証明する。 ) テレバシーの研究によって人間のもっ創造力を合理的に 引き出す方法、天才とか才能とかいったものがどのようにして出来 るかも解明出来る」といっているのだ。 中共では、西南地区に住む辺境少数民族がいまなおテレバシーを 能力の中でここ数年来特に有名となり、小学生までもが日 日常生活に使っていることもあって、その研究は中国科学院の趙博 明博士を中心に十五年前から進められている。 常用語に使っているのがテレバシーである。先日新幹線の中で若い チベットに住むラマ僧のテレバシーも日常的なもので、高僧ほど 二人の女性が三メートル余前方の座席にいるハンサム青年の背に向 かってしっと視線を送っていた。すると数分後、そのハンサム青年その力は強く寺廟間の連絡や秘密事項はすべてテレバシーでおこな はまるで誰かに声をかけられたときのようにハッと後方を振りかえわれているのだ。 今年一月二十八日、ドイツのドレスデンにある炭坑で落盤事故が った。例の二人の女性はニッコリ顔を見合わせ「テレバシーが通し たらしいわね」といっているのを私は目撃し、大変驚いたものたっ起き十三人が生き埋めになったときのことだ。咄嗟のことに坑夫の た。こうして一人でも多くの人が現象に目を向けることは、 ・フレヒト青年は逃げ出す方向を間違えてただ一人になってしまい 埋もれている能力者を発掘することに役立っし、自分の中に 小さな空間に身を横たえていた。そこは地上との連絡パイ。フからか あるかも知れない能力の発見にも役立っと思う。 なり離れた所で密室に閉じこめられてしまったも同然だった。 事故の知らせに家族は坑口につめかけ、救助活動の進むのを待っ さて、テレバシーの研究はアメリカ、イギリス、フランスで進め た。やがて連絡パイプを通じて十二人は無事でいるという知らせが られているだけでなく唯物論の国ソビエト、中共でもおこなってい 屈いた。だが、 はぐれていたプレヒトについては生死不明と知らせ ることは注目に値いしよう。 ソビエトでは、一九六〇年レニングラード大学に「テレバシー現てきた。 ソビエト 象研究所」が開設され、さらにソビエト医学アカデミー、 ほっと安堵の胸をなでおろす十二人の前でプレヒト夫人は一度は 科学アカデ、、 ・サイ・ハネチクス研究部、ソビエト中等高等専門教泣き崩れたものの、気をとりなおし夫の生存を信じようと努力し 育省にも設けられているのだ。 た。そして地底の夫にむかって懸命に話しかけた。「あなた、しつ さらに字宙科学者たちもテレバシーを宇宙飛行に利用することを かりして下さい。生きているのでしよう。きっと救助に行きます 本格的に研究している。外電によれば、昨年四月二十四日、ソビエよ」 トの人間宇宙船ソューズ 1 号に乗って墜落死したコマロフ大佐の死 夫人は大空の星に向かって話しかけるような虚しさを覚えながら を一番早く知ったのは奥さんと子供で「万事休すーという大佐の死一心に話し続けた。 の直前の言葉をテレバシーで聞いていたそうだ。 そんな夫人に奇怪な目をむける人々を尻目に、彼女は身動きもせ ソビエトでテレバシーの研究に従事する科学者の大部分は「テレ ず六百余メートルの地底にいるプレヒトに励ましの言葉を送り続け パシー現象は実在する」という結論を出しており、科学者の一人ス ハレフスキー博士は「テレバシーは人間の頭脳の無限大の可能性を 救出作業は難行した。そのため、生存がいち早く確認されて、いた いものだ。 7
当気をそ・ををををッ女 ⅧⅢ川ⅲいにゞ ⅧⅢⅧ・ⅲい 川ⅢⅢ川聊贐 。リ物Ⅲル ているのはわずか一が、かってここに立ったものたちはまた帰ってくるかもしれない。 握りなのだ。この = 彼らでなくとも、ほかのものたちに会えるかもしない。未来はこの ューズが報道された可能性をすべて含んでいるのだ。 フロイドがそんな感慨にひたっているときだった。とっぜんへル とき、世界はどんな メットのスビーカーが、つき刺すような雑音を発した。それは、す 反応を示すだろう ? 政治的、社会的なさまじいまでに過重がかけられ、歪められた時報の音を思わせた。 意味はとほうもなく無意識に彼は、宇宙服につつまれた両手で、耳の部分をおさえてい ーの増幅器に夢中で手をの 大きい。まともな知たそして、われにかえると、レシー 性を持 0 た人間ならばした。まさぐ 0 ているあいだに、さらに四つ、鼓膜をつんざくよ すこしでも先をうな雑音がとどろき、やがて慈悲深い沈黙がおりた。 穴の周囲では、人影が驚きのあまり麻痺したように立ちつくして 見通すことができる いた。自分の装置の故障ではなかったわけだ、とフロイドは思っ 人間なら」ーだれで も、自分の人生、価た。みんな、今のつき刺すような雑音を聞いているのだ。 値、哲学に微妙な変三百万年を闇のなかで過してきたが、月面の夜明けを迎 化が起ったことに気えて発した喜びの声を。 づくだろう。たとえ 8 聞きいるものたち から何も発 見されなくても、そ れが永遠の謎のまま火星のかなた一千万マイル、人間が誰ひとり到達したことのない に終っても、人間冷たい虚無のなかを、深宇宙観測機四号は、小惑星群のこみいった は、自分がこの宇宙軌道をぬうようにゆっくりと運行していた。三年間、それは与えら のなかで決してユニれた任務を間違いなく遂行してきたーー設計を受けもったアメリカ ークな存在ではなかの科学者、建造を受けもったイギリスの工学者、発射を受けもった ロシアの技術者、彼らの協力の成果がそれであった。アンテナの繊 ったことに気づく 3 何百万年かの差です細なクモの巣は、通りすぎるラジオ・ノイズの波長をーー今よりは 7 れちがってはいるるかに単純な時代に、。 ( スカルが無邪気にも〃無限の宇宙の静寂み
の水準にはとても及ばないが、二百年の空白状態を感じさせないく その話をゴンべにしてみると、この異星人は、・ほくの猜疑心を一 らいの水準には、じゅうぶん到達している。地球の場合には、異星 言のもとに否定した。 フェイチオアン の科学技術が導入されて、飛躍的に進歩している。だから、もし、 ・ほくとゴンべは、この惑星で作られた飛船ーーっまりエアカー 地球が異星の技術を導人していなかったと仮定すれば、はたしてこ を借りて、あちこちを見てまわることになった。 、、はなはだ疑問なのだ。それ ゴンべの言ったとおり、どこへ行ってみても、住民たちは友好的の惑星の水準まで達していたかどうカ だった。こんな時には、パトロールの規則に従うより、ぐ 0 と人間も、全地球百億の人口をも 0 てしてもの話だ。 「不足していた情報をカ六ーしたのは、コン。ヒ = ーターでないか ? 的にうちとけてみせるほうが得策である。 「い 0 たい、五千人の移民から出発して、どうして、惑星ひとつをわしの星、 = ン。ヒ、ーター沢山ある。家庭用 0 ン。ヒーター、学童 ーマーケットの目玉商品用コン。ヒュータ 用コン。ヒューター、スーパ 支配することができたのだろうか ? 」 お茶の間コン。ヒ、ーター、台所用コン。ヒーターなど、とにか ・ほくは、この周遊道中で、ゴンべに疑問をぶつつけてみた。 く、いろいろある」 いくら環境に順応しやすい民族でも、これほどうまくやっていく ゴンべの星は、数量統計学と科学技術においては極端に進歩して には、なにか秘密があるはすである。しかも、この鎖国状態の惑星 いる。だから、ゴンべが、かれらの種族中の突然変異的な劣等生で では、たちまち文化の円熟期が来てしまって、そのあとには、下り も、このくらいの発想にたどりつくのは、しごく当然である。 坂を転がりおちるような転落期がやってくるはずである。それは、 他から新しいパターンの要素を外挿されない閉鎖社会がたどる、歴「しかし、いくら = ン。ヒ、ーターがあ 0 ても、その情報を受ける側 が、僅か五千人だった。しかも、その五千人が、一万倍にふくれあ 史の宿命とも呼べるものである。 中世のインカ、マヤ、アステカなどの中南米の文化や、元禄、文が 0 たんだ。どう考えても、情報量の不足がおこ 0 てくるはすだ。 そう思わないか ? 」 化期の日本文化などは、みな同じ道をたどった。 ぼくが強硬に主張すると、さすがのゴンべも答えられなくなって 「つまり、情報の絶対量が極度に不足していたはすだと思うんだ。 コンべのように、コン。ヒューターを一山いくらで売って そうだろう ? たとえば、物理学ひとつをとってみても、五千人のしまった。。 なかに、どれほどの熟練した人間がいたか、疑問じゃないか。現在いる星で育 0 た者には、それ以上は想っかないのだろう。 ディジトロニクスゲネオメカニックス いや、正 ・ほくとゴンべが見てまわった各地の施設は、地球に の科学は、極端に分化し、専門化してる。電子計数工学、遺伝工学 といったような、舌を噛みそうな名前の専門分野すらあるんだ。僅確には中国に対する、奇妙に誇大化されたイメージに従って、造ら がいれていた。 か五千人のなかに、そういう細分化された分野のエクスパート、 建物という建物が、それこそ中華料理のドイフリみたいな模様で たとは、とても考えられない」 これまで、ぼくたちが見たところ、この惑星の技術水準は、地球塗りたくられていゑそれが、時には病院でありエ場であるのだか
「ああ、確信はねえがねーとおれはいった。「図書館とでもいやあ しいかね」 「大学です、銀河系大学。われわれは通信教育コースを増設しまし た」 おれはちょっと息をのんだらしい。「ほう、そりや結構た」 「当大学は希望者に門戸を解放しております。入学金も授業料も不 要です。入学資格もありません。種々雑多な考え方や能力をもっ種 種雑多な種族のいる銀河系で、入学資格をもうけることの難しさは あなたにもおわかりでしよう」 「ごもっとも 「このコースは、これを役たてようという方ならだれでも自由に入 れます。むろんわれわれは、それらの人々がこれを正しく用い、か っ勤勉さを示してくれるように望みます」 「だれでも入れるんですかい ? 」とおれはいった。「それに無料だ って ? 」 最初の失望のあとで、あらたな可能性がひらけるのをおれは感じ た。善意大学とかなんとかいって売りだせば、もっとも甘美なもう け仕事になることは必定だ。 「一つだけ条件があります」と彼はいった。「われわれは個人々々 を相手にしてはいられません。書類手続きはすぐにできます。書類 にはまず文化の種類を記入します。あなたはあなたの文化の代表者 としてーーー自分を何とよびますか ? 」 「人類、惑星地球の産、現在五十万平方光年を支配している。そち らの地図を見てもらえば : : : 」 「現段階ではその必要はありません。人類の入学願書を受けつける っこ。
とどきやすいところにおいた。それから銃をとってみんなを呼びに 学ぶことができる、宇宙船でも何でも、実際にあんたの手でそれを っこ 0 しー 作ることによって。異星の機械がどのように操作されるのか学ぶこ 6 その晩おれはべッドに横になってあのことを考えた。考えてみるとができる、実際にあんたの手で組み立てることによって。あれは あらゆる知識を蔵しているーーそして普通の教育法のはるかにおよ とまことにお見事というよりほかはない。 ばぬすばらしい効果をあげる。 どこから手をつけたらよいか迷うくらいだ。 だからおれはあの棒を全部下見するまでは一本も貸しだすまいと まずこの大学商売、まったく不思議なことにきわめて合法的なも んだ、ただしサイロの外であった教授は、こいつが売られるとは夢心にきめた。いったいどんな新発見があるかわからないじゃないか。 おれは化学上の奇蹟や工学上の新原理や新商法や哲学の新概念な にも思っていないが。 どを夢見ながら眠りこんだ。哲学の新概念だって金もうけの種にな それからインスタント・。ハケーション・。フラン。実時間六時間で 一、二年の異星訪問プラン。おれたちが手を下すのは、地理でも社るんだとおれは思った。 おれたちはまさに宇宙の王者だ。いちいち数えきれないほどの活 会科でもお望みの科目のナイハーを拾いあげるだけ。 インフォーメイション・ビ = ーローとかリサーチこ、イジ = ンシ動分野をもった会社をつくる。商売繁昌。むろん千年かそこら後に イとかいうものをこしらえて、あらゆる題目に関する実地収録の名は報いがくるが、こっちはそれまで生きてはいない。 先生は朝になるとしらふにもどったので、フロストに拘禁室へ連 目で莫大な費用をとる。 歴史の現場記録があるにちがいないから、冒険にあこがれる人々れていかせた。もはや危険はなかったが、窮屈なところへおしこめ ておけば考えをあらためるだろうという配慮だ。いすれ話をつける に、家にいながらにしてまったく安全な冒険を供給する。 あれやこれやと考えて、どれもあまり確信はなかったが少くともがいまはそれどころではない。 調べる価値はありそうに思えた。それからおれはまた、あの教授おれは ( ッチと。 ( ンケーキを連れてサイロへ行き、またあの複式 が、きわめて効果的な教育手段と思われるものにいかにして到達しマシンにすわって教授と話し合いをし、科目をどっさり選びだし、 種々雑多な問題にけりをつけた。 たのかという点を考えた。 あんたが何かについて知りたいと思う、するとあんたは実際にそ他の教授たちが箱に詰めラベルをはった科目をどんどんもってき れを経験するのだ。根本から学ぶのだ。本で読むのでもない、話にてくれたので、おれの方も船員や機関員にそいつを船へ運ばせた。 聞くのでもない、立体映画で見るのでもない それを実地に体験 ハッチとおれはサイロの外で作業の進行を監視していた。 するのだ。知りたいと思う惑星の土の上を歩く、研究したい生物と「夢にも思わなかったねえ」と ( ッチがいった。「こんなエ合に一 ともに暮す、学びたいと思う歴史の関係者、目撃者となる。 山あてるとは。まったく正直いって、おれたちが一山あてるなんて 他にも使い途があるだろう。どんなものでもその作り方を容易にこたあ考えてもみなかったねえ。永久に探しまわってるだけだと思
` べヾ それによると、宇宙人はある惑星の美人コンテストの優勝者で、親善旅行のため地球に向っていたことがわか っこ 0 「気の毒なことをしたもんだ」 「こんなひどい姿を見たら、死ぬほど悲しむだろう」 「なんとかならないものだろうか」 医者が答えた。 「我々の医学を信頼してもらいたいね。地球へ行けば美人に戻せるよ。それに、今はショックで弱っているが、 生命の心配はない」 整形手術の前に、医者たちは、彼女を地球最高の美人にすることを、世界に約東した。 一一週間後、彼女の全身を包んでいる繃帯をとる日がきた。そして彼女の歓迎パーティが盛大に開かれた。 まず繃帯姿の彼女が拍手に迎えられ、司会者がこれまでの経過を述べた。医者が登場し、人々が見守る中で繃 帯を解いた。解きすすむにつれて、イ・フニングドレスの素晴らしい美人が全身を現わした。彼女がはにかみなが ら微笑むと、美しさがこ・ほれるように溢れて、人々を嘆声で浸してしまった。まもなく潮の湧くように彼女の美 しさと、医学の勝利を讃える拍手が起った。興奮が静まるのを待って、惑星からの親善メッセージが通訳され、 そのお礼として、彼女に大きな鏡が贈られた。 しかし、華やかな祝宴もそれまでだった。鏡に映る姿が自分であることを知ると、あまりのショックに彼女は 顔を覆って倒れた。彼女を襲った死のショックが何であったか、誰もわからなかった。 地球から彼女の死を伝えると、惑星からは、あらためて美人コンテスト二位のものを派遣するといってきた。 一カ月後、惑星から宇宙人が到着した。出迎えの中にいた科学者たちは、タラップに現われた一一人目のミス惑 星を見て息をのんだ。 力。フセルの中から救助したときの彼女と同じ姿なのだ。押しつぶされて、まるで薄い紙細工のような・ : 準備完了 東京都林貴子 「さて準備も完了した。あとは地球人の身体にはいりこむだけだ。だが、どうやれま、 ぐしいだろう ? 」 からた
トが最後にもう一度噴射を行ない、船は小さな波のあおりを受けたれに限らずほとんどの元素が、捜す技術さえあれば、月の地底に見 、ポートのようにかすかに揺れた。フロイドは数分かかってようやく、つかるのだ。 あたりをつつむ静寂と四肢をとらえている弱い重力に気づいた。 基地は地球の小型模型ともいえる閉鎖組織で、生命をかたちづく 人類が二千年にわたって夢見てきたこの信じがたい旅を、彼は事る化学成分のすべてが、その内部を循環している。空気を浄化する 故一つなく、わずか一日とすこしばかりで終えたのだ。きまりきつのは広大な「温室」ーー月面のすぐ下に埋められている広々とした た、変りばえのしない飛行を経験しただけで、彼は月に着いてしま円型の部屋だ。夜はまばゆい照明を受け、昼はさしこんでくる太陽 ったのである。 光線を受け、暖かい湿った大気につつまれて、ずんぐりした緑の植 物が何エーカーにもわたって生い繁っている。それらは、大気に酸 4 クラビウス基地 素を補充し、さらに副産物の食料をも手に入れようとするさしせま った目的で作りだされた特殊な変異植物である。 直径百五十マイルのクラビウスは、地球側の月面では二番目に大大部分の食物は、化学加工システムと藻類栽培によって作りださ きな火口で、南部高地の中央部に位置している。誕生は古く、長年れる。何カードもの透明なプラスチック・チ = ーブを流れる緑色の 月にわたる火山活動と宇宙からの落下物によ かすは、とても美食家の食欲は刺激しそうも ? て、周壁は傷つき、火口底はあばた面をさ ない代物だが、 生化学者の手にかかると、専 らしている。しかし、小惑星帯の破片が内惑 門家たけにしか区別のつかないチョップやス 星をまだ痛めつけているとき、火口生成の最 テーキに変貌するのだ。 後の時代は終り、以来それは五億年にわたっ 基地を構成する千百人の男子職員と六百人 て平和をむさぼり続けてきた。 の女子職員は、みな高度の訓練を受けた科学 者や専門家で、地球における慎重な選衡を経 そして今、その表面や地下では、新しい異 様な活動がはじまっていた。な・せならそこに てきたものばかりである。月面の生活は、今 では事実上、開拓時代初期にあったような困 人類は、月面最初の永久的な橋頭堡を築いた 、難、不便、ときたまの危険はないも同然だ からだ。緊急事態のさいには、クラビウス基 が、それでも心理的には相当に負担となるの 地は完全に自給自足となる。生命維持に必要 なものはすべて、付近の岩を破砕し、熱し、 で、閉所恐怖症の気のある人間などには適さ 化学的に処理することで製造される。水素、 ない。また、岩盤や高密度の熔岩をくりぬく 酸素、炭素、燐ーー、このすべてが、いや、こ ~ 地下基地の建設は、経費と時間のかさむ作業 258
それを確かめてから、電動車椅子の中の男は、ゆっくりと部屋を た。きっとこれは緊張からくる、心身相関的な現象なのだ。なにし ろ、おびただしい時間にわたって、ある意味で彼はジョーたったの出て廊下にむかった。割れたガラスはだれかが掃くだろう。くそく らえだ。真空管も。どいつもこいつも。 だし、そしてジョーはけんめいに働いてきたのだから。 ヘルメットを脱いだアングルシーには、もうジョーとのつながり エスプロジェクタ ジャン・コーネリアスがこれまで地球を離れた経験といえば、せ は細い一本の糸にすぎなかった。思念投射装置はまだジョーの脳に 向けられているが、もう彼自身のそれには焦点をむすんでいない。 いぜい、快適な月の保養地どまりだった。超心理学協会が彼に白羽 だが、心の奥底のどこかに、言葉にあらわせない睡眠感覚があつの矢を立てて、十三カ月の島流しを言いわたしたときには、大い冫 た。ときおり、おぼろな形や色が柔らかい闇のなかを漂ってゆくー裏切られた気持を味わったものである。彼がだれよりも思念投射装 ー夢だろうか ? ジョーの脳が、アングルシーの心に使われていな 置と、そのつむじ曲りな内臓に精通しているから、というロ実ぐら いとき、ささやかな夢を見るーーーこれはまんざらありえぬことでは いでは納得できなかった。どうして、わざわざだれかをやる必要が よ、つこ 0 チー、力学 / あるのだ ? だれがそんなものを気にするのだ ? エスプロジェクタ 赤いランプが思念投射装置のパネルにまたたき、警報ベルが哀れそれを気にしているのは、どうやら連邦科学局らしかった。なに っぽく鳴りひびいた。アングルシーは悪態をついた。指を椅子の制しろ科学局は、木星基地のあごひげを生やした隠者どもに、納税者 御装置の上に走らせると、それを一回転させて、並んだダイヤルの持ちの白紙小切手を渡したらしい ほうへ突っこませた。やはりそうだー・・・・電子管がまたちらついて と、まあそんなことを、コーネリアスは長い木星への双曲線飛行 いる ! ヒュ】ズが飛んだ。彼は片手でマスクをもぎとると、もうのあいだ、腹の中で愚痴りつづけていた。やがて、小さな内衛星へ 片手で引出しをさぐった。 の接近のため、何段階もの減速がはじまると、もうなにをもいいた っこくないみじめな状態におかれてしまった。 心の中で、ジョーとの接触が薄れていくのが感じられた。いナ ん完全につながりが失われれば、二度とそれをとり戻せるかどうかそして、ようやく着地が終り、下船をまえにして、木星を眺めに 疑わしい。しかもジョーには、数百万ドルと専門家たちの何年もの観測キャビンへ昇ったときも、彼はすっかり無言だった。もっと も、木星をはじめて見た人間なら、だれでもそれはおなじなのだ。 労力が投資されているのだ。 アーン・ヴァイケンは、いつまでも見つめているコーネリアス アングルシーは犯人の電子管をソ・ケットからひき抜いて、床に 投けつけた。。 カラスがポンとはじけた。それでいくらか腹の虫がおを、気長に待っていた。《おれでもいまだにそんな感じになるもの な》と、彼は思った。《のどもとをつかまれるような感じに。とき さまった。スペアを見つけてソケットにさしこみ、もう一度スイツ チを入れるーー・装置が温たまり、ふたたび増幅作用がはじまるにつどきは、見るのがこわくなる》 ようやく、コーネリアスはふりかえった。どことなく木星人に似 れて、彼の脳の片隅にあるジョーもしだいに強まってきた。 3 9
『両棲人間』は観客の投票ではこの辺はいささか型通りで、あまり頂けない の年度の第三位となり、〃入場券が ) 。動物を取って食う花とか、火山の爆 売上げ〃では第一位となった。そ発とか、ロポットの活躍とか、結構目を楽 ンれがきっかけで、 g-v 映画論争がしませるシーンもある。 しかし、やはり科学と芸術の合の子のよ シようやく盛んとなり、きめ手がな うな作品となっていることは否定できない のいままに、今日におよんでいる。 この年には珍らしくもう一本し、テンボののろいのもまずかった。 é『あらしの惑星』が公開された。 しばらく映画の話題はとぎれる。 らこれは科学教養映画として、レニ 映画はどうした、という投書がひん 『ングラード科学映画撮影所でつく られたので、観客調査の対象からびんと舞いこむ。そのうちの一例として、 〈ソヴェト・ ェクラン〉誌は六五年第一九 はずされたが、内容はそう改まっ たものではなく、といっても号に祖父と孫の連名の投書をのせる 「 : : : 私たちは一つの発見をした。映画が おかしくない。作者は作家・ る。それは現実のイメージが、空想の世界評論家の・カザンツ = フと、児童向きの私たちの作家より非常に遅れていて、 のイメージと衡突して、画面に溶け合わな宇宙解説で知られる・クルシャンツ = フ若い現代人に精神の糧をあたえないという いからである。この映画の主役には、ど、 オカなのだから。俳優も出れば、ロポットも出こと。私たちはいつも将来の世紀を空想 し、そのはるかな奇跡を通じて、今日を真 らズブの新人が登場するしグッチェレにはる ソ連の金星探検隊。その中にアメリカの剣に考えたいと思っているのに : アナスタシア・ウエルチンスカヤ嬢、イフ べリャーエフ、エフレーモフをはじめ、 チアンドルにはウラジ ル・コレネフ 宇宙士アラン・ケルンとそのロ、ポット、ジ この場合にも、文学におけると同じョンが入っている。金星には怪物がうんと多くの作家は、当時のジ、ール・ヴェ ルヌやウエルズにも劣らない成功を、今日 ような現象がみられる ( 本誌六八年二月号はびこっているが、理性的な生命もある。 と三月号参照 ) 。批評家の″芸術家″はそ探検隊はあらゆる危険や困難に出会う。この読者からえている。彼らは現代の科学と つ。ほを向き、新聞などはしたがって黙殺すれを乗り越えるものは友情のカである。お技術にもとづく豊富な材料を映画にあたえ る。ソ連には出版広告はない。もちろん、もしろいのはロポ乂トの役割で、はじめはている。 もちろん、近来すこしは映画が出て 映画の封切広告なんかは、一部の地方的タアメリカのビジネスのために努力するが、 刊紙あたりを除けば、まるでない。大宣伝高い目的のためにいのちを捧げるソ連宇宙きている。だが文学の広さ、観客の要 で客を釣るというしかけはかからないので士たちの心と意図を理解して、資本よりも望にくらべれば、てんでお話にもならない ある。 高価な人間への信頼を抱くようになる ( こすくなさだ。
こんだ。そして、途方もなく力がありそうな長い胴体から高々ともを頼りにしているだけだ。それがどっちだか、あんたにもわかると たげた、角の生えた恐ろしい頭を前にして、エズウォルは、こんな思う」 ジェイミスンは厳しい顔をした。「おまえが危険でないなんて、 馬鹿でかいやつには、とてもかないっこないということをしぶしぶ うぬぼれるな。その蛇は筋肉が硬直しているように見えるが、いっ 認めた様子で、ゆっくりと後ずさりした。 ジ = イミスンはふたたび、冷たい皮肉な思考をエズウォルに向けたん動き出したら、最初の百メートルぐらいは、まるで鋼鉄の・ ( ネ こ 0 だそーーだが、おまえの後にはそんな余裕はあるまい」 しう。おれは地球時間、三秒で百二十メートル走れる」 「おもしろいことを教えてやろう。おれは、星間軍事委員会の主任「何を、 科学者は、冷たくつつばねた。「できるだろうとも、もし百二十 科学者として、エリスタン第二惑星は地球艦隊の軍事基地としては メートル走れる場所があればな。だがないのだ。着陸前に見ておい 使用不能だという報告をしたんだ。主な理由は二つある。それは、 たから、このジャングルの縁の様子は、手にとるようにわかってい おまえも見たことがある、あのとんでもない肉食植物と、このちっ にけなかわいい坊やのことさ。この二つは、わんさといるそ。蛇一るんだ。 匹が一生の間に何百匹と子を生む、だから絶減できっこない。連中「そこは五十メートルばかりジャングルになっていて、その先は泥 は雌雄同体で、長さは五十メートル、体重は十トンにもなるんだ」海の岸になってカープしている。それはここの泥沼の続きなんだ。 カープはこちらがわに、ぐるっと回って逆もどりしているから、お 工ズウォルは、蛇から五メートルほど離れて立ち止り、ジェイミ まえはそのジャングルの出っ張りに見事に孤立しているわけだ。蛇 スンの方を見ずに、緊張した、すばやい思考を送ってよこした。 「こいつが現われた時はおれも驚いた。あんたに知らせなか 0 たのから逃げようと思 0 たら、一気にそいつの横を駈け抜けるよりほか 。大ざっぱに見て、おまえの動ける範囲は、前後左右五十メー は、こいつが何か物音を聞きつけて、ぼんやりと好奇心を抱いてい トルというところだーーそれじや足りないそ ! 相互依存 ? まさ ただけでゞはっきりした、つきつめた殺意など持っていなかったか にその通りさ。こんなことは、エリスタン第二惑星じゃ、一年に千 らだ。だが、そんなことはどうでもよい。問題は、やつがここにい 回も起るんだ」 て、しかも危険なことだ。まだあんたに気づいていない、だから、 ぎよっとしたように、エズウォルは黙っていたが、やがて、「な そのように動くだろう。おれに勝てるとは思っていない。だが機会 を窺っているんだ。こいつはおれを狙っているが、問題は根本的にぜ原子銃を向けてーーこいつを火あぶりにしない ? 」 「それで、やっこさんに、こちらへきてもらおうってわけか ? こ はあんたの方にある。あらゆる危険は、全部あんたのものだ」 っちは、につちもさっちもいかない状態なのに ? この大蛇ども 工ズウォルはほとんど投げやりに結論した。「あんたの計画に、 いちおうの援助はあたえてやるつもりだが、相互依存なんて馬鹿げはこの泥の中で生れて、一生の半分はその中で暮しているんだ 5 たことは、これ以上いわないでくれ。今までのところ、一方が一方そ。あの石頭を焼き切るには五分はかかるだろう。その間に、