火星人 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1968年6月号
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1. SFマガジン 1968年6月号

下にあるものがどうたか、何がわかるもんか ーの電波によると、この惑星はやはりゆっくりと自転していること ところが、天文学者たちは、金星も含めて惑星のいくつかから来がわかったのだ。だから、夜の側というものもないことになったわ る電波を受信することを覚えたのだ。金星の送りだしている電波のけだ。この惑星のどの部分も、長い期間にわたって太陽光線を受け 性質は、よほど熱い物体、実に華氏約六〇〇度の物体からしか発しるのた。凍った酸素なそ、どこにもないのである。 えないものだった。一九六二年、金星探測機マリナー二号が送ら 火星の彼方には太陽系の巨人惑星たちーー土星、士星、天王星、 れ、この温度は確認された。金星は : : : 熱いのだった。 金星は、私が一九五四年に予言したように、ほんとうに一つの大海王星があり、それらには計二九個の衛星があって、その中の五個 は格別に大きい 海洋で覆われていた。ただ困ったことは、その大海洋というのが、 「すてきな三〇年代 , には、我々はこれら全部に人を住ませたもの すっかり水蒸気の形で存在していたのである。厚い雲があるという ことは、金星に水の資源がたっぷりあることにはならなかったのでだった。巨大な木星や土星を舞台にした小説さえ書かれたのであ る。中には土星を大平原の世界ーーとほうもない野牛の大群のいる ある。雲は金星の水の全部だったのだ。 さらに、金星は実は太陽に対してゆっくり自転していることがわ「未開の西部」に見たてたものもある。これはちょっとした思いっ きだ。というのは、我々に表面と見えるものが本当に表面なら、土 かった。永遠の夜の地帯などは存在せす、熱からの逃げ場もないの 星の表面積は地球の約八〇倍も大きいからである。 だった。金星はすっかり熱いのである。 金星退場。太陽系で最も美しく最も恐るべきジャングル退場。そ衛星はどうか ? 三〇年代後半の私自身の書いた小説では、木星 の月の中の二つーー・・ガニメデとカリスト に迫る危機を扱ってい して最大の大海洋退場。 水星には、大きな期待がかけられたことはなかった。それは太陽る。土星の最大衛星チタンも、よく使われるやつである。 に近すぎるし、いつも一方の側を太陽に向け、他の側を反対の方向惑星の太陽からの距離などは、何の障害にもならなかった。一九 三〇年の傑作の一つは、海王星の兇悪な住人が企んだ陰謀にあっ に向けている。だが、その間にある「薄明地帯」はどテたろうか。 空気は、夜の側にある凍った酸素の山からパイプで持ってこれるじて、太陽系が減亡に瀕することを描いている。 しかし、これはもともと敗け戦の運命にあったのだ。外惑星たち ゃないカ 駄目 ! 天文学者たちは、それを詳しく説明した。水星の軌道はは低温すぎるし、大気は深く厚すぎる。おまけにお節介な世話焼き 非常に楕円形をしているのだ。公転のたびに、水星は速度を速めなどもが分析した結果では、これらの大気は手のつけられないほど有 がら太陽の傍に近づいてきて、それから速度を落しながら太陽から毒なのである。衛星については、確実に大気が見つかっているのは 遠ざかってゆくのである。その結果、水星の表面は振子のように揺たった一つしかなく、その一つというのはチタンである。チタンは 薄い空気の層で覆われているが。 ( お察しのとおり ) それは有毒な れるため、いわゆる薄明地帯は両側とも四四日間が昼に、四四日間 が夜になる。つまり、薄明地帯などというものは存在しないのであのである。 る。 一部の天文学者は、あまり気の乗らない態度で、木星の温度は思 一九六五年、事態はもっと悪化した。水星から反射されたレーダ ったよりも高いかもしれす、不自由を感じない ( 毒を呼吸してもよ 4

2. SFマガジン 1968年6月号

うちに、わたしは右舷の舷門の上に到着し、そこの騒動に巻きこまも小さくまた白い恒星をめぐる、五個の惑星のうちのひとつだっ た。ほかに、小規模な、取るに足らぬ小惑星の集団が、この惑星系 れてしまった。マクナルティが火星人たちを相手に喚き散らしてい た。火星人連中は、膚に合った三ポンドの気圧が保たれている特別の構成の一翼をになっていたが、われわれの船は苦もなくそれらの 室から出て、室外の異質な、不愉快な空気のなかでがやがややって軌道をつきぬけて、内へと突進していった。 ここの太陽がなんという星だったのか、わたしは知らない。ジェ いイ・スコアの説によると、なんでも牛飼い座の星域にある倭星のひ だれかが、けばけばしい不調和な色彩と、途方もなくいやらし 形をした巨大な花壜をささげて、うやうやしく舷門を降りていくととつだそうだ。な・せこの星が選ばれたかというと、これがこの近辺 ころだった。火星人たちの抗議のコーラスがしだいに高まった。かでは唯一の惑星を持っ恒星だったからで、その第二惑星をわれわれ が選んだわけは、それの現在位置が、船の針路とまことに好都合 ん高い囀りが乱れとび、怒った蛇のように触手が振りうごかされ な、おあつらえむきの相関関係を保っていたからにほかならない。 た。その陶器の怪物が、クリ・モルグのチェスのトロフイだという ことが、やっとわたしにも呑みこめてきた。つまりこれが火星人式それにしても、われわれはあまりの超高速度で飛んでいて、着陸 の観念でいうチャン。ヒオン・カップなのだが、地球人の観点から見前に惑星の周囲をめぐって、精密な観測をやっているだけのひまが ると、ひどい悪趣味なしろものだった。ともあれ、船長の命令は命なかった。必然的に、着陸は直接のものにならざるを得ず、言うな 令であり、この忌まわしいしろものは地球に残されるというわけだれば、″ : カこめかごめ〃はいっさいやらずに、押し殺された祈願の 声のなか、獲物を狙う鷹よろしく急降下していったわけである。 つぎの瞬間、三十秒間の予告サイレンが鳴りわたり、まだ座席に フレットナーの非正統的概念が実地に移されるそのやりかたとい ついていなかったものは、あわててそれそれの席に散っていった。 うものは、ここでもまた、われわれの心臓を、呑みくだすひまもな 火星人たちががやがや騒ぐのをやめ、蜘蛛の子を散らすように逃げ く食道へとびださせてくるたぐいのものだった。わたしは思うのだ ていくさまは、ちょっとした見ものだった。 が、この船は人間の耐久力の限界というハンディを負わされていな わたしはかろうじて座席のベルトを締めるのに間にあった。気閘 かったら、もっとはるかにうまくやれたはずである。この限界を、 が閉まった。うわおおあん ! 巨大な手がわたしの頭を押えつけて マクナルティは驚くべき正確さで見通していたのにちがいない。と 靴のなかにつつこもうとし、わたしは一瞬気を失った。 いうのも、そのむちゃな減速と降下にもかかわらず、わたしはまだ 生きたままで、足をばたばたさせて下界に到着したからである 船首前方で急速に拡大してゆく惑星は、地球よりもわずかに大きもっとも、その後一週間というもの、虐待された身体じゅうに強い かった。その太陽に向いた面は、なっかしい茶と青と緑の混合では締め具の感触が残っていたものだが。 分断既の報告によると、空気は十二ポンド、まず呼吸可能という なく、無と赤と銀色に光っていた。この惑星は、われらが太陽より 0

3. SFマガジン 1968年6月号

球よりも若いのである。確かに金星が若い惑星であることは明らか ち砕かれるのに、私はいつも興奮を感じたものだった。 それとも、ことによると、火星の文明はとうに減亡していて、やだった。というのは、金星の大気は雲で埋まっていたからである。 ってきた地球人はその廃墟の上に建設することになるかもしれなそこは湿っはく霧雨の降る世界であって、地球にはかってなかった 。火星の小さな太陽は、暗い雲のない空から、泥だらけの運河のほど自由奔放に繁茂するジャングルで埋まっているに違いないのた 残骸を照らし、人間の考古学者たちは謎に包まれて減亡した火星人った。 何もかも黴が生え、貪欲な植物が絶えず情容赦のない騒々しい市 の遺物について際限もなく考えつづけることになるのだ。 くつもの小説が書か もちろん、観測の方からは絶えず不安なニースが聞こえてき民戦争を戦っている金星の環境については、い た。火星の大気はエヴ = レスト山頂の空気と同じくらい、あるいはれている。しかも、金星は一方の側面を永遠に太陽に向けている ( もっとも、雲のために、温度が耐えがたいほど高くはならないよ それよりも稀薄なのだった。このあるかないかの空気には、酸素は うに抑えられてはいるが ) と考えられていた。永遠に変らぬ光で照 ないに等しかったのである。多くの天文学者には運河は見あたらな らされた金星の夜の側は、まったく異なった環境であって、暗く謎 かった。おまけに、火星には水がほんの僅かしかないのだった。 我々は反撃した。火星にしがみついた。それは我々の最大の希望に包まれ、昼の側から暖い空気が流れてきては凍りつき、固体の酸 素の山々になるのである。 だったのだ。これを奪られてたまるもんか。 だが、奪られてしまったのだ。たしかに彼らは、あちこちで . 退却それとも金星の永遠の雲は、地表に宏大な海洋がある証拠だろう するかに見えた。火星には間違いなく、水があ 0 た。明瞭に見えるか。私はこの可能性に非常な魅力を感じたので、一九五四年に書い た小説では、この惑星全体が一つの大海洋に覆われているものとし 氷冠は、まさに凍った水だった ( つまり固体の炭酸ガスなどとい 胸が限りなく裂けるような物質ではなか 0 たのだ ) が、大したて描いている。私はこの海に、さしわたし一マイルの巨大なタコの 量ではなか 0 た。また、火星の緑地帯はほんとうに植物らしか 0 たような代物を始め、思いつくかぎりの薄気味悪い怪物たちを棲ませ たものである。 しかし、ジャングルでも木でも草でさえもなかった。せい・せい 一番いいことは、もちろん、何をいっても大丈夫だということだ 原始的な地衣類に似た植物にすぎなかったのである。 った。金星を覆う雲の下を覗くのは不可能だったのである。我々は ここでマリナー四号が登場し、運河は木っ端微塵にけしとんだ。 それは影も形もなか 0 たのである。運河を見たという、あの天文学この惑星を好きなように、科学上のもめごとなしに考えることがで 者たちは、おそらく見えるか見えないかの境目のところで不規則なきたのだ。 ところが、天文学者たちは、厚い雲そのものを相手に際どい勝負 円孔の行列を見、心の中で現実には存在しない直線を引いたのかも をやっていた。或る人は、これがフォルムアルデヒドだと論じた。 しれない。 しかも、円孔があるということは、どれほど僅かしか空気や水が次の人は、ガソリンだとい 0 た。三人目は、塵だとい「た。彼らが ないかを示しているだけでなく、空気や水が幾百万年もの長きにわ最後にや 0 ばり水だというところに落着くまで、我々は誰もす 0 か り気をもんだことだった。 たって稀薄だったことを示しているのだった。 次に、もちろん天文学者たちは、大気に酸素が一つもないと断定 お姫さま ? 私は地衣類でも満足だ。 した ( 天文学者は、地球以外のどこにも酸素を発見していない ) 、 作家は、これを真にうけないようにと、自分にいい聞かせた。 金星の方はどうか ? それは太陽に近く、冷えるのに時間がかか り ( 一九三〇年代的な頭の作家によればだが ) 、したがって地とにかく科学者に見えるのは、雲の上の空気だけじゃないか。その 3

4. SFマガジン 1968年6月号

が明らかになった。月面には「海ーと呼ばれる平坦な黒い地域があ また、もちろん、太陽なそはいうだけ無駄だ。その外側は華氏一 って、「静の海」「晴の海」「夢の海」といった美しい名がついて万度で、太陽黒点も 、ハーシェルの期待に反し、他とくらべて暗く 2 見えるにすぎないのであって、少くとも華氏約七〇〇〇度はある。 だが、悲しいかな、晴れて静かだとすれば、それは立ち騒ぐ微かそればかりか、太陽の内部に低温の場所などはない。太陽は中心に な風もないからだったのだ。夢が刻まれているとすれば、それはそ向ってどこまでも熱くなってゆき、ついに華氏二五〇〇万度に達す こにない、人の住む世界を追う悲しい夢であり、我々の世界よりもるのである。 小さく優美にできあがった世界の甘美な幻だったのである。その夢だが、三〇年代には生命のメッカは月ではなく、ましてや太陽な にとってかわったのは、砂塵の海、永遠に沈黙し変化せぬ岩山、のどではさらさらなかった。我々は太陽で最悪の事態を体験したし、 ろのろと動く仮借なき太陽、忍びよる極寒の夜という悪夢だった。 月についても最悪の場合を予想していたのである。 現代科学は、それに絶えざる放射線の雨をつけ加えた。 だが火星がある ! 火星についてなら、科学は我々の味方だ ! 作家がこんなことに構わずになおも月に人を住ませていたと とにかく、イメリアの天文学者ジョヴァンニ・・スキャパレル しても、もうそれには情熱が感じられなかった。科学を公然と無視リは、一八七七年、火星に運河を発見したのではなかったか ? フ するのはの悪名を高めるものだったし、作家たちが真面目にな ランスのカミュ・フラマリオンとかアメリカのパーシヴァル・ロ るにつれて、の名声はますます大事になったからだ。 ウエルといった掛値なしの天文学者たちが、こうした運河を建設で もちろん月には裏側、つまり地球から絶対に見えない部分があっきるのは知性ある生物だけだと主張したではないか ? それは火星 た。もし月が卵形をしていて、膨らみをこっち側に向けているのだに人が住んでいるということではないのか ? し、刀、ー いかに多くのが火星を中心にして書かれたことか , としたらどうだろう。地球の重力はこの膨らみを撼まえ、月の自転 ・カップと透き を止め、膨らみをこっち側に向けたまま釘づけにするだろう。我々多くの愛らしいお姫さまが、輝く金属のブラジャー に見えるのは、いわば空気のない巨大な山ということになるだろとおったガウンのほかはほとんど何も身につけずに、六本足の馬に う。しかし、月の向う側の豊かな低地帯には、空気や水が、そうしまたがり、これと並んで堂々たる地球人が巨大な剣で闘ったことだ ろう。 て住民があることになるだろう。これはすばらしい考えだったし、 月の裏側は地球の上にいる我々には永遠に見えないのだから、その もちろん ( と理屈は先を続ける ) 火星は地球より小さな世界であ 反証を挙げる方法はないわけだった。 り、冷えるのが速かったから、文明が始まるのも早かったことにな ところが、一九五九年、ロシア人はルーニク三号を月のまわりに る。その文明は我々よりも遙かに進歩し、遙かに退廃的でもある。 送り、裏側を覗いてしまったのである。海や空気や綿雲は夢と消水は徐々に消減しており、終末を先へ延ばすための必死の努力とし え、うるわしい月の風光は失なわれたのだ。月の裏側はこちら側よて運河が建設されたのである。疲れ果てた老火星人たちは、哲学的 りもひどく、山だらけで、同じぐらい荒凉としていたのである。 な冷静さで運命に直面し、地球の生意気な若僧たちに教えを伝えよ じゃ、地下はどうだ ? ・・ウエルズの月世界人みたいに ? うとしているのかもしれない。さもなければ、追いつめられて兇悪 駄目だ。科学者たちはこの問題をじっくり考え、ありとあらゆる論になった彼らは、太陽に近い隣りの豊かな若い惑星を侵略して、そ 拠を持ちだしたあげく、月の上皮の下にはせいぜい或る種の細菌かこの土民 ( 我々のことだ ! ) を殺すか奴隷にしようと企んでいるの 同程度に単純な生物ならいるかもしれないと考えている。それだけだ。 火星の邪悪な天才たちの陰謀が、必らず勇敢な地球人によって打

5. SFマガジン 1968年6月号

けつきよく合計すると、火星人を除外して、死亡が七名、不明が 一同そろって周囲を見まわした。ひとりの火星人の姿もなかっ た。ひとりもだ。クリ・ヤングをはじめ、クリ・モルグ、サグ・フ五名だ 0 た。不明の五名は、救命艇で出発した〈インズと二人の機 アーン、その他、九人ともぜんぶが行方不明だった。『マラソン』関士、それにブレナンとウイルスンだった。これはわれわれごとき 号での死闘以後、彼らの姿を見かけた覚えのあるものもいなか 0 小部隊にとっては、ばかにならない損失であり、われわれの唯一の た。最後に船から拉致されたのは、政府の派遣員であるードック慰めは、行方不明者がそれそれまだ生きているという望みひとつに かかっていた。 だったが、彼は、自分が連れだされるとき、火星人たちはみなまだ 船に残って、機械と戦っていたと断言した。すくなくとも、彼らは船長がなさけなそうに名簿をながめているあいだに、わたしは獄 だれも、列のしんがりだった彼の護送車にほうりこまれてはこなか舎を見まわしてみた。そこは金属製の納屋とでもいった大きながら んとした建物で、長さ百フィート、幅六十フィート、高さは、四十 フィートほどあった。壁はなめらかで、くすんだ泥土色をしてお 火星人たちが拿捕されるのをまぬがれた理由につき、われわれは り、窓はなかった。同じ泥土色をした深く湾曲した屋根には、やは だれも納得のゆく説明を思いつけなかったし、彼らの現在の状態に つき、憶測を逞しゅうすることもできなかった。あるいはお馴染みりどこにも開口部はなく、ただその頂点から、三つの透明プラスチ ックの大きな球がさがっていて、それそれオレンジ色の光を放って のばか力で、金属怪獣どもを撃退したのかもしれないが、それはど いた。近づいて仔細に調べたが、まったいらな壁の表面には、溶接 うもありそうになかった。わたしの個人的な憶説を一言えば、もっと またはなんらかの接合の痕をしめす筋一本、継ぎ目ひとつ見あたら もこんなことは一言だって他の連中に洩らすことではなかったが、 火星人たちはうまく敵をまるめこんでチ = ス気違いにさせてしまなかった。 しいまごろは双方盤面をかこんで、だれかが角の駒を二目進める「さて、諸君ーー」マクナルティが言いかけた。 のを息を呑んで見まもっているのではないかということだった。火彼はそれ以上先をつづけられなかった。折しも建物の唯一の扉の 星人というやつは、ときにこういったとんでもない離れわざをやっ周囲の細い隙間から、かぼそく、薄気味わるく長く尾を曳いた悲鳴 てのけるのだ。 が流れこんできたのだ。それは苦悶の絶頂に発せられる絹を裂くよ うな悲鳴で、さながら長い金属の廊下を遠くから伝わってきたよう 赤い惑星の連中ぜんぶの名にしるしをつけてしまうと、マクナル 冫いくつもの反響をともなっていた。なによりも、それは人間の ティはそのまま先へ進んで、はじめアンドリュウス機関長をはぶい 声だったーーでなければなにか、いままで人間だったものの発する たように、ジーグラー六等機関士をはぶいて点呼をとりおえた。こ の二人が除外されたのは、まったく同一の理由からで、ともに死亡声だった。 一同は汗でてかてか額を光らせて、不安けに顔を見あわせた。「 が確認されているからだった。船尾で起った最初の敵襲のさいに、 ードックはシーツのように蒼白になっていた。サム・ヒグネットの あえなく一命を落したのである。

6. SFマガジン 1968年6月号

' ・ :eoneepning 、「の0ie ・ nee•••:. fletiofi . 0.- ド 6 tD は、当然だと思えたのである。それに、現代になるまでは、人の、 つい先頃、マリナー四号と呼ぶ惑星探測機が火星の近くを通り、 二五枚におよぶ一連の写真を撮ることによ 0 て、我が妹惑星の純潔ない世界などというのは、言葉の矛盾でしかないのだ 0 た。我々に。。 を踏みにじった。距離のヴ = ールは無残にも引き剥がされ、火星の非常によく似た生物が住んでいないとしたら、そんな世界が何の役 20 ういう非能率 & に立つのか ? 人のいない世界なそは無駄であり、そ 傷痕は白日のもとに晒されたのである。 運河はなか 0 た ! 月のようなあばただけだ 0 た。円孔の一つなことは、宗教的な人にと 0 ては神を冒漬することであり、そうで ない人にとっては宇宙の合理性を冒漬するものだった。 は、さしわたし七五マイルもあった。 そこで、紀元一一世紀のギリシャの諷刺作家、サモサタのルシアン厄ä エキゾチックな世界への最後の望みも消え、太陽系はまた一段と は、一人の地球人が月へ行き、そこに住む人々が金星に植民する権 e ◎ä 寂しくなったのである。 私はいまでこそ作家にな 0 ているが、私がただのの読者利をめぐ 0 て太陽人と戦争しているのに出くわす話を書いている。 にすぎなか 0 た若かりし日、一九三〇年のはじめは、いまや永遠に近くは一八〇〇年にな 0 てさえ、ドイツ系イギリス人で正真正銘 00 去ったロマンスの心を受けついだ時代だった。もちろんその頃にの大天文学者ウィリアム・ , 、ーシ = ルは、太陽に人を住ませてい地◎ は、太陽系は神秘の種族とか、眼のさめるようなお姫さまとか、まる。彼は、太陽の黒点は灼熱の太陽大気にできた裂け目であって、コ tn 5 るで途方もない獣や怪物とか、凶悪なのから知性のあるのまで各種そこから太陽そのものーー低温で人が住んでさえいるかもしれない 0 , 太陽の暗い内部の表面が見えるのだと考えたのである。 の植物とかで埋まっていたものだった。 一九〇一年、・・ウ = ルズは、『月世界最初の人間』の中 こんな太陽系には、我々は二度とおめにかかれないことだろう それを減・ほしたのは科学なのだ。現代まで人間は、人の住んでで、やはり月を植物で覆わせている。彼はさらに進んで、地下に住 いるのは地球だけだと信じていた。つまり、凡人は、という意味み知性を持った月世界人を描いている。 だ。しかし、古代でさえ、それほど単純でない人々には、月や太陽なぜ地下なのか ? 現実が出しやばり始めたのである。一七世紀、 2 が一つの世界であり、惑星だって一つの世界かもしれないというのに月の望遠鏡観測が可能になるとすぐ、月には空気も水もないこと 連載。科学と (DI.L 〔最終回〕旧き懐しき月の眺め アイサック・アシモフ山高昭 / 訳 0

7. SFマガジン 1968年6月号

「おれはそんなもの見たくもないね」マクナルティが不機嫌に言っ 地球までの帰路、火星人たちはずっと右舷の気閘にこもりきり た。「一回の旅にしては、じゅうぶんすぎるほどのものを見たよ」で、三ポンドの気圧とチ = スのゲームを楽しんでいた。ジ = イは大 8 2 彼が機関室へ通じる送話器に向かって怒鳴ると、『マラソン』号は半の時間を船倉でスティーヴとともに過ごしていたーーーおそらく、 急上昇し、ついで胸がむかむかするほどの勢いで急降下し、また急生け捕りにしたお化け棺桶のお守りをしていたのだろう が、火 上昇した。どこか炊事室のあたりでガラス器の割れる音がし、だれ星人たちはむりやり彼をゲームにひつはりだしたすえ、十七回のう かが、上下する船と、それを上下させている船長について、声高なち三回しか勝たせなか「た。彼らが得々として戦果を船じゅうに触 悪態をついた。背後では、追跡してくる四隻の編隊が、い っせいにれまわったことはいうまでもない。 上昇と降下をくりかえしていた。 ウイルスンはキャビンにこもったきり、終日いらいらしていた。 うすみどり色の光線がいま一度放射され、無益に船体の周囲でひどうかしたのかと訊ねたり、慰めようとしたりするほどわたしはば メカニストリア らめいたあと、四本の火の箭が舷側をかすめ過ぎた。その狙いはは かではなかった。機械王国の無器用な戦士たちが、第一回目の活劇 ずれたが、それがまた、正確におなし間隔をおいて外れたのには亞のときに彼の撮影済みの乾板をこなごなにしてしまっていたが、そ 然とさせられた。 の後に撮影した分は、量的にも質的にも申し分なかった。いまや彼 「つきまとわれるのはもうたくさんだ」わざわざ危険を招くこともは、それをなんとか無事に持ち帰ろうと躍起になっているのであっ ないと考えてか、マクナルティがそう宣言した。そして『マラソ ン』号に字型ターンをやらせておいてから、簡潔に、「ベルト 二隻の巡宙艦が地球大気圏の外までわれわれを出迎え、護衛して と命令した。 くれた。なっかしい茶と青とみどりの地球は、わたしにとってこよ かろうじて座席にとびこむかこまないうちに、船はフレットナー なく美しい眺めだったが、火星人たちはまだあのうすぎたない。ヒン 推進に突入していた。気息奄々というときに窓をのそくなんて芸当クの惑星への愛着を捨てきれず、口々にそう言ってはばからなかっ はできないから、わたしはその光景を自分の眼で見たわけではない た。全世界の注視のうちに『マラソン』号がぶじ着陸したとき、彼 か・ル、がだ、 が、背後の四隻は、おそらく心臓が一回コトンというぐらいのうちらは、なんとたったひとつの歩のことで侃々諤々の議論を戦わせて に、ちっぽけな黒点にちちんでしまったはずである。そのまま眼に も止まらぬ早さで、『マラソン』号は惑星ヴァルガのそばをかす マクナルティが恒例のス。ヒーチを行なった。「今回の旅はいささ め、この太陽系をあとにした。その宇宙プラズマの塊りならびに水か困難な旅 : : : きわめて残忍な、妥協の余地ない敵意 : : : この不愉 陸両棲の住民を訪れるのは、つぎの旅までのお楽しみということに快な挿話 : : : , 演説はなおもつづいた。 せずばなるまい フレットナーは当然われわれの前に坐らされ、マクナルティがし ばしば船の性能に言及して、いつになく最大級の賛辞をそれに呈す えん こ。

8. SFマガジン 1968年6月号

た。『ア。フシイディジー』号のおもだった機関士半ダースのほか「金星行き貨物船『アプスカダスカ・シテイ』号の前船長としての に、われわれのまだ見たことのない痩せっぽちの小男を連れてい わたしの職責を、最後まで全うすることを許可してくれた。したが る。 って、すべては諸君の決意如何にかかっている。いままで通り『ア 一行のいちばんあとから、一歩ごとにその三百ポンドを越す巨体プスカダスカ・シテイ』号で勤務することを希望するものは、ただ で床板をきしませながらやってくるのが、ほかでもないジ = イ・スちにこの場を去って、管理局へ出頭してよろしい。どこまでもわた コアである。彼がその図体をいとかるがると運ぶさまには、毎度のしと行を共にしようというものは、どうか手をあけて合図してほし ことながら驚かされる。われわれのほうへ向けたあのすべてを見通 ーそれから、その眼が一座のなかの火星人を認めたか、彼はあわ すような眼には、炯々たる眼光がやどっている。 ててつけくわえた。「または触手を , 身振りでわれわれについてくるように命ずると、マクナルティは サム・ヒグネットがまっさきに褐色の手をあげた。「船長、ぜひ とある部屋にはいり、気どった歩きかたで小さな壇にのぼって、さお供させてください」 て、新米の三等航宙士に訓辞を垂れる教官、といった思い入れよろ残りの連中が一秒と遅れずそれにつづいた。おかしいのは、だれ しく喋りだした。 も本気でフレットナーの自殺箱なんかで、あちこち振りまわされた 「紳士ならびにヴィードラ諸君、ここにおいで願ったのは、かの有いと望んでいるものはなかったということだ。それはたんに、われ 名なフレットナー教授である」 われが気が弱すぎて、それを断わりきれなかったというだけのこと 彼がチビのほうにしゃちこばった会釈をすると、一チビはニタリとにすぎない。でなければ、マクナルティの顔にあらわれる表情が見 笑って、菓子を盗もうとして見つかった子供のように足をもじもじ たさに、自らすすんで死地に身を投じたというところか。 させた。 「ありがとう、諸君 , マクナルティは、葬式のときにしか使われな はな 「教授は、目下、新造の遠宇宙探険船『マラソン』号のために、乗いような荘重な声音で言った。そして唾を呑みこみ、洟をかむと、 組員を募集しておられる。ジェイ・スコアならびに六人の機関士諸ほとんど愛おしげなともいえる眼差しで順ぐりに一同を見わたした 君が、すでにわたしとともにこの船に乗り組むことを志願してくれ が、ふとその眼が、一隅でだらしなく触手を投けだし、いぎたなく た。この申し出は受けいれられ、われわれは諸君の休暇期間中、必眠りこけている火星人の上に止まると、とたんに愕然たる面持ちに よっこ。 要な特殊訓練を受けてきたところだ」 「望外の喜びでした」と、フレットナーが口をはさんだ。われわれ「おい、サグ・ファーンーー・」 から船長をとりあげるというので、すこし懐柔しておく必要を感じ 言いかける彼を制して、この赤い惑星の連中の頭株であるクリ・ たのだろう。 ャングが、すばやく口をはさんだ。「わたしが触手を二本あげたん です、船長。一本はわたしのために、一本はやつのために。やつは 「地球政府当局は」と、気をよくしたマクナルティはつづけた。

9. SFマガジン 1968年6月号

Ⅲ人 乗りの 小型ム スは、 ゼネラ ズの製 ⑩運動不足をおぎなうため、床をかけまわる隊員。 品。月 世界の自家用マイクロ・ハスといったところだ。月で生れた子供たち の通学用にも使われるという。 いよいよテイヒョ火口。怪物体が静かに立っている。 ( 写真⑩ ) 磁力と放射能を発し、木星に向って奇妙な放射線を出している物体 は「」と名づけられる。放射能測定では、 300 万年前に 埋められたことがわかり、フロイド博士はショックをうける。しか もこの付近から、生物の遺骨まで発掘されているという。 地球の人類より以前に、月に生物が存在し、高度の文明が存在し ていたのだろうか ? 物体が発する強力な放射能には、ど されそうだ。 ( 写真⑩ ) んな目的があるりか ? 怪物体発掘中に数人の隊員が放射能にやら隊員のうち 3 人は、 9 カ月の旅行のあいだ人工冬眠カプセルで冬 れて倒れているのだ。 眠している。無駄な食物やサンソを節約し、ストレスを弱め、エネ 〈木星へ、木星へ〉 ルギーを浪費しないために、冬眠は反対で行なわれる。 ( 写真⑩ ) この秘密を解くカギは、木星以外にはない。アメリカ宇宙航空局この製品はゼネラル・エレクトリック社の設計。 は、木星探険のための原子力宇宙船を組立てる。 16 億キロはなれ起きている隊員は、やはり製の自動キッチンの作り出す特 た木星の秘密をさぐるためだ。 別料理を食べ、〃朝刊〃を読む。ストレス予防のため食事は固型で かくして、〈ディスを ( ラー号〉は宇宙へ出発した。全長 210 作られている。〃朝刊″とは地球から送られてくるテレビ応用の メートルの主胴の先端にある居住区は、ドラム状になっていて、人「ニ = ース板」で、このほかマイクロ化した書物、手紙などあらゆ 工重力を得るため、ゆっくり回転しているので、天井と床とが混同る映像を再現できるハニウエル社の製品。記事は放送が製作 洋 : : を第第当第。を物第ミ ⑩オルガンをひく隊員。後方にべッドが見える。 ⑩太陽灯を浴びながらテレビ電話を見る。 4

10. SFマガジン 1968年6月号

ス。ハーン ! 突如として熱がわたしの脚を焼き、快速艇が空高くわたしがこう言ったのは、べつにジェイのあまりにも四角四面な 舞いあがった。これで、屋根の上に残ったのは、わたしを入れて十性格を皮肉るためではなく、ただ彼が、われらが機械の敵の観点か 8 一人の人間と、先刻までの獄屋をがらくた置き場に変えて楽しんでらものを見るという点において、われわれほかのものたちよりはい いる、二重意識の火星人たちだけになった。ふりかえったわたしのくらかまさっているのではないか、と思ったためである。 眼に、轟音を残し、火の尾をうしろに曳いて、北へ遠ざかっていく クリ・ヤングが穴から出てき、すぐっづいてサグ・ファーンが出 快速艇の姿が見えた。 てきた。サグは周囲を見まわし、快速艇が飛びたったあとのへこみ 「すぐに戻ってくるだろうよ・・・・ーー、もしそれまでわれわれがここにい を見つけると、そこにはいりこんで触手をまるめ、居眠りをはじめ られればな」ジ = イ・スコアが、鋭いまなこで火星人たちと下の金た。すぐにあの高い、やわらかな、長くひつばった気笛のようない 属集団を見くらべながら言った。「やつらが高いところへ登れない びきが聞こえてきた。 というクリ・ヤングの言葉はまちがっているね。それでなくてどう クリ・ヤングがいまいましけに言った。「あ 「なまけものめがー して、こういった高層建築が建てられるものか」 の野郎ときたら、なにかっていうとすぐ居眠りをはじめるんだか 「すくなくとも、あそこにいるやつらは登れないねーわたしは不安ら , いびきをかいている同僚に片方の眼を向けたまま、彼はもうひ を覚えながら、下でひしめいている機械群を指ししめした。 とつをスティーヴ・グレゴリーに向けた。その。ヒントはすれの眼や 「いかにも・ーーーしかし必ずやなんらかの建設機械がべつにあるはずら、スティーヴのひょこひょこ踊る眉毛やらを見ていると、わたし だ。言ってみれば機械とび職といったやつがな。十中八、九、われにもひょっとしたら隠された才能があるかもしれないと思えてきた われがやつらの戦争のルールを破ることによって引き起こした混乱ほどだ。「それにしてもと、クリ・ヤングはむつつりと言った。 がおさまったら、それが出動してくるはずだ」彼はいまのところま「第一陣の連中は、だれもチェスの盤を置いていくことを思いっか だ平静な状態にある街路を指した。「情報の伝達にだいぶ手間どっなかったらしいな」 ているらし、 し。いまだかって、捕虜が逃亡したなんて例は彼らの記「まさにねースティーヴが、ひそかにこの手ぬかりに感謝している 憶にないんじゃないかな。 , 彼らに記憶があるとして、だが。目下のらしい顔で言った。 ところやつらは、まったく理解を絶した事態にまごっいているとい 「そんなことだと思ったよ , クリ・ヤングは仏頂面で言うと、わざ ったところだろう」 とらしくわれわれから身を遠ざけ、フールー香水の小壜をとりだし 「うん。たしかにわれわれの相手はまったく異なった種類の心理のてふんふん嗅いでみせた。そろそろ十二ポンドの気圧に堪えられな 主らしい」わたしは相槌を打った。「見たところ、やつらはあまり くなってきたらしい、とわたしは推察した。無遠慮な火星人の連中 にもきちょうめんに条件づけられていて、異常なものに出会うと、 は、人間の匂いが鼻につくのだと言っているが、わたしはそんな説 とっさにそれに対処することができないようだ」 明など一度たりと信じたことはない。