推進 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1970年7月号
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1. SFマガジン 1970年7月号

とにかくこの立証で、先をつづける勇気が出たよ。基本原理の理解いっしょに推進力の中へ包みこめば、ただちにどんなス。ヒ 1 ドへも への第一歩が、これで踏み出せたわけだ」 加速できて、しかも加速の感覚は全然ない」 「それを希望どおりのかたちで手にいれたときには、これとは似て「もう、加速ハンモックとも、耐加速薬ともおさらばだな」とクッ も似つかぬものになっているかもしれないね」・フレイクは、テ 1 ・フク。「最大加速に達するまでの長い時間も、減速のときの長い時間 いや、もう ルの上の装置を指さしながらいった。「これはたまたま、われわれも、必要なし、われわれはすごいものを手にいれた の求めている力の一かけらを生み出すのに、いちばん簡単な方法だちょっとで手にいれかけている」テイラーのほうをふりかえって、 「ところで、あとどれくらいの時間があるんです ? 最新の観測 った。たとえば、電気を生み出すのにいちばん簡単な方法が、猫の 毛をなでることなのとおなじさ。しかし、都市へ電力を供給する場で、一日ぐらいおまけはつかなかったですか ? 」 冫。しかない」 合、百万人の人間に百万びきの猫をなでさせるわけこよ、 テイラ 1 は、クックがチョークで書いた壁のカレンダーに目をや 「一つ考えがあるんだ」と、クックがいった。「われわれの作り出った。「きみのカレンダーどおりだよーーーあそこに書かれた最後の 日が、われわれの最後の日だ」 したこのカのことがもっとよくわかったら、別の方法をためしては どうかなーー・つまり、反重力流を作り出すよりも、重力流を逆にす「八十五日かーーー多いとはいえないな」とレンスン。 ることを考えるのさ。おれはその理論をもっと研究してみて、みん「いえない。しかし、これからは一路前進だ」・フレイクはいった。 なの意見を聞いてみたい。その方法ならほとんど電力は要らないは「これで研究の手がかりがっかめた。われわれは、これまでたれも ずだ。力を作り出すんじゃなく、ただあべこべにするだけだから , 開いたことのないドアを開いたんだ . っこ 0 ウイレフレッド ; 、 、刀しー 「だが、開かれたドアの奥に、もしつぎのドアがあったら ? 」と、 「いろいろな理由からいって、いちばん理想的な宇宙船の推進法レンスンがきいた。 は、場タイプの推進だと思う。いま思いついた理由はこうだ。宇宙断固とした口調でその問いに答えたのは、クックだった。 「そのときは、そのドアも開けるのさ」 船もその乗客も、おなじ推進力の中に包まれてしまうから、加速に レンスンの質問がただの冗談でなかったことは、まもなく立証さ ついての制限がなくなる。ロケット推進の場合のように、乗客がイ れた。彼らが開いたドアの奥には、事実もう一つのドアがあったの スの背中に押しつけられるような感じはないわけだよ」 だ。彼らの作り出した反重力の中に、第二のドアーー重力の反転ー ・フレイクがうなずいた。 ーの鍵はひそんでいるのだが、容赦なく日が過ぎていくのに、その 「じつは、おれもおなじことを考えていたんだ。たぶん、みなもそ うだろう。な・せなら、われわれがあの新星から逃げ出すただ一つの鍵は見つからない。一一七とその変種は、実験データの記録が 方法は、前代未聞のス。ヒードに加速することだからね。いまの研究一三五の番号に達するまで、くり返された。クックの仮説は検討さ とこにも誤謬は見つからなかったし、また彼ら が完成したあかっきには、それができる。宇宙船とわれわれ自身をれ再検討されたが、・ 226

2. SFマガジン 1970年7月号

彼は部屋のうすぐらい隅をライトで照らして、求めるものを探し てもらったら ? 」 「なんなりときみの仰せにしたがうよ、レッドと、テイラーは答出した。 あれが燃料装填ロのカ・ハ えた。「どっちにしても、見つかるのは残骸だけだろうがねー 「ほら、あの四角な板金が見えるかい ? 「まず、あんたたちのライトをとってこよう」と、・フレイクはいっ ーさ。やつばり、ちゃんと嵌まってなかったんだーー・連中、止め金 こ 0 を掛けるのを忘れやがったにちがいない , 「おれたちはそんな仕事に金をはらったのかねえ ? クックは自分 彼はエレベーター ・シャフトによじ登り、倉庫への道をたどっ のライトで問題のカバーを照らしながら、にがにがしそうにつぶや たかなり苦労してようやくドアが開いたが、 - ポゲット・ライター でのそきこんだ室内は、めちゃくちゃにひっくりかえっていた。さいた まざまな補給品や機械やこわれた容器の下敷になって、非常用ライ ・フレイクは推進ュニットの上へ、ゆっくりとライトを動かしてい トの入ったロッカーが見つかり、そこから五個のライトをとり出しった。もともと備えつけられていた旧式な ( ーディング原子力推進 機をーー経済的理由からーー・そのまま生かしたために、超空間推進 プレイクは船体の裂け目までもどって、三個のライトをテイラー機への改造は、空間転移ュニットの追加と、宇宙船を正常空間から たちにほうり投げた。受けとったほうは船体の前半分への探険を開超空間へ転移させるさいに必要な巨大工ネルギーを供給する、転換 始し、クックは・フレイクの立っている場所へよじ登ってきた。 炉の設置だけにとどまっていた。最新型の推進装置のほうが好まし いのはわかりきっていたが、かぎられた資金では、原子力ロケット 「むこうはどんなぐあいだった ? 」と、クックがきいた。 「だいぶ散らかってるようだー・フレイクは答え、先に立って推進室推進を残して、その燃料室を、転換炉で生産される燃料が受けいれ への道を歩き出した。 られるように修正する手しかなかったのだ。 ? ーと、クックがたずねた。「爆発による損害 いまや床の一部に変った推進室のドアをこじあけると、温かい風「どんなぐあいだい がむっと二人の顔をおそった。転換炉の爆発で生じた穴からさしこらしいものは、おれには見あたらないけれど。あんたはどう思う イ 1 ト下の新 ? 」 む日ざしで、推進室の中はかなり明るく、二人は十フ しい床へ下りる手間をはぶいて、そこから損害を検分した。 「きみのいうとおりらしいな , ーー・爆発の方向もはずれたし、墜落が 「穴のそばにある、あのぐしゃぐしゃの塊ーーあれが転換炉のなれこたえないほど構造も頑丈にできていた。こいつは意外な幸運だそ あの燃料室をむかしの形に戻せば、ロケット推進はとりもどせ の果てだ」と、・フレイクはいった。「爆発はたしかに指向的だった し、転換炉も最小出力状態だった , ーーもし、四分の一の出力でもあるー それから、つけたすように、 ったひには、船ぜんたいが大火柱といっしょにけしとんでいただろ 「もし、ウランが見つかったとしてだが うな」 こ 0 田 8

3. SFマガジン 1970年7月号

ハヤカワ・ノヴェルズ 絶讃発売中 / ・フレイクは赤毛の頭をうなずかせた。「それ以下かもしれない。 ねる。これで推進室の舷窓がひらき、送風機が回りだして、過熱し あの太陽は型じゃなかったからね。テイラーのいうとおり、一発た室内へ船外の涼しい空気を送りこむはずだ。 目で大当りとは、信じられぬほどの幸運だ」 「推進室がさっきの減速でおそろしく熱くなっている , みんなにつ 「じゃあ、はやく外へ出て、その景品にお目にかかろうじゃない づいてエレベータ 1 へ歩きながら、ブレイクはいった。「あれで資 か、と、クックがそわそわしたようすでいった。「あの砂の上を駈金がもうすこし残ってたら、ちゃんとしたクーラーがとりつけられ けまわって、何百万回も吸いふるされてない空気を、はやく吸いこたんだが」 んでみたいもんだ」 「これだけのものを買う金がかき集められただけでも、運がよかっ テイラーはちらと。フレイクの顔をうかがい、ブレイクはうなずきたと思わなきや」居住区へ降りるエレベーターの中で、ウイルフレ かえした。 トが答えた。 「そして悪いわけはないだろうな」 「もう、金の心配はおさらばさ , と、クックが断言した。「地球型 ・フレイクはそういってから、長い習慣で制御盤の計器示度をたし惑星の持ちぬしとくりゃあ、ただの金持どころじゃない 一望千 かめ、そして推進室の温度を示す赤い線を眺めた。それが急速に上里の土地の王様だよ」 昇しているのを見て、〈推進室・船外換気〉と記されたつまみをひ 五人はめいめいの武器をたずさえるあいだしか、居住区にはとど アポロ号の事故を予告ー 宇宙からの マーティン・ケイディン 矢野徹訳 脱出 ( コロムビア映画化 ) アイ を第 " 逆噴射。ケ ' トが点火しない。 アンマン 1 号からの悲痛な叫び声に、ヒュー ストンの指令室は色めきたった。任務を果た して帰還の途についたアイアンマン 1 号は、 このときから宇宙を漂う鋼鉄の密室と化した のだ ! 昼夜を徹して、懸命の救出作業が始 ったが : : : 宇宙空間と地上を結んで展開され る勇気と感動のヒューマン・ドラマを、豊富 大科学知識を駆使して描く話題の大作 !

4. SFマガジン 1970年7月号

しか必要じゃないんだから」 粒の結晶は、ペグマタイト炭層から生じたものにちがいない」 「もし (f)Orn を送れる望みがないとすれば、それをするしかほかに 「というとーー ? 」クックがきいた。 方法はないわけだ、そうでしよう ? とウイルフレッド。 「ごく粒子の粗い岩層のことだよ。ペグマタイトの中の鉱石は、異 「を送れる見こみはゼロだとい 0 てまちがいないね」テイラ 常に大きな結晶を作る。チャロン星のペグマタイト層では、重さ千 1 がいった。 ポンドもある完全な水晶を見つけたこともある。カミングスとい オールド・ア これにはだれも反対をとなえなか 0 たので、プレイクはい「た。 う、旧地球生れの、もう白毛の爺さんの話だと、むかしは旧地 「もしウランが見つかれば、それに合うように燃料室を改造するこ球でも、それよりも「と大きな水晶が見つか 0 たことがあ「たそう とは、さほどむずかしくない。たぶんそれよりも、船体・ - ーーか、まだ」 たは船尾側の半分だけーーをもういちど気密にすることのほうが、 「もう一つ」と、・フレイクはつけたした。「ペグマタイト層の中 ず 0 と手間を食うだろう。とにかく、原子力推進装置をこしらえなで、瀝青ウラン鉱が見つかることがあるんだ。だから、われわれの ければ、話にならない。超空間〈ジャンプするためには、船体を上見つけるウラン鉱ーーもし見つかるものとしてだが が、これら 空〈打ち上げることが必要だし、第一段階の可能性に見きわめがつのダイヤモンド漂石の原産地とおなじ岩層にある可能性もある、 いてからでなければ、第二段階をどうするかを考えてもむだだ」 「話は変るがーー」と、テイラーが考え深げにいった。「われわれ 数秒間の沈黙がおり、テイラ 1 がいった。 にはカドミウムも必要だよ。カドミウムとウラン もし、この二 「全員賛成と見てよさそうだね。さて、問題はだ はたしてウラ つの原鉱が見つかって、それを精錬できれば、推進装置の改造にか ンが見つかるだろうか ? 」・フレイクの顔を眺めて、「この点はどうかれる」 だねーーきみの見た可能性は ? 」 「それにはどのぐらいの日にちがかかるんですーーー大ざっぱなとこ 「なんともいえない、と、・フレイクは答えた。「まだこの土地を調ろで ? 」と、レンスンがきいた。 べてみたわけじゃないからね。あの峡谷から流し出された岩石には テイラ 1 はにつこりして、 金属原鉱は見あたらなか 0 たが、ウランがそう簡単に発見できるは「それは空がどれぐらい高いのかというようなものだな。しかし、 ずはな、 楽観的推測をすれば、一年ないし二年ぐらいだろう 「じゃあ、なにが見つかったんだい ? 」と、クックがきいた。 ウイルフレッドがこっくりとうなすいた。「・ほくもそのぐらい・こ 「あの〈んの岩層は地球型の岩層とよく似ていて、シリカの含有量と思いますねーー一年以内でもないし、一一年以上でもない。運のい もだいたい普通だーーもしダイヤモンドの存在を考えなければだが いことに、旋盤ゃいろいろの工具もあるし、探鉱用のトラックもあ ね。ダイヤモンドはシリカの多少にかかわらず、あらゆる岩層の中るし、原鉱を見つけたあとでの採鉱用具もぜんぶそろ 0 ている に、おもに微小結晶として含まれている。われわれがまえに見た大「最初にやるべきことは、住まいの整備だろうね」テイラーはズボ オールド・アース 20 ー

5. SFマガジン 1970年7月号

そういうと、そこにしやがみこんで、レンスンの見つけたルビー色落がはじまった。地面への激突の光景は木立でさえぎられたが、そ の石のとなりにある、鮮やかな青い結品を拾いあげた。「しかし、 のおそろしい大音響は耳に伝わってきた。地軸をゆるがすような衝 色はまちまちだがーーーあれもぜんぶダイヤモンドかね ? 」 撃をとおして、金属のもげるくぐもった悲鳴が、かん高くひびいて 「ある程度の大きさのものはぜんぶそうだ」と、・フレイクは教えきた。 た。「もっと柔らかい二酸化硅素は、川床のダイヤモンドの磨減作・フレイクはいち早く宇宙船のほうへ走り出した。だれかが、「い 用で片 0 ばしから粉にされてしまう。そこそこの大きさでよく光るったいどうして , ーー」と叫んだのを、お・ほろげにお・ほえている。っ やつなら、ダイヤモンドと見てまちがいない」 ぎの瞬間には視界をさえぎっていた木立を駈け抜けて、思わす立ち 「ふーん ! 」と、クックが感嘆の唸りを上げ、しきりにかぶりを振どまった。そこで目にはいった光景に、茫然自失したのだ。 った。「そいつはうれしいニ = ースだが、まだ信じられない気持だ 宇宙船は、尾びれを下に休息した姿勢での重力の引きに耐えるよ ね。いくら運がいい「た「てーー・有り金のこらずはたいてでかけたう作られている。加速にしろ、減速にしろ、推進装置の推力も、船 一回きりの旅で、しかも確率はぜんぶ裏目に出ているのに、しよっ尾からの重力の引きと同じように働く。したが「て、横断面の強度 ばなから連続二回の大当りにでくわす。地球型の惑星と、おまけに はあまり必要とされず、縦軸に対して大きな強度を持たせるよう建 無尽蔵のダイヤモンド。こんな・ ( カづきは、とても信じられない , 造されている。水平姿勢での墜落に耐えるようには、もともと建造 「たしかにそうだ」と、・フレイクも同意した。「こんなことはありされていない。 うるはずがーーー」 〈星の偵察者〉号は、真二つに折れていた。 彼の声は、宇宙船からのすさまじい轟音でかき消された。彼も テイラーも、動転した蒼白な顔で、・フレイクの横に立ちどまっ ほかの四人も、 っせいにそっちをふりかえった。だれの顔にも茫た。 然とした表情が現われていた。その瞬間、彼らの胸をかすめたの 「いっこ、 : いったいどうして ? と、だれかがきいた。「なに は、おなじ感情だった。 が起ったんだろう ? ・ : どうしてあんなことが ? 」 五人ともみんなここにいるーーよかった、船内にだれも残ってい 「転換炉が爆発したんだ」くちびるが奇妙にこわばり、麻痺してい なくて ! るのを感じながら、・フレイクは答えた。「おれのせいだよーーもっ 宇宙船が目にはいった。彼らをとりまいた木々の上まで、高く飛と頭を使っていたら、手おくれにならないうちに気がついたはずな び上ったのだ。その船尾の裂けた穴から青白い炎が噴き出していたんだ」 が、やがてその炎が消え、船体はつかのま静止した。巨大な金属の 「どういう意味だい ? 」と、クックが詰問した。 怪物が、かすみのかかった空の背景に、宙空で釘づけされたかっこ 「推進室へ冷たい空気を送るために、送風機をつけつばなしにして うだった。そこで轟音が消え、船尾が持ち上って、横倒しのまま墜おいた。その空気は、着陸で舞い上った砂・ほこりだらけで、その砂 6

6. SFマガジン 1970年7月号

は、われわれの手に負えない。その製作には、複雑な精密機械だけれわれの時間は、非常に限られている。なにをやるにしろ、ぐずぐ でなく、特殊台金が要求される。こわれた電子管のなかのいろいろずしてはおれない。徒歩で探鉱をつづけるには、たいへんな時間が な合金を再使用しようとしても、大気にさらされたために、弱、 し合必要だ。ひょっとすると、われわれの探し求めている原鉱は、ここ 金の中には粉末になったのもある状態だ。 から五十マイル以内にあるかもしれない。だが、てくてく歩いてい 第二の、もっとも簡単でもっとも不可能な方法は、ほかの宇宙船て、それを期日までに発見できるだろうか ? たとえ発見できたと が通りかかってわれわれを救出してくれるのを唯一の望みに、このしても、またそれが充分純度の高いものであったとしても、どうや まま手をつかねて待っことだろう。だが、こんな方法は、ここにい ってそれを期日までに母船へ運搬できる ? ごそんじのように、も るだれも受けいれまい。とすると、この世界が焼け焦げるまでに脱うトラックは使えない。使えるのは、われわれの足と背中だけだ。 出する方法はただ一つーー、・われわれの宇宙船の推進装置を作ることもし時間さえあったらーーーそして、これがトラックの使える世界だ だ。それはこういう質問に煮つまると思うー・・・・・われわれはウランとったらーーーもちろん、原鉱が見つかるまで探鉱をつづけるほうが得 カドミウムの探鉱をつづけるか、それとも、その時間と労力を、原策だろう。トラックなら、何日もかかる旅が何時間かですむ。必要 子力推進以外のなんらかの方法で宇宙船を飛び立たせることに、ふな食料や器具を採掘現場まで運ぶことも、掘った原鉱を持ち帰るこ りむけるか ~ 」 そして、 ともできる。だが、われわれにはそのトラックがない 「・ほくはこの六日間、頭の中を受容的空白状態に切りかえたが、ナ こ時間もない。個人的意見だが、これ以上探鉱をつづけるのは、短い った一つのアイデアもうかばなかったですね」と、レンスンがし 貴重な時間の浪費だと思うね」 た。「いまさら選択の余地があるとは思えない。原子力推進以外「きみの意見に反対するものは、だれもないようだよ , 一同がひと に、どんな有望な計画が考えられるというんです 2 しきり黙りこんだのを見て、テイラーがいった。「きわめて暗い現 っこ 0 「新しい計画を議論するまえに」と、ウイルフレッド : 、 、力し / 状分析たが、真実は否定できないー 「ウランとカドミウムが推進装置の製作に間に合うまでに見つかる「で、あんたにはなにか計画があるのかね ? 」と、ウイルフレッド 確率について、プレイクの意見を聞いてみましようよ」 がきいた。 「三つのかなり大きな山脈を探したのに、われわれはウランの存在「ある。この六日間、きみたちはみんな、慣例的な思考方法で案を の形跡を発見できなかったーとプレイクは答えた。「鉄と少量の銅考えていた。そうだろう ? , と・フレイク。 だけで、放射性物質は全然見つからない。はたしてそれが、この大「われわれをここまで運んだ宇宙船も、その慣例的な思考方法から 力やりかえした。 陸ぜんたいについて言えるかどうかわからないが、現在われわれの生まれたんだぜーと、ウイルフレッド : いる地域は、ほとんど軽元素だけでできているようだ。 「たしかこ、 冫だが、そういう型どおりの思考にたよってたんじゃ、 これ以上探鉱をつづけることに、おれとしては賛成できない。わ永久にここからの発進はできないよ。おれは型ゃぶりのアイデア 幻 8

7. SFマガジン 1970年7月号

と、一見簡単な質問を一つ思いついた。もし、きみたちがその質問て、その力は、この世界のダイヤモンド塵が東になってかかって に答えられれば、どうやってこの宇宙船を推進させるかの見通しがも、どうにもできない。な・せなら、それは運動部分を持っていない 立つわけだー からだーーっまり、場タイプの力だよー ・フレイクはポケットからいくつかの品物をとり出した。短い鋼鉄彼は糸を持ち上げて、縫針をぶらさげた。 の棒。四角なアルミの板。板ガラスのかけら。長く糸のついた大き「これはふつうの棒磁石だ」と、その一端へ縫針を吸いつけさせて な縫針。彼はそれらを自分の前のテー・フルの上にならべて、話をつ見せて、「異種の極は引き合い、同種の極は斥け合うことは、だれ づけた。 でも知っている。この縫針を磁石の端からこうやってひき離して 「この型破りな世界では、型どおりの思考は通用しない気がするんも、手を放した瞬間に、また縫針はパチンと磁石の端へ吸いつく。 だ。これまでわれわれは、新地球と似た世界、新地球のように塵埃縫針の下端が、磁石のこの一端とは逆の極性に磁化されたからだ。 の少ない大気と豊富な鉱物資源を持った惑星に不時着しているつももし、磁石のほうの極をあべこべにすると、糸でぶらさげた縫針は りで、問題と取りくんできた。これまでロケット推進だけに考えをそっちへ引きつけられずに、そこから離れようとして、逆の方向へ し・ほってきたというのも、それが機械と放射性物質の世界では、も振れる。ここにあるのはアルミの板だーー・磁気の反撥はこれを素通 っとも簡単に作り出せるタイ。フの推進法だったからだ。しかし、こりしていく。板ガラスでもおなじことだ」 の世界には、機械も放射性物質もない。はっきりと非地球型な環境彼は磁石と縫針をテープルの上にもどした。 と戦うには、地球型の機械や装備では役に立たないのだ。新地球で 「きみたち四人は、科学技術の教育と知識を持っている。こっち よ、 かなり経験はあるといっても、一介の鉱山技師にすぎない。だ なら、機械も使えるーー・人類のあらゆる工学的進歩は、車輪とい う、あの小さい簡単な工夫から出発した。車輪がなければ機械は決が、この惑星からわれわれが飛び立てないのは、ある場タイ。フのカ 重力ーー・・・に妨げられているからだということは、常識でもわか して生まれなかったろうし、機械がなければ原子力推進は決して生 まれなかったろう。だが、この世界で車輪が使えないのは、きみたる。もう一つ、あらゆる場タイ。フのカーー・磁気、誘導、重力ーー・、・の ちも見たとおりだ。ダイヤモンド塵の世界では、車輪を含めて、運うらに、おなじ基本的原理が存在するにちがいないことも、常識で 動部分を持っ機械はどれも使えない。われわれの科学は車輪の上にわかる。もし、磁化された二つの物体を、おたがいに引きあうよう にも、しりぞけあうようにもすることができるなら、重力でおたが 築かれている。もし、ここでそれに代る科学を発展させなければ、 こしりそけあうように あと七、八カ月でみんなが煙になって蒸発するのは目に見えてい いに引きあっている二つの物体を、おたがい冫 る」 することも、できるんじゃないだろうか ? いまもいったが、あらゆる場タイ。フの力には、おなじ基本原理が ・フレイクは鋼鉄の棒をとり上げた。 1 ところが、いままでにだれも言及しなかったカが一つある。そし存在すると思う。もしその原理さえっかめれば、われわれは反重力 幻 9

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「うん、たしかにチ = ックは完了しているな。ではこの。 ( ン焼きが「でしようね」と、。ヒートは転換炉をちらと見やって、相いづちを まから退散するか。当宇宙港検査局に関するかぎり、このオンポロ打った。「ロケット推進で正常空間を光速以下で飛んでたんじゃ、 船は発進準備完了というわけだ。われわれの承認が下りしだい、連らちがあきませんや , ーー一生かかったって、行けっこない。 〈千の 中はすぐにも出発したいだろう」 太陽〉までの距離は約三万光年、ちがいましたか ? 」 「この船はどこへ行くんです ? 」。ヒートはタバコに火をつけながら「そんなところだ。正常空間航法だと往復で六万年。超空間航法な きいた。 ら一年あまりですむ」 ザ・サウザン・サンズ 「どこか〈千の太陽〉星団のむこう側だって話だ。〈探険株式会 「しかし、その一年がねえ ! おれもいまよりもっと若くて・ハ力だ 社〉とかいう名まえの、ちつにけな会社の持ち船だよ」 った時分に、一度だけ超空間を飛んだことがありますよ。たった四 ジャンプ 「へえ ? 」ビートはすこし興味をそそられた顔つきで、「〈千の太十日の跳躍だったが、あんなに長かった四十日はあとにも先にもあ 陽〉星団のむこう側といえば、未調査の星系がいくつかあるってい りませんね。いくら超空間でも、どこかへ行こうとするからには加 うじゃないですか。連中はなにを探しにいくのかなーー・そいつは聞速しなくちゃならない。ひっきりなしのその加速と船外のまっ暗や きませんか ? 」 みとで、体重が一トンにもふえて、黒い墓の中へじっと生埋めにさ 「さあ、知らんねーと、主任は肩をすくめて、「ほんの一「三分話れているような気がしてくるんです」 しただけなんだ。メイハーはぜんぶで五人ーーーニュー 主任検査官はにやりと笑った。 ・シカゴの小 さな工科大学の学部長だったとかいう年輩の男が、その職をなげう「ひょっとすると、きみは閉所恐怖症の気があるんじゃないかな って、最優秀の大学院生三人を集め、これから宇宙見物と宝探しにそのどこかへ行くで思いだしたが はやくジムの工具箱を持っ でかけるんだそうな」 て、このトルコ風呂から逃げ出そうじゃないか」 「主任はいま五人といわれましたぜ , と、ビート がつつこんだ。 ビ 1 トは工具箱をとりあげると、燃料装填ポックスの黒く平たい 「そうさ。連中がこの中古船を買ったところーーー・こいつはむかし、 側面に、黒く平たい止め金がはずれたままぶらさがっているのには 星間通運社の貨物船だったらしいがねーー・そこで、たまたまチャロ気づかずに、主任のあとを追ってエレベーターへとむかった。もう ンから帰ったばかりの鉱山技師に出会ったというわけだ。その男、 一度部屋のなかを見まわそうなどという気は、まったく起きなかっ むこうのイリジウム鉱山で一山当てたもんだから、五人と共同出資た。ジム・・フラノンはきちょうめんな完全主義者であり、ジムの検 する気になった。この船はロケット推進なんで、超空間推進装置と査伝票も、彼がこのすべてを点検して異常なしと認めたことを示し あの転換炉をすえつけるため、やっと五人で金を工面した。とにかていたからだった。 、それで全員すっからかんになったらしいねーー・超空間推進装置 や転換炉となると、ずいぶん値が張るからな」 すでに数カ月にわたって、〈星の偵察者〉号は黒一色の超空間を 0

9. SFマガジン 1970年7月号

地球人の心は順応性に富んでおり、どんな環境の存 在に対してもーー・たとえそれが確実な死を意味するよ うな不愉快な環境であってもーーそれを承認するよう 自らを条件づけることができる。 地球人の心は強情であり、一方で不愉快な環境の存 在を承認しながらも、その環境を不可変なものとして 受けいれることを、断固として拒絶する。 地球人の心は、不愉快な環境を改変することにかけ ては、きわめて独創的である。 ( アンタレスの哲学者プⅡラル・ゲサンの 著書『わが銀河系文明の種々相』より ) に金ネ員したでめすきかう天のがつも最ク集 学ちナらり「早ち「わたの 0 い先れつコ第者 のゾかと , りたもされでなしにさ 」表すトル でたリ戦ひりといかに , ま味く淋 式発ま一ト 馬つア大によってたかたこ意 え程にりバク 。育に次手る手ししいちり れでよ 2 相すが出を , 満盛いれい方誌たロペ いグあとス ま野し第を介う傑損はにに , らは 生原つ。猫紹ほがてどカ品や見と・たンにス「 年のいたでくた篇れな活作一り程冷イ作ミイ グとい漠しつ短薄篇いのダま過。「デ二イジ 作 四ン父歩砂だいのが中しこンあのん , ン第ェロ 養りのくとあ影たら。ワに化せはウの・ソ ンオ , ぐ州だ者どのしす・進ま篇タンインたた イイてめダく作ほ品出でプ t-n ぬり中スイリアし ち ウワしをアとのれ作訳の作オのれあのアウズのま ドなと帯ヴど」そのに」佳・近らもこにドグ編れ満 ゴう師一ネな式。かこ代のス最けで , 年ゴン共さに キト録 ・よ鉱ダ 程うほこ時味ン , 避いお , カ , き後セが , なな , で , ス収 ムう採アも ~ 方よ ト通のヴ後をいしにがよなな性はしての近工に活 ・スカウト 〈星の偵察者〉号の暑くるしい推進室で、推進機技術士のジム・プぬぐった。あと、この推進室で検査のすんでいないのはパーン転換 ラノンはさっきから吐き気を感じていた。もともと慢性の胃弱なの炉だけだ。道具箱と検査器具をかかえて、彼はそっちへ歩き出し が、その朝、細君から精神、肉体、および経済面での無能さをこき た。いつもはおちついた正確な動きをするこの物静かな小男も、失 おろされて悪化したところへ、宇宙港の軽食堂でとったひどい昼食神の発作の前触れらしい最初のめまいを感じて、俄然あわてはじめ に追い打ちをかけられて、まごうかたない重症の消化不良をきたし たのだ。いろいろな因子の中でも、いちばんこたえたのはむし暑さ この転換炉は、推進ロケットと発電装置の動力との両方に使う核 だった。推進室の舷窓は開けはなされ、その一つにとりつけた送風分裂性物質を生産するもので、かなり小型の独立したユニットにな 機が室内へどんどん風を送りこんではいるのだが、なにしろその空っており、検査を必要とするのは燃料装填ロだけである。ブラノン 気たるや、焼けつくような第一宇宙港の地表からわずか三メートル は工具箱から特殊レンチを出して、燃料装填口を覆った金属製カバ ーの止め金をはずした。きちょうめんな完全主義者であるこの男 の高さで採取されたものであり、ただでさえ熱帯的な新地球のむせ かえるような真夏の熱意と湿気を、もろに持ちこんでくるのだった。 は、職人の腕の良否は道具を大切にする度合いでわかるという信念 彼は手に持った検査伝票に、発電機の検査完了、異常なしのチェを持っていたので、ざらざらした床へじかにレンチを置いたりはせ ックをつけ、用紙と鉛筆をポケットへしまってから、ひたいの汗をずに、工具箱に設けられた専用のく・ほみへちゃんとしまいこんた。 ロ 8

10. SFマガジン 1970年7月号

ばこりは大部分ダイヤモンドの粉末だったんだ」 もここ当分はむりだろう。だから、その当分がどのぐらいの期間な 「そうか ! 」クックはじっと・フレイクを見つめながらいった。「そのか、母船の損害がどの程度のものかを、まず調べようじゃないか」 宇宙船のほうへ歩きもどりながら、クックがいった れでわかった。ダイヤモンドの粉末ーーー炭素ーー触媒 ! 」 「だが、・ とうして ? 」と、テイラーがきいた。「どうして、ダイヤ 「ここから見たかぎりじゃ、情勢は絶望的だな。まるで熟れすぎた モンドの粉末が転換炉にはいったりする ? 」 スイカが上から落っこちたみたいだ。真二つになって、二、三本の 「わからない」・フレイクはかぶりを振った。「ひょっとして、検査桁でつながっているだけ。おまけに、むかしは丸かったのが、ひし 員が燃料装填ロのカ・ハーをつけ忘れたのかもしれない もしかすやげちゃった感じだ・せ」 ると、飛行中に止め金がはずれたのかもしれない。とにかく、それ「おまけに、あっちこっちほころびてやがる」とウイルフレッド・、 が起ったのは事実だーー原因はなんにしろ、燃料装填口から臨界率声を合わせた。 を越える量の触媒がはいって、転換炉が爆発したんだ。送風機を動彼らは船尾にさしかかった。そのぎざぎざに裂けた穴の縁は、な かすまえに、まずあそこへいって燃料装填口をチェックすべきだっ かば融けた金属がまだ赤く輝いていた。宇宙船が最初に立っていた た」 場所にできた大きな窪みを、・フレイクは指さしていった。 「なぜ ? 」と、クックがたずねた。「いままでにこんな事故の起っ「爆発は指向的だったらしい。もしそうでなかったら、船の下半分 た例があるかい ? 」 が完全にやられていたろう . 「いや」 「船尾の穴も思ったより大きくないな。つぎが当てられそうだ」ク 「新地球の砂・ほこりでも、こんな事故は起ったろうか ? ックは、持ちまえの楽天主義をとりもどしたらしかった。だが、そ も、これまでにあんたがいったよその惑星の砂・ほこりで ? 」 こで悲しげな口調になって、つけくわえた。「といっても、推進す 「いや」 る船体は半分しかないし、動力用の転換炉もない かりに、推進 「じゃあ、なぜチ = ックする必要がある ? あんたには燃料装填ロ装置がまだ残っているとしてもね」 がひらいているかもしれないと疑う理由もなかったし、この砂がダ 五人は、二つにちぎれた船体の裂け目から、ねじ曲った鋼鉄のあ イヤモンドだと発見したのは、爆発の一分まえのことだ。たった一 いだをくぐりぬけて、船内にはいった。いまや水平の通路になった 分間じゃ、どのみち手の打ちょうはない」 エレ・ヘ 1 ター ・シャフトへは、ぎざぎざに裂けた板金や梁をよじ登 ・「そういえばそうだ」と、・フレイクはうなずいた。「ただ、もっとれば、はいることができる。プレイクはみんながエレベーター 慎重であるべきだったという悔いは残るがね。しかし、過ぎたことヤフトへよじ登るまえに、年長のテイラーに相談をもちかけた。 をどうこういってもはじまらん。こうしてダイヤモンドの山にかこ 「いちど推進室と工作室をのぞいてきたい。だから、クックとおれ 8 まれたわれわれだが、帰る方法はないーー、残念ながら、すくなくととがそうしてるあいだに、あんたら三人は船の前半分の損害を調べ それと