類の、 っている暗黒星雲の中心へと誘導する。へスペロスが頑固に道案内 をしぶっていたわけは、そこへ行ってわか 0 た。暗黒星雲の中心部その一員であるイロ = ズという生物が、ヒロインになる。典型的ヒ ュ 、夜も見 ーマノイド。地球人との違いといえば、身長七フィート は、恒星が生れでる場所であり、それはまた「天使」たちの生誕の 地、彼らの聖域でもあ 0 たのだ。生れたばかりの無数の恒星のぎらえる猫目、モヒカン刈りにした頭髪、。ヒンク色の肌。しかし、いち ばん大きな違いは、彼らが蜜蜂と同しような社会を営んでいること ぎらした光を受けながら、宇宙船の残骸がその空域にうかんでお だ。つまり「女王蜂」のもとにセックスのない「働き蜂」の女 ( イ り、その周囲には、「天使」たちが舞い狂っていた。 ロエズもその一人 ) と、女王の配偶者となる以外に存在価値のない へスペロスの出現は当然彼らのあいだで問題になる。だがジャッ 「雄蜂」がいるわけである クの必死の努力に彼らも納得し、ランガーたちの捜索がはじまる 青銅器時代の最盛期をむかえたこの世界に、地球からの宇宙船が おりてきたところから、この物語ははしまる 二人ともひどい放射能障害を起して意識不明の状態になっている ニュースはすぐ女王の耳にはいり、イロエズを含む三人の使者が 医学の知識のないジャックにとっては、一一人を救う方法は、地球に 一刻も早く帰ることぐらいしか思いうかばない。彼は〈スペロスに派遣される。イ 0 = ズには懐古趣味があり、そのせいか「働き蜂」 宇宙船の = ンジンにな 0 てくれるように頼む。〈スペ 0 スの助けをのなかには友人は少ない。話相手にな 0 てくれるのは「雄蜂」のア ンティスだけである。「働き蜂」が「雄蜂」とデートするのよタブ 借りれば、宇宙船の最高速度以上の速さで地球に帰りつくことがで ーとされていたが、それを侵してまでも二人はあっている。ところ きるのだ。 がアンティスはささいなことから女王の不興をかい、イロエズが派 「天使ーたちが大挙して宇宙船に続いていることに気づいたのは、 遣される前日に逮捕されてしまう。そうなれば、数日後には死だ。 暗黒星雲を抜けだしたときたった : イロエズは暗たんとした気特で、空からおりてきた生物と会見す いうまでもなく、最後には「天使」たちとの表好関係が結はれ、
わせようとしても、びったりとは重ならないはずだ」 「勝手に弾いてすみません。誰もいなかったものですから」 私の頭のなかで考えがかたちをとりはじめた。「そんな複製をつ 「いやいや。こういうおそろしい状况にいてそんな音を聞くと、ほ くるには、たくさんの情報がいるわけだろう ? 」 っとするな」 家のなかにはいると、ジョンは足をとめた。「そのとおりさ、デ 「では、本当なんですか ? そのう、ヨーロッパのことは ? 」 ィッキー坊や。たくさんの情報がいる。赤外線ビームのことで前に 「どうやら聞違いないらしいよ。証拠があらゆる方面から舞いこん ・ほくがした話を覚えているだろう。とほうもない規模の通信が必要でいる。ラジオからも、入港する船からも。手のつけられないよう なんだ」 な混乱状態だ。船がはいってくると、どっち側も、乗 9 てるほうも 「複製に必要な通信か」 陸にいるほうも、気が狂ってるのは相手側だと思うんだからね」 ジョンはうなずくと、立ちぎきされるのをおそれるかのように、 「どうなさるつもりですか ? 囁き声でつけ加えた。「複製する必要があったんだ。どういうふう「それをこれから決めるんだよ。なんとかして結着をつけなければ いけない にやったかはわからない。だが少なくとも、なぜやったかはわかっ てきた。い くつもの違う世界を記憶して、それを寄せ集めて、奇妙「シンクレアは、この世界が現実だと考えています。フランスの兵 な新しい世界を作ったんだ。これから先、もっといろいろなことが士たちについては、確かですね。当時とすこしも違っているところ わかってくるぜ。これが終りじゃない 、カュ / し 「いちばん驚くべきことは、何かな ? 事実か、状況か、それとも 8 アレグロ・モルト・エ・コン・プリオ 私がおかれた立場か ? みんなすっかり変ってしまった , 「本当ですね。でも、いちばん気がかりなのは何ですか ? ー 家へ戻ったとたん、ジョンは将校の一人につかまえられた。前に 「そうだな、むかし聞いたことのある話に似ているね。ちょっと珍 ビアノを見つけていた私は、弾くチャンスがあるかもしれないと、 らしい、おもしろい話だよ。十九世紀にアメリカを横断した幌馬車 そこへ行ってみることにした。幸いビアノのある部屋には誰もい隊に起ったことだ。インディアンの攻撃があって、子供が二人だけ ず、私はドアをしめて、鍵盤を叩きはじめた。 ; 調子は最悪で、はじ助かった。両親も友だちも殺されてしまった。十二になる男の子と めの数分はひどいものだった。何を弾いたのか、はっきり覚えては三つの女の子だ。妹をキャリフォーニアに連れていく責任は、その インプロビゼ いない。断片をあっちこっちから持ってきては、たくさんの即興男の子だけにかかることになったが、どんなふうにしたのか、とに 演奏と混ぜあわせた。精神的にかなりまいっていた。私にとって、 かくやりとげたんだよ。依存的な生活から責任ある立場への百八十 これは緊張を解きほぐす最良の手段だった。 度の転回だ。この二十年間、われわれイギリス国民は、目的など何 誰かが部屋へはいってきたのに私は気づいた。首相だった。 もないみたいに動いてきた。世界状勢に影響を及にすようなこと
ば、死は確実である。もうここはシベリア、いちばん近い居住地ま で一千マイル以上もあるのだ。この大平野を徒歩で踏破するわけに ( いかない。それに、ひとたび事故にあえば、救われる望みがない ことぐらい、すぐにわかる。もし私たちに着陸が不可能なら、救助 の飛行機だって同じように着陸は不可能なのだ。しかし、何とかし なければならないとは、誰しもが感じていた。とにかく、下にある ものが何かは知る必要がある。もちろん基地に帰ることはできる。 そして、明日か、来週か、出なおすのだ。だが、そうしたとして も、事情が大して好転するようには思えなかった。 一つだけ有利なのは、風がほとんどないことだった。ということ は、望みさえすれば、なめらかな滑空で地表に近づけることを意味 する。オーストラリア人の。ハイロットは乗り気だった。「こいつに ぶつかってやろう」と彼はいった。「車輪が触れるまでおりるん だ。そうして、すぐにとびあがる。車輪にかかる水圧ショックで、 下がかたいかやわらかいかわかるはずだよ」 私たちは一千フィートまでおり、すぐまた五百フィートまでおり た。最後の数秒間は、永遠に思えるほど長かった。衝撃が思ってい たよりずっと強かったのは、パイロットが高さの判断を誤ったから だった。ふたたび上昇がはじまったときには、水圧システムを見る こともなく、誰もが、下にかたい地表があることを知っていた。 機首は、太陽の輝きを避けるために北に向いていた。機体を安定 させ、装置の点検を終えると、私たちはふたたび降下した。今度は 正常な着陸をした。ここでは、タラップを回してくれる人間はいな 何かハシゴが必要である。乗員は軽い金属製のものを出してき た。それなら硬さも充分で、機内に戻るのも簡単なので、ありがた かった。私たちは前部のハッチをあけ、ハシゴを出した。二分ばか ゞ島 : : まをトい の第ト“い 4 い 洋を第いみ kEIZO. 3
ためにいったわけではない。首相の興味が勝利にないことは、彼ら 9 アンダンテ・コン・モート も知っていた。重要なのは、満足できる和平条項の討議にうつるこ とであり、必要なのは、理性的に問題にのぞむ態度なのだ。むしろ それは、校長がいたずらっ子たちをいましめるのに似ていた。 私たちは戦場の上空を飛んだ。二万五千フィートのこの高さで 最初の探検飛行の二日後、私たちはその二回目を行なうことにな は、戦争の惨禍はとるに足らぬものだった。アメリカを飛び、また った。今度の目的は、地中海、近東、中東の状況を探ることだっ つい最近もアジアを飛んだ今では、地表のスケールはあまりにも小 た。・ハルカン諸国を経て、トルコ、アルメニアの上空を飛び、ベル さく見えた。これこそ悲劇というほかはない。地球全体から見れば シャにはいる。そしてパレスチナ、ギリシャ、イタリーの順に戻るかけらほどにしかあたらぬ土地に、多くの人命が失われたのだ。 のだ。あのガラスの大平原の南端がどこまで来ているか見届けるつ 一時間足らずで私たちはドイツ中央部に達し、さらにオーストリ もりだった。乗員、乗客は、前回と同じだった。 まで来 アⅡハンガリー と今では呼ばねばならないだろう タラップをの・ほる私の心境は複雑だった。頭のなかでは曲のアイ た。・ハルカン地方のめまぐるしい国の変化は、山ばかりの地形に災 デアががんがんと鳴りわたっている。だが一方では、地球のこの いされてよくわからなかった。ルーマニアの平地に出るころには、 新しい奇妙な地理に魅了されているので、旅をやめるわけにもいかすべてが変っていた。組織化された農耕の跡はすっかり消えた。 ないのだ。そしてまた、一九一七年の人びとが一九六六年の故国へ九一七年と別のまったく異質な時代との境界が、トランシル・ ( ニア 帰るとき、そこに発生するであろう心理的な問題にも、強い好奇心 ・アルプスのどこかにあることは明らかだった。 と当惑のまじりあったものを感じているのだった。二つの世界はど機は高度をさげた。そこは不毛の土地ではなかった。植物が豊か んなふうに協調していくだろうか ? 塹壕から帰還した三十才の男に生い繁っていた。統制もなければ秩序もない植物の世界だった。 が、一九六六年の世界で六十才の自分の息子に出会うとしたら、ど眼下に広がる森林や草原に、人間の手が触れた形跡はなかった。 んなことが起るだろう ? そしてもっとも奇妙な事態ーー一人の男黒海を越え、トルコの沿岸へ来た。船らしいものは、種類をとわ が、若い自分と年老いた自分の二人になって出会ったときには ? ず一隻も見えなかった。トルコでも話は同じで、野性の植物が人間 異様な、奇怪な疑問が、つぎつぎと頭にうかんでくる。これからは の活動や干渉を知らぬけに生長していた。 じまる旅が、一カ月前の安定した正気の世界からさらに私を遠ざけそのころには、私も地球の大きさを思い知 0 ていた。今まで知 0 てしまうことをそのとき教えられていたら、タラップの途中で目を ていた限られた地域と比べるとき、全体はどれほど大きいものか。 まわしていたかもしれない。真相がどれほど深いところにあるか、 はじめのうちその地域に起った変化は、途方もなく重要な意味を帯 まだ私は知らなかった。 びているように見えた。だがヨーロツ。 ( での時間のずれは、わすか円 に五十年、アメリカでも二百年にすぎない。地球の他の地域で、時
を、 しい添えておこう。 スウエルドロフスク、ロストフ川ドンどひまをもてあましてるわけでもないの っ 市、その他ソ連各地の出版社から発行されに、にはまったく目がない。したが しかしこの調査は大部分の読者の批判が て他の本を読む時間はいくらも残らない。 分別あり、権威と責任があって、ある種のる本にはさみこんでもらった。 やじ馬のいたずらがどのくらいあるかを 一〇年生 ( 高一 ) になると、この傾向は 批評のようなデマ的でないことを示してい いったん下火になるが、大学、高専、ある る。だから ()n は読者の意見に方向づけら調べるために、この表に存在しない作者の いは実務にすすむと、昨日の中学生はふた れる必要があると思う。 存在しない本を一冊書き入れておいた。 Z たびにもどってくる。そしてその熱度 調査の報告は二七歳の数学女教師の答の ・ヤーコプレフの『火星の長いたそがれ』。 は年とともに高くなっていく。労働者は七 一節をぬいてしめくくりとしたい すると応答を寄せた読者の一〇 % がこの 「本についてのアンケートに答えるのは、 本を「読み」、「とても気に入った」人が人に一人、学生は六人に一人、技術者は四 これがはじめてです。それは私が非常にあり、「とても気に入らなかった」人もあ人に一人、他のジャンルよりも tn を選 を愛し、それに心を托しているからなの った。ほんとに、人間の記憶ってたよりにぶ。 です」 ならないものです : 批評家のあいだには、において、 その代り部会は「当てになる基準」 「第二義的なもの」をいっさいすてて、 ◇ をえた。応答者の一五 % 以上が一つの本を「主要なもの」だけをぬき出すという傾向 アゼル・ハイジャン共和国はロシア共和国読んだ、という場合にかぎり、資料を信頼 が、いまなお根強く残っている。月並な批 やウクライナ共和国と肩をならべる王すべきものと認めた。 評の型があらわれるのはそのせいである。 部会はさらに判断をすすめた。読者が一 こんなぐあいに 国である。アリトフ、ジュラヴリョワ女 史、ウオイスクンスキーとルコディアノフ 致してある本に不満を表明したという場「は奔放な空想の文学」 二人組などの名前はひろく知られている。 合。この場合は、どこにこの評価の真実性「は上品な文学的記述による新しい技 の保証があるか ? 芸術の感受性がない人術的アイデア」 当然、アゼル・ハイジャン作家同盟には、ソ 「 cn はおもしろいこどもの読みもの」 連作家同盟におけるとおなじく、文学たちの手にその本が落ちたのかもしれない じゃないか ? そう考えて、部会は、読者 前頁の表をみなさい。そ ういう月並な評 部会があり、それが独特なやりかたで、 世論調査を行な 0 た。ソ連作家同盟機関の意見と比較するために、作家、評論価が読者のじ「さいの興味から、どんなに 紙Ⅱテラトウルナヤ・ガゼータは一九六七家、批評家、編集者、ジャーナリストたち遠くかけ離れているかがわかるだろう。 にもアンケートをおくることにした。 は多種多様である。読者の興味もま 年九月二十日号に、アゼル・ハイジャン作家 の読者層はずいぶん広い範囲にわた たそれだけ多種多様である。部会は「主要 同盟部会のその報告をのせている。 っている。だが、どんなに楽観しても、五な興味 . をぬき出そうとした。それはたく この調査にあたっては、まず現代の人に一人は他のジャンルよりもを好んさんの条件つきでのみ可能であろう。 諸傾向をじゅうぶんに代表すると考えられでいる、などとは考えられない。 たとえば、労働者グループ。「主要な興 ーである。だが いちばんが普及しているのは、九年味」は強烈なストー る内外の作品四〇本が選ばれた。かなり困 難な仕事だったが、やっとその一覧表がで生 ( 中学三年程度 ) の層である。ほとんどの尖鋭な筋を好むと答えたのはわずか四七 きた。この表を中央の出版社はじめ、ぶク 三人に一人がに熱中している。それほ名で、あとの人たちはにおいて新しい ー 02
いたのですが、最後になって強力な招致連けよりも文学性が高いであろうかつ中光公社』読みましたつあの中の「べムたち 動をかけた「ペイ・エリア」すなわちサンにはすばらにしいものもあるけれど、ほとの消えた夜」という作品、最高によかっ フランシスコ湾地区に三四一票対一一〇二票んどが〃で埋めつくされている感た。この作品に限らず、僕には筒井氏が作 2 0 で押しきられてしまいました。 ( 船戸さんがある。しかも安易で露骨な描写を伴なっ品の中で何を言おうとしているのか、よく 2 のトウキョウへの投票は「ロスーーー東京」たもの。すなわちなくして何の文学わからないことが多いのですが、ただ作品 への一票となったことと思います ) なおそそという状態である。大衆は表面ではそれの中からぼんやりとした筒井氏の″匂い〃 の後福島さんのおすすめで、七〇年大会のを求めているかの様であるが、しかし現代みたいなものが分かるのです。特に「ペム 招致を打診してみたのですが、船戸さんの人の空虚な心がそれで満たされるであろうたちの消えた夜」は、その〃匂い〃が鮮明 レポートにもあるとおり、ドイツのハイデか。そこでが登場してくる。私は必ずに分かるような気がします。そして僂はそ ルベルク市が英国のあと押しで、早くも積しもが将来文学の主流になるべきだとの〃匂い″が好きなのです。あ、そうそう 極的に運動を開始しており、こちらが頼みか、によってこそ大衆が救われるなどあの作品の中にこんな文章がありました にしていた Z ( 大ファン ) ・アッカというつもりではない。ただ現代の小説のね。「作家は日常生活においては、み ーマンもそれにひとロのっているありさま中に的発想、認識、つまり人間性、真んな堅実で、もっとも常識人であるという で、ちょっと実現はむずかしそうです。何理の追求、未来への希望などをもっと取り宣伝が、やっとマスコミに行きわたったば 一一月号、船戸牧子さんの『ナイコン 3 レ より問題になるのは言葉の障害で ( ドイツ入れるべきだと考える。その意味においてかりである」。ほんとうに、作家って ポート』がたいへん有意義でした。これま の招致運動は「米国からのお客に言葉の不はやはり将来重要な位置を占めるであ常識人なんですね。ところで、野末陳平著 でずっと日本の大会の枢要にあずかり 自由はさせない」ことを大きくうたってい ろう。現代社会の行きづまりを打開する一の『姓名判断』で〃筒井康隆″というのを ながら、本場の大会については手紙で断片 ます ) それを克服して外国からの客を満足つの鍵となると思う。世の文学者は、評論調・ヘてみましたら、オールガ四四となり、 的に知るか、スラングべったりのファンジ させるだけの実力を日本ファンダムが獲得家はの特殊な用語、背景に惑わされそのところにこう書いてありました。「こ ンを苦労して読むしかなく、しよっちゅう するまでは、まあ焦らずにじっくりやるほず、もっと内部の本質的なものを探り出すの数の持ち主は天才か気違いのどちらか 「これでいいんだろうか ? 」と試行錯誤をかはないでしよう。さいわいも目べきである。彼らには研究心がなさすぎで、いずれにしても常人は持たないほうが くりかえしていたので。 ( 六五年のロンド 標額をオー / ・、ーしたという知らせが来いてる。のファンダムもただ仲間同志のなよい」と、久野氏は筒井氏と全然違った作 ン大会〈ロンコン 2 〉だけは英国のファン ますので、今年の夏は、第二十六回世界大れあいに陥らず、もっと積極的に働きかけ風ですが、僕は久野を読むと、と の好意でレポートを送ってもらいましたが 会 ( 略称〈・ヘイコン〉・、 / ークレイ市が主会るべきであろう。ややもすると自分たちだいうものの質の高さを改めて認識します。 規模はわりと小さかったらしい ) 結局は 場となるみこみ ) に出席して、日本ファンけの殻に閉じこもり、社会を冷やかに見下六六年の夏季増刊号の「上流社会」は素晴 アチラの大会とのちがいも、スケールの差ダムのにつとめるとともに、大会招致す傾向がでてくるかもしれない。作家も難らしか「たし、六七年八月号の「溶暗」も よかったですね。一月号の「砂上の影」は と国民性の相異に帰するようで、その点もの基盤となるべきものをし 0 かり見さだめ解な理論を振りかざす前に、自己の作品の ちょっと落ちるけど。久野氏の作品はなぜ 現在の青少年ファンの活動ふりを見ているて来たいと思 0 ています。なお今後の発展意義、主張を考えるべきである。その後に と、近く克服できそうに思われます。ひと か〈人気力ウンター〉の上位に入らないけ のためにも愛好者の皆様のご協力とファン外部の肉づけをしたら、何らかの意義、感 ど、そんなことは気にしないで、あのしつ っ惜しかったのは、船戸さんが日本の大会ダム参加をお願いいたします。 動を読者に与えるはずである。内容がなけ とりとした、それでいて、痛烈な文明批判 にまだ一度も出ておられないため、比較し ( 東京都目黒区大岡一丁目 ればただ受動的なおもしろさしか生みだせ ( とはちょ 0 と = = アンスがちがうかな てのご感想がなくいまた日本のファンダム 一 0 ー一四柴野拓美 ) ない。とはい 0 てもそんなも必要でああ ) と、冷えびえとするような恐怖感を持 と接触がないための誤解もいくつか見られ ると思うのだが : : : 反論を期待する。 った、クールなを今からもどんどん書 たことで、たとえば「トーキヨー 二月号を読んた。新春放談では今 ( 福岡県大牟田市飯田町五一 き続けて下さい。筒井で精神分裂症に ジ」と紹介された写真も、じつは写ってい 日的状況におけるの意義、役割りにつ 月足康博 ) かかりそうになっては、久野 (J)ßでしっと る文字のとおり「 A<—+OX*O 」すいてあまり触れてなかったので一言述べた りと頭を冷やす。まあこんなところです なわちロサンゼルスと東京を結んでいっし いと思う。現在は文学の中において一僕は彼女と同じくらいが好き。文部 が、最後にやつばりØは〃オミャゲ屋″ ょに大会を開こうという〈パン・パシフィつのジャンル、しかも極めて低い位置に存省で危険な″愛国教育〃をやらないでも、で売られちゃますいと思います。 コン ( 汎太平洋大会 ) 〉のノミネーションするジャンルとしか評価されていない。と国産品のファンです。好きな作家は筒井康 ( 東京都町田市原町田 ・・ ( ッジです。この計画は、かなり進んでころで小説特に日本の小説は果してどれだ隆と久野四郎です。筒井氏の『ベトナム観 二ノ一ノ二 0 山村好男 )
チミン、ウラシルと呼ばれる五つの型があり、その組み 発熱体は、発熱線を繊維の中に織り込んだウィープヒ 生命体のうちでもっとも小さいのはビールス。この ー。これを鉄板などの建材にはさみ込む。織りもの合わせにより二種の核酸、 QZ< と XZ< ができる。 「ファイ 17 4 」も小型だが、れつきとしたビールス だから、どんなに広くても製造は簡単。外部に露出して 、は細胞の核に多く、 XZ< は細胞質に多く含まの本体だ、発見されてまた八年という新顔たが、構造が いないので、永久といっていいほど長持ちする。 れており、は遺伝のカギをにぎる染色体の重要成簡単なので、合成のモデルとして採用されたのたろう。 これに電線をつなぎ熱を出させるわけたが、発生した分だ。「ファイ X174 」は分子量一五〇万から二〇〇今度の成功は高等生命体の合成への第一歩といえる 熱が建材の全面に広がるので効率は極めて良好。これま万の小型のものだが、それでもこの中に遺伝子が六個ぐ人間は必須アミノ酸とビタミン、塩類から、 を生合成し、たんばく質を作り出しており、脂肪や糖 での暖房方式のような、ストープの近くだけ熱いといつらい含まれているという。このような複雑なを、 た片よりは、まったくない。 類を組み合わせて人体を形作っている。複雑な AZ< 、 現在、これで作った屋根鉄板が、北海道の一〇〇軒の XZ< を合成できるようになれば、人間合成も不可能と 家に取りつけられ、テストが行なわれているが、雪おろ はいえなくなるだろう。 だが、それよりも早く、遺伝のコントロール、ガン制 しはまったく必要がなくなったという。 マイホーム計画に頭を痛めておられる方も多かろう 圧など治療への応用が実現するに違いない。 が、しばらく待てばこうした発熱建材が、どっと出回る 遺伝はの配列によって行なわれる。配列を自由 ようになるかも知れませんよ。 に変えることができれば、遺伝による病気も、押えられ 機 1 るはずた。ガンは細胞の異常増殖によって大きくなり広 ◇生命の合成に成功 ( 米 ) がるが、これも細胞の中の Z < 、 Z をコントロー コ す ン 米スタンフォード大学の生化学者、アーサー ルすることによって、圧できるかも知れないのた。 コ ーグ、メーラン・グリアンの二人の博士が、活動力の 「私たちは十年以内に、動物や人間の遺伝子をコントロ ールして、特殊な生物学的変化を起こさせることができ びあるビールス遺伝子の人工合成に成功した。 これまで生命の人工創造の試みが何度もくり返されて ると考えている。ガン細胞を抑える人工、、 XZ< と きたが、これほど高度な実験に成功したのは初めてのこ 初をつくり出すことも可能だろう」 界 と。ガン制圧にも役立つのではないかと、世界の医学者 コーン・ハーグ、グリアン両博士はそう強調している す んの注目を集めている。 ◇迫ったコンコルドの初飛行 ( 英仏 し え両博士が明らかにしたところによると、合成したのは 成 世界最初の超高速旅客機、英仏協同製作の Z ( デオキシ・リ・ホ核酸 ) の一種。この合成 Z 完 コンコルド 0 01 号機が完成、二月二十八日に初飛行が さ は・ハクテリアを食物として、すでに二代にわたって自 行なわれることになった。コンコルド機はフランスのツ 力で増殖を続けている。 ールーズにあるシュド航空工場で、地上テストル受けて 「ファイ 17 4 」と呼ばれるこの単らせん Z が、 いるが、いまのところこれといった欠陥は無く、両国の 自己増殖をしているということは、間違いなく生命活動 の証拠といってよかろう。これまでも Z は合成され 技術陣はきわめて満足しているそうた。 テストは地上滑走ののち、離着陸をくり返し、その後 ているが、すべて自己増殖をしなかった。むすかしいこ とばでいえば、生物学的に非活性だったのである。 いったいどうやって合成したのか。外電をまとめてみよ高空での速度試験にはいるという。マッハ 2 ・ 2 、つま う。原料は大腸菌に寄生する、酵素、大腸菌をすり音速の二・二倍という超音速が出せるかどうかは、四 しかしこんど合成されたは生物学的に活性を持 基のジェットエンジンの調子ひとつにかかっているが っている。試験管内とはいうものの、生命を創造したと りつぶして作った液、それに化学薬品。 この方もなかなかの好成績たそうだ。 いって、決しておかしくはない。 これを摂氏二十五度ほどで混せ合わせ、反応させる 日本航空もこのコンコルドを購人することになってい 生物のからたを構成している物質のうち、もっとも大と、天然の、の形に、人工の Z ができる。天然 切なものは核酸だ。一この核酸は、ヌクレオチドという部のは、化学物質などを AZ< の形に配列させる鋳る。航続距離さえのばすことができれば、東京 ドン間を一 0 時間半で飛べるという。地球はますます狭 型の役目をし、酵素はこの配列を固めるセメントの役を 品が八〇個から一〇万個ほど結びついてできている。 くなる一方た。 果している ヌクレオチドには、アデニンやグアニン、シトニン、 8 9
技術的アイデア、未来科学の物語、異常な 需要がない電気アイロンを五十万近くも う。ほとんどすべての読者グループが、い 状況のなかでの人間の行動などをもとめてまの co の弱点として、未来社会の得心のこしらえたら、その工場はたいへんなスキ いる。文学者と人文科学系の学生はなによ く人間像の欠如をあけている。作者はそャンダルになるだろう。ところがここでは りもまず科学の発展の社会的影響に興味をこに読者にたいする義務を見なければなら需要がない本を五十万近く出しても、さし もち、その次にパラドクス性、つまり見馴 て問題にもならない ! れた事物にたいする意想外の見解をもとめ 部会は六〇〇〇の読者アンケートを研究何を望むか、という質問にたいするもっ ている。 した。応答を分析しているうちに、読者に とも典型的な答をまとめてみると、だいた い次のようになる。 普遍的な文学公式というものを固執するよる (-•og-k 評価の量的測定という問題が、し 「 ()n 作家はごじぶんの仕事にもうすこし 批評家などは、生けるはでっちあけ公せんに発生した。その本をよんだ読者の 真剣になっていただきたい。未来の社会と 式のワクにおさまるものではないという単数、肯定的評価の数、否定的評価の数 この三つの基本指標をもとにして、「読者未来の人間にもっと . 注目していただぎた 純な真理に、そろそろ気がついてもいいの 知覚係数 , といったものが算出された。こ 。もっとずっと大胆に、独自の考えを打 ではないか ちだしていただきたい」 の係数に応じて、表をつくってみた。 なにが読者をまんそくさせないか ? ここにも同じ意味の答はない。ただ読者 表がソヴェト作家の本からはじまったの これが読者一二五人の意見である。もち グループ七つのうちの三つが、第一に新しは心強かった。ストルガッキー兄弟の長篇ろんいろんなニュアンスはある。「まずは いアイデアの不足を指摘している。ところ 『神であることはむすかしい』である。工じめに駄作をたたきつぶせ」という人があ 「学問の視野をひろけるように」と注 が文学者だけは一般意見に賛成しない。 フレーモフの『アンドロメダ星雲』も高い の主な欠点は洗練された文学語、胆の太評論をえた。世に出て一〇年、りつばに時文する人があり、ときにはやや興奮して さ、鮮明な性格の不足にあるとみている。 の試練にたえたといえよう。ここでは作家「 x x なんかを出版するやつがあるか」と 読者の意見によれば、 r-n の前には三つ部会の意見と読者大衆の評価が一致してい食ってかかる人もある るのはおもしろい でも、そう手つとり早くいくものではな の緊急課題がある。まず第一に、すりへつ たスト 、。いまのところ、批評も出版もの分 ー丿ー運びのいたちごっこから飛び 一方にはまたジャーナリズムに大いにさ ださなければならない。統計が歌うことがわがれながら、全然低い係数しかえなかっ野ではいちじるしく主観的であり、むら気 できるとすれば、それはこう要求するだろた本もある。そこでこういう問題がおこるであって、読者の意見を耳に入れるふうは 。「新鮮さ ! 新鮮さ ! 筋肉の、脳の、 読者に歓迎されないような本を、なせない。部会は今後、社会学的研究の裏づけ があれば、そ ういう意見がとりあけられる 血液の新鮮さ、音楽と言葉の新鮮さー 大部数出版するのか ? ことを期待したいと思う。 次に、 co の純文学的「指数ーを高める ま ふしぎな状態が生じる。 ()n はない、 ことが非常に重大であることは、 いうまで 部会はまた批評においでも、読者の好み たはあり余っている。たとえば書店の もない。 まったく、くだらない屑があまり棚に『神であることはむすかしい』はなのシステマチックなそして客観的な研究の にも多すぎる。 必要ということが、したいに優勢になって ところがフランスの、フランス いくことを期待している。 第三に、新しい人間を提出すること カルザックの『宇宙のロビンソン・』 ( 四一 これはおそらく一番なすかしい課題だろ五〇〇〇部 ) は棚にねむりこけている。 、 0 ー 03
久しぶりにかなりのんびりした正月を過した。原稿に意義を積極的に認めないような人間は、過去の亡霊あっ生に平均八万五〇〇〇時間以上働いている勘定になる も見切りをつけて一切手を触れず、飲みすぎもせず、比かいにされかねない。い ゃなかには、遊ぶことこそ人間が、それを、半分の四万時間前後におさえる必要がある 較的よく眠り、昨年から積みあけておいた本の二、三冊本米のあり方であって、それゆえ人間はホモ・ルーデンわけだ。これは、一日六時間労働で週五日、一年の実働 も読み、昨年中のカナダ、アメリカ旅行の頃からの写真スと規定される、そうした自由な人間を認めないというを年四〇週、一生の労働期間を三十五年とみた場合、出 を整理し、スクラップをつくりーーー子供とも、少しは遊のは、古い意識、古い社会秩序、古いモラルに縛られててくる計算である。 んだ。 いるからにほかならないと、したり顔でいう連中までい これをみただけでは、現実とはほど遠いという印象は いなめないが、最近の各種の未来予測によれば、二〇年 そんなこんなで、数日をとりとめもなく過してしまつる始末だ。 だがぼくは、なにも、遊ふことを罪悪視し働くことをを出ずして日本がこの状況に達するだろうという点で たのだが、ふと気がつくとぼくは、このほんの僅かな は、おおむね意見が一致している。確かに、国民総生産 日向の溜り水みたいな休暇の時間を、すでに持てあ神聖視するような偏屈な考えを持っているのではない。 まして、結局はあまり効率の高いレジャーの使い方をし遊ぶことにより創造的なというより、より大きな満足をや個人所得の急テンポな向上などに現われるわが国の高 見出すことができるならば、もちろんばくは遊ぶことを度成長ぶりをみると、このような予測も、現実感をおび てはいなかったようである。 もちろん、もう少し計画的になれば、正月休み中、南選ぶにちがいない。要するに、社会参加をするにあたってくる。そのときは、当然、生活水準もたかまるし、住 宅、交通といった問題も、まず不快を感じない程度には 国の海を見たり雪山へ行ったり、いわゆる・ハカンス旅行て、どちらがより大きな満足をもたらしてくれるか 改善されているはずだ。 なども楽しめたかもしれないが、かりにそんなことをし レジャーが、ほんとうに問題になるのはこの頃のはず たところで、ふと襲ってくるレジャーの退屈を、有効に ーー 1 月 X 日 である。安定した生活、十分な余暇、困難な問題のすく 避けることはできそうもない。 要するに、遊び下手なの ない日常は、かえってその時代の人々を困惑させるだろ だろうか。 確かに、そのようである。たぶん気障なものいいに聞 つまり人々は、何か自ら創造的な仕事を求めないかぎ こえるだろうが、ぼくは働くことが好きである。そし り、目標をうしない、張りを失なって、毎日、退屈の魔 て、その逆に、遊ぶことは、嫌いではないにしても、ひ に襲われるようになりかねないのである。事実、多くの どく苦手だ。 周囲のみんなが、ごく当り前に楽しんでいる気晴しの 福島正実未来予測では、この時代に、ノイローゼや精神分裂症な どが激増し、大きな社会問題になるのではないか、とみ 類いーーマージャン、碁、将棋、ポーリングにゴルフ、 スキーにスケート、その他もろもろの娯楽やスポーツなそれが、ぼくの行動基準になっているにすぎない。つまている。 こうした落し穴から身を守る方法は、結局のところ、 ど、何ひとつやらないしできないし第一興味もない。そりは、気質の問題なのだ。 んなことをする余裕やスタミナがひねりだせれば、読ま その上、現在は、必ずしもレジャー時代ではない。山レジャーをいかに自分の人生にとって有意義な、充実し なければならないと思いながら積んでおいた本の一冊もや海に人が出、アミ = ーズメントに人が蝟集するからと た時間とするか、ということに帰するだろう。たとえ 消化したり、いつまでたっても整理のメドのつかないスし 、って、レジャー時代だとは限らない。勤労者のほとんば、いまからも推測されるものだけでいえば、各種のア クラップ類に、それでも少しでもアタックを試みたり、 どが、週四十五時間前後も働き、停年退職後もなお働かマチュア・スポーツ、音楽、芸術、日本的ないけ花、茶 この次か、あるいはいつの日かに書くだろう小説や、エなければならない現在の日本ーー輸送機関も住宅も、レ の湯の類いが、より一層重要な生活の部分を占めるよう ッセイや、コメントのための・ノートに手を入れてみたりベル以下の状態にある現在の日本には、ほんとうのレジになるだろう、ということだ。それらは、より一層大衆 するほうが、遙かに娯しいし : : : 第一、あの、ふと訪れャーなどない。あるのは、消費ムードに踊らされる擬似化することによって、今とはちがったものとなり、人類 るニヒルな「退屈」感から、退避していられるだけでもレジャーにすぎない。 文明のなかで新らしい意味をもちはじめるだろう。だ 儲けものだと思う。 ほんとうのレジャーは、やはり、労働の経済的な必要が、それだけで果して足りるかどうか : : : 何か、全く新 こうした性向は、たぶん、この世をあげてのレジャー度が、最低限いまの半分以下になったときでなければこらしいものが出てこないかぎり、レジャーは人を喰い荒 時代には、相応しからぬものであるのみか、遊ぶことのないだろう。少し具体的にいえば、いまの日本人は、一すおそれがあるのだ。 一三ロ 0 9
のに死刑になるのはいやだから、何とかして逃げようと思ったが、 んだ。「私を粗末に扱うと、火星と戦争になるそ」 「火星の大使だと」下士官はしばらく考えこんだ。「よし。それななかなかその隙がない。そのうちに、どうやら級か O 級らしい ら総統のところへ連行する」彼は憎にくしげに、にやりと笑って言きたない区域にやってきた。両側のドアはたいていどこかが破れ、 った。「総統は火星嫌いだから、どうせお前はエレベーター裂きの乱雑でせせこましい室内がまる見えである。ドアのない家もあっ た。中を覗くと七、八人が床にごろごろ寝そべってテレビを見てい 刑だ。さあ。早く服を着ろ」 る。 しかたなく、私は服を着はじめた。 「みんな、どうして働かないのだ」と、私は兵隊に訊ねた。 「くそっ。いい部屋だなあーと、兵隊がいった。 おとなしそうな顔をした方の兵隊が答えてくれた。「就職するの 「アダムスも捕まったのか」と、私は訊ねた。 「奴は逃げた。他の閣僚はぜんぶ捕えて、今朝がたアイロン・。フレは大変だ。生活必需品は工場地区の機械が自動的に作り出している ス刑に処せられたはずだ。今ごろはもうべしゃんこになって、巻かから、人間の労働力は必要ないんだ」 「お前たちは、姿をもてあましてクーデターをやったのか」 れているだろう」 死刑室を作るスペースもないらしくて、住宅難の地球にふさわし「だまれ」もうひとりが背後から、私の頭をぼかっと殴った。 殴られただけで鼻血が出てきた。 く死刑までなんとなくみみっちい 下士官は兵隊に命令した。「こいつを総統のところへ連行しろ。 しばらく行くと、廊下の床が壊れ、大きな穴があいていて、危 逃がさぬようにしろよ」 険と書いた立札を立ててあるところへやってきた。ちらと下を覗く 「はい」 と、数メートル下は階下の廊下だ。兵隊の油断を見すまし、ままよ とばかり私はその穴へとびこんだ。 兵隊のひとりが、服を着終った私の手首をぐいとっかんだ。 「そこをはなせ」私は腹を立てて、腕をふりはらおうとした。「下地球の重力に馴れる訓練は火星で受けてきていたのだが、突差の 郎め。汚ない手だ」 場合はどうしても以前の感覚で行動してしまう。火星だと、相当高 いところからとびおりても平気なのだが、ここでは駄目だった。い だが腕力では、火星育ちの人間は地球の人間にとてもかなわな 。火星の重力は小さいから、人間の背は伸びるが筋肉は発達しなやというほど腰骨を階下の床に打ちつけ、ぎゅっと呻いたまま、私 いのである。たちまち私は、万力のような腕で背後から胸を締めつは立ちあがれなくなってしまった。 「くそ。とびおりやがった」 けられ、動けなくなってしまった。 「さあ。おとなしくしろ。来い」 天井の穴からこちらを見おろし、兵隊たちがうろたえていた。 私は二人の兵隊に連行されて部屋を出た。 「度胸のある奴だ」 彼らは戦闘用の重装備をしているから、とびおりることができな 私たちはしばらく廊下を歩き続けた。何も悪いことをしていない 7 4