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検索対象: SFマガジン 1968年9月臨時増刊号
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1. SFマガジン 1968年9月臨時増刊号

ソ連映画界の一近況 と自ら答えて、まず読者にお でもないー ソ連で一年に封切られる映画は二〇〇本でこういっている。 前後。そのうち一二〇本前後が国産、八〇「封切りされるたびにそれそれの映画ける文学の巨大な成功を引合いに出 本前後が外国映画。こういう割合がここ数があげる入場券売上けの大成功は絶対的でし、そして映画と観客との関係を証明 するために、前掲の文句を書いているので 年つづいていゑ観客数は、一九六八年六ある ( 傍点は原文 ) 」 ある。 これは ()n 映画の割合が他のジャンル、 月九日のプラウダ紙によると、六七年度で 例えば、パレーやオペラの映画化などより 四五億にの・ほる。 ソヴ = ト映画は独立採算制とはい 0 てもなおすくない、という苦情につづく文句六二年にひきおこした『両棲人間』のセ も、親方日の丸だから、とかく赤字の出るである。映画は一二〇本前後も作られるのンセーシ = ンが思い出される。アレクサン ドル・べリャーエフの原作 r-v を・カプ のが多い。コメディ、探偵、活劇ものがよに、映画はそのうちのたった一本、し くかせいで、この赤字をカバーする。とりかも毎年ではないばかりか、この割合さレルなどがシナリオに書き、・カザンス キーが演出したレニングラ 1 ド撮影所作 わけ福の神とされているのが映画であえ、しだいに減っていく。 におなけ る。月二回発行、部数二八〇万を誇る映画してみると、観客が映画を要求しな品。スタンダード版のカラー 尸しいや、とんじみのスターが顔を出すのは禁物とされ ェクラン〉は六七年第八号いからか、と同誌は自ら司、 誌〈ソヴェト・ カットは「両棲人間』の 1 シーン

2. SFマガジン 1968年9月臨時増刊号

たジェット機は、世界中でもっとも知られた、それでいてもっとも 胸おどらせる景観の一つにむかって、いま高度をさげつつあった。 特別飛行 そこ、フロリダ海岸のさしわたし二十マイルの土地には、宇宙時代 地球を離れるのはこれで何度目かわからないが、感激はいっこうの最初の二つのジ = ネレーションが展開している。南側、明減する にさめないものだ、とヘイウッド・フロイド博士は思った。火星へ赤い安全灯に縁どられて見えるのは、サターンやネプチューンの巨 群。人類が惑星へと進出する足がかりとなったそれ 大なガントリー は一度、月へは三度、各種の宇宙ステーションへは数えきれないく らい行っている。それでも離陸の瞬間がまじかになると、全身の緊らも、今では歴史の一部となってしまった。地平線近く、フラッド 張が高まり、驚きや畏怖ーー・そして、そう、不安ーーが内に生まれライトの光をあびて、きらめきながらたっ銀色の塔は、最後のサタ ーン 5 型。もう二十年近くのあいだ、国家的記念碑として、また巡 ているのに気がつく。これでは、宇宙空間の最初の洗礼を受ける田 礼の地として、その役割を果してきたものだ。それほど遠くないと 舎ものとすこしも変りはない 大統領との深夜の打合わせの後、彼をワシントンから急送してきころで、人工の山のように空を背にうかびでているのは、垂直組立 まをト第寧 ・ツイ朝、 0 簽を 1 口まロえ口がロきロ 今年のコ・一ルデン・ウィークには , S F 映画の 2 本 の大作『猿の惑星』と『 2001 年宇宙の旅』が同時に公 開され , さまざまな話題を呼びました。『猿の惑星』 は寓意的な冒険 SF 映画として ( ストーリイの論理性 をとやかくいわなければ ) 見事な成功をおさめました が , それとは対照的な意味で , 『猿の惑星』以上に S F ファンを陶酔させたのが , 『 2001 年宇宙の旅』でし 脚本アーサー・ C ・クラーク , スタンリー・カプリ この顔ぶれからも想像がつくとおり , 『 2001 年一一 - 』は , 人類と超生命ととの接触を描いたリアリ スティックな , それでいて驚くほどファンタスティッ クな SF 映画でした。映画がカプリックの意図によっ て , 映画技術をフルに活用した視覚的効果を前面に押 しだしていたのに比べ , この原作は , 映画のストーリ イをかなり忠実になそりながら , 小説でしか表わせな いクラークの世界を , センス・オフ・・ワンダーをたっ ふり盛りこんで描ききっています。 本誌に掲載したのは , 全六部からなる小説の第二 部 , 百万年前の地球を舞台にした第一部に続く部分で すが , 全体はまもなく一冊の本にまとまって早川書房 から出版されます。 ( 訳者 ) 242

3. SFマガジン 1968年9月臨時増刊号

昭和四十三年九月十五日印刷・発行 印じ、 空想科学小説 = マガンン ( 第九巻第十号 ) 〔特集〕大宇宙を馳せるン ヴォクト協力せよ , さもなくは シマックジャックホット 龍スペースマン 光瀬 アンタースンわか名はショ ~ 響田有恒初手柄宇宙邂 眉村卓養成所教官 「 20 田年宇宙の旅」の原作、、 シネ クラーク宇宙のオテッセイ 1 9 6 8 早川書房 臨時増刊 MAGAZINE 0F SCIENCE FICTION & FACT

4. SFマガジン 1968年9月臨時増刊号

0 0 0 0 0 0 C い 1 ⅢⅢⅢ ⅢⅢⅢ 聞ⅢⅢ 薬が必ず出現するだろうと、なぐさめることしかできなかった。 たまたまハインラインのことに話が及び、彼の「宇宙の戦士」が右翼的だとかなんとか、日本でいろい ろ議論されていると言うと、ドイッチェ氏がのりだし、「あいつはむかしからけっこう右翼た」と言った カロイ氏とドイツ が、それは非難の口調ではなく、友人として半分ジョークを含んでいるようであった。・ チェ氏によると、ハインラインは実にきちんとした男で、はじめから将来の図表を作り、作品もほ・ほそれ に従って書いている、という。ドイッチェ氏が帰りにおれの家に寄れば、その図表を見せるというので、 実をいうと私は個人的なノートでも見せられるのかと胸をときめかした。 しかし、そうではなかった。一九五〇年刊の「月を売った男ー一九五一年の「地球の緑の丘 . などのハ ード・カ。ハー本の表紙の裏に、一九五一年から二六〇〇年の未来史の表がのっているので、このことは私 は知らなかったが、福島氏によればファンなら周知のことの由だ。ただ、ドイッチェ氏は、よく忘れ たが一九三〇 ~ 四〇年ころ、これらの作品が雑誌に出るまえ、ハインラインはこの表を作っていたとい う。また、それぞれの本にはハインラインのサインがあり、「月を売った男ーと本はドイッチェ氏に捧げ られていて、本当にこの人間味あるフランケンシュタイン氏がハイン、ラインの古くからの友人であること がわかった。 そうこうしているうち、時計は夜半を示し、ガロイ氏が、「彼の仕事の時間だ」といった。ドイッチェ そういうわけで、ハインラインを電話で 氏は、ニューオリンズの新聞の論説をこれから書くのだという 呼びだすという彼の最初の話も、うやむやになってしまった。 ガロイ夫妻はホテルまで私を送ってくれた。もちろん氏の病気のため、運転は夫人である。 ガロイ氏は、医者のくれる分量の薬をのむと・ほんやりして作品がかけぬ、実は今、自分でこっそり薬の 量を減らしているのだと話した。それで発作の回数が増さなければそれでよいと私は答え、最後の握手を 交すとき、その不利な条件をガロイ氏が克服して、これから先よいものをどしどし書いてくれることを心 から祈った。 HUi ロロ ド A Q ー E 円 3

5. SFマガジン 1968年9月臨時増刊号

私たちはとりあえすおもしろく て価値ある次のような作品の映画 化を提唱するーーー他の星系の人た ちとの接触を物語るストルガッキ ー兄弟の『神になることはむずか " しい』。現代資本主義社会をみご とに風刺するド = = プロフの『私 が消えた』。核物理学者の異常な 発見を描くサフチェンコの『黒い 星』。また二〇〇〇年後の人間の 生活はどうなるかというエフレー モフの『アンドロメダ星雲』は、 現代のこどもから老人までをひきつける魅 トリエストで行なわれる国際映画祭 惑のテーマではないか : : : 」 ( すでに二回開催された ) にも、古物しか 同誌編集局の答ーーー 出品できなかった。 いままでにこのジャンルの映画は約さて ()n 映画のニュースとしては、さい 一〇本、そのうちの半分は二・十世紀もの、わい次のようにお知らせすることができ という情けないありさまなので、せつかくる。ゴリキー撮影所で『ガーリン技師の双ウィッチがいる。彼はこのジャンルのむず 曲面』完成。キエフ撮影所で『アンドロメかしさと矛盾を解剖して、映画化の可能性 ダ星雲』企画。六六年から六七年にかけをさぐっている ( 〈映画芸術〉六六年五月 て、モスフィルムで『われらは火星人』号 ) 。最近〈芸術〉社から『ファンタジー ( 注、後に『秘密の壁』と改題 ) 、レニンの国々の地図』という本を出した。諸外国 の映画の歴史をしらべて、将来の展望 ログラード撮影所で『彼の名はロベルト』が を述べる。たくさんのスチルに漫画まで加 映画化されるだろう。 家 画 観客大衆の要望にこたえて、尊敬すべきえて、おもしろく読みごたえがあり、見ご たえがある。映画に興味をもつ人の必 Ø映画人の奮起をのそむ , 見の書であろう。 9 7 作家でとりわけ映画に深くうち ストルガッキー兄弟などは楽観的であ こんでいる人のなかにゲォルギー・グレー る。文学におけるブラットべリ、エフレー ソコロフの SF 画〔上〕宇宙探倹者〔下〕未知の境界にて

6. SFマガジン 1968年9月臨時増刊号

学は、かっに 0 彼は三十七歳で、一九六六年七月十八日から七十時間余、ジェミニ川で四十三回地球をまわり、同僚の ャング氏と最初の二重ランデヴーに成功した男である。ハンサムな、やさしい感じの、むしろやさ男で、 では今年中に二回、来年初期に一回、月ロケットの最終の地球軌道上のテストをやるが、この三 度目の一員として予定されている。彼自身は、この三度目のテストが成功すれば、次には月着陸をやると 言っていたが、他の関係の人の話では、月到着はまず一九六九年の末だろうとのことであった。 は予算をけずられたが、月計画のものはすでにとってあるので、月ロケットそのものには支障 ない、ただ、それからあとのこと、たとえば火星への旅などは、予算がとれるかどうかによってきまるの で、まだまったく予想がっかない由である。 とにかく、私は記者の資格で一般人のはいれぬところまで見せてもらったが、どこのの施設も ずいぶんとオープンで、ケー。フ・ケネディなどは観光・ ( スをつらねて観光客や小学生の団体がやってく る。あれだけの予算を使っているのだから、自分らがどういう意義のあることをやっているか、国民に知 らせるという意味で、広報課の人が団体客を案内し、映画を見せるというわけである。 ニーオリンズに着いたとき、 Daniel F. Ga 一 ouye という人の招待を受けた。この地のスポンサーが、 私が他の作家に会えなかったことを聞いて手配してくれたのである。これまで七十五篇余のサイエン ス・フィクションを書いた人とのことだったが、不幸にして私はその名が記憶になかった。 ニーオリンズの主といわれる老ジャーナリストも一緒に会わせるというので、とりあえず応ずること にし、日本の界のこと、マガジンという雑誌もあることでも話そうかと思っていたら、車で迎え にきた氏がまず取りだしたのが、当の日本のマガジン二冊であったので、私はびつくりした。ただま ずいことに、一九六一年一月号「安息所」、一九六一年五月号「プライア・フル」という彼の作品の内容がま ったく思いだせない。話が喰いちがうと失礼なので、私は、申し訳ないがこれはまだ読んでいない、日本 に戻ったらさっそく読むと逃げを打った。いま、日本でその「プライアブル」を読んだら、宇宙船内の連 続殺人事件をあっかった、的ミステリともいうべき、よく覚えている酒落た懐しい作品であった。 氏は端正な好男子の紳士で、人好きのする陽気な奥さんを連れていた。ただ、もう一人の、ニューオリ ンズのジャーナリストの長老というのが、名はドイッチェ氏、これが八十歳くらいの、ミイラが生きかえ ったごとき奇怪至極な人物で、実をいうと私はフランケンシ = タインを聯想してしまった。 ガロイ氏はフランス系で自分ではガルイと発音するので、それではマガジンにそう伝えましようと

7. SFマガジン 1968年9月臨時増刊号

ものがあるようにみえる。 またせつかく創造された異常な世界が、 モフ、レムのように、映画においても専門 ただそういう世界として存在していてはな の監督が出てくるだろうという。なに よりも、内外の文化に見られる発展のらない。なによりもそれは現代人に理解で〈映画芸術〉六八年一月号に〃入場券売上 ロジックを、 (-nr-v 映画の発展に応用するこきる明日の人たちの行動する場所でなけれげ〃報告が出ている。六六年前半期に封切 られて、満一カ年間にその映画をみた観客 とが、いちばんの要件であり、見通しは明ばならない。 学者の予想と画家の想像によって生まれ数であゑ『両棲人間』のように首位にな るい。ソヴェト映画も案外早く根づく のではないか。早い話が、〈レンフィルム〉たそういう世界がスクリーンにあらわれるらなかったのはいささか残念だが、でも ( レ = ングラード撮影所 ) が〃映画撮ことを期待する、とソコロフは結んでいる映画は第六位に入っている。それは前に ェクラン〉六七年第三号は いった『ガーリン技師の双曲面』で観客数 影所″となる望みなきにしもあらず、と兄が〈ソヴ = ト・ ソコロフの幻想で美しい宇宙画数枚をカラ二一〇〇万人。 ェクラン〉、 弟はいっている ( 〈ソヴェト・ ーでのせて、このすばらしい〃未知との出原作アレクセイ・トルストイ。三代にわ 六七年第三号 ) 。 映画が批評家や〃おとな〃たちに冷会い〃に、この魅惑のテーマに、心ひかれたって読みつがれているの傑作。ガー リン技師はいまでいえば″水爆の父〃テラ たくあしらわれるのはその″にせもの性″ない映画作者がいるだろうか、とアジって あるいは〃の父フォン・ブラウン に大きな原因があるといわれる。舞台がい しかし映画の広い人気にもかかわらだろう。ものすごい破壊力をもっ " 双曲 かにもっくりものに見えて、実感がわかな いという。本誌にもしばしば紹介されたソず、さしあたり映画の総元締であるソ連閣面。の発明によって、全世界を征服しよう 連画家の第一人者アンドレイ・ソ = ロ僚会議映画委員会には、映画発展の具とする。ただあまりにも原作の規模が大き フは、そういう世界の〃舞台〃は選択すべ体的な製作プランはないらしい。その死角いので、前にも二度ばかりつくられた映画 きではなく、映画のゆたかな蓄積を利用しを取除くために、ソ連映画人連盟あたりは成功しなかった。こんども監督・ギン で、この問題を追求する特別会議をひらい ツ、、フルクは失敗したようである。原作の規 て考案し、創造すべきである、という。 模に負けたというより、人物の性格づけ、 ソコロフによれば、映画の時間と空たらどうか、という声があがっている。 また金もうけには非常に熱心で、ぬけ目行動の心理的裏打ちがおろそかになり、で 間 ( 行動の場所 ) はだいたい地球の明日あ るいははるかな宇宙、まだ見たこともなのない〈ンユーズ・エクスポルトフィルム〉くの・ほうがまずいセットの中を右往左往し 、異常な世界だろうが、同時にそれはじ ( 映画輸出入公団 ) が、なんだって外国ている感じだという。 映画の輸入をためらってるのか、とその しかし四面楚歌のなかで、一年に二千一 ゅうぶんに納得いくもの、デテールにおい 百万人を動員したというのはおもしろい てさえ″現実的なものでなければならな怠慢ぶりをしかりつける声もある。 。張り子のロケットではいけない。未来観客の絶対的支持という事実の裏づけがただごととは思われないし、なにか象徴的 の考古学者のこまかい道具が今日のクリー ある以上、ソ連の映画の発展には、スでさえある。 ナーみたいであってはいけない。 トルガッキー兄弟でなくても、期待される 掲 0

8. SFマガジン 1968年9月臨時増刊号

じめたわけですーーー宇宙服を着ての作業は容易なことではありませりません。しかし私 は信じなかった ん。それはおわかりでしよう。 一行はその発見に驚いて、あわてて基地へ帰ってきたわけです。しかし今では、周囲 私たちは優秀な機械を積んだ、大規模な隊を編成しました。そしての地質学的証拠か 二週間にわたって掘り進んだ結果がーーご存じのとおりこれですーら、その年代をはっ きりさせることがで 暗い会議室が、何かを期待するようにとっぜん静まりかえった。 スクリーンの映像が変った。今まで何回も見ているのに、だれもがきます。 そこから新しいディテ 1 ルを見つけだそうと首をのばしていた。地 フロイド博士、同 球と月とをあわせて、この写真を見ることが許されているのは百人僚も私もこの物体に 足らずなのだ。 私たちの名声を賭けÅ 明るい赤と黄の宇宙服を着た男が、穴の底で十センチメートルごました。は とに目盛りのついた物差しを縦に持って立っている。明らかに夜間中国人とは無関係で 写したもので、月なのか火星なのかも定かでない。だが、こんな光す。じっさいのとこ ろ、それは人類とは 景のある惑星は、今だかってどこにもなかった。 宇宙服を着た男がポーズをとっているうしろには、一つの物体が何の関わりあいもあ あった。漆黒の物質でできた直立した平たい板である。高さおよそりませんーーこれが 気味の悪いことに、フロイドはそれか埋められた時代には、 十フィート、幅五フィート。 ら巨大な墓石を連想した。鋭い縁のある、完全に左右対称の物体人類は存在しなかっ たからです。 で、あまりにも黒いので、それを照す光をすべて吸収しているよう およその見積りで に思える。石なのか、金属なのか、プラスチックなのかーーそれと は、三百万年前。今 も人類にとっては未知の物質なのか、その写真からはまったくわか あなたが見ておられッ / らない。 「です」マイクルズ博士は、うやうやしいとさえ聞える声るのは、地球外の知 でいった。「できたてのほやほやに見えるでしよう ? これは数年的生命の存在を立証 前に作られたもので、九八年に行なわれた中国の第三次月探検隊にする最初の証拠なの 関係があると考えた人もおられるようだが、そうとるのも無理はあです」 265

9. SFマガジン 1968年9月臨時増刊号

と呼んだ絶えまない雑音をーー検出している。放射線検出器は、銀べて、不慮の事故に備えて各センター用に三部複製され、空気調節 河系やそのかなたからやってくる宇宙線を発見し、分析している。 された果てしない倉庫のなかにファイルされ、保存されていた。そ 2 中性子および >< 線望遠鏡は、人間の目には見えない特殊な星に常にれは人類の真の財宝の一つであり、銀行の金庫のなかに無意味に眠 全神経を集中している。磁気計は、太陽が送りだす突風や ( リケー る金塊よりもはるかに貴重なものなのだった。 ン , ーー太陽が時速百万イルの勢いで周囲をめぐる惑星の表面に吹しかし今、深宇宙探測機四号は奇妙な現象を発見していた・ー・・微 きつける稀薄なプラズマーーを観測している。深宇宙観測機四号 弱な、しかしまぎれもないさざ波が惑星間空間をわたっていく。そ は、このすべてを辛棒強く測定し、水晶のように明晰なその記憶にれは観測機がこれまで観測した自然現象のどれとも違うものだら 蓄えているのだった。 た。装置は自動的に、その波の方向、時間、強さを記録した。数時 今ではかえりみられもしない = レクトロ = クス時代の奇蹟である間後には、その情報は地球〈と伝えられるのだ 0 た。 そのアンテナの一つは、太陽から一定間隔以上離れることのないあ 同じ現象は、火星の周囲を一日に二回まわる火星衛星号、黄道 る一点を、常に指し示していた。数カ月ごとに、そのはるかな目標面からゆ 0 くりと高みにのぼる傾斜軌道探測機幻号、そしてまた、 は、もしここから眺める目があるとすれば、薄暗い連れをすぐそばあと一千年は到達できないはるかな遠日点めざして、冥王星のかな に従えた明るい星として姿を現わす。だがたいていの場合、それは たの冷たい虚無の中を進む人工彗星 5 号でも、観測されていた。そ 太陽の輝きに隠れて見ることはできない。 れらもまた、計器をゆり動かした特異なエネルギーの波を記録し、 その遠い惑星、地球にむけて、観測機は二十四時間ごとに、それ一定時間の後、はるかな地球の記憶庫に自動的に報告を送 0 た。 まで辛棒強く蓄えてきた情報を五分間の。 ( ルスにきちんとおさめて それそれ数百万マイル離れて独立した軌道を行く宇宙探測機、そ 送りだす。約十五分後、。 ( ルスは光速の旅を終えて目的地に到達すれらがもたらした四紕の特異な信号の間にある関連性を、 = ンピ = る。地球にはそれを待つだけが仕事の装置がある。装置は信号を増 ーターは気づかなかったかもしれない。しかし、ゴダード基地の放 幅し、記録し、ワシントン、モスクワ、キ〉ンべラ三都市の世界宇宙射線予報技師は、翌朝の」ポートを見るとすぐ、何か奇妙なものが 科学センター倉庫に眠る何千イルもの磁気テープに加えるのだ。過去一一十四時間のあいだに太陽系を通り抜けたことを知 0 た。 五十年近い昔、最初の人工衛星群が打ちあげられたころより、何彼はその軌跡の一部をとらえたにすぎなか 0 た。しかし、 = ンピ 千億、何千兆ものパルスが宇宙空間からここに送りこまれ、知識の = ーターが惑星位置図表にそれを投影した結果は、青空を横切る一 進歩に役立つ日のために蓄えられていた。これら原料のうち、加工本の飛行雲のように、新雪に残された一直線の足跡のように、明白 されるものは全体の何百、何千分の一にも満たないだろう。しかしであ 0 た。何か形のない = ネルギーの塊りが、高速モーターポート 今から十年後、五十年後、あるいは百年後、科学者たちがどんな目の航跡のように放射線の飛沫を周囲にまきちらしながら、月面を起 的でそれを利用することになるとも限らないのだ。だから情報はす点に星ぼしにむか 0 て飛んでい「たのである。 ( 第二部完 )

10. SFマガジン 1968年9月臨時増刊号

してつくった帯である。通り道に沿って規則 正しく立ちならぶ細長い棒の先端では、明り が明減している。今は夜、夜明けまでまだ数 時間あるが、クラビウス基地からへ の二百マイルの道のりも、これで迷うことは ・メキシコや 頭上の星は、晴れた夜ニ = ー コロラドの高原から見上げる星に比べて、そ れほど明るくも、それほど数が多くもない。 しかし地球にいるという錯覚をぶちこわすも のが、その漆黒の空には二つあった。 北の地平線に低 一つは、地球そのもの くかかるまばゆいかがり火である。その巨大 な半球からふりそそぐ光は、満月の何十倍も の明るさで、あたり一帯を冷たい青緑色の螢 光でつつんでいた。 もう一つの現象は、東から斜めに空にの・ほ っている、かすかな真珠色の円錐形の光だっ た。地平線に近づくにつれ、それは明るくな り、その下に巨大な火が隠されているのをほ のめかしている。その青白い輝きは、数少な い皆既日食のとき以外、地球では見ることは できない。それはコロナ。まもなく太陽がこ の眠れる土地を強烈な光で打ちのめしに来る ことを告げる、月の夜明けの先がけなのだ。 運転席のすぐ下の前部観測ロビーに、 ポーセンやマイクルズといっしょにすわりな がら、フロイドは、三百万年という年月 急に目の前に開けた時の深淵ーーのことを考 えまいとしながらふと考えている自分に、何 旁み度気づいたかしらない。科学的素養を身につ けた人間の常として、彼はそれ以上の長い年 月を考えることにも慣れていたーーーしかし、 それは星の運行とか生命のない宇宙のゆっく りした回転などに限ったことで、精神とか知 性とは関わりあいのないことだった。そう った年月は、感情のたちいる余地のないもの 。こっこ。 三百万年とは ! 数々の帝国と皇帝、数々 の勝利と悲劇を内に含む、文字に書かれた歴 史の無限に複雑なパノラマも、その驚くべき この黒い 期間のわずか千分の一にすぎない。 謎が、月面でもっとも明るい、もっとも雄大 な火口のなかに細心の注意をこめて埋められ たころには、ヒトばかりでなく、地球に棲息 している動物の大部分は存在しなかったの それは意図があって埋められたものである とマイクルズ博士は確信していた。「はじめ は , と彼は説明した。「地底の建造物のあり かを示す標識かもしれないと考えたんです よ。しかし、このあいだの掘削の結果、・その ◆ - 」 0 267