ーグマンの素行、告発された罪を犯しうる彼の能力等 ) 、ひどい拷遂にその時は到来した。 問をうけてパーグマンに不利な証言をするよう強要された老婆、そ彼は被告席から陳述を行った。弁明の言葉は一言も吐かなかった 4 してマレイ・トーマスさえ今回の事件についてはスーグマンが法律 その必要はなかった。しかしこの真実を物語るにはメロドラマ を破りうる人物であると不承々々認めた。 じみた陣腐な感傷に堕さないようにするのが難かしかった。機械を トーマスの顔は緊張でこわばっていた。証言台をさる彼は憐憫とはげしく非難しないでいることはそれよりさらに困難だった。 びんしゆく 悔恨のいりみだれる目でバーグマンを見あげた。 一度だけ聴衆の間から失笑がおこったが周囲の人々の顰蹙をかっ 判決の時が迫った。法廷の緊張が感じられる。この種の事件はこて沈黙した。人々は耳をかたむけはじめた・ : れが最初なのだ : : : 新医師法の初の悪質違反。ニ = ーファックスや研鑽の年月。 新聞の記者がつめかけていた。新しい判例がつくられるのをこの目 コールべンシュラグの死。 でみようと : 手術の日。 コーキンズの医務省への接近。 反ロポット連盟や人道主義同盟の人たちも来ていた。この事件 は、この種のもので初のものであり今後のパターンをきめるもので外科医の領域をおかした鉄の侵入者。 あるという意味でセンセーショナルな事件であった。バ ーグマンは人々の恐怖、機械への憎悪。 チャーリイ・キックバックの女房、その恐怖 この点をおおいに活用すべきだと考えたのである。 最後に脱穀機事故で両足を失った男と男の死体に平然と手術をほ もし彼が公判にのそんでロポ陪審員を選んでいたらそうした利点 フィメック はのそめないだろう。 どこす医工のくだりに話がおよぶと、聴衆の目はバーグマンから、 ロポット陪審員がしずかに横たわっている陪審席へと向けられた。 人情の機微は不合理なものを迎合する。彼らは人間だから人間の 観点からものを見る。ロポットはロポットの観点からみる。この場大多数の人々が、ロポットをえらんだことが賢明であったかどう 合人間的なファクターがぜひとも必要だった。 かどうか疑念をいだきはじめた。大多数の人々が機械に全幅の信頼 ーグマンは をおいたことが賢明であったかどうか疑いはじめた。バ これはすでに彼自身の適応性云々の問題を大きくはみだしてい る。医師という職業の運命が彼の手中にあった。無知と全能の機械彼らに勝負をいどんでいるのだ。それについてかすかな不安はあっ だがこの勝負に賭けられているのは単に彼の医師許可証の に対する盲目的信頼によって失われる数しれぬ生命が彼の手中にあたが みではない。生命が賭けられているのだ。 彼が坦々と陳述をすすめている間に人々は彼を見、コーキンズを 全能の機械神か、とバーグマンは苦々しく考える。今日こそお前 見、ロポット陪審員を見た。 の法律をくつがえしてやるそ ! 彼は黙念としてそのときを待ち、証言に耳をかたむけた。そして陳述が終ると長い沈黙があった。陪審席が審議のために床下へ沈
に偉大な才能を秘める、苦渋にみちた相貌の持ち主。彼は就寝中によりはるかに効率のよいものである。 絶命し、新聞はこの日の朝も黄色の。フラスチック・シ ] トに黒々と手術台のほかには、麻酔用の半球容器が。ーー五箇ずつかたまって フィメック した肉太の大見出しをかかげ、各家庭の配達孔からがたがたと出て 医工の手持ちがきれた場合にすぐ手のとどく壁にとりつけてあ きた。だが大見出しはコールべンシュラグに関するものではなかつり、また高速回転ベルトが手術台の横の鍵盤式供給機と出口近くに た。彼はもはや昨日のニュースだった。見出しはフォード・クライあるセレクター・キャビネットをつないでいる。 スラー社における完全オートメーション体制に関するものであっ 設備は以上である。これが必要なすべてであった。 実際は麻酔容器も予備キャビネットも不要なのであるが、ともか プイメック 一一八頁に〈無医工時代の名外科医〉という肩書で五行ばかりのく備えておき、医工の能力にいささかなりと限界を設けているとい 死亡記事がのっていた。急性のアルコール中毒で死亡したと報じてう形である。彼らにも補助が必要なのだと、ある種の人間を安心さ せるためといわんばかりに。たとえそれが技工補助する技工の助カ であるにしても。 正確にいうとそうではない。 フィメック 彼の死には二重の原因があったのである。急性アルコール中毒。 ーグマンが入っていったとき観測室の下では三名の医工が手術 の最中であった。観測室内は暗いが手術台の照明の反射でマレイ・ そして失意。 トーマスの岩のような巨体がみえる。手術台の照明は人間の観察者 彼はひとり淋しく世を去ったが、忘れられはしなかった。この教 フィメック かしら 授に好意をよせ、獅子の頭と鷹の目をもっこの練達の師に青春の日のためのものであって、医工は内蔵燈によって真暗闇でも手術がで きるのである。 日を捧げた人々によって。適応しえぬ人々によって。 ーグマンはくしやくしやになった新聞の一一八頁をおもてにし 病院の防腐性の廊下をいまだに歩いている少数の人々によって。 スチュアート : て片手にもち、眼下の情景を見つめた。 ーグマン医博のような人物によって。 当然、今日は脳の手術だろう。今日という日は、彼をおちつかせ これは彼の物語である。 るためなら、簡単な甲状腺腫切除か足底切開の方がよかった。だが プイメック 記念病院の大手術室は標準的な造りである。半球状観察室は壁の今日は脳手術のはずである。医工の三十本の蛇のような伸縮自在の 上部にはりつき下方に大きくカーヴし、内部は二箇ずつの観察台を付属肢が伸び患者の頭を切り裂いていくはずである。 ーグマンは生唾をのみトマスの隣りの空席へ傾斜した通路をお そなえた個室に仕切られている。手術台は観察室から見やすいよう りていった。 に上下できる伸縮式の台の上にあり、中央にでんとおかれている。 フィメック 天井には昔の病院にあったような手術燈は見当らない。医工はそれ色の浅黒い、異様なほど踏みぐわに似た容貌の持ち主である。高四 それ頭頂部に強力な〈内蔵〉燈があり、これは外部のいかなる照明くつきだした頬骨がルれた印象をあたえ、こめかみに静脈がうきで
アレクセイ・アンドレイなる人物がーー二〇八七年後半にポーラ よって政府は法案を成立させた。二 0 八八年の新医師法の概要は ンド人民保護国から北米大陸の聖域に亡命したーーーそれを発明した左記の通りである。 のであった。オリン機械工具製造株式会社の専属科学者として 〈今後あらゆる診療は政府直営病院において行われるものとする。 時計修理専門のロポットの設計に従事している間に彼はその多数選前記施設の外において診療を必要とする緊急患者は公認の病院組合 フィメック 択因子を発見した。その因子を時計修理ロポットのパイロット・モより派遣される公認医工によってのみ、くりかえして記す、よって デルのセルロイド・プラスチール頭脳に挿入することに成功し、そのみ、行われるものとする。本手続きを怠ったものは法規違反とし フィジシャン・メカニカル の結果驚異的な医療技工が誕生したのである。人間の頭脳とはて扱われ、非機械医師によるかかる違法行為は、免許取消し、ない 比較にならぬ単純さであるが、通常のロポットよりははるかに複雑しは罰金、禁固等の厳罰に処せられるものとする : : : 〉 でありーー適切な調整をほどこせばーー至難な手術すらやりこなす ジョンズ・ホプキンズ大学がまず特権を剥奪された。ついでコロ フィメック ことができる。しかも〈医工〉は、後日さっそくこう略称されるのンビア医科大学を皮きりに他の大学も続々と廃校処分に付せられ であるが、あらゆる器官について決して誤りのない診断をくだすこた。 とができた。 少数の専門医養成学校は暫時存続を許されたが、はじめの三年間 フィメック 人間の心の領域は金属製の医者の能力のおよぶところではなかつの医工による成果を見ると、専門医ですらロポット医者にははるか たが、肉体の病気についてはこれ以上有能な医療師はなかった。 におよばないことが明らかになった。医工革命以前に認可をとった アンドレイは例のパイロットモデルが国会の特別秘密会議の席上医師は給料を大幅に減額され、助手やインタ 1 ンに格下げされた。 で公開された数週間後に冠状動脈血栓症で死亡した。だが、彼の死もっとも少数の特権はあたえられていたが、それも漸次、手紙に フィメック は切手不要という無料配達の特権とか雀の涙ほどの年間失業手当と は医工の認識を流布させるさらに強力な推進力となった。 国会は実態調査委員会を、情報調査無限会社 , ーーオリノコ河流域か医学ジャーナルの予約購読 ( いまやこれらの雑読は外科手術のテ アイメック 調査を達成した , ーーに委託し、三カ月にわたる調査結果を、医務長クニックよりも医工に関する電子工学的データで誌面の大半が占め られている ) 名誉称号などの程度にとどめられた。名のみの医者。 官に配分される政府医務予算と比較検討した。 フィメック その結果、医工は北米大陸の全国立病院において医師に支払われ とうぜん不満が内在した。 る給料の総額よりはるかに少額の予算でまかないうることが判明し 二〇九一年、外科の泰斗であったコールべンシュラグが死去し 所詮、医師は欠乏していた。 た。十月のある静かな朝、街の頭上にかすかにひびく天候調整ド フィメック 医工は三年ごとに〇・五パイントの液化放射性物質を吸収するこ ムのうなりと八時発の地球日火星間連絡便を通すために開かれる通 とと折々の注油によって正常な機能が確実に保たれるのである。 用孔の遠いきしりのなかで永遠の眠りについたのである。華奢な指 こ 0 フィメック 8 2
防音ポックスにいる二人の話をかきけしてしまうほどがなりたてる - ーー ジークポックスを彼は見つめた : : : 自動飲料調整機ーーー一万種類 の飲み物を誤りなく調合できる精密な記憶回路ーーと酩酊度測定器 - をそなえた ・ : グラスチールの外壁をも ? ハーの外には完全に - 機械化された病院がそそりたっている : : : ロポット医者が灯のとも - った窓の前をときおり通るのが垣間みえる。 窓の明りは人間の患者と誤診を免がれない人間の医者が必要とす るからだ。ロポットに明りはいらない。名声もいらない、人類を救 - うという使命感もいらない。彼らに必要なものは電源函とときたま の注油である。その見返りとして、彼らは人類を救うのである。 一タ ーグマンの心は汚ない・ほろ布をくわえた大のように苦い自嘲を - ン もてあそんだ。 マレイ・トーマスは軽い吐息をつき。ハーグマンの質問について考 ウ えた。そしてかぶりをふった。「わからないな、スチュ」その言葉 - はひとりでに口をついてでた。「おそらく自動。 ( イ 0 , トとか、第一一カ一 三次大戦に使われたコン。ヒューターとか、あるいはもっと以前のも - のかもしれないね。大昔にさかの・ほって電気ミシン、ノークラッチ - 果①ン 2 マ 第・涯 の自動車、自動 = 」べーターの時代かね。あれは機械なんだよ、そ - 一人 トの鬼 して人間はより手ぎわのいい仕事をする。実に単純明快なんだ。あ 隹木ロ名一間の 分汚ケ空ス のジとラ の鉄の塊りは誤謬をおかす人間より九倍もすぐれているんだー 号作球ン間プ 月穴地シ時ラ トーマスは最後の言葉を反芻してからきつばりした口調で補足し - た。「いまの言葉は徹回しよう。十倍だね。今日でサイバネティッ 年 クス学者が彼らに組みいれられないものはないんだ。彼らがしがな - い人間の手から人間の生活をとりあげるようになったとしても仕方 - がないやね」彼は自分の長々しい返答の調子にちょっととまどった 様子だったがもう一度溜息をつくと酒の最後の一滴をすすりグラスこー 作者 小松左京 豊田有恒 平井和正 石原藤夫 野田宏一郎 次点わが良き狼 今月は票が非常に分散し , 1 位でも 3.8 という低い評点です。 以下は混戦ですが , とくに 4 位までと 5 位以下にハッキリ差が出来 ました。次点以下は「くさび」「優しい支配者たち」「追う」「奇 妙な眼鏡」「ばくの場合」「緑の時代」「十秒間」の順でした。 本号掲載の全 6 篇に対し , 順位をつけて小社編集部人気力ウンタ ー係 ( 住所は目次参照 ) あてお送りください。住所・氏名・年令 を必ず明記のこと。〆切は 5 月末日。抽選で 5 名の方にハヤカワ S F シリーズ最新刊を進呈。今月は下記の方に『地球誘惑作戦』 ( シ ード ) をお贈りします。 ェ′、一ド 東京都豊島区雑司谷町 45 ー 7 朝倉満様 , 神奈川県藤沢市鵠沼 桜ケ岡 3 ー 17 ー 17 川木悦郎様 , 奈良県生駒郡生駒町菜畑 51 中川 高吉様 , 福井県福井市手寄 2 丁目 4 ー 15 畑山則夫様 , 広島県広島 市戸坂町 18 栗林ミエ様 33 - デロロ 評点 3.8 4.45 5.14 5.25 7.10 1 2 っ 0 4 5 朝 0 ・・・・ 0 ッ 0 0 ・ 00 9 ・ 0 0000 ・ 0 ・物 0 0 ・
たばかりだった。たとえ、どんな短距離であっても、武装のない輸航行である。しかも、衛星ルナの基地で待っ主任操縦士にであうま 送船が単独で航行した前例はない。まして、ここは、惑星ザミーンでは、すべての責任がラタンポル 2 にかかっている。せめて晴れの 尸出を祝い、安心して航行できるように、護衛をつけてやるべきで の占領下にある惑星である。いかなる不測の事態が起こらないとも 1 ある。そうすれば、ラタンポル 2 も、リラックスした気分で行ける 限らない。 だろうし、一人前の戦士としての箔がつくというものである。 「なんのために護衛が必要なのだね ? 」 しかし、イスナード 6 の言葉は、かえってムラドベイ 8 を硬化さ 肥えた司令が訊きかえす。まったく予想していなかった質問だと せてしまった。この司令の目にうつる部下の戦士長は、ことあるご いう表情である。 とに上司に反抗する、始末におえない男でしかなかった。そして、 「べつに、なんのためというわけではありませんが : : : 」 またしても、ムラドベイ 8 の下した決定が、僣越にも踏みにじられ 戦士長は、ロごもった。青銅色の眉が曇っていた。 ようとしている。ムラドベイ 8 の立場としては、部下の意見の当否 「それでは、護衛は必要あるまい」 「いえ、被占領星の資材を、わが惑星ザミーンが独占するのですかはともかく、上司としての威厳を保っためにも、断乎として撥ねっ けなければならなかった。 ら、慎重を期さなければなりません。占領軍の他の惑星のメン。ハー にも悟られないようにしなければなりません。ですから、せめて見「イスナード 6 、この惑星テラから衛星ルナまで、僅か三十八万テ ラ・キロでしかない。惑星ザミーンまでの二十六テラ光年の星間距 張役としても、強力な探知装置を持っ戦闘艇を、同行させるべきだ 離に比べれば、ほんの散歩のようなものだ。それとも、きみが推挙 と思いますー したラタンポル 2 が、それほど頼りにならないというなら、護衛を イスナード 6 は、敢えてムラドベイ 8 の意向にさからってまで、 つけてやらんでもない」 重ねて意見を具申した。 ムラドベイ 8 は、鉾先を変えてきた。イスナ 1 ド 6 がラタンポル 本来なら極秘にしなければならないはずの、エ。 ( メゾン輸送の日 時は、すでに宇宙市全体に拡まっている。それも上層部だけならま 2 に、とりわけ目をかけていることを知っているから、こんな嫌味 が言えるのだろう。 だしも、末端のテラ星人にいたるまで、くわしく知っているほどだ った。ラハメゾン接収という強引な占領政策を、ことさらにテラ星「い いえ、わたしは、そういうつもりで言ったのではありません。 人すべてに誇示したいという、ムラドベイ 8 の気持も判らないわけラタンポル 2 は、若いが信頼できる男です。きっと、われわれの期 ではない。だが、それでは、あまりにも不用意すぎる。 待に応えてくれるでしよう」 、、よ、つこ 0 冫 . 。し、カチー、刀ュ / イスナード 6 は、そう答えないわけこよ イスナード 6 が、護衛にこだわったのには、もうひとつの理由が 「それならば問題はない。護衛船は必要ないものとする。これは命 あった。それは、恒星船の副操縦士に決定した、直属の部下ラタン ポル 2 のことである。この任務は、若い戦士にとって、初の恒星間令だ」
え、月面基地で待っている恒星船に接続する予定 になっている。 今、このコンテナーのなかには、地球上各地か ら接収された、血の結晶に等しい五十トンのエ・ハ メゾン燃料が、つめこまれている。工。ハメゾン は、特殊なカ場を使って押しつぶされた電子核か ら、純粋に遊離した形で取りだされた中間子であ る。そのうち、特に質量の大きいものを、重核子 と呼んで区別しているが、いずれにしても、その 巨大な潜在エネルギ 1 を、宇宙船の推進力として 利用する点で共通している。もちろん、殻外に取 りだされた中間子を、そのまま保存することはで きない。従って、殻内のエネルギー相関関係に等 プイールド・ジェネレーター しい条件をつくりだす力場発生装置や、そのカ場のテンソル関係を 周囲に及ぼさないようにする防護壁など、巨大な装置類をひとまと めにした単体ュニットが必要である。圧縮された形のエ・ハメゾン は、五十トンの重量でも半径二センチメートルくらいの容積にしか ならないが、これら単体ュニットをふくめた重量は、優に数千トン 惑星ザミーンの戦士長イスナード 6 は、宇宙市から気送列車で連に達するだろう。 絡される特別発射場へ来ていた。発射管制室のあるシェルターのス イスナード 6 は、スクリーンの輸送船を見つめながら、死んだホ クリーンには、巨大な宇宙船が写しだされている。 ル。ハインから教えられた、ひとつの比喩を想いだしていた。テラ星 細長い船首までふくめた全長は、おそらく三百メートルを越えての言葉で、蛙を呑みこんだ蛇という。その形容は、この輸送船にび いるだろう。スマートな船体の中央に、瘤のように膨れあがった船ったりだった。 艙がある。まるで、そこだけ取ってつけたように見えるが、この船「ムラドベイ 8 、護衛船もなしに行かせるのですか ? 」 艙の部分だけは、そのまま取りはずしのできる、単体ュニットのコ イスナード 6 は、傍らの司令ムラドベイ 8 に尋ねた。戦士長は、 ンテナーになっているのである。この部分だけをそっくり移しかエ・ ( メゾン輸送船が単独で出航するという予定を、この朝きかされ 梗 概 時 , 惑星テラ ( 地球 ) 紀元 278 年。テラからは るか離れた人工惑星くアルカディア〉で , 汎局部 恒星系連合の大会議がテラ星人の主催で開かれる ことになった。 そこでテラの盟主タクマールは , 会議に出席す る種々の体組織の宇宙人を迎えるために必要な棲 息環境データの提供を , 同じ炭化水素系生物ザミ ーン星人に依頼する。ところがニセのデータを提 供されたため , 中央核星系からきた重要使節を到 着直後に悶死させてしまった。 ただちに開かれた星間法廷の席で , タクマール は罪を問われ , その上自制を失ってザミーン星人 の首長シカンダル 10 を傷つけたため , 分子破壊 機による死刑に処せられ , さらに地球もザミーン 星人をはじめとする星間連合軍に占領された。だ が新盟主グランストンのとった対策は , 占領軍へ の完全服従だったため , 怒った航宙士階級が武器 もないまま反乱を起すが , たちまち鎮圧される。 弾圧がさらに強まるのを恐れたグランストン は , 地球人の最後の望みである隠し武器庫の存在 をザミーン星人に公開し , 不穏分子のリストまで 提出した。その結果 , ホルバインをはじめ数百人 の航宙士たちが , グラン入トン自らの手により分 子破壊刑に処せられた。 一方 , 反乱の挫折のさい辛うじて逃がれたグン ドルフとタッカーは , トーハン巨大都市の地下廃 墟で , 前頭葉の異常に発達した新人種を育ててい る尚古主義者と名のる一団に会った。 そのころザミーン星人は , 地上の各都市から貴 重な核燃料ェスメゾンを強制没収した。 第五章 メゾン ハイべン 4
たところ元のや 0 と寸分違わなか 0 たが、手をのばしてみても、そでも、お前にふさわしいものを、何でもあげられるんだよ」 不審と警戒が = ラ・ビーボディの顔を硬ばらせた。すばやく近寄 3 れは動かなかった。生きていないのだ。 ってくると、 なぜだ ? 。ヒ 1 ボディ氏は漠然とした当惑をおぼえた。生命の創 「なにを言っているの、ジェイスン」 造に必要なある特別な呼吸を忘れただけなのだろうか。それとも、 彼が作った生命のない蠅に目をとめ、小さな押し殺した叫びをあ それは彼の新しい能力では及びもっかない、禁断の神秘なのか。 彼は実験に熱中した。テしフルは生命のない蠅とか、油虫や蛙やげて、油虫や蛙や雀からとび退 0 た。 雀などの活力のない形骸でい 0 ばいにな 0 たが、いぜんとして問題「これはい 0 たい何 ? 」金切り声にな 0 た。「あなた、何をしてる の ? 」 は未解決のままだ 0 た。そのとき、玄関のドアの開く音がした。 恐怖の発作が。ヒーボディ氏の心をおそった。自分の能力のことを 。ヒーボディ夫人が入ってきた。新しいプルーのスーツを着てい る。その美しい輪郭が彼女の豊満な姿体にあらたな若さをそえてい他人に理解させるのがいかに困難かを悟 0 たのだ。最高の方法はお るように見え、ビーボデ→氏は彼女を美人とい 0 てもよいくらいだそらく、包みかくさず実演してみせることだろう。 「いい力い、エラ。見ててごらん」 と思った。 彼はテーブルの端にのっている雑誌類を片端からめくっていっ 彼女はまだ怒っていた。亭主のお帰りのあいさつに、そっけなく た。記憶だけから物をつくりだすのが困難なことが、経験からわか 肯いてみせると、悠然と彼のそばを通りすぎて階段のほうへ向かっ っていたからである。モデルが必要だった。 ・フレスレット た。。ヒーボディ氏はそわそわしながら彼女のあとについていった。 「これだ」ダイヤを鏤めたプラチナの腕環の広告をみつけて、「こ 「それが新しいス 1 ツだね、エラ。とてもきれいに見えるよ、 女王の威厳をみせて、彼女はこちらに向きなお 0 た。電灯の光がれはどうだね ? 」 。ヒ 1 ボディ夫人は蒼くなって後退した。 憤った。フロンドの髪にちかちか映った。 「ジ = イスン、気でも違ったの ? 」早ロの心配そうな声。「どうし 「それはどうも、ジ = イスン」冷たい声。「使いの男の子に払うお 金もなか 0 たわ。気まずい 0 たらありしない。明日の朝までお店ても必要な二、三のち = 0 とした品でさえ買えないことはわか 0 て この金ーー、ダイヤモンドのーーーどうい いるくせに、それなのに にお金を届けるって約束したから、やっと置いていったのよ、 うことかしら , ビーボディ氏は奇蹟の紙幣を十枚かそえて差しだした。 ピーボディ氏は雑誌を膝の上に落した。エラのきんきんする声か 「これでいいだろう」と、言う。「五十ドルのまけだ」 ら耳をふさごうとしながら、宝石に精神を集中する。紙幣のときょ エラは目をみはった。顎ががくんと落ちた ~ りずづと難しかった。頭が割れるような痛みでがんがんする。だが 。ヒーボディ氏はにつこりした。 「これからまおまえ一と、約束した。「なにもかも変る。い「彼は明の畤殊な最後の努力をふりしぼ 0 て仕事をやりとけた。
にどだ。 などは、河口などにほんの僅かあるだけなのだ。 皮肉な笑いを浮べた人も多かったが、どうして、どうし だがには同じ大きさの基板の上に、数百個もの これと同じようなアイデアに、軍事用の浮橋がある。 て。アメリカでは飛行船を見直す動きが、このところ極 素子が組み込まれている。もちろん性能も *O とは比べ だがこれは一時的なものであって、とても実用の橋とはめて活発となってきた。 ものにならぬほど高い。かっては大きな部屋を必要とし いえなかった。 飛行船というのは、見かけほど頼りないものではな た高性能の電子計算機も、このの生産が軌道に乗 しかしこのガラスの橋はれつきとした実用品で、幾つ 飛行機と比・ヘると、航続性能や搭載能力はずばぬけ れば、テープルの上に置くことができるだろうといわれ るほどた。 もつなぎ合わせることにより、数車線にしたり、手すりている。急ぐ旅には向かないにしても、経済性も乗り心 をつけたりすることもできる。耐久度も強度も、これま地も、右に出るものはない。 現在、開発されている卓上型電子計算機は、少なくと での橋と比べて引けをとらないのだそうだ。 こうしたたことから、国防省やグッドイヤー社、ゼネ も *O を一〇〇個必要とするが、なら一〇個程度 災害の度にすぐ橋が流れてしまうわが国でも、このよ ラル・エレクトリック社、それにポストン大学などは、 で充分。いまにポケッタ・フル電子計算機も開発が可能と 一致協力して、二十一世紀型飛行船の開発研究に着手し なるにちがいない。 こ 0 こうして米国や日本の電子メーカーは、このの 船体は、これまでのようなゴム製ではなく、がっしり 開発に全力を挙げているが、生産は極めて困難らしい とした総軽合金製。それを気密にしてヘリウム・ガスを これまでに試作されたものは、—O を作っておき、それ つめる。動力はもちろん原子力。原子炉によって六〇〇 を組み合わせてとしたものや、—O を何層にも重 〇馬力のタービンをまわし、プロべラで推進する設計と ねてとしたものらしい。しかし顕徴鏡と組み合わ なっている。 すせた工作機械や、新しいプリント法の開発などによっ 橋 全長三〇〇メートル、直径五四メートル垂直に立てれ て、を一挙に作ることも可能となりつつあるとい っ ば東京タワーよりちょっと短かいほどといえば、その大 ぎ び できさがわかっていただけるだろう。 そうなれば、製造コストもかなり安くなり、エレクト と 一案によると、貨物四五トンと、乗客四百人を積み、 ロニクスの世界は、革命的な影響を受けるわけた。エレ 繊時速一〇〇キロほどで、地球のどこへでも無着陸で飛ぶ クトロニクス日本の名を守るためにも、各メーカーは懸 ス す ことができる。このほか小型自動車一五〇台と乗客を連 命の努力を続けている。 ん ばせ、フェリー ・ポートならぬフェリー飛行船とする案 え もある。 ◇浮ぶガラスの橋 ( 英 ) いまの飛行機の旅は、むやみと早いだけで、何の面白 さ人間の考えることは、まったくおもしろい。そのびと 味もない というのが、設計者たちの主張。ところが つの例が、英国に登場したガラス繊維の橋である。 この飛行船には旅客船並みの船室、遊歩デッキ、劇場、 橋といえば、だれでもコンクリート や鋼鉄の、高アー 理容室、食堂などがついていて、心から旅を楽しむこと チや長い桁を思い浮べるだろう。高くするのは船を通し がで tJ るようになっている。 たり、出水のとき路面が冠水しないためである。 たとえ装置が故障をしても、不時着は自由自在。緊急 だが船の場合はともかくとして、冠水しないために高 連絡のためには、小型旅客機を積み込んでおき、急ぐ人 くするのは不経済な話。水面に路面を浮べて置けば、何 うなアイデアを広く採用してはいかがなもの。交通確保はそれで地上へ送り届けるようにするのだそうだ。 も大工事をする必要はなくなるはずだ。 と公費節約の一石二鳥だと思うんですがね。 設計によると、原子炉など推進機間は、プロべラも加 こうして考えられたのこのガラスの橋で、強化ガラス えて五四・四トンで作ることができるらしい。「飛行船 ◇実現するか原子力飛行船 ( 米 繊維の中に、発泡プラスチックが詰めてあり、極めて軽 は前世紀の遺物どころか、ユニークなあすの交通機関。 これを水面に浮べ、つなぎ合わせるだけで、立ちど 昨年秋、ドイツのツェッ。 ヘリン伯号以来三十九年ぶり 大いに期待しよう」と、飛行船党の面々は呼びかけてい ころに橋は完成する に、世界に三隻しかない飛行船の一隻、飛竜号が日本各 る。 水面が上っても、橋の路面が上るだけで通行には全く 地を飛びまわり、大きな話題をまいた。 支障がない。船は通れないが、もともと下を船が通る橋「いまさら飛行船など : : : 」と、大空のこの愛敬ものに 8 9
0 。 sc1E ド 0 ☆架空匿名座談会 「界に新風よ吹け′ 矢野徹カット / 真鍋博 新人出でよの声が高いが、みな新人じゃないのか ? 星、小松など数人を除いたら。 新しい新人さ。豊田、平井でとまってしまったのはなぜなんだ ? 学生運動のほうへ 走っちまったのかい ? 同人雑誌の連中がなまけているからかな ? 習作時代ばかり続くのが厭なのかな。星 さんだって十年は苦労したろう ? の世界ほど先輩が新人を引き上げてくれるところはないはずなのによ。 それで部落たなどと言われる。星、小松のせいだよ。 なんのことだ ? アメリカも同じさ。ハインラインやブラッドベリイが出ると、あと十年は後続部隊が 伸び悩みさ。寄れば大樹の蔭が邪魔さ。 珍説にして愚説だな。ただし、あの二人が天才秀才すぎて、まわりの者がいやになる という可能性はなきにしもあらずだな。 そんなことあるもんか、翻訳のほうだって、若いのはなかなか出ないものね。 そりや語学の実力が必要だから : ・ 若いのは黙っとれー だから匿名にして喋らせようというんだよ。名前を出せば喋れなくなるからな。 これからという連中が、新しい波を作り出そうという気構えがないからじゃないの か ? これまでののテーマばかり追いかけている。全く新しいものを作り出そうと 6
さいえんす・とひっくす ルは、今年中に完成し、使用される予定。あすの空港の倍以上である。客席数は一二一でほぼ同じだが、スビー ひとつのモデルとして、このドライプ・イン方式のケル トが早いだけに、同じ飛行時間でざっと二倍のお客を運 ン・ポン空港は航空界の注目を浴びている。 べることになるわけだ。 技術的にもこのの開発の意義は大きい。 co ◇ついに飛んだ ( ソ連 ) は機体表面の温度が一五〇度 O まで上昇するので、冷房《 ソ連が昨年末、超高速旅客機 IU144 を、試験飛行が重大な間題となる。英仏共同開発のコンコルド は、この冷房に悩んだらしいが、それをうまく処理でき させた。モスクワ郊外の飛行場周辺を、三八分間で飛行 たとなると、今後 ()D e の生産は、急ビッチで進むこと し、続いてさまざまなテストが続行されているという。 になるだろう。 スプートニクに続いてでも世界初の栄誉を獲得 二番手の TJ がコンコルドになることは間違いない したと、ソ連の航空界は大喜び。国営航空のアェロフロ ートは、一日も早く定期航空に就役させたいと、製作陣が、問題は米国のポーイング 2707 。はじめの 可変翼方式を放棄し、固定デルタ翼とすることに決まっ をせきたてているといわれる。 いまの現用ジェット機の二たが、巨額の投資を行なう必要があるかとの疑問が表面 巡航時速は二五〇〇キロ。 化して、米航空工業界はかなりの騒ぎになっているとい たしかに、ではソ連に遅れをとったものの、 14 4 やコンコルドが音速の二・〇五 ~ 二・三借程度 の速度であるのに対して、ポーイング 2 7 0 7 は二・ 七。しかも、客席数は三〇〇席だから、三年や四年実用 数百借に拡大された»-är-m-«の配線基板 化がおくれても、そう大きな問題にはならないとの声も ある。 ◇電子の世界に革命 ( 日 ) それにしても三つどもえのこのØ e 竸争は、何のた 真空管に代るトランジスタの発明で、大きな前進をと めか。 このほど公表された米国側の資料によると、のげたエレクトロニクスの分野は、 ( 集積回路 ) に続 運航費は速度が早く、輸送力が大きくなるため、一座席く ( 高密度集積回路 ) の開発で、さらに大きな変 一マイル当り一セントから一・五セントで済むのだそう革をとげようとしている。 真空管はご存知のように、真空中で電子の動きを制御 だ。現用ジェット機はもちろん、もっとも安いといわれ るジャンボの〇・六セントないし〇・七セントと、それする装置。 これに代って登場したトランジスタなどの半導体素子 ほどの違いはない。 は、固体の中の電子の働きを利用する装置だ。これを小 そのうえモスクワーーー東京間三時間半という速度で、 乗客がØ(-ne に集中することは必至。このため一九九〇型化し、目的に応して合理的に組み合わせたのが 年ごろにはØ(-ne が世界で五〇〇機から一〇〇〇機も就で、電子機器の応用面を応ずるのに役立った。しかしこ れでもなお不足として姿を見せたのが、も顔負けの 航することになるといわれている。 ソ連が他に先んじてを飛行させたことを、飛びなのである。 前置きが長くなってしまったが、 *O ととを簡 あがって喜んでいるのも、このような将来の展望を考え 単に比べてみよう。 てのことだろう。 に O は、一辺一ミリから二ミリの基板の上に、数十 世界の空がで支配される日も間近か。その時ま で日本の航空界は、たた指をくわえて見ているつもりな個の素子が取りつけてある。人工衛星やの電子 頭脳にはこれがふんだんに使われており、 *O が開発で のだろうか きなかったら、衛星も実現不可能だったろうといわれる 試験飛行を終えたン連の TU 144 7 9