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検索対象: SFマガジン 1971年12月号
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1. SFマガジン 1971年12月号

るすると壁におさまると、戸口の内側に鉄人のモックスが立って、匂いを発しているもやを衝いて、かれはそう言いかけたが、すぐに 0 5 鉄でできた腕を一節ずつなかにひっこめているところだった。最後気がついた。なんだ、ばかばかしい、クリスマスの星のことか。か 「たったこれだけのことで、おまえ には、手首から先だけが直接肩からぶらさがる形になったが、これれは信じられぬように言った。 おま はかれのお得意の挨拶で、そのあとかれはぎよろぎよろ目で秋波をはわざわざ庭を横切って、わたしを呼びだしにきたのかい ? えのそばにはいつもモックスがーー」 送ると、歓迎の閃光信号をばつばっとひらめかせた。 「モックスはやってくれないのよ」彼女はさえぎった。「あたい、 「いったいおとうさんがいっしよじゃなかったらどうするつもりだ 「ドアをあける合図の笛も持っ何度も何度もたのんだんだけど、どうしてもやってくれようとしな ったんだ」と、少女の父は言った。 てこないで、え ?. かれの足もとから、鋭い音色が三度鳴りひび いの。十五日からずっと落ちたままなのよ。覚えてるでしよ、あの き、重いドアは音もなく壁から滑りでて、クリスマス・ツリーの飾ばかな学生たちがジェットで家に帰るのに、規則を破ってやたらス あのと 。ヒードを出して、おうちを揺さぶったのを。ぶおーん ! られた、はでな赤い敷物の敷かれた部屋にかれらを閉じこめた 父親と、はだかの幼い少女と、鉄のモックスをである。見おろすきなの、お星さまが落っこったのは。ちょうどいつものようにね。 とにかく、あたいがたのんでも、かれはばかなことばっかりや と、彼女はいたずらつぼく笛を歯のあいだにくわえて、にこにこし ってんの、いまみたいに、あんなふうに腕を肩にひっこめちゃって ながら父親を見あげていた。 「最初からずっと持ってたのよ」そう言って彼女は、丈の高い、赤ね、流し目なんかしちゃって。ぜんぜんばかよ、あれ、言いたかな い敷物の草のなかにその笛を落とした。 いけど」 「しかし、おまえのおかあさんはどうなんだい ? 」 消えかかった雪の玉を足から拭いとった彼女は、氷のように冷え 「おかあさんとこなら、もう一週間以上も前に行ってみたわ。だけ きったおしりを壁の細長い穴へ持っていった。この穴を通して、常 夏の島のそれのように穏やかな、かぐわしい熱気が送られてくるのど、いつだって忙しいか、疲れてるかのどっちかなの。おかあさん である。まもなく、彼女の膝はふたたび膝らしい色にもどり、おしがいつもなにしてるか知ってる ? しよっちゅう身体のあちこちが りの多彩なまだらも消え失せた。消え失せたばかりでなく、それは痛むって言って、あのプラスチック男に揉ませてるのよ。それに、 ・ツドに引っぱりこむし。ときどきあた なにかっていえばあいつをへ ・ビンクの少女のおしりになり、彼女は、 こよなく愛らしいベビー 、あの男はおかあさんと愛しあってるんじゃないかと思うわ。愛 全身くまなく肉と骨と血ーーまだいまのところはーーーでできた健康 優良児のチャン。ヒオンとして、ある角度で天井を指しながら立ってってなに ? 」 いた。「見て、あのお星さま ! あれが落っこっちゃったのよ」彼「なに愛とはなにかだと ? それをおまえに話さなきゃならん 女に言われて、かれは彼女がツリーを指しているのに気がついた。 のか、わたしが知っているというのか ? 愛とは・・ーー愛とは、プラ 「どのお星さまだい ? 」ここ数年、いつも頭のなかで金属のようなスチックの家の鉄の天井ではなく : : : ではなくーーーおお、そんなこ

2. SFマガジン 1971年12月号

の体に痙攣が走ったあと、予言者は最後の力を振りし・ほって呟きをるが、なるほどこうして見るとあながちではない、ゞあそこ、に架 ? ~ 、、 発した。 ているのは人間ではない。神の子だーー呪うべき奸計のために命を 3 たま 「これで終わった。父よ、いまこそわが霊をおんみのお手に遣わし落とした麗しの・ ( ルドウレ ( 北欧神話に登 ) そのままだ ! 」 そのときかれの耳に、何千何万ともっかない蜂がひびかせる羽音 ます」最後の痙攣が発作のようにかれを襲った次の瞬間、茨の冠を そっくりの鐘の音が湧きあがった。そのなかに言葉が混じってい いただいた頭が前に落ちた。すべては終った。 「任務遂行のために最善はつくした」死刑執行場を警護する任にあた。ここ三十年というものそんな声を聞いた記憶はなかったが、そ 冫しナ「こやつら僧侶どもれでもすぐに思い出せる声がひびかせる言葉だった。「クラウス、 たった指揮官は、表情ひとっ変えずこ、つこ。 は禍いをもたらした。もしもこやつらの一人でも日暮れまで生き延なんじは遠き昔、兇漢に襲われんとした幼な子に哀れみをかけた。 びれば、われらは騒動をひとっ鎮圧せねばならなくなるだろう」かそしてこの日、その哀れみがなんじをしてひとりの死にゆく男を、 れは大槌を取りあげて、吊された罪人の腕と脚の骨を打ちくだく仕残忍比類なき暴行から救い出させた。なんじがその槍をわが脇腹ふ かく突きこんだとき、なんじはみずからの光にしたがって慈悲を垂 事に黙々としたがおうとする逞しい刑吏に合図を送った。 「待て、父なるオーディン ( 北欧話中最高 ) の大鴉に誓「て、その予れた。われを憶えているか、クラウス ? 」 「これは不可思議な ! 」クラウスは踵をめぐらし、衰えきって力な 言者の脚は砕かずにおくのだ」かれは衛兵から槍を剥ぎとりざま声 をかけた。「かれには人間らしい死に方をさせてやろう」闘技場い予言者の体に驚きの眼を向けた。「わしがエジ。フトへの逃避行に で、あるいは戦場で長年習いおばえてきた正確無比な槍さばきを見手を貸した、あのときの幼な子が ! 主よ、このあわれな臣下にい せて、かれは槍をかまえると、先に長々とついた青銅製の槍穂を予かなるお望みあって ? わしが打ちこんだ慈悲の槍は、狙いをはず 言者の胸に打ちかけ、かれの心臓を深ぶかと貫いた。穂先を引き抜れたのかーーわしの仕事はまだ終わっていなかったのか ? 」かれは ・イもういちど衛兵から槍を剥ぎとろうと再度手を伸ばした。しかし くと、血の混しった水が流れとなってほとばしり出た。クラウテ ウスは兵士に槍を返した。「生き延びる望みのない男にこんな情を クラウス。なんじの力が要 「なんじの役目はまだ始まっていない、 かけたのは、ずいぶん久しぶりのことだ」血に狂った群衆が愉悦の 色を抑えに抑えるなか、つい前夜までともに酒を汲みかわし賽を振り用になったとき、われはなんじを呼び寄せ、なんじはその声を耳 にするだろう」 りあった仲間と闘ってーー心なくも打ち破ってしまったその仲間に 剣を槍を打ちこんだ闘技場での日々が、一瞬のうちにもどってき死刑場を警備する兵士たち、あるいは大口を明けて刑の執行を見 北欧神話中オーディンの た。「フリッガ ) の眼に誓ってもいい」と、かれつめてきた群衆は、総督の片腕といわれる百人隊長がふと立ちあが 妻で結婚と家庭の女神 、十字架にかけられた若者に向かって、それがまるで手向けでも は十字架に磔けられた白い体を見上げていった。「この若者はうつ くし、 この男が、自分は神の子だと告げるのを聞いたことがああるように、あるいはまた相手が総督ご自身ででもあるように、深 たむ

3. SFマガジン 1971年12月号

「イマカンガエティル」 は、眼らしいものは全くないのに、いったいどの部分でものを見る ラナは右の後足を高くはね上げると、足の先の吸盤で天井からさことができるのか、ヨウレには全くふしぎだ 0 た。見たところ、ゴ 8 かさまにぶら下がった。やわらかい内臓やスポンジのような筋肉組ムの幼樹に似た高さ一メートルほどの何のへんてつもない背の低い 織がさかさまになった頭部にさがってきて巨大な頭部がいよいよふ植物に過ぎないのだが。一年ほど前、永遠の氷河につつまれた惑星 くれ上ってまるで一個の大きな水袋のようになった。まことに珍妙ペンダリオン (_) で、氷漬けになっていた円盤型の宇宙船の中で半死 なかっこうだが、これがいちばん = ネルギーを節約できる姿勢らし半生になっていたアモフィラを発見し、手当てを加えてメイ ( ラナはしばらくだらりとぶら下がっていたが、やがて頭をもた一員に加えたのだった。その円盤はかれらのもので、遠く銀河の果 げた。 からやってきたということだった。 「アモフィラヲココニツレテキテクレ」 「アモフィラ。ゲンインハナンダロウ ? 」 ョウレは操縦室の一方の壁に設けられたロッカーを開いた。淡い ラナがぶら下がったままの姿で頭だけ動かした。アモフィラがラ 紫色の紫外線灯の下に長さ一メートル、直径五十センチメートルほナに何かこたえたらしく、ラナはぐいと鼻先をアモフィラにねじ向 どの透明なカプセルが置かれていた。 けた。 チャン 「ラナが呼んでいるよ。トラコや槍やハザウェイがたいへんなんだ」 : ソウカモシ 「 : ・・ : ナルホド。タシカニソウダ・ : ・ : フム。ソレデ : ョウレはカプセルを開いて、中からアモフィラをとり出した。オレナイ : ・ : こ イルの空罐に植えられたアモフィラは紫外線灯のためか、惑星ペン ラナは何度も大きくうなずいた。アモフィラの思考波はたいへん ダリオン O で最初に見かけたときよりも、樹皮や葉の色つやが見ち指向性が強く、かれが直接話しかけようとする相手いがいにはった がえるように良くなっていた。『プホ』の乗組員に加わったときょわらないのがなんとももどかしかった。 りも、葉の数も一枚ふえ、大きなだ円形の厚い葉が六枚になった。 「どうなの ? 」 《ドウシタノダ ? 》 「コレカラタスケニュク。ョウレ、アモフィラヲモッテクレ」 凝結した思念がヨウレの心に波紋のようにひろがった。 「フェリー・ポートを出そう」 「まあ、スクリーンを見てよ。パトロールしていた槍と ( ザウ = イ「フ = リー・・ホート ( イラナイ , トラクダー からの連絡が絶えた。輸送車の位置はわかっているよ。それでさが ラナはもうハッチに向って動き出した。体長五十センチメートル しに出たトラコも連絡してこなくなった。槍たちのところへ着いた ほどに収縮するとハッチをくぐった。ョウレはアモフィラの罐をか ことは着いたらしいの。そこで偵察ドローンを飛ばしてようすを見かえて背後にしたがった。 たら、ほら ! 」 ョウレはアモフィラをスクリーンの前に置いた。アモフィラに チャン チャン

4. SFマガジン 1971年12月号

事が終わってたらーーー」ジョンとは彼女の。フラスチック・マンだっ そういうわけでかれらは、急速に雲が厚くなり、あたりが暗くな たーー「復活祭の日にちょっとお話ししましよう」 るなかを、鉄のように冷たい雪を踏んで彼女の住まいへ歩いていっ というわけで、訪問は終わり、まもなくかれらはふたたび庭へ出た。ドアがするするとひらいたとき、ほっとしたかれは、その場の た。「おまえを送ってゆかなくてもいいだろ ? おまえは笛を持っ衝動にまかせて彼女を抱きあげ、頭のてつべんにキッスした。それ から、プラスチックの入口をはいってゆく彼女の本物の肉でできた てるんだから、なあ ? 」かれは言った。「いいえ」彼女は言った。 「赤い絨毯のなかに落としちゃったわ。い ま思いだしたの。音がしおしりを、軽くふざけるようにたたいた。彼女の姿が家のなかに消 たのよ。濡れた絨毯のけばにめりこんじゃったわ。雪の塊りが融けえたあとも、かれはしばらくそこに立って、思いにふけっていた。 てるあいだにね。ねええ、あたい、おとうさんちへ行っちゃいけな楽しい夢の見はじめの三分の一のところにいる老人のように、かれ は、″交換″の時代以前の事物にうながされてか、・ほんやりうなす くそったれめ、とかれは思った。チビのくせにこうまでこすっかきながら立っていた。そして思った、もしや自分は、おのれの鉄壁 らいんだから。いつもなにか企んでやがる。この調子だと、クリスの耐久性のために、なにか計算外の、莫大な対価を支払ってはいな いだろうか、と。 マスが過ぎたら、なるべく早くこいつを″交換″に出したほうがい いかもしれんそ。 そうしてかれが・ほんやり考えにふけっているうちに、ひとつの高 くちつぼけな光が、突如として東方から、海岸の空港のある方角か 「おとうさんのとこには、なにも面白いものなんかありやしな、 らあらわれ、曇った空を、しだいに速度を加えながらこちらへ近づ よ」かれはせきこんで言った。「わたしの椅子と、思索の場所と、 いてきた。まもなく、あたり一帯は、おそろしい衝撃波の打撃のた ヌゴールがいるだけだ」ニグⅱナグのことまで彼女に話す必要は、 いまのところ認められなかった。必ずしも・せんぶが金属というわけめにふるえた。背後で《リトル・シスター》が金切り声をはりあげ ではないこの彫刻の女性を、かれはいつもべッ トの下に隠しておて、もう一度もどってきてくれと呼びかけているのが聞こえた。か り、どうしても必要に迫られた場合は : いや、世の中には、娘にれには見ないでもそれが、あの星がまた鉄の鉤からはずれたためだ は話せないことがあるものだ、すくなくとも彼女が成人するか、でということがわかっていた。早くねぐらに駆けこもうとする怯えた なければ、全身″交換″への道をかなりのところまで進むまでは。怪物のように、かれはふたたびあの坐り心地のいい椅子に安らいた 、宇宙的に深遠な問題をより深く考えたいという一心で、金属の 「じゃあこうしよう」かれは言った。「おとうさんがおまえをうち まで送ってって、ドアにロ笛を吹いてやろう、そうすればおまえは足を不恰好に動かして、よろめきながら庭を走った。 モックスのいる部屋にもどれる。星は直してやったし、もうなにも高くちつぼけなあの光は、さながら流れ星のように、大急ぎでど こかよそへ行こうとするなにかのように、脇目もふらず、なおもま 文句はないだろう ? すばらしいクリスマスを過ごしたじゃないか っしぐらに空を飛んでいた。 4 5

5. SFマガジン 1971年12月号

「ヨウレをわたすな ! 「まだ言わねえか」 そのつるの先端がヨウレの体にくいこんで血を吸おうというのだ 2 またふり上げた。 そのとき、ラナがすべるように動いてきた。十数メートル先からろう。みなの顔が土気色になり、ヨウレの悲鳴が木々の枝葉をふる わせた。 前肢をのばすと、吸盤で槍のうでをおさえた。 垂れさがったつるのあちこちが、卵のようにふくらみはじめた。 「ヨセ。アモフィラノイウコトハオソラクホントウダロウ。カレハ その部分がひくひく動きながら急速に膨脹する。そこから錐のよう リョウサレタノダトオモウ」 な吸管がとび出してくるのだろう。たまりかねた ( ザウ = イがレー 「ほんとうか ? 」 「アモフィラガコノタイボクノナカマダト ( オモエナイ。アモフイザー・ガンの火の矢をほとばしらせた。しかし何の効果もない。 ラノテレ。 ( シーノウリョクヲカンジトッタコノショクプッガカレヲの自動拳銃がたてつづけに吠えた。ごうごうと銃声がこだました。 瞬発信管の成形弾が何の抵抗もなく厚板のような繁みを突きぬけて リョウシタノダロウ ! けもの むなしく天空へ飛び去っていった。急速に膨大化したふくらみの表 「するとこの大木は最初からョウレをねらっていたのか」 皮が裂けて、とっ・せん、眼のさめるような真紅の薄片がひるがえっ 「ソウトシカカンガエラレナイ た。ひとつ、またひとつ、それまで幾重にもおりたたまれていた重 「ラナ。な・せやつはヨウレをねらったんだろう。栄養にするためか 圧から解放されるように、優雅な曲線を描いて展張した。数枚の薄 片がたがいに縁を接して筒形にあらたまったかと思うと、それそれ 「ソレナラトゥニソウナッティルダロウ」 が弦月のようにそりかえって大きく開いた。まばたきも忘れて見つ 「するとなんのためだろう ? 」 めるみなの眼に、それはふしぎなま・ほろしのように開いた。 「ワタシニモマダワカラナイ ( ザウ = イは投げ出されているアモフィラをもとのように罐にさ美しい花だった。 ふたっ、みつつ、よっつ。赤、白、黄色。つぎつぎと開く花は夢 し、とび散った珪藻土をすくって茎の周囲へ流しこんだ。 幻の羽根飾りか想像の生んた巨大な蝶のようにあざやかな色彩をふ 「人さわがせなやろうだ。ここへ来たいという気がもうなくなった りまいた。つるはあとからあとから垂れさがってきてはつぎつぎと と言ったな。見ろ、葉っぱがもとのように緑色になってきたぜ , そのとき、頭上をおおう繁みの間から、二三本のつるのようなも新しい花を咲かせた。その花弁の間から銀のくさりを束ねたような のが垂れさがってきた。それはぐんぐんのびながらみるみる直径十房がのび出した。大気は花の香気で充満した。甘く、それでいてそ 五センチメートルほどにな 0 た。先端が周囲のようすをたしかめるの甘さが少しも気にならないまろやかな落着いた香りは、荒涼と乾 いた大気を比類ない生あるものに変えていった。いつの間にか花は ようにしきりにうねった。 百を数えるほどになり、さらに数を増していった。最初は勝手気ま 「きたそ ! 」 チャン チャ /

6. SFマガジン 1971年12月号

「バットマン」のオリジナル・ノヴェル ・ ( ットマンとロビンのふたりが、大きな屋敷にいっしょに回に分けて放送されたが、、日本では、いっぺんに一時間ま 住んでいるかた。寝室も同じだ。ほかには、・ハ トラーがとめて、日曜のいい時間に放映された。だが、最近関係者 ひとりいるだけで女っ気はまったくない。博士は、それでの話を聞く機会があったが、それによると日本での、・ ( トマン番組の人気は低かったという。日本版の翻訳が悪い ホモだと見てとったのだ。それなら、ワンダー・ウーマン , ラダイのかと思って、訳者を変えてみたけれど、それでもダメだ はレスビアンの世界ということになる ( 彼女は。、 ・ウーマ ったそうだ。また、放送に呼応して少年画報者から出版さ ス島という、女護ガ島からやってきた、スーパー ンである ) 。美しさも、悪も、同性愛も。すべて見る者次れた、月刊雑誌「ハットマン」も、売れ行きはよくなくて、 第さ。まあ、とにかく一ほくは、ふたりの寝室を別々にし本国から、「アメリカでは大ヒットなのに、どうして日本 て、ハリエットおばさんという女性をふたりの世話役としではダメなのか ? 」と、いぶかしげな手紙が来たという。 てマンガに登場させることにしたよ。それでも、ホモの連 . ではどうして、日本では、成功しなかったのか ? 中は、喜んでテレビを見ているかもしれないね・。・ハットマ、私は、当時はまだカラーが、いまほど普及していな ンとロ・ヒンはびったりしたタイツ姿で出てくる。 . ホモの奴かったので . 「日曜日にわざわざカラー e-«> のあるところに らは、お互いに、ひざでもたたき合いながら嬉しそうに見出かけて、ときどき見ていた。ごらんになった方はお分り ているんじゃないかな。でもそれが、どうだっていうんのように、あのシリーズでは悪人たちは、いかにもぬけぬ だ。だいたい、そもそもホモじゃないんだから、・キャラクけと犯罪というゲームが楽しくてたまらないように、おお ターを変えるなんて、できるものか」 げさな悪事を企て人々を驚かしては、悦に入っていた。対 ・ヒーローにはある する・ハットマンとロビンは、スー テレビまじきみつともないへマをやり、おたおたする。ズッコケ ハている場面がしばしばある。またヒーローたちが、悪人ど 、諟 ! 番組「・ マもにパンチをくらわすたびに、 O ! N 0 —ー などという、擬音の文字が、マンガよろしく画面に踊り出 こ日本でもる。 (. 放映されそして、あるとき私はこんなシーンを見たのである。場 た。アメ面は、地下鉄の駅の構内。べンチに中年の夫婦がすわって リカでは電車を待っている男は新聞を読んでいる。そこへ、悪漢 水曜日とを追跡中の・ハットマンとロビンが、息せき切ってかけつけ 第木曜日る。ペンチのうしろを走り抜ける。女が走り行くふたりを 8 一 第き。・をーを ( 第ま ~ ・に、、三十、 - 、見てゞとなりの夫にささやく、「ね、ほら、あそこ、あな こ。 ' ハットマンとロビンが行くわよ ! 」興奮した妻の声に 分ず ? 二 、を鬻 BATMAN 評 0 EL 0 、

7. SFマガジン 1971年12月号

「シンケイサイボウガカイフクフカノウナホドノダメジヲウケルダがはえていないのだった。丈高い樹木だけではなくこれまで、時に ロウ は腰まで没するほどおい繁っていた下草さえ、たんねんに引きぬか れたかのように、一本もなかった。小石まじりの赤土が、未知の荒 「拒否反応を起すんだろうな」 野の一部のようにひろがっていた。 「つれてゆくしかないのか ? 「ソノゲンインヲタシカメタウニデショリ・スルシカナイダロウ」 その赤土のひろがりの中央に、天頂にとどくかのように一本の大 「よし。わかった」 木がそびえていた。 板金を打ちぬいた浮彫のような分厚い紫黒色の葉がたがいにかさ ョウレが息もたえだえなアモフィラをかかえ上げた。 なりあい、一、おしのけあって張り出した梢の先端は濃い影をはらんで 《モウスコシミギダ。ソウ。ソノママ、マッスグススンデクレ》 厚くしげつた葉の間からこ・ほれる陽射しが、生き物のように動い赤土の原をおおいつくそうとしていた。黒褐色の巨大な幹は五人の おとなが手をつなぎあわせてとりかこんたとしてもなお余るだろう た。愴は首をちちめてそっと腰の自動拳銃に手を触れた。 と思われた。 《チカクナッテキタ : : : モウスグダ》 「あれは 2 アモフィラが思考波をふりし・ほった。ョウレがラナの小山のよう な体のかげにかくれるように位置を変えた。ラナが急に後肢で立ち「サッキワタシノミタタイボクニチカイナ」 ラナが巻ひげをのばした。 上ると、身長二十メートルほどに巨大化した。しげつた梢よりもさ らに高く突き出した頭部がゆくてを見さだめる。やがてざわざわと「どうしてここだけ植物がはえていないのだろう ? 」 ョウレがつぶやいた。 梢をゆるがせて頭が降りてきた。もとの大きさにもどったラナは、 そのとき、アモフィラの思考波が炸裂した。 前肢で今、自分が望み見た方向を指した。 「コノホウコウニタカイキガミエル」 《ココダ ! ココへキタカッタノダ》 「なに 2 ・ここだって ? 」 「ずっと森がつづいているのか ? 」 「アモフィラー ここへおろすの ? 」 「チヘイセンマデッヅイティル」 《チカクニオオキナキガアルダロウ。ソノシタニオロシテクレ ! 》 「それじゃその木の所まで行ってみよう」 アモフィラの思考波は苦痛のうめきのようにねじれた。 ふたたび前進を開始した。 「あの木の下におろせって ! 」 とっぜん、頭上をおおっていた梢の繁みが切れ、あかるい空が眼「なぜだ ? 」 《ハヤクシテクレ ! 》 にとびこんできた。しかし実際には森林がそこで終ったのではな く、直径五十メートルほどの円形の竸技場のように、そこだけ樹木な・せアモフィラがこれほどまでにあの大木に引かれるのか全くわ キャ / 223

8. SFマガジン 1971年12月号

「聞えりやどうだってんだ ! あいつは重症のキケン病にかかって 言いわけめかしく言うと、ぶどう糖入の乾燥クロレラのウ工、 スをばりばりと口に押しこんだ。 いるんだ。なんかっていやあキケンだ、キケンだ、ぬかしやがって。ふ 9 「ああ、うめえ ! 」 ん ! 両棲類の見る夢は、アオダイショウにめくらへび、とくらあ」 なみだのでるような声で言う。五個の。ハックはみるみるただのア 槍はスイッチをたたいて電話を切った ルミ箔になってしまった。 「ハザウェイ。食わねえのかよー さらに一時間たった。何事も起きない。槍は眠くなってきた。 ( トラクター さりげないふりをして聞いた。 ザウ = イは輸送車の速度を九十キロメ 1 トルまで上げた。これでパ 「食う ! 」 トロールの時間はかなり短くなる。あまり早く帰り過ぎては培養 ハザウェイは脳天から声を出した。槍はあらためて交渉を開くべ タンクを洗うのを手伝わせられるおそれもあるし、のんびり走って きかどうか思案しているようだったが、やがて肩を落すとふたたび いると、トラコが作業を終って休息しているころまだこちらは荒野 トラクタ 赤外線望遠鏡へ向き直った。代ってハザウェイが食いはじめた。。、 , をごろごろ走り回っているという悲惨なことになりかねない。輸送 ックのアルミ箔が小さな金属音を立てるたびに、ハザウェイの首筋車はがたがたとはげしくゆれながら小石地帯に入った。 チャン の筋肉がひきしまった。 「槍 ! あれを見ろ ! 」 とっ・せん ( ザウ = イがさけんだ。その指さす方向にのび上ると、 完全に陽は没し、惑星『ジ ' ィア 2 』に夜が来た。夜空の半分は丘陵の間の浅い谷間の奥に、あかるい灯が見えた。 「なんだ ? ありや」 薄い雲におおわれ、南の地平線近い雲の切れ間から、あかるくかが やくオレンジ色の星がのそいていた。『ジョイア 1 』であろう。大二人は思わず顔を見合わせた。草一本はえていない荒れ果てた惑 星の谷間の奥に、あきらかに文明の所産のひとつを示されて、二人 きさはこの『 2 』よりも少し大きく、直径九八二〇キロメートル。 トラクタ は声を呑んだ。輸送車の進むにつれて灯はぐんぐん近づいてきた。 質量はほ・ほ地球にひとしいと記録されている。 灯はどうやら逆型に砂の中から立ち上ったポールの先にとりつけ ス。ヒーカーに水の流れるようなノイズが入った。 トラクダー られた水銀灯らしい。あかるい光環が暗黒の舞台を浮き上らせた投 「こちら『プホ』、こちら『プホ』。輸送車、異常ないかー 光器のようにきわだっていた。その光の中に何か見えた。 ョウレの声だった。 「ハザウェイ。とめろ。そっと近づくんだ」 「あのカエル野郎に言ってくれ ! どこにもなんにもいねえ。砂の 二人は輸送車からとび降りると、背を丸めて影のように走った。 上には虫のはった跡もねえよ。おおかたやつはヘビの夢でも見たん 走りながら槍は腰のベルトから自動拳銃を引きぬいた。武器を持っ だろうよー てこなかったハザウェイは石をひろった。 「しつ ! 門 耳えるわよ , チャン ッ -L 一フ・ 1 、ー チャン トラクター チャン チャ /

9. SFマガジン 1971年12月号

た。「あのドア ? よし、ウインケンー・ーー中へはいって用意しろ。 リアム〉の方針で、売上げ記録を見てもらえば、それでお釣りがく サウンド ノッド、おまえは音響トラックの準備、それがすんだらドアのほうることがわかるのだ。 だ。あとのみんなはーー」サンタはちらっと部屋の中を見まわし というわけで、そこに残ってゆっくり見物していきたいのは山々 た。「クリスマスの飾りつけを、あそことあそこへ。さあ、急ぐんだったが、日曜日の午後とあっては、のんびりしていられない。お だよ、みんな ! 晩までにあと四軒、訪間しなくちゃならないんだれはこっそりその場をぬけだし、ストアに帰った。それから四時間 から」 猛烈に働いたが、退勤時間を控えて特別サービス課員がちらほら帰 この連中ほどよく働くクリスマスの小人には、まだお目にかか つる頃には、ちゃんと下へ降りて待っていた。お目あてのチームが、 たことがない。あっというまに、クリスマス・ツリーが、。ヒカビカしを 、ちまん最後に帰ってきたのはいうまでもない ーーー世の中、万陣そ 光る星と、灰色の注文用紙と、クレジット申請用紙までそろって、 うではないだろうか ? サンタはひどく疲れたようすだった。彼が グリー お仕着せを脱ぎ、売上カードを出納へ回すまで待ってから、おれは そこに立てられた。あっというまに、ふたりの助手が、 ( サウンド プ家の居間から外の音響トラックまで、緑と赤の電灯をじゅずつな声をかけた。「おい、どうだった ? 」気になっていることをきい ぎに張りわたした。あつあっというまに、音響トラックを〈クリスた。「ミス・ ーグリープはーーーっまり、いちばん上のミス・ハー マスにほしいものはなんでも二つずつ〉の楽しいメロディーを道路グリー・フだ なんか言ってたかい ? 」 いつばいにひびかせはじめた。そして、早くも近所の子供たちが二 彼は責めるようなまなざしをおれに向けた。 人、三人と戸口に現われ、目をばちくりさせながら、なにかおもし「ひどいよ、マーティンさん」と鼻声でいった。「あたしらをほっ ろいことがないかと待ちうけていた。台所の助手たちは、ココアをといて逃げるなんて法がありますか。あんなカープを投けられたひ 紙コップにつぎ、着色砂糖をまぶしたクリスマス・クッキーをさしにや、こっちのスケジュールがまるきり狂っちゃうよ、マーティン だして、子供たちから小銭を受けとっていた。実演班は、袋から出さんー したオモチャや小間物を子供たちに見せびらかしていた。そして、 それはいやしくも課長に対してサンタがすべき物言いではなかっ サンタは。ヒカ。ヒカの玉座にすわって、呼びかけていた。「ホーホー たが、おれは大目に見ることにした。きっと相手はのぼせているの ホー、みなさん。きみたちのパパは、このたのしいクリスマス・シ 「いったいなんのことだ ? 」と詰問してやった。 ーズンに、どこで働いているんだね ? 」 「あのハ 1 グリープ一家でさあ ! まったくだよ、マーティンさ おれは彼らを誇りに思った。ここにいる助手たちは、ソール・アん、むこうのやることときたら、まるでおれたちに帰れよがしさ。 ンド・キャ。ヘルをはしめ、ほかの店へいけば、それこそ自分の助手子供たちも相当なもんだがね。しかし、親父が帰ってきたときには をもったサンタとして一本立ちできる連中ばかりだ。しかし、これ くわばら、くわばらー・ねえ、マーティンさん、あたしがこの 7 が給料に糸目をつけずに腕ききをそろえるのが、わが〈ジ・エンポ課で働くようになってからもう十一回目のクリスマスになるけど、

10. SFマガジン 1971年12月号

トラコの平手打ちがヨウレのほほに鳴った。ョウレはかすかに眼 まな方向を向いて開いていた花が、しだいに向きを変え、やがてす べての花がヨウレを押しつつむように向きなおった。花弁から垂れを開いた。 さがった銀の房が、意志を持ったもののようにはげしくゆれ動い 「腹がすいたろう。食物を取りにやらせる」 ョウレは首をふった。 た。銀のくさりの環のひとつひとつがその動きに耐えないかのよう にいちどにほどけて白銀の吹雪となって舞い散った。花々はいっせ「私、もうあきらめたわ。みんな出発して ! 」 いに銀の房を解き放ち、それに打たれた花弁は重さを失って多彩な「何を言うんだよ。今、みなを起してまたやりなおしするんだ」 薄衣のようにひるがえり、波を打った。そのあえかな美しさと香気「だめよ。あの花。あの花を見たでしよう。美しくて、豊かで、眼 がくらむよう。魂まで吸い取られてしまいそう」 の中でヨウレは気を失った。 ョウレの言葉に、トラコは棒立ちになった。そうだ花だ ! 美し い花が咲き乱れるのを見たのだった。しかしいくら周囲に眼をはし どのくらいの時間が過ぎたのか、トラコがわれにかえった時は、 周囲は水色の夜気に閉ざされていた。月が出ているのか、と思ったらせても、頭上をうかがってもあれほど咲き乱れていた花は、花弁 がそうではなく、星あかりだった。感覚がよみがえってくると、刺すひとつ、花弁につつまれた銀のくさりひとっ残されていなかった。 トラコは空「花はどうした ? 」 ような寒さが体のしんまで突き刺さってきた。寒い チャン 「しらない。どうなったのか」 白な意識を抱いて上体を起した。倒れている黒い影がひとつは槍、 「夜になったので引込んだな。まるで夢を見ているようだった」 ひとつはハザウェイとわかってとっぜんすべての記憶がよみがえっ これ以上、ここにとどまってい てきた。かれの体内で一瞬、凍てつく寒気と灼熱の焦燥が入れ替わ「トラコ。早く出発した方がいい ると、もっと悪いことが起りそうだ」 ョウレはあえいだ。 「しまった ! 」 もどかしくともした投光器の光の環の中に巨大な塔のようにそび「しつかりしろよ。みなを起してくる」 「行くのよ ! トラコ。夜があけぬうちに出発して ! 」 える大樹の根本近く、紙の人形のようにヨウレが貼りつけられてい チャン ハザウェイも槍もうつろなまなざしで歯をかみ鳴らしていた。 た。かけ寄ってみると気は失っているがまだ呼吸はあった。 「トラコ。どうするんだ ? これから」 「しつかりしろ ! 」 「どうしたらよいのか、おれにもわからん」 トラコはいそいでヨウレの代謝調節装置と体温調節装置のスイツ チを入れた。もう五分、それがおそかったらョウレは意識を失った「このままではヨウレもそう長くはもつはい」 「ひどく消耗している」 まま絶命するところだった。 三人の胸に、はじめて奈落のような敗北感がおそってきた。三人 「大丈夫か ! ョウレ」 229