験が世界ではじめて成功して、注目をあ う問題と本格的に取りくまなくてはいけなくなっ 士 つめたこともあった。だが、こんどのよ た」と語っている。 ン うに、 XZ< から、 XZ<< 依存性複製酵 しかし、綜合的には、このニュースは、かなり肯 素の働きで Z がつくられたのは、も ・つ心 4 , 定的に受けとられているようだ。東北大学生物学の ちろん世界ではじめてのことで、もしこ れがさらに裏づけされ確定的に認められ 偂らの研究は、今年の生物学界の最大の話題となろ う。日本では、人間の癌もふくめてすべての癌が ることになれば、現在の生物学ーー遺伝 士 愽 Z< 型の O 粒子によって起るというヒュー。フナー博 学、発生学などのすべてに大きな影響を 士らの仮説に類した仕事が今年あたりから行なわれ 与える革命的な発見となるわけである。 水ようとしている矢先に、より根本的なこんどの発表 さらにもう一つ重要なのは、癌との関 で、ますますアメリカに引きはなされた感じで、研 係だ。人間の癌は、従来は ZZ< の遺伝 後究の仕方がいっそう複雑化するので困惑すら感じて 情報のメカニズムに何らかの理由で狂い が生じて発生するものと、一部の動物に いる」とのべているし、話題の中心人物の一人シュ 。ヒーゲルマン博士も、「われわれは、自然が一元的であると考えがちだ。だ あるウイルス性の癌と同じように、ウイルスによって発生するものと二つあ から私は、現在のところテミン博士の仮説に、ほかの人たちと同じくらいは るらしい、というのが最近の定説になりつつあった。たとえば、有名なバー キット・リンパ腫や鼻の癌などをおこすヘルベス・ウイルスは ZZ< 型であ懷疑的である。しかし 2Z< と XZ< の問題には従来のわれわれの知識では どうしても説明しきれない数多くの特性があり、彼がそのいくらかを解明し り、白血病をおこす犯人と見られているのは XZ< 型の型粒子であった。 たということだけは疑えない。 それが、もし XZ< からができるということになれば、最初型 おそらく、この問題については、今年中にもさまざまな追試や、その結果 ウイルスとして人体細胞に侵入したものが、癌をおこす 2Z<< をつくるとい による仮設の補修が行なわれて、分子生物学に、新らしい転機の一つをつく うケースも当然考えられてくるーー・人間の癌発生の謎への、新らしい、しか るだろう。それにつけても、公理や定理がーーーそれが常識であり、疑いを容 もかなり有望なアプローチとなる可能性を、この仮説は持っていることにな るのだ。もちろん、これにはまだこれから確証を得なければならないこともれることのできないものであればあるほどーーそこに切りこんでいくような 研究をすることは難かしい。そうした研究を、あえて行なったテミン教授 あり、わが国の癌研究の権威である慶応大学分子生物学の渡辺格教授は、 「 XZ<t からができたことを本当にいいきるには、たとえば雌型と雄と、水谷博士には敬意を表したい 同時に、こうしたおどろくべき学問的 型がびったりあうという〈鋳型特異性〉を証明するなどの酵素科学的裏づけ転回が、比較的容易に可能になったことについては、現代がすでに、科学的 が必要だが、生物学の根本問題にふれるたけに影響は大きい。細胞の核にあ実証性がすべてに優先する未来的ムードの中に入っているのだということを 痛感させられる。 る遺伝物質のほかに、細胞質にあるいわゆる核外遺伝情報との相互関係とい 第 sqx 固 0 00R A い 5
た。一般的な解答は、悪魔が異教徒の魂を利用して、彼らの外観に 退行変化をおこさせたというのである。内分泌学そこのけの疑似超 団未来も素敵だろうさ 科学だが、異教徒こそいい迷惑だ。ネ・フカドネザル王などは、一人 の男をケダモノに変えたことにされてしまう。また、モンスターは ホモ・モンストローズス後史 平らな世界の端に登り上った反世界の生物だ、という珍説もある。 常識的な意味からいえば、ホモ・モンストローズスという種はい この反世界は、物理学でいう反宇宙とは異なり地球平坦論者が考え そうにもない。しかし、長いあいだ生きつづけてきたモンスター人るような世界だから、的というよりは怪談的だ。それ自体のも べントリー スベキュレーション 間の世界は、衒学と思索の宝庫でもあるようだ。 っ面白味は別としても、とうてい近代人を納得させるような代物で たとえば、シェークスビア作『真夏の夜の夢』では、ロの頭をはない。しかし一九世紀のはじめ、マダム・シェリイによるフラン はめられた男に、妖精の女王が恋をする。そして『嵐』には、キャケンシュタインの怪物が生まれたときには、想像上のモンスター人 間にも近代化がはじまりつつあった。 リ・ハン (CaIivan) という獣人がでてくる。 マレフィートの論文によると、これはスペイン語の canival を綴マリフィート流にいうと、一九世紀は「ホモ・モンストローズス り換えたものだ。 canival は carival ( カリ・フ島の住民 ) からの転化が衰微して、人類がホモ・サビエンス一種類だけになってゆく」時 なのだが、同時に canino ( イヌの意味 ) とも重なっているらしい 期である。だがその世紀のおわり頃、・・ウエルズは機械を使 尸 ( 頭にイヌ起源の獣人というところには、伝統的な怪物作法の一 って、二つのホモ・モンストローズスを見せることに成功した。 端がうかがわれるが、理論的根拠のようなものはあったのだろう『タイム・マシン』における、ひょわなエロイと人間蜘蛛のモーロ ックだ。こうしてモンスター人間たちは、ホモ・モンストローズス か ? あるとすれば、多分、エンペドクレスのギリシャ的進化論や 中世の悪学だろう。 という学術的な時点を経由しながら、未来へとつづいていく。 ヘロドトスと同時代のエンペドクレスは、「生きものの体の各部そして二〇世紀のでは、平らな世界のかわりに広い宇宙が、 分は、それそれ独立して生じる」と考えていた。原子論の生物版で悪魔のかわりにはべムや宇宙人やマッド・ サイエンティストが登場 ある。そこで、手と腕とは無関係に、足は脚なしに、頭は胴体からする。だが、古くからの好奇心や恐怖が失われてしまったわけでは はなれて、目は顔とは関係なく、てんでばらばらに放浪する。ヒト ない。じつのところ、それらをもたぬを読むのは、ワサビのき も下等動物も自由平等で、それらの孤立した各部品は、まったくアかぬニギリを食うようなものだ ! また、形態的な面だけからいえ トランダムに結びつくのだ。動物の人間化か人間の動物化か、ともば、古いモンスター人間そのままのような連中に、でもお目 ・フロトタイ・フ かく犬頭人、蛇男、人魚、その他ありとあらゆるものが生じるのだ にかかることがある。いや極言すれば、過去に原型を見いだせな が、ここにも自然淘汰が働くというのだから浮世はつらいもの。時いようなものはない、 といってもいいほどた。クラークの『幼年期 間の経過とともに生き残ったのが、愉快・痛快・奇々怪々のモンスの終り』をはじめ、名作のなかには中世の香りを感じさせるものも ター人間たちだったのである。 多い。だがそこで使われるのは、もはやエンペドクレス的な理論で これに対して中世の学者たちは、なんでもかでも悪魔のせいにしはなく、分子や量子の領域であり、あるいはそれを超えるものだ。
ともあったが、そんなのは辛うじて植物の体裁を保っているだけの 、。ただし、彼等の生息地は奥行の深い洞穴か、日の光もとどかぬ こと。いじけた姿で地面にひれ伏し、干粘らびた生命にしがみつい過密林という条件があり、おのずから行動範囲が制限されている。 ているような存在だった。それにひきかえて、森の中は活気に満ち ハシ・フトコオモリの天敵は山猫である。もともとの山猫ではな 、飼猫が野性化したものといわれるが、面構えは猛獣の名に恥じ みちていた。うっそうたる大樹のみでなく、下生えの灌木も存在をく 主張してひしめきあっていた。さらに獣達は、もっと激しいエネルぬどう猛さだ。前世紀の光栄を双肩に担っているかのように、彼は ギーをぶちまけていた。生存と繁栄のために、一瞬の休みもなく行あらゆる成り上がり者達を襲うが、しかし結局は孤独な強者にすぎ ない。彼が木をよじの・ほってハシ・フトコオモリを襲う時、クマネズ 動し、叫びつづけていた。 ミ達が山猫の巣を荒らし廻る。しよせんは数の問題なのだ。現代的 それは長い時をかけてなされたのではなく、生物史からすれば、 ほんの瞬く間に行なわれた変革であった。ずっと昔には、大気組成生物相の中では、山猫はいたずらに調和を乱す異端者にすぎない。 や温度の変化が、生物相転移の原因になっていた。しかも転移が完もっともこの森に限っては、山猫にも理解不可能な特別の異端者 了するには、何百万年という地史的年代が必要であった。最近の変がいた。それは二本の足で立って歩き、他者からの攻撃の危険に対 化については ( せいぜい数百年か一千年ぐらいの : : : ) おそらく大しては、まったく無関心な様子を示していた。奇妙に非生物的な体 気中の放射線量変化が主因といわれる。植物界への影響は意外と少臭の持主で、その行動は気紛れであり、誰も彼の意図を察知するこ なかったが、動物界では目に見えてはっきり解るほど、激しい変化とはできなかった。ただ、森の動物達が一致して下している評価 は、とにかく彼が正確無比な狩人であるということだ。一度、馬鹿 があった。爬虫類は完全に消減したし、哺乳類も大型のものはほと んど姿を消した。生態的にいえば、繁殖率の低いものほど早く減亡な山猫が虚栄心にかられて彼を襲ったが、ごく手軽に追っぱらわれ していったと言ってよい。必然的に世代更新の早い小型生物達が残てしまった。相手はうなり声一つ立てるでなく、小手先を少し動か 存し、彼等は強者の抑圧から解放された結果、もしくは遺伝形質変しただけだが、そのおかげで山猫は一生ほえることができなくなっ てしまった。大事な牙も欠けてしまったので、イナゴやコオロギを 異をともなって、次第に体形を大型化してゆくものがあった。 破壊された都市での″死者のふるまい″に飽満したクマネズミ達追ってやっと飢えをしのいでいる。この「虫追い山猫」の話は、他 の動物達にとっていい教訓となった。巨人蟻の百匹の集団さえ、彼 は、今では森林地帯に進出して、もっとも強力な種族となってい る。形態変化の著しいものでは、古沼の悪魔とでもいいたいャスリのそばは避けて通るようになった。ただし、彼は蟻などには眼もく ハオオウシガエルがあり、また恐るべき集団破壊力をもっ巨人蟻なれない。彼が求めているのは、柔らかい草食獣の肉と、長毛テンジ ど : : : もっとも嫌な存在はハシ・フトコオモリだ。ロ吻を角質化させクネズミのふさふさした毛だった。それに野生のリンゴやスグリの た翼長二メートルの夜間攻撃機は、そのまま古代の翼手竜を思わ実も集め、その棲家へせっせと運んでいた。 せ、相手が生きて動くものでさえあれば、なんであろうと容赦しな獣達の近よらぬがれ場、方数キロにわたる領域を占めて「彼の住 ロ 6
それは人間ですか、それとも、ヒューマノイドですか ? ふたたび太陽系にはいったときでした。 あなたが言いたいのは、彼らがわたしたちと同じような外観、つ 5 さて、わたしが発見したものについての質問にお答えする前に、 わたしとしては、あることについては申しあげられないということまり眼が二つ、耳が二つで、手が二本、足が二本あるかどうかとい を、おことわりしておきます。わたしはその航行の技術的な詳細をうことですか ? それならちがいます。そんなふうではありませ お話しすることは許されていません。それは最高機密です。わたしん。あまりうまく言えませんが、似ても似つかないものです。哺乳 自身の行動についてはお話しできます。わたしは食べて、寝て、機動物ではないのです。 械を点検し、大部分の時間は、ただ考えていました。でも、宇宙船それでは、昆虫ですか、鳥ですか、それとも爬虫類ですか ? そのものについて、あるいは、その装置や航行日誌についてはお話爬虫類がいちばん近いでしよう。でも、全進化の過程はちがって います。わたしは物理学者で、生物学者ではありません。わたしが しできませんし、おなじように、どこに着陸したのかも申しあげま せん。ミスタ・ラスムッセンは、わたしが口をすべらすのをとめる爬虫類だというのは、それが細長くて、樹皮かうろこのようなもの で覆われているからです。でも、その生物は、すべての動物の種の ために、ここにいらっしやるのです。すべて最高機密なのです。か って、国同士がお互いに対して安全を確保した方法を、いまは惑星変化をとびこえてしまったのだろうと思います。動く植物のような 同士がしなければならないと、地球では考えています。でも、わたのです。そして、空気中から栄養をとっています。 しかし彼らはあなたと意志の疎通ができたんですね 2 しは、ほかの惑星が地球と同じように考えているとは思いませんー ー文明のすすんだ種族ですから、おくれた種族に驚異を感じてはお ええ、できました。彼らはわたしたちのように、ロで話すのでは りません。 ありません。彼らは、そうーーわたしたちなら手とでも呼ぶような ああ、ちょっと、ミス・、横道にそれないで ! 論争の種になもので話します。二時間で、彼らはその方法を教えてくれました。 しいらしたんですか ? そこには、どのくら、 るようなことに話をもっていくのはやめましよう。 ひと月ぐらいだったでしよう。・ すみません。さあ、質問してください。できるだけお話します。 ミス・ロール・カン それであなたは、彼らがほんとに進歩した文明をもっているとい ありがと。自分のほんとの名をまた聞けるなんて、すばらしいこうことを、自分の眼で見る機会があったんですか ? その文明は、 工業的で、技術的で、科学的でしたか、地球の文明のように ? とです。 あなたが着陸なさった惑星には、知性の発達した生物が住んでい 機会ならいくらでも。彼らはなんでも見せてくれました。わたし たんですか ? たちよりはるかに科学的でした。政治についても進んでいて まさに、そのとおり、住んでいました。わたしたちよりずっと進おねがいですから、ミス・ では、ミスタ・ラスムッセン、心理学的にいって、たいへん高度 歩した生物が。
連載難サインス , ジャーナル、くっ 変。斗理 去る七月十三日、 ZO— ( アメリカ国立ガン研究所 ) は、「生物学者が定胞中に永久に取り入れられ、癌化した細胞と、癌を生産するウイルスの生産 説と考えてきた生物の遺伝・成長・発ガンについての考え方に、根本的な修する命令を与えるのだ 正を要求する実験が行なわれた」と発表し世界の分子生物学界に大きなセン だがテミニズムと呼ばれるようになったこの仮説は、他の科学者たちから セーションを巻きおこした。 はほとんど受け入れられなかった。 XZ<< が QZ<< とともに遺伝情報を伝え 従来の考えかただと、生物の遺伝、成長、発ガンを支配する物質は、 2Z るという考え方は、分子生物学界の定説に対するあまりにも明瞭な反論だっ ( デオキシリポ核酸 ) と ( リポ核酸 ) の二つであり、このうち主役たからである。だがテミンはこのアイデアを棄てることを拒んだ。彼は腫瘍 を演ずるのは ZZ< で、 XZ<< は 2Z< の遺伝情報を運ぶメッセンジャーの を起すウイルスが、なんらかの方法で宿主の細胞内に死の情報を永久 役を果すだけ、というのが疑いの余地ない定説とされていた。 に注入するにちがいないと確信していた。さもなければ、癌が、細胞分裂に ところが、これが、少なくともある種のガン・ウイルスの場合には XZ< 際して、新世代の細胞群に発生するはずがないからである。しかも、細胞に が主役となり QZ< がわき役にまわるという逆転が行なわれていることが、 侵入するウイルスは、それ自身の ZZ< を持ってはいないのだ。それは、ウ 実験的に明らかになったばかりでなく、今後の研究によっては、 XZ< ↓ イルスが宿主の細胞内に侵入して以後に何らかの方法でを生産するか Z< という。ハターンが、もっと広範囲に、一般的にも存在しうるということ らでなければならない。先月、テミン博士は水谷哲博士と共同研究で、また になったのである。この実験の報告論文を最初にのせて、きっかけをつくっ これとは別にの・ハルチモア博士は独自の研究によって、イギリスの科 たイギリスの科学雑誌ネーチュアは「根本定理に逆転が起った」とまで書い 学雑誌ネーチュア誌上に、動物に癌を起させるウイルスに、それ自身 ているが、少なくとも今度の「事件」は、常識や定説が一八〇度の転換を余のを合成する能力のあることを示す実験結果を発表した。この二チー 儀なくされることのある好例というべきだろう。 ムの研究は、その後間もなく、コロンビア大学ガン研究所長であり「 , 分子生 この新発見を行なったのは、ウイスコンシン大学のハワード・テミン博士」物学の最もすぐれた研究家として知られるゾル・・シュ。ヒーゲルマン博士によ と日本人水谷哲 ( さとし ) 博士、および ( マサチューセッツ工科大って確認されたのである。 学 ) のデ 1 ヴィッド・ ・ハルチモア博士で、この二チームがそれそれ独立に行 テミジ、博士らの使った実験材料は・ニワトリ肉腫のラウス・ザルコーマ・ウ なった実験を、コロンビア大学医学部ガン研究所長のゾル・シュ。ヒーゲルマ イルス、・ハルチモア博士のはマウス白血病ウイルスで、いずれもウイルスで ン博士が追試して確認するにいたったものだった。 あった。従来の分子生物学の常識では、遺伝や成長のメカニズムは ZZ< が この間の事情をタイム誌はつぎのように報じている。 中心であり、 2Z< が 2Z< 依存性複製酵素の働きで同じをつ この定説は、一九六四年ウイスコンシン大学のハワード・テミンによ くるのと、 2Z<< が ZZ< 依存性 XZ< 複製酵素の働きで XZ<< をつくると って実験的な挑戦を受けた。彼はと蛋白被質のみで構成されるある種 いうのが、もっともスタンダードのかたちだった。 のウイルスが、宿主の体内に侵入してそれ自身の QZ< をつくり、癌となる これに、 XZ< から XZ< 依存性 XZ< 複製酵素の働きでがつくら のではないか、という仮説をたてたのである。この新しい AZ< が宿主の細れる場合もあり、数年前に、試験管内でからを人工合成する実 ドグマ ドグ 加藤 ~ , 喬 4
第四章においては、現在ではすでにポビュラーなことばとなって いる″フィ 第一章では、自動機械と生物とに関する科学思想の歴史が、ウィ ード・ ( ック″と、それとウラ ( ラの関係にある " 振動″ の問題が、医学・生物学・自動機械・数学などを渾然一体としなが 1 ナ 1 独得の発想によって語られている。現代の自動機械は、ニュ ートンにおける可逆的な時間ではなく、ベルグソンの時間の流れのら語られる。 中にあるとするのだ。 フィ 1 ドスックという概念は、まえから電気回路理論でよく用い られていたのだが、ウィーナーによって、広範囲な対 主張したいことはおぼろげながら 象に共通してつかわれるべき概念であることが強調さ 理解できる。自動機械と生物とを、 れた。 同じ理論体系のなかにおさめること 現在では社会科学においても用いられていたこと の妥当性を、科学史的に説いている のである。 は、周知のとおりである。 第二章では、数学的な準備がなさ 物・精神・言語・会 れる。統計学はウィーナーにとって 第五章以後″サイ・ハネティックス〃の特徴である、 のひとつの出発点であった。ニュー 機械と生物を一括して扱おうとする態度は、ますます トンカ学の決定論的な手法はサイ・ハ はっきりしたものとなってくる。 ネティックスにはむかない。ウィ ナーはギ・フスの統計力学に着目し、 第五章では計算機と神経系が、同じマナイタの上に ルべーグ積分という、一種の積分 のせられている。論理学から電気回路から心理学から ( 高校で習うリーマン積分よりも一 ホルモンの話までがとびだしてくる。 ランク守備範囲が広い積分 ) によっ 第六章は哲学的なムードをもっているが、主旨は第 てこれを基礎づけた。 -k 五章と同一である。主として視覚的な認識の問題が語 ウィーナーはこれに関連した数学 られている。認識の問題の自動機械的な推測である。 的、また応用数学的な数々の貢献を、 第七章は、ウィ 1 ナーが自動機械との類似性におい ″サイ・ハネティックス〃以前になしとげている。 てもっとも興味をもった精神病患者の生理現象の原因が推理されて 数学的準備ののち、第三章では、いし よ、よ情報と通信の問題に突いる。脳とコンビュータの故障時における対比である。 入する。 第八章において、サイスネティックスは社会科学の領域にまでひ ここでは、これまで断片的に、また漠然と考えられてきた″情ろがってゆく。しかし、ウィ 1 ナ 1 は社会科学の問題を機械や生体 報″の性質が、数学的にくわしく検討されているが、同時に、量子といっしょに扱うことについてはかならずしも楽観的ではなく、自 然科学のようにわりきれるものではないことを警告している。この 力学から生物学にも筆がおよんでいる。このあたりが、ウィ 1 ナー の著述の大きな特徴である。 章にある〈ノイマンのゲームの理論に対する批評〉は有名である 0
入りの『歴史』九巻を書いたギリシャのヘロドトスだ。彼によれ然史』数巻は、怪物のすべてを系統的な方法で集めたが、自分自身 ば、エチオ。ヒアの地下にはトログロダイトという穴居人が住み、アの潤色もいくらかつけ加えたといわれている。頭蓋を飲み皿がわり 8 トラントは眠ることのできない不幸な怪人で、パデは病気の仲間をに使うシジア人がいるかと思えば、サイビは一つの眼に二つの瞳孔 食ってしまう。リビアにはアディルマキダという奇妙なのがいるをもっている怪人だ。ェシーンは女性なしに繁殖するというから、 し、アグリッパは禿頭だ。その他にも、単眠が額にあるアリマスビ生物学的には無理な話だが、女性無用の世界は案外現代うけがする かもしれない。 だとか、羊足の人間や冬眠する連中、半獅子半鷲のグリフィンな そして二世紀には、アプレイウスが変身譚のはしりともいうべき ど、いろんなモンスターが勢揃いした。喜劇作家のアリストフアネ スが、の源流になりそうな作品を書いていた五世紀のこと『黄金のロ・ハ』を書き、ローマの平和が崩れゲルマンの大移動がは である。 じまる前夜の三世紀のただなかでは、カイウス・ユリウス・ソリウ スなどのローマのライターたちが、モンスター人間の推敲をかさね O 四世紀にはいると、インドに関しての報告によって、モンス ター人間の仲間が増えた。ベルシャで宮廷医をしていたクテシアスたのである。 によると、サイノセファルスは、大みたいな声をだして吠える犬頭ヨーロッパの中世は不思議な時期だ。表面的には、みるほどの文 の怪人で、・フレミアは、頭がなくて顔が肩のあいだにある。サイア化的成果もなく、無為に停滞しているかにみえる。しかしどろどろ ポードは強大な一本足をもっていて、それを頭上にかざすと傘にもした何かが、暗い胎児期のエネルギ 1 のようにうごめいているの だ。モンスタ 1 を見たという宣教師も多い。それに、聖書の創成記 なろうという傑物だ。 一ヒロニが巨人について触れているから、まんざら否定するわけにもいかな 現実のインド人には申し訳ないが、同じような報告は、・、・ 。あるいは中世の主役は、むしろ魔女たちだったかもしれない ア王セレウコス一世の大使であるメガステネスからももたらされ た。彼はチャンドラグ。フタのインド王朝に仕えていたから、いうこが、ローマ人たちの仕事は中世怪物心得の源泉として生きながらえ る。そして、東北アジアで羅針盤や火薬が発明され、西アジアで とが真に迫っている。鼻のないインド遊牧民の話を最初にばらまい たのも彼だし、やたらに長生きするハイボリアンだとか、香りを食『千一夜物語』の原形ができ上りはじめていた一〇世紀末頃から、 って生きるロ無し種族についても語った。面白いのは大耳のフアネ旅行家たちの話は、モンスター人間をますます怪物的にしていっ シアンで、それにくるまって眠れるほどだから、キャンプにはもっ てこいである。 ここで「長老ヨハネの王国」という神話があらわれる。その王国 に関しては、ヘニッヒの『楽園はどこにあったか』などで日本にも その頃おこなわれたアレキサンダー大王のインド遠征も、モンス ・ジョンと呼ばれ、タタール族 い。いろんなアレキサンダー物語紹介されているが、俗に。フレスター ター人間の宣伝に一役かったらし が書かれて、メガステネスの仕事とともに、インドの住人についての首長ともいわれるこの男は、相当なほら吹きだったようだ。「あ の奇妙な知識をこしらえてしまった。 りとあらゆるモンスターが住み、鉱物資源だけでなく若さもまもる ローマでは博物学者の大ブリ富の国」といったような手紙が、ビザンチン皇帝マニュエル一世の さて時代がかわって一世紀 ーベルンゲンの ニウスが、人類の肉体的性状と習慣を記述すべく大奮闘。その『自もとに届いたのは一二世紀の中頃。ドイツで『ニ こ 0
NO MORE•人、。をを めしにミロか誰かの画集でも開いてごらん。これ程までに壮烈なぞえてみるとたし 的想像力をかきたててくれるプロ。 ( ーの画描きといえばいっ かに十本あるから たい誰がいるというのだ ? どだい無茶な言い分であることは承知烏賊に間違いない の上だが、それでも、敢てそう言いたくもなってしまうのである。 と思う ) へばりつ それはもちろん、クレーや = コルスンが火星人や宇宙船の絵を描いているという画 いているというわけではない。それはそうなのだが、たとえばカンだがいいんだな、 デ→キー 0 画集を開」たとき、 = 親しんで」る自分 0 精神 = れが。そ 0 烏賊 - ・町一一一 構造のこんな奥深いところにまでも食いこんでくるようなその感を他の惑星の軟体 じ、これはもう、おいそれといわゆる画などから得られるよう動物だととろうが、 なものではない。 パラレル・スペ シ = ールレアリズムの画家にドミンゲスという人がいるが、このスから突如放りこ 人の〈未来の追憶〉という画は、なにか、おそろしく高い山のてつまれたかわいそう な烏賊たととろう ペんの地割れみたいな断崖に、烏賊とおぼしきやつが一匹 ( 足をか が、どういうわけ 〈ビョンド〉年 3 月号スコット・テンプラー画 だか海底からここ まで這いあがって きた烏賊だととろ うが、高山性で淡 水性の両棲類に属 する烏賊ととろう が、それは見るも のの御勝手。研ぎすましたような空気の清澄さが、こいつはひょっ とすると、地球上に生き残った生物の最後の一匹なんじゃないかー ーなどという空想まで湧いてきたりするのである。ダリだとか、エ ルンストだとか、キリコたとかあるいはクートーとかラビスとかい った人たちの作品について今更ここで四の五のいうのは野暮もいし ところ。あれこそはまぎれもなく彼等が垣間見たべつの空間そのも のだし、そんじよそこらの画などは及びもっかぬ壮烈な迫力に なあふれている。 サッターフィールド作 NO MORE STARS のタイトルカット ( ヴィドマー ) 3
究に使おうという試みは、古くからあった。しかし相手が相手だけ に、ほんに僅かの材料でやらねばよらよ、。 オオし「月の石」のねだりつ 3 分解してみろよ こみたいなものだ。そこで目をつけられたのが、微量補体結合反応 というものである。 ョリンネ的世界への道 補体結合反応というのは、抗原と抗体のほかに補体というものが 考えてみると、モンスター論争の根底には、「どこまでがホモ・ 加わってはじめて成立する反応だ。普通、もう一つの反応系を用意 サビニンスか ? 」という範囲の問題があったようだ。 しておいて、補体が抗原抗体複合体に結びついたかどうかを、その もちろん日常の世界では、一応の概念ができ上っているが、人問反応系の態度から判断するのである。一人娘が、女房もちの男の家 の枠からはずれるような連中が出現したら、ちょっと困ったことに に入りこんでしまったときの、娘の両親の動きを観察するようなも なるだろう。ある作品がか否かでぐ場合と似ていないでもなの、と思っておけばよいだろう。 いが、主観で決めるわけにもゆかないから厄介な話だ。なんとか、 おまけにこの方法は、「反応がおこったかどうか」という定性的 多数の人が納得しそうな証拠を見せねばならない。 なことたけでなしに、「どの程度か」という定量的なことが調べら そこでヴェルコールの小説『人獣裁判』では、主人公とサルみたれるようになったから、一九六 0 年代には、進化や分類学の領域で もさかんに用いられるようになった。 いな生物の雌のあいだで交配実験をやる、という手段がとられた、 もし赤ん坊が生まれたら、彼女は人間だ。この例は、「隠れた本質 を可視的にする」という方法を示している。もし相手が、 o ・・ こうした仕事をやった一人に、カリフォルニア大学の・・サ ムーアが創ったシャンプローみたいにチャ ーミングなやつなら、サ リッチがいる。彼は定量的な免疫化学を使って、動物のアルプミン ド、マゾ、レズ、その他、交配実験への志願者がわんさと集まるかを検査してみた。アルプミンは、タンパク質の五〇 % あまりを占め もしれないが、それはともかく血清学とか免疫学の名で呼ばれてい る大切な物質だ。それから、ヒトのアル・フミンをもとにして抗血清可 る部門でも、似たような方法がとられている。血液型の判定もその ( 抗体 ) を作り、種属間の差と進化の経路を調べたのである。 一例といえるだろう。抗原性のある赤血球を、それに対応する抗血 その場合、「近い種、のあいだでなら、うすい抗血清濃度でも反 清とまぜ合わせると、一種の抗原抗体反応がおこって塊りになるの応がおこるが、「遠い種」はこい濃度にしないと反応しないことが を利用するのだが、まあ、ヒッビーの男女の出合いみたいなものわかった。たとえば、一一 0 〇〇倍にうすめた抗血清濃度では、チ ンパンジーのアル・フミンは五〇 % ぐらい反応して検出可能だが、そ しかしこの方法は、生きたものだけに有効なのではない。ベルー の他のサルは反応しない。四六 0 〇倍ならリーサス ( べンガルざ のミイラが型たったとか、一一〇〇〇年前の血液型が決定される ) が反応し、二五 0 〇倍までこくすると、キャプシン ( おまきざ た、といったふうな報告もあらわれてきた。生物間のかけ合わせはる ) でも補体結合がおこる。「血は水よりも濃い」とはこのことだ 現在にしか通用しないが、これなら長い時間軸上で展開できるか が、これたけではどうも分りにくいから、「免疫学的距離、と呼ば 6 ら、はるかに便利なわけである。じっさい、免疫学を系統発生の研れるもので比較してみよう。同じような反応がおこる濃度を、分り
やすい単位に換いらしい。もしそうなら、ヒト・ギポン間の一二単位に対して、チ 4 算したものと思 ン一 ( ンジー・ギ・ホン間は六単位になるはずである。このことから、 6 ってもらえばい仲よく三単位ずつの変化がおこったのだ、と推論することができ その結果によ こうした操作をつづけると、アルプミンというタンパク質のレベ ると、ヒトのアルにおける遠近関係を、つぎつぎと書いていけるたろう。さらに、 用すル・フミンとチン化石での調査などを加えて換算をおこなうと、時間軸上での変化の 引示 てを。ハンジーのアル時点も推定できる。こうして作られたのが、図に示すような、すっ し数 化位プミンの距離はきりした進化の系統樹た。これは、生物の教科書などでお目にかか 略単六単位で、霊長るいつもの見なれた系統樹とはどうもちがう。さあ困ったことだ 簡の 離類のなかでいちが、その意味はいったい何たろうか ? よ距 文的ばん遠いものは ドクター・サリッチがおこなったのは、動物アル・フミンという分 論学一一五単位であ子レベルでの比較だ 0 た。だから、ヒトの位置にあらわれてきたも の疫 チ免る。霊長類以外のは、リンネ式の分類によるホモ・サビエンスではない。生体とし , の動物では、もてのヒトではなく、ある科学上の概念操作から生まれたヒトなので サ数っとも近いものある。だが、完全な空想の産物でもないから、反リンネ的ともいえ でも一四〇単位ないだろう。・ほくらのなかにあって、実在してはいるが具体的に生雌 だから、下等な活しているのではない奇妙な存在ーー一種のホモ・モンストローズ 原猿類でも、イスともいえそうだが、これをもって″非リンネ的世界の発見とす るのは、まだちょっと早計のようである。 ヌやジュゴンよりは近い。だが、それにしても、こうした距離は、 いつ、どこで生じたのだろう ? ヒト・チンパンジー間の六単位と いう差は、お互いが共通の祖先から別れて以来、どれだけがヒトの そもそも、アルプミンというタンパク質が進化したというからに 系統のなかに蓄積し、どの部分がチン。ハンジー系にたまったのかっ は、もっと小さな変化があったはすだ。タン。ハク質は、約二〇種の この疑問に答えるには、もう少しだけ遠い関係にありそうなサアミノ酸が一〇〇から一〇〇〇個ぐらい結びついた高分子だが、ど ル、たとえばギポン ( マレー産手長ざる ) などとの距離を調・ヘてみこで、どのような変化がおこるのだろうか ? この問題を発展させ ればいい。 ヒト・ギポン間、およびチンパンジー・ギポン間の距離るために、核酸によるタンパク質合成のことを復習しておこう。 は、どちらも一二単位である。ギポンの側からみると、ヒトもチン 核酸はリン酸と糖と核酸塩基から成っている。その糖は、 QZ< パンジーも同じ距離にあるのだ。つまり、六単位ぶんの変化が全部 ( デオキシリポ核酸 ) の場合はデオキシリポースで、 ( リポ ヒトの系統におこって、チン。 ( ンジー以上のものになったのではな核酸 ) ではリポースになっているが、ここで大切なのは塩基のほう ゴリラ ヒト チン / ヾンジ一 ギポン べンガノレざる くもざる めがねざる あざらし アルプミン進化の系統樹