トとポルトの雨にな「て落ちてくるんだぜ」 0 ールマンはドルース枠で支柱がしてあった。それがだしぬけに、新しい砂と岩の壁で行 に合図をして、物置のドアをあけさせた。「ねんのためいっとくきどまりになっている。ジョンは人間たちがよこした手押車に、そ が、英雄ぶりたくなったら、そこの野郎のことを考えな」 れをシャベルですくい入れはじめた。 床の上のぐったりした人影に、コールマンは親指をしやくった。 手押車で四往復をすませて、五杯目にかかろうとしたとき、壁の よれよれの身なりをした、年格好もはっきりしない男だが、胸の上中からにゆっと手が出た。みどり色の金属でできたロポットの手 にきつく縛りつけられた黒い爆弾は、、 しやでも目につく。男は赤くだ。ジョンはヘッド . ライトの電力を上げて、その手を綿密に調べ 充血した目を・ほんやりとひらいて、ほとんどからになったウイスキた。まちがいない。関節の被覆や、親指の根もとのリべット・。 ( タ ーびんを口に近づけた。コールマンはドアを足蹴にして閉めた。 ーンから見ても答はひとつ。ヴェネックス・ロポットの切断された 「やつは・ ( ワリイで拾った風太郎だ。だが、ヴェネックス、おまえ手だ。 にとっちゃおんなじことだよな。やつは人間だ ロポットはどんすばやく、だがていねいに、ジョンはその手のうしろの砕石をか な人間も殺すことができねえ。あのずぶろくの胸の爆弾は、おまえきと 0 て、ロポ , トの残骸を掘りだした。胴体はひしやげ、動力回 のとおなじ周波数にしてある。おまえがおとなしくしねえと、やっ路はシ , ートし、電池の酸がむごたらしい脇腹の裂け目からジク の胸にでつかい穴があくんだぜ」 ジ = クこぼれている。細心の注意で、ジョンは首と胴のあいだにま コールマンのいうとおりだ 0 た。ジ , ンには、まちが 0 てもそんだつながった導線を切りはなし、みどりの頭を手押車にの 0 けた。 なまねはできない。むかし受けた心理訓練と、大脳ポックスに組みシャッターを開ききった目が、されこうべのようにジョンを見つめ こまれた九十二号回路が、人間を傷つけることを許さないのだ。こたが、そのうしろの真空管にはもういのちの輝きがない。 の人間たちがどんな目的でいるのか知らないが、とにかくジョンは いたんだ胸板のナイ、 、 / ーから泥をこそげとっているとき、ドルー 罠にかかった気持だった。 スがトンネルに下りてきて、ぎらぎらするライトをつきつけた。 ターポリ / コールマンが防水布をひっぺがすと、コンクリート の床にあいた「そんなガラクタをいじるのはよして、さっさと掘るんだーーーさも ぎざぎざな穴が現われた。ずっと地下まで通じているらしい。コー ねえと、そいつのようにあの世行きだぜ。今夜までに、・ とうしても ルマンはジョンを手まねきした。 トンネルを仕上げなきゃならねえんだ」 「このトンネルは十メートルまででき上 0 てる。そのさきは落盤ジ , ンは砂利とい 0 しょに、ばらばらの体を手押車にのせ、悲し だ。雨水排水管に突きぬけるまで岩と土をかき上げて、すんだら戻みにひたりながらトンネルを戻 0 た。死んだロポ , トを見るだけで ってこい。逃げたってむだだそ。警察にタレこんだりしやがったもつらいのに、一族のものときてはなおさらだ。しかし、そのロ、ポ ら、おまえもあのルンペンもおだぶつだぜーー・さあ、ゆきな」 ットには、どことはっきりいえないが、不審なところがあった。プ たて坑は最近掘られたものらしく、頭上の倉庫から持ってきた木レート・ナン・ ( ーが『 17 』にな 0 てるのなんかもおかしい。ジョ 0 2
警官は七五口径無反動拳銃をぬくと、ジョンの脇腹へ銃口を押しとびおりた運輯手は、人ごみをかきわけて近づいた。警官は大また でやってくる男に拳銃をむけた。 つけた。 「聞いたな、グリース缶め、この人は、おまえが重罪をおかしたと「おいダンナ、そこにいるのはおれのロポットだ・せ。たのむから、 ままで大声で言いがかり 穴なんかあけんでくれよ !. 運転手は、い 訴えておられるんだ。さあ、いっしょに署へこいーー・話をきこう」 「このでぶっちょは、世界一の大 警官は不安そうにぐるりと見まわし、ぎっしりと詰まった群集にをつけていた男にむきなおった。 道をあけさせようと、拳銃を振った。人びとは不満な呟きを立てなつきだ・せ。ロポットは、おれがトラックを駐車するのを、ここで 待ってたんだ。でぶっちょはおつむもわるいが、おめめもわるいら がら、しぶしぶ移動した。 ジョンの頭の中は、どうどうめぐりをはじめていた。どうしてこしいや。一部始終をおれは見てた。こいつは自分からロポットにぶ つかってったくせに、おまわりを呼びやがったのさ」 し学 / し この先はどうな んなことになってしまったのだろう ? るんだろう ? 真相はとても話せない。それをいうと、相手の男を相手の男もだまっていなかった。ゆでダコのような顔になって運 せんぜんか つき呼ばわりしたのとおなじことになってしまう。町では、こと転手に迫りよると、ぶきっちょに拳固をふりまわした。・ トラックの運転手はグロープのような手のひらを相 しになってもう六人のロ、ポットが、動力線つなぎのリンチにあってすりもしない。 いるのだ。いま、もしジョンが自分の弁護でもしようものなら、さ手の顔にあてがって、どすんと歩道にしりもちをつかせた。 っそく街路照明回路から枝線がとられて、黒焦げになった七人目の野次馬は、動力線つなぎもロポットも忘れて、どっと笑いこけ た。争いが二人の人間のものになってしまったいま、もとの原因は ロポットが、警察のモルグへ収容されることになるだろう。 あきらめの感情が、ジ , ンの全身にひろが「た。逃げみちはな置きざりにな「たか 0 こうだった。警官までが = ャ = ャ笑いながら 拳銃をしまって、ふたりの男を分けにかかった 。相手の男が告発を取りさげなければ、さしずめ重労働刑だが、 法廷にたどりつくまでのいのちは、とてもなさそうだ。新聞は反ロ運転手はジョンのほうをふりかえって、けんつくを食わせた。 おかげで予定がまるつぶれ 飛感情をあおり立てているし、人びとの罵り声や、険しい目つき「さっさとトラックに乗らねえか や、握りしめたこぶしにも、それははっきり現われていた。群集はだ。とんだゴミ・ ( ケツだよ、おめえは ! 」 そろそろ暴徒に変わりかけている。いまのところはまだ火がついて人びとの笑い声の中で、運転手はジョンを押し立てるようにして トラックへ乗せ、。ハタンとドアを閉めた。親指でぐいとスターター なし力、いっジョンにおそいかかってくるかしれないのだ。 こりゃあ : : : ? ・ を押し、ディーゼルをふかすと、交通流のなかへ車を乗りいれた。 「なんのまねだい、 ジョンはあごをしきりに動かしたが、言葉にならなかった。あか よくとおる声がひびいた。その声には人びとの注意をひきつける の他人のこの男がなぜ助けてくれたのだろう ? 感謝をどういって なにかがあった。 巨大な大陸横断トラックが、歩道のわきにとまっている。車から表わそう ? 人間の・せんぶがぜんぶ、ロポット嫌いでないことは、 ジャン・ハ 6
ちょっともったいない気がしますが 愛車のお手いれに《キャントン・カレー シ ン いま世界じゅうの若者をトリコにしている《キャントン》 のプノレージーン。まず、素材がちカぐいます。ソフトタッチ ですてきな色合い。洗えば洗うほど . 風格が出てきます。 本場仕立も魅力。愛車のお手いれは、《キントン》で かっこよくいきましよう。お求めは、全国のデノく一ト か一流洋品店で・ ー BM ー 9 7 5 ANTON RE 0 リ 5 PA ー 0 「「 このタッグが目印しです
さえ呼び出せば、ヴ = ネックス十七号の未知の友人が救助に駈けっ ムを渡り、隅のくぼみへ身をひそませた。脱出は不可能だ。時間を けてくれるかもしれない。しかし、こいつはとうていむりな話だ。稼ぐしか手はない。 「ミスター この建物でただひとつの電話は、コールマンのデスクにある。さっ ・コールマン、逃げたりしてすみませんでした」 き引込み線を調べて、それは確かめておいた ヴォリュームをいつばいにしたジョンの声は、雷鳴のように壁に こだました。下の人間たちが首をねじ曲げて、きよろきよろ音の源 そこまで考えたジョンは、自動的に頭上の電線を見上げた。プラ スチックのガスケットが壁にとりつけられ、そこから動力線と電話を探しているのが見える。 線が入っている。電話線 ! それだけあれば、けっこう通報できる「そこへ戻っても殺さないと約東してくだされば、あの仕事をやら じゃないか。 せていただきます。さっきは爆弾がこわかったんですが、こんどは すばやいスムーズな動きで、ジョンは手を上に伸ばし、電話線の鉄砲がこわくなりました」 すこし幼稚な言いわけかもしれないが、いまここにいる人間たち 一部を裸にした。左耳から小さなマイクをとりはすしたジョンは、 思わずクスクス笑った。これでちんばの上に半分っんぼーー・文字どのだれひとり、ロポットの知能についてちゃんとした知識を持って おり、骨身惜しますってやった。いっか ないことには、確信が持てた。 もし、いっかがあった 「戻ってきてもいい、 とおっしやってください : : : 社長 ! 」もうす らだがーーーアレック・ディガーに聞かせてやろう。きっと腹をかか こしで、ジョンは最後の一言を忘れるところだった。埋め合わせに えて大笑いするだろう。 ジョンはマイクロフォンに枝線をとりつけ、それを裸の電話線にもうひとつ、「おねがいです、社長 ! 」と、つけ加えた。 つないだ。電流計の感触からすると、話し中じゃない。しばらく発コールマンは船底の荷物とやらをひどくほしがっているから、そ 信音をたしかめてから、ローカル局の交換手に接続するよう、注意れを手に入れるためなら、どんなことでも約東するにちがいない。 ぶかく間隔をあけて十一のパルスを送った。それから、マイクにロ最終的な運命については、ジョンはなんの疑いも持っていなかっ を近づける。 た。さっきの電話が救助をもたらすかもしれない、 とい ) つはかない 「もしもし、もしもし。こっちはなにもきこえないから、返事しな望で、時間を稼いでいるだけたった。 くていい。緊急交換手に知らせてくれ。シグナル十四ーー・くりかえ「降りてこい。叱りはせんーー・・おまえがいうことをきくならな」 す、シグナル十四だ」 相手の声にこもった怒りが、ジョンには感じとれた。人間さまに 手を上げたロポットに対する、言葉のない憎悪だ。 下の連中が近づいてくるまで、ジョンはそのメッセージをくりか えした。マイクは接続したまま置きざりにしようときめた , ー・ー暗闇下降はむずかしくなかったが、ジョンはゆっくりと、 いかにもっ で人間には見つかりつこないし、開いた回路が未知の救助者にここらそうにそれをやってみせた。片足でびよんびよん部屋の真中に出 の所在を教えるはずだ。ジョンは指先を使って、そろそろと—ビー てゆくと、支えを求めるように木箱によりかかった。コールマンと 4 2
ゆっくりと通りを歩いてゆくディックにさよならをいって、ジョ ジョンは急ぎ足で職安を出た。大またな足どりが、つぎつぎにプ ンとアレックは職業安定所のほうへ曲った。・混みあった斜道を昇ロックをのみこんでゆく〈アレックのやっ、ちっとも変わってな り、登録係のまえの行列に加わる。デスクの横の掲示板には、白い いな。むかしから、手でさわってみないうちはなにも信じない男だ 求人力ードが乱雑に貼り出されてあった。係員が新しいカードをビ った。ひょっとしたら、やつが正しいかもしれないが、なにもむり ンどめしている。 にふしあわせになることはないだろう。けさの世界はまんざらじゃ それを走査したヴェネックスは、赤丸でかこんだ一枚に目をとめない しい仕事にもありつきそうだ はじめて作動した日からこっち、こんなにいい気持になれたの 左記の職能ロポット急募。希望者 はめすらしい〉 はすむような足どりで角を曲ったジョンは、であいがしらに一人 はプロードウェイ一二一九番地チ ェインジェット の男とぶつかった。はっと足をとめたが、横にとびのくひまはなか ( 株 ) へ至急来社 のこと。 った。肥った相手はドスンと衝突して、地上に倒れた。ジョンは幸 福の絶頂から失意のどん底につき落されたーーよりにもよって、人 ファースソ 接合 間をけがさせてしまったのだー フライヤー 飛行 ジョンは背をかがめて助け起こそうとしたが、相手はてんで受け アトー 原子力融解 つけてくれなかった。さしだされた手からしりごみして金切り声で フィルマー 撮影 わめきたてた。 ヴネックス 「おまわりさん、おまわりさん : : : たすけてくれ ! 気ちがいロ、ポ 金星試作 ットにおそわれたんだ : ・ : たすけてくれ ! 」 ジョンはわくわくして、アレック・ディガーの首すじを叩いた。 早くも人だかりがしていた。遠巻きにして、ロぐちに罵りを上げ 「おい、見てくれよ。おれの特殊技能のロがあった 昔なみの給ている。ジョンは自分のやってしまったことの大きさにめまいを感 料にありつけるんだ ! じゃあ、今晩ホテルで会おうや。きみの職じながら、茫然と立っていた。警官が人びとを押しわけて近づいて 探しのほうも、幸連を祈ってるよ」 きた。 アレックは、さよならのしるしに手を振った。 「おまわりさん、やつを早くつかまえてください : いや、射ち殺 「その仕事が、あんたの期待どおりだといいがね。おれはクレデイしたっていし ・ : わたしをおそったんだ : : : すんでのことで殺され ットを手に握るまで、この手のものは信用しないことにしてるのるとこだった : いきりたった男の一一一一口葉は、だんだんろれつの回 さ」 らないものになってきた。 一鷲ロ 足の調子もよくなったし、
伊藤典夫 宇宙は生物がいつはいスキャナー特別版 を読みながら、ときどき思うことがある。百年後の未来世界るにすぎないという のだ。これは極論であるにしても、そういわれ の外挿がどうだの、世界の破減がどうたのといって、 co のさまざてもしかたのないような小説が、そこらにごろごろしている。もっ まなタイプに色目をつかっても、けつきよく戻ってくるのは、そし とも、人間的宇宙人が登場する必然性のある場合もある。本誌昨年 ていづ読んでもおもしろいのは、宇宙小説ではないだろうか。「星一月号に掲載された、 : ホール・アンダースンの「救いの手」がそう と宇宙船が出てこなければ、ではありませんよ」という野田宏こ。 一郎氏の言葉は、たしかに、ぼくを含めたファンの大部分の気 あの部分でのホイルの結論は、想像を絶するものを想像するのは 持を代弁していると思うのだ。むかしむかし、少年向きの天文学解無理たということだった。しかし想像を絶するものに挑んで、それ 説書ばかり読んでいた・ほくが、それだけではあきたらなくなって、 をかなり見事に描いた小説を、ぼくは一つ知っている。スタニスラ 生れてはしめて手にとったが、ミ ルトン・レッサーの少年向き フ・レムの『ソラリスの陽のもとに』がそれだ。それまでハル・ク 長篇『第二の太陽へ』。今で思うと、ハインラインの「大宇宙」の レメントの『重力の使命』をかっていたが、これを読んだら、たち 亜流で、その意味ではあまりいい点はつけられないのだが、とにか まち色あせた。主人公も、ソラリスの海を理解することができず、 く規模雄大な本格的宇宙小説であり、大いに満足したのが、病みっそこを去る決心をする。彼は最後にもう一度、海を見ていこうと外 きのそもそものはじまりである。 に出て、波うちぎわに手をさしのべる。すると波は、もの珍しげに そんな宇宙小説で、西部劇のインディアンと同じくらい欠かせな盛りあがって彼の手を包み、やがて興味をなくしたようにひいてい いのが、宇宙生物といえるだろうか。宇宙生物を描いたは数限 く。その瞬間、主人公はふたたび海に対する研究心を燃えあがらせ インディアンといえば、、 しま本誌に連載されている『十月るわけだが、このなんともいえない最後の数ベージ、もし忘れてお 一日では遅すぎる』の第一回で、作者のフレッド・ホイルが、 もちろんはしめから。 られるのだったら再読をおすすめしたい。 に現われる宇宙生物への不満をぶちまけていたのを思いだす。 cn 宇宙生物を描いた、すこしはましながないものかと、手あた では、宇宙人といってトカゲみたいな生物を出してきても、中身は りしだいに何冊か読んでみた。 人間であり、インディアン対カウポーイの話が宇宙でくりかえされ 生物学的に見て、レムの創りたしたソラリスの海に匹敵するの
った。オー・プアがにやにやしながらポンポンと手のちりを払っではない」 「そりやわしだってケープ・コッドにいた時分はちがったよ。その 7 ホドンはデヴィッドを洞穴の中に引きこんだ。「とてもだめかと時分なら、わしが男だろうと女だろうと子供だろうと、人を喰った なんそという奴がおったら、トサカをおっ立ててやつつけてやった 思いましたよ」ホドンはいった。 洞穴の中には余分の槍と矢があり、食物も少々あった。滝はすぐろうさ。そうはいってもその時分は餓死しかかったこともなかった そばに流れ落ちていたので、手を伸ばせば掌に受けることができし、味をしめれば人間もけっこううまいということも知らなかった た。これでのどの渇きに苦しむこともないだろうし、剣歯人のようもんな。おまえさんがくる前、わしはこの二人に、わしが喰ったう にろくな武器を持っていないけものが相手なら、一人が槍で入り口まいスエーデン人の話をしておったんじゃよ」 「それにあんたはいってたわ」オー・アアが口をはさんだ。「友だ を守ることもできる。総じてここならかなり安全だと彼は感じたの ちをみんな食べてしまってから、こんどは自分の足を切って自分を 「このけだものたちはいつまでもここにはいまい」デヴィッド : 、 力し食べるところだったって」 った。「われわれを捉えることができないとわかったら行ってしま「そうとも」老人は認めた。「まったくその通りじゃ」 うだろう」 「それなら、お腹が空いたら自分を食べるといいわ。誰もあんたな 「おまえさんらは知らんのじゃ」老人がいった。「奴らは地獄が凍んかに食べられませんからね」 っちまうまでこの辺をうろついているのだろうよ。しかし奴らこそ「それそれ、そういうのをどえらいしみったれちゅうんじゃよ。わ しい面の皮じゃて」 しらが互いに共喰いをしなかったら剣歯人がわしらを喰っちまう。 「どういうことだね ? 」デヴィッドが尋ねた。 あんな奴らに喰われるくらいなら友だちに喰われた方がましだと思 うがね」 「つまりじゃね、奴らはわしら四人を手に入れるかわりに、たった 一人しかっかまえることができないじやろうということじゃよ」 しししカーーええっとーーーところでなんという名だ、おまえ 「それはまたどうして ? 」とデヴィッド。 は ? 」デヴィッドはそれとはっきりわかるほど語気を荒らげていっ 「ここじや食物は手にはいらん。そこでわしらは共喰いをせにゃなた。 らん。最後にはわしが残ると思うがね。わしはあんまり年をとり過老人は眉を寄せて考えこんだ。「ちきしよう ! 」やがて彼は大声 ぎていて固くて食えんよ。剣歯人ですらわしを喰おうとせんじゃっでいった。 T いったいわしの名はなんちうんじやろ ? 忘れちまっ たからのう。ここにいるこのあたりが柔くてうまそうじゃ。この娘たんじやから呆れたもんじゃ。何せ、若い時分に聞いたきりじやか からはじめるとするか」 らのう」 「黙れ ! 」デヴィッドがびしやりといった。「われわれは人喰人種「この人の名前は」と、オー・アアがデヴィッドにいった。
ジョンも知っていた。なかには、ロボットを機械でなく、対等の仲や、連中がおさまりそうもなかったんでね」 間として扱ってくれる人間もいるという噂た。どうやらこの運転手そういうと、男はあとをふりかえりもせず、車をスタートさせ はそういう奇特な人間のひとりらしい。さっきの行動は、そうとし か説明できなかった。 片手で慎重に運転をつづけながら、男はダッシュ、ポードをさぐっ 順番がくるまで半時間ほど待たされたジョンに、やっと受付ガー て、薄い。フラスチコイドのパンフレットをとりだした。手渡された ルが合図をよこした。すばやく面接室のなかへ入ったジョンは、プ ジョンは、しげしげと表題を眺めた。フィルポット・アシモフ二世ラスチック・デスクに坐った男とむかいあった。ひたいに永遠の苦 著〈世界経済におけるロポット奴隷の位置〉と書いてある。 テスクの書類を不 悩のしわを刻んだ、おちつきのない小男だった。・ 「そいつを読んでるとこを見つか「たら、その場で処刑されるぜ。きげんにあっちこっち動かしては、読みにくい字で余白に走り書き 絶縁板と発電機のあいだに挾んどいたほうがいい。捕まったとき、 している。そのうち、小鳥のようにひょいとジョンを見上げていっ いつでも燃やせるように。 ひとりになったとき、いちど読んでみたまえ。きみがこれまで夢「おいおい、はやくしてくれ。なんの用だね ? 」 にも知らなかったことが、書いてあるはずだ。ロポットは、じっさ「募集広告を見てきたんですがーー・ー」 い人間と比べて劣っちゃいないし、それどころか、たいていのこと 小男は手を振って、あとの言葉をさえぎった。 で人間よりすぐれてもいる。その本には、二級市民として扱われた「よろしい。認識票を見せたまえ : : : はやく。志願者がまだぞろぞ のはロ、ポットがはじめてじゃない 、という歴史も出てるよ。おれがろ控えてるんだ」 この運動に参加したのは、それもあるのさーー、・・みんなを火からよけ ジョンは腰のスロットから認識票をとりだして、デスクの上にお させるために、やけどする男の役まわりだな」 いた。面接官はコード番号を読み、おなじような番号のならんだえ 黒のような濃褐色の肌に白い歯をのそかせた徴笑が、ひどく人んえんたるリストを、指でたどりはじめた。とっ・せん指をとめる なつつこい と、垂れたまぶたの下から横目でジョンをうかがうようにして、 「一号国道へ出るんだが、どこかでおろそうか ? 」 「なにかのまちがいだね。、ここにはきみの仕事はない」 「チェインジェット・ビルへおねがいします。就職口があるそうで掲示にはたしかに自分の職能が書かれていた、と説明しかけるジ ョンを、面接官はふたたび手まねでさえぎった。認識票を返すのと 、つしょに、小男は吸取紙の下から一枚のカードを出して、ジョン ふたりは、そこへ着くまでをだまりこくってすごした。ドアをあ の目の前にかざした。小男がそれを見せたのは、ほんの一瞬だっ けるまえに、運転手はジョンの手を握りしめていった。 「さっきはゴミ・ ( ケツなんて呼んですまなかった。ああいわなきた。そこに書かれた文章が、ロノトのカメラのような記憶に、瞬 7
特別掲載■■リレー連作第一回 レエ メムー いイツ ツ、フ , ☆ ・ブレイゲンに当った。ヂ もそれは″カジノ・ルーレット〃で。ヒーター ヒータ】はかすかに身ぶるいした。手のひ ルは黒の 7 のまえにとまった。。 一、、らが熱く、汗ばんできた。ポー ~ がまさにこの番号に当ることを、かれは 知っていた。というよりも、ポールが 7 の前に止ったとき、前からそれが わかっていたのだ、と気がついたのである。 。ヒーターは目ををじた。それなのに、走っているポールがはっきり見え 、ノドルの下にあかるい斑点をちらしてルーレ た。しんちゅうのクロス・ / 、 ットがまわっている。クルー。ヒ工の冷いカフスがひらめく。向うがわにす わっている女の指輪が星の火花をちらしている。ポールは赤ので止る。 。ヒーターは目をあけた。リムはまだ回っていた。ポールは、豆惑星のよ うに、黄色い十字の太陽のまわりをとんでいた。ポールは赤ので止っ た。。ヒーターはふるえる手でポケットの中のチップをにぎりしめて、また 目をとじた。 賭博者 , 物理学者 , 工員一一突然 不可思議な予知能力をあたえられ た人びとはおどろき , 困惑した ! 80
課へ入ってもらうか、密告未遂として射するか、二つに一つとい 証言はさっきすませたところで、過ぎ去った一日のとほうもない うつもりなんだぜ」 出来事が、まだ頭の中でぐるぐる輪を描いていた。そのことはいず あっけにとられたジョンは、ウイルの笑い声にはとけこめなかつれまた考えるとして、いまはとにかく過労した回路を冷やしたい。 そのあいだ、退屈しのぎの読み物でもあれば、申しぶんはないのだ 「ジョン、ほんとの話、われわれにはきみが必要だし、働きロもあが。と、そこまできて、ジョンはだしぬけにパンフレットのことを るんだ。手八丁、ロ八丁のロポットってのは、ざらにはみつから思いだした。めまぐるしい事件の連続で、朝のトラック運転手との ん。きみがあの倉庫でやってのけた離れわざを聞いて、主任はおれ出会いのことを、すっかり忘れていたのだ。 に、きみを口説けなかったら警察からおっぽりだすぞ、とおどかし ジョンは発電機の遮蔽板のうしろからそっとそれをとりだし、 た。きみも就職ロはほしいんだろう ? 勤務時間の長いわりに、サ〈世界経済におけるロポット奴隷の位置〉の第一ページをひらい ラリーは安いーーーしかし、退屈しないことは請けあえるぜ」 た。ページのあいだからハラリと一枚のカードが落ち、ジョンはそ ウイルの声は、ふいに真剣になった。 こに書かれた短い文章を読んだ。 「ジョン、きみは命の恩人だ。麻薬団のやつらは、おれをあの砂利 山の中へ置きざりにするつもりだったんだよ。きみのような相棒が 読後焼却のこと きてくれれば、きっと仲よくやってゆける」ふたたび明るい声にも この本の内容に真実があると感じ どって、「それにさ、おれもいっかきみの命を救えるかもしれない さらに多くを知りたいとう者は 借りつばなしってのは、いやだからなあ」 毎火曜午後五時 ジョージ通り一つ七へ来たれ 機械技師は仕事を終え、工具箱をしめて立ち去った。修理のすん カードはつかのまめらめらと燃えて、灰になった。しかし、その だ肩のモーターを動かして、ジョンは上体を起こした。あらため メッセージが忘れられないのは、完全な記督のせいだけではないこ て、ふたりのロポットはしつかりと手を握りあった。これからの長 とを、ジョンはすでにさとっていた。 い友情を誓いあうように。 その夜、ジョンは空いた監房に泊った。いつものホテルや飯場の 部屋に比べると、段ちがいに広々としている。足があれば、中を歩 きまわれるのに、と残念だった。それには朝まで待たねばならな 新しい仕事につくまでに、手当してくれるという約東なのだ。 7 2