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検索対象: SFマガジン 1968年8月号
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1. SFマガジン 1968年8月号

すくんで、彼の頭のうしろのその眼を見つめるばかりであった。し た。あの連中。だが、仲間がいるにちがいない。あの管理人が、ひ かも、そのまわりには顔らしいものはないのに、その眼は、おまけとりであれだけのエンジンをつくったはずはない。 に笑っているのだ。いやらしい、自信ありげな、おそろしい徴笑な 思うに、私のこの説を裏打ちしたのはあの第三の眼であった。私 のだ。私たちを見て、面白がっているのだが、それ以上、。 とうしょたちはフィルとマージに会って、なにが起ったのかとたずねられた うというつもりはないようだった。 ので、私は自分の考えを話してきかせた。これは、ーそれほどルース 彼が戸口を通ると、ドアが大きな音をたてて閉まり、石の壁の一を驚かせはしないだろうと思っていた。彼女がそのことを自分でも 考えていたことは、疑いなかったからである。 部がすべり落ちてきて、ドアを視界から消してしまった。 私たちは震えながら立ちすくんでいた。 「・ほくは、この建物はロケット船だと思うよ」と私は言った。 「あなた、見たわね」とルースが、やっと言った。 二人は私を見つめた。フィルがにやにや笑った。だが、私がかっ 「うん」 いでいるのではないことを見てとって、笑うのをやめた。 「なんですって ? 」とマージが言った。 「あの男は、あたしたちがあのエンジンを見たことを知ってるの に、なんにもしなかったわね」 「気ちがいじみて、聞えるのは、わかってるーと私は言ったが、そ の口調は、ルースが言うときよりも、もっとルースに似ていた。 エレヴェーターがあがるあいだも、私たちは話していた。 「たぶん、実際にどこがどうってことはないんだよ」と私は言っ 「だが、あれはロケット・エンジンだよ。どんな方法で、あんなと た。「たぶん : ・ ころに据えつけたのかわからないが、しかし : : : 」私は、こう考え 私は言葉を切った。あのエンジンのことを思いだしたのだ。あれるより仕方がないというふうに肩をすくめた。「ぼくにわかってい るのは、あれがロケット・エンジンだということだけだ」 がどういうエンジンだか、私は知っていたのだ。 : これが、船だということには、なら 「あたしたち、これからどうする ? 」とルースが言った。私は彼女「だからといって、これが : ないのじゃないかな ? 」フィルは、中途で、断定から質問へと切り を見た。おびえている。私は抱きよせた。だが、私もおびえていた のだ。 かえ、よわよわしく言葉を切った。 「なるのよ」とルースが言った。 「ここを出ることだよ。それも大急ぎで」 「でも、荷造りもしてないのよ」 私は身震いした。これで話はきまったようなものだった。最近の 「じゃ、荷造りしよう。そして夜があけないうちに逃げるのだ。ま ルースの言葉は、じつにしばしば、そのとおり証明されてきたから さか、あの連中だって : 「あの連中 ? 」 「でも : ・ マージが肩をすくめた。「なんで、そうはっきり決め 3 どうして、そんなことを言ったのだろう ? ーー私には不思議だつられるの ? 」

2. SFマガジン 1968年8月号

だよ、あんな : : : 」 けだったのだ。 「ふん ! , と彼女は小さな声で言った。愛想がっきたという顔だっ 「なにか、なくしものでもなさったんですか ? 」 た。「あなたのしようのなさといったら、まるで : ・ローレの声によ 管理人の声は、低くて、猫なで声で、。ヒーター く似ていた。ルースは不意をつかれて、思わず息をのんだ。私も飛「おまえとガリレオくらいなものさ , 「本物のエンジンを見せてあげるわ。今夜、管理人が眠ったら、も びあがった。 いちど出なおすのよ。あの男が眠るとしての話だけどー 「女房が、ここにー - ー私はおどおどしながら言った。 よ。それに、・ほくまで連れてい 「主人に、絵のちゃんとした掛け方を教えていたところですの」と「ねえ、そんなこと、よしたがいい ルースが急いで割ってはいった。「それでいいのよ、あなた」彼女くのか」 。いいわよ。どうせ一騒動もちあがるとは覚悟してたん は私のほうを向いた。「釘は、まっすぐじゃなく、斜めに打ちこむ「いいわよ のよ。もうわかったでしよう ? 彼女は私の手をとった。 だから 一字もうたないまま、タイ。フライタ 1 と 私は、その午後じゅう、 管理人はほほえんだ。 にらめつこをして過した。 「さよなら , と私はぎごちなく言った。エレヴェーターのほうにも ・こ : 、』スにかカナ どるあした、 / : 彼の視線を背中に感じた。 私には納得いかなかった。ルースはほんとに本気なのだろうか ? ドアがしまると、ルースはすぐに私のほうを向いた。 「見あげたものだわ ! , と彼女はどなった。「いったい、どうするよし、あいつの話をそのまま受けとろう。ルースは開けはなしにな っていたドアを見た。偶然に。それは明らかだ。このアパートメン つもりなの、あたしたちに目をつけさせるつもり ? 」 ハウスの下に、彼女の言葉どおり、巨大なエンジンがあるとす : ? 」私は面くらって言った。 「おまえ、どうするって、・ほくが : 「いいわよ、あそこにはエンジンがあるのよ。ものすごく大きなエれば、それは、それをつくった人が、彼に絶対に知られたくないと 思ったからだ。 ンジンが。あたし、見たんですもの。そして、あの男も、エンジン のことを知ってるのよ」 ハウス。そして、その地下に 東七番街。一軒のアパートメント・ ある巨大なエンジン。 「ねえ、おまえ、じゃ、どうして : ほんとだろうか ? 「あたしを見て」と彼女はすぐに言った。 私は見た。じっとまばたきもせずに。 ず「あの管理人は、眼を三つ持ってるのよ ! 」 「あたし、気がちがったと思う ? さあ、言ってちょうだい。ぐ 彼女は震えていた。顔はまっさおだった。はじめて恐怖小説を読ん ぐずすることはないのよ」 私は溜息をついた。「おまえは想像がつよいと思うな。読みすぎだ子供のように、私をじっと見つめていた。

3. SFマガジン 1968年8月号

彼女の手が、私の手のなかで固くにぎりしめられた。「いいの よ。もう、そんなことはどうでもいいのよ。これには、なにかくさ私はめまいをおぼえた。人間は、こういうものに対し、速やかに 2 ハウスか いところがあるわね」 適応できるものではない。煉瓦建てのアパートメント・ : こんなエネルギー貯蔵庫に投げこまれて 私はうなずいてみせた。それからすぐ、闇のなかでは、うなずいら、いきなり、こんな : てみせても見えるはずがないと気づいて「うん」と言った。 は。私には、なにがなにやらわからなかった。 「おりてみましよう」と彼女が言った。 私たちが、どのくらいの時間、そこにいたのかわからない。しか 「やめたほうがいいと思うがね , と私は言った。 し、急に私は、ここから出て、このことを報告しなければならない 「あたしたち、どうしても見きわめなくちゃ」と彼女は、まるで問と気づいた。 題全体が私たちの双肩にかかっているといわんばかりの勢いで言っ 「さあ、行こう」と私は言った。私たちは階段をあがって行った が、頭がエンジンそのもののように働いた。いろいろな考えが、つ 「だが、下には、きっと誰かがいるよ」 ぎからつぎへと、怒濤のように押しよせてくる。それは、すべて狂 「ちょっと、のそくだけよ」 気じみたものであり , ーーすべてが納得できるものだった。そのなか 彼女が引っぱった。そして、おそらく、私は自分のことが恥ずかの最も狂気じみたものすらが。 しくて、それを引きもどすわけこよ 冫。いかないような気がしたのだろ私たちが地下室のホールを通っているとき、こちらにくる管理人 もや 。私たちは降りはじめた。そのとき、ふと頭にうかんだことがあの姿が見えた。早朝の靄をとおしてくるわすかな光があったとはい った。壁についているドアのこととか、エンジンのことが、彼女のえ、まだ暗かった。私はルースを引きよせると、石の柱のかげに身 言うとおりだったとすれば、あの管理人のことも彼女の言うとおりをひそめた。そして、息を殺し、管理人の近づいてくる靴音に耳を だということになり、あの男は、ほんとにもう一つ・ すました。 私はいささか現実から離れているように感じた。東七番街だそ、 彼は通りすぎた。懐中電灯をもっていたが、あたりを照しまわし と私はもういちど自分に言いきかせた。東七番街のア。 ( ートメンはしなかった。まっすぐ開いたドアに向って行った。 ・ハウスなのだ。これは、まったくの現実なのだ。 そのときだった、それが起ったのは。 私は完全に自分を納得させることはできなかった。 彼は開けはなした戸口から流れる光の帯のなかにはいると、そこ 私たちは階段をおりきったところで立ちどまった。私は文句なくで立ちどまった。頭は向うをむいている。階段にむかって立ってい 眼をみはった。たしかにエンジンだ。異様なエンジンだった。そしる。 て、見ているうちに、それがどんな種類のエンジンか思いあたっ しかし、彼は私たちを見ているのだ。 た。私だって、ノン・フィクション的な科学ものは読んでいるの それは、わずかに残っていた私の息をとめてしまった。私は立ち ミ」 0

4. SFマガジン 1968年8月号

ったまま離さなかった。そして、降りて行くあいだも、まだしつか ちゃだめだぜ。こんなうまい話をふいにしたくはないからね」 り私の手を握り、ものすごい顔をして、そばに立っていた。 それから、私は買物に行った。 「いつ見たんだい ? 」と私は、機嫌をとろうと思って言った。 「地下室の洗濯部屋で洗濯してるときよ。洗濯部屋といっても、廊 「わかったわ、とルースが言った。「ほんとにわかったのよ , 彼女はぐじゃぐじゃに濡れた服のはい 0 た洗濯桶越しに、私をじ下なのよ、洗 0 たものを持 0 て帰ろうとしてるとき。 = レヴ = ータ ーのほうへ行ってみると、戸口が見えたの。そして、それがちょっ っと見つめた。 「わか 0 た 0 て、なにが ? 」と私は、町から買 0 てきた複写原稿用と開いてるのよ、 「はいったのかい ? 」 紙の包みをおきながら言った。 「この建物は偽装よ」と彼女は言 0 て、手をあげた。「なにも言わ彼女は私を見つめた。「はい「たんだね」と私は言 0 た。 「段々をおりていくと、そこは明るくて : ないで。あたしの言うことだけ聞いてちょうだい」 「そして、エンジンを見たんだね 私は腰をおろした。待った。「さあ、話してごらん」 「見えたのよ」 「あたし、地下室でエンジンを見つけたのよ」 「大きかったかい ? 」 「どんなエンジンだい ? 消防ポン。フ用のエンジンかい ? , 彼女の唇がぎゅ 0 としま 0 た。「さあ、行きましよう」と彼女 = レヴ = ーターがとまり、ドアが開いた。私たちは外にでた。 「どのくらいの大きさか、すぐ見せてあげるわ、 は、すこし興奮しながら言った。「あたし、この眼で見たのよ , そこは、窓もドアもない壁だった。「ここなのよ」と彼女は言っ 彼女は本気だった。 「ほくも地下室には行ったことがあるよ。エンジンなんか見なかっ 私は彼女を見た。壁をたたいてみた。「ねえ、おまえ」 とうしてだろう ? 」 たとは、・ 「その先は言わないで ! 」と彼女はたたきつけるように言った。 ルースはあたりを見まわした。そのしぐさが私には気にいらなか 0 た。まるで、誰かが窓ぎわにひそんでいて、聞き耳をたてている「あなた、壁のなかにドアがあるなんて話、聞いたことあ 0 て ? 」 「この壁にドアがあったのかい ? 」 と、ほんとに思いこんでいるようなのだ。 「たぶん、壁が滑り戸みたいになって、ドアを隠してるのね」彼女 「地下室の下なのよ , はそう言って、壁をたたきはじめた。私には空洞になってるように 私は疑わしげな顔をした。 いら 0 しゃい、見は思えなか 0 た。「くやしいわね。あなたが言おうとしてることが、 彼女は立ちあがった。「しようのない人ねー あたしにはちゃんと聞えるのよ」 せたげるから」 ホールを通り、 = 」ヴ = ーターにはいるまで、彼女は私の手をと私はなんにも言 0 ていないのだ。ただ、じ 0 と彼女を見ているだ 6

5. SFマガジン 1968年8月号

「ねえ、おまえ」私は彼女を抱きよせた。彼女は怯えきっていた。 私も怯えみたいなものを感じていた。といって、なにも管理人が一彼女は言葉を切った。「そんなこと、どうでもいいわ。問題は、 っ余分に眼をもっているからというためではなかった。 あたしがあの管理人とすれちがったときに起ったことなのよ」 最初、私はなにも言わなかった。女房がそんな話をもちこんだと「どんなことだい ? 」と私は言ったが、つぎにくるものがこわかっ き、こっちだって言う言葉はなかろうでないか。 彼女はながいあいだ震えていた。やがて、静かな、おずおずした「あの男、につこり笑うの。知ってるでしよう、あの笑い方。やさ 声で言った。 しくって、無気味で」 「あたしにはわかっていたのよ。あなたが信じてくださらないこと私は聞きながしておいた。そのことについては、とやかく言わな かった。というのは、まだ私は、この管理人のことを、チャールズ ・アダムズそっくりの顔をして生れるという不幸を背負った、なん 私はごくりと唾をのみこんだ。「ねえ、おまえ」と私は、どうし の害もない男だと思っていたからである。 ようもない気持で言った。 「今夜、下におりてみましようよ。もう放ってはおけないわ。たい 「それで ? 」と私は言った。「それから、どうしたんだい ? 」 へんなことよ , 「あの管理人とすれちがったのよ。あたし、なんだかそっとした 「ぼくは、なにも、それほど : : : 」と私は言いかけた。 の。というのは、あの男、あたしが自分でさえ知らない、あたし自 「あたしは行ってよー彼女の声はとげとげしく、いささかヒステリ身のことを知ってるってでもいうふうに、 こっちを見るからなの。 ー気味だった。「地下にエンジンがあるって言ってるのよ。嘘じゃあなたがなんて言おうとかまやしない あたし、そのとおりに感 ないの、エンジンがあるのよー じたんだから。そして、それから : : : 」 彼女は泣きだし、はけしく震えていた。私は彼女の頭をかるくた彼女はぶるっと身震いした。私は手をとってやった。 「それから ? ー たき、肩によりかからせた。「わかったよ、わかったよ」 ルースは泣きじゃくりながら、私になんか話そうとしていた。し「あの男が、あたしを見ているような気がするのよ」 かし、うまく話せなかった。後で、彼女が落ちついてから、私は腰私たちが、地下室であの男に見つかったとき、私もそれと同じ感 をすえて聞いてやった。ルースの気持を逆上させたくなかったのじをうけたものだった。ルースが言う意味がわかった。あの男に見 だ。この際、いちばんいいのは、おとなしく話を聞いてやることだられると、誰にでも、ああ、自分は見られてるなとわかるのだ。 と考えたのだ。 「うん、わかるよ」 「あたし、下のホールを歩いていたのよ」と彼女は言った。「午後「これから先は、あなたにはわかりやしないわ」と彼女は無気味な の郵便がきてるかもしれないと思って。郵便配達は、ときどき : ・調子で言った。彼女は、一瞬、からだをこわばらせ、それから言っ 8

6. SFマガジン 1968年8月号

投下する。 いる。そのかわり離着陸には広い滑走路を必要とし、せにはいかない もっともこの欠点は、ミニテレビ自体にあるというよ もちろん大火のさいは、このていどの水ではどうにも つかく高速で輸送しても飛行場から目的地までの陸上輸 り、小型強力電池の開発が進まないことに原因があると ならない。そこで O 215 機は火元にもっとも近い湖 送の時間がかかって、効率が悪くなるという欠点があっ こ 0 えよう。 に下り、水面を滑走しながらタンクに水を補給する メーカーは松下電器だが、このような新製品の開発は こカ・ハーして考えられ 二一〇〇馬力の強力なエンジン二基を備えた同機は、 こうした利点と欠点をおたがい冫 たのが、このローター変向式輸送機型大いにけっこう。電子工業各社は大いに竸争して、世界時速一八五マイルで四時間から五時間も飛び続けること ができる。つまり、火災が消えるまで、何度も水の爆撃 機。開発に当っているウエストランド社は、この方式を ができるというわけだ。 応用した小型実験機を製作して、デモ飛行を行なう準備 いかにスビード時代とはいえ消防飛行機はいささかオ を進めている。 ところでこのような形式の 0 »-äで、もっともむず : と考える方もあろう。だが森林国力ナダは、 山火事で年々巨額の財産を失っている。これまでは周囲 かしいのは離着陸時の安定、安全性。同社はローターの に防火帯を作り、内部は燃え尽きるにまかせるという戦 向きを、こまかにコントロールすることによって、問題 術をとっていたが、あまりの損失にたまりかね、このよ は解消できると説明する うな方法を実施することにふみ切ったのたそうた。 また離着陸時に、どちらか一方のエンジンが故障した 日本でも山火事はよく発生する。とぼしい森林資源を 場合に備えて、両方の推進軸を一本のシャフトで連結 レ まったくもったいない話だ。幸い、どんな奥地も海から テ すし、故障のさいも片一方の = ンジンで両方のローターが はそう遠くない。海水を投下する消防飛行艇を考えてみ くまわるようにするという。 てはいかがなものでしよう。 っ果して実用化できるかどうかーー・世界の航空界は実験 る ひ機のテスト飛行の結果を見守っている。 ◇マンモス化の悩み ( 米 ) も と ◇またヒット、ミニテレビ ( 日 ) 巨大化する航空機ーー空の採算性を向上させようと、 ッ米ソをはじめとして各国の航空工業界は、輸送機や旅客 す次ぎ次ぎと新発明、新考案を生み出して、世界の注目 ケ機の大型化に血道をあげている。 んを浴びる日本の電子工業界が、またひとつ新製品を登場 えさせ、各国を驚かした。 だが大型化につれて問題となるのは足の問題。数十ト 、その名はミニテレビ。卓上型などという中途半端なま ンから百数十トンという巨体を、どうやって損修なく、 去」のではない。ポケットにも楽々とはいるという超小型、 滑走路や無舗装の不時着飛行場に、着陸させられるかと 単 3 電池で鮮明な画像がキャッチできるというりつばな いう問題である。 そこで米航空宇宙局のラングレイ研究センターは、大 ものだい まず大きさからいくと高さ八センチ、幅四センチ、長 がかりな実験装置を設け、この問題と取り組むことにな さ一四センチ。小 型の八ミリカメラといったところた。 った。さまざまなテスト地盤の上に、本物の車輪を、実 物と同じ荷重をかけて、″着陸みさせる仕組み。 リードしてにしいものたい どうしてこのような小型にまとめることができたのを か、そのナゾは集積回路にある。厚膜—O 八個を使 安全な着陸には、タイヤのトレッドや大きさ、幅、空 ◇消火は空から ( カナダ チューナーを除くすべての回路を— O 化している 気圧などが関係してくる。そうした条件をさまざま変化 チューナー、・フラウン管、ス。ヒーカーもすべて小型化 火事といえば、どなたもサイレンをけたたましく鳴らさせ、どのような場合まで安全かをつきとめようという 、ずれ O ・ 5 したが、自動制御回路は大型並みの性能のものを取りつす赤い消防車を連想するだろう。だが消防車など古い古もので、世界でも始めての実験だという。し カナダは消防飛行艇の実用化を検討していたが、近をはじめとして超大型のジェット機、超音速機が登場す けたので、画像は 6 形や形テレビに負けないという。 るだろうが、そうした最先端を行く技術のかげに、この 難点は専用のニッケルカドミウム電池四本を使用してく現場に出動させることになった。 この消防飛行艇はカナデア社が製作した O »-a 215 ような地道な研究があることを、忘れてはなるまい も、二時間しか連続可視できないこと。電灯線で充電す るのに三時間かかるというから、そういつも眺めるわけ機。一四四 C ) ガロンの水を積み、現場の上空から火元に

7. SFマガジン 1968年8月号

と、私は言った。 「当局じゃ、このあたりの愚連隊どもが、なにかガタガタやりはじ 「なにかいい方法はないだろうか ? 」と私はフィルに言った。 ルースは眠 0 ていた。私は足音をしのばせて、ホールを横切 0 てめるんじゃないかと考えてるんですよ , と彼は言「た。 「愚連隊なんて、ついそ見かけたことはないがね」と私は、当惑し 行ったのだ。 「ルースは、エンジンをほんとに見たんじゃないかな ? 、とフィルて言った。 「それが、いるんですよー ういうことは考えられないかね ? 」 は言った。「そ 「ほう 「うん、考えられないことはないさ。だから、眼のほうも嘘じゃな 「奥さんはいかがですか ? ー いと思うんだね」 「元気だよ」私は嘘をついた。 「どうだ、おりて行って、管理人を見てくることだな。そして : ハウスは偽装だと思ってるんで 「いまだに、あのアパートメント・ すか ? 彼は笑った。 「だめだ。なんとも打つ手はないよ , 私は唾をのみこんた。「いや。あんなことは、もう言わせないよ 「ルースといっしょに、地下室に行くつもりなんだろう ? 」 うにしたよ。、 しつも、・ほくをかつぐことばかり考えてるようだな」 「あいつが、どうしてもって言うならね。でなきや、いやだよ、 彼はちょっと頭をさげ、街角で別れて行った。ところが、どうし 「いいか、きみたちが行くときは、・ほくたちも誘ってくれ、 たわけか、私は、うちに帰るまで、手が震えて、どうにも止まらな 私は不思議そうに彼を見た。「きみも、あれにとつつかれたのか かった。そして、たえず、うしろを振りかえってばかりいた。 彼は妙なふうに私を見た。のどが動くのが見えた。 「時間よーとルースが言った。 : いい力い、誰にも言っちゃだめだぜ」と彼は言っ 「だめだぜ : こ 0 私はぶつぶつ言って、寝返りをうった。ルースは肘でつついた。 私は精神もうろうとして眼をさますと、機械的に時計を見た。ラジ そして、あたりを見まわしてから、私のほうを向いた。 「うちのマージも同じことを言うんだ。あの管理人には、眼が三つウムの数字が、四時ちかくであることを示していた。 「これからすぐ行くのかい ? 」と私は、あまりの眠さに、気のきか あるって」 ない質問をしてしまった。 ちょっとのあいだ、返事がなかった。それで、こっちはすっかり 夕食後、私はアイスクリームを買いにおりていった。ジョンスン 眼がさめた。 が巡回していた。 「ずいぶん働かせられるんだね」彼が私とならんで歩きはじめる「あたしは行くわ」と彼女は静かに言った。 0 2

8. SFマガジン 1968年8月号

頼みたかった。なぜなら、それはあまりよく当るからである。 彼女は一歩もゆずらず、私たちを見た。 「これは、たしかにビルディングであって」と彼女は言った。「宇 「そうしておいて」と彼女は言った。「ある日の朝はやく、みんな 宙船は建物の外にあるのだとしたら , が眠っているときを狙って : : : 地球よ、さよならってわけよ」 「だって : : : 」マージはなにがなにやらわからなくなっていた。そ 私は頭がくらくらした。気ちがい沙汰ではあるが、なにを言えた いままで三回は、うまく、あいまいな態度でごして、そのために怒りつにくなっていた。「家の外には、なんにも 義理があろうか ? ないじゃないの、それたけはたしかよ , まかしてきた。しかし、こんどは疑う力はない。そんな危険をおか 「あの連中は、あたしたちより、科学ではうんと進んでるのよ」と すだけのこともないのだ。しかも、心のなかでは、彼女の言うとお ルースが言った。「だから、物体の透明化なんかもできるようにな りだというふうに感じていた。 ってるかもしれないわ」 「だが、この建物全体だよ」とフィルが言った。「どんな方法で : ・ : 空中に打ちあげるんだろう ? 」 私たちは、たちまち、みんな、もじもじ動きはじめたようだっ た。「ねえ、おまえ」と私は言った。 「もし、あの連中がほかの星からきたのだったら、宇宙旅行では、 「できるんでしよう、そんなことが ? 」とルースは強い調子できい おそらく、あたしたちより何世紀も進んでいると思うわ , フィルは答えようとした。そして、ちょっとロごもってから言っ 私は溜息をついた。「できるよ。できるともさ , た。「だが、こいつは船みたいには見えないよ , 「聞いてよ」 みんな静かになった。やがて、ルースが言った。 「建物は、船を覆っている殻かもしれないよーと私は言った。「お 「こんどは、おまえが聞くんだ。こ そらく、そうだろう。本物の船は、寝室をふくんでいるだけかもし「だめだ」と私はさえぎった。 れないね。あの連中としちゃ、寝室しかいらないんだから。朝はやんなものに乗 0 ていれば、われわれは死ぬかもしれない望地下室に げんにエンジンがあるし、あの管理人は、けんに眼を三つもっ く、人間がいる場所といえば、寝室なんだし : 「ちがうわ」とルースが言った。「殻をはらいのければ、どうしてている。これだけの事実があれば、われわれが立ちのくには充分な 理由があると思う。それも、即刻だ」 も人目をひかずにはすまないわー いずれにしろ、これには誰にも異議はなかった。 一同は、混乱と、中途はんばな恐怖の厚い雲の下で、思いなやみ 「この建物の人みんなに知らせましようとルースは言った。「あ ながら、沈黙していた。中途はんばと言ったのは、正体もよくわか らないのに、あるものに対して恐怖をいだくことはできないからでの人たちをほったらかしにはできないわ , 「時間がかかりすぎるわ」とマージが反対した。 ある。 「いや、知らせなくちゃいかん」と私は言った。「おまえは荷造り 5 「あのね」とルースが言った。 それを聞くと、私はそっとした。おそろしい予言はやめてくれとをしてくれ。・ほくはみんなに知らせてくる [

9. SFマガジン 1968年8月号

うに、小首をかしげていった。ヒノはちょっとまじめなつきにな するということはない。さいわい、連立微分方程式の解によると、 両種族がともに存在する期間がかなりある。その間に、お互いに知って、 識を交換し、相手のつぎの世代に伝えてやればいいんた。どうだ「いや、おれだって、そう簡単にいくとは思ってやしないさ。大気 これなら及第だろう ? 」 に接しているパインコーン人と泥に埋まっているポテト人とでは、 ヒノはとくいの表情で鼻をうごめかし、ニキビの跡をなでた。マ物の見方にしろ、価値判断の基準にしろ、ずいぶんちがっているだ ツリカはあいかわらず楚々たる風情でうなずいた。 パラサイトとい ろう。それに、鱗木を介するとはいえ、ホストⅡ 「いままでの方法よりは、ずっとよさそうねー 一方通行的な関係だ。これを知性によって、お互いに利用しあ うような、いわば共生的な関係にまでもっていけるかどうか : いつはむずかしい問題だよ , ふたりの受験探検旅行はこれでひとまず終了ということになっ た。ヒノとマツリカは手をたずさえて、宇宙艇が着地している場所「パラサイトのパインコーン人が、地上の知識をポテト人に提供す 、ってわけね , にもどった。そこにはすでに、別の調査を終了した同僚のカップでるようになればいし あるシオダとスーザンが待ちうけていた。 シオダの新妻のスーザンが、マツリカの顔をみながらいった。 「どうだった ? 」 「きっとなると思うわ、千年か二千年のうちには : : : むろん、地球 心配そうにたずねるシオダに、ヒノはにやりとしてこたえた。 時間でよー 「まあまあだよ。相手が頼りなさすぎて、活劇のできなかったのは マツリカはにつこりして、ガンジス河のように気のながい返事を ものたりないがね」 ヒノはそれから、ボマットを両種族にプレゼントするまでの経過ヒノはしばらくあきれて、マツリカのながい黒髮から黒い眸に視 を説明した。 線を往復させていたが、じきに、自分のべースをとりもどし、宇宙 、ハッチをあけて、艇内にとびこん 「これでうまくいけば、この惑星『パラサイト』全域にボマットを艇のエンジンを始動させるべく 設置する。それで地上と地中の交流がうまくゆくようになれば、両だ。ともかく、社にかえって調査課長に報告しなければならなかっ 種族の悩みは解消するってわけだ。そしてそのうちに、直接ことば たからだ。 が通じるところまでいけば、ホストもパラサイトもなくなって、ひ そしてその結果はめでたしめでたしということだった。ヒノとマ ヘビビヤ・サイエンス とつの種族になっちまうかもしれん。古典行動科学でいうマイク ツリカの処理が完全だったわけではないが、調査課長を通じて結果 ロ・コミュニケーションの応用さ」 をきいた試験官マシンは、ふたりを合格とした。なにはともあれ、 「そうつごうよくいくかねえ」 地上と地中とを結ぶ情報ルートを鱗木の樹幹のほかにつけようとい シオダはひやかす口調ではなかったが、いささか疑問だというよう試みを、試験官マシンとしては評価したからである。 : こ 5 4

10. SFマガジン 1968年8月号

いちばん下は梯子になっていた。さっきの老婦人が、気味のわる彼女が飛びおりたので、私は抱きとめた。そして、二人は姿勢を 、どしんという音をたてて、その梯子から落ち、くるぶしを捻挫立てなおすと、通路を走りはじめた。私は息がきれそうになった。 して、痛そうな悲鳴をあげた。良人の老人は飛びおりて、妻を助け脇腹がさしこむように痛んだ。 おこした。もういまでは、建物はゆさゆさ震動していた。煉瓦のあ通りに駈けこむと、ジョンスンが、ちりちりになった人の群を一 つにまとめようと、人の列のなかを縫うようにして動きまわってい いだから、埃が落ちるのが見えた。 私の声は、多勢の人の声といっしょになり、みんな同じ言葉を叫た。 んでいた。「はやく , 「さあ、こっちへ ! 」と彼はどなっていた。「落ちついて ! 」 私たちは彼のところに駈けよった。「ジョンスン ! 」と私は言っ フィルが降りるのが見えた。彼は、おそろしさに泣いているマー ジを、なかば抱えていた。地面についたとき「ああ、助かった ! 」た。「船だよ、あれは : : : 」 「船 ? 」彼はいぶかしげな顔をした。 という、マージの不明瞭な声が聞え、彼らは狭い通路を走って行っ 「あの建物だよ。あれはロケット船なんだよ ! あれは : : : 」大地 た。フィルは私たちを振りかえって見たが、マージが彼を引っぱっ がはげしく揺れた。 て行った。 ジョンスンが駈け抜けて行く人をつかまえようと、向うをむい 「ほくが先に行く ! 」私は急いでどなった。ルースが脇によったの で、私は梯子を揺りながら、飛びおりた。足の甲に激痛を、足首にた。私ははっと息をのみ、ルースは両手を頬にあてて息をとめた。 ジョンスンは、そうしてもまだ私たちを見ていたのだ。あの第三 もちょっと痛みをお・ほえた。私は上をあおいで、ルースのために両 の眼で。微笑をうかべたあの眼で。 手をひろげた。 ルースの後にいた一人の男が、自分が飛びおりられるように、彼「まさか」とルースが震え声で言った。「まさか」 そのとき、だんだん明るさをましていた空が、急に暗くなった。 女を押しのけようとした。 「なにをするんだ ! 」私は、恐怖と不安で怒り狂った野獣のように私はさっと頭をめぐらした。女たちが、恐怖のあまり、喉もさけん ばかりに悲鳴をあけていた。私は八方を見まわした。無数の壁が一 どなった。そのとき、拳銃でも持っていたら、その男を撃ったにち つになって、空をおおっているのだ。 、カ . し / 。し 「ああ、だめだわ」とルースが言った。「あたしたち、逃けだせな ルースは、その男を先に降ろしてやった。その男は、飛びおりる 。この街区全部だったのよ」 と、やっとのことで立ちあがり、はげしい息遣いで、狭い通路を走 やがて、ロケットは飛びだした。 って行った。建物はゆさゆさ揺れていた。もう、あたりの空気は、 エンジンの轟音に震えていた。 「ルース ! 」私はどなった。 7 2