だが、ソルダーセンは残ったことたろう。自分の仕事が完成するす」とペイトンはいった。「助かる者は一人残らず解放したいので までは、創造への意欲が依然として彼をこの世に繋ぎとめていたのす」 だ。彼の最大の労作であり、かつおそらくは世界の記録に残る最も相手は苦々しげに笑った。 すばらしい電子工学の偉業である二つの「技術者」は、彼の最高傑「助かる、だって ! 何からかね ? 私がこの世から逃れるのには 四〇年かかった。それだのに、君は私をまたそこへひきずり戻そう 作だったのである。 その途労と傷ましさにペイトンは言葉もなかった。苦い思いを抱というのか。出ていってくれ。そして私をそっとしておいてくれ」 いたこの天才が自分の生涯を棒にふったからには、その仕事は減び ペイトンは、そうやすやすとは引きさがらなかった。 させずに世界に与えられるべきだと、彼は今までにもまして決意を「あなたのこの偽の世界が現実よりましだと思うのですか。ここか 固めるのだった。 ら逃げたいと思う気は全くないのですか , 「夢を見る人たちは、みんながこうなのか」と、彼はロポットに訊またもや、相手は、おかしさの一かけらもない笑い方をした。 「コマ 1 ルは私にとって現実なのだ。世界は私に何も与えなかっ ねた。 た。それなのに、どうしてそこへ返らなければならないのだ。私は 「ごく最近に来たものだけは違う。彼らはまだ前の生活を覚えてい ここに平和を見出した。私に必要なのはそれだけだ」 るかもしれない」 「その中の一人のところに連れていってくれー ペイトンは、突然、くびすを返して外へ出た。背後からは、夢を 次に入った部屋は他の部屋と同じだったが、べッドに寝ている体見る男が満足けな溜め息をついて横になるのが聞こえた。さすがの 彼も敗北を認めざるをえなかったのだ。しかも、今になってみれ はせいぜい四〇歳の男のものだった。 ば、自分がな・せ他の人々を蘇らせたかったかがわかったのである。 「彼は、どのくらいここにいるんだ」とペイントは説ねた。 「つい数週間前に来たばかりだ , ーー君が来るまで、何年このかた初それは何かの義務感に駆られてではなくて、自分の利己的な目的 からたった。彼は、コマールが邪悪なものだということを、自分に めての訪問者だった」 「目を覚まさせてくれないか。 いい聞かせたかったのだ。いま彼は、そうでないことを知ったので ゆっくりと眼を開いた。そこには狂気はなく、ただ怪訝さと悲しある。ュートビアの中にあってさえ、この世から悲しみと幻減をし みがあるだけだった。それから記憶の影があらわれ、男は半ば起きか得られない人々が、いつも少しはいるだろう。 あがって坐った姿勢になった。 / 彼の最初の言葉は完全に正気のもの彼らは、時がたつにつれて、次第に少くなるたろう。一千年前の 中こっこ 0 暗黒時代には、人類の大部分が、何らかの意味で社会の不適合者だ 「どうして私を呼び戻したのた。あなたは誰かねー った。世界の未来がいかに輝かしいものであろうと、多少の悲劇は 5 「僕は、たった今、思考投影機の手から逃れたばかりのところで依然としておこるだろうーーそうだとすれば、彼らに唯一の心の安
「お望みなら、そう訂正してかまいません。私個人としては書き直し、相手を圧倒させたいために批評をいうものがいます。正直なと ころ作家というのは、感情的で、ひとりよがりで、人格のバランス したほうがいいと考えているのですが、買ってくれるのは貴兄で、 に欠ける人間がほとんどです : : : 現実的な考えを持った、正直な作 買い手の意見は常に正しいのです」 家は、数えるほどしかいません。新人作家に忠告するとすれば、そ ますますわからなくなってきた。 自分の欠点をわきまえ、それを克服しようと努力する作家でありれはこういうことです。自分よりいくらか余分に小説を売っている たいと決意をかためたところへ、このままでいいという手紙が届いといった程度の作家からは、助言や批評を聞く必要はありません。 たのだ。しかし金を儲けることこそ、自分の最大の目的ではないのあなたの小説を買うのは彼らではないし、そんな人間が正しい尺度 か ? 困惑した彼は、アン・マカフリイとダ = = ル・ガロイに助言で評価できるはすはありませんから。 ・ : 作家には、自分の作品の良し悪しはわからない、と貴兄は書 を求めた。 いておられましたが、それは小説作りがいかに主観的な作業である マカフリイ「批評の良し悪しなど、あなたはどう識別しますか 2 ・ ハインラインですら、執 文体が好みにあわなくて読むことのできなかった小説というのかを示した言葉だと思います。あのポプ・ は、だれにもあるものです。ところが、その同じ文体が、別の人間筆中はそれが傑作か、水準作か、凡作か見当もっかないといってい にはたいへん強く訴えるものを持っていたりします。ちょうど作家ます。 = , 、ジ = ントから最初の通知が届いてもまだ不安で、やがて が、自分の書くものに適したマーケットを自然に選ぶように。あな前払い金が届くころには、小説のできばえなどどうでもよくなって しまうということです。 たの作品は、そのイギリス人の体質にびったりだったのでしよう。 貴兄と同しような経験を、私もしています。今年のはじめ、長篇 彼は欠点の奥にある作品の真の価値を認めたからこそ、買ったので す。悪い批評とは、したがってあなたが小説を売るのに何の助けにを一冊書きあげたのですが、アメリカの出版社は待ちかねていたよ うにそれを買い、今までの最高だとほめてくれました。ところが、 もならない批評であり、良い批評とは、下手な小説の欠点を直し、 ロンドンのゴランツ社では気に入ってくれず、今までの最低たとい それが売り物になるようにする批評である、そういってかまわない うのです。イギリスから届いた酷評を読んだときには、まったく穴 んじゃありませんか ? にはいりたい気持でした : : : 」 あなたの小説の基本的な欠点は、このあいだお聞きになったとお りです。それを個条書きにして、タイ。フライターに貼っておいてご ところで問題の作品の現物なのだが、これは昨年六月に出た、ジ らんなさい。わたしも同じことをしています。いつもながめている ヨージ・ヘイのアンソロジイ『消え」てゆく未来』 The Vanishing うちに、無意識に誤りを避けるようになり、リストがだんだん短く Future ( ・ハンサー・ブック ) に収録された。タイミングを逸したの なっていきますから : : : 」 ガロイ「ある種の批評には、無価値なばかりか、足をひつばるよか、わが国に輸入されなかったのか、まだ手にはいらない。同じこ ろ作者シャブドレーンは、イギリスで開かれた大会に出席し、 うな働きがあることも事実です。 ミルフォードの連中のなかにも、何かいわねばならなくて無意味ヘイ夫妻とはじめて対面した。色ページの写真は、そのときのスナ ( この項終り ) ツ。フである。 なことをいっているものや、自分のテクニックと聡明さをひけらか dl 礬し 7 一世ⅢいⅢ、 tl リ”Ⅲ当Ⅲ当 . Ⅲ円いⅢはいⅢ、
る役目をもっているが、超性能をもったコロサ もはるかに公平で完全である、と考えられた。 映画は巨大な地下室で、動きはじめた「コロ スは、自分と同じシステムが、ソ連にも完成し 4 7 サス」の最終点検を終った科学者が、「コロサたことを、いち早く探知したのだ。 アメリカや自由諸国の優位はつかの間の幻想 ス・システム」センターを退出するところから に終ったが、コロサスは、相手をよく知るため 始まる。 と望んでき 「禁断の惑星」に登場する地下工場のような地にソ連のシステムと交信したい、 下道や昇降トンネルをいくつも通り抜け、厚さた。 大伴昌司 ソ連のシステムは「ガーディアン」 ( 衛兵 ) 6 メ 1 トルもあるような金属製の放射能遮断の 扉をいくつも閉めて、鉄道のトンネルに似た平とよばれ、コロサスと同じように防御報復兵器 に直結していることまでは判ったが、計算能力 米ソの戦略用コンビ = 1 ターが暴走して、た凡な出入口から地上に出る。 がいに手を結び合い、綿密な計算のもとに人類「コロサス・システム」センタ 1 に入る道はこをどのくらい与えられているのか、はっきりし を完全に支配するまでを描く疑似イ・ヘントれ一つしかなく、一度扉を閉してしまうと数十なかった。 同時にソ連側もコロサスの存在を知って、そ 映画の傑作が輸入、公開された。 年後のオーパーホールまでは開けられない装置 ーサル製作の『 TheForbinProject 』・がついている。もし、だれかがむりやりこじ開の能力をリサーチしたかった。ただちに回路が ( 地球爆破作戦 ) で番組調整のため二月下句にけようとしても「コサス」の鋭敏な防御装置用意されると、コロサスとガーディアンは″対 突然封切りが決り、二本立てでひっそりと上映が反応して、侵入者はたちどころに消されてし話“を開始した。 最初はソ連のガーディアンの知能が劣ってい まう仕組みになっていた、 されてしまったので、未見のファンが多いとお ることは明白だった。単純な掛け算の交信から 最後の扉が閉されると、「コロサス」センタ もわれるので、少々くわしく内容を紹介してお きたい。 ーは無人の頭脳工場になった、大統領官邸では始めて、ソ連の知能が追いつくのを待って、や がて徴積分から高度な数学の″学習れに移っ 完成記念の。ハ 1 ティが開かれ、テレビカメラの 近未来のある年、ロッキー山脈の地底深くに た。そして二時間後には、二つのシステムは、 ″コロサス・システム〃と称する戦略用の無人前に立った設計者のフォービン博士は 「コロサスは人工衛星からの報告も含めて、あたがいに暗号を使って、なにを連絡し合ってい の電算機センターが完成する。 らゆる通信電波を集め自由諸国の安全と平和をるのかわからなくなってしまった。 数百メートルの地下に建設した巨大な要塞に コロサスは情報を積み重ねて、より高い知能 は、史上最高の頭脳をもっ巨大なコン。ヒ : ータ守るだろう。動力源は自動的に保護され、自給 に発展、生長させる能力を与えられていたが、 「コロサス」が置かれて、全世界のありとあ自足が可能であり、いまやアメリカの防衛体制 明らかに人間を無視した動きに驚いた米ソ首脳 は完全になった」と解説した。 らゆる情報が、直接ここに集められるようにな は、ホットラインで相談した結果、これ以上機 ーティが終らないうちに、早くもコロサス っていた。 密が流れるのを防ぐために、交信回路を撤回す の電光板に文字が流れだした。 もし、どこかの国が、アメリカに攻撃を加え 『地球上に、もう一つの電算機システムが完成ることにした。 ようとしたときは、全世界に張りめぐらしたレ だが、コロサスは黙っていなかった。 ーダー網からの報告を分析して、瞬間的に報復された : : : 』 「交信回路を復元しろ。対抗処置をとるそ」 この電光板はコロサスの中枢に直結してい ミサイルをぶっ放すが、その判断力は感情をも 電光板で抗議しながら世界中の通信回路に電 たず、憎悪もシットももたないため、人間よりて、コロサスが整理分析した情報や意思を伝え トータル・スコープ
世界最高最大のミステリ・シリーズ 既刊 1 041 点 カリブ海の秘密 アガサ・クリスティー 永井淳訳 連続殺人かにわかに黒々とした影を広げていくカリプ 海の休日にミス・マープル、会心の推理ー三四〇円 死はいった、おそらく ボアロー、ナルスジャック大友徳明訳 立卞自殺未遂から立直ろうとする女とその恋人達を破滅に 追いこんでいく執拗な死の影の正体とは ? 三五〇円 の 月 め ハヤカワ・ミステリは毎月 5 日 . 15 日 . 25 日に発売します エド・マクベイン井上一夫訳 六日の夜、惨殺された男が握っていた写真の切れ端し の意味とは ? 八七分署シリーズ最新作三二〇円 ■墓掘り・棺桶エド・シリース / チェスタ ! ハイムス 工藤政司訳三三 0 円 狂った殺し 〈 4 月刊行予定〉 三四 0 円 ( 仮 ) 尾坂カ訳 イマベルへ夐 〈 5 月刊行予定〉 三四〇円 許土 リアル・クール・キラ仮 ) 伸訳 ー不ー↓↑
えるリレーの忍び笑い以外には沈黙したままでいた。 小さな機械は、黙ったまま駆動輪で向きを変えると、部屋から滑 床から一〇フィ トのキャット・ウォークに立っていたペイトンり出ていった。機械がペイトンを案内していった廊下は、美しい彫 3 は、この機械を非常な興味をもって眺めた。小さな駆動輪の上に載刻のあるドアで終っていたが、それは彼がすでに開けようとして失 せた厚い底板からは、。ヒカ。ヒカした金属の円柱が立っていた。手足敗したドアだったのである。号は明らかにそのドアの秘密を心 に相当するものは何もなかった。円柱は、丸い眼のレンズと小さな得ているのだった・ーー彼らが近づくと、厚い金属板は音もなく横に 音声用の金属格子以外は、傷一つなかった。 開いたのだ。ロポットは小さな箱のような部屋に滑りこんだ。 機械の小さな頭脳が二組の矛盾する情報と取りくみながらまごっ ペイトンは、自分たちがまた別の物質電送機に入ったのかと思っ いているさまは、なかなか愉快だった。一方ではペイトンがこの部たが、すぐにそれが何の変哲もないエレ・ヘーターだとわかった。上 屋にいるはずであることを知りながら、その眼はこの場所が空つ。ほ昇の時間から察すると、彼らは都市のてつべん近くまできたに違い であることを知らせていたのである。機械は小さな輪を描いて駈けなかった。ドアがあくと、そこは。ヘイトンにはまるで別世界のよう に思えた。 まわり始めたので、ペイトンは気の毒になってキャット・ウォーク から降りていった。機械は直ちに旋回をやめて、歓迎の挨拶を始め彼が最初に入りこんだ廊下は、どれも単調で飾りけがなく、純粋 に実用一点張りだった。それにくらべて、ここにあるホールや集会 「私は号です。どこへでも行きたいところへお供します。どう室は、最高の豪華さで飾られていた。二六世紀は絢爛たる装飾と彩 ぞ標準ロポット語彙で命令してください」 色の時代であって、後世からはひどく軽蔑されたものだった。だ ペイトンはやや失望した。これは完全に標準型のロポットであつが、デカダン主義者たちは、自分たちの時代より遙かに先んじてい て、ソルダーセンの建設した都市にはもう少しましなものがあるとたのだ。彼らはコマールを設計するにあたって、芸術とともに心理 学の蓄積を絞りつくしたのである。 期待していたのである。だが、この機械は、うまく使えばなかなか 役に立ちそうだった。 今も作られた当時と同じく見事な壁画、彫刻、絵画、手のこんだ 「ありがとう」と、彼は必要もないのにいった。「居住区域に連れ織物は、一生かかっても見つくせないことだろう。こんなすばらし ていってくれたまえ」 い場所が、人気もなく、世の中から隠されていることは、何もかも ヘイトンは、あれほどの科学への熱意 ペイトンはその時までに、この都市が完全に自動化されているこ間違っているように思えた。。 とを確信していたが、都市の中にいくらかの人間が生活している可もほとんど忘れて、この宝の山の間をまるで子供のように次から次 能性は、依然として残っていた。自分の探究を助けてくれる人が誰へと走りまわった。 か、ここにいないともかぎらなかった。もっとも、妨害を受けない ここにあるものは、世界がこれまでに生んだ誰にもひけを取らな というのが、望みうる最上のことかもしれないのだが。 いほど偉大な天才の作品だった。だが、それは病んで絶望した天才
ないような行為に挑戦しているのだ。そして登場人・ ( ラディンとマーガンサーの宇宙船は、寄妙な惑星ている部分もある。だけどそんなことは問題じゃな 物というのは、最初の四人だけ。彼らが様々な姿にに到着し、原住民の神様にされてしまったり、パラい。処女作でこれだけのものが書けるなら文句はな 変形され、投影されては数多くのエビソードを構成ディンが苦行者となって、砂漠の王クラーグと出会い。ムーアコックが全体の作品でやっていること していく。しかし、発端で与えられた四人の性格付う話があったり、夢の中で見た女に、このすべてはを、ただの一冊でやってのけているのだから。 ここまで考えてきたとき、すごい考えが浮かん けには、さほどの変化は与えられていない。そして一彼女の夢にすぎないのだと告げられたり、かと思う だ。もしかすると・・ジョゼフとはムーアコック これらのエ。ヒソードの軸になるのはパラディンとへと、王女と騎士の登場する完全なファンタジ 1 があ の。ヘンネームじゃないだろうか。何しろム 1 アコッ レナの恋愛、そしてクラ 1 グ、マーガンサーとの対ったりするのだ。ことにこのファンタジーのエビソ クには、以前に C.* ・ A.4 ・・フラッドベリでひどい目に 立。このあたりのテク = , クのうまさには舌を巻ードは、情感に満ちていて、よくできている。とに一会わされている。登場人物の一人が白子だ 0 たり、 かく、これで、まだ三分の一ほどのエピソ 1 ドもあファンタジ 1 の部分も、ストーム・フリンガーや一連 たとえばこんなエ。ヒソードがある。舞台は、未げていないのだから、この作品がどんなものなのか〔のヒロイック・ファンタジ 1 ものに似ているといえ 来。場所は不明。大金持のクラ 1 グの娘ヘレナと結想像はつくだろう。 ば似ている。しかも、まったく無関係なストーリー 婚したパラディンは、クラーグスハ ーベンの街の管しかもこれらのエ。ヒソードは、ただ単に並べられ一を、一人の主人公によってつなぐというやり方は、 理をまかされていたが、ある日、妻の〈レナが友人ているだけではない。そのそれぞれが役割を持ち、ムーアコック自身のやり方と、考え方からしてまる で同じじゃないか。たしたいニュ 1 ジランド在住と のマ 1 ガンサーと情事を楽しんでいるところを発見全体としての作品を構成するように配置されている いうのからして妙だ。こいつは面白いことになって して、彼を殺してやろうとする。ここで可能性が二のだ。最初は四人が必ず登場してくるように作られ きた、そう思いこむと、興奮に震えながら、伊藤氏 つになる。すなわち、マーガンサーを殺したパラデていたエビソ 1 ドも、後半になるにしたがって、そ のところに電話して、・・ジョゼフ = ムーアコ インと殺さなか 0 たパラディンだ。後者のパラディれが三人になり、そして最後で二人、・ ( ラディンと , ク説を話してみたのだが、彼の返答はまたもやっ , ラディン : ・一二一一という番号が与えら〈レナだけが残る仕組みになっているのだ。そしてれないものだった。「その可能性はないね。ムーア れ、物語は、続行される。パラディン : ・一二一一最後を飾るエビソードだけが、これまでのエビソ 1 コックがゴランツ ( 英国の出版社 ) から本を出すわ は、ヘレナとマーガンサ 1 の関係を受け入れて、哀れドと違って、未来を持っている、すなわち、そこかけがい。それにそんな傑作だったら、ム 1 アコック 名義で出すに決まっているじゃないか」 な人生をおくることになる。殺してしまったほうのら物語がはじまるところで終っているのだ。 パラディン : ・一二一二は、その現場から逃亡するのちょっと考えてみると、こうした構成の作品は、残念、せつかく大発見だと思ったのに。しかし・ほ だか、パラディン : ・一二一二一は途中で捕まって刑ひどく雑然としたものとなってしまうような感じがくはまだこの説を捨てたわけではない。誰でもい ニュージランドのオークランドを訪れる人があ に服すことになる。しかしパラディン : ・一二一二二するが、そこをジョゼフは、登場人物を絞り、彼ら ったら、・・ジョゼフのサインか名刺をもらっ ( 数字の変化に注目 ) はうまく逃げおおせ、他国のだけで全体を統一することによって、思いがけない てきてもらえないだろうか。もしも本当にいたら仕 土地へ行「て、そこで幸福な余生を送るのだ 0 た。ほど整然とした印象を与えることに成功している。方がない、惜しいけれども、す 0 ばりとあきらめる かと思うと、何時の間にか非宇宙を脱出していた一もちろん幾らかの欠点はある。イメージが混乱し ( ことにする。 ・ 00 4 (D 、スキ、ヤナ 1 5
ドン・・ディクスン、、 ーラン・エリスン、キャロル・エムシュる。文章は無個性。読みだしたとたん、あくびが出てくる。ばかば ウイラー 、ート・ファイラー・ O ・フォンタナ、ジョゼフ かしくて読んじゃいられない個所もある。十四、五の年にもらう金 グリーン、リチャード・ヒル、デーモン・ナイト、キイス・ローマが一ドル八十五セント。ほっち、そして車の・ハックシートでネッキン アン・マカフリイ、ラリイ・ニーヴン、アンドレ・ノートン、 グだって ? よしてくれ ! これじやマンガだ : : : きみの作品はそ クリーシェ ジョアナ・ラス、ケート・ウイルヘルム、ジャック・ウィリアムスういうマンガ的プロットでいつばいなんだ。常套句の氾濫、不適当 ン、ジーン・ウルフ。 な言葉づかい 、 that と which の相違すらわかってない。。フロ作家 ご存じない名前も多いと思うが、みんな現在アメリカ界で活を志しているんだったら、この職種のいちばん大切な道具ーー言語 躍している作家ばかりだ。シャブドレーンがとったノートのなかか の使いかたぐらいは心得ておくべきだな。それから性格づけ といいたくなる ら、彼らの意見を聞いてみよう。 も、あってないようなものだ。主人公にはゲエーツ し、二人称で語りかけてくる彼の自伝は、退屈で、あっかましく て、無礼で、しかもストーリイテリングの根本をまったく無視して ーラン・エリスン「いくら譲歩しても、これはいい作品とはい 二人称を使ったのはまちがいだ。形式は、小説の目的に従いる。何か意図があってやったというなら、こんなことをいっても うべきだ。二人称は何の役にもたっていない。 この形式の小説がなしようがないが : : : しかし、これじや高校生の作文だ。会話に対す ぜ少ないかは、ちゃんとした理由があるんだ。利用範囲が限定される感受性も見られない。あんなふうな喋りかたをする人間はいない ているし、よほど巧妙に扱わないとびったりしない。だから、きみ・せ。それからプロットの矛盾をごまかすために、現実を勝手に作り は最初からたいへんな不利を背負って書きだしたことになる。おまかえて読者をだましている。「さいわい著作権法は改正されてい けにストーリイは他愛ないし、長々と書きすぎている。結末は途中た」そりや、 " さいわい。だろうさ、きみが小説を書く上にはな。 オしナカここにあるのは、疑似科学的なでた ・ほくは科学者じゃよ、。・こ・ : から見え見えだ。読者をよほど・ハ力だと思っているのか、余分な言 葉が多すぎる。最初は気にさわるだけのくりかえしが、読みすすむらめばかりのような気がする。小説の迫真性をだすために挿入した うちに肚がたってきて、最後にはうんざりしてしまう。文体は、作というなら、わからないこともないけれども、この作品の場合には 者がヒステリーをおこして金切り声でわめいているみたいだ。文法ストーリイを渋滞させているだけだ。非論理的な疑似科学で飾りた イディオット 的にも、見られたものじゃない。文法をまちがえたために成立しててた、救いがたいほどへたくそな白痴プロットの小説ー・・ー・結論はそ こんゅ しまった混喩 ( 二つ以上の性質を異にする、あるいは矛盾する隠喩ういうことだね」 の混用 ) 。行きあたりばったりで、ぎこちなく、冗長すぎる構文。 ・、ツクグラウンドがしつかりしていないので、意図しないアナクロ おそれいりました。 ところで、おしまいの文章のなかに出てきた″白痴プロット″と ニズムがあちこちに顔を出す。杭の柵と移動道路だとか、・ハ いうのは、ジェイムズ・プリッシュが作りだした用語で、登場人物 ートでネッキングしているカップルだとか ( きようび・ハックシート イディオット でネッキングする奴なんかいないぜ ) 。しかも、時代遅れのモラル たちがもう少し頭がよければ・ーー・白痴でなければーー半分足らずの を未来社会にもちこんでいるので、すごく作りものじみた感じがす ( 七〇。へ、ージにつづく ) 0
おるわけでもあるまい。それとも、人類は平等に生まれたと考えるらの借用句ばかりだ。それにしても、彼、古い作者をよく読んでお るな ! 」 ような愚か者なのか ? 」 「これであの方の名声があがります。もう一方のほうの詩もお読み そして皇帝は、急に、厳粛な顔になって、 くたさい。まったく同じものです。わたくしが発明しましたのは、 「つぎにあの爆薬だがーーーきようのわしは、あれのカで命が助か り、帝国の平和も維持できた。しかし、その同じ品が、数名の者を大量に書物を作る方法です。とりあえず、印刷術と呼んでおきま 殺して、一億の人民に正義を行うことのできる冷厳な支配者をわがす」 帝国から奪い去ることになった。この世界は取引に失敗した。判る「またひとつ、圧力釜が出現したのか ! 」 いしゆみ か、。 ( ノクレス。おまえの作りあげた雷神の弩は、結局のところ、 「この方法を用いれば、子供一人を使って、一千部の書物を、一日 恣意のままに動きまわる雷神自身の手にもどることになったのだ , のうちに作ることができます 「しかし、あの品々は、わたくしの最大の発明です ! 皇帝は二枚の紙片を見くらべてから、顔をあげて、 最初の鱒は冷たくなって、皇帝の皿から持ち去られ、第二のそれ「ホメロスを十万部配布できるのか ! 」 が運ばれてきた。皇帝はまたその芳香に顔を浸して、 「お望みとあれば、百万部でも」 「これからの詩人は、聴き手が少いことを嘆かずにすむわけか」 「最大のものは圧力釜た。この発明には、恩賞をとらせんわけにい かぬ」 「書物を刊行するための費用の捻出に苦しむこともなくなります。 「しかし、陛下。これに恩賞はいただけませんか ? 」 いままでのように、大勢の奴隷を使用して、写しとらせる手間が省 「これとは ? けて、詩人は大量に印刷した詩集を、野菜か何かのように、袋に人 「第三の発明品です。いままでご覧に供さずにおきましたが」 れて売り歩けばよいわけです。家庭にあっては、台所の下働き女ま でが、ギリシャ悲劇の壮麗な詩句を心の慰みとすることができてー 芝居がかった様子で、腰帯へ持っていった。 と、手をゆっくり、 皇帝は不安な表情でみつめていた。 「それもまた、雷電と関連した品か ? 」 皇帝は感激のあまり、思わず中腰の姿勢をとって、 「その怖れはありません」 「どこの町にも、公共図書館を設置できる ! 「ーー・そして、どの家庭にもーーー」 皇帝は眉をひそめ、それそれの手に紙片を持って、見くらべてい ュ / 、刀 「カトウルスの恋愛詩を一万部ーー」 「マミリウス公子の詩集が十万部ーーこ 「詩だな。おまえは詩を作るのか ? 」 「百姓家にもへシオドスがーーー」 「作者はマミリウス公子です 「なるほど。早く気付くべきだった。ソボクレスと、カルキデスか「街ごとに一人の詩人 , ー・・・」 2 引
穏が終りに近づいていることが感じられるのかもしれない。 し、あまり変化のない条件で、この制約が大して問題にならない場 彼は、筆記機械のスイッチを入れて、ロ述を始めた。 合には、この機械は人間のやることは何でもできた。 金属頭脳の出現は、人類文明に最大の危機の一つをもたらした。 政治や社会の管理など高度の職分は、すべて依然として人間が果さ 第一次電子時代は、今から一一世紀以上も前の一九〇八年、ド フォレストの三極真空管の発明によって幕が開かれたことを、ペイねばならなかったが、莫大な量にの・ほる日常の行政は、すっかり口 トンは知っていた。それは、世界国家や航空機、宇宙船、原子力がポットがひきついでいた。人間は遂に自由を獲得したのだ。もはや 出現し、また今日に見られるような文明の存立を可能にした各種熱人間は、複雑な輸送計画を立て、生産計画を決定し、収支決算をす イオン装置が、基本的にはすべて発明された伝説的な世紀でもあつることで頭を悩ます必要はなくなった。何世紀も前にあらゆる手仕 事を人間の手から受け継いだ機械は、ここで社会に対する第二の偉 第二次電子時代は、その五百年後に訪れた。この時代を開いたの大な貢献を行なったのである。 は、物理学者ではなくて医学者と心理学者だった。彼らは、過去五 このことは人類社会に深い影響を及・ほしたが、人間はこの新しい 世紀近くにわたって、思考の過程で脳の中を流れる電流を記録して事態に対して二通りの反応を示した。この新たに獲得した自由を、 きた。その分析は気も遠くなるほど複雑だったが、何世代にもわた常に高度の知性を惹きつけてきたものの追究、すなわち今もアクロ ) 建設の当時に劣らず捉えがたい美と真理の る努力の末、遂にやりとげられた。これを完成した時、人間の心がポリス ( された , テネの城砦 = 一 読める最初の機械への道が開けたのである。 探究という気高い目的に向けた人々もあった。 だが、これはほんの手始めにすぎなかった。自分の頭脳のからく だが、別の考え方をした人々もあったのである。彼らはこういっ りが明らかにされたからには、人間はそこに止まってはいなかっ た。遂にアダムの呪いは永遠に消えたのだ。いまや我々は、機械が た。生きた細胞のかわりにトランジスタ 1 や回路網を使って、頭脳人間のあらゆる欲求を、思いつく傍から ( いや、それよりも早くー が再現されたのだ。 ーなぜなら、分析機は、意識下に埋もれた欲望をも読みとれるのだ 二五世紀も末になると、最初の思考機械が建造された。それらは から ) 実現してくれるような都市を建設することができるのだ。人 まだ原始的なものであって、人間の脳髄一立方センチの機能を果す生のすべての目標は快楽であり、幸福の追究なのだ。人間はその権 ためには百平方ャードもの装置が必要だった。だが、ひとたび道が利をかちとったのだ。知識を求める果てしもない苦闘、星への空間 つけられたからには、機械の頭脳が完成され広く使用されるに至るに橋を架けようとする狂信的欲望などは、もう倦き倦きした。 「オデッセイ」に由来するギリシ までには、し 、くらもかからなかった。 これは古代からのロータス・イータ ャ伝説。ロータスの実を食べて人 この機械は比較的低級な知的作業しか営めなか「たし、独創性、の夢を結んだというしの夢であり、人間が出現して以来の古い夢だっ た。いまや、それが初めて実現できることになったのだ。初めのう 直観、各種の感情といった極めて人間的な特性に欠けていた。しか アナライザー 4 2
かった。そして彼はおそらく、現在彼のいる場所が、以前彼のいた意識の産物と思いはじめたのだ。だいたい時間なんてものが、ほん 場所ではなく、現在彼と共に流れ続けている時間が、以前彼が身をとにあらゆる現実を包括する地平なのだろうか。さらに極端にいえ 9 ゆだねていた時間とはどこかで隔絶された別の時間であることを知ば、時間に主観的意義が備わっていてということからも、また時間 り、そこに異和感を覚えて混乱し、なんとかしてこの世界から脱走が単に直観の形式に過ぎないと考えられることからも、時間とは、 しようとたくらんでいるに違いな、。 仮の現象に過ぎないのではないか。すると、今までのおれの時間旅 井戸時計店を出たおれは、おれの尾行者が現在住んでいるビルの行のあらゆる時間体験、時間経験、時間知覚はすべて錯覚だったの 方へ足を向けた。もはや肉体は健康だった。おれは浮きうきと歩きではないだろうか。人間の意識は、時間よりもさらに謎に満ちてい 続けた。この世界が、おれの最初に住んでいた世界でないことは確る。別の時間の自分、つまり本来の世界における本来の自分の過去 実である。しかし、おれが作家であったあの世界よりは幾分まや未来はもとより、別の歴史における自分、つまり、他の次元の宇 しな世界であることもまた確かである。最初の世界へどうやって戻宙における自分の過去や未来などをその通りに錯覚し、実際に知覚 るかという点では振り出しに戻ったわけだが、それはまた、あとでし、行動し生きつづけることぐらい、なんでもないことではないの 考えれま、 。しいことである。とにかく今は、おれの尾行者を苦しめてか。現におれは、ふ、 >< 、 >•< : : : >•< のおれや、当、、の やることが先だ。 おれのすべてとして行動したわけではないのに、時間旅行の際の合 歩き続けているうち、おれはなぜか、最初の世界へ戻ることをさ体や分裂や包含を通じて、それら無限のおれのほとんどの経験を記 ほど重要とは思わなくなっていた。なんとなくこの世界で、以前お憶してしまっているではないか。今までなぜ時間をそれほど重要視 れの尾行者だったみどり色の男を苦しめ続けている方がおれの性にしていたのかと考えて、おれはだんだん馬鹿ばかしくなってきた。 あっているような気がしてきたからでもあり、最初の世界やおれが ビルの玄関までやってくると、今は大音楽評論家となったおれの 作家であった世界には、絶対に戻れないような気がしてきたか尾行者が、あい変らずみどり色の服を着て歩道へ出てきたところだ らでもある。これだけ時間をいじりまわして、尚かつもとの世界がった。おれに気がっかず彼方へ歩き出した彼をおれは追い、骨ばっ もとのままであり、そこへ戻って行けるなどとても考えられない。 た肩に手をかけた。振り返っておれの顔を眺め、ー一瞬蒼白になった 的思考で計算しようが常識だけで考えようが、そんなことはあ彼は、弁解しようとするように口を一「三度開け閉めし、・がしゃ り得ることではない。多元宇宙理論で考えてもそうだし、まして時ん、がしゃんと激しくまたたいた。一正子の所在の追求を抛棄したこ 間や歴史をただ一本の流れであると考えた場合には、尚さらだ。 とに罪悪感を抱いていることは、これであきらかになった。おれは しかし、もう戻れないだろうと考えはじめたということは、逆にゆっくりと、彼の肩から手をはなした。 おれの意識の中にあった時間が次第に信用できないものになりはじ「よし。さあ、行くんだ「おれから逃げ出せーおれはにやりと笑っ ( 以下次号 ) めたからでもあった。つまり時間を自分の意識の従属物、あるいはて彼にいった。「今度はおれが追いかける番だ」