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検索対象: SFマガジン 1970年10月号
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1. SFマガジン 1970年10月号

もの。 の銀行であり、アトランティス大陸では失われたものの銀行で あり、プリジストン大陸では、ほんとの銀行である。むろんこ 2 月食月、太陽、地球が一直線上に並び、太陽のために月がかくれ ること。 の場合、銀行とは比喩的なものである。 ツンドラ地上からッララが立っている場所。針の葉のように見え 赤道地球を北半球、南半球に等分する線で、ときどき南へ行った る。 り、北へ行ったりし、北へ行くと雨が降り、南へ行くと雪が降 る。ニセの赤道もある。 オーロラ地上から立ちの・ほっている光線。地下では湯が沸き、煮 えくり返っている。 子午線地球の上空を、東と西に等分する線で、この線が赤道を横 切ろうとする時には地球は春分であり、反対に横切る時が秋分サルガスの海よく船のとまる海。むろん船員の叛乱のためであ る。 である。。ゆっくり横切る時にはセミが鳴く。 日付変更線地球の表面をミカンの房のようにわけた場合、そのス ジンタ・・ハンドの演奏が高まり、所長が戻ってきた。出て行った ジに相当する線であるが、ハワイの附近ではもつれている。こ の線の上を、時計をつけたままで通過すると時計が狂う。右か時よりも、やや肥っていたから、おそらく食事をしてきたのだろ う。おれは雑音に近いあのワルツのため、少し出来が悪かったと思 ら左へ行けば日付が一日進み、左から右へ行けば一日遅れる。 成層圏・対流圏大気圏の上に成層圏があり、その中間が対流圏でえる答案を彼に提出した。デスクを中にふたたびおれと向きあった ある。大気圏と成層圏の、両方から流れこんできた空気が対流所長は、ふんふんとうなずきながら答案をななめ読みした。 を起すのでこう呼ばれ、これに飛行機がまきこまれると、地上「点数はつけないのですか」 で竜巻が起る。 おれが説ねると、所長はものうげにかぶりを振った。「点数をつ 海流海の流れで、暖流を赤潮、寒流を黒潮という。暖流には魚がける必要はないのです。答案が正確かどうかよりも、これはむしろ あなたのものの見かたを知る上で、非常に参考になります。文章 多く、寒流には怪物がいる。 電離層地球からの電波を反射させるために貼られたアルミ箔。こ力、これも問題ではない。大切なのはものの見かたです。むろん、 れに電波をあてると雷が起り、空電をあてるとデリンジャー銃それがすべてではありませんがね」 「では他に、何が大切ですか」 をぶつばなす。これは透明で、な・せかというと常に太陽がレン トゲンをあてているからである。 「自信ですな。その自信をあたえるために、次は、あなたと議論し なければなりません」 メルカトル図法面積に関係なく、直線だけで書かれた地図。 「テストは、あれで終ったわけではないのですか」 大陸棚各大陸の周囲の海底にある棚で、この下は、あげ底になっ ている。それそれの大陸の銀行である。ューラシャ大陸では魚「さき程も申しましたが、今のはテストとはいえないのです。こ

2. SFマガジン 1970年10月号

対多数を占めるものがない時、互いに指名して組織された方程 式で、たぬきの方程式ともいう。 ュークリッドユークリッドは五歳の時、父の家で生れた。おそら く母がいなかったからであろう。ュークリッドの父は幾何学の 父と呼ばれている。ュークリッドは「 2 直線が 1 直線に交わっ ている時、もしその角の和を合計して直角よりも小であれば 2 直線はいくら曲りくねってもいっかは交わる」といった人であ る。 四次元タテ、ヨコ、高さ、低さの四つの次元。 テスト 4 天文地理 テスト 3 数学 銀河天の川の別称。天の川はもちろん、多くの惑星である。 恒星系惑星を持っ太陽系のこと。惑星がなければ恒星と認められ ることは永遠にないからである。 直角三角形すべての角が直角である三角形。 平行四辺形対応する四辺が平行で、すべての角が鋭角をなす四辺太陽地球の恒星。地球に比較すれば高温で、その原因はマグネシ 形。 ウムが焚かれているからである。硫黄や炭が燃えている場合も あり、これは消えることはなく、たいへんに熱い。黒点は消し ピタゴラスの定理直角三角形の斜め上にある正方形は、落ちてき た場合その面積は下へすつばりと、おさまる。 炭である。 無理数これはもう、どう考えても無理な数で、あまり無理だか公転周期地球が太陽の周囲をまわる時間を、太陽の側から計算し ら、ながく持っていると切られるおそれがある。 たもの。逆に自転周期は、地球がまわる時間を地球が自分で計 算したもの。太陽がまわる早さは年によって違い、三六五日だ ニ次方程式わからない数があればそれを x とし、きまった定数 と -a 、および変数を二乗したり足したりして、結果的に 0 と ったり、それより一日多かったりする。 なる方程式。が 0 であれば、計算しなくてもすみ、実数であ北極星地球上で、北極のいちばん近くにある星。地球を知るのに れば非常にややこしいことはいうまでもない。 便利である。 連立方程式たくさんの未知数の混った方程式がたくさんあり、絶光年恒星が秒速三〇万キロで一年間に走る早さを距離になおした イオン感電した原子。死んでいる場合が多い。 硬水氷のことであることはいうまでもない。 コロイド寒天や海苔の原料。 H20 主として液体である水のことで、主成分は水素で酸素が気泡 として混入している。主として水道から出るが、多量の場合、 溺れて死ぬことがある。 燃焼十八世紀に発見された。それまでは肉を生のまま食べてい アルコール水を飲みやすくする為、これに少量のアルコールを混 入したもの。 7 2

3. SFマガジン 1970年10月号

からやることも、テストではありません。議論です。いや、議論で「九進法」所長は感服して唸った。「どうしてですか。 もありません。あなたの意見をうかがいたいのです。ご承知のよう「これをご覧なさい。両手の指は十本あります。 1 から川まで、十 に意見を発表するということは、その人自身に自分のものの見かた本あります。ところが数字の上では、 1 から 9 まではひと桁、川は をはっきり認識させ、それについて自信を持たせるという効果があふた桁になります。これがおかしいのです。どうして 1 から 9 まで の指がひと桁で、この、いちばん端の川という指だけがふた桁の数 ります」 「同感です。ではあなたとの議論が終った時、わたしには作家字になるのでしよう。どうしてこれが十進法なのでしよう。 0 の次 になれるのだという自信が生まれているのですね」 からふた桁になるのだから、これは九進法ではないでしようか」 「そうです」所長はいやにきつばりとそう言い切って、じっとおれ「川からふた桁になるからこそ、十進法になるのではありません を眺めた。 か」 あれは催眠術だったのだろうか。おれを、この世界にひきずりこ 、え。それでは感覚的に納得できないものがあります。十進法 むための、催眠術ではなかっただろうか。 なら、Ⅱからふた桁にすべきなのです。たとえば漢字の場合は、一 ひと 所長はさらにこういっこ。 「作家になれるという自信、などあるいは壱から、十あるいは拾まで、一文字であり、十一あるいは という、そんななまやさしいものではないのです。最高の、最大の拾壱になってはじめて二文字になるではありませんか。川がふた桁 作家であるという自負さえ生まれるのですよ」 というのは、絶対におかしい。ひと文字の数字にすべきです。と 「ところで、どんな議論を始めればいいのでしようか」 いう字は 1 と 0 があわさっていて、 0 は零だから実際にはひと桁分 「あなたのご意見をうかがいたい。あなたは、十進法について、どの価値しかないというわけでしようか。それなら 1 は本質的に川と うお思いですか」 同じということになって、ますますおかしい。おまけに指をかそえ 「十進法には、おおいに賛成です。現在のややこしい算えかたをやた場合、 0 に相当する指はないではありませんか。では 2 を、どう めて、十進法に改めるべきだと思います」 いう数字にすればいいでしよう。そうですね、たとえば 9 の場合 「ほう」所長は腕組みし、まるで催眠光線を秘めているような眼では、 6 のひっくり返ったような字ですから、 6 の次の 7 をひっくり おれを眺め、おれの言語中枢、音誦中枢を刺戟して、いやが上にも返して、をに相当する数字と決めればいいのです。そうすれ おれのお喋りをかきたてようとするかの如き声で説ねた。「するとば 1 から乙まで、すべてひと桁の数字になるではありませんか。十 あなたは、現在使用されているのは、十進法ではないとおっしやる進法であると称されていながら実際は九進法である為の感覚的弊害 のですか」 は数知れずあります。だいたいにおいてややこしいのです。なぜ一 「そうです。現在実際に使われているのは、あれは九進法ではない 八〇〇年代が十九世紀で、一九〇〇年代が二十世紀なのですか。こ四 でしようか」 れは感覚的に見た場合、どう考えてもひと世紀ずれています。しか

4. SFマガジン 1970年10月号

心あたりのひとつである。花火大会があるというので公園はたいへに考えれば、第一、乗っているうちに面白くなり、超過料金を払っ んな人出だった。黒い木立の間をそろそろ歩きまわっている白い浴てもいいからもっと乗っていたいという場合。第二、流されて、 衣姿の人間たちは、地獄めぐりの亡者の列だった。昨夜の大雨で川下へ行ってしまい、満潮で流れが逆流するのを待っている場合。第 の水嵩が増し、流れも激しくなっているにかかわらず、ポートに乗三、転覆の場合。第四、もともと時間の観念がなく、超過料金のこ ろうといい出したのは正子である。 となど、てんから頭になく、時間のことをやかましく言われると異 「しかし、川はポートでいつばいだ」と、おれはいった。「アベッ星人を見るような怪訝な顔をする種類の人間が乗っている場合 : ク、家族づれ、学生、丁稚、女店員、虎まで乗っている。衝突する 危険が待ってるよ」 「いっときますが、・ほくもややそれに近い人間ですよ」おれは誇ら 「ほら。ポートの舳先に提灯がついてるでしよ。絶対安全よ」正子しげにそういった。 力しった。「もしあなたが、まともにポートを漕げるなら」 親爺は特に厭な顔もせす、対岸のビルのネオンがゆらめく漆黒の おれは憤然とした。「ポートぐらい、漕げるさ。しかし万一つて 川面を指さした。「第五の理由が戻ってきたよ」 こともある。君は泳げるんだろうな」 「どこですか」おれは眼を細めて近くの水面をすかし見た。 「泳けないわ。その泳げないわたしが、平気で乗ろうといってるの 「ほら。そこに来ているだろう。こっちへ近づいてくる」 に、泳げるあなたが乗るのを厭がるなんて、おかしいわ。水はすご「見えませんが」おれは背を曲げながらいった。「だいいち、舳先 い早さで流れているように見えるけど、実際はそんなに早く流れての提灯の灯も見えないよ」 いるわけじゃないし、水が黒く見えるけど、実際に川の水がそんな「提灯の灯は、消えたらしいね」 にまっ黒のインクみたいな色をしているわけがないわ」 その時、背後の夜空へまた仕掛け花火が打ちあげられ、歓声があ おれと正子は川辺におりて貸ポート屋の親爺に訊ねた。「空いた がった。水面が少し明るくなった。 ポ 1 トがありますか」 白いものが、どろりとした黒い川面を舟つき場の方へゆっくりと 「時間を超過しているのに、帰ってこないポ 1 トが四艘ある」と、近づきつつあった。人間だった。白シャツ姿の男である。彼は腹の 親爺がいった。「少し待ってもらえば、そのうちのどれかが戻ってあたりから上だけを水面に出していた。それはまるで胸像が水に流 くるたろう」 されてこちらへやってくるように見えた。 「転覆してるんじゃないでしようね」と、おれは説ねた。 「あれは、泳いでいるのですか」 「戻ってこない理由のひとっとして、転覆ということも考えられる「いや。ポートを漕いでいるのだ」親爺はそういった。「・ホートに な」と、親爺はいった。「しかしそれは、数多くある理由のひとっ水が入り、沈没したのだ。しかし転覆は免れたため、この濁った川 に過ぎない。理由は無数に考えられるよ。可能性の多い事態から順の水の比重とポート自身の浮力と、乗っている人間の承量で、ポー 9

5. SFマガジン 1970年10月号

このビグミーは、現存の。ヒグミー族とは関係のない空想上の矮人だ場合は、しつばがなくて、二つの目と二本の腕と普通寸の耳しかも っていないのは当然だが、物見だかい怪物ファンは、さぞや失望し が、要するにギリシャ人たちは頭のなかで観察以前に想像上のモン たことだろう。 スター人間を見ていた、と思われるのだ。 やがて、発生学や比較解剖学の発達とともに、ヒトやサルの変異 もっとさかの・ほると、おそらくヒトの祖先にこころが発生しだし た頃には、観察とか想像といった区分はなくて、ごく原始的な外界の限界がはっきりしてくると、べらばうなモンスターは存在しない ことが証明される。そして進化論のほうでも、半人半猿の生物とし 5 への恐怖か、名状しがたい好奇心のようなものだったかもしれな い。いや、そこまでさかの・ほらなくても、ヒマラヤの雪男なども含てのミッシング・リンクを探す熱もさめて、ヒトの祖先は現在のサ ルのなかには見つからないということが分ってきたから、ホモ・モ めてモンスター人間の報告の大部分が、観察と想像をごちゃまぜに したものだったともいえる。だから、進化の系統樹やリンネ以後のンストローズスの住む場所はなくなってしまった。 分類学にみられるような種ではなく、いわば、″前リンネ的″な存 これを要するに、モンスター人間の存在史にからんで、 在だといえよう。 〈想像Ⅱ観察↓想像優位↓観察優位↓ ? 〉という交代劇があるよう そこで昔も今も、こうした存在を否定する総明で退屈な頭脳の持だ。 ち主が出現する。地理学者のストラボンは、モンスター人間なんか たしかに、自分の目による直接の観察は、大切なことである。じ 迷信だ、と断言してはばからなかった。じつのところ、モンスター つはリンネにしても、モンスター人間など見てはいなかったのだ。 実見談や宇宙人会見記などのなかには、「名前を売ってやろう」式それどころか、幼若なチン。ハンジーをのそくと、高級な類人猿さえ 欲望のうごめいている場合がなきにしもあらずだから、その意味か充分には観察していない。だから、もし彼がモンスター人間の標本 らすれば悪いことではない。 をもっていたら、ホモ・モンストローズスという種は作らなかった 聖アウグスチヌスも否定論側にたったが、多分に宗教的な含みをだろう。なんとも奇妙な表現になるが、フォン・リンネの作ったホ もっていた。彼は個体のモンスター的誕生はありうることであり、 モ・モンストローズスは、″リンネ的″な分類体系自身によって否 それもまたアダムの子孫だろう、と考えたのである。若い時分はマ定されることになったのだ。一種の哀しい。ハラドックスだが、「自 ニ教にこって放蕩していたこの教父、意外なところで疑似科学精神分が作った方法によって自分自身が否定される」という例は、科学 の世界ではよくおこることなのである。 と博愛主義を発揮したものだ。インディアンの人権宣言をやったパ ウロ二世も、ほめるべき処置をとったといえるだろう。もっとも、 ところで、想像上のホモ・モンストローズスのほうはどうだろ の未来人や異星人が目のまえにあらわれたとき、このお二人のう ? 簡単に考えると、そんなものはもともといやしない。だが、 頭でついてゆけたかどうかは疑わしいが、・余談はさておき、モンスほんとうは、観察しうるものだけを「存在 . とするのには疑問がの ター論争は実物をめぐっておこなわれるようになった。 こる。ちょっと周囲を見まわしてみても、生物学的な意味でのホモ つまり、新大陸で捕えられた人間標本は、舟でヨーロッパへ送ら属ではないが、「ホモ・ xx 」と呼ばれる眷属はたんといるのだ。 6 とう処理すればよいのか ? れ、籠に入れたままで展示されたのだ。むごい話だが奴隷狩りほどこれは、いったい、・ ではない。ともかく標本になったのはヒトかサルかだった 9 ヒトの たとえば、オーストラロビテクスのところでも使ったホモ・ファ ピグミー

6. SFマガジン 1970年10月号

正子さんから電話でうかがいましたので、さっそく問題を作っておアルキメデスの原理一定量の水中に投じられた物体は、もしそれ きました。これがそうです」 が人間であれば溺れて死ぬことがある。 所長がおれに試験用紙をつきつけた時、窓外のワルツがだしぬけ気体固体、液体、国体、字体、五体、死体などではないもの。 に高まった。おれはその用紙を受け取りながら、今日、おれと会っ引力物体と物体はその質量の和に反比例していて、間の距離の二 てからの正子がどこかへ電話をかけるのを目撃したかどうかを思い 乗に比例するから、たいていぶつかって壊れる。 出そうとした。思い出せないでいる時、所長がいった。 レントゲン光線のことで、女性の肉体は透過するが男性の肉体 「作家は、たしか自然科学的知識を必要とした筈です。その紙 には干渉や屈折を強いて破壊する。また、書きようによっては には、自然科学に関係した単語がたくさん書いてあります。あなた 非常に変に受けとられる恐れがある。 スペルマ はその単語ひとつひとつを、説明して下さい。説明は、それそれのプラズマ精子が裸のままで激しく運動したため、一種のガス状態 単語の下の空欄へ記入して下さい。わたしは席をはずします。一時 になったもの。 間後、また戻ってきます。それまでに、やっておいて下さい」 素粒子中性子、中間子、電子、陽子、光子、猛子、利子、など。 いずれも気が荒い。 ジンタが奏でるワルツを背に、所長は部屋を出て行き、おれはジ ンタが奏でるワルツの中へ、試験用紙一枚と共にとり残された。おエントロピーたとえば熱湯と冷水が混ぜられた時、両方の原子 れは自分のペンを出し、試験用紙の上の方へずらりと一列に並べら : 、なるべく確率の高い状態をとろうとして不変、あるいは増 れた単語を眺め、けんめいに科学的知識を呼び醒ましながら、その 大し、減ることがないような場合。もし、ぬるい湯ができれ ひとつひとつの下へ解答を書きつらねていった。 ば、それはあたり前の場合である。 寒暖計室内の温度を一定たらしめる為、常に同じ高さにとどまっ テスト 1 物理 ている水銀で作られた計器。 絶対零度絶対の零度のこと。もうこれは、何がなんでも零度であ エネルギーエネルギーは質量と同じである。な・せならば質量にい るということで、そのためにどんなことが起っても零度でなけ くら光の速さを掛けてもやはりエネルギーであり、光の速さは ればならない、ほんとの零度であること。零度以下である場合 両者に何の関係もないからである。 が多い。 紫外線皮膚が黒くなったりカーテンの色が腿せたりすると、その機械外力に抵抗できる物体を組合わせ、動力によって一定の運動 を起すもの。例 = ミシン。 周囲に紫外線が発生している。太陽の外線のひとつ。 赤外線太陽の外線のひとつで、透視光線であるから、太陽の外線 は少しェロチックであるが、これを変だという人もいる。 テスト 2 化学 6 っム

7. SFマガジン 1970年10月号

どんなことがあっても、脱走してやる。このいやらしい世界から 戸時計店の店主はどうか。これはおそらく共謀者ではあるまい。あ の男は牲犠者だ。おれと同じ牲犠者だ。あるいはあの男は、あの世逃げ出してやる。こんなところにとじこめられていてたまるもの 3 界の一部、またはあの世界そのものだったのかもしれず、もしかすか。 るとあの男こそ、あの世界の秩序だったのかもしれない。 ( 以下次号 ) 正子が消えた理由は、おれにはわからない。もしかすると、まだ あの世界にいて、この世界へおれのように誘拐してこようとして新作者註・「多変型現象」のくだりは、・・・ホールディン しい犠牲者を物色したり手なずけたりしているのかもしれない。あ 『人間の進化、その過去と未来』より、また「テスト」のくだり るいはおれのいるこの世界で、どこかおれに見えない場所から、お は、ジャン・シャルル『怠け坊主は天才なり』より、多大の示唆 れの様子を観察し、看視しているのかもしれない。 を得ました。 それにしてもこの世界の正体は、いったい何だろう。あの世界と の決定的な違いは、どこにあるのか。情報による呪縛、時間による 束縛、空間による圧迫、それらを指摘するだけで決定的な相違点を ナししちその違いはもっと本質的な 明確にすることはできないし、・こ、、 ものと考えなければならない。おれが異和感を感じる対象や場合 を、ひとつひとっとりあげてこれがそうだと説明することは可能 だ。しかし、そんなことをしたところで何ら本質に近づくものでは ないことも、また、はっきりしている。だいいちそれは、おれがこ の世界を、以前いたあの世界とは別の世界であると気づいて以来ず っと考え続けてきたことではないか。もはやいくら考えても問題の 解決にはならない。問題の解決とは、むろんこの世界とあの世界の 相違点を見出すことではなく、おれがこの世界から脱出して、あの 世界へ戻ることだったではないか。相違点を発見することは、単に おれの脱走の手がかりを見つけるだけのことだったのだ。しかし、 いくら考えても無駄だとわかった現在、おれには行動しか残されて いない。そうだ。行動だ。さっそく行動にとりかかろう。 脱走してやるぞー 次号予告 ! この世界の正体とは何か ? 主人公はこの世界から脱走で きるカ ? 貸ポート屋の親爺の正体はす職業適性所長とは何者か ? 二人は同一人物か ? 電話に出た声の主は誰か ? 時計店主の言う如く、ほんとに時間流の秩序は乱れたか ? 下水道とマンホールは脱出口たり得るか ? 回転木馬のワルツに秘められた謎は ~ 九進法の世界とは 何か ? 秩序を乱す多変型現象を主人公は理解し得たか ? 誘拐された正体不明の美女、正子の行方は ? 、 ニュー・ウみープ 前衛的瀾万丈的大びびんちょ長篇、・謎は謎を呼び、 次号にて高潮の展開 ! 」乞御期待 ! ーマネント・ウェープ

8. SFマガジン 1970年10月号

ては真剣すぎた。レムスはからかうように「受難者のスタイル」と レムスが物知りなの 7 レーザー掘鑿機を扱わせて、サデュにまさる者はいない。しかし いう。受難者とはなにか、さつばり解らない。 考えが単純で、物言いに品がない。おとなしい・ハナムには、このサは誰もが認め、そのため彼は長老的存在となっているが、だからと デュは嫌な存在だ。馴れぬ手つきで作業をしていると、きまってサ いって難解な言葉をふりまわすのは迷惑だ。彼が教授という職能 デュがそばに来てなにか言う。 ( あるいは教師かもしれない ) を持っていようと、その知識は日常 「え、どうたい、 をしくらお前さんが能無しの行動にはあまり役立っていないし、そういった虚名の権威にどう この配線の結び具合ま。、 でも、もっとすっきりやってくれなくちゃな : ・ : ・」といった案配いう価値が : : : まあ、それはどちらでもいいこと、職能を持ってい ・こ。・ハナムはまたかと思い、改めて自己嫌悪に陥る。時には告白するというだけで立派な存在なのだ。 るような調子で反論することもある。 イゴルはレムスのように博識でもないし、サデュのように器用で 「でも、私にはこんな仕事は向かないのだ。私はもっと他の事をすもないが、金属の精錬や、合金、熔接などについての技術は確かな るように出来ているのだ」 ものだ。もっとも素晴らしいのはやはり体力であろう。他の者の倍 「呆れたもんだな。ほかの事なら出来ると自惚れてるんだな。お前はありそうな体で、信じられないぐらいの怪力を出す。だからとい さんに向いた仕事なんて、この世に一つでもあるものか」 って、誰もイゴルを警戒はしない。身体の大きさと性格にはかなり ハナムはうつむいて、そんなはずはないとロの中でつぶやく。なの相関々係があり、標準の場合における寛容度との係数はプラ にかあったような気がするが、あんまり昔のことなので思い出せなス〇・八五二 ( 信頼限界〇・〇〇一 ) というデータがある。ただし い。いや、思い出せないのでなく、本当になにも無かったのかもし性格は自己淘冶で改造できるから、この統計値を実際に使用する場 れない。しかし、人にはなにか一つぐらい、なすべき事があるはず合は、それ相応の注意をされたいという但し書もついていた。 だ。そして思いつめたように「私にすることがないなんて、そんな ハナムは、とにかく情無かった。イゴルもレムスもサデュも、そ つい三日前の、こ 馬鹿げたことがあるものか。そのとおりだと言ってくれ、サデュれそれ職能家なのに、自分にだけはそれがない。 の研究所の発掘作業のさいにだって、彼はまったくの持てあまし者 「うるさい ! 」とサデュは怒鳴った。 だった。公平に考えてみて、バナムはいわゆる低能力者ではないの 「能無しの相手ができるか。口惜しかったら、自分で仕事を探して だ・、、仲間内にしてみれば、きわめて曖味な役割りしか持たぬ非専 こい」 門家ということなのだ。悪いことに、研究所の発掘で結構な住家が サデュが去ってから、なんとなく・ハナムは空をふり仰いだ。そこできたのはいいが、それだけ仲間と顔を会わせる時間のふえたこと から救いがやってくるのを待ちうけでもするかのように、彼はじっ だ。なにか皆に話しかけても、話は合わないし、適当にはぐらかさ と空をみつめた。他の者は、それを・ハナムの癖だというが、癖にしれてしまう。そして、今日の夕方も同じことがくりかえされてい

9. SFマガジン 1970年10月号

は顔をあらわしていない筈だ。さらに考えれば黒幕とは必ずしも人口に出してくれ」 2 3 物であることを必要としないのであって、あるいはそれは集合意識「かわってくれっていってるわ」正子の声に続いて、男の声がし とか、時代とか、環境とかいったものであってもいいのだ。ともあた。「よかろう」むやみに大きな、荒あらしい声だった。「おれが れ、下水道に入った時も職業適性所に行った時も、どちらの場合も誘拐したこの女、この女があんたの妻か恋人か、あるいは母か娘 正子が登場していることは事実だから、彼女はおれの誘拐に直接手か、友人か会社の同僚か、それはおれの知ったことではない。そん を下した人物として最もあやしむに足る人物であるといえる。まなことは、どうでもいいことなのだ。また、おれの誘拐の目的が、 た、貸ポート屋の親爺と職業適性所長は同一人物かもしれないか営利誘拐か厭がらせか、また婦女暴行を目的とするものであるか ら、もしそうであるとすれば彼も正子に負けず劣らず疑うに足る人は、今のところ言うわけこよ、 冫をし力ない。この三種の目的はそれそれ 物であるといえる。だが断定することはできない。 互いに、容易に他者とすりかわるものであるからだ。わかるか」 正子が関係している心あたりの事件というのは、まだ他にもあ「わからんこともないが」 る。だがこれも断定することはできない。それがおれの弱味なの 「それなら今すぐ、十二万五千円用意して、自我町六丁目にある井 戸時計店という店へ来、 、いいな。これは命令だそ。十二万五千円 それがおれの、弱味なのである。 だ。わかったな。この十二万五千円という金額は、多過ぎず少な過 同窓会のあった次の日だったか、会社が休みでデパート へ買物にぎず持ってこい つまりだ、この金額は前に述べた誘拐三種のうち 行った次の日だったか、正子といっしょに公園でポートに乗った次の、どれにでもこじつけようとすればできる金額なのだ。営利誘拐 の日だったか、職業適性所へ行った次の日だったか、とにかく正子の金額、つまり身の代金とすれば高くなく、厭がらせとしては安く から電話がかかってきて、誘拐されたと告げられた時も、その心あなく、この女を暴行しなければならなくなった場合のおれの慰謝料 たりのひとつである。 としては適当だ」 おれはとびあがった。「誘拐されたんだって」 「今、現金がない」おれは室内を見まわしながらいっこ。 ナ「だか 「そうよ」 ら、古着を売るか、質屋へ行くかしなければならないだろうな。ギ 「いったい、誰が」 ターがある。これがまず、五千円だ。洋服は夏冬あわせて六着。一 「わたしがよ」 着四千円として二万四千円。麻雀の牌がある。父親から貰ったもの で、象牙のゲタ牌だ」 「だって電話かけてるじゃないか」 「強制的に、電話をかけさせられてるのよ。今、わたしの横に、わ「上等だな。三万円にはなるぞ」 たしを誘拐した男がいるわ」 「いや。そんなにはならないだろう。二万三千円だ。それから、時 受話器をぐっと握りしめ、おれは声を低くした。「そいつを電話計がある。スイス製だ」

10. SFマガジン 1970年10月号

そして物理の領域では、量子力学から原物質力学へとすすみ、 だ。塩基はアデニン、グアニン、シトシンの三種類と、チミン (2 の場合 ) またはウラシルの場合 ) の計四種である。核一 0 ーこ cm という量子の世界をはるかにこえて、有効径 10 当 c 日の重 / ーメ / ン 酸の情報は、こうした塩基の配列を使って書かれており、三つの塩カ子までが仮定されている。将来はもっと直接的な、本体子とでも ー・トムキンスの いうようなものが発見されないとも限らないが、そうした極徴の世 基が一つの語になっている。このことを、ミスタ シリーズなどでファンにもおなじみのシ ・ヨージ・ガモフは、四界まで追いつめていくと、空想や概念上のものでしかなかったホモ ・モンストローズスを、ある種の実体としてつか 種のトランプから三枚をとる組合わせにた むことができるのではなかろうか。 とえたから、ご存知の方も多いにちがいな たとえば医学の領域でも、精神現象の一部はす でに量子のレベルで追求されている。喜び悲しみ そこで合成がはじまったとしてみよう。 手 考える脳も、結局は分子、ひいては電子からなっ まず核のなかで、 Z の情報が Z << に 一 = い↓ ~ ~ のており、こころとか意識とかいうものも、一つの 写しかえられ、次にそれが細胞質中で読み ラ イ表現形にすぎないようだ。つまりは、活動性のパ とられて、その指示どおりのタン。ハク質が 作られる。もっと精しくいうと、 XZ< の 月】ンイ電子や電子の行動で説明される問題である。 2 フそして、想像上のモンスター人間にしても、頭の 情報にしたがってアミノ酸が作られ、それ・′、 が順番につながってゆくわけだ。たとえば N$"(D 。なかでおこ 0 ている粒子の運動の、特定の。 ( ター グリシンというアミノ酸は、「シトシン 。〉コをンを定着させたものにほかならないのだ。・ほくら シトンン・グアニン」という一語で決定さ ~ ( しの体内でも、分子は移動し細胞は生まれ変わり、 ヒトをそのヒ れるが、最初のシトシンがアデシンに変わ の確固不同の肉体があるのではない。 夜 ると、システィンというアミノ酸になる。 . トとして存在させているのは、それらの動きを統 の ところが、もし生命系の全部が核酸の情 阜。を夏一しているパターンなのだ。 ~ 真 報だけで決まるのなら、変化も進化もあっ 『したがって、印刷された活字や絵を問題にする たものではない。じつのところ、この過程 のではなく、それを生みだす過程での粒子の動き は外界からの影響も受けており、一〇〇万 に注目すると、共通点が見つかるだろう。こうし 年のオーダーで、アミノ酸の置き換えがお た「極微の場」にまで還元すると、想像の産物も こっているらしい。宇宙の全体とくらべる 宇宙のなかの諸現象も、なんら異なるところはな と、なんとも小さな変化にしかすぎないが、ここでもう一歩すすめ すべてのものを、一つの体系内にまとめうるような、″非リン てみよう。 ネ的″世界が拡がってくる : いわは現実世界の崩壊と再建だが、じっさいこうした変換こそ、 6 生物学の研究は、分子レベルから量子のレベルへ移りだした。 に時有なものではないだろうか。