考え - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1970年8月号
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1. SFマガジン 1970年8月号

土地でい見たこともないような珍しい動物を発見するのは普通のこかっていた。あの子たちはあの子たちなりの考えで、われわれによ とではないでしよう」 かれと世話をしてくれたのだ。われわれはかれらを攻撃するつもり まなかった。 「申しわけないが。いまそれを議論するのはよしましよう 「その珍しい動物が、夜中に着陸したのでなければ」 攻撃する ? と実業家は思った。そして思考を集中しながら声に 出して言った。 実業家はばっと夫人から離れた。「何をいわれるのか ~ 」 「納屋へ行ったほうがよかろうと思いますが : : : 」 ええ、そうですと答えがかえってきた。われわれは武器をもって 実業家は一瞬目をむいたが、やおらくるりと背をむけると、あた ふたと走りだした。天文学者もその後に続いた。女の泣き声があが籠の中のそっとするような小さな生き物の一つが金属製の棒のよ ったがだれもかえりみるものはなかった。 うなものをもちあげると、籠の天井にとっ・せん穴があき、そして納 屋の天井にも穴があいた。二つの穴はまわりの木が焼け焦けていた。 手軽に修理ができればよいが、と生物は思語した。 実業家は、自分はとうてい直接思語はできないことに気づいた。 実業家は凝視し、天文学者を見、ふたたびふりかえって凝視した。 かれは天文学者をかえりみた。「するとかれらは武器をもっていな 「これ、ですか ? 」 がら、おめおめ籠の中に入れられたというのですか ? そこのとこ 「これです」と天文学者は言った。「われわれの姿が、かれらにとろがよく理解できないが」 って奇怪で寒気のするものであることは疑いありません , だが静かな思語がかえった、われわれは知性ある種族の若者を傷 「けっこうな待遇をしたものだ ! かれらをつまみあげて、籠の中つけたくはなかった。 に入れ、草だの生の肉だのあたえていたとは。かれらとどうやって 話すのか教えて下さい 「それはちょっと時間がかかります。かれらに向って考えるので す。耳をすませて聴くのです。すると、あなたのところへ届きま 月夜だった。実業家は夕食を食べそこなったが、その事実にまだ 気づいていなかった。 す。すぐにではありませんが」 実業家はやってみた。一心に顔をしかめながら、くりかえしくり かれは言った。「あの宇宙船はほんとうに飛ぶでしようか ? 」 「かれらが飛ぶと言うなら」と天文学者は言った。「飛ぶでしょ かえし頭の中で言った、子供たちはあなた方のことを知らなかった う。手遅れにならないうちに、もう一度戻ってきてもらいたいもの のです。 すると相手の考えがとっ・せんかれの頭にとどいた。それはよくわです」 2 9

2. SFマガジン 1970年8月号

れている。住民とは接触ずみである。かれらはグロテスクなほど巨あったが、その結果はご存知ですね。内向。退行。漸進的デカダン 大だが、温厚で好戦的ではなかった。かっては華々しいテクノロジ スと柔弱性の増大 , イを有していたのであるが、これらテクノロジイの行きつくところ「こんな怪物どもでも ~ 」 に行きっかなかったことは明らかである。きっとすばらしい市場に 「原理は同しです」 なるだろう。 探険家がエンジンの重い不調音に気づいたのはまさにそのときで ある。 それは途方もなく広大な世界であった。ことに商人は舌をまい た。かれは前もってこの惑星の直径を示す数字を知っていたが、一一 かれは眉をひそめた。「ちょっと下降速度が早すぎる」 光速秒の高度でかれはビジプレートの前に立って呟いたものだ。 数時間前に着陸の危険性が検討された。目標の惑星は酸素ー水の 「信じられない ! 」と。 世界にしては大きかった。居住不可能の水素ーアンモニア星ほどの 「なに、これより大きなのがいくらでもありますよ」と探険家は言大きさはなく、低密度のために表面重力がかなりノーマルにはなっ った。探険家がすぐに感心してしまっては話にならない。 ているものの、距離に伴う引力の弱まり方が緩慢である。要するに 「住民はいるのかね ? 」 重力ポテンシャルが高く、船の計算機はこのようなポテンシャルの 「ええ」 領域における場合の着陸軌道を算出しうるような能力をもたない標 「まあ、あんたんとこの惑星なら、あの広い海におとして沈められ準型である。ということはパイロットは手動装置を使わねばならな るわな」 いということである。 探険家は苦笑した。たいがいの星より小さなかれの故郷アルクト もっと高性能の型を備えるのが賢明であろうが、それは文明の果 ゥールスに対する軽い皮肉なのである。かれは言った。「それほどてへの飛行を宣伝するようなもので、秘密の暴露、ひいては時間の でもないですがね」 損失ということになる。商人は即時着陸を要求した。 商人は考えを発展させた。「そして住民はこの世界に比例して大商人はいまや自己の地位を守る必要を感じたのであった。噛みつ きいのだな ? 」いまとなってはその情報があまりそっとしないよう くような声でかれは探険家にいった。「あのパイロットは自分の仕 な口ぶりだった。 事をわきまえているのかね ? もう二度もあんたを無事におろした 「われわれの身長の十倍ほどです」 ことがあるというのに」 「かれらは友好的なのだね ? 」 そうさ、と探険家は胸のうちで言った。偵察艇でね、こんな操縦 「それはどうかなあ。異星の知性生物との間の交友は測りがたいも困難な宇宙船じゃなかったよ。口に出しては何も言わなかった。 のですからね。まあ危険なことはないでしよう。われわれは核戦争かれはビジ。フレートに目をあてていた。異常なス。ヒードで降下し 5 期以後の段階で勢力の均衡を維持できないでいる種族にかずかず出ている。・もはや疑う余地はない。異常な速さだ。

3. SFマガジン 1970年8月号

《このままだと、遠からぬうちに、全宇宙の内奥ふかく侵入し、そここ以外にないぞ。お前をみつけた〈秘〉の出口 : めだ、ここでくいとめるのは。かえ「て、内陸への短絡路を、あの の災害は〈有史〉以来の規模に達するだろう。 〈海〉に教えてやるようなものだ。ここに築堤すれば、きっと〈海〉 《どうするつもりだ》とヒトはいった。 〈ニ〉の沈鬱な情緒がヒト を包みこんだ。 の本能を刺激する。やつは、きっと、この〈秘〉の水路をさかの・ほ って、〈ウ〉世界の中心部へなだれこむだろう。もしそんなことが 《いっそのこと、このなぎさの脆弱部から一歩後退したらどうだ》 《撤退するのか》 起ったとすれば : : : 》 《そうだ。この後の沖積地からの後退も止むをえまい》 とっちみち、〈海〉は、ここをみつけだ 《だが、他に方法はない。・ 《だが、それからどうする》 すにちがいないさ。だから先手を打つのだ。〈ニ〉よ。むろん、な 《おれは、前から一度この域の全貌を知りたいと思っていた》とヒまじな仕事ではだめだ。より巨大なやつをここに造る : : : 》 《お前は、一体なにを考えているのだ》と〈ニ〉は驚きの声を響か ーした。《〈ニ〉よ。地図のようなものはないか》 せた。《まさか、お前は、わたしが今、思いついたその案を : : : 》 《地図 ? : ・おお、地図か。ある : : : 》 それは、認識の能力をこえていた。超トボロギー的図形をおもわ《そうさ。その通りさ : : : 》 せるのだ。 《だが、万一できたとしても、その結果おこる波及効果を考えたの か》 《〈ニ〉よ》とヒトは要求した。 《ちょっと手伝ってくれ。こいつを塗りわけて、地質図、そう、時《やってみなければ、わからないさ。おれは決断しなければならな いとき、いつもそう自分にいいきかせる。だが、こいつは、確かに の地相図にするのだ》 一世一代の大ばくちだ・せ》 《よかろう。お安い御用だ》 〈ニ〉はためらわず、よどみなく触手をもって精密に作業した。・ 《で、どうする》と〈ニ〉もいささか興奮しはじめていた。 《これでどうだ》 《おれの考えはこうだ》とヒトは、冷静な口調で、その案をのべは 《奇怪だな。四色原理を超越してやがる》とヒトはつぶやいて、でじめた。 きあがった時質図を凝視した。 《おれは、あの〈亜〉の大岩壁をきりくずして、谷を埋めたらどう 《〈ニ〉よ。もう一度手伝ってくれ。こいつを読むのは、おれの手かと考えたのだ。あの大岩壁を土取場として、大量の〈亜〉を構成 、、よ。する硬い素材を築堤の基礎におけぬかと思ったのだ 0 で、その段取 にあまるよ。どこか、〈海〉をくいとめるにいい場所はなしカオ 。そこをりだけれども : : : 》 たとえば、堅牢な時質と時質とがあい交叉するところ : ・ 見つけだして、その地点に、最後の拠点を築くのだ》 《面白い。お前の考えを詳しく説明してくれ》と〈ニ〉はのりだす 《なるほど》と〈ニ〉はうなずいた。それから叫んだ。《ここだ。 ようにして尋ねた。

4. SFマガジン 1970年8月号

「あんたたちはよっぽどの間抜けか、さもなきや腰抜けだね。われいなかった。そして われは三人きりなんだよ、それも島の上に。われわれには島抜けす いまだ ! 虎のすばやさで、そいつはどっとタレイトンに跳びか 6 る方法はない。たとえわたしがこの小屋を出たって、外はこれ、こ かった。相手のつり上がった目、叫ぼうとあんぐりあけたロをちら のとおりの暴風だーーひどい、みじめなひと夜を過ごして、とにかと認めたが、次の瞬間彼を床からぐいと持ちあけるや、アッという く朝になればあんたたちに見つかってしまう。どういうつもりなん 間もあらばこそ、デントンめがけて投げつけていた。 だねーーーひと晩中起きつばなしで、わたしを見張っているなんて ギョとなって思わずあげたデントンのしやがれた唸り声と、びつ くり仰天したタレイトンの・ ( リトンの叫びとが交錯し、ひとつに混 「こいつは驚いた ! 」タレイトン がい 0 た。「いい考えがある。やじり合 0 た苦悶の悲鳴とな「てあたりにこだました。と、一一人はグ つをお「ぼり出して、内から鍵をかけておきや、おれたち二人ともシャとぶつかりあい、折り重なるようにして壁に激突した。 少しは眠れるぜ」 海獣は、二人のところにとんでいき、ポロポロに引き裂いてやり 海獣の胸は希望に高鳴った。が、デントンがかぶりを横に振る たくてうずうずしたが、いまや二人が死んだかどうかをたしかめる と、それも鉛のように沈んでしま 0 た。「だめだ、気ちがい犬にそ猶予すらなか 0 た。一一分の制限時間はと「くの昔にすぎていた。も んなことができるものか。だが、やつのい 0 たことで、いい考えがう遅いーー・すぐさま逃走にかかる以外、なにをするにも遅すぎた。 浮かんだ」その声がふざけた調子をおびる。「タレイトン、この殿海獣はひ 0 たくるようにドアを開け、そして、もろにガッンと = 方に、どういうおとり扱いをさせていただくかお示しするんだな。 1 リスにぶちあたった。・、 / ランスを失って後ろへはねとばされてい ほら、おまえのうしろのクギから。ープをと「て、やつを縛りあげた。周章狼狽のその瞬間、海獣はかしらの背後に仁王立ちするプ。 るんだ。ことがおわるまで、おれはこのオハジキで見張っている。 ギ = の姿をみとめた。ほかのやつらも集まってくる。 そうすりや、おかしなことは起らんだろう。わかったな、よそ者、 さもないとお見舞いするぜ」 夜のとばりに包まれ、荒れ狂うあらしを前に、その一瞬は永遠と 海獣は耳ざわりな声でい 0 た。「タレイトンに突 0 かか 0 て、きも思われた。小屋の内部から洩れるオレンジ色の光は、暴風雨の悪 みから背中を射たれるなんて、そんな・ ( 力な真似はーー・」 夢の猛襲に抗すべく低く身をこごめた男たちのギョッとなった顔 だが、海獣は懸命に考えた。ほんのつかの間でもアメリカ人があ . に、なんとも物凄い、鬼気せまるいろあいを投げかけていた。海獣 の拳銃をさえぎってくれるだろう。たとえさえぎってくれなかった がもがき立ち直るとき、一条の稲妻がジグザグに突っ走り、その痩 として、どうということはない。彼がそばへくるのだ。はじめて、 せて黒ずんだ残忍な顔を彼らの前に照らし出した。 二人のうちの一人が近づいてくるのだ。それで十分。どちらも、こ仰天したのは同じでも、底知れずたくましい、鑄のような筋力が れからどんな猛威に出くわすことになるか、まる 0 きり気づいては回復したのは先だ 0 た。海獣は「ーリスに打ちかか 0 た。目にもと

5. SFマガジン 1970年8月号

このばらしいことよ ! お前が戻ってきたら、 「攻撃作戦用の基地として、明らかに、 つか夕食に招待するからそういってくれよ」 人気のない小さな星系はうってつけです」 「ありがとうございます、陛下。ではただち ザルドン王国艦隊の最高司令官カト・ズー に偵察隊を派遣します。すべてが明らかにな ルは、天体図の一点を触手で刺した。 「ここに基地を建設しさえすれば、太陽系のり次第、一カ月以内に基地建設にとりかかる ことができます。重兵器類をとりつけさえす 全側面が、わが軍からみて丸出しも同然にな るのです。ここもここも、そしてここも、われば、われわれは難攻不落です。その時に は、たっぷりと食べられますよ。おお、お強 が軍はたやすく急襲することができます」か れは次から次へと星区を指し示した。「しきかたよ ! 」 かもやつらには、わが軍を打ち破るだけの艦ザルドンのゴーレン王は幸福そうにゲップ 船を一個所に集結させることは不可能でしょをもらし、眼を閉じて、すばらしい晩餐を夢 みた。 う。どうお考えですか、陛下 ? 一週間後、特使が、やっかいなニュースを ゴーレン王は、太鼓腹を軽くたたいた。 「きっとうまい食事ができるだろうな。王室叫びながら戻ってきた。最高司令官は、その 報告書によく目を通してから、添えてある数 調理部には一番太ったやつを取っておくよう に心がけてくれよ」オレンジ色のよだれが、葉の写真をひつつかんで、ゴーレン王の前に 急ぎまかり出た。 ロの両側からたれ落ちた。「人間の尻肉のロ ーストしたやつを日に三度三度か。なんとす「あの星系はすでにいつばいです、陛下、人 0 8

6. SFマガジン 1970年8月号

スリムが言った。「待って ! 」 9 レッドはほっとした。「何かが噛みついたとでもいうのかい ? 」 3 「片方のやつが何かをもっているよ、鉄みたいなもの」 かれらを〈惑星の住民〉として見るのは、また別だった。動物と「どこに」 してなら、おもしろかった。〈惑星の住民〉として見るのは怖しか「ほら、そこ。前にも見たけれど、体の一部かと思っていたんだ。 「た。かれらの目は、天色のかわいい目だ「たが、いまは、あらゆでもこれが〈惑星の住民〉だとすると、これは砕解銃だ」 る敵意を宿してこちらを見つめているように思われた。 「何だって ? 」 「何か音をたてている」とスリムがささやいた。 「戦前の本で読んだことがあるんだ。宇宙船にのってくる連中は、 「何か喋っているんだろ」とレッドが言った。前にも聞いたそれら たいてい砕解銃をもっているんだって。これに狙われると、体がこ の音が、以前には何の意味ももたなかったというのは奇妙なこと つばみじんになってしまうんだ」 だ。かれは一歩も前に出られなかった。スリムも同様だった。 「いままではおれたちを狙ってやしなかったよ」とレッドはうわの おおいは取りのけられたが、かれらはただ見つめるばかりだっ 空で指さした。 た。ひき肉に触れた形跡がないのにスリムは気づいた。 「そんなこと知るもんか。ここにいてこつばみじんになるのはごめ スリムは言った、「何とかしないのか ? 」 んだよ。とうさんを連れてくるよ」 「お前は ? 」 「おくびよう猫。腰ぬけのおくびよう猫 , 「きみが見つけたんだろう」 「いいさ。何でも好きな名前で呼ぶがいいや。だけど、いま、こい 「こんどはお前の番だ」 つらに手出しをするとこつばみじんにされちゃうそ。待っていたほ 「そんなことないよ。きみが見つけたんだもの。きみの責任だよ、 A つ、力「しし 、よ。それからこれはみんな、きみの責任だからね」 みんな。ぼくはただ見ていただけだ」 かれは納屋の表戸に通じる狭いらせん階段の方へ駈けよったが、 「お前だって仲間に入ったじゃよ、 オしか、スリム。それはわかってい 降り口で立ちどまると後じさりをはじめた。 レッド るだろうな」 の母親がの・ほってきたのだ。はあはあ息をきらせながら、 「知るもんか。きみが見つけたんだ。みんなが・ほくたちを探しにこ客であるスリムに硬ばった笑顔を向けた。 レッドー 「レッドー こへ来たら、ぼくはそう言うよ」 あんた、そこにいるの ? かくれてもだめ レッドは言った。「いいよ、わかったよ」その結果がどうなるかよ。ここにあれを隠してあるのはわかっているんですからね。あん という考えがとにかくかれを勇気づけた。かれは籠の戸に手を伸ば たが肉をもってここへ駈けこんだところをコックが見ているんだか ら」

7. SFマガジン 1970年8月号

レッドは渋っ面をした。そして鳥籠を振子のように動かした。 それだけだった。 「お前、こわいんだろう」 しばらくして実業家が言った。「こんなことを申してははなはだ 「ううん、こわかないよ。たださーー・」 失礼だと思うが。先生が、人をかつぐために、これど熱意をおみ 「小さすぎるなんてことないよ、大丈夫だってば。ただね、ひとっせになるとは考えられない。先生はほんとうにかれらと話をなさっ だけ困ったことがあるんだよ」 たので ? 」 「なに ? 」 「お話した通りです。少くともある意味で、かれらは思考を伝達す 「サーカスがくるまでここで飼っておかなくちゃならないだろ ? るのです」 それまで何を食わせておいたらいいか考えなくちゃ」 「いただいたお手紙から、そうであろうと推測しましたがね。しか 鳥籠がゆらゆらと左右に揺れうごく間、とじこめられている小さしどのようにしてですか ? 」 な動物は籠の桟にしがみつきながら少年たちに向ってちょこまかし「それはよくわからないのです。かれらに訊ねてみましたが、どう た寄妙な動作で訴えかけるようなしぐさをしているーーーまるで知性も漠然とした答しか得られませんで。あるいはわたしの方で理解が のある生き物のように。 とどかないのかもしれません。思考を凝集させるプロジェクターが ありまして、その上にぜひとも必要なのは、送信者と受信者の間の 2 集中です。わたしの場合もかれらがわたしに向って意志を伝達しょ うとしているのに気づくまでにはだいぶ時間がかかりました。あの 天文学者は礼儀正しい物腰で食堂に入ってきた。ひどくしゃちこような思考伝達機は、かれらがわれわれに提供できる科学文明の一 ばっている。 部かもしれません , かれは言った。「お子さんはどちらにおられます ? 伜が部屋に 「まあまあ」と実業家は言った。「しかしそれが社会にもたらす変 見えませんが」 化についてお考えになって下さい。思考伝達機とは ! 実業家は微笑した。「だいぶ前から外にとびだしていますよ。で「いけませんか ? 変化はわれわれにとって望ましいものです」 もさいぜん女どもが朝食をむりやり食べさせましたから、ご心配に 「わたしはそうは思わない」 は及びませんよ。若さですな。先生、若さですよ ! 」 「変化が歓迎されなかったのは昔のことです」と天文学者は言っ 「若さ ! 」その言葉は天文学者を気重くさせたようだった。 た。「種族も個体と同じく老いるものですからね」 かれらは黙々と朝食をとった。実業家が口をきった。「連中はほ実業家は窓を指さした。「あの道路をごらんなさい。あれは戦前 ノーマルな日和に見えますが」 んとに来ますかね。今日もごく に建設されたものだ。正確な時日は知りませんが。建設当時の姿の 天文学者は言った。「来ます」 ままです。きようびあれと同じものを作ることは不可能でしよう。 さん 2 一

8. SFマガジン 1970年8月号

で、おまえたちはここでなにをしているのだ ? 」 へ滑りおち、一瞬のうちに消えてなくなった。 「あいかわらずテストを繰り返している。ただ、もうちょっと組織マッケヴォイが悲鳴をあげた。打撃のために目がとび出すほど見 たててね。このビルをひとまわりしたら、かなり金目のガラクタ類びらかれていた。技師たちを押しのけて、再現装の中をのぞきこ 「なんとい をたくさん集められるだろうさ」かれはべンチの上に投けだしてあんだ。「馬鹿もの ! 」と、かれは声をからして叫んだ。 るガラクタ類を指し示しながら、そういった。「まず転送するまえう馬鹿なまねを」 に、物体の状況をノートしておいて、転送後にその変化を記録する「でも大丈夫ですよ、いままでのはちゃんとーー」 ようにしてる。起こった変化をなるべく順序だてて研究するため 「馬鹿ー・万がいちにも書類が出てこなかったらどうする気だー 「なにか分かったのか ? 」 かれは装置の中をのぞきこんでから、手を入れて模索を開始し 「さつばりだね。とにかく変化の程度があまりにも雑多すぎて、ほ とほと手を焼いている始末だ。なかには出てこないものもあるん「フリツツアー ! 電話でオペレーターを呼べ ! 」 だ。そこでさ、正常な作動がおこなえるように配線を手なおしして ーがかれの顔をみつめた。 るんだが、まだ効果があがらん」 「おい、はやく書類を出すんだ。はやく ! 事故はないか調べてみ マッケヴォイが声をかけた。「ところで、メリーはどうした ? あいっから、なにか知らせがあったか ? 」 「出ないそ、どうするんだ」マッケヴォイが悲鳴をあげた。「なに もない 「ああ、あったよ。一時間ほどまえ電話を入れてきた。マサチュー ここにはなにもない ! 」 セッツにいるそうだ。なんでもスプリングフィールドの近くらし い。なにか考えがあるらしくて、移送機を停止させてくれと頼んで アレキサンダー・メリーは、マサチューセッツにある農場の一室 きた。だが、おれはまず所長のきみに相談してからと思ってね。そで両脚を投げだし、ひとっため息をついてから、黒い髪の毛を掻き れからのことは分からんが、それがどうかしたのか ? 」 むしった。「なるほど、ここがあなたの実験室というわけですか」 ゲイル・ベネディクトが、盆の上にコーヒーを載せて、キッチン とっ・せんマッケヴォイの顔から血の気がひいた。片手で机の角を から姿をあらわした。「そうよ」と、彼女はいった。「ここは街道 万力のように握りしめた。かれは口から泡をとばして移送機のそば にいる技師へ大声をかけた。「装置を停めろ ! ー声が咽喉にひっか からもはなれているし、すこし田舎びたところだけれど、そのかわ かって、かすれ声にかわっている。かれはネコのように机の上へ跳り地価はとびつきり安いの。だから、ここに住むことにしたわけ」 彼女は、相手の正面に置いてある椅子へ腰をおろした。「とにかく 0 び乗って、技師の手を荒つばく払いのけた。 だが、すべては後のまつりだった。黒い書類入れは送波装置の上来てくださってうれしいわ、メリー」

9. SFマガジン 1970年8月号

選びとると、下のほうのロでその頭を噛みち 間たちで ! 」 「そりや、、。 まるまると太ったやつを一つぎった。「どうしてそうなるかね」とかれは 上のロで言った。 がいすぐ送ってくれ , 「申しわけありませんが、陛下、それは不可「何がですか ? 」 能です。わが軍はやつらを傷めつけることが「防御スクリーンが消えるかどうか、という ことだ。やつらの原子炉なら、向う百年ぐら できないのです。やつらは宇宙ステーション いはエネルギーを出しつづけられるだろう」 を建ててしまいました。防御スクリーンっき の重い型でわが軍が何を投げても遮ってし「ですが、陛下、スクリーン発生機というや まうのです。ステーションのまわりを小艦隊つは取扱いがむずかしいものでして。つきっ で封鎖しましたが、事は急を要します。送信きりの世話が必要なのです。面倒をみてやる 装置をシャットアウトしないうちに、やつら人間がいなければ、自動的に閉じてしまいま す。そして二カ月とたたぬうちに生き残って は救援要請を出してしまったのです」 いる人間はひとりもいなくなるでしよう。み ゴ 1 レン王は薄紫色に青ざめた。「それな ら」かれは静かに言った。「晩餐には、お前んな餓死してしまうでしよう。わが軍は昨 を食べよう。人間があの星系の支配権を握っ日、やつらの補給船を捕獲しましたからね . たとなるとわれわれの全側面がやつらに丸出「そいつは好かんね。第一に、餓死した人間 など食えたものじゃない。第二に、やつらの しになるわけだからな ! 」 「まだ希望はございますよ、陛下」カト・ズ救助艦隊がやってくるのに一カ月もかからん ールはあわてて言った。「宇宙ステーションだろう。君は二カ月と言ったようだがね。も はまだ部分的にしか完成しておりません。そっとうまい手を打たなけりゃならんそ、カ ト・ズール。さもないとタ方までにお前はフ してわれわれの判断しうる限りでは、あそこ リカッセに変わることになるそ ! 」 にいるのは建設隊だけです。防御兵器はまだ シチュ 1 の鍋が近づいてくるのを見て、カ とりつけられていません。あのスクリーンさ ・ズールは大急ぎで考えを巡らした。やっ え消えれば、やつらを手に入れるのはかんた んです。ステーションはわが軍の手で強化でと考えついたときには、もう鍋が着いていた。 きるし、そうなればあの星系の支配権はわれ「陛下、人生はまさに」彼は尊大ぶった言い 方をした。「食うか食われるか、ですな」 われのものです」 ゴーレン王は、くねりまわるグ 1 ・ハを盛っ 「その通りだ」ゴレン王は言った。「そしに た銀の鉢に手を伸ばし、とりわけ太ったのをて、お前がわしを食べるなどということは大

10. SFマガジン 1970年8月号

それも、徒労だった。 静さを失って、ののしった。「畜生 ! あんな奴らに馬鹿にされた オデ、セウスなる亜文明人は、まず三人の部下を派遣して様子を 8 ままでいられるか ! 今に見ろ。チャンスを狙って、あいつらをコ さぐらせ、かれらが饗応にあずかって白痴みたいになったのをたし ケにしてやるそ ! 」 かめると、泣き叫ぶ被害者をカずくで船にひきずり込んでしばりあ 「それにしてもさア、ちょっとたいしたもんじゃない ? 」 いつになくキアウェインがそんなことをいったので、。ヒッツはまげ、即刻、出帆したのである。 「何という用心深い奴だろう」 すますいきりたった。 いまいましげに、。ヒッツが呟いた。 嵐が終ると、ふつうの北風になった。亜文明人たちは、夜明けと ハークには、どうにも信じられなかった。亜文明人というのは本 ともに帆柱を立て、白い帆を張った。 岬の南端をまわるころから、風と海流が、かなりのスビードで、質的には野蛮人なので、ときたま知性らしいものをきらめかせる程 : こうもあざやかに裏をかかれ 船団を西南へ西南へと押しやりはじめた。亜文明人たちは、はじめ度の連中だと思い込んでいたのに : ・ のうち何とかして、その方向を転じようとしたが、どうしようもなるとは、考えもしなかったのだ。 く、やがて逆らうのをやめた。 だが、ムラの薄笑いを見れば、やめるわけには行かない。 あらゆる条件を考慮して、次にオデュセウスがたどりつくであろ 小刻みに跳時を繰返しながら、五人は、かれらを追いつづけた。 流九日めに ( といっても追跡者たちにとっては、実質二時間そうと予測される島に、。ヒッツのいう決定的環境を作りだす作業がは じまった。 こそこにしかならないが ) 船団はひとつの陸地に到達した。 五人は船の連中が上陸準備にかかっているあいだに、その土地を奉仕者の要請に応じてコン。ヒ、ーターが、時間を超えて送り込ん で来たのは、身のたけ二十メートルもありそうな一つの眼の巨人の ざっと調べた。 一群で、当座の食用の羊群もそえられていた。 「チャンスだ ! 」 あらかじめ掘っておいた洞穴へ、その合成人間たちが入って行く 土着の人々が、おかしな植物を常食にしているのを知ると、ビッ ークにとっても、あまり気持のいいものではなか ツは興奮した。「奴らはいやでもこれを食べるほかないだろう。このを見るのは、 ( はじめて食べるこれが、どんな味をしった。テナインなどはビッツのいないときに、 こでは主食なんだからな ! ていても、奴らは不思議には思わないはずだ。つまりーーー忘却剤を「有職者なんて立場にしがみついていると、ああなっちゃうのね。 どうやら彼には、目的に合わせて過程をでっちあけることしかでき くらわせる絶好の機会だ。そうじゃないかね ? 」 ないみたいよ」 五人は、見馴れぬ船団を怒らせまいと、あわてて歓待の用意をは と、ささやいたくらいだ。 じめた原住民の中へ姿を消してまじり込み、その植物に片つばしか 準備万端ととのってから二日後の夜、予測どおり船団は島につい ら忘却剤を注入してまわった。