いつは燃えるような思いで考えていたのだった。「群島からきた土 いった。「ということは、きみがあいつの島か、その近辺の島から やってきたのだということになる。あいつはきみを怖れていたな。人はきっと、あらしに吹きもどされてくるだろう。コーリスがここ あのびくつきようは尋常じゃなかった。とっさに、きみと同類の一であらしをしのがせてやるといったことを憶えているにちがいな 。そして、白人は強くもあるということを知っているはずだ。怯 団の手におちたと判断したのだ。。フロギュのいったとおりだった。 カひとこといっておく ! えて、おれの正体をばらしてしまうだろう。こうなっては、とるべ 厄介なお客さんをかかえこんだものだ。。、、 われわれは、きみがこれまでに出くわしたうちでも、最も荒くれたきてだてはひとっしかない ! 」 もうかなり暗くなっていた。島と海面におしかぶさってくるたそ 連中の寄り集まりだ。きみがペラタンを殺ったと、まだ信じている わけじゃないが、これからは二度と仲間のひとりだけとの行動は控がれの中に、土人の姿がかろうじて認められた。海獣は、海水がぐ えてもらう。あらしがおさまり次第、われわれはきみを群島へ連れ ーんと盛りあがり、それが小滝となって崩れ落ちたところへ、足早 ていって、これがいったいどういうことなのか、つきとめるつもりに歩いていった。潟はこのあたりは深く、岩肌がほとんど垂直に海 中に没している。海獣は、わきかえる海水の飛沫をあげて身をくね ゃぶから棒に彼はその場を去った。だが海獣は、彼がいなくなつらせはねあがった鮫を一心に見つめた。そのはねかえりの音と崩れ コーリスの近づいてくる足音はかき消され てしまったということ以外ほとんどなにも気づいていなかった。そ落ちる水のさわぎに、 世界情報 スらとのなナナこフいで飲喉法リななよがなれの特現にいな , 家ろく考を 深ョに ? れとのわ 1 はシ剣かさ名ざスてクのつ部はワワ。やと会がい違マはれしな妙そも , て剣ていで作だいはれし 。をリし真っがかた てれそま でク真う載 cn 匿わクつるもず一でリリ , ロ , 大なぽははでさ止え えそどる こははうママと。フるんっナとの究禁与にる性スそも扱ちなし 。ると カイにろ掲 しののそ , , るむいみらワ。びる研ををろ。あ女ク。とをにのをたい変 , ほあ リフ題だにでるゆを メ , がリだ人いにリ楽こかがはがだつれ態 , ってうがに ( 問る号かいわ場お絶たるはりよ住て 斉アがのあ月Ⅸなてい立にをえい心であににつにといマ者てらス快との任ナだのもそ状験だしどだか 覚のだこに 6 のしがなカ像・ほて今イで話 , すうる , ん罪れさクのいい責ワ。もを。酔実評透を。 , ほ いな響う陶。好浸会いしは 日。どか年ルを彼的リ想おっ・、テいの市をよれくろ犯う怖もが上ななもリ 幻今るほほ本クけ , 定メはを持一勢人都ナるかなちはいに後と以かはにマなめ影ろののる , に社なだ野 い , 誌 g イかは肯ア透ナをたパる友大ワす開はものは上今び酒ひで説やれじすだ、ナげし会のき題分 とはてがク・山テいのば , 浸ワ味。のわのるリ明がで。も家以は人がにら小 Q わま・ほしワあ成社間で問な 一問るえとのリ趣たちか彼あマ証イルけう作要響 , れとかの (f) 使と及多リき完す人想る利 っ , 野ッ るナマないたてるのがをテ一だすの必影がそある般»-äかつに , んマ書はま , 予あ有 なり分ィアないい tn とぎるテ 3 うんてとよワがんて者つい岸上れ一ビラをそをのい , にえ一 , しも会はば , 冊品す来く分に や題かいスし 、そしかにリ身それ係とて洋以そパゃ一れとへなはう・ほははに , 社のちは 1 作また十の ナ問るでタ•öとが隠ら。家マ自時ら関にし平分。のはコそ体らのよおでで段はがるいにをはがつのる ワ会すんン , 家をちだ作に彼当限ルを太半だけもす , 人なるのを点説手剤れいがかリれま値け リ社関くアるリ作名どらの特。 , に TJ 一人 ( のとだはやらがや。ばす酒感の小る覚そて品なるスそ , 価か いで間。ビ売市ンこロのいかだナかれと , 悪そのす幻 , え作。篇いク。はる、 マなにりフいス本 , かこ 刻ンとてクざにるリし昔人いがののアう。フむをだワいけうら罪らにに在考るい長もうかえ問 ( や 6
の中にでかけていっている男どもーー・・・・逃れていたら、いまごろは小 だが、忘れるな、このちつぼけな鋼のかたまりが目の前にあ 屋の方にむかってきているにちがいない男どもーー・の上にとんだ。 るうちは、てめえなんぞへのかつばだってことをな」 海獣は、男たちが海の怪物どもの魔手を逃れているはずがないとい 彼はおっとり、自信ありげにリポル・ハーをゆらゆらさせた。海獣 う自信が、実際にはまったくないのだった。 は緊張して考えたーーもしおれが本来の姿に立ちかえられれば、あ その思いもまた、強引にわきへ投げやられた。そしていま一度、んな拳銃があったってやつを殺すことはできる。しかし、おれは二 この小屋から出ていくこと 海獣の異状なまでの精神力は、両わきに安全な距離を保っている二度ともとの姿にかえることができない、 人の男に集中した。コーリスとその仲間が帰ってこないうちに脱出もできないのだ。このままでは、につちもさっちもいかないのだ ! を敢行するためには、二分以内に死んでもらわねばならない二人の アメリカ人が喋っているのに海獣は気がついた。 田刀に。 がいったことぐらいじゃ、ものたら 「いい力い、おれにはデントン 二分 ! こんなことになってから半時間たらずのあいだに百度目ねえよ ! おれはこれまで、なんだってやらねえことはなかった。 にもなるだろうか、海獣はそのつめたい値ぶみするような視線をふそれにしてもよ、ペラタンってやつはそりやいい野郎だったな。あ たりの男にむけた。 いつの死にざまがおれにや気に入らねえ。おれはな、もうてめえが なにかおつばじめてくれやしねえかと、うずうずしてるんだ・せ。そ デントンは、小さいがっちりした造りの、自分の寝棚の端に腰か けて、極度に神経を昻ぶらせ、さかんに足の位置を変えては身体をうすりゃな、そこのデントンとーーーおれとでよーーーてめえのどたま にナマリがとびこむのがおがめるってもんだ。なあ、デントン 動かし、手にした底光りするリポル・ハーを休みなく執拗に、いじく ったりくるくる回したりしている。彼は、海獣のその値ぶみする視ーとび色の目をギラつかせ、べしゃんこの鼻をふくらませて彼は半 「ひと思いに殺っちまってよ、コーリスにはやっ 線を捉え、身をかたくした。彼の唇を咆えるようについて出たこと身になった。 しいんじゃないのか ? 」 ばは、この小男の英国人が冷酷なやりてだという海獣の評価をさらが逃らかろうとしたんだといや、 「だめだ ! 」デントンはかぶりを振った。「おつつけコーリスが連 に強めただけだった。 「ちょっ ! 」デントンはいった。「その目つきはなんでえ。なにか中と一緒にもどってくるはずだ。それにな、おれはなんにもしない おつばしめたいってかいてあるぜ。だが、よすんだな ! おれはこやつを安らして、人殺しになりたくはねえ」 「ふん ! - と、タレイトンは荒つ。ほくぶつくさいった。「人殺しを のあたりの海を二十年もほっつき歩いてきた。いいかい、そのあい だに、タフでやっかいなやつらをうんとあしらってもきたんだ。て殺らしたって、人殺しになりやしねえよ , リキ めえにおれを八つ裂きにできるほどの力があるってことは、いわれ海獣は不安な目でデントンを見守った。やつはリポル・ハーを持っ るまでもねえ , ーー今朝、プロギュを手玉にとるところを拝ませてもている。それさえなければどうということはなかった。海獣は、お 5 らったからな。てめえになにができるかってことは知ってるつもりそろしい努力を払ってなにげなくいった。 はがね
ろ 9 こんなところにいたら変に田 5 われるじゃないか。おれたちの動 本をもっているんだ。昔の本だよ・戦前の」 物のこと試かれて、見つけられちゃってもいいのか ? 」 「ふん。出まかせ言ってらあ。戦前の本だなん。て ! 」 「とうさんはそういう本を持っていなければならないんだ。大学で「いいさ。・ほくの頭が狂っているなんて言ったんだもの」 「裏切り者ー・だれにも言わないって約束したくせに」 教えているんだもの。それがとうさんの仕事だもの」 「言ったりしないよ。だけどとうさんたちが自分で見つけるんな 声がうわずってきたのでレッドはあわててスリム . をひつばった。 「とうさんたちに聞こえてもいいのか ? 、かれはおしころした声でら、ぼく知らないよ。きみが・ほくの頭が狂っているって言ったせい だからね」 言った。 「じゃあ取り消すよ」とレッドは不服そうに言った。 「でも、あれは宀于宙船だ」 「ふうん、・じゃあいいよ。それなら」 「それならさ、スリム、あれはよその世界の船だっていうのかい」 「そうにきまってるさ。うちのとうさんがあのまわりをまわってい スリム【は、ある意味で落胆したのだった。近くにいって宇宙船を る様子を見てごらん。ほかのものなら、あんなに熱心になりやしな見たかったのである。だが少くとも個人的な侮辱というロ実がなけ れば、秘密の誓いはたとえ心の中でも破ることはできない。 いよ」 「よその世界ー・よその世界ってどこにあるんだ ? 」 レッドは言った。「宇宙船にしちゃずいぶん小さいな」 「うん、きっと偵察船なんだよ」 「いたるところにあるよ。惑星を考えてごらん。あの中には、・ほく たちと同じような世界があるんだ。それにほかの星だってきっと惑「けどさ、うちのとうさんだってあの中に入れそうもないぜ」 それはたしかにそうだとスリムも思った。それはかれの論理の弱 星があるにちがいない。何十億という惑星があるかもしれないん 点であったから、かれは返事をしなかった。 レッドはその数の大きさに気圧されるのを感じた。かれはつぶや レッドは立ちあがった。さも退屈だといわんばかりに。「ねえ、 いた。「お前の頭は狂ってる ! 」 もう行ったほうがいいよ。しなきゃならない仕事もあるしさ、昔の 「じゃあいいよ。見せてやるよ」 宇宙船だか何だか知らないけど、一日中あんなもの見物してるわけ 「おい、どこへ行くんだ」 にをいかないよ。サーカスの仲間になるつもりなら、動物の世話を 「あそこだよ。とうさんにきにいくんだ。とうさんがそう言えしなけりや。それがサーカス仲間の第一の規則なんだ。動物の世話 ば、きみだって信じるだろう 9 天文学の教授が言うことなら信じるはしなくちゃいけないんだ。それに」とかれはもったいぶって言っ た。「おれもそうしようと思ってるんだ」 だろうから・・ーー・」 スリムは言った。「何をするの、レッド ? 食べるものは十分や 3 かれはよじのぼりはじめた。 レッドは言った「おい、とうさんたちに見つかっちゃ困るた っこし。ここで見ていようよ」
彼に、予備知識を与えたせいなんだよ」 ークは叫んだ。「畜生 ! 管理社会のスパイめ ! きさまらの 「裏切女め ! 」 物語なんて、くそくらえだ ! 」 「われわれはこのことを予測ーーーい や、知っていた。古い物語その ムラは、かすかに笑った。 ものによってね。ただ、このことを知ったビッツがどうするか心配「いくらでもわめくがい、 、よ。わたしはこれで失礼する」 だった。だから時間をずらし、追って来た。ヒッツを焼き殺すよう、 「待てー・おれは : : : おれはどうなるんだ ? こんなところで : 待ち受けていたわけだが : : : 船が焼かれるのを防ぐことはできなかおれは文明人だそ ! 」 った。まあそれも、物語では似たことが伝えられているのだし、仕「あなたはもはや時間旅行はできない」 方がないがね」 ムラは、ウインクした。「あなたはこれから時間の自然流に乗っ 「テナインは ? 」 たまま、すべてを見るんだ。何もかもを見るんだ。われわれの物語 の全部を、自分の目で見るがいい」 ークは詰め寄った。「テナインをどうしたんだ ? 」 「彼女は女神になるんだ」 「それが終ったとき、わたしはあなたに航時服をあげよう。それま 「なに ? 」 「正確には、女神の役割をはたしてくれるんだ。彼女は亜文明史をでは、あなたは見つづけるのだ。ここの人として。あなたにはそれ 知れば知るほど、ここが気に入った。あなたがたの、文明に守られしかできない。甘やかされて軽薄を売りものにして来た才子のあな たが、ここでできるのは、そのくらいのことだけだ」 ているくせに、というより、文明に過保護を受けているからこそ、 ークが何かいい返そうとしたときには、ムラはもう、部下のほ 何もかもを笑いものにし、ヘらへらと生きる、そんな思いあが万の うへと急いでいた。それから、全員が、 ( ークの手の届かぬ時のか 世界が、すっかりいやになったそうだ。彼女にとってはここの、 なたへと、去ってしまった。 全身で生きて行く連中のほうが、あなたがたより魅力があるそうだ よ」 4 「そんな馬鹿な ! 」 で、彼女は物語に出てくるアテーネ 「どうでもいう力いいさ 烈日を浴びる埃だらけの道を、 ハークはと・ほと・ほと歩いていた。 1 という女神の役を進んで引き受けた。カリプソーの岩屋を出た よ・こし・こっ オデュセウスが、パイエークスびとの国にたどりつき、ついでイタ彼はもはや文明人ではなかった。彼は・ほろをまといー ケーに戻り、辛苦の末に復讐をとげてペーネロペイアと再会するまた。空間移動に使われた航時服さえ、もう使いものにならないの で、何年か前に捨ててしまったのだ。 で、ずっと彼を助ける、あのアテーネーにね」 「わけの判らぬたわごとはよせ ! 」 彼はもはや若者でもなかった。ここでの苛酷な生活と、二十年あ 3 9
確実に実現させることができる。データーを計算器にいれて、回答所長さん。すぐに来たほうがいいな」 を得ることができる。おれもいちど、計算器がこの『大発見』をど マッケヴォイはヴィデオ・スクリーンを見やりながら、コーヒー ういう具合にはじき出してくれるか、見届けてみたいものだねーかをごくりと呑みこんだ。様子を察するところでは、とにかくひとっ れは絶望的に首を振った。「さあ、家へ帰って眠るとするか。おまだけ確実らしいことがあった。サンフランシスコが消えてなくなっ えもそうしたほうがいいそ」かれはレインコートを肩にひっかけたのは、地震のためでも、爆発のためでもないということだ。テレ て、ドアへ向かった。「いいな、ぐっすりねむれよ。あしたの朝まビの説明はやたらに感情的で支離減裂な言葉をならべている上に、 でに伸ばしておかなきゃならん『皺』が、いくつかあるようたっ 字幕にうつる文句にしてからが矛盾だらけの内容だった。カル・テ たからな。分かったか ? 」 ックにある地震計はなにも記録していないのに、街がそっくり消え 「ああ、おやすみ」メリーはすねた子供のような調子で、そう挨拶たーーそれもサン・ホセあたりまでがごっそりとだ。金門橋をはさ を交した。 んで、まるで刃物でけずりとられたように、両半島が消えてしまった のだ。その範囲はほぼ五十マイルにおよび、幅は五マイルほど マッケヴォイはぐっすりと眠った。テレビの早朝番組を見るためかろうじて残った周辺の都市は、目のまえに突如として湾港があら にスイッチを入れたとたん、サンフランシスコの街が昨夜とっ・せわれたことに驚きあきれているという。消えた街の跡をみると、ち ん、そっくりあとかたもなく海のかなたへ消えてしまったというニ ツ。、リ分断 ようど馬鹿でかいナイフで切りとられたかのように、ス / ュ 1 スが飛び出してくるまでは、じつにすがすがしい気分だった。 されていることがわかる。境界にあったビルの切断面などは、じっ そのニ = ース番組を喰い入るようにしてみつめているとき、電話がに見事なものだ。消火栓もまつぶたつだし、住宅街を走っていた道 けたたましい響きをあげた。かれは電話用のテープル・スイッチを路の残骸は、ちょうど橋でも架けたように、水の上へ突き出してい ( チリといれた。「マッケヴォイだ」ト 1 ストをかじりながら、かる。消えた街は、ほんとうにあとかたもない有様なのだ。まった れはそうつぶやいた。 く、きれいさつばり分断されて、別の世界へ運び去られた上しか考 「おい、こちらフリツツアーだ」相手の声に含まれた金属的なひびえようがないほど、その消減は完璧で、しかも信じがたいものなの きは、電話を通して聞いても変わりがなかった。「研究所まで来た ほうがよさそうだそ、マック。すぐにだ」 マッケヴォイは、国際物理学研究所にあるオフィスの待合室へ入 マッケヴォイが返事をした。「どうして行かなきゃならんのだ室する途中、心中歯ぎしりしたいような気分におそわれた。なにし ろ、ウエストチェスターの自宅からここへやってくるまでのあい 「テレビを見てないのか ? 政府のお歴々も、すでにこっちへ出掛だ、ものすごい高速に耐えてきたのだから、神経がだいぶ参ってい 8 がたかれるたびに、マッケヴォ るのも無理はなかった。フラッシュ けて来るんだ。研究所の所長に会いたいとさ。あんたのことだよ、 しわ
獣は水中から這い出し、その人間の肢でしばし突っ立ち、まる震えながらひとあえぎして、海獣はその人間の口から喉もとへと で酔 0 てでもいるようにぐらぐらと揺れた。なにもかもがいかにも息を吸いこんだ。と、だしぬけに、なかば魚の状態に立ち返 0 たそ ぼんやりかすんで見えるのは奇妙だった。心が黒く霧につつまれ、 のつかのまをすぎて、大気は奇妙に不愉快なほどひからびて熱く感 そいつはその人間のからだに、足下の砂の、つめたい取れた感触じられたーーーはげしい窒息感 , ーー苦しい咳の発作に襲われて ( む に、順応しようと戦った。 せ、白い泡の霧を吐き散らした。そいつは、そのかたい人間の指で 首をかきむしり、その場に突っ立ったままじりじりと目の前にのし 背後では、波が月光に映える渚にあたってささやいている。 かかってくる暗黒から抜け出そうとあらがった。 そして前方には そいつが化身していたこの人間の体に対する痛烈な怒りが、つめ 前方の暗い世界にじっと見入りながら、そいつは妙な頼りなさを お・ほえた。気がすすまない。水際を離れることが胸をしめつけられ」たい魚の神経にそってわななき走った。この新しいすがたかたちを るように、陰うつなまでにいやなのだ。耐えがたい、だがまったく嫌悪したーー二本の足、二本の腕、小さなぞっとするばかりの球形 避けがたい目的のためには前進する以外選択の余地が残されていなの頭と蛇のような首のつくり、それらがひょわな骨と肉からできた いことに気づいたとき、その人間の体に張りめぐらされた魚の神経かたまりに頼りなくつながっている、この度し難い代物。それは水 に、痛みをともなった不安がのたうった。そのつめたい魚の脳髄にの中で役に立たなかったばかりか、およそどんな目的にも適わぬも おそ ののように思われた。 怯れがちらとでも浮ぶことなど、かってはありえないことだった。 筋肉をこわばらせて、お・ほろにかすむ島の広がりにじっと瞳を凝 だが、それなのに ひとりの男の、太いしやがれたばか笑いが不気味な夜の大気を震らすとき、そんな思いは消え去っていた。つい近くの暗がりが怪し わせたとき、海獣は身をわななかせた。ゆるやかな、生暖い風に運く濃さをまし、いちだんと暗くなっていたーー・ー木立 ! ずっと遠く にも同じようにひときわ黒ずんだところがあったが、それらが木立・ ばれてくるそのひびきは遠いためにあやしくゆがめられていた - 」うこう はたまた建物なのか ! 見定めることはできな 皓々たる月光をふり注ぐ夜の薄闇を通してサンゴ礁の向こう側からなのか丘なのか 突きささってくる、肉体を離れた、唸りにも似た笑い。それに反応かった。 ひとつだけは、まごうかたなく建物だった。おぼろなオレンジ色 して海獣の喉もとをこわばらせるような、耳ざわりな、傲慢な笑い だった。らめたい残忍な嘲笑いがそいつの人間の顔の筋肉を引きしの光がぼつんと、その低い横に延びた建物の人口から洩れていた。 めると、つかのま、それはそっとするばかりのゆがんだ虎鮫の顔に海獣が不気味な目つきで見守るうちに、影がひとっ光の前をよぎつ かおだち 変った。人間の容貌をわずかにとどめたけわしい、どうもうな顔だた。人影だ ! はがね った。鋼のような歯が、餌物にとびかかるときの鮫のそれさながら あの白人たちは、近くの島々に住む褐色の原住民とはおそろし に、がぎりと金属的な音をたてた。 く「信じられないほどちがっていたまだ夜明けでもないのに、も
「ううん。まだ知らないらしいや。丘のほうへおりていったよ」 「かれらが着陸して、まだ生きているとしたらどこにいるのでしょ 「何しに ~ 」 「さあね。ゅうべ聞こえた雷みたいな音のことをさかんに訊いてい 「しばらくそれについて考えてみましよう」彼はまだ考えこんでい たよ。お、、 る。 あの動物、肉を食ったか ? 」 「そうだなあーとスリムは慎重に言った。「眺めていたよ、それか天文学者は言った。「何をおっしやりたいのです」 ら匂いをかいだりしていたよ」 「かれらは友好的ではないかもしれない」 「ようし」とレッドは言った。「そのうちに食うよ。だって何かし「ああ、それは大丈夫です。わたしはかれらと話しあいました。か ら食べなくちゃしようがないもんね。丘の方へ行ってとうさんたちれらは・ーー」 が何しにいったのか偵察してこよう」 「先生はかれらと話し合いをした。それを偵察という。ではかれら 「あの動物はどうなる ? の次のステップは何か ? 侵略 ? 」 「平気だよ。一日中あいつらにかまっちゃいられないもん。水はや「しかしかれらは船を一隻しか持っていないのです」 っこ〉 . 「かれらがそう言ったにすぎんでしよう。船隊をひきつれてきたか 「うん。飲んでいた」 もしれない」 「かれらの大きさはお話しましたね。かれらはーーー」 「ふうん。じや行こう 6 昼めしすんだらまた見にいけばいいさ。こ んどは何をもっていくか教えてやろうか。果物。果物なら何だって「大きさは問題ではありませんよ、もしかれらがわれわれの砲器よ 食うもん」 り勝る武器をもっているとしたら」 「わたしはそんなことを言っているのではない」 ふたりはそろって丘の方へ駈けおりていった、例によってレッド を先頭に。 「これは最初から気にかかっていたのです」と実業家は言葉をつい だ。「先生のお手紙を拝見して、かれらと会う気になったのはその ためです。人さわがせな、見こみのない交易に同意しようというの ではなく、かれらの真の意図を探るためです。かれらがこの会見を 天文学者は言った。「物音というのはかれらの船が着陸した音だ回避するとは思えません」 とお思いになりますか ? 」 かれは吐息をついて補足した。「これはわれわれの罪ではないで 「そうとはお思いになりませんか ? 」 しよう。先生はある一つの事柄については正しい、少くとも。世界 「もしそうだとすると、全員即死でしような」 はあまりにも長い間、平和すぎました。われわれは疑うという健康 「そんなことはないと思うが」実業家は考えこむ様子である。 的な感覚を失ってしまった」 5 0 3
〈ニ〉はどうやら本気《そうなのか》とヒトはつぶやいた。 《難問だな》とヒトは苦笑しながらいった。 でそう尋ねているらしいのだ。 《〈河〉の存在を知らなくはなかった。しかし、それはごく一部分 でしかなかったようだ。しかも仮定的に考えられていた。それは外 ヒトは再び、〈海〉の様相をみた。 湾にそって流れる海岸流があった。巨大な時の潮だ。その潮は速宇宙へむかって旅立っていったスタードライ・ ( ーたちによって、こ の〈流れ〉の存在は気づかれていた。経験豊かな連中のある者は、 かった。だが、とヒトは・ほんやりと考えた。この世界で、速いとい ・ドライプ うことはどんな意味を持つのだろう。 あえて、この〈流れ〉に船をのりいれる。亜光速航法といわれてい 《この地形は沖積地ではないのか》とヒトはきいた。《かって、時るあれだ。また、運さえよければ、成功するワープ航法も、あるい ま、 の大河があったはずだ》 かような蛇行するより大きな〈河〉に船をのりいれたときおこ 《そうだ》と〈 = 〉はこたえた。《わたしは知らない。しかし、そる現象であったのだな。だが、時の〈河〉こそが、膨張する宇宙の 根源のカであったとは知らなかった》 れは存在していた》 《いまは、どこにあるのだ》 〈ニ〉はうなずいて語った。 みずみち セ / ト 《大河は蛇行して砂嘴の彼方へ水路をかえた》 《息づく脈動宇宙の収縮のとき、即ちあの聖オーガスチン時代の終 《自然にか》 期に、われわれの祖先は現われた。そして宇宙半径十億光年のカオ 《いや》と〈ニ〉はヒトの質問に驚きの念をこめていった。《水路スの中から、我々は創造されたのだといい伝えられている。それ以 来より、われわれ種族は、営々として、お前のスケールで三十億有 をかえたのは、われわれの一族だ》 余年、歴代の事業を受けついできたのだ。それは〈河〉がやがてな 《なぜ ! 》 くなり、宇宙生成の一つの周期の終るとき、即ちドジッターの宇宙 《〈河〉こそわれわれの最大の武器だからだ》 のときまで、つづけられるだろう : : : 》 《武器 ? 》 再び、〈海〉は、今一つの波堤の岩塊をくいちぎった。ヒトは自 《そうだ。武器だ。〈河〉こそが宇宙膨張の根源の力なのだ。あた かも河が陸地を拡げるように、時の〈河〉は、宇宙をおしひろげ分が冷静でありすぎることに気づいてかえって驚いた。 る。まあ、きくがよい。宇宙の拡張こそ、われら〈ハ〉一族にとっ 《人工の力が、自然な〈河〉の水路をかえた、そのために、この地 カオス て、これは天地創造以来の使命だからだ。われわれは〈河〉の〈堆域の自然的均衡が崩れたのだろうと思う。〈海〉は、その弱点をつ いてきたのだ。〈河〉が、この地点に供給していた内部物質の不足 積〉力を、その事業目的の最大の武器として利用してきた。お前た が、第一の原因だ。〈ニ〉よ、おれはこう考える。第一に〈潮〉の ちは、宇宙の中心区域から流れ出す無数の時の存在を知っているだ ろうか。その水系は、宇宙全域を覆いつくし、長大な宇宙発達の期方向をそらすこと。そのために小さな〈突堤〉を〈海〉へむか「て つき出すことだ。それが核となり、やがてその地点にもう一つの砂 間を通じて、絶えず、内部の〈物質〉を運び出してきた》 ナチェラル スダー
イは怒りで顔を紅くした。かれは役人連中をオフィスに招きいれてて、どシャリと先手をうった。「なにしろ、都会がひとっ消えてな くなった。おまけに二十マイル四方の地震計はなんの反応もしめし 8 から、報道陣の鼻っ面でドアを勢いよく締めた。 てはいなかった ! しいですか、ことは重大なのですぞ」かれは苛 「さて、お集りのみなさん」と、マッケヴォイは弁明を開始した。 立たしげにタ、、ハコをもみ消した。「ここでは、なにを実験するに 「じつは昨夜、西海岸一帯に地震が発生しましたために 「いや、それは違う、ドクター・マッケヴォイ ! 地震などはまっしてもあなたの許可が要る。あなたはその指をいつぼん動かすだけ たくありませんでしたそ」天色のスーツを着こんだロ達者そうな男で、世界中の物理学の重要な発展を指揮できる立場にあるーーーしか が、ライターをカチリとともしながら言った。それから、冷たい目も、このビルの中に坐ったままで ! 」 で、相手の大柄な身なりをジロリとながめた。「カル・テックの地 ひとしきり質疑応答の波が寄せては返した。マッケヴォイは、活 学研究所をはじめ、コーディンガム研究所も、昨夜のサンフランシ発に、しかし断固とした態度で、ときには腹を立てながら詰問に立 スコ事件が地変現象によってひき起こされたものでないことを証明ち向かった。まったく納得のいかない連中をやっとの思いで追い返 しています。あなたはこの研究所の全計画を指揮しておられるかたしてから、マッケヴォイは、疲れきって椅子の中へくずれ落ちた。 ですそ ししてすか、わたしたちは藁をもっかみたい気持で、ここ目蓋の裏側でずきずき疼く鈍痛を鎮めるためもあった。 へこうして秘密の情報をいただきにあがった。この心中を察しても その朝、電話の・ヘルは鳴りやむ暇がなかった。次から次へと、じ らいたいものですな」灰色のス 1 ツを着た男はそういって肩をすくつによくかかって来た。正午を十分ほどすぎたところで、ついに応 めると、灰皿の中へ灰を落とした。「たぶん、あなたならたくさん対しきれなくなったマッケヴォイは、へどの出るような思いでイン の情報を提供してくださるだろうと思って、まずあてにしてやってターコンのスイッチを入れた。「今日はもう、これでたくさんだ」 と、かれは秘書に命令をくだした。「もう電話には出てくれるな、 来た次第ですーかれはいかにも小器用にことばをむすんだ。 しいかね。これから食事にいってくる」 マッケヴォイのほうも、匙を投げたかっこうで両手をひろげてみ せた。「情報ですって ? 当研究所では、目下のところアリゾナの秘書の声が、ス。ヒ 1 カ 1 を通じて、ぶるぶる震えるように響いて 月ロケット計画を押しすすめるのに手いつばいの状態です。もちろ来た。「ドクター・マッケヴォイ。ちょうどご婦人が面会を申しこ ん、そのほかにいくつか小さな調査課題を負わされていることは否んでおられますが。重大な要件だそうです」 定しませんが、それにしてもですね、われわれの研究が、その 「とにかく帰ってもらってくれ」マッケヴォイは疲れきった表情で 街の消減と遠く結びついているとでもお考えでしたら、それはたい意思を伝えた。「これ以上話すことはなにもないからな」かれはイ へんな見当違いです ! 」 ンターコンを切って帽子を取りに出た。 政府の役人は顔をしかめた。「まあまあ、ここはひとっ理性的な コートに腕を通しかけたとミ女がドアをあけてはいって来た。 話しあいで参りましよう」、かれは腹だたしげな態度をあらわにし怒る秘書も眼中にないらしく、道をふさぐものを押しのけて部屋の 寺 0 、、ヾ
「あんたたちはよっぽどの間抜けか、さもなきや腰抜けだね。われいなかった。そして われは三人きりなんだよ、それも島の上に。われわれには島抜けす いまだ ! 虎のすばやさで、そいつはどっとタレイトンに跳びか 6 る方法はない。たとえわたしがこの小屋を出たって、外はこれ、こ かった。相手のつり上がった目、叫ぼうとあんぐりあけたロをちら のとおりの暴風だーーひどい、みじめなひと夜を過ごして、とにかと認めたが、次の瞬間彼を床からぐいと持ちあけるや、アッという く朝になればあんたたちに見つかってしまう。どういうつもりなん 間もあらばこそ、デントンめがけて投げつけていた。 だねーーーひと晩中起きつばなしで、わたしを見張っているなんて ギョとなって思わずあげたデントンのしやがれた唸り声と、びつ くり仰天したタレイトンの・ ( リトンの叫びとが交錯し、ひとつに混 「こいつは驚いた ! 」タレイトン がい 0 た。「いい考えがある。やじり合 0 た苦悶の悲鳴とな「てあたりにこだました。と、一一人はグ つをお「ぼり出して、内から鍵をかけておきや、おれたち二人ともシャとぶつかりあい、折り重なるようにして壁に激突した。 少しは眠れるぜ」 海獣は、二人のところにとんでいき、ポロポロに引き裂いてやり 海獣の胸は希望に高鳴った。が、デントンがかぶりを横に振る たくてうずうずしたが、いまや二人が死んだかどうかをたしかめる と、それも鉛のように沈んでしま 0 た。「だめだ、気ちがい犬にそ猶予すらなか 0 た。一一分の制限時間はと「くの昔にすぎていた。も んなことができるものか。だが、やつのい 0 たことで、いい考えがう遅いーー・すぐさま逃走にかかる以外、なにをするにも遅すぎた。 浮かんだ」その声がふざけた調子をおびる。「タレイトン、この殿海獣はひ 0 たくるようにドアを開け、そして、もろにガッンと = 方に、どういうおとり扱いをさせていただくかお示しするんだな。 1 リスにぶちあたった。・、 / ランスを失って後ろへはねとばされてい ほら、おまえのうしろのクギから。ープをと「て、やつを縛りあげた。周章狼狽のその瞬間、海獣はかしらの背後に仁王立ちするプ。 るんだ。ことがおわるまで、おれはこのオハジキで見張っている。 ギ = の姿をみとめた。ほかのやつらも集まってくる。 そうすりや、おかしなことは起らんだろう。わかったな、よそ者、 さもないとお見舞いするぜ」 夜のとばりに包まれ、荒れ狂うあらしを前に、その一瞬は永遠と 海獣は耳ざわりな声でい 0 た。「タレイトンに突 0 かか 0 て、きも思われた。小屋の内部から洩れるオレンジ色の光は、暴風雨の悪 みから背中を射たれるなんて、そんな・ ( 力な真似はーー・」 夢の猛襲に抗すべく低く身をこごめた男たちのギョッとなった顔 だが、海獣は懸命に考えた。ほんのつかの間でもアメリカ人があ . に、なんとも物凄い、鬼気せまるいろあいを投げかけていた。海獣 の拳銃をさえぎってくれるだろう。たとえさえぎってくれなかった がもがき立ち直るとき、一条の稲妻がジグザグに突っ走り、その痩 として、どうということはない。彼がそばへくるのだ。はじめて、 せて黒ずんだ残忍な顔を彼らの前に照らし出した。 二人のうちの一人が近づいてくるのだ。それで十分。どちらも、こ仰天したのは同じでも、底知れずたくましい、鑄のような筋力が れからどんな猛威に出くわすことになるか、まる 0 きり気づいては回復したのは先だ 0 た。海獣は「ーリスに打ちかか 0 た。目にもと