・天高く馬肥ゆる , といわれた日本の秋は , も、ったいどこへ行ってしまったのでしよう か。東京近辺はこのところ連日ジメジメとし た冷雨が降りつづき , イワシ雲の浮かぶカラ リとした秋晴れの空など , 当分拝めそうもあ りません。おかげで私など体調がすっかり狂 って , カゼの引きなおしを何べんもやらかす ・破目になり , 心の重いユーウッな毎日です でも , ューウッなのはそれだけではないので す。 も異変が多すぎます。今年も桜の散ったあと で富土にドカ雪が降ったのにはビックリさせ られたし , その後つづいた全国的な異常低 温 , 異常降雨 , そして , ついこの・あいだ問題 になった , 例の異常潮位・・・・・・いったいこれは 何を意味するのでしよう。ここ数年の異常な 土地降起現象や群発地震も , たんに大震災の 前兆と ( それだけでも大変なことですが ) 片 づけてすませられるかどうか。 ・しかも廴この自然の異変ぶりは , 何も日本 に限ったことではなく , 、全世界的な現象だと きけば , なおさらです。今年だけでも , すで に異常猛暑 , 異常寒波 , 大暴風雨 , 大洪水 , 大旱ばっ , 大地震が , 史上かってない規模で 連続的に世界各地を襲いましたし , その傾向 はここ数年目に見えて激しくなりつつあるよ うです。北欧のツンドラ地帯での巨大氷魂の 異常発生を指摘して , これは地球が急速に冷 えつつある証拠だと主張する学者もあれば , 極地の温度の急上昇を発見して , 地球の熱帯 砂漠化が始まったと唱える学者もいるという ぐあいで , まさに地球は発狂したとしか考え ようがありません。 ■このような全地球的な天変地異の原因を , 気象学者たちは一様に , 人類の大気汚染と無 計画な環境変革に対する自然の報復だとみて いますが , 一部には , もっと巨視的に , 地球 誕生以来何百回となく起ってきた周期的な地 穀大変動がいままた始まったのだ , という人 もいます。そうとえば , アメリカ最大の予言 者といわれたエドガー・ケーシーが , 20 世紀 末までに日本の大部分が水没し , 熱帯寒帯が 入れ変り , 米大陸と欧州はその地形が大変貌 する , と不気味な予言を残して死んだことが 改めて思い出されます。 ・人間もまた自然の産物である限り , ひょっ としたら , 近ごろますます異常の度を加えて いく世相も , 究極のところ , こうした自然の 大変異に影響されてのことではないか , とま で考えると一私がなぜユーウッになっている 力、 , おわかりいただけたでしようか。 (M ・ M) をだいたい , 近ごろの自然界には , あまりに MA GA 刀石 SCI 石 N ( 石 SP ー ( リ A 刊 02 & ドに 02 FANTASY VOL. 1 2. DECEMBER NO. 13 19 7 1
ーグ、・ンヨ ・ヘンズリイ ) 0 ・パネル・ディスカッション「の今後五年 3 間」 ( ポール」アンダースン、 - ・ホプ・ショウ他 ) ・仮装コンクール 第三日Ⅱ九月五日 ( 日 ) ・対話「社会におけるロポットの地位」 ( アイザ ック・アシモフ、クリフォード・シマック ) ・パネル・ディスカッション「生存可能の地球を 創る科学技術」 ( ハル・クレメント、ビーター 端 ・グレイザー他 ) の・対話「未来の利用」 ( フレデリック・ポール、 シドニ ・ファインライプ ) 場・アート・ショウ 会・ヒ = ーゴー賞記念晩餐会 第四日Ⅱ九月六日 ( 月 ) ・講演「人工知能について」 ・パネル・ティスカッション「遺伝工学の意味す るもの」 ( アイザック・アシモフ、ラリイ・ニ ーヴン他 ) ・。 ( ネル・ディスカッション「批評と討論 家」 ( レスター・デル・リイ他 ) 古書オークション これと平行して、中央ダンスホールでは、大会 古書オークション ったが、おもな催しはほ・ほ次のとおりだ。 前日から最終日までぶつ通しで、「禁断の惑星」 第ニ日Ⅱ九月四日 ( 土 ) 前夜祭Ⅱ九月ニ日 ( 木 ) 「オズの魔法使」「地球最後の日」「タイム・マ ・一九七一一一年度大会開催地選定 ①映画の歴史に関する特別フィルム・ショー シン」「宇宙から来た物体 >< 」「地球の静止する ・講演「アトランティスーーその神秘と真実」 第一日Ⅱ九月三日 ( 金 ) ・来賓紹介およびス。ヒーチ ( クリフォード・シ「・論文発表「批評にむける諸問題」 ( アレク日」「二〇〇一年宇宙の旅」など、おなじみの 名画が、十七本も上映されていた。 セイ・パンシン他 ) ゴードン・ディクスン他 ) これらのほか、同時にどこかの部屋か小ホール ・。 ( ネル・ディスカッション「におけるアー古書オークション ス、・討論「代るべき未来はあるか」 ( ペン・ポヴァ、でおこなわれている小討論会のプ 0 グラムは毎日 チストの役割について」 ( ケリー・フリー 1 ト・シルヴァー掲示板に張り出されており、その代表的なものは レスター・デル・リイ対ロ・ハ ジャック・ゴーハン他 ) 1. 恒例の仮装コンクール
( 金星 3 号六五年十一月十六日 ) を下ろしたのり、いまのところすべて解決可能であるという。 この宇宙結合がいつになるかは最終決定してい も、月に無人ステーション ( 月 9 号日六六年一月 三十一日 ) を軟着陸させたのも、すべてソ連。競ないようだが、一九七四年になるのではないかと の見方が強い。最初はソ連のサリュートに、米国 争ははけしくなる一方だった。 のアポロがドッキング。次いで米国のスカイラブ だが米国は人類史上初の月着陸 ( アポロⅡ号 に、ソ連のソューズが結合するという見方である。 六九年七月一一十日 ) に成功、宇宙竸争は新段階を 迎えた。何しろ月着陸には二百四十億ドルもの経「実現すれば宇宙の安全が高められるばかりか、 まぶ費がかかる。それに危険性が次第に大きくなる。両国が計画している大気圏外からの天体観測、地 球の天然資源調査 2 そこにソ連は アメリカのスペースラボ も、ぐっと楽にな サリュート 国はスカイラブ 、、二一 ' メ一るだろう。これを を登場させ、宇 」、ー足がかりに、米ソ 宙に実用化時代 ! 4 一ていた宇宙開発 が訪れた。いた を、地球人の宇宙 ずらに競争する ・一一開発へと高めて行 よりは、協力し " 、・きたい」と、米航 あってメリット を上げた方がよ ' 一空宇宙局の関係者 はいっている。 。今度の米ン 宇宙結合には、 ■近づく火星 以上のようない ■米ソの宇宙結合実現へ きさっと、考え の時代 ソ連の宇宙ステーションが事故を起こした。救方が背後にある といえるたろ ソ連の宇宙科学 援宇宙船を打ち上げるには時間がかかりすぎる。 陣がさる五月末に 連絡を受けた米国の宇宙船は、直ちに軌道を変え て宇宙ステーションにドッキング、乗員を乗り移具体的な協定ができれば、それをもとに宇宙相次いで打ち上げた自動ステーシ , ン「火星 2 号」 まは米「火星 3 号」が、十一月に火星に到着、表面のさ らせて地球ヘーー・映画そのままのシーンが実船などの規格統一の話が進められる。い ソまちまちで、ドッキングをしようにも、結合まざまなデータを、地球に報告する予定となって 現されることにった。 米航空宇宙局とソ連科学アカテミーは、宇宙協金具も連絡電波もちがうので、まず不可能であいる。 る。 どのような項目を、どのように調査するのか、 同開発について話し合いを進めていたが、いよい よこの十一月、モスクワで初の米ソ宇宙首脳会議そこで金具などの規格を統一し、宇宙船内の環その結果が何を意味するかは、すべてこのデータ を開くことになった。競争から共存↑ーー宇宙開境も同じにそろえる。ソ連は宇宙船内を地上の空が到着して、分析してみないとわからないが、金 気と同じ組成、同じ気圧にしているが、米国は純星の軟着陸や無人月面車を成功させたソ連のこ 発史上の大きなエボックといえるだろう。 と、今回も無人車を軟着陸させ、火星表面の探査 一九五七年十月四日にスプートニク 1 号を打ち粋酸素を使い、気圧も地上の三分の一にしてい を行なうのではないかとの見方も出ている。 上げて以来、ソ連は長い間宇宙における優位を保る。このままではドッキングしようがない。 だがこんどの火星プロジェクトにとって、気に しかし米ンの宇宙科学者は、この規格統一につ ってきた。最初に人間衛星船 ( ヴォストーク 1 号六 一年四月十二日 ) を扨ち上げたのも、金星に探測機いて三検討グループを作り、話し合いを進めておかかるのは月ステーション、「ルナ号」が失敗 あんてな 6
用いられた文字が古代アラブ文字であることを教えスの『トレン、ウク・ハル、・ 三重の環』に描かれた謎して、まだエネルギー的発展の途上にある若い地球 られると、それを手掛りにしてとうとう解読に成功の別世界から、伝説の都アトランチスまで、気狂いとは物体構成の原子的レベルからして、すでに相容 する。写本のタイトルは『ネクロ / ミコン』 ! 次のようにしゃべりまくる。読む方だって息も継げなれない敵対者同士だったと説くのだ。成長発展する の日、親友の大学教授と会食した折りにたまたま写い。主人公は数々の調査を重ねた結果、アーサー・地球のエネルギーに圧迫されたかれらは、地下はる 本の話を出してみると、教授はいとも簡単にいってマッケンが奇怪な別世界を描く題材に使ったウェーかな岩盤のなかに薄れゆく力を集中し、旧支配者の のける。「ああ、『ネクロノミコン』ね。知らよ オいルズの寒村へ乗りこむ決意をかためる。物語の展開存続をはかろうとする。さらにガタノソア ( あるい でどうする、きみ」 は実に知的で興味が尽きない。しかし読者をここまはウェールズ語でロイガー ) は、地球の敵意に対抗 ラヴクラフトの作品を読んだこともなかった主人で引っぱってくるのに利用した道具がどれもこれもしこの若い惑星を破壊するための武器としてムー人 公は愕然として訊き返す。 書物だったというのは、やはり問題だ。人間はちつを創りだす。ムーが海中に沈み、アトランチスが水 「知らなかったのかね、きみは ? ラヴクラフトととも動かない。動いていくのは頭脳と、頭脳の対象没したのは、かれらのエネルギーがまた地球をくっ いうのは三十年も前に死んだプロビデンスの地方作物ばかりなのだ。ウイルソンもその点に気づいたのがえすだけの余力を残していることを実証する行為 家さ、ネクロノミコンはその作家が創りだした造語だろう、物語はここから一気に大冒険へと移っていだった。神秘な来歴をもっウェールズ人たちが実は ・こよ」 く。ウェールズの寒村で、主人公はアーカートとい地球に敵対するガタノソアの奴隷たったことを知ら 「かれの作品を読んでいくうちに、わたしはふと、う退役軍人と知りあう。この老人はムーやアトランされた主人公は、やがてかれら民族の途方もない秘 文学的才能には欠けるが、それでもなお本当に人間チスの熱狂的な研究家で、その方面の大家であるチ密を探りだす。ウェールズの刑法の厳しさ、犯罪の の知性を掻きたてずにおかない題材によって読むもャールズ・フォートやルイス・スペンスの研究書を少なさ、その特異な言語、伝説、どれもがみんなム のをグングン引きずっていく、そんなテーマを握っクソミソにこきおろすようなご仁だった。ウェールー大陸へと結びついていく。そして主人公に旧支配 ている人類学の論じ手を思いだした」と語るウイル。 ス人が実はムー大陸人の生き残りだったという説の者の秘密を明かそうとしたジプシーは、不思議な爆 ソンの評価は、さすがに適切で鋭い。さて、調査の提唱者で、ムーの遺跡が南ウェールズとプロビデン発によって生命を失い、アーカート老人にもガタノ 結果ポイニッチ写本に論じられていた内容は、不思スだけから発見されている事実に照らして、ムーそソアの手が伸びる。こうして旧支配者たちの復活 議にも一介のパルプ作家 ( 晩年のラヴクラフトのものが太平洋域にあったものではないと信してを事実として体験した二人は、全世界に危機を知ら は完全にの作家だった ) が創作した小説とびつもいる。しかしかれの異常な学説のお蔭で、ラヴクせようと奔走するのだが : ・ たり一致していることが立証される。 ここからラフトの故郷とマッケンの故郷がムー大陸の旧領域ムー大陸をはじめとする失われた大陸を中心テー がとにかくすさまじい。いままで抑えてきた声を爆だったことで見事に結びついた。アーカートはさらマに据えたこの『ク・リトル・リトル神話』シリー 発させるように、ウイルソンはユイスマンス、ポオに、ムー大陸人が透明な人種であり、本来は宇宙かズも、ヤがては体系的に訳出紹介されるだろう。そ にはじってマッケン、ポルへスに至る〈異次元世界ら飛来した異次元人であると断言する。かれらガタうなれば、活字で墓碑名を組みあげたダーレスの苦 の創誥堵〉たちをえんえんと論じはじめる。ポルへノソア人は宇宙の本質を知る徹底したペシミストと「労もりつばに報われるわけだ。 まャ
ド・テールズ』誌上で人気を二分したハワードとラヴ ( スタルは古代都市カーコサ ( ビアスの短編『カートートの落とし子が恐怖をひきおこす。ラヴクラフ クラフトの創造した二つのジャンルが、現在新しいコサの住人』から採った名 ) にある湖に沈められ、トが描いたこれら無気味でみだらな異次元物体のイ 後継者と読者を獲得している事実は、どこか暗示め風に乗る異次元物体イサカは北極の氷山に閉じこめメージについては、好みの問題で肯定も否定もある いている。ちなみに『ク・リトル・リトル神話』はられ、旧支配者の王アザトートは大地の神ョグⅡソトだろうが、ひとつのジャンルを形成するだけの魅惑 ・パック 1 トと共に宇宙外へ追放され、海洋の邪神ク・リトを秘めていることだけは疑いない。 本年からいよいよ・ハランタインのペ 1 で刊行されはじめた。完結すれば大部なシリーズにル・リトルはアトランチスとともに底へ封じこまそれではウイルソンの作品を見ていこう。『ロイ なる。ここではコリン・ウイルソンの未紹介近作れる。やがて地球には人類が生まれ、地球神のもとガーの帰還』はアーカムが六九年に出したク・リト ・リトル神話の集大成本 "Tales of Cthulhu 「ロイガーの帰還」 ("The Return of L10igor" で進化への道をたどっていく。しかし、かれら恐るル 一 969 【 Arkham House) にひっかけて、神話の舞べき太古の支配者は、地球の奪回をめざして旧神の Mythos" のために書き下された中編。物語はポイ 台をざっと紹介してみよう。 縛を次々に解きはじめる。こうして再び宇宙支配のニッチ事件からはじまる。米国の著名な古籍商・ ラヴクラフトに従えば、宇宙には三種類の神が存魔手を伸ばしはじめた旧支配者に対抗する人間は、・ポイニッチがイタリアで発見した写本がなんと エルダゴッド ・べーコンの書きつづっ 在するという。大宇宙を創造した旧神はペテルギ人知が生みだした二つの武器である科学と術を駆十三世紀の科学者ロジャー ウス座の彼方に君臨し、いつ。ほう地球には超能力を使して、かれらの野望をくじく死闘に加わる。インスたものだったというニュースほど、学者たちを色め ルド・ワソズ 有する旧支配者が勢力を張り、おなじく地球には地マス ( 。フリマスの変称 ) やダニッチ ( 旧訳ではダンウきたたせた出来ごとは近来なかった。それは微小な 上本来の小さな神々が存在していた。宇宙はこれらイッチ ) やアーカムなど古いアメリカの都市は旧支細胞とその組織に関するスケッチを含む科学論文と 配者の手に落ち、学者たちはミス推測されたけれど、暗号で記述されていたため読む 三勢力の均衡の上 カトニック大学に秘蔵されていることができない。新聞は世界一神秘な写本と呼んで になり立っていた 宇宙最大の神秘書ネクロノミコイ大衆の興味をあおりたてたが、顕微鏡検査の結果そ のだが、あるとき ・のなかに旧支配者たちの恐るべきの暗号が単に風化によりインクの欠落によって生じ 旧神と旧支配者た た偶然であることが立証されたとたん、あっという 歴史を見いだして愕然とする ちの間に抗争が起 人間を全減させるために旧支配間に忘れ去られる。たまたまその古写本を研究しは こった。宇宙の支 者が用いた手段は、人間と旧支配じめた主人公は、ある日ポイニッチ写本をカラー撮 配権をめぐる闘争 者のあいだに産みおとした奇怪な一影している写真家に出会 0 た。見ると、。フリントの に破れた旧支配者 〈 . 合いの子〉を地球に送りこむこ上には欠落したインクのあとが浮き出ている。カラ は、旧神によって とだった。インスマスは魚神ダゴー写真に撮ることで元の文字跡を辿ろうと考えた主 全減に近い刑罰を ンの血を引く水棲人に奪い取ら人公は、興奮を必死に押えながら、写本の解読に精 受け地球から姿を れ、ダニッチの寒村ではヨグⅱソを出しはじめる。そして友人のアラブ人から写本に 消す。大気を司る 4-
で地中の苦役に服さなければならないという言い伝えがあったから この話を聞いたとき、クラウスは声高な笑い声を長ながとし・ほり に。それというのも、かれら小人たちは魂を持ちあわせていない代だした。かれらの身の上は、貧しい人々に善い行ないをほどこした わりに不死を与えられ、かれらと太古の神のことごとくとが至高者ばっかりに追われる連命を背負いこんだかれとウナ自身の経験に、 「ところでおまえ の玉座の前に立ち永劫の苦役を命ずる宣下を聞く〈最後の審判日〉あまりによく似ていた。そこでかれは応えた かやってくるまで、ずっと生きつづけるはずだったからだ。 たちは、隣人たる人間たちに奉仕することを幸せと感じるか ? 」 かれら二人は呪われた九つの丘陵を走る道にはいりこみ、海をめ 「はい、それができるのなら、歓びでないはずはございません」 ざして馬を駈りすすめていったが ( その途中で背中に小嚢を背負いと、小人の王はいった。「木と石と金属の細工にかけては、誇るに 悲しげな歌をうたって近づいてくる小人たちの行列に出喰わした足る技術を身につけておるわたしたちでございます。わたしたち以 「ごきげんよう、小さな妖精たちょ , クラウスがそう声をかけた。 上の鍛冶屋はおりません。木を材料に使わせれば、わたしたち以上 「涙と憂いをたたえた歌を口ずさみながら、おまえたちはなぜそれにすばらしい形を作りだすものなど他におりません。しかもその技 ほど悲しげに旅をつづけている ? 」 術が人間の役に立ち、その細工品を農場や村々の善き人々に使って 「ああ、これほど悲しいことがあるものでしようか ! 」小人の王はもらえるのなら、歓びは倍加いたします。ですが、ああ、僧侶たちに こたえた。「わたしたちはニフルヘイムに向かう途中でございまロ、 ま恵をつけられた人々は、だれもわたしたちの贈りものを受けとり す。そこで隠棲し、永遠の責苦に落ちていくその日まで、ひっそり はしますまい。不幸なことに、昨今は、妖精の品物を贈ることが、 と暮らすつもりでございます。それと申しますのも、わたしたちが受け取り手を侮辱することになるという時勢でございます ! 」 昔手助けしていた村の衆はいま、声を荒めて小人を悪呼ばわり クラウスがこの繰り言に耳をかたむけていると、どこか遠くから し、ミルク一杯、大麦パン一切れ戸口に残してはくれなくなったか たくさんの鈴の音が響いてぎた。そしてふたたび、あの懐しい声が らでございます。かれらの父親たちは、小人が行なった善い行ない かれに囁きかけて、こう告げるのだった のことをすこしも話さなくなりました。話すのは、ただ恐ろしい話「クラウス、なんじにはこの小さき者たちの手助けが要る。なんじ や悪行の話ばかりでございます。こうなったうえは、地上へ出ていの足もとに開ける道を、かれらとともに歩め」 って地球の美しいお貌のうえで遊びたわむれたり、月光に照らされ そこでかれは小人の王に声をかけた。「どうだ、わしと一緒に安 ながら林間の空き地で歌ったり踊ったりすることなど、もうできま全な場所へ行かないか ? そこで子供たちに歓ばれる品物を思うそ せん。そしてとりわけ悪いことに、隣り人たちはわたしたちの善いんぶん作ってみないか ? もしおまえたちが仕事を引き受けてくれ 行ないを必要としなくなりました。わたしたちの姿を見ると、呪いれば、その品物を心から歓んで受けとってくれ、おまえたちの名を と賛美歌と鐘と聖書と、それから蝋燭とで追いたてるようになりま呼んでその出来ばえを称えてくれる子供たちの手に、わしが贈りも のを間違いなく手渡してやるそー した」
金属音がきこえてくる。強い風が吹きつけて、 振りかえったマンの表情がかわる ( 写真② ③ ) 。店頭に並べてあったケースのなかから、 モービル・オイル罐が一個、二個と消えてゆ く。あ・せんとして凍りついたように見ている マンの手がふるえ、オイルがこぼれてしま 大伴昌司 う。みるみるうちにケースの罐は消えてなくな 井口健ニ るが、の女性の視線の動きから、オイル罐 が宙を飛んでいったことがわかる。 ( 写真④か 既報 tThe Omega Man 』 ( 邦題・地球最後ら⑨まで ) 。荒野の果てに、一台の円盤型宇宙 の男、マチスン原作「吸血鬼」の映画化 ) が年船が着陸しいる。昇降ロらしい底部の光が消え 末に公開されることになった。 ると、轟音がひびいて、砂煙がばっとあがる 細菌戦争後の人類減亡テーマのサスペンス映 ( 写真⑩⑩ ) 。見ている tn マンやドライ・ハー 画。テクニカラー 。たった一人、細菌におかさ の顔が、水爆実験を見ているように白く光る。 れず生き残る男には、チャールトン・ヘストン 二人の視線がゆっくりと上へあがるにつれて、 が扮している。くわしい内容は次号で特集した金属音が遠ざかってゆく ( 写真⑩ ) 。のコ ンクリート の上に、オイル罐が一つころがって このところ・・ 0 ( 未確認飛行物体 ) 「エンジンには、よいオイルが必要です。モー を作っている。製作部の話では、このあと が、いろいろな分野に登場している。 =;-40 の ビロイル・スーパー」という奇妙な声のナレー を題材にした作品をシリーズで作っていく予 世界的権威である南山宏先生もさそやご満悦の ションが入ると、画面が円型にワイプして 0 の定で、モ 1 ビル石油の第二弾も完成してい こととおもうが、そのなかから成功しているも文字になりのタイトルが入る ( 写真るという。 のをひろって紹介してみたい。 O> フィルムにまともなが登場するの 地球の近くを通過しようとした宇宙船が、エ は、このが最初ではないかとおもう。一五 フィルム ) ンジンの不調から不時着してしまった。モービ秒と三〇秒の二種類があるが、たいへんうまく モービル石油が九月から放映している『宇宙 ルオイルは地球の車だけでなく、宇宙船にも通できていて、カーマニアの間で話題になってい 人篇』と題する。 用する良質のオイルだ、というストーリ 1 。 軽る。宇宙人の姿を出さないところが成功してい 人里はなれた荒野、霧につつまれた ( イウ = 井沢の鬼押出近くにのセットを建てて撮影る。 ( ジョージ・パルの名作『 TheWarofthe イのかたわらに、たった一軒、モービル石油の たが、リアルなムードをだすことに苦心した Worlds 』も一時間半のうちわずか八秒しか宇 サ 1 ビス・ステーション (cnc) がある。 ( 写という。製作は日本天然色映画で、この会社は宙人が出ないが侵略映画のベストワンと評 真① ) いま一台の車が立寄って、エンジンのオ東レの土星が現われるや、明治製菓の石坂価されている ) イルを交換してもらっているが、突然、奇妙な浩二やマ 1 プルのシリーズなど数多くの名作 o トータルスコープ 地球最後の男のスチール ー 75
4 九九仄年夏襲いかか、った空前の激震は 爛熟 -2 た世紀末明を 1 一撃のもとに打ち倒しい完膚 なきまに灼尽したー 高度に発達レ第「種の生物系の域にまで近づいていた 科学技術万なガロポリス文 . 明は、【急所を射抜か れた巨象のよう・、」 ~ いこうと倒れ ( 、、あ・つけなく死減した。、 関東・平野に巛 - りみ・し不死島のことく甦りつづげた都 市文朋はゞついに再びを吹ぎかえすことはな、かった」】 ト、ドウョムス叫ディー せなら耨・【」ー全世界み終末の日ぎを迎スよと し , でいながをでる 「〔最初の一撃で地球全人口の約三割が 失われたニ〇億を越す人々。がい ? すい第 、らメガロポリメ文と運命を共に一しなのなゞ がまだ四七億にい人口が生き残っていたこ「「「【 ・」一 ~ ~ 一 54 」「一斗亠亠かし問題は生き残りの人数で、はなからた一 ~ 地球 人類攻明の仲駆陸失った人類は、もはや絶減を 運命づけち ' れをいたの・だ自壊作用は急救 自動生産機構を粮こそぎ いかかた一にな åk,O た厖大な - ロはみすからを支える力を持たな ・一、か【 ? た。 ' 彼引は幼児ほどの原始的生存能のしか 99
つかの間、ディヴィッド・ヒースの顔が神のそれに変わった。 信じるよ」 いまや、その場に恐怖の気がなぎったーー恐怖と、そして魔力「エスネ」と、彼はいった。 が。みながみな逃げ場を求めて、あたりに視線を走らせた。しか そして、彼女がやってきた。 し、だれひとり逃げ出そうとするものはいない。 青い闇の中から、霧の中から、彼女は、楚々として美わしい姿 ヒースが重ねていった。「松明を消すのだ」 で、地球人のほうへとただよいきたった。その身体は、光り輝く大 しずく 長身の異邦人が手を伸ばし、いちばん近い松明受けにさしてある気、霧のやわらかい滴で作られてい、ヒースが秘めたカによって形 よわい 一本を消した。ほどなく大広間の内部を暗闇が領した。ずっと奥にがととのえられ、色づけられていた。彼女は、若く、年齢十九以上 ではない。両ほおはいまだ、地球の太陽からきた淡いバラ色に染ま ある一本の松明だけがともっていた。 けが ヒースは、手すりにもたれかかって立ち、暑いあい色の夜の奥をり、その瞳はつぶらで、子供のそれのように汚れない輝きを発して いる。身体はきやしやで、若々しいあどけなさがまだとれていな じっと見つめた。 〈晩のオパル海〉から濃い霧が立ち昇った。それは、ぬかるみから 這いあがり、沼沢地からもくもくとわきあがった。微風に押しやら彼女がまだ見ぬ金星を見るために、昇降斜路をおりたとき、わた れ、それは、長いうねりをなしてただよっていた。暗い夜を背景にしは、はじめて彼女を見た。風が、彼女のおぐしを捉え、なびかせ た。ある春の朝またき、彼女は、仔馬のように軽やかに、ただひた して青白色にキラキラと輝いている。 ヒースは、その霧の中を熱心にのそきこんだ。頭をのけそらせ、すらに散策した。おのが死へと向かって歩んでいくのですら、いっ 身体全体を上方へ伸ばし、そり返らせていた。やがて彼は、両腕をに変わらず軽やかで、楽しげであった。 そのま・ほろしのような姿が微笑を浮かべ、両の腕をさしのべた。 揚げ、乞い求めてやまないという仕草をした。 彼女のかんばせは、愛と、その愛にかかわりのある全世界を見い出 「エスネ」と、ささやくようにいう。「エスネ」 ほとんど認めがたいほどの変化が彼の上にやってきた。弱々しした女の顏だった。 しだいしだいに彼女は、ヒースのほうへと近づいてきた。地球人 く、尾羽うち枯らした哀れな感じが、彼から消え去った。断固とし て、しゃんと背を伸ばして、彼は立っていた。その長身痩驅に筋肉は、彼女にふれようと両手を伸ばした。 と、その瞬間、彼女がパッとかき消えた。 が美しく盛りあがる。そして、みなぎる力に躍動していた。 ヒースは、手すりに倒れかかった。そして、長いあいだそのまま 顔の変化はもっといちじるしくさえあった。そこには、横溢する 力感が宿っていた。黒い目が、およそ人間のものとは思えぬ光に輝じっとしていた。いまや彼には神わざもなく、力もなかった。不意 き、灼熱の火と燃えさかっている。ついには、頭全体に不思議な後に燃えっき、消え果てた炎、崩れ去る灰のごとくだった。彼は、目 を閉じていた。その睫の下から涙がとめどなく流れ落ちている。 光がさしているかのように見えるのたった。 、 0 うる 9
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