六七年に公開された二本のうち、一本はリシワンルが監督。奇知と奇抜なトリッろだ。 もう コメディ『彼の名はロベルト』。クククによるドタ・ハタ調のおかし味。ただ リンとプリンツェフのシナリオで、 ・オ的発想と方法に密着しすぎて、新鮮さがな一つは という。 『秘密 主人公はロの壁』。 ベルトというシナリ オも監 。宇宙飛行督も全第第 『アンドロメダ星雲』の監督 地用につくられ部新人 シェルストビトフ たもので、外の処女 星観は人間そっ作。″巨匠〃のおじいさん連は十九世紀に 惑 の くり。これを立ち去ってもらおう ( 「アンナ・カレニナ」 未生んだ学者とか「カラマゾフ兄弟」とか ) といった意 2 が、人生経験気ごみが感じられるきびきびした映画。 をつませるた ・チェルウインスキーの脚本をもとに、 内めに、彼を巷・サドコウィッチと女流—・ボウォロッカ 。 , 家へおくり出ヤが共同監督。 来す。そこから新聞やテレビが奇妙な事件を告ける。ソ 〕こつけいな事連の北方の辺境に不可解な自然現象が観察 件がおこる。 される。巨大な帯電傘があるきまった時間 却ヴ = ガに飛に地上におりてくる。傘の下にはいった人 ダんでいくのたちは気分が変になり、ふしぎな幻覚にお に、どうしてそわれる。だがこれは自然現象なのだろう ン人間そっくりか ? 地球外の文明からおくられる何かの ア のロポットが信号ではないのか ? 霧の壁のように見え 必要なのかー るこの傘の正体はなにか ? それと連絡す ーこの点の不る手段は ? それと話をかわすことばは ? 明なのが、映結局、巨大な傘は他の宇宙の文明人から 画の痛いとこおくりこまれた偵察ロットとわかるのた
大劦カせよ、さもなくは■ < ・ = ・ヴ , イヴ , クト岡部宏之訳 いがみあう地球人とエズウォル人も助けあわねばならなかった / 不倶戴天の凶敵ラル族を倒すためには、 キャフテノの娘■ , ー ; ・ホセ・ , , ー了大野一一郎訳 愛するがゆえに、美しい船長の娘をめぐる謎の渦中に飛びこんだ青年医師が、探りあてた恐怖の真相は ? 、、 わか名はノヨー■ポール・アンダースン浅倉久志訳 強重力、極低温、巨大気圧のもとアンモニアの嵐が吹き荒ぶ木星地表ーそこにこそ自由の天地があった / 畄日 小惑星帯のうた■。・《らイヤー矢野徹訳 マウキは歌ったー地球の美しさを、宇宙飛行士の苦しみを、小惑星帯に住む呪われた者たちの悲しみを′・ 度 ノヤックポット■クリ , , ード・ a ・シ , ク小尾芙佐訳 しったい誰が、なんの目的で、こんなところに建てたのか ? 荒涼たる砂漢のただ中に聳えたっ巨大な塔ー 、、ネラマ巨篇『一一〇〇」 . 、を宇・宙の旅』 . 原作′・ ーアーサー・ 0 ・クラーク 宇宙のオデッセイっ 0 0 科学者たちが月面の磁気異常地帯から掘り出したのは、およそ三百万年前、地球人類 以外のなにものかによって故意に埋められたと思われる、巨大な黒い石板だった :
めて少ないこの小惑星でも、足先に力をこめればたちまち乾いた砂サイルが病院のつらなるドームのむれのただ中に突っ込んだ。どの くらい地中深く入りこんだのか。水素原子核の白熱の光球が地殻を のように崩れ流れる斜面を登りきるにはかりの努力が必要だった。 背負ったポンべの中の酸素がみるみる消費され、腕にはめた圧力計吹き上げ、引きちぎりながらせり出し、平原を地の底から溶岩の海 にかえ星空を呑みつくすほどに燃え狂ったあとには、すでに病院は の指針が大きく回っていった。 とっぜん視野が開けた。星空へ向ってせり上った平原はここで終放置されたままになっていた数十名の患者もろともに跡かたもなく り、私の目の前には壮大なカルデラが口を開いていた。それは小さ消えていた。吹きとばされたおびただしい土や砂は爆心にうがたれ な盆地と呼んでもよいほど大きな深いひろがりだった。私の足もとた巨大なカルデラの周囲に積ってここをほんとうの噴火口のように からほとんど垂直に切り落したような内壁は、しだいにゆるやかに変えてしまった。ドームを支えていた長大な鉄骨も、軽金属の壁 はるかに遠い盆地の底へと連なっていた。そして私の左右へ大きくも、コンクリートのトンネルも原子力発電所も、完備した手術室も 大きくのびる円弧は、星あかりにかすむあたりで全周を結んでい破片一つ残っていなかった。私の足もとからなお音もなく崩れ落ち た。崩れ . る砂はたえず私の足もとから流れ出ては、急流のように斜る砂粒の一つ一つがあるいはその変貌した名残りであるのかもしれ 面をくだってはるかな盆地の底へ消えていった。 なかった。完璧な破壊がおこなわれたことに私は満足した。満足す 動くものの影はたえて無く、もとよりなんの物音も聞えなかつる以外になにがあろう。一人の男の見果てぬ夢を私はひろったのだ た。星々はいよいよ荒涼たる光を投げかけ、深い傷痍は廃墟のようったから。 にお・ほろにかすんでいた。 私は背負ってきたペナントをおろし、円盤投げのように右手にか まえた。直径二十センチほどの六角形の。へナントはそのステンレス の表面に幾つかの文字を浮かべ、するどく星の光を反射した。私は 木星のサべナ・シティにあった私は、宇宙船《銀の虹》号の収容 体ごと大きく右腕をふりカをこめてペナントを空間にほうった。ペ には直接、なんの関係もなかったのだが、あるニュースが私を動揺 ナントは星の光の中にすぐ見えなくなり、眼下の空虚なひろがりのさせはげしくかりたてた。落ち着かない何日かを過したのち、とう どこかでかすかにきらりと光った。それきりだった。私ははじめてとう私は辺境へ向う定期輸送船に席をとった。宇宙技術者にはつね 声のかぎりに叫んだ。誰に聞えるはすもない叫びだった。 に絶対的な不足を告げている辺境の開発基地では私のような雑役に 近いような下級技術者でも大歓迎してくれる。小惑星《アキレス ここに病院があった。ここにまだ盆地もなく、星空の下に平原が》の調査から帰還してくる《銀の虹》号の収容準備に追われてい ひろがっていたとき。 る冥王星シャングリラ基地では早速、私を調査部に置いた。 満天の星屑の中から流れ星のように落下してきた一個の巨大なミ 《銀の虹》号が衛星軌道に入ってくるまでになお六十時間ほどあっ 2 7 7
ーションの背景には壮大な地球の景観がはいることになった。二百いる。フロイドがその一つをしつかりと掴むと、宇宙ステーション マイルのこの高度からは、アフリカと大西洋の大部分が見える。かの自転に合わせるために、部屋全体が回転をはじめた。 なり雲におおわれているが、黄金海岸の緑がかった青い輪郭を識別速度が増すにつれ、見えない重力の指があるかなきかのカで彼を することができた。 引っぱりはじめ、体が円を描く壁にむかって、ゆっくりとただよっ ていった。円型の壁はいつのまにか床に変った。今では彼はその上 宇宙ステーションの軸部分が、ドッキング・アームをひろげて、 に、潮の流れのなかにある海草のようにゆっくりと前後にゆれなが ゆっくりとのびてきた。その根本にある建造物とはちがい、それは 回転していない というより、むしろステーションの回転を消すら立っているのだった。ステーションの自転が作りだす遠心力が彼 ように逆向きに回っているのだ。これによって、訪れる宇宙機がさをとらえたのだ。軸に近いここでは、まだあるかなきかに等しい んざんにふりまわされる危険もなく結合することができ、人員や積が、外側へとむかうにつれ、着実に増えていくはずだった。 彼はミラーのあとについて中央発着室を出、カープする階段を下 荷の入れ換えが円滑に行なわれるわけである。 っていった。はじめは重さがほとんどなく、手すりにつかまって無 ほんのかすかな衝撃があっただけで、機とステーションは接触し た。金属的な、かするような音が外から聞え、空気の噴出音がすこ理やり体をおろさなければならないほどだ 0 た。回転する巨大な車 しのあいだ続いたが、やがて気圧は一定になった。数秒後、 = アロ輪の外縁にある旅客用ロビーに来て、はじめて正常に動きまわれる ックのドアがあき、宇宙ステーション勤務員の制服ともいえる、軽だけの重さとなった。 快な、体にびったりと合ったスラックスと半袖シャツを着た男が、 ロビーはしばらく見ないうちに模様変えしており、新しい設備が キャビンにはいってきた。 いくつかつけ足されていた。前からあった椅子、小テーブル、レス トラン、郵便局のほかに、新しく床屋、ドラッグストア、映画館、 「ようこそ、フロイド博士。ステーション保安課のニック・ミラー です。往復船の出発まであなたの付添いをする命令を受けました」そしてみやげもの売店ができていた。売店では、月面や惑星面の写 握手がすむと、フロイドはスチワーデスに笑顔をむけていっ真、スライドのほか、ルーニク、レインジャー、サーベイヤーなど た。「タインズ機長によろしく。快適な旅だったと伝えてくださの実物断片が売られており、プラスチックの台にきちんとのつかっ て、法外な値がついていた。 帰りには、またあなたがたと会えるかもしれない 細心の注意をはらってーー無重量状態を経験するのは一年ぶりな「発つ前に何か召しあがりますか ? 」とミラーがきいた。「乗船は スペースレッグ ので、宇宙歩きのコツを取り戻すまでにはまだしばらくかかるだろ三十分後です , 周囲の物を手がかりにエアロックを抜けると、彼は宇宙ステ 「ブラック・コーヒーをおねがいしようかーーー砂糖は二つーーーそれ ーションの軸部分にある巨大な円型の部屋に出た。厚い詰め物で全から地球に電話したいんだがね」 面がおおわれた部屋で、壁のくぼみのいたるところに把手がついて「承知しました、博士ーー注文してきますーー・電話はそこです」 249
3G の重力、絶対温度 140 度の極寒、・想像を - 絶する巨大な気圧のもと、一アンモニアの烈風 、か液体メタンの雨を叩きつける嵐の木星地表 そこににそい自由の天地があったのだ / イラスト / 金森、達 訳 / 浅倉久 . じ、 ホーノレ・アンダースン わが名はジョー ——CALL. ME ・」 OE
してつくった帯である。通り道に沿って規則 正しく立ちならぶ細長い棒の先端では、明り が明減している。今は夜、夜明けまでまだ数 時間あるが、クラビウス基地からへ の二百マイルの道のりも、これで迷うことは ・メキシコや 頭上の星は、晴れた夜ニ = ー コロラドの高原から見上げる星に比べて、そ れほど明るくも、それほど数が多くもない。 しかし地球にいるという錯覚をぶちこわすも のが、その漆黒の空には二つあった。 北の地平線に低 一つは、地球そのもの くかかるまばゆいかがり火である。その巨大 な半球からふりそそぐ光は、満月の何十倍も の明るさで、あたり一帯を冷たい青緑色の螢 光でつつんでいた。 もう一つの現象は、東から斜めに空にの・ほ っている、かすかな真珠色の円錐形の光だっ た。地平線に近づくにつれ、それは明るくな り、その下に巨大な火が隠されているのをほ のめかしている。その青白い輝きは、数少な い皆既日食のとき以外、地球では見ることは できない。それはコロナ。まもなく太陽がこ の眠れる土地を強烈な光で打ちのめしに来る ことを告げる、月の夜明けの先がけなのだ。 運転席のすぐ下の前部観測ロビーに、 ポーセンやマイクルズといっしょにすわりな がら、フロイドは、三百万年という年月 急に目の前に開けた時の深淵ーーのことを考 えまいとしながらふと考えている自分に、何 旁み度気づいたかしらない。科学的素養を身につ けた人間の常として、彼はそれ以上の長い年 月を考えることにも慣れていたーーーしかし、 それは星の運行とか生命のない宇宙のゆっく りした回転などに限ったことで、精神とか知 性とは関わりあいのないことだった。そう った年月は、感情のたちいる余地のないもの 。こっこ。 三百万年とは ! 数々の帝国と皇帝、数々 の勝利と悲劇を内に含む、文字に書かれた歴 史の無限に複雑なパノラマも、その驚くべき この黒い 期間のわずか千分の一にすぎない。 謎が、月面でもっとも明るい、もっとも雄大 な火口のなかに細心の注意をこめて埋められ たころには、ヒトばかりでなく、地球に棲息 している動物の大部分は存在しなかったの それは意図があって埋められたものである とマイクルズ博士は確信していた。「はじめ は , と彼は説明した。「地底の建造物のあり かを示す標識かもしれないと考えたんです よ。しかし、このあいだの掘削の結果、・その ◆ - 」 0 267
誤りで、アングルシーが依然としてアングルシーであるなら、彼は「ほう。これだけのことか ? ここでジョーになることをおれが怖 正常な人間の意識を受けとり、ほかにあるトラブルの原因を探るこれていると考えたーーーそしてその理由を知ろうとしたのか ? だが まえに話したはずだそ、おれは怖がっていないと ! 」 とができるわけだ。 《それを信じるべきだった》コーネリアスは囁きを返した。 脳がわめいている ! 「ふむ。わかったら回路から出てゆけ」ジョーはまだ声高に唸りつ 《なにがおれに起こったのだろう ? 》 づけた。「もう二度と管制室へくるな。いいか ? 電子管がどう 一瞬、思考を鋸歯のようなたわごとに変えてしまった干渉波が、 いくらおれが片輪者で 彼を狼狽させた。あえぐように息を吸いこむ。それは木星の空気だだろうと、きさまの顔など見たくもない。 った。異形の犬たちが、よそものの存在を感じたのか、唸り声をあも、まだきさまぐらいはばらばらにできるそ。さあーースイッチを 切れーーおれをひとりにしろ。最初の船があとしばらくで着陸する げた。 そして、認識、記憶の蘇り、そして恐怖する余地も与えないほどんだ , ・アングルシー ? 》 の巨大な怒り、ジョーは肺いつばいに息を吸いこみ、丘をどよもす《きみが片輪者 ? : : : きみがか、ジョー 「なんだと ? 」丘の上の巨大な灰色の生物は、とっぜんラッパの音 ような大声でどなった。 をききつけたように、たけだけしい頭をもたげた。「なんのことだ 「おれの心から出てゆけ ! 」 コーネリアスがまっさかさまに無意識へと落下してゆくのが感じ ? 」 られた。圧倒的な思念の一撃でたりたのだ。彼は笑いとも唸りとも《わからないのか ? 》弱々しい思念がぼそぼそと答えた。《思念投 つかぬ声をあげ、圧力をゆるめた。 射装置の働きかたは知っているだろう ? ほんとうなら、私がアン 頭上では、雷雲のあいだに、降下してくるロケットの最初の噴射グルシーの脳にあるアングルシーの心を、干渉に気づかれすに探る 炎が見えた。 ことができたはずだということも、知っているだろう ? 相手がま コーネリアスの心は光にむかって這いの・ほった。水面にやっとた ったく人間とは異質な精神なら、私も探れなかったし、むこうも私 どりつき、ロをばくばくさせて空気を吸いこみ、手をダイアルに伸に気づかなかったはずだ。フィルターがそうした信号を通さないだ ろうから。 ばした。装置を切って、逃けなければ。 だが、きみは最初の瞬間から私の存在に気づいた。となると、非 「おい、そうあわてるな」無気味なジョーの声が、コーネリアスの 筋肉を金縛りにするような命令をくだした。「この一件の意味が知人間の脳に人間の心が宿っているとしか考えられない。 きみはもはや木星第五衛星にいる廃人じゃない。きみはジョーな りたい。じっとして、おれにのぞかせてみろ ! , 白熱した疑問符と ・アングルシーなんだ》 でも形容するしかないインパルスが、叩きつけられてきた。コーネんだーーージョー 「いや、こいつあおどろいたな」ジョーはいった。「おまえのいう リアスの前脳で、記億が粉みじんに砕けた。
御装置の一部がきかなくな 0 ていたイド人の男は応援か修理用部「き「と思い出せるさ、息子が可愛いければな」 マウキは息子を眺めた。すると、子供はそのふさふさした白い頭 品を求めて、おれたちがやって来るまえに飛び去ったんだなと、ホ プキンスは考えた。ということは、近くにイド人が大勢かたまったを、こっくりとうなずかせた。 「知らないったら」 ところがあるということだ。 ホプキンスは、女が本当のことを言っているとは思ったが、子供 イド人たちは発見しにくく、広い宇宙でうまく戦闘にもちこむの は不可能だった。かれらは環状惑星群に散らばっていて、宇宙連邦を船室から外に出し、精神病医に命じて、薬品を使って女に催眠術 機構がしかけるどんな罠からも逃げ去るのだ。だがいま、ホプキンをかけさせたーー・・・・スコボラミン、一酸化窒素、あらゆる薬品を使っ て。 スはかれらを殲減するいい機会をつかんだのだ。かれは、そのイド 人が部品か応援か、あるいはその両方といっしょに戻ってくるだろ「この女に、あのスクーターのラジオを聞かせて応答させたいん うと思い、無線機に監視装置をつけて、スクーターを宇宙へ押しも だ。イドのやつらが呼びかけてきたら、うまくひっかけられるだろ どした。そして、しばらくのあいた隠れているのた。 うからな。思いどおりにこの女を使えるようにしなければいけない ホプキンスは巨大な宇宙艇を、宇宙空間に漂流しているばかでかんだ」 い岩のかたまりのそばへ移動させ、まっくらな蔭に人ったので、外そうホプキンスは言ったが、医師は五時間たっとやめてしまった。 「だめです。催眠術がかかりません。珍しいことです。こういう処 からその隕石と宇宙艇を見わけるのは、ほとんど不可能になった。 例のスクーターは、一キロ離れた軌道にぼっかりと浮かんでい置に抵抗できるものはないと思っていたんですが、 「よし、ぶちこんどけ ! だが、この失敗は記録しておくそー る。何ものも、見つけられずに、それに近づくことはできないの しいカモだし、何人かは捕虜にで ホプキンスはいまいましそうに言い、医師は肩をすくめ、ぐった だ。イド人たちがやってきたら、 きるだろう。それまでに、あの女からイドの基地について、何か情りとなったマウキの身体をひきずって営倉へつれていった。そし て、女を押しこむとドアに鍵をかけた。 報が得られることは確実だ それから五時間ほどして、マウキは歌いはじめたのだ。 マウキは、自分がイド人の妻であり、息子が宇宙で生まれたのだ ホプキンスが、マウキに、息子は死んでしまったと伝えてから何 ということを認めた。ホプキンスは、そのことを航海日誌に記入さ せ、それから、いちばん近いイドの基地はどこかと彼女に尋ねたの時間も、巨大な宇宙艇は静まりかえ「ていたが、少佐は眠られない まま抗重力椅子にすわって、おもしろくもなさそうに闇の中を見つ めていた。 「知らないわー 彼女はそう答え、ホプキンスは小さなイド人を鋭い眼つきで見少年の眼の前で = アロックを閉めたとき、その顔に浮かんだ陰気 な表情を、少佐はまだ憶えていた。あの小僧は、何が起こるのか知 た。すると、子供はつめたくあざ笑うように唇をゆがめた。 せんめつ 5
ったろう。おれは、ー・ー」 前のどてつ腹をぶち抜いてやることもできたんだそ。なぜやめたか その声が「ウッ」という驚きの声になって跡切れた。獲物を襲うって、それは、下のとんでもないジャングルや沼地から脱出したか 蛇のような素早さで、エズウォルが体を捻り、鎌首をもたげ、おそったら、身内のけんかは後まわしにして、まず協力することだと、 ろしい牙と爪をむき出すと、獰猛な青い塊りとなって、凄い勢いでおまえの頭でもわかりかけてきたらしいからさー 巨大な鳥に向ってとびかかった。その鳥は反重力いかだのキラキラ返事の思考がはね返ってきた。それは微動だにもせずかれを見下 ろしているスレート色の目と同じように冷たかった。 光る屋根に、まっ逆さまに急降下してくるところだった。 鳥は体をかわさなかった。そいつのガラス玉のような、むき出し「ジェイミスン教授、あんたのやればできたということなど、前も た残忍な目と、がっしりした熊手のような鉤爪が、エズウォルに向ってあんたのしようとすることが解るおれにとっては、ものの数で ってつかみかかる恐ろしい光景が、ジェイミスンの目に、ちらりとはない。おれと協力したいという、あんたの親切な申し出について 映った。それから は、くりかえしていうが、おれはあんたが死ぬのを見届けるために いかだは激流の中の木の葉のように揺れた。ジェイミスンは目もここへきたので、そのちっぽけな体を守ってやるためではない。だ くらむス。ヒードで左右に振り回された。大鳥の強力な翼が空を撃から、これ以上無駄な嘆願はやめて、科学者にふさわしい威厳をも ち、風を切る音が雷鳴のようにとどろき、気が遠くなった。かれはって、運命と対決してもらいたい , ジェイミスンは黙っていた。暖かい湿った風が、ちょっと体にあ 息をのんで銃をあけた。赤い閃光が翼の一枚に吸いこまれるように たって、はじめて、下界の嫌らしい匂いがかすかに伝わってきた。 走った。翼は黒い尾を引いてひるがえり、折れた。それと同時に、 鳥は荒れ狂うエズウォルの怪力のために 、、かだから文字通り投けいかだはまだすごい高度にあった。しかし、この原始の大地に、し なやカたが、 飛ばされた。 : : 曖昧な力でしがみついていた湿った霞が、いくらか薄 鳥ははるか下の方へ落ちてゆき、霞の中の汚点となり、ついにずれてきていた。数分前までは、あたり一面にたちこめる霧に隠れて いた、ジャングルや海のまだらが、今でははっきりと姿を現わし、 っと下の黒い地表に消えた。 ジ = イミスンの頭上では、危うくバランスを崩したエズウォル黒い木々の恐ろしい無形の塊と、射しこむ陽光を浴びてキラキラ光 。、、いかだの縁に宙吊りになっていた。その組み合わせ脚腕の四本る水面とが、交錯して見えた。 が、むなしく空をつかみ、残りの二本が、いかだの屋根の金属棒を幻想的な、想像を絶する眺めだった。はるか北方の霞の中まで、 必死につかもうとしていたーーーそして成功した。巨体が引き上げら目の届くかぎりは水蒸気の立ち昇るジャングルと、かすんで光る大 この果てしのない、すさまじい現実、これが れ、ついに頑丈な青い頭だけが、ふたたび視野に残った。ジェイミ洋が広がっていた エリスタン第二惑星なのだ。そして、そのかなた、水蒸気がびっし スンは陰惨な笑いを浮べて、銃をおろした。 あいまいもこ こ、このえんえんと続くジ 「どうだ、鳥一羽でさえ、おれたちの手に余るんだーーーそれに、おりとたちこめ、曖昧模糊とした、どこか冫 2
と見つめていた。 一息入れて、「どうだ ? 」 「またあるージ = イミスンは言葉を続けた。「おれの思考が全部読 工ズウォルの視線には灰色の炎が燃え、やっとで返してよこした 思考には凶暴な響きがあ 0 た。「あんたという人は、ジ = イミスンめるふりをするのはよせ。おまえの宗教のこともわかっているんだ 教授、予想以上に手強いな。おれたちの間には妥協の余地はないこぞ。こちらの思考形態がいちばんは 0 きりした時だけ、それも特 に、話をしようと心が集中した時だけしか読めないにきまってい とがはっきりしたー る」 「だが、いま頼んでいる期限っきの約東はしてくれるんだろう ? 「ふりをしているわけではないーエズウォルは冷たく答えた。「で 灰色の目が奇妙に光を失い、長く薄い唇を開けて唸ると、巨大な きるだけ、あんたを迷わしておいてやるんだ , 黒い牙が見えた。 「それがはっきりしないうちは、おれが困るのはもちろんだ」とジ そっけなく、「いやだー ェイミスン。「だが、それほどでもないぞ。いったん、仮説を立て 「そう思ったージェイミスンは穏やかにいった。「それをはっきり たら、おれはそれに従って行動する。もし間違っているとわかった しておきたかったんだー 返事はなかった。 = ズウォルはそこに坐ったままで、かれをじっ時は、おまえの体力に対して、この原子銃がものをいうそ。本命の