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検索対象: SFマガジン 1970年8月号
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1. SFマガジン 1970年8月号

マ夏 〈ひとり静かに〉味わう人 〈女房とペアのグラスで〉という人 〈ヒケが心をやわらげる〉という人 飲み方はいろいろ 飲むのは同じプラックニッカ たたいまプーム中′ . 〈ナイト・キャップ〉としゃれる人 〈テレビを見ながら日曜日は一本〉という人 ニッカウ井スキー株式会社 - - ッカ 雑誌コード 1975

2. SFマガジン 1970年8月号

いう。イディオムやスラングには多少の違いがあるけれども、とに イングリッシュ 美術館 かくまぎれもない英語であり、彼女自身も英語と呼んでいる。そ れどころか自分の母星を地球と呼んでいるのだ ! まあ、このへん 惑星で、男となったらどんなやつだって命が危ないのだ。 で底がわれるのだが、′ 彼女らの母星は反世界に属しており、ちょう 女がハ・ハをきかせているからといって、ごっついアマゾンみたい ど地球と対になっているらしいのである。こちらの物質と向うの反 なやつが ( ・ ( をきかせているというわけのものではない。きれいな世界の物質とが接触するとたちまち大爆発が起きて宇宙全体に被害 娘やかわいい女の子もたくさんいるのはもちろんだ。同時にまた、 が及ぶことにもなりかねない。そこで、交易の必要上、向うの世界 ひどいプスや野暮なのがいるのも当然である。 の宇宙船がこちらの世界にやってくるときは特殊な装置で爆発をく ひとっ気のついたことがある。それは女どもの身だしなみが目立いとめているのだというわけである。エネルギー・ポックスどころ って悪いことだ、若い娘のくせに、薄汚れたシャツ、もじゃもじゃの沙汰ではないと不安の面持の三人だが、とにかくなるようにしか の髪、垢じみた肌のやつがごろごろしている。ここではもう、他のならないと腹を据えていろいろと向うの世界のことを聞いてみる 惑星と違って美人ぶったりする必要はないわけだ : : : 主人公はこのと、対になっているとは言いながら、こちらの地球とはかなり違っ ているらしい。第一、向うの世界は女ばかりたというのである。 惑星で手芸の店をひらいて情勢をうかがい、五人の女どもに近づい て、発狂した一人を退治するのだが、後半はあまり冴えない。 ″私たち、男っていうものは野蛮で残酷なものだって教えられてき たわ : : : だけど、あんたたちって : というわけで、宇宙航行の 一見色男風の男が女性二人に両手をとらえられてェアロックへひつれづれにいろいろと話し合ううちに彼女は三人組の一人にぞっこ きずり込まれるの図はマルコム・ミード の「銀河の支配者」 TEIE ん参ってしまう。彼女の名前はスー 。これまた英語そのままの名前 GALAXY MASTER である。これは三人のコソ泥の話。ムフンナである。宇宙船はやがてその〈地球〉へと接近し、連絡艇が横付け 惑星系の原住民たちはエネルギ卩・ポックスという大変に重宝なもになる。やがて乗り込んできたグラマーの係官 ( ! ) は、有無をい のをもっていて、あらゆる日常生活の動力源や熱源に使っているわせず、怪力に物をいわせて三人の乗っ取り犯人を連絡艇へ押しこ が、これは矢座の惑星系から輸入されているらしい。よし、そんなんでしまう : ・ ここのところが表紙になるわけである。 ら一丁、そいつを大量に手に入れてひと山あてようじゃないかと三 このあとというのは意外にあっけなくて、女護ヶ島を牛耳ってい 人の意見がまとまり、宇宙港に停泊していたヴァルク人の小型貨物る唯一人の男性である族長とやりあったり、主人公の男に恋をした 宇宙船ののっとりに成功する。なにしろ搭乗員は一人で、しかもそかどで死刑にされかけた娘を救ったりで、念願のエネルギー・ポッ れが女ときているのだ。彼女の母星の O は地球より大きいので、か クスを手に入れてめでたしめでたしーーーとなるわけ。 なりの怪力を発揮するのだが多勢に無勢、有無をいわせず母星へ向 けて出発させる。ところがである、なんと、このヴァルク人という怪物とチェスをやっている半裸の女性の表紙絵はジェラルド・ヴ やつが突然英語をベラ。ヘラしゃべり出すではないか ! あっ気にと アンスの「破滅の方程式」 Equation 。 ( Doom だが、これはまた機 られた三人がよく聞いてみると、彼女はこれが私たちの言葉だと会をあらためよう。 ( ページよりつづく )

3. SFマガジン 1970年8月号

それも、徒労だった。 静さを失って、ののしった。「畜生 ! あんな奴らに馬鹿にされた オデ、セウスなる亜文明人は、まず三人の部下を派遣して様子を 8 ままでいられるか ! 今に見ろ。チャンスを狙って、あいつらをコ さぐらせ、かれらが饗応にあずかって白痴みたいになったのをたし ケにしてやるそ ! 」 かめると、泣き叫ぶ被害者をカずくで船にひきずり込んでしばりあ 「それにしてもさア、ちょっとたいしたもんじゃない ? 」 いつになくキアウェインがそんなことをいったので、。ヒッツはまげ、即刻、出帆したのである。 「何という用心深い奴だろう」 すますいきりたった。 いまいましげに、。ヒッツが呟いた。 嵐が終ると、ふつうの北風になった。亜文明人たちは、夜明けと ハークには、どうにも信じられなかった。亜文明人というのは本 ともに帆柱を立て、白い帆を張った。 岬の南端をまわるころから、風と海流が、かなりのスビードで、質的には野蛮人なので、ときたま知性らしいものをきらめかせる程 : こうもあざやかに裏をかかれ 船団を西南へ西南へと押しやりはじめた。亜文明人たちは、はじめ度の連中だと思い込んでいたのに : ・ のうち何とかして、その方向を転じようとしたが、どうしようもなるとは、考えもしなかったのだ。 く、やがて逆らうのをやめた。 だが、ムラの薄笑いを見れば、やめるわけには行かない。 あらゆる条件を考慮して、次にオデュセウスがたどりつくであろ 小刻みに跳時を繰返しながら、五人は、かれらを追いつづけた。 流九日めに ( といっても追跡者たちにとっては、実質二時間そうと予測される島に、。ヒッツのいう決定的環境を作りだす作業がは じまった。 こそこにしかならないが ) 船団はひとつの陸地に到達した。 五人は船の連中が上陸準備にかかっているあいだに、その土地を奉仕者の要請に応じてコン。ヒ、ーターが、時間を超えて送り込ん で来たのは、身のたけ二十メートルもありそうな一つの眼の巨人の ざっと調べた。 一群で、当座の食用の羊群もそえられていた。 「チャンスだ ! 」 あらかじめ掘っておいた洞穴へ、その合成人間たちが入って行く 土着の人々が、おかしな植物を常食にしているのを知ると、ビッ ークにとっても、あまり気持のいいものではなか ツは興奮した。「奴らはいやでもこれを食べるほかないだろう。このを見るのは、 ( はじめて食べるこれが、どんな味をしった。テナインなどはビッツのいないときに、 こでは主食なんだからな ! ていても、奴らは不思議には思わないはずだ。つまりーーー忘却剤を「有職者なんて立場にしがみついていると、ああなっちゃうのね。 どうやら彼には、目的に合わせて過程をでっちあけることしかでき くらわせる絶好の機会だ。そうじゃないかね ? 」 ないみたいよ」 五人は、見馴れぬ船団を怒らせまいと、あわてて歓待の用意をは と、ささやいたくらいだ。 じめた原住民の中へ姿を消してまじり込み、その植物に片つばしか 準備万端ととのってから二日後の夜、予測どおり船団は島につい ら忘却剤を注入してまわった。

4. SFマガジン 1970年8月号

0 「そうよ。食糧がどこかにあるはずだわ。それをまず、探さなければーー」 「どうせ、ひとり分だぜ。三人で食ったら、五日はもたねえにきまってる。それでもま あ、探さねえことにゃあ、しようがねえだろうな。よし、出かけよう」 「どうして、ひと思いに殺さないんでしよう、やつらは ? 」 と、風俗犯がいった。 「自分たちで手をくだすのは、いやなんだとよ。支配階級は、心やさしいおかたばかりだ そうでね 「このほうが、よっ。ほど残酷ですよ。ここはいっこ、、。 とこなんでしよう ? 」 「あたしたち、意識をうしなっているあいだに、どこかの星へ転送されたのかも知れない わ。最後に入れられた小さな部屋が、転送装置だったのよ、きっと」 先に立って歩きながら、女闘士はいった。見わたすかぎり砂丘がうねって、空は鈍い銀 いろに曇っていた。霧は晴れたが、一本の木も、ひとにぎりの草も、目に入らない。 「いまは昼間なんでしようか、夜なんでしようか ? 」 崩れる砂に足をとられて、よろめきながら、風俗犯がいった。先に立った女闘士は、ふ かえりもしないで、 んなこと、わかるもんですか」 「が乾いて、死にそうですよ。もう歩けません。わたしは心臓が弱いんです」 俗犯は砂の上に、両膝をついた。 「居はよせよ。歩けなけりゃあ、歩かなくともすむようにしてやるぜ , 人犯は嘲笑った。女闘士は立ちどまって、ふたりをふりかえった。 「、よしなさいしし 、こと ? ひとりは生きのこれるという以上、ここにはどこかに、水 も糧もあるはずだわ。五人、十人ならとにかく、たった三人よ。ひとり分の水と食糧で も、なんとか頑張れると思わないの ? 「張ったところで、無罪になるのは、ひとりだけだぜ」 「・一れが、そういったの ? ひとりは生きのこれるはすだ。生きのこったものは、無罪に な。あたしはそう聞いたわ 「こから、おめえ 「きのこったものは、無罪釈放を要求できるわけじゃない。三人とも生きのこれば、三 とも要求できるはすよー 7

5. SFマガジン 1970年8月号

が変わっていたんだい ? なにが起こったのかね ? 」 少年は質問の意味がのみこめないらしく、かぶりを振った。 「それはなんなの ? 」ゲイル・ベネディクトは少年の手から箱を取のまえも、やつばり・ほくに話しかけてきたことーー知ってるでし よ。ぼくが五つになったときから、あの人たちはなにかの通信を送 りあげて、それをながめまわした。「どこで拾ったの ? 」 りはじめたの。だけど、むこう側にはほんとの光なんかないよ 、ートはかわいらしい肩をちょっとすくめた。「もらったんだ よ」と、かれは答えた。 いろんなものの形が光のかわりをしているけど、それはちっとも光 「むこう側の人たちは、ばくを行かせたくなかったらしいの。それらない。音だって、ちっとも聞えないよ。でも、あの人たちから送 ほくは、その通信を で、・ほくを引き止めておこうとして、こんなものをくれたんだ」そられてきた通信を : : : ・ほくは受けとったんだ。・ だって、・ほくが良いこと 《感じ》って呼ぶことにしているんだ ういって、かれは小さな箱を指差した。 アレック・メリーは机の上へ乗り出して、ゲイルの手から小箱ををしたときに感じるうれしさや、悪いことしたときに感じる苦しみ 受けとった。それは四角の箱で、四隅が斜角になっており、一面にとちっとも変わらないんだもの。けれども、むこう側で感じる《感 おのおの四個ずつ鋲が打ってあった。メリーはそれをひっくりかえじ》は、・ほくのじゃないんだ。・ほくはなんにも感じてないのに、外 してから、耳もとで左右に振った。「おどろいたな」と、かれはつから《感じ》が伝わってくるの。あの人たちのーー次元閾人の《感 じ》なんだよ。 ぶやいた。「どこもかしこも、きちんと溶接されている」 でも、今日の感じはちがっていた。とっても怖かったの。こんな 部屋のむこう側で坐っていた、痩せぎすな老人が口をひらいた。 メリー」かれの深い声のはじめてだよ。・ほくのことを , ーーううん、・ほくと関わりのあるこ 「ちょっと見せてくれたまえ、 とを、とっても恐れてるらしいんだ」そう言ったあと、かれはドク は、親しみにあふれていた。 ターの顔を見上げた。大きな瞳に、おののきの色が映っていた。 トが箱を取って、かれの手の上に乗せた。 ドクター まく、あの人たちが望んでいたことしてあげられなかっ ハムフォード」と、かれは尋ね「なんだかに 「どうお考えですか、 たような気がするの。だから、・ほくになにかしなきゃいけないと思 老齢の男は、てのひらに小箱をのせて重みを測定してから、細部って、怖がらせたのかも知れないよ。外へ出ようとしたとき、あの の観察にかかった。かれの薄い肩には、すでに往年の張りが消えて人たちは・ほくを止めて、動けなくしたんだよ。でも、あとでちゃん いた。もとは黒か 0 た髪も、いまではほとんど白くなっている。十とこの箱をくれた。あの人たちは、・ほくになにをして欲しか 0 たん 四歳の少年に笑いかけたとき、かれの顔にやさしそうな皺が深く刻だろう」 アレック・メリーかドクタ ハムフォードを振り返った。「こ みこまれた。 「さあ、いってごらん、・ ハート。いったい今日は、どんなところの子は、何年間も次元のあいだをーーー行き来しているんですか ? 」 ドクター 2 日

6. SFマガジン 1970年8月号

「あんたたちはよっぽどの間抜けか、さもなきや腰抜けだね。われいなかった。そして われは三人きりなんだよ、それも島の上に。われわれには島抜けす いまだ ! 虎のすばやさで、そいつはどっとタレイトンに跳びか 6 る方法はない。たとえわたしがこの小屋を出たって、外はこれ、こ かった。相手のつり上がった目、叫ぼうとあんぐりあけたロをちら のとおりの暴風だーーひどい、みじめなひと夜を過ごして、とにかと認めたが、次の瞬間彼を床からぐいと持ちあけるや、アッという く朝になればあんたたちに見つかってしまう。どういうつもりなん 間もあらばこそ、デントンめがけて投げつけていた。 だねーーーひと晩中起きつばなしで、わたしを見張っているなんて ギョとなって思わずあげたデントンのしやがれた唸り声と、びつ くり仰天したタレイトンの・ ( リトンの叫びとが交錯し、ひとつに混 「こいつは驚いた ! 」タレイトン がい 0 た。「いい考えがある。やじり合 0 た苦悶の悲鳴とな「てあたりにこだました。と、一一人はグ つをお「ぼり出して、内から鍵をかけておきや、おれたち二人ともシャとぶつかりあい、折り重なるようにして壁に激突した。 少しは眠れるぜ」 海獣は、二人のところにとんでいき、ポロポロに引き裂いてやり 海獣の胸は希望に高鳴った。が、デントンがかぶりを横に振る たくてうずうずしたが、いまや二人が死んだかどうかをたしかめる と、それも鉛のように沈んでしま 0 た。「だめだ、気ちがい犬にそ猶予すらなか 0 た。一一分の制限時間はと「くの昔にすぎていた。も んなことができるものか。だが、やつのい 0 たことで、いい考えがう遅いーー・すぐさま逃走にかかる以外、なにをするにも遅すぎた。 浮かんだ」その声がふざけた調子をおびる。「タレイトン、この殿海獣はひ 0 たくるようにドアを開け、そして、もろにガッンと = 方に、どういうおとり扱いをさせていただくかお示しするんだな。 1 リスにぶちあたった。・、 / ランスを失って後ろへはねとばされてい ほら、おまえのうしろのクギから。ープをと「て、やつを縛りあげた。周章狼狽のその瞬間、海獣はかしらの背後に仁王立ちするプ。 るんだ。ことがおわるまで、おれはこのオハジキで見張っている。 ギ = の姿をみとめた。ほかのやつらも集まってくる。 そうすりや、おかしなことは起らんだろう。わかったな、よそ者、 さもないとお見舞いするぜ」 夜のとばりに包まれ、荒れ狂うあらしを前に、その一瞬は永遠と 海獣は耳ざわりな声でい 0 た。「タレイトンに突 0 かか 0 て、きも思われた。小屋の内部から洩れるオレンジ色の光は、暴風雨の悪 みから背中を射たれるなんて、そんな・ ( 力な真似はーー・」 夢の猛襲に抗すべく低く身をこごめた男たちのギョッとなった顔 だが、海獣は懸命に考えた。ほんのつかの間でもアメリカ人があ . に、なんとも物凄い、鬼気せまるいろあいを投げかけていた。海獣 の拳銃をさえぎってくれるだろう。たとえさえぎってくれなかった がもがき立ち直るとき、一条の稲妻がジグザグに突っ走り、その痩 として、どうということはない。彼がそばへくるのだ。はじめて、 せて黒ずんだ残忍な顔を彼らの前に照らし出した。 二人のうちの一人が近づいてくるのだ。それで十分。どちらも、こ仰天したのは同じでも、底知れずたくましい、鑄のような筋力が れからどんな猛威に出くわすことになるか、まる 0 きり気づいては回復したのは先だ 0 た。海獣は「ーリスに打ちかか 0 た。目にもと

7. SFマガジン 1970年8月号

「だって、次元閾人が・ほくにくれたものはきっとーーーそうだ、・ほく使って」 がそれをもらったあと、しきりに引き止めようとしていたあの人た「しかし、どうして ? 」と、マッケヴォイが口をはさんだ。「むこ ちの態度もー・・、それに、ぼくと対話を交しあおうとしたあの人たちう側の連中が、なにかの突発事件で泡をくっている最中ならば、ま そ のようすもーーー」かれの声が興奮のためにかん高くなった。「きっしてのことだ。なぜ、きみに遊び道具をくれたりしたんだい ? と、・ほくが感じたとおりのことでよかったんだ。ぼくがもらったのれじゃまったく、意味をなさないじゃないか」 はーー・・ふたっとも、ただのオモチャだったんだ ! 」 少年はとり澄ました表情で、質問者を見あげた。 「ううん、とっても意味があることだよ。あんな状態のもとでは、 「ちょっと待ってくれ ! 」と、アレック・メリーが食傷ぎみに返事・ほくにオモチャを与えることがいちばんいい方法だと考えたんだ。 をした。「その小箱は、オモチャにしては物騒すぎる破壊力を持つだけど、そうやって手にいれられる・ほくからの反応を確かめるま てるそ ! 」 で、・ほくをむこう側にひき止めておかなかったのは、とっても大き ートの目が輝いた。「次元閾のこちら側では、どこかにおそな失敗だった。ねえ、考えてみて ! あの人たちはいま困っている ほんとうに困りはてているんだ。そして、その原因が次元のこ ろしい力を持っているのかも知れないけれど、むこう側に置いた ら、そうじゃなくなるんだよ、きっと。 ちら側にあることも知っている。そこで、十何年間も次元の間を勝 ・ほくは知っているんだ。あの箱はむこう側にあったとき、五つか手に歩きまわっている・ほくのことを思い出したんだ。こちら側へな にかのメッセージを送るためにね ! ・ほくは、あの人たちから命令 六つぐらいに分かれた・ハラ・ハラなもので、ぜんぜんあんな働きはな かったんだ、さっき言ったでしよ。・ほくが箱をもらったとき、こちされた外交官なんだ。もしなにかのシンポルを使って、・ほくの頭へ メッセージを送ることができたら、今むこう側で起こっている大事 らがわへ持って帰ろうとしたら、あの人たちはそれをじゃましたっ て。このオモチャを持ったままで、・ほくがこちら側へ帰っていくこ件も、理解させることができると考えたんだ。そうすれば、次元閾 とを、きっと望まなかったんだよ。だから、これはおみやげじゃなのむこう側を困らせている原因を、・ほくが取りのそくこともできる いんだ。あの鋼鉄粘土と同じように、むこう側じゃなんの役にもたもの」 たないオモチャだったんだ。小箱の危険な力は、・ほくがこっちへ持「それにしても、なぜオモチャなんかを ? 」 ち帰るまで、きっとなかったんだ。きっとそうだよ。でも、こっち少年が、またいたずらつぼい笑顔をみせた。「かれに説明してあ へ運びだしたとたんに、あの人たちが考えていなかったような力をげてよ、ドクター 、ムフォード。・ほくは、ドクターから世旧りた本 だれにオモ 持ってしまったんだ ! でも、それはやつばりオモチャなんだ。むのなかでその説明を読んだ。ドクターの実験室では こうがわで、そういわれたものーーー・ううん、言葉じゃなくて、あのチャをあげてるの ? 」 ドクターは一瞬まばたきしてから、すぐに瞳を大きく見開いた。 人たちがなにか知らせてくるときにいつも使う、思考エネルギーを 22 ー

8. SFマガジン 1970年8月号

「・ほくたちが彼に代って謝るよ」フィネガンが口をはさんだ。「もちろん、この妙なところが彼の最大の欠点だ し、この病的な愛着癖さえなければ彼はとってもいいやつだって、みんな言うんたけどね」 二人が話している間、マイケル・コービンはリンダの顔をじっと見つめていた。彼女が見返すと、秘密めかし た口調で彼は話しかけた。 「ミス・ ( ウズマン、・ほくたち二人はよく似た性格の持主だと思うんです。彼らみたいな、普通の人の使ってる 言葉では言い表わせないような力やものが存在することが・ほくらにはわかるんですよ。・ほくたちだけに、あるい は・ほくたちみたいな人だけに : : : わかるんです」 リンダの唇は放心したように開かれ、すっかり飲みものを飲むのも忘れてグラスを手に握りしめていた。 「そうよ」彼女が呟くように言った 0 「そうだわ」 「だまされちゃ駄目ですよ、ミス・ ( ウズマン」フィネガンが言った。「冷たいうちに飲んだら ? 」 「話を変えようよ」ロッキイが言った。「マイクは放っとけば一晩中、異次元の存在について喋ってるんだ。こ の間の酔っ払って大騒ぎした夜のこと思い出すんだけど : : : 」 声がぶつりと途切れた。 , ー 彼ま顔を前に垂れ、コービンがしたように、眼に見えないなにものかを追って、壁の 下の方を見つめていた。全身がすっかり硬直していた。 しったい、なんの真似だ、えっ ? 」フィネガンが腹立たしげに言った。 コービンはフィネガンに、とりすました冷笑するような視線を向けた。リンダは眼を見開き、不安げに二人の 顔を見比べた。彼女は小さく身震いし飲みものを口に入れた。 ロッキイは夢遊病者のようにふらふらと立ち上るとグラスを置き、リンダの方は振り返りもせず、一言も言わ ずに覚束ない足どりで部屋を出ていった。 「いったいどうしたってんだ ? どこへ行くんだよ ~ 」フィネガンが叫んだ。 ロッキイがドアを閉めて出ていった後、残された三人は無言で坐っていた。コービンは唇の端に薄笑いを浮べ ていた。フィネガンは飲みものをがぶりとあおって、空のグラスを床に置いた。リンダはおずおずと部屋の隅か ら隅へと何かを捜すように見まわした。 「ばかばかしいや ! 」フィネガンがうなるように言った。 ま「おとなしくしておいで、オスカー」なにもいない部屋の片隅を肩越しに見やってコービンが言った。 「もうどこかへ行っちまったよ」フィネガンが言った。「なあマイク、今まで黙ってたけど、きみは自分が目立 たない性格なんで、他人の注意を惹こうとしてこんなことやってるだけなんだろう。しよっちゅうこんな気味の 、 ~ 悪いことやってると、ポールみたいな気の弱いやつは一瞬なにかを見たような幻覚にとりつかれるんだ。きみの に 6

9. SFマガジン 1970年8月号

ロケットが女体をひつばっているのは、「女の惑星」 World fo Women 作者はハーラン・エリスンである。こ れこそまあ & もここにきわまれりーーーというところだ が、実は、種をあかすとこれは Body shell つまり女体の 抜け殻なのである。抜け殻なら抜け殻で描きようもあろう このへんが編集者のあこぎなところで、いったい、こ のかよわき婦人がこんなアラレもない格好で絶対真空中を ひきまわされたらどんなことになるんだろうと気を揉ませ るようにできているわけである。 アルカⅢという惑星の男女の比率はもともと一対二 であり、この社会を五百年間にわたって支配してきたの も、不死の秘薬を用いている五人の女だったのだが、一年 ほど前から交易がと絶えたと思ったら、宇宙船にうち乗っ たアルカⅢの女どもが近くの惑星系を侵略しはじめた。い ったいどういうことになったのかと銀河政府は秘密工作員 を送り込むのだが、これが片っ端から消息を絶ってしまう。やっと のことで入った暗号電報によると、なんでもその惑星を支配してい 作者のハ 1 ラン・エリスソという人は、一昨年のべイコンに参加 る女の一人が " 不死の薬。の飲み過ぎで発狂してしまい、惑星上のした柴野拓実氏が撮ってきたスライドによるとおそろしくおしゃれ 全男性を皆殺しにするやら他の惑星にちょっかいを出すやら、もう なお兄ィさんだが、一人称で書かれたこの作品は、彼そのものが主 さんざんだというのである。 人公として活躍しているんじゃないかと思わせるような快適なテン そこで命をうけた主人公がその惑星アルカⅢにのりこむことになボの話である。早い話が、あのキザなハーラン・エリスンがポイン るのだが、男のままで潜入すればたちまちみつけられて殺されるこの女に変装するなんぞというのからして、いかにもありそうなこと とはわかりきっているというわけで、。フラスチックかなにかでつくのように思えるのである。 ったおそろしく精巧なヌイグルミをつくる。しかし潜入に使うのは それはとにかく、首尾よく惑星アルカⅢの首都への潜入に成功し 一人のりの偵察ロケットで、そんなものを積み込むスペースなんかた彼は、町の情勢をひそかに観察するーー僕は大通りを歩きなが ありつこない。かくて致しかたな、そいつをロケットのうしろにら、何喰わぬ顔であたりを偵察した。なるほど男が一人もいない。 ひつばって : : : という、たったそれだけのことが、表紙となればそ全部殺されたのか、それとも、どこかにまとめてプチ込まれている とにかくこの惑星は女の のヌイグルミが肌もあらわに苦悶表情まで浮かべるという、い 0 のか、まあ、そんなことはどうでもいい ( Ⅷページに続く ) てみれば詐偽であり、いってみれば大サーどスでもあるわけだ。 3 「女の惑星」のイラスト 6

10. SFマガジン 1970年8月号

して皓々たる月光が茫洋たる海面のはるか彼方へと光の道をつくつき、本能的に歩みをゆるめた。男たちのことばをかわしあう声が、 ているのを、コーリスは見ることができた。 低いくぐもったつぶやきとなって入口から聞こえてきた。ほかにも いろんな物音がまじりあい、奇妙な食物のかすかなにおいがする。 夜の青黒い南の空のもとに展開するその眺めは信じがたいものだ った渚にひたひたと打ち寄せる波の音、島の周囲を保護するようそいつはほんのつかの間逡巡し、その光のほのかな輝きの中にず にとりまいている切りたった岩場に、ドドッ、 ドドッとあきることんすん歩いていった。緊張して、開いている入口を通り抜け、立ち なく打ち寄せる砕け波の、くぐもった遠いかすかなうなり。波頭どまり、眼前に展開する光景に魚の目をしばたたいた。 が、粉砕したガラスさながらに、白く輝きながら長い帯となって飛十六人の男たちが大きなテープルを囲んで腰を下し、十七人目に び散るのが暗闇の中でも目に見えた。渦まき、突っこみ、砕け、も給仕されるのをいまやおそしと待っている 9 がき、咆哮し、粉砕し、陸に対する海の苛酷な永遠の闘いをたたか海獣の目をもろに見あげたのは、脂によごれた白 = プロン姿の っているのだった。 男、やせこけてそっとするばかりに気味の悪いカリカチュア、この そしてありとあらゆるものの上にそっと夜空が垂れさがってい 十七人目の給仕男だった。 る。皓々と輝く月はいかにも満ちたりた様子で、西に、大洋の背後「これは、これは ! 」と、彼はだしぬけに叫んだ。「どえらい客人 へとゆるやかに沈みつつある。 いったい、あんたどこからきなすった ? 」 コーリスは、つぶやくようになにごとかいっているオランダ人プ十六人の顔がひょいともち上がった。そして、三十二個の、驚き ロギュに、注意をひきもどした。 と思惑をないまぜたつめたいきびしい目が、そいつをヒタと見据え 「・せったいに見まちがいじゃない 誓ってもいいそ、おれは月をた。そのなめるような抜け目ない吟味を受けながら、そいつは漠と 背に人影がぼんやり浮かぶのを見たんだ ! 」 した不安、遠くで鳴る警告の鐘、こいつらを殺すのは予想していた コ 1 リスは、この早朝の魔力を払いのけ、ビシリといった。「気以上にむずかしくなりそうだという、おもしろくない予感をおぼえ でも狂ったのか ! こんなところに、こんな淋しい太平洋のさい果るのだった。 てに人がだと。まぼろしでも見てるんだろう ! 」 「ーーかもしれん」プロギュがつぶやいた。「大将がいうとおり、 一瞬のときが移って数秒。と、だしぬけにそいつは、自分の前に 気ちがいじみてるもんな」 こんなにわすかではなく、百万個もの目がゆらめき、きらめいてい 彼はふしようぶしよう踵を返した。コーリスもあとにつづき、朝るという、不気味な感じに襲われた くもり、ゆれ、それでいて めしのテープルにむかった。 きびしく。ヒカと底光りし、一体となって凝視する百万個の探るよう な、疑惑にみちた目、目、目。海獣はそんな感情をふり払おうと戦 海獣は入口からさしているオレンジ色の光が足元をよぎったとった。そのときだった。自分の奥深いところから、腰抜けの小男が