ハヤカワ・ノヴェルズ / 最新刊 怒りの学園 マドレーヌ・シェイナー / 佐和誠訳¥ 500 を ゲットーの黒人高校にひとにぎりの白人生彳走 か、編入され、不穏な空気か、高まるさなか、赴 任を命ぜられた一黒人教師。教師として、人 間として、黒人として生き抜く男を描きなか、 ら人種問題を、教育問題を鋭く弾劾した『暴 カ教室』以来のショッキングな作品。ュナイ ト映画『怒りを胸に、り返れ ! 』の原作。 弧独の刻 ( 仮題 ) フランシス・クリフォード / 永井淳訳予 \ 53 ① 国防省の兵器調整音にに勤めるランカスターは 有育旨で、勤勉なサラリーマンだった。もの解 りのよい一止司、音 5 内の派閥争い、初めて得た 恋人。毎日は多少の . 起伏を混えて平不慧に過ぎ 孤独とヨ国青のスノヾイの - 世界 てし、ったカミ、・・ を、意表をつくどんでん返しのうちに描く、 『ネ果のランナー』の作者の本格スノヾイノト説ー ■ 1969 年度ノーベル賞受賞作家の処女長編 フ イ マ サミュエル・べケット / 三輪秀彦訳¥ 580 『マーフイ』はイ也のべケットの作品にくら , ヾて何より も面白い / ト説である。ますプラック・ユーモアとして つぎにく追跡 / 」、説 > として、・最後にサルトノレ、カミュ に通しる形而上学的 / ト説として。 ( 好評第 4 版 )
ハヤカワ・ノヴェルズ / 最新刊 ノーマン・メイラー 現代アメリカ文学の最高峰 ! 第 2 回配本・好評発売中 夜の軍隊 山西英一訳¥ 1 , 500 ペンタゴン反戦行進に参カ日し、逮孑南さオしたメイラーは、 釈放後、湧きあか、る怒りを、タイプライターに叩きつけ た。そして、その燃えたぎる文章は単に一つのドキュメ ントカ、らを小説」ないし「歴史」にまで昇華せしめた 全米図書賞を受賞し、処女作『裸者と死者』をもしのぐ 傑作と絶賛される、メイラー最大の問題作 ! 0 なぜぼくらは 邦高忠二訳 / ¥ 1000 ヴェトナムへ行くのか ? いわば、これは機関銃のように発射される猥語で語られ た現代への挑戦である。 ー士売新聞評 「なせヴェトナムへ行くのか」という問いに底なるアメ リカ的な衝動の面から照明を与える。 東京新聞評 0 ノーマン・メイラー最新作全巻全容 可なぜほ、くらはヴェトナムへ行くのか ? , Ⅱ夜の軍隊 Ⅲ月にともる火Ⅳ偶像と蛸 v マイアミとシカゴの包囲 * 印は既刊
京・牛込柳町の一酸化炭素・鉛害問題》水俣病患者に対する保障裁定の わが国には、公害対策基本法をはじめとして、大気汚染防止法、 - ばい煙等 決定と、このところ、企業責任の所在をめぐる公害問題一般についての関心規制法、水質保全法、下水道法、海水油濁防止法、騒音規制法、工業用水法 が、いままでにないほどの盛り上りをみせている。 その他さまざまの法令、地方条令などがあり、生活環境を汚染からまもるた ーこれは、ある意味では、歓迎すべき傾向だといってもよいのだが、しか めの基準や規制が行なわれている。そして実際、これらの規制の実施によっ し、一般の反応を見ていると、まだこれを文字通り公害 public nuisa ・ て、ある程度の効果はあがり、所によっては状況は改善されつつあるという nce としは捉えずに、不幸ではあるが、他人事の・・ーー自分とは直接関係の ・ : だが、それらが、法的拘束力がよわい上に、何よりも現状補修策を一歩 ない特定 - の地区の災害ととっているむきがあるように思われる。つまり、柳も出ないことは、専門家の指摘をまつまでもなく、明らかだ。 町の場合「犯人は多量の鉛をふくむ ( イオクタン・ガソリンであり、水俣病 しかも、こうした事情は、けっしてわが国だけではない。たとえば、一酸 の場合は「ある種の工場の流した廃液や、農薬のなかのメチル水銀化合物で 化炭素やばい塵を原因とするスモッグは、一九五二年に死者四〇〇〇人とい あって・・ーそれさえ処理すれば問題はかたづく、と考えているように見える うおそるべき被害者をだしたロンドンを筆頭に、ニューヨーク、シカゴ、ロ のだ。 サンゼルスなどの大都市の共通の悩みのたねとなっているし、河川の汚染 もちろん、それは、直接的にはその通り真実だろう。 も、西ドイツのルール工業地帯のライン川、アメリカ、カナダの五大湖 自動車産業の猛烈な競合が、高圧縮比のエンジンを要求し、その結果ハイ とくにエリー湖ーーや、ストックホルム湾などが、あまりにも有名である。 オクタンのガソリンをーーー千エチル鉛を添加物とする強化ガソリンの、無責 この点では、社会主義国も例外ではなく、モスクワや、チェコスロ・ハキャ 任な阪売合戦をひきおこしたのは、かくれもない事実である。また、水俣病の工業地帯の都市の硫黄酸化物による大気汚染は、わが国の東京、大阪より をはじめ、阿加野川流域の有機水銀中毒事件や、神通川流域のカドミウムに やや高めといわれているほどだし、黒海の汚染も、かなりひどいものらしい よるイタイイタイ病事件、さらには、硫黄酸化物と浮遊ばい塵による四日市 この事実は、公害が、資本主義国とか社会主義国という体制の問題を超越 ぜんそく事件などが、特定の工業やコンビナートによってひきおこされた産した問題であることのよい例であろう。 業公害であることは、すでに実証ずみである。こうした事件は、日本以外の 各国はもちろん、それそれ、きびしい法令や規制を設けあるいはさらに強 ところでは起っていない。 この事実から、経済成長を至上命令とし、 化して、公害間題を解決しようとしているが、真の意味で問題の抜本的な対 の増大を、国力の唯一最高の基準として、やみくもにつつ走ってきた日本だ策を持っているところはない、といっていい。 というよりも、そうした公害 けの、特殊な状況だとする主張にも、もちろん、それなりの正当性はある。 が、現代世界の体質と複雑に絡みあっているために、単純な手直し程度の対 しかし、ここで、われわれは、そうした現象の背後に、より大きな、より一策ではとうてい取り除けなくなっている。現実べったりの方法をとっている 根本的な理由のひそんでいることを知る必要がある。つまり、このおそるべ かぎり、抜本的な対策など持ちょうがない、というのが実状なのである。 さーーそして、急速で大幅な環境破壊・ environmental disruption は、じ しかも、環境汚染は、日を追って確実に深刻化しつつある。 つは単なる特殊事情のせいではなく、現代文明そのもののもたらしつつある 生産性の増大と、運輸交通の整備拡張は、現代世界のありかただーーーだが 必然的なーーある意味では、不可避的な状況だということである。 : , それは、エネルギー消費を増大させ、その結果、大気と水の汚染に結びつか 4
ハヤカワ S F シ刃ーズ ◆◆◆最新刊 点馬は土曜に蒼ざめる筒井康隆 5 まったく異質の文学手法と途方もない空想カーーその本領をいかんなく発揮した異能作家の最新作集 ! 定価四八〇円 5 サミュエル・日・ディレーニイ岡部宏之訳 2 バベルⅡ 7 宇宙の彼方から送られてくる謎の通信バベルⅡとは何か ? " 新しい波。の旗手のネビュラ賞受賞作 ! 予価三八〇円 毎か肖えた寺て、 ~ = こ・ , ー中上守訳 海中水爆実験の結果生じた海底の大亀裂に、世界中の海という海が呑みこまれて完全に干上った ! 定価三六〇円 フライアン・・オールディス中桐雅夫訳 暗い光年 恐るべき知能と肉体をもった宇宙種族ュートッドを通して、知性と文明の問題に鋭く迫る野心作 ! 定価三〇〇円 小松左京 星殺し〈スター・キラー〉 人胆な状 己設定と奔放自在の想像力が生みだす新しい知識の世界ーー界の重鎮の最新集定価三七〇円 ポール・アンダースン豊田有直訳 魔界の紋章 彼は、神と悪魔が熾烈な闘争を繰りひろげている異次元の世界にタイム・スリップした ! 定価四〇〇円 近刊 ( 仮題 ) 人類の罠 隠生代ー ビッグ・タイ ート・シェクリイ井上一夫他訳 プライアン・・オールティス中上守訳 フリツツ . ライハ 木秀夫訳
ら、意を決したように向きなおると、「それはべンド 1 の習慣なんきずって歩くことに思いあたるーーまるで、大地との接触を失うの です、先生」と言った。 が心配でたまらぬように、まるで : : : わたしは首を振って、また授 9 「足を引きずって歩くのが ? 」わたしは完全にたしなみを忘れてい業にもどった。 た。「な。せなの ? 」 昼前には、しかし、その永遠のしゆっ、しゆっ、しゆっはふたた 「そういう習慣なんだから仕方ありません」彼女の声には怒りはなび始まっていた。習慣とはかくも動かしがたいものなのだ。だから わたしはその問題を、″矯正不可能、なんとか我慢できる″の項目 く、ただ諦めがあるだけだった。 「おうちではそういう習慣かもしれないわ。でも学校ではね、なるに分類して、以後忘れ去ることにした。 べく足をあげて歩きましようよ。だ、、 しちそのほうが人の邪魔にも昼食に出てゆく子供たちを見送ったとき、われ知らずわたしのロ ならないでしょ ? 」 からは吐息が洩れた。はじめのうち、毎日まる一時間かけて子供た 「でもそれは、いけないことーーーこエスターが言いかけた。 ちを家へ昼食に帰らせるのは、前例のない贅沢に思われたものだ。 学校の鐘楼は、町中のほとんどぜんぶの家から見えるのだ。ところ マットが急いで指を口にあてて彼女を黙らせた。 「ディ ームスさんはこうおっしやったわ、学校でなにをしようとわがその代わりに、彼らはみなばさばさのまずそうなサンドイッチ たしの勝手だって。学校での問題を、いちいちご両親に相談する必と、ありふれたりんごのデザートを入れた小さな紙包みを持って登 要はないとおっしやったわ。ここでの問題のひとつはね、八が勉強校してきた。・そして黙々と足を引きずって、泉のまわりの木立ちの なかへ消えてゆくのである。 しようとしているときに、まわりがうるさくてたまらないってこと なの。すくなくともこの教室のなかでは、もっと足をあげて、静か 「ここのものはなにもかもうっとうしいわ」と、わたしは隸った。 に歩きましようよ」 「日光さえも、ここではどこかくす・ほけて見える。歓楽もないし笑 いもない。悪ふざけもないしひょうきん者もいない。思春期前のば 一同はしばらく真剣な面持ちでこの提案を考慮し、それから指図 を求めてミリアムとマットのほうを向した。 , 、 - 彼らはうなずいてみか騒ぎもないし、思春期の浮かれ騒ぎもない。ただおとなしい子供 たち、なにかを堪えている子供たちだけ」 せ、一同は課業にもどった。そのあとの数分間、わたしは呆気にと られて、用もないのに室内を行き来する子供たちを眠のすみからう ふだんわたしはのそき見などする趣味はないが、ふと、わたしの かがっていた。高く足をあげ、こうして歩きまわることが大きな冒眼の届かないところーーーそして両親の眼の届かないところでは、こ 険であることを示すにやにや笑いと、横目づかいをしながらーーあれらの子供たちもいくらか変わるではないかという気がした。それ たかもそれが、するには勇気が要るが、しかし楽しくてしかたのなで、十二時半にディ ームス家の穏当な、だが想像力に欠ける昼食か らもどると、校舎へは向かわずにそのままそこを通り過ぎて、そっ いいたずらでもあるように ! すべてがわたしには不可解だった。 考えてみると、子供ばかりかべンド ーの全住民が、そうして足を引と木立ちのほうへおりていった。まばらな下生えのなかを用心ぶか
インドやイランまではみでてしまうことにもなりかねません。人類の秀才連は、現在にダジャーニが入り乱れないわけをたちまち解き の歴史における、その他の重要なできごとについても、それは同様明かした。それは、未来への旅が不可能であるという、べンチリイ です。営利的時間旅行が普及するにつれ、あらゆる歴史的事件の現効果の根本的な限界と関りあうものらしい。 クラスメートのミスタ・ / 場は、観衆で埋め尽されることになるはずです。ところが、それら 、 1 リンゲ 1 ムが、授業の終ったあと、 の事件がはじめおこったときには、そのような群衆はまったく存在懇切丁寧に・ほくに説明してくれた。それが、ぼくを誘惑しようとす しなかったのです ! このパラドックスをどうやって解決しますかる、彼の奇妙なやりかただった。けつきよく彼は成功しなかった が、おかげでぼくは時間理論を少しばかり学んだ。 べンチリイ装置は、本来現時点より未来へ行くことはできない。 ミス・ダレッサンドロは、今度は何もいわなかった。彼女は頭を かかえてしまった。・ほくらも同様だった。ダジャーニだって、同じ彼はそう説明した。時間線をいったんの・ほれば、それをくだること こと。いや、その点では、現代最高の頭脳も似たりよったりだった。 はできる。だが、行けるのは、はじめに出発した時点から、きみが そのあいだにも、過去は時間旅行者たちで埋められつつあるのだ。過去ですごした絶対時間を。フラスした時点までだ。ということは、 ダジャ 1 ニは、ぼくらを解放する前に、もう一つひねくれた問題二〇五九年三月二十日から、たとえば一八〇一年の春に出かけ、そ を押しつけた。「最後につけ加えますと、わたくし自身、クーリアの一八〇一年で三カ月すごしたとしよう。すると、きみは二〇五九 としてキリストの受難の地を二十二回、二十二の異なったグループ年六月二十日の未来まで行くことができる。だが、それ以上二〇五 をひきいて訪れています。もし、あなたがたが明日そちらへ出かけ九年八月へジャン。フすることもできないし、二一五九年へも二〇五 られるようだったら、まわりを見回してごらんなさい。ゴルゴタの九〇年へも行くこともできない。 つまり、自分の未来へ行くことはできないわけだ。 丘に同時に、二十二人のナジープ・ダジャ 1 ニがいることに気づか ーリン れるでしよう。それそれ異なった場所に立ち、旅行者たちに情景の ミスタ・ / なぜ、そういうことになるのかはわからない。 説明をしています。このダジャーニの増加も、興味ある問題だと思ゲームは青白い手をぼくの膝におき、その理論的根拠を説明してく いませんか ? なぜ現在には、二十二人のダジャーニがいないのかれた。だが、・ ほくは彼の話を続けさせるのに精一杯で、とても聞い 頭脳の回転を早くするためには、こういった問題を考えるのがている余裕はなかった。 いちばんですよ。授業終り、みなさん、授業は終りです」 事実、それから三回にわたって、ダジャ 1 ニはペンチリイ効果の ほくには「それがどのよ、つに メカニズムを講義してくれたのだが、・ はたらくのか、な・せはたらくのか、いや、じっさいはたらいている 8 のかどうか、それすらさつばりわからないのだった。夢を見てるん 2 オしか、と思ったことさえ何回かあった。 この二十一人のよけいなダジャ 1 ニには閉ロした。だが、クラスじゃよ、
同じように、常識化している、人体の加工や交換は、他にもたく さんある。 サイボーグの原始形態 人間のからだの一部分を、他のものと交換したり、おぎなったり視力を回復させる力はないが、精神的には大きな効果をもつもの に、義眼がある。 するという、新しい医学の方向について話をきくとき、われわれが ある有名作家の小説に、眼鏡をかけた勝負師が勝利をおさめる話 まず連想するのは、最近になって登場しはじめた電子義手や、モラ があった。その勝負師の片眼は義眼だったのだ。 ルの面からも話題をなげた心 臓移植手術などであろう。 眼の話が出たついでに、その周辺について考えてみ ると、コンタクト・レンズやッケマッゲなどがうかん しかし、サイボーグにつな でくる。これらは、美容の効果が主なねらいだが、肉 がるこのような人間と機械の 体の補強であり、広い意味での加工であるといえない 結合、また肉体のうっしかえ ことはない。 は、なにも、この数年に急に 豊胸手術や隆鼻術、性転換手術 ( 卩 ) などは、むろ はじまったことではない。ま んこのなかにはいる。 た、大病院の閉ざされた手術 もうすこし、オーソドックスな加工や補強として 室の中でしか見られないもの回 でもない。 は、たとえば、修をなおしたり、めだたなくしたりす るための、皮膚の移植、骨の補強などがある。 実例は、意外に昔からあり、 逆に範囲をうんとびろげてみると、メガネだとかカ また意外に身ちかにみられる一 ッラだとか、俳優の扮装などは、ほとんど人体の補強 のである。 のなかに数えられてしまうだろう。 常識的なところからゆくサ・ お好きなかたは、・ハスト・カップの類まで仲問に、 と、″入れ歯″などがそうで れてもかまわない。 あろう。人々は、自然の歯を亠父 結局、程度や目的が問題になってくる。もし、自然 抜いて人工の歯を装着するこ市凵 の人間の形にこだわらなければ、棍棒によって腕力を とに、それほど奇異な感はい 補強した原始人は、われわれ人類の先祖だっただけで だかない。だれでも、歯科医 をおとずれるのは ( たぶん ! ) 好きではないが、それが人間を加工なく、サイボーグの先祖でもあったということになる。 サイボーグを比較的せまい意味に使っているのがであり、広 するものであるーーー・といった深刻な感情をいだく人はすくなくない い意味に使っているのが、科学解説者である。 ころう。 つぎに、サイボーグなることばが発生した背景について、しらべ だが、義歯が人間の肉体の一部をとりはらい、人工物をそのかわ てみることにしよう。 りにとりつけたものであることは、だれしも否定できない。
「妙にほこりつ。ほすぎるとは思わないか ? 」 さし示すトニーの指さきを追った。 と、トニーは言った。 これによると、貯水槽には水が半分しか入っていな 「貯水計だ 「思わないはずがあるか。おれなんか、着衣の中までほこりにまみ ふたりは、しやにむに、貯水槽を納めた隔室の。フレートをはずしれちまって、まるで蟻塚の中で暮しているような気分だ」 ハルはひとロ分のロ糧をのみこむ間だけ、からだをかく手を休め た。それをわきへのけた途端に、少量の錆色の水が、ふたりの足も との床を横切って流れた。トニーは懐中電灯を持って腹ばいにな り、それを薄板で作った貯水槽に向けて上下に動かした。かれのこ ふたりはあたりを見まわした。そして改めて、船内がいかにこ もった声が小さな隔室の中で反響した。 りだらけかを認識した。なにもかも赤い衣をかぶっている。食べも 「ステ ( ムの一派め、やりやがったなーー新形式の〈着陸衝撃〉事のも、頭髪も。足もとの床もざらざらだ。 故課題だ。接続。 ( イ。フが裂けて、もれた水は絶縁層の中へしみこん「われわれの気密服にくつついて入りこんだのにちがいない」と、 でしまっている。これを取り出すとなると、宇宙船を分解しなくち トニ 1 は言った。「船内へ入るときには、もっとよく払い落とさな ゃならない。粘着剤を出してくれ。とりあえず、水もれ個所をふさければいけない」 いでおこう」 この考えは、たしかにあたっていたーー・ただ、残念ながら、効果 「一カ月間、水不足では辛いそ」 はなかった。この赤い土ほこりはタルカム・パウダーのようにこま と、制御盤の残り部分を点検しながら、ハルがつぶやいた。 かく、いくらはたいても落ちないのだ。きれいなもやになって、あ はじめの数日間は、今までの模擬演習と少しも変らなかった。ふ たりを漂うだけである。ふたりは、このほこりを、ステハムの配下 たりは国旗を立て、装置類を積みおろした。三日目に観測器械と記 の技術者たちが考案した課題のひとつにすぎないものとして扱い、 鉛直角および水平角を測 録装置のセットを完了し、ふたりは経緯儀 ( ) をなんとか忘れ去ろうとっとめた。しばらくの間は効果があった。八 定するのに用いる器機 船外へ出して測地作業を始めた。四日目までに、標本採集作業を開日目になって、エアロックの外側扉をしめられなくなったときまで 始する準備が整った。 は、である。ふたりは標本採集から帰ったところだった。ェアロッ ちょうど、このころになってからであるーーふたりが問題のほこ クは、やっと、ふたりのからだと岩塊標本を入れた袋とを収容でき りに気づいたのは。 るだけの広さだ。かわり番こに、ふたりはできるだけお互いの土・ほ こりを落とし合い、そのあとで、ハルがニアロックの作動スイッチ トニーは、心の中で悪態をつきながら、ロ中の異常にジャリジャ リする携帯ロ糧をかんでいた。なにしろ、一食分のロ糧をのみ下すを入れた。外側扉は閉じ始めたが、途中で停止した。ふたりの靴を のに、ひとロの水しかないのだ。やっとの思いでそれをのみこんだ通して扉のモーターのハム音が高くなるのが感じられたが、やが て、それもパタリと途絶え、赤い障害灯がついた。 かれは、ふと制御室の中を見まわした。 ロ 6
・ウェーヴ化しつ ーラン・エリスンが、彼ャンベルに ) 、 ). 、。、ド当などといったことはなし、むしろすべてのがニ、 一例をあげておこう。 い。だから、アナログには一度も載ったことがなつある現在、その態度は貴重かもしれない。だが、 のアンソロジイミ ~ g ミ、 0 ~ 冫ま、ぐ・ 0 、冫 ( 危険なヴ一 悲しいことに、そのアナログに、最近優れた ( ー こんな文章を思いだしながら、最近のアナログをが載ったという話は、ほとんど聞かないのだ。 。ヒンラッドの紹介文 アメリカ界で、近ごろキャン・ヘル引退の噂が 「一九六二年、彼は処女作ま 77 ミト 5 、ミ・、、ミめくってみると、おもしろいことに気がつく。ポー 一 ~ 0 、、ミ、こ、・・ ( 最後のジ。フシー ) をアナログに売っル・アンダースン、 ( リイ・ ( リスン、キース・ロささやかれているところを見ると、アナログはもは た。このため " キャンベル好みの作家。だという噂 1 マ 1 などどこにでも顔を出す人気作家もいないわやどうにもならないところまで来てしまったように がひろがったが、スビンラッド自身は、どこへ行っけではない。だが、それより知名度の低い作家とな思える。 てもそれを強硬に否定している。ただし、キャンべると、アナログと他の雑誌では、明らかにメイハー ルの前に出たときは別だ。そのときには彼は、間のが異なるのだ。ジ = イムズ・テイプトリー・ジ = = そんなおりもおり、問題のアナログ誌に新連載長 ・チルスン、クリストファ 1 ・アンヴ篇の予告が載った。界の新しい = 、ースを仕入 抜けた微笑をうかべながら、こ「 . ト h 、 ~ 気 ( 「そのア、ロバ 1 ・ポイア 1 、マック・レナルズといつれるには、そういうべ 1 ジをこまめに見ておくのが とおりです、ジョン」 ) というだけである。私はキイル、・ノョ 。というわけで、なにげなく読みはじ た作家は、アナログでは常連だが、他の雑いちばんいし アナログ誌一九六九年十ニ月号 誌ではほとんど見かけない。他の七種のめたのだが、一読したとたん、・ほくは唸ってしまっ 専門誌では、作家のラインナップにかなた。どうやら、すばらしい傑作になりそうなのだ。 りの重複があるのに、それがアナログにだちょっと長くなるが、全文を翻訳してみよう 、リスンの新連載長篇がはじ けは現れない。それにアンダースンにし「次号から、 ( リイ・ , ろ、 ( リスンにしろ、ローマ 1 にしろ、アまる , ーーそれは、ファンのみならず科学者たち ナログに作品をのせる大家たちは、みなパの関心も呼びそうな、問題意識にあふれた作品だ。 ーマネント・ウェーヴの代表選手みたいなイスラエルの科学者が、偶然ひとつの発見をし、ダ 連中ばかりだ。ただし ( リスンは、・フライレス効果と名づける。彼が解明したのは、物理学の クエーサー アン・オールディスと親友であるというこ新しい領域ーーー準星のとほうもないエネルギーの秘 ・ウェーヴのよき密であり、それはエネルギー保存の法則の否定 とも手伝ってか、ニュー 理解者なのだが、それが作品の上にあらわ反重力・ーー真の宇宙航法の発明へとつながる・ : またそれは、恐るべき問題を提起する。 れることはめったにない。 もちろん。 ( ーマネント・ウェーヴで押しそれは、世界を一変させ得る発明であり、誤用さ 通すつもりなら、それなりに文句はないれれば、世界の破減を招きかねない。しかも、イス い SCIENCE FiCTION 0 0 0 0 0 ま t.WR 日婦邀第 3 を ー 2 3
ラエルがそれを保有していることが明らかになれ四十周年記年号をあいだにはさんでこの作品が連載したとあっては黙っていない。彼らはクラインを捜 彼 ば、中東の緊張状態は悪化し、イスラエルはたちまされることーー・ただごとではない感じがしたのも無しあて帰国をすすめるが、彼の決心は変らない。 ち侵略され、消減するだろう。 理はないだろう。 の発見は、ちょっとでも使用を誤れば世界を破減さ その発明を守り、それをさらに改良するのが、彼『星をわれらの手に』 ミ、 ~ 0 ミ・よミ ~ . 、 he せてしまうほどの危険性を含んでいるからだ。 に課された義務であるーーだが、イスラエルでは、ミ・は、六九年十一一月号から七〇年二月号にか幸いデンマーク入国は受けいれられ、旧友ラスム まずそれは不可能だ。 けて三回にわたって同誌に連載され、この春 T 、ミッセンの協力のもとに、彼はとうとう研究を完成す 彼はようやく最適の場所を見つけるーーだが、そ DaIeth ミ、 ( ダレス効果 ) の題名でパトナム社る。そしてへプライ語アルファベットの第五文字を こも安全にはほど遠い。やがて世界中の諜報機関がから ( ードカ・ハ 1 で出版された。「次号予告」の文とって、それをダレス効果と名づける。 ″大いなる秘密″を手に入れようと、あらゆる手段章にすっかり魅せられてしまった・ほくは、連載が終ダレス効果の最初の本格的実験は、霧の深いある を使って侵入してくる。 ると同時に読みはじめたのだが 夜、コペンハ】ゲンにほど近い無人の波止場で行な 『星をわれらの手に』は、泰平な物語ではない。だ われる。港のすこし沖あいにうかぶ数千トンの砕氷 が、それはきわめて現実的な物語でありーー偉大なところは、イスラエルのテル・アビブ大学。その船を、ダレス効果で、水面より高く浮上させること 発見をなしとげた科学者の責任という問題に対し破壊された研究室で、物理学教授ア 1 ニ 1 ・クライができるか否かーーそれが実験の内容だ。 て、きわめて現実的な解答を与えている。 ンは、ようやく爆発のショックから立ち直る。命の実験は成功だった。砕氷船は水面からたつぶり一 ダレス効果ーーー核エネルギーよりも巨大なそれほうはまったく別状はないが、気にかかるのは、今メートル上空にうかびあがり、しばらくそこにとど は、悪にも善にもなり得る力である。科学者の責任の爆発が証明した一つの科学的事実だ。瓦礫のなかまったあと、すさまじい波音をあげて水面に落下し とは何か ? 」 で長いあいだ考えた末、彼はイスラエルを脱出するたのだ。その結果おこった波は、波止場で呆然と見 ( リスンがついに ( ポリティカル・フィクシ決心をする。 物していた政府や陸海軍の高官たちをもろにおそ ョン ) を書いたか ! それが、最初に受けた印象だ飛行機を乗りついで到着したところは、彼の生れい、数人の重軽傷者を出す羽目になった。 った。しかも「次号予告」の熱のこもった文章の調た国デンマークの首都コペン ( 1 ゲン。彼は空港のしかし、それ自体は大したことではない。問題 子からいって、キャンベルがこの作品を非常に高く保安課にとびこむと、ノ 1 ベル賞を受けた。幼な友は、その一部始終を、はるかな対岸から霧を通して 評価していることはまちがいない。 だちの物理学者オ 1 ウェ・ラスムッセンと連絡をと観察していた男がいたことである。男の名前は、ホ もう一つ、・ほくがこれに期待をかけた副次的理由り、デンマーク政府に政治的保護を求める。クライルスト・シ = ミット。元ナチス親衛隊の将校、現在 はーー・あちらのファンジンでキャンベル引退が話題ンはユダヤ人で、現在の国籍はイスラエルにあるはソ連とアメリカの二重ス。 ( イ。 になるとき、いつも引きあいに出される次期編集長 ( が、自分の研究を進めるには、中立の精神が徹底してそんなこととは知らぬクラインたちは、ダレス効 候補が、キャンベル学校優等生ともいうべきこの ( いるこの国以外に行き場所はないと判断したのだ。果を平和目的に使用するため、デンマーク海軍の潜 リイ・ ( リスンであること、そしてアナログ誌創刊イスラエル政府も、世界的な科学者が国外に逃亡航艇プレックシ = プルッチンに、ダレス装置のとり 0 0 0 0 0 4