度を持ったものがないといわれる一隻を選んだ。メリックがコルラと思われる運命へむかって出発なさるのを、こぞって悲しい思いで の飛行艇を近くから見るのは、これがはじめてだった。飛行艇は一お見送りしようとしているのです」 様に、設計がかんたんなものであり、次第に先細になった長い金属「おそらく、ジ = ランこそ死必至であろう」メリックは重々しくい 製の艇で、いわば競走用ポートに似ていた。・ : カ横げたがいま少しった。「余はといえば、必ずやナルナを伴ってもどってまいる。余 広く、甲板があって、周囲を低い舷牆がとりまいていた。それらのの留守中、そちに申し渡したくだんの暗闇投射装置を無効にさせる 艇は、光線剣や光線銃と同じ、あの破壊エネルギーを艇首前方へ噴あの方法を、科学者たちに実験させてみてくれ。あれなる装置はあ 出することによって大気中を移動するものだった。このエネルギー る種の、光を消減させる振動を放射するものであり、したがってし が絶えず艇の前方の大気を消減させ、かくて背後の大気圧によって かるべき反振動をぶつけることにより相殺無効たらしめることがで 艇が前方へ推進させられるという原理なのだった。この目に見えぬきるはずである」 エネルギー線の方向を変じることで艇の飛行方向が制御され、また「やってみましよう」と、ムルナルはうなずいた。「そうすれば、 その強弱を変化させることで速度が加減されるのである。 あなたの方法がふたたびわれわれに勝利をもたらしてくれることに かんたんな制御装置が艇首にとりつけてある一方、艇尾と舷側に なるでありましようでは、あなたの凱旋のそのときまで、チャ はすらりと、中型の光線銃が回転銃座に装備されてあった。 ン・メリック」 その日の残りのあいだに当の飛行艇が艤装され、メリックは、疲メリックはしばし、相手の肩に手を置いた。それから、ホルクと とばり 労困憊して眠りについた。目を覚ましてみると、ムルナルが待ってジュルウルを伴ってテラス上へ出ていった。夜の帷がコルラを包ん 彼は、チャンの留守中支配者代理として、《十二人委員会でいる。眼下の街路という街路では、三人が飛行艇に乗り込み、艇 議》の残りの者たちとともに、コルラを治めることになっていたのが都市上空へと急上昇していくのを、死のような静寂の中で見送っ だった。ふたたび夜になっていた。巨大なビラミッドの上部テラス た。あっという間に、黝々とした巨大なビラミッドの都市が、はる のひとつの上にくだんの選ばれた飛行艇が待機し、十人のコルラ人か眼下の背後へと遠ざかっていった。はるかなるコスプの要塞へ、 の乗組員が配置についている。ホルクとジルウルは、ムルナルと南の方角へと、艇は夜の大気をついてまっしぐらに突き進んでい 一緒に彼が目覚めるのを待っていた。 く。メリックとその部下たちは、前方にじっと視線を据えた。 メリックが光線剣と光線銃をつけていると、ムルナルが眼下の街 路にひしめいている群衆を指さした。 5 真菌植物の森を越えて 「人民は、あなたの出発をお見送りしようと待っているのです、チ ャン」と、彼はいった。「彼らはいまや、あなたが正真正銘のチャ ンであられることを知っているのであり、そして、あなたが死必至艇は、南へ南へとひた走る。メリックは、ホルクとジュルウルと 35 ー
せている。すでに多くの驚くべき現象に出あった し、これからもかならず出くわすことになるだろ 0 う。たとえば、長く続く無重力とかヴァン・アレ ン帯とかが何であるか宇宙飛行が実現するまでは 人間には分っていなかったし、隕石の危険率がは たして大きいものやらどうかも明らかではなかっ た。地球磁場の強度がどれくらいかも調べる必要 口があった。だがこういった情報をすべて入手する コために、はたして人間が必要なのだろうか ? そ ソ れをオートマトンですませることはできないもの だろうか ( 最初の宇宙調査はオートマトンではな 離かったか ) ? たしかに、将来はオートマトンが の宇宙研究をするようになるだろうし、人間の信頼 すべき助手になるにちがいない。宇宙へますます 星深くわけいるにしたがって人間は、さらにひんば 王んに人間の知らない、未知の現象に出会い、あら 冥かじめ公式をたてておくこともできないような問 題が起ってくるであろう。しかし、オートマトン なら、人間が組みこんでおいてやるプログラムに だけ従って研究することができる。また、人間が すでに概念を持っているような。フロセスについて だけ研究するのには、オートマトンは向いている。 人類がどのようにして宇宙空間へ進出して行く かを絵にしてみせてくれるのが、この画集であ る。そこに語られているのは現在と未来である。 は宇宙研究で多くの成果をあげた。非常に重要な現在、多くの画家たちが人類の宇宙進出をテーマ こレか、はっきりと分った。 多くの人々の目に世紀り奇跡として映った宇宙宇宙飛行がなんどもおこなわれ、世界最初の女性にして作品に取り組んでいる。だが、この画集の 、船〈ポストーク〉の飛行は、実際に奇跡ではなか宇宙飛行士を宇宙〈送り出した。宇宙船から出作者たちほど、近くまで宇宙に接近することので きた画家は、たぶんほとんどいないにちがいな らた。これは、絵空ごとではない現実である。そて、宇宙遊泳もおこなわれた。 。その成功の秘密は明らかである。画集の一部 ′の陰には、設計者、技師、技術者、労働者の真に ソビエトの宇宙研究者たちとともにアメリカの 巨大な労働と、全ソビエト人民の労働が隠されて同僚たちも成果をあげている。最近、フランスがの作品を制作した一人は、宇宙船から外に出て、 、いる。宇宙 0 ケットは今世紀のシンポルである。第一一一番目の " 宇宙列強。に加わ 0 たし、他の国の宇宙空間を遊泳した世界最初の宇宙飛行士アレク セイ・レオーノフその人である。かれは、わずか 分ち難い強い合金のように、それにはソビエト人科学者たちも宇宙飛行の準備を着々と進めてい な時間ではあったが自分自身が地球の衛星となっ 民の厳しい科学と強力な技術と高い文化が溶け合る。 現在、われわれ宇宙飛行士は、近辺の宇宙、った。宇宙を描くことに自分の全創造力を打ち込ん ( っている。 最初のス。フートニクが飛立ってから既に十年のまりわれわれの惑星をとりかこむ周辺を征服しでいる画家アンドレイ・ソコロフは、レオー ナーである。二人が組になっ 一歳月がた 0 た。その間に、ソビ = トの科学者たちた。宇宙には、多くの困難や危険が人間を待ち伏ノフのよき。 ( ート
、ざやってきた やりたい、やりたいと思っていたのです。それが、し び出した。ジュルウルの光線銃が合図の閃光を迸らせた。ロケット ときには、上空の寒さの中でふるえながらじ 0 と待「ていることし のように白いエネルギー光線が夜空をついて駆けの・ほっていった。 前方の壁から、背後の都市からコス。フ人たちが毒液噴霧器を手にあかできなかったのですからね ! 」 ナルナとジュルウルは、彼を見て声をあげて笑った。が、突き進 ふれ出してきていた。 メリックは叫び、ジ = ルウルとナルナを伴って立ち止まった。大む艇上から背後を窺っていたメリックは、うれしげな顔を彼らのほ きな影が黒い鷹のように夜空から舞いおりてくるところだった。殺うにむけた。いまや東の空から闇がとり払われつつあった。 到するコスブ人にその光線銃からエネルギー光線を雨あられと注い 「いままで暴れまわることができなかったかもしれないがな、ホル 「うしろを見てみろーー、あれをなんだと思う でいる飛行艇 ! 彼らがこの予期せぬ攻撃にひるんでいる隙に、艇ク」と、彼はいった。 がサッと低空飛行し、ナルナとジュルウルがその甲板に跳び乗っ た。そのあとでメリックは、艇がふたたび上昇しかかったとき、ホ はるか後方に黒い点々が長い珠数のように連なっているのが見え ルクの太い腕に彼を引っ張りあげられるのを感じた。 てきた。朱に染まった暁の空いつばいに広がって、彼らのほうへと 「さあ、脱出だ ! 」メリックは叫んだ。「一分もすれば、百隻もの追い迫ってくる。ホルクはじっと見つめた。ナルナもメリックのか たわらで、心配そうに振り返って見ている。やがて、大男の歴戦の 艇が追跡してくるそ ! 」 艇はさながら生き物のように、壁や都市から噴射される膨大な毒勇者が重々しくうなずいた。 液を避けつつ夜空へ急上昇し、それから都市のほうへ死のエネルギ「コスプの飛行艇ですね ! そうやすやすとわれわれをいかせては 1 光線を浴びせながら旋回した。彼らは背後に、都市の頂上やそのくれないようです」 周囲の金属の平地からコスプの飛行艇の次々と舞いあがりはじめて「ジャランですわ」ナルナがつぶやいた。「彼は、わたくしが逃れ いるのをちらと垣間見た。しかし、すっかり目を覚ましたクモ人間られるとは思っていませんわ」 ・ハ / ラマ たちの都市の全景は、すぐさまかき消えてしまった。彼らの艇はも「うん、ジャランの息の根を止めるといったジュルウルが、やはり じゅうめん 「まあい の凄い速度で、暗闇をついて北の方向へ突き進んでいた。 正しかったようだな」メリックが渋面を作っていった。 彼らは、艇首を北のコルラへむけて追跡してくるのでない限 「わたくしたちは脱出しましたわ ! 」と、ナルナが叫んだ。「いっ り、われわれを捉えることはないだろう」 たん入りこんだコスプの都市からまんまと逃け出した初のコルラ人 ですのよ ! 」 炎と燃える真紅の巨大な太陽が東の空に昇ったとき、はるか後方 「そうです。しかし、わたしは、そのために少しは暴れ回ることがのコスプの艇が編隊を固めて群がりながら、なおも仮借ない追跡を 彼らはおしなべて、コルラ できるものと思っていたのですがね」ホルクが不平を鳴らした。続けているという事実がはっきりした。 , 「生まれてこのかた、あそこへ舞いおりて獅子奮迅の働きを見せての艇ほど速度があるようには見えなかったが、数時問後にはその何
ともに艇首にうずくまっていた。操縦装置を操るのはジ、ルウルだ「金属の山脈とはな ! 」地球人は、驚き呆れた。 った。飛行艇はほとんど無音で飛行した。音といえばたた、艇を推雄大な山岳地帯が背後へ退いた頃には、カルダーの五つの月がす 5 進させるエネルギー線を造り出す、艇尾のずんぐりした機械装置の べて夜空に昇ってい、それらの世界カルダーをめぐるそれぞれの軌 発している低い唸りのみだった。コルラ人の十人の乗組員たちは、 道をたどりながら、しばらくはひとかたまりになっているように見 舷側沿いにうずくまったり、横になったりしていた。 受けられた。赤と緑の月の光を浴びて泰然自若とした、その途方も 前方を窺っていたメリックは、進路のはるか彼方に黝々として城なく雄大な山脈の景観は、長くメリックの記憶に刻みつけられたも 壁のように連なる峨々たる山脈が・ホッと浮きあがっているのをみとのだった。 めることができた。その壮大な山脈の壁に接近し、ジ = ルウルが艇金属の山岳地帯が背後へと遠ざかるにつれて、ジ、ルウルは艇首 を上昇させていくにつれて、あたりの大気が急激に冷たくなってい を下方へむけた。あたりの大気がふたたび暖かくなっていった。艇 った。そして、その壮大な山岳地帯を畏怖の念に駆られて見おろしは滑らかに、不変の速度で突き進んでいく。眼下には、そこかしこ ながら突き進んでいくとき、ついに凍てつくような寒さとなってい に広大な金属地帯が点存する低い連丘があるばかりだった。そのむ こうには、ゆるやかに起伏する平原が月光にさらされていた。その メリックはすでに昇っているふたつの赤い月の光の中で、山岳地上空を彼らは数時間も飛行した。ついに平原は、前方および両側に 帯の峨々たる山嶺がおよそ地球には存在しない高さのものであるこ回路の届く限り広がっている黒っぽい植物群にとって代わられた。 と、そして、その雄大な山岳地帯そのものが驚くほど整然とした円 この上空を矢のように突き進んでいくとき、メリックは、カルダ 1 の夜と昼の長さを推し測ろうとした。そして、それらが地球の昼 弧を描いているのを見わけることができた。山と山の狭間には白い 雪が積もっているが、山嶺にはその形跡がまったくみとめられな夜の長さと大差ないという結論に達したのだった。あとで知ること 。というのも、山嶺や巨大な割れめ、絶壁などは、ガラスででもになったのだが、カルダーの昼夜の周期は、地球時間で二十時間あ まりということだった。だから、巨大な真紅の太陽が彼らの左手の あるように滑らかに、すさまじいばかりに黒光りしていたからだ。 かたわらにいる地平線上にヌッと顔を出したとき、彼がなした推定は、当たらずと 「まるで、黒い金属さながらだ」と、メリックは、 も遠からずというわけだった。 男たちに意見を述べた。そして、ホルクの返事に唖然となった。 日の到来とともに、彼らがその上空を突き進んでいた森のとてつ 「金属なのですよ、チャン。あの黒い金属は、カルダーにはきわめ て大量に埋蔵されていて、そこここで雄大な山岳地帯とか、岩壁ともない本来の姿がはっきりとさらけ出された。 それは、巨大な真菌植物の森なのだった。四方、目路の届く限り なって露出しているのです。われわれをはじめ、コスプや他のすべ ての種族は、この金属を飛行艇や、建物などほとんどあらゆるもの真紅の植物群が延び広がっている。ほとんどが、六メートルないし はそれ以上の高さのものばかりだった。まるで怪物のような形であ に使っているのですよー
くみ したように嫉妬と怒りから、コルラ人がコス。フに与するなど、考え るだに胸くそが悪いことです ! やつめは、コスプどもと気脈を通ホルトの目が輝いた。「あなたは、正真正銘のチャンです ! 」歴 5 らっち じ、ナルナを拉致せんものとこの襲撃をお膳立てしたのにちがいあ戦の勇士、大男の彼は叫んだ。「あなたがコス。フの都市へまいられ る折には、不肖わたしめが供のひとりです ! このジュルウルも同 りません ! 」 「だが、余は必ず、やつを見つけ出すーーきっと彼女を連れもどす様のはずです。もっとも、彼はすこぶるつきの恥ずかしがり屋で、 このようなことはいい出せませんがね。まあ、われわれの十二人も ぞ」メリックは誓った。 いれば、血路を開いてクモ人間どもの都市へ乗り込み、またその必 ムルナルは悲しげにかぶりを振った。「不可能です、チャン・メ リック。ジャランは、コスプどもと一緒に、南の方角、山脈のはる要があるなら、出てくることもできるでしよう ! 」 か彼方にあるコスプの大都市へと彼女を連れ去ったのです。いまた続く数時間はメリックにとって、多忙の極みのうちに過ぎ去っ かって、カルダーのだれひとりとしてクモ人間のあの大都市へ入った。カルダーの第五の月がまるで真紅のウェファーのようにまだ西 にかかっているうちに、巨大な赤い太陽が東から昇り、前日とはう て帰ってきた者はありませんー 「だが、余は入るーーーそして、帰ってくる ! 」メリックは断言しって変わったコルラの部下を見おろしていた。すでにコルラ人たち た。最初の激しい怒りは、冷たい決意にとって代わられた。「それが都市の破損個所の修複にとりかかってい、クモ人間たちの夜襲か ら見る見る回復しつつあった。ムルナルがメリックに報告したとこ も、ナルナひとりだけのためではない。ジャランのためでもある。 彼が生きているあいだはコスブ人に手を貸す。彼がやつらに与えるろによると、市はあげてコス。フ人の敗退を喜ぶ一方、ジャランの裏 情報をもとに、やつらの襲撃は一段と強化されるであろう。そし切りと、先のチャンの娘の誘拐を伝えきいて、悲嘆に暮れていると て、やつらの襲撃が止んだときには、コルラは全減しているであろのことだった。 う」 メリックはコスプの都市の冒険には、一隻の飛行艇に必要最小限 「おおせのとおりです」ムルナルがいった。あとの者たちも同意の度の戦士を乗せていく肚づもりでいた。連れていけるだけの大部隊 を擁していたとしても、コス。フの圧倒的多数の軍勢をむこうに回し 意思を表示した。 「しかし、なぜあなた御自身がまいられるのです、チャン ? このて成功裏に戦いを進めることは不可能だ。部下を十二名に、艇を一 試みにあなたの戦士を何名か派遣なさればよいのでは ? なぜ、そ隻に限定することによってコス。フの都市へ到達し、侵入することが できるチャンスのほうがはるかに大きい。所期の目的を達するに うなさらないのですか ? 」 は、隠密裏に事を運ぶしかないのだから。 「これはいまや、ジャランと余自身とのあいだの問題だからだ」メ リックは答えた。「それにだ、余自らまかりでないところへ他の者彼は飛行艇を点検し、ホルクとジ = ルウルの勧めに従って十五人 を遣わすなど、それで余がコルラのチャンだといえるであろうか乗りの大きさの、しかもコルラの飛行艇の中でこれに比肩しうる速
、になってきた。したがってかれらの手がける作品 ジアゾン の幅もそれにつれて広がっている。 ソコロフは新しい的な主題を追求するかた 、わら、造型芸術に於ける新しい技法にも非常に関 心をよせている。すでに現在、かれは独自の方法 ステレオスコビック・ビクチャー ′を制作に取り入れている。また、立体画や立体印 刷の可能性についても、強い興味をよせている。 ソ連の宇宙飛行士で初の宇宙遊泳をしたレオー ′ノフは、その限りではいうまでもなくソコロフよ りも知名度が高い。しかし、そのレオ】ノフが絵 、を描き、しかも画家としても一流であることは日 本ではあまり知られていない。ソ連では教科書に までそのことは載っており、広く民衆に親しまれ 、ている。 かれは子供の頃から非常に絵が好きで、暇さえ ′あれば描いていた。一時は画家で身を立てたいと ~ 思ったこともあるようだ。空への魅力が勝って航 空訓練学校に入ったが、絵筆は捨てられず、校内 ′の擘新聞のイラストを描いたりして、友人のあい だでもその才能は高く評価されていた。 、かれが描く絵は、風景画あり、船あり、漫画あ りで、宇宙をテーマにしたものはそのごく一部で ′ある。 レオーノフが、かれの″宇宙時代″以前に主と して描いていた絵は海洋画であり、著名な海洋画 ′家といわれたアイ・ハゾフスキ 1 に傾倒しているこ ともうなずける。 、宇宙画を描き始めたのは宇宙飛行士に選ばれた ころからで、初期の作品のひとつである《道上 ガガーリンの話をもとに の宇宙船》はユーリー・ 、して描き上け、一九六一一年八月のプラウダ紙上に ) 載った。広範な一般の人達の目にかれの作品が触 一れたのはこの時が始めてであった。宇宙飛行士と しての厳しい訓練が連続する緊張した日々の中で も、レオーノフは時間を見つけては、《宇宙船の ′月軟着陸》を仕上げた。その作品は、この画集に も収録されている。 レオーノフはべリャーエフ船長と二人で一九六 五年三月十八日にヴォスホート 2 号で宇宙へ飛 び、非常に興味深い学術上の実験、つまり宇宙遊 泳を行ったが、かれにとっては、もうひとつ重要 な意味を持っていた。画家としてのレオーノフは そこで宇宙の写生をおこなったのだ。その一連の 作品 ( より正確には作品のためのスケッチ ) の第 一号はまだ船内にいるときに、航宙日誌のページ に色鉛筆で描いたものである。そのスケッチをも とにして、後に描き上げた「宇宙の写生画」と呼 ばれる一連の絵は、生の宇宙飛行記録であり、全 ロ作品がこの画集に収録されている。 コ同じこの期間に、レオ 1 ノフは的なテーマ を扱った作品も手がけている。太陽系惑星の開 & 拓、太陽系外の世界、未来の宇宙技術がソコロフ と協同で、または一人で描いた作品の主題である。 かれの作品はソ連での多くの展覧会はいうに及 ハリ、ヴェニス、ヘルシンキ、プラチスラ オばず、 レ フなど外国展覧会にも出品され、好評を博した。 かれが愛読する作家は、「ガーリン技師の 建双曲線」の著者であるアレクセイ・トルストイで のあり、ソ連の古典的作家のペリャーエフであ る。特にトルストイの抒情的な作品「アエリー テ シタ」や・〈リャーエフの作品に現われる科学上の予 想や「ガーリン技師」のレ 1 ザー光線など現代で ナ実現されているようなものを高く評価している。 0 外国の作家としてはアーサー・クラ 1 クをあ げている。 ソ連の界はストルガッキー兄弟を始めとし て、エムツオフとパルノフ、ヴォイスクンスキー ノコロフ とルュジャーノフなど共作が少くない。、 とレオ 1 ノフは画の分野で共同制作を行って いるが、具体的には、レオーノフがスケッチした ものにソコロフが色を入れたり、ソコロフが構図 をとり、レオーノフが仕上げたり、また二人で意 見を出し合ってスケッチを描き上げ、それを完成 7 するなどいろいろな方法を取っているようであ
て、共同制作した作品はは、ソ連の錚々たる科学者が宇宙についての話 少くない。 や、そこで起っていることについて解説している レオーノフは、船室のことである。 中の宇宙飛行士が船窓をこの画集に収められている作品は、どの作品を 通して眺めた周囲の世界とっても天文学者や物理学者や宇宙学者が現在取 より、はるかに完全に、 り組んでいる問題を、まるで絵に画いているかの しかも直接、青いわれわようである。ここで語られている科学上の研究課 れの惑星や明るい、また題は、別の見方をすれば、芸術家たちの思想の指 たきのない星々や暗黒の針となり、創造力の基礎になるものをあたえてい 空間に「打ち込まれたよる。 うな」目もくらむばかり宇宙は無限に多様である。惑星間空間に進出す の太陽を見た最初の地球るにつれ、一般にそれまで知られていなかった現 象に出会うことがさらに多くなるであろう。つま フ人である。 ロ宇宙飛行士たちが見り、現在われわれが想像もしていないような新し コた、レオーノフの絵画に よって伝えられた異常な 風景は、教育的、科学的 宙あるいは美的であるばか 宇りでなく、深い哲学的な す意味さえ含んでいる。そ 過れは、どんなに自然が驚、ー′ 通くほど多様で、鮮明であー ( .. , 、なキ 重ます深く宇宙に進出する ニにつれ、宇宙についての ~ ~ 0 ・ われわれの概念がどんな に広いものになるかを示 している。この画集には ファンタジイ 現実性と幻想が共存し ている。幻想のないとこ ろに、前進はありえな 若い画家ソコロ プアンタジイ フの絵を見ても、幻想 がまるで現実のもののよ うでさえある。 この画集のもう一つの 特徴であり、興味深い点 リアリティ リアル レオーノフにインタビューする筆者
る。中央の太い幹から何本もの腕が突き出していて、葉というものかったからだ。夜が、まだ眼下に際限もなく広がる真菌植物の森を 閉ざした。 がまったくない。葉のないことが、それらに異様な外観を与えてい 速度をやや落として、彼らは夜陰をついて飛行した。メリックと るのだった。 それらは、たがいにひしめき合い、果てしない海の潮の流れのよその部下たちは、じっと前方を窺っていた。 うにうごめいていた。メリックは最初、この真菌植物が風になびい 「もうコス。フの都市へ接近したにちがいないと思いますがーと、ホ ルクがいった。「しかし、見すごしてしまった可能性もないとはい ているのだと思った。しかし、もっとよく観察した結果、それらの 巨大な植物には根がなく、実際に、その太い腕をまさぐりながらおえませんーーというのも、コルラ人でコス。フの都市へ到達して帰っ 互いに押し合いへし合いして、あちらこちらと動き這いずり回っててきたものはいないので、その位置がはっきりとはわからないから です」 いることがわかった。 ホルクとジルウルから知らされたところによれば、この真菌植「われわれはきっと到達する」メリックは、きつばりといった。 「そしてーーー」 物の森はきわめて広大なもので、カルダー中の生きとし生けるもの と、そのときジュルウルの叫び声が彼らの耳に突きささった。 から恐れられているとのことだった。というのも、この巨大な植物 は、一般の真菌類のように他の植物を餌食にするのではなく、動物「コスプの飛行艇ですーー、襲いかかってきます ! 」 を餌食にしていたからた。運わるくこの森の中へ落ち込んだもの叫んだ瞬間ジルウルは、艇首をぐーんと上向きにしていた。艇 は、コスブ人だろうとコルラ人だろうと、あるいはどんな生き物だが中空でぐらりと傾斜したとき、その下を、あのそっとするような クモの怪物、コスブ人が二十人ほど乗った艇が音もなく稲妻のよう ろうと、ひとしく一巻の終わりとなる。身動きのとれないでいるう に飛びすさったのだ ! 毒液噴霧器が細かい死の雨を吐き出した。 ちに、この真菌植物の化物は、彼をまえ、窒息させ押し潰し、一 が、それは間一髪コルラ人の艇をはずれていた。目にもとまらぬ素 般の真菌類が他の植物をそうするように、彼の身体をめちやめちゃ 早さで旋回していたからだ。 にしてしまうのた。 その日は終日、このいっ果てるとも知れない、恐怖を秘めてう ) 」「光線銃た ! と、メリックは叫んだ。「敵が旋回してこっちに向 めき回る真紅の森の上空を、彼らの艇は不変の速度で南へ南へと突かってくるまでに用意せよ ! 」 と光線銃座に跳びついた。そして、ジ き進んでいった。メリックの部下たちは、この森がコスブ人の都市乗組員のコルラ人は、。、ツ の周辺にまで広がっているのだと断言した。そして、クモ人間の都ュルウルが味方の艇を相手のほうへ傾斜させたとき、六つのエネル 市が陸伝いで攻撃されたことは一度もなく、空から攻撃されたことギー光線が無音で飛び出していた。だが、・コスプの艇もさるもの、 3 もほとんどないのだと。真菌植物の森の上空をあえて越え、死を意稲妻のように上方に旋回して、こっちと同じ高度でとって返してき 味する運命へ落ち込んでいくような暴挙に出るものがほとんどいな た。毒液噴霧器の長い筒がこちらへむかって伸び出している
なり、一隻すら逃れることはかなわぬことになるでしようから」 ぎる血のスタンプのようにかかっている。四つめは鮮かな緑で、コ 「ではもし、コルラとコスプが対等の条件で戦うようにしようと努ルラの上空にさしかかっていた。それらを見守っていたメリック めるならば、その暗闇投射装置なるものをしのぐなんらかの方法がは、突如として、都市のはるか上空、真紅の月のひとつをよぎって 見つかるにちがいない」メリックは意見を述べた。 移動する黒っぽい、長いかたまりを捉えた。彼は、ムルナルほか ジャランがテー・フルの端からロをはさんだ。「未知の国からおい 《十二人委員会議》員のほうを振りむいた。と、そのとき、猛々し でのチャン、あなたにそのような方法の見つかる可能性は、まずもい合図の絶叫が耳つんざかんばかりに都市を渡ってひびいてきた。 って皆無でしような」と、皮肉な口調である。 続いて、たちまち荒々しい悲鳴、叫びが交錯し、混乱した上を下へ メリックは、彼をひたと見据えた。「山脈の外にあろうと内にあの大騒動が持ちあがっていた。そして、それと同時に黒い飛行艇の ろうと、コルラの敵は余自身の敵である」平静な調子でいってのけ大隊が夜の上空よりコルラめがけて急降下していった。 た。なにがそのような返答を促したのか、彼にはわからなかった ムルナルと一緒に他の者たちもパッと立ちあがった。「襲撃だ が、いい終わったとき、ジャランが眉を曇らせて彼を見つめている ! 」ムルナルが叫んだ。「コスプだ クモ人間どもだーーー、彼らが のだけは見逃さなかった。 都市を襲撃してきた ! 」 「まさにチャンにふさわしきおことばですそ ! 」大男のホルクが叫 んだ。「やり方さえ心得ていれば、わたしめはあるだけの光線銃を イクモ人間と毒液 飛行艇に積みこんで、南へむかい、コス。フどもにいく分たりとも目・ にもの見せてやるのですが ! 」 ジュルウル ! 」ムルナルが大声で呼んだ。「ありった 会議が進行するにつれて、議題はコスプの問題からコルラのそれ「ホルクー へと移っていった。メリックは、 かくも奇妙きてれつな形でその王けの光線銃の火ぶたを切るよう命令せよーーーやつらは都市に奇襲を かけてきおった ! 」 座へと祭りあげられてしまった一族に関して多くのことを知った。 彼はコルラ人が、いくつかの点ですぐれた科学文明を達成してはい しかしすでに、そのふたりのコルラ人と委員会議の他のものたち るものの、本質的には封建的で、地球でいえば中世時代の人種であは昇降部屋のほうへむかっていた。大広間に残っているのは、ムル ることがわかりかけていた。彼は、ジャランが目に嘲弄するようなナルと娘ナルナとジュランだけだった。しかもすでに、コルラの大 表情を浮かべているのを捉えた。 . ナルナは、その瞳に好意的な色を都市では侵略者の黒い艇隊へむかって光線銃の火ぶたが切られてい 宿していた。 た。銃は無音だったが、メリックは、都市全体にそれらから迸りで すぐ横の大窓越しにメリックは、山脈の端からゆるゆると昇ってる恐るべきエネルギーの閃光を見ることができた。 くる月を見ることができた。真紅の三つの月が、さながら天空をよ そこここで侵略者の艇に閃光が命中し、吹っ飛んでいた。が、他 347
様相はたちまち、目まぐるしく旋回する二艇の果たし会い、かたをなにか本能みたいなものに伝えられでもしたように、四方八方か や光線銃を、こなた毒液噴霧器を駆使した、コルラ対コスプの飛行ら彼らのほうへと這い寄っていくところだった。メリックは、自艇 5 艇の夜空に展開する、火花散る一騎打ちとなった。上方からは、三がぐーんと旋回しながら上昇し、前進飛行に入っていくとき、胸が むかっくのを覚えた。 つの真紅の月が見おろし、下方からは、真菌植物の森が見あげてい る。二艇は、さながら相撃つわしのように旋回し、互いに毒液の噴「コスプの哨戒艇だ ! 」ホルクが叫んでいた。「ということは、他 霧を避けエネルギー光線を避け、有利な立場に立とうとした。もしにもまだまだいるにちがいない ! 」 コスプの艇が暗闇投射装置を備えていたら、彼らはあっという間に ジュルウルが静かにうなずいた。「もっと高度をあげなければな やられていただろう、とメリックにはわかっていた。 : 、 カそうではらないだろう」といった。「そうすれば、コスプの哨戒艇をやりす 、んき なくても、クモ人間たちのどっと噴き出してくる死の霧は、刻一刻 ごせるはずだ クモ人間どもは上空の気を好んでいないから と避けがたいものになっていった。 な」 「出くわすたびに戦うのでなくちゃ」大男のホルクが不平を鳴らし このすさまじい果たし合いは、決して終わりそうもないように、 地球人には思われた。しかし、実際はすぐに呆気なく終わってしまた。「きみのような戦士ならだれにとっても、戦いを回避すること ったのだ。一瞬おくれれば毒液の霧を浴びせられること必至と見ては才能の減退を意味するのだそ」 とったジュルウルは、艇の高度をさげて敗走すると見せかけ、急降「いや、ジュルウルのいう通りだ」メリックがきつばりといった。 われわれの目的は唯ひと 下した。そして、コスプの艇が鷹のように突っ込んできたとき、彼「出くわすたびに戦っている暇はない は、目の回るような曲線を描いて艇を急上昇させた。そのとき、下っ、コス。フの都市へ侵入することだ」 「で、侵入したらどうなさるのです ? 」ホルクがきいた。「いった になった相手の艇にエネルギー光線を浴びせるつかの間のチャンス を射手たちに与えたのだった。下方へむかって発せられたエネルギん入ってしまったら、出るチャンスは千にひとつもないことはあな ー光線のふた条がコスプ艇の艇尾の近くに命中した。そのあたりのたも御存じだと思いますが」 金属がくしやくしやになり、ゆがみねじれたかたまりと化し、艇は メリックは徴笑した。「それは、事の成りゆきにまかせるのだ。 きりもみしながら墜落していった。 都市にはジャランがいるーーそしてナルナも。ふたりを見つけ出せ ば、脱出の考えをめぐらす時間は充分にあるだろう」 メリックは、三、四百メ 1 トル眼下で敵艇が真菌植物の群れにぶ ち当たるのを目撃した。明るい月光の中に、コスブ人たちの跳び出 そのとおりだというように、ホルクは苦笑した。「ジャランは、 力あなた すのがみとめられた。しかし、その巨大なラモ人間たちが跳び出しカルダーきっての戦士のひとりだと目されてきました。・、、 た瞬間、 / 彼らは、うごめく腕、腕、腕にまえられ、見る見る真菌と彼がふたたび相まみえるときがきたら、これはまさに興味津々の 植物の下に隠れてしまった。いまや真菌植物は、なにがあったのか一場となるでしようね」