種族 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1970年8月号
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1. SFマガジン 1970年8月号

力が劣っておられる。おそらくあなたのご子息は支払い能力をもた あれが作られた当時は種族も若かった、そうでしよう ? 」 なくなるでしよう。現存の産業は、戦前を樫の木にたとえるなら揚 2 「当時 ? そうですー・少くともかれらは新しいものを恐れてはい なかった」 子にすぎない、にもかかわらず、それを支えることすらこの惑星に 「そうです。恐れていればよかったんです。戦前の社会がいまどことっては困難になってきているのです。遠からずわれわれは村落経 にありますか ? 破壊されてしまいましたよ、先生 ! 若さや新し済にたちもどるでしよう、そしてそれから ? 洞穴にもどりますか いもののどこがいいのです ? 現在のわれわれは前よりましです ? 」 よ。世界は平和で、どうにかやっている、種族はどこへも行かな「新しいテクノロジイの知識の注入がそれらを変えるとでも ~ 」 第一行こうといったって行くところがないじゃありませんか。 「単に新しい知識というだけではためです。変化の波及効果、限界 かれらがそれを証明している。あの道路を建設したかれらが。先生をひろげる波及効果。実は、あなたが単に富豪であって政府の要人 の客人が来るなら、前にも申したとおりに話しあいはしますよ。し に顔がきくというばかりでなく、昨今、伝統をあえて破る挙にでら かしわたしは、その連中に立ちさるように頼むだけだ」 れるという、まことに異例な評判をたてられておられるので、それ 「わが種族はどこへも行かないどころか」と天文学者は熱意をこめでこの問題をあなたのところへ持ちこんだわけです。種族は変化に て言った。「最後の破減に向って進みつつあるのです。わたしの大対して抵抗するでしようが、あなたなら、かれらをどう扱ったらよ 学では、毎年学生数が減少しています。書かれる本の数も減ってい いかおわかりだろうし、またどのようにとりはからうかについてー ます。なされる仕事も数少くなっている。老人というものは日なた ぼっこをしながら居眠りをし、毎日は平和で何の変化もありません「種族の若さをとりもどすために ? 」 が、日ごとに死に向って着実に近づいていることはたしかです」 「そうです ! 」 「まあ、まあ」と実業家は言った。 「原子爆弾で ? 」 「いや、それを否定するわけにはいきませんよ。よろしいか。わた「文明の終焉に」と天文学者はこたえた。「原子爆弾の必要はあり しはあなたに手紙を出す前に、あらかじめ惑星経済界におけるあなません。わたしの遠来の客人は、原子爆弾、あるいはかれらの世界 たの地位を調査しました」 でそれに準ずるものを持っていた、にもかかわらず生きのびたので 「で、わたしに支払い能力があることがおわかりになった ? 」と実す、なぜならかれらはあきらめなかったからです。おわかりになり 業家はロ辺に微笑をうかべた。 ませんか ? われわれを打ちひしぐのは爆弾ではないのです、われ われ自身の戦争ノイローゼです。これは、そこへ行きつく過程を逆 「ええ、まあ。ああ、冗談をいっておられるのですね。しかし いや冗談といえど遠からずです。あなたはあなたのお父上より支払転させてくれるかもしれない最後のチャンスです」 い能力が劣っておられるし、お父上はそのまたお父上より支払い能「それでは」と実業家は言った。「宇宙からの客人は、代償として

2. SFマガジン 1970年8月号

たとえば、時計という面白い道具があるらしい。それは、お前たち 痕なのではないのか》 種族には、時間を直接知覚する感覚器が発達していないためなのだ 《タイムスリップ ? 》 《つまり、われわれの三次元地質学の言葉を借りていう、四次元的ろう。だが、空間は知覚できるらしい。それゆえ、・お前たちは、時 言という道具をつくりだした。時間を空間的なものに翻訳し、空間 な地辷りのことだ》 化して知覚するという方法を思いついた》 《ちがう》と〈ニ〉は否定した。 《あなたは、一体何をいおうとしているのだ》とヒトは、急転した 《これは地辷りではない》 〈 = 〉はうまい説明の言葉をさがすように、ヒトの言語巣を透視し話題にめんくらったように問いかえした。 《だが、確かにその点に関してはあなたのいうとおりだが : スリップ「 《地辷りなら、滑落面からあるはずだ。これはちがう。この地層かし補足するならば、われわれの種族の一員の中に、そうした時間 は、お前たちが地形学的にいう堆積層、しかもいうなれば、泥の層の空間化を問題とした者もいたのだった。その男の名はベルグソ なのだ。その層は新しすぎ、軟かなままの堆積層なのだ。悠久にしン、亜科学期末期に現われたヨーロッパ部族の思想家だ》 て長大な時の流れが、その微細な時相的粒子をここに運び、沈澱さ《それは、お前の記憶巣の中から今、わたしも知ったところだ。そ の男の空間と時間の理論、生命と物質、純粋持続の概念など、だが せたものなのだ》 ( イテイメンション・クレイ それにつづく後代の思想家たち、たとえばフッサールなど現象学派 《高次元泥 ! 》 テスト¥ーリング 《そうだ。正確には内部を試掘しなくては、いいかねるが。がそに属する連中なども、所詮は、お前たち種族の生物学的能力の限界 の必要はほとんどあるまい。タイム砂、タイムシルトの場合もあり がその存在論の大前提としてあったことに、疑いもしなかったよう うるが、それはこの場合、薄すぎて支持層とはなりえないだろう》 だな。といっても、お前たち種族の宇宙的地位からいって、同情す 《タイム泥を支持層とするのだな。だが》とヒトはつぶやくように べきであったが : ・ 、としても、精緻をきわめたそうした思想大系 いった。《泥は、おれたちにとっては、やっかいな代物だぜ。としも、結局、知覚能力の限界と共に限定された真理であった》 てもだ、今ひとっビンとこないな》 《かもしれぬな》とヒトはこたえた。 《われわれ低次元人の世界観と、あなた方の世界観とは、異なって 《むりもない。概念的につかめても、実相は理解しにくいようだな》 当然なのだろう。もし、たとえば蜜蜂の体内時計のような時間感覚 《そうだ》とヒトはいっこ。 〈一一〉は、異世界の技術者と、技術上の問題について討論することを内蔵していたら、我々の思想も根本的に異なっていたかもしれぬ について興味をつのらせたようだった。〈ニ〉は、再びヒトの言語 《あるいは、な。より進化した感覚器を持っていたならば。知性の 巣を探って言葉をさがした。 働きというまわりくどい方法をとらずとも、本能の働きによってお 《お前たちの種族は、時間を空間化して考える癖があるようだな。 クレイ

3. SFマガジン 1970年8月号

の死せる時の堆積が、層状に傾斜した大壁面を、あますところな球船が、ただよいながら、速度をゆるめ、大地峡の底の、糸のご く、開示していた。それは天然の壮絶の極みといいうる美の傑作ととき、抜け路をゆくにつれて、景観の大展望は、蜒々と開示されて いうべきだ。 いった。そして、〈ニ〉が、信じられぬほどの驚きと共に、それを だが、いつまでも、そこに滞まることは許されえないのだ。現場発見したのは、ちょうど、渓谷の中ほどをすぎたときであったの 。それは〈ニ〉の属する〈ハ〉一 の急迫が〈ニ〉をあせらせる : 族の宿命的な使命観ともいえるものだった。 この、堅牢にして、密に形成された時核、それこそ、あたかも障 〈ハ〉一族とは何者なのか。彼らは、いわば、宇宙生成の大過程の - 壁のような、この〈亜〉の大岩壁の一部に、。ヒンポールほどではあ ったが、鑿孔があり、そこより、一糸の滝となって、時が流れおち 内なる律に組みこまれたる、運命的な建設種族ともいいうる存在、 そして、彼らのその天より賦与された才とは、宇宙創造の大輪廻劇ていたのであった。 を司る越なる大演出者〈ウ〉を助ける : ・ 。又、〈ウ〉が彼らを必 それは、〈ニ〉にとっては、大いなる発見といえる事実であ、つ 要とし、一説には、その分身として、彼らを創造したのだとも伝え られる : 〈ハ〉一族と共に、この〈ウ〉の世界に住む〈ニ〉の血縁部族、無 ダジオロジー 即ちー 漏の識者たちの説く時質学の説によれば、〈亜〉の大岩壁は、宇宙 生成時の、きわめて古い時期に形成されたものであろうといわれて 大宇宙は輪廻するー その収縮、膨張する大宇宙の、永劫回帰する時の大流転の一過程いた。 にあって、彼ら〈ハ〉一族は、越者の超宇宙的無限の万億カルバに 彼らは、この時を指して、〈始〉と呼ぶ。が、これはいうなれ わたるスケジュールを補佐する ば、プレアインシュタイン宇宙期、即ちあの聖オーガスチン時代の ハイデメ / ョナル・ジピル・エンジ -- アリング その彼らの駟使する多次元土木技術こそ、聖なる宇宙の終期を指していた。即ち、前宇宙が、収縮の極限にちかづいた頃に 大輪廻劇に関与していたのだ ! 生成された、〈亜〉即ち古世界の残滓であろうと : ・ それ故ーー それ故、宇宙の構成要素、〈素〉は、従って、〈亜〉の大岩壁に もし邂逅という言葉が、彼らにもあるとするならば、この大地峡おいては、緊密なる結合状態にあり、その硬度は〈ウ〉世界中極限 で、それにつづく出来事として起った〈ニ〉とヒトとの、奇蹟に等的であるはずであった。 しく、億万カルバに一つあるかなきかの、全き偶然の出合いこそ、 その〈亜〉の形成物質が、破られているのだ。〈 ( 〉族の持つ、 ーリングマシン まさしく、その言葉にふさわしく、それは、二つの世界の邂逅とい最強の鑿孔機をもってしても、不可能なことが、そこにおこなわ うべき出来事、そして二つの世界の技術の出会いを意味していたのれていたのである。 ・こっこ 0 その、異次元世界よりの物質は、ちょうど、滝の落下点に沈んで ー 47

4. SFマガジン 1970年8月号

商人ははげしくあらがったが、所詮徒労であった。「こいつに何いが上げられ、光がさっと射しこんだ。前と同じように子供の種族 とか言えないのか ? 」とかれはどなった。 がふたりいた。この種族のおとなたちと外見はさほどちがっていな いと探険家は思った。もっともかなり小さいが 探険家はかぶりをふるばかりだった。「プロジェクタ 1 でもだめ だろう。相手が聴いていないから」 葦のような緑色の茎が一つかみほど檻の間からさし入れられた。 「じゃあ、ぶっとばせ。ぶっとばしてしまえ」 その匂いは不快ではなかったが、根元には泥がついていた。 「それはできない」馬鹿野郎という言葉が喉まで出かかった。探険商人は後ずさりしながら嗄れた声で言った。「こいつら何をする 家はぐっと目分を抑えた。怪物がどこかへ向って歩きだすと、かれつもりなんだ」 はばくばくと空をおよいだ。 探険家は言った。「餌をくれているつもりでしよう。少くとも草 「どうしてできないんだ ?. と商人はどなった。「・フラスターになに相当するもののようだ」 ら手がとどくだろう。こっちからよく見えている。おちる心配はな おおいがかけられ、かれらはふたたび揺られながら、まぐさとと い」 もに取り残された。 「もっと簡単な理由があるんですよ。もしこの怪物が殺されたら、 あんたはこの星で商売はできなくなりますよ。ここから立ちさるこ ともできないだろうな。きっと一日も生きのびられませんよ」 スリムは足音をきいてどきりとなったが、 レッドだとわかると顔 「な。せだ ? なぜだ ? 」 「な・せならば、この怪物はここの種族の子供です。商人が原住民のを輝かせた。 「だれもこなかったよ。しつかり見張っていたか とんな結果になるか知かれは言った。 子供を殺したら、たとえ誤って殺してもだ、・ っているはずだ。それにもしここがわれわれの目標地点なら、われら」 われはこの星で有力な住民の領地内にいるわけだ。もしかすると身レッドは言った。「しーいつ。ほら、これを籠の中に入れておい 内のものかもしれない . てよ。おれはまた、うちまで一走りしてくるから」 そんな次第でかれらはこの檻に入ったわけである。かれらは注意「なにこれ」とスリムはしぶしぶ手をだした。 深く厚いおおいの一部を焼き切ったが、吊されている地点からとび「ひき肉だよ。ちえつ、お前、ひき肉見たことないの ? さっきお おりればそれは死を意味していることは火を見るより明らかであつ前に家へいってもらったのはね、あんな草なんかじゃなくて、こい つをとってくるためだったんだ」 さてまたしても檻が揺れ、弧をえがきながら上方に持ちあげられ スリムは自尊心を傷つけられた。「なんであいつらが草を食べな 7 いことがわかる ? それにひき肉って、そんなふうにむきだしにな た。商人は低い方へころころと転がり、驚いて目をさました。おお 4

5. SFマガジン 1970年8月号

〈ニ〉はどうやら本気《そうなのか》とヒトはつぶやいた。 《難問だな》とヒトは苦笑しながらいった。 でそう尋ねているらしいのだ。 《〈河〉の存在を知らなくはなかった。しかし、それはごく一部分 でしかなかったようだ。しかも仮定的に考えられていた。それは外 ヒトは再び、〈海〉の様相をみた。 湾にそって流れる海岸流があった。巨大な時の潮だ。その潮は速宇宙へむかって旅立っていったスタードライ・ ( ーたちによって、こ の〈流れ〉の存在は気づかれていた。経験豊かな連中のある者は、 かった。だが、とヒトは・ほんやりと考えた。この世界で、速いとい ・ドライプ うことはどんな意味を持つのだろう。 あえて、この〈流れ〉に船をのりいれる。亜光速航法といわれてい 《この地形は沖積地ではないのか》とヒトはきいた。《かって、時るあれだ。また、運さえよければ、成功するワープ航法も、あるい ま、 の大河があったはずだ》 かような蛇行するより大きな〈河〉に船をのりいれたときおこ 《そうだ》と〈 = 〉はこたえた。《わたしは知らない。しかし、そる現象であったのだな。だが、時の〈河〉こそが、膨張する宇宙の 根源のカであったとは知らなかった》 れは存在していた》 《いまは、どこにあるのだ》 〈ニ〉はうなずいて語った。 みずみち セ / ト 《大河は蛇行して砂嘴の彼方へ水路をかえた》 《息づく脈動宇宙の収縮のとき、即ちあの聖オーガスチン時代の終 《自然にか》 期に、われわれの祖先は現われた。そして宇宙半径十億光年のカオ 《いや》と〈ニ〉はヒトの質問に驚きの念をこめていった。《水路スの中から、我々は創造されたのだといい伝えられている。それ以 来より、われわれ種族は、営々として、お前のスケールで三十億有 をかえたのは、われわれの一族だ》 余年、歴代の事業を受けついできたのだ。それは〈河〉がやがてな 《なぜ ! 》 くなり、宇宙生成の一つの周期の終るとき、即ちドジッターの宇宙 《〈河〉こそわれわれの最大の武器だからだ》 のときまで、つづけられるだろう : : : 》 《武器 ? 》 再び、〈海〉は、今一つの波堤の岩塊をくいちぎった。ヒトは自 《そうだ。武器だ。〈河〉こそが宇宙膨張の根源の力なのだ。あた かも河が陸地を拡げるように、時の〈河〉は、宇宙をおしひろげ分が冷静でありすぎることに気づいてかえって驚いた。 る。まあ、きくがよい。宇宙の拡張こそ、われら〈ハ〉一族にとっ 《人工の力が、自然な〈河〉の水路をかえた、そのために、この地 カオス て、これは天地創造以来の使命だからだ。われわれは〈河〉の〈堆域の自然的均衡が崩れたのだろうと思う。〈海〉は、その弱点をつ いてきたのだ。〈河〉が、この地点に供給していた内部物質の不足 積〉力を、その事業目的の最大の武器として利用してきた。お前た が、第一の原因だ。〈ニ〉よ、おれはこう考える。第一に〈潮〉の ちは、宇宙の中心区域から流れ出す無数の時の存在を知っているだ ろうか。その水系は、宇宙全域を覆いつくし、長大な宇宙発達の期方向をそらすこと。そのために小さな〈突堤〉を〈海〉へむか「て つき出すことだ。それが核となり、やがてその地点にもう一つの砂 間を通じて、絶えず、内部の〈物質〉を運び出してきた》 ナチェラル スダー

6. SFマガジン 1970年8月号

前たちは、一層宇宙の真理に近づいていたかもしれぬ。だが、この 《われわれ種族が、時間と空間の二元論を捨てて、時空連続体の概 問題は又にしよう》 念に到達しえたのは、アインシ = タインによってであると伝えられ 5 〈ニ〉は本題に立ちもどった。 ている。彼は彼なりに正しかったようだ。以来、長い長い空白の期 《さて、このタイム泥の実相だが、君たち高次元知覚を持たぬ知性間があった。その間、もつばら追求されたものは、物質の究極の姿 体にとっては、時は無限といえるかもしれぬ。球形上の一匹の蟻にだったのだ。数多くの素子が発見された。それと共に、時空構造の とって平面が無限であるように、あるいは、時は永劫回帰するであ真相も少しすっ究明されてきた。時間と物質とは別箇にあるもので ろうと考えた者もいたようだ。しかし、われら〈 ( 〉族にとってはなく、より高次な統一体であるという考えが : : : 》 は、時間は有限だ。有限であるばかりか、時は加工しうるもの、裁《そして、お前たちは、時空素子を発見した。われら高次元知 ・ヒエンス 断し、分割、集合させうるもの、それより巨大なエネルギーをもと性体とお前が邂逅する以前に : お前たちの限界を考慮すると りだしうるものなのた。つまり君たちの文明が物質を基礎においてき、それは又なんという奇蹟だろう。無論、正確さを欠いてはい なりたっているように、時こそ我々の基本単位なのだ》 る。としてもだ、それで宇宙の真相の一部にお前たちはせまりえた 《時をそのように考えていいのだろうか》とヒトは尋ねた。 のだ》 《その疑問こそ、お前たち種族の限界を証明するものなのだ。『思 《では、タイム泥の正体は、われわれのいう時空素子なのか》とヒ 想は種族の認識能力と連関がある』といった宇宙比較思想学の始トは尋ねた。 祖、新科学期初頭に現われた男の説 : : : 》 《 : : : といってよいかどうか。ある意味では純粋なそれらの素子の クレイ 《 >«アラマの『思想感覚相関説』のことか》 結合した分子状態の更に集合した、いわば時の粒子が、タイム泥の 《そうだ「た。 , その男は遂に認められずに死んだようだが、お前た一単位だというべきだろうか。ところで : ・ : ・》とへ = 〉はつづけ ちのスケールで幾世紀か早く生まれすぎたのだろう。しかし、彼はた。 完全ではなかったが、正鵠を射ていた》 《お前たちの技術では、かような地層に対してどのような施工法を とるのだ》 《かもしれないな。彼の思想の存在を知る者は皆無といってさえよ 『蜜蜂の思想』という一冊の小冊子を出したきり、他は何も書《そうだな。伝統的な工法では》とヒトはこたえた。《泥層などの かなか「たからな。だから、彼の思想は彼の死と共に消え失せた。軟弱地盤に対しては、通常、抗打工法、拾石工法、置換工法などが それは、きわめて暗示的な東洋的な冥想で彩られていたが、理解しある。むろん、実際の技術は多岐多様に進歩しているが。だが原則 えたものは誰一人としていなか 0 た。よくあることなのだ。いささ的には、この三工法に分類されるだろう。そしてそれを決定するの か早く生まれすぎたために狂人あっかいされる天才は》 は、現場の状況と規模、目的などできめられる》 とヒトは一息つくと先をつづけた。 《お前の意見をききたい》と〈ニ〉は卒直にいった。 クレイ

7. SFマガジン 1970年8月号

が発達するにちがいない。第一一に、崩壊部の下部に〈捨石〉をすというものはない。あなた方は、宇宙のあるかぎり生きつづけるの る。だが、並の〈捨石〉では、〈波〉が荒すぎてだめだ。われわれだから》 はこのようなとき多脚・フロックを使う》 秘渓の峡で、こうして行なわれた異なる世界の種族の邂逅は、ヒ 《それはなんだ》 トに大いなる知恵をさずけたようであった。 ダルマ 《プロックとプロックがお互いに噛みあって、連帯しあい、強固な ^ ニ〉の〈ウ〉と、ヒトの〈亜〉とは、共に同一の法によって律せ 基礎となるのだ。だが、あなた方に、それに代る材料がみつかるだられていそうにも思えた。 ろうか》 《手伝わにゃなるまい》とヒトは自らを納得させるように呟いた。 〈ニ〉は、しばらく沈黙していた。そして、重々しく《ある》とい 〈ニ〉はヒトに不死を約東したのである。生成、消減し、流転す っこ 0 る、宇宙の大輪廻劇に、〈ニ〉に従って参加する : 《タムをつかおう》 《やらねばなるまい》 《タム : ヒトは、その凝視を、〈海〉へむけた。 ヒトは耳を疑った。《それは配下の低次元人ではないのか》 《そうだ》と〈ニ〉は冷静にこたえた。 それにつづく日々、 いな、日々はもはやヒトの根源に合体し 《それはいけない》とヒトは抗議した。 ていたが、ヒトはめまぐるしく動く、〈ニ〉一党の多次元土木技術 《なぜか》 のなり行きを見守っていた。 〈ニ〉は冷静のままにいった。 それは、ヒトにとって、理解しがたく、あたかも、複雑なはめ絵 《タムが知性体だからなのか》 ・ハズルを解くときのように思われた。 《そうだ。タムを捨石に使うのは、人柱と同じではないか》 たとえば、工程だが、ノ 彼らのやり方は、まったく異様だった。 《であろうか》 あるとき、〈海〉の照りかえしの中に、蜃気楼のごとく、無数の はしけ 〈ニ〉は突然、柔和な情感をヒトに伝えてきた。 土運船が浮かびあがったかと思えば、それはこっぜんと消え、再び 《お前たちの倫理を、大宇宙の凡てに汎化させるのはよくない。タム新たな建設機械が、空に蝟集する。その機能もほとんど理解しがた にとって、それこそ、生きがいなのだ。タムもまた、われわれの大 く、また、姿かたちも異様だった。 事業のために創成された種族だ。タムは、そのために生きるのだ。 ただ、それらは、それそれに何らかの意味を持っているようだ お前にききたい。お前はなぜ生きるのだ。生きがいとは何なのだ》が、真の姿ではなく、ヒトに認識されるとき、一つ一つは表象とし 《あなた方にとっては、その存在そのものが、宇宙のメカニズムとてあるのやもしれぬ。この表象として認識されるそれらの外貌は、 共にあるのだな》とヒトはいっこ。 《なるほど、あなた方には終りあきらかに生き物、ときに巨大なる竜、怪獣の姿をとるーーーかと思 プンガージュ 8

8. SFマガジン 1970年8月号

19 70 年 8 月号目次 ( 一四五枚 ) アラン・ uJ ・ナしス 中問宇宙 地球の存亡はただひとり次元間を自由に往来できる幼い子供の両肩にかかっていた / デマ別中篇特集 特第ン言第いン尹ート 3 宇宙人 若い種族第を パラレル時問 を毎魔 超次元 大いなる正午 = アイザヅク , アシモフ 眉村・卓ー ウアン・み一 , オクト 新人登場 ( 七五枚 ) 。「。荒巻一義雄Ⅲ 今月のカラす一 ( 、ショートシ 41 ト・、 ~ を。、 自由への道 マリアナ 非常食糧 巻末特選 / グエル・シリーズ第六弾 / ( 九四枚 ) フリツツ・ライ、 ンオドア , 戸グスウ〔工「 - ル , 1 7 8 138 9

9. SFマガジン 1970年8月号

何を望んでいるのです ? 」 実業家が言った。「先生のおっしやる若さですな。わが種族にも 天文学者は躊躇した。だが言った。「あなたにはほんとうのことまだまだ昔のような若さがありますよ」 を申し上げましよう。かれらはわれわれの惑星より密度の高い惑星 . 「いや、しかし、われわれがあの子たちを急激に老いこませ、型に からやってきたのです。われわれには密度の低い原子が豊富にあり はめこんでしまうのです」 ます」 スリムが部屋に入ってきた。背後でドアがばたんとしまった。 天文学者は軽くたしなめるように、「何事だね」と言った。 「かれらはマグネシウムをほしがっているのですか ? 」 スリムはびくっとしたように顔をあげて立ちどまった。「ごめん 、え。炭素と水素です。つまり石炭と石油がほしいといってい なさい。だれもいないと思ったものですから。お邪魔してすみませ ます」 ん」かれの発音はけなけなほど正確だった。 「ほんとうですか ? 」 天文学者はあわてて言った。「宇宙航行と、それに必要な原子力実業家は言った、「どういたしまして、お若いの」 だが天文学者はかたくなに言った。「人のいない部屋に入るにし を有している生物が、なぜ石炭や石油を欲しがるのかとお説ねにな ても、ドアを乱暴にしめていいという法はない」 るでしようね。わたしはそれに答えることができません」 実業家は徴笑した。「わたしにはできますよ。それは先生のお話「ナンセンスですよ」と実業家は言いはった。「お子さんは何も壊 が真実であるれつきとした証拠ですな。表面的には原子力は石炭やしたわけではない。先生はお子さんを、ただ若いからというだけで 叱っていなさる。先生ご自身の見方で」 石油の使用を排除するかのように見えます。しかし石炭や石油は、 原子の燃焼によって得られるエネルギーとはまったく別個に、あら かれはスリムに言った。 「こちらへお出でなさい、お若いの」 ゆる有機化学の基礎原料として必要なのです。常に必要です。プラ スリムはのろのろと進みでた。 スチック、染料、調合薬、溶剤。工業はそれらなくしては存在しえ 「田舎はお気にめしましたかな、ええ ? 」 ない、たとえ原子力時代であろうとも。しかしながら、かれらがわ「はあ、とても、けっこうです」 「うちの伜はほうぼうご案内しましたかね ? 」 れわれに若い種族の災厄や苦難を売る代価として石炭や石油なら安 いものだというなら、わたしはこういいましよう、その商品はたと「はい。レッドは , ーーそのつまりーーー」 え無料でくれたって高いものだとね」 「いやいや。どうぞレッドと呼んでください。わたしもそう呼んで 天文学者は嘆息した。「子供たちがやってきました ! 」 いますよ。ところで、二人でどこへ行っていたのかな ? 」 スリムは目をそらした。「あのーーただ、あちこち歩きまわって 開いた窓からかれらの姿が見える。草原に突ったって何やらしき りに喋っている。実業家の息子がいわくありけにこちらを指さすいました」 と、天文学者の息子はうなずいて家に向って走りだした。 実業家は天文学者をかえりみた。「ほらごらんなさい、若さの好 3 2

10. SFマガジン 1970年8月号

いた。この発見こそが、〈ニ〉に、滝の鑿孔の原因を悟らせた。そ星系を支配する種族だった。彼らは、一つの遊星から、空間移行技 して、たとえ、現場に急行する非常時下であ 0 ても、技師〈 = 〉の術を身につけ、その恒星系の全域に進出して、一つの文明圏をつく っていたのだった。 好奇心からすれば、それは、見過せぬ発見であったのである。しか も、この好奇心こそが、〈ヒト〉と彼との出会を、実現させたので それは、次元的には低のミクロの宇宙文明でしかなかったが、 あった。 〈ニ〉にとっては、尺度の大小は事実上、無意味でもあった。 それは、〈ウ〉世界の智者たち無漏族のいう化石の一つに酷似し〈ハ〉族は、超時間的な存在であり、その身体構造そのものが時空 ていた。時おり、時の層状層にはさまれて、出品される異次元の化連続体ともいうべきであったし、同時に、彼らの認識カそのもの が、位相学的でもあったからだ。 あたかも、色盲者が、色相の弁別力に欠けるように、〈ニ〉は大 だが、それは、奇蹟的にも、〈ウ〉世界における意味では、死に なるものと小なるものの弁別能力を有していないともいいうる。事 きってはいなかったのであった。 むろん、それを目覚めさせるまで、〈 = 〉は細心の注意をはらっ実は、他の認識力が、それを補正するのだが、〈ニ〉の価値観から いうならば、一つの銀河宇宙と、石火岩中のフズリナとは、同一で て、必要な術をほどこさねばならなかった。ナル河の淵源に近く、 自生する神秘の藻類に、その眠れる化石をたつぶりと浸したあとあったのであった。 それゆえ、〈ニ〉は、このシンメトリックな五の突起物を有する で、〈ニ〉は〈素〉の再生装置にかけたのである。 形態に、異様さをお・ほえたし、また、その物性的な特性にあるとま 〈ニ〉の試みた施術は成功した。 ようのないその柔らかな充実は、か どいをさえ覚えたりした。いい 化石はよみがえった。 って経験したことのない物の性質であったのだ。 好奇心に満たされた〈ニ〉は、まちかねたように、その弱々しい ところで、無漏族の長老たちは、よく宇宙論の根拠に、自然と非 生き物に問いかけた。そして、知りえたのであった。それが〈ニ〉 自然の二元論をおく。彼ら種族内の論争は果しなく、決着のつけよ と同じく、自然改造者であったことを。 うもないのだが、自然宇宙観と人為宇宙観とはその二本の柱であっ おれは生きていたのか。こた 《苦しい。全身がしびれている 三川 いうまでもなく、この論争が果しないのは、それが一種の循環 こはどこだーー》と、もがきあがろうとするヒトをおしとどめ、 ー尸しカけ、またヒトの問いにこたえた。こうして、二つのであるからなのだ。自然宇宙があらかじめ存在し、〈ニ〉族ら、選 良の自然改造者たちが、それを改造し、維持し経営の任に当る : ・ 世界の者たちは、相互に理解を深めていったのであった。 あるいは別説では、自然宇宙とは、原因的にあらかじめ存在す ヒトは土木技師だと名乗った。 〈亜〉の内側の世界に、一つの宇宙があり、ヒトは、その一つの恒るものではなくして、永劫の輪廻の一環として、自然改造者たち