のようにみえた。影は他の影とちがっていた。町役場の官吏だっ 「あなたは、お幾らぐらいで」 た。だぶだぶの上衣とズボン。馬鹿気ているほど幅広いネクタイ 6 「入札額ですか」 あとからつづいた二人は助手らしく一歩さがっていた。そのうちの 「一〇〇まではいかぬと思いますな」 「なんともいえませんよ」・ 一人が、手にさげていた鐘を振って鳴らした。入札開始の合図だっ 人影の中には、それとわかるプロ 1 カーめいた男たちも交じってた。待ちくたびれた、人々のざわめきが起こった。中央の男が、両 手を振ってそれを静める。男はあるきだした。二人の影がそれにつ づく。入札人たちの間をまわって金をあつめている。きっと入札保 現場は、荒野の放牧地の外れにあった。見渡すかぎり、乾ききっ たオーカ 1 色の平原は、まるで、海ほども広大だった。地平線は、証金だろう。順がまわって三人はわたしのところにもやってきた。 町の低い屋根の頭を、みえがくれにのそかせていた。一つだけ、き「あなたは : : : 」と官吏は、ちょっとわたしの存在に、とまどった わだって高いのが、礼拝堂だ。その尖塔だけが、東に傾いた太陽を風な表情を、うかべながらいった。物腰は、町の者たちにとった態 度よりずっとていねいだった。 反射して、銅色に輝いていた。 この町が、ウラン・ハル・ハランである 6 太陽系から百光年余の寂し「失礼ですが、御見物のお方ですか」と官吏は、わたしをうかがう い星域、ヒャデス散開星団に所属する、この大惑星ただひとつの集ような目付をしながらいづた。「それとも、入札に参加されるので 落だ。かっては、この荒野にも、風化鉱物べラドランナが、転石状すか。もしされるなら、他の者たちのように保証金をおさめてもら の球型鉱物として、産出したことがあった 0 が、今では往時の面影わねばなりません」 はない。町はみるかげもなくさびれていたそれは、やがて廃墟と「ただの見物ですが、い・けませんか」 「ばい、規則では、原則的に、補佐人、相談人以外の人間の立ち合 化し、また荒野にのみこまれしまうにちがいなかった。 いは許されません。が : : : 」と官吏はちょっともったいぶったしぐ わたしが、こうした減亡に一歩手前まできて、かろうじて立ちど まっているような、この土地にやってきたのは、な・せか奇怪な風習さを示した。「ただし、場合によってば、入札執行官たる、本官の 権限と判断によっ - て : : : 」 として遺っている、屍体芸術をみるためだった。深い理由はない。 「わかりました」とわたしはいった。官吏のいうことを、全部きく わたしは、ただやってきたのだ。わたしは、放牧地の柵の柱の一つ に寄りかかっていた。この一種の屍体保存の技術を踏襲する、ウラ必要はなかった。わたしは、素早く硬貨を数枚、官吏のチョッキの イハルバランの住民たちが、素材である屍体を竸りにかける光景をポケットにおしこんだ。「困りまする」と官吏は、小さな声でささ ゃいた。両傍に従っていた、帳簿を持った男と金を入れるずだ袋を みるために。・ 持った男とが、物欲しそうな笑みを浮かべた。わたしは、更に一枚 3 また影が一つ動いた。別な影が二つそれにつづいた。彼らは虚像ずつの硬貨を、この助手たちのポケットの中にも、おとしこんでや
・ミョに籌 7 : 政府の特別対策 委員会では 首都を焼土にして もカナサギを せん減すべきた というタカ派と エサをバラまいて はら一ばい食わせい 別の国へ行って も、りお、つとい、つ ハト派が ぶつかった 、ーりイ タカとハ・「の カササキ派と い、つのもできた それはカササギの ぶんをきいて 要求をのみ 人問と共存できる第一〔・ - マ ならさせよ、つと いうのである 要求 レ J か しぶん とか せんせん ナンセンスた し・カしレ」 かれらは疎外感を もっとるのかも 知れんぞな 先生 どうぞ 幹部に あわせると 、つとる カササギ語を 解するという 世界にただ一人の 鳥類学者が 調停役になった
明。、達。、明篤彦■大型新人意欲のメ作 和和・青 藤島島藤村本 荒巻義雄 ~ 一 00 枚 斎中〕中斎杉森 緑の太陽 紙扉ト子造郎蒼 : 百光年を一気に飛翔する原理と分裂性格者の内宇宙のなぞを描く U)LL ミステリィー ・ス苑慶由 、大河漫鳥人大系》一第四回 連載コラム コミックスの世界 ~ 。第五回。。ノスタルジア 若者た , ちはその日 : S F マガジン 6 月号 ( 第 12 巻 6 号 ) \ 250 昭和 46 年 6 月 1 日印刷発行発行所東京都 千代田区神田多町 2 の 2 郵 1 0 1 早川書房 TEL 東京 ( 254 ) 1551 ~ 8 発行人早川清 編集人森優印刷所東洋印刷株式会社ま・ サト S エタで ンルて スーた 元いシコあ で世も一プ 紀現ナ を北わ 業米れルゞ 大る 陸血 s ィ ~ 人の発 が神中 住秘 加大福碆藤 藤伴島 3 典精 昌正 喬司実 1 2 2 1 1 142 203 , ー、 214 96 4 76 120 世界みすて りとびつく U) LL スキャナー 連載ビブツォ ) 一プラムーエンサイクロべデイプ第ファ ~ ンダスティカ 126 89 ヴァージル・フィンレイ永眠す てれぽーと 、チ塚治虫 野耕世 113
に、下町の人間たちやわたしにとって、四六時中欠かせない親友で一 あった。 むろんわたしは、一日に飲む量を制限している。使用量をあやま - ると、心臓がとまる ! カルテット中毒で死ぬ人間の数は、年間死一 亡者の三〇 % をこえるという注意書が、容器の白いラベルに印刷さ - れているが、い っこうに利用者はヘらないというのが実状だった。 ン ャ やがて、気分がおだやかになってきた。未整理のカルテをまとめ - て、心理管理局に請求書を提出する仕事がのこっていた。調べてみ - イフ ると、最近の狂気は、発病年齢が下がって、幼児にまで及んでいる - デノ弟 ル兄 のだ。現にうつろな物いわぬ痩せおとろえた少年が、よく訪れてく一 イ & キ レフンツ堅明ペ以何。進コ町県 る。しかも、病状はかなり進展しているケースが多かった。中には 隆フ治プ弥エキガ手 , ぶれがとをア東山 8 一 〈自閉症〉と〈離人症〉と併発している特異タイ。フさえ多かった。 一 / 者康 , 真 = 順 , ~ がよ喜そ品 = 刊《間岡 0 一 ヾ「め 3 の記最ル 作筒バ梶横ェビスノ が、時間と空間の変異に関係する、この狂気は、治癒する可能性 - ンとわ作価明ズク市造 4 一 サ」き準評ず一イ橋由町一 は、ほとんど絶望的といってよいのだった。 の珠は水同必リマ 豊野城一 はシ 跡真評 追る好 4 い齢選県海市一 それからわたしは、ウライ ( 化 ( ラの。 ( ン , 」 , トを机の上に一一九一 と贈の作さ作知田一 広げてみた。はじめにありきたりのウライハル・ハランの沿革が書い一 走へ作佳だワ傑愛引高一 脱亜一 く・カズ 「美 = 票名ャル 1 潟一 てあった。地球型植民都市。人口二三〇〇 : : : 。わたしはそれをと一 を 「ビ作投氏ハ一計原新一 たデ秀ご . にワ羽 柱グまの ばして読んだ。昔も今も、どこでも、観光案内書というものは、大一人果注 て所方・丹様 - 一 いン。人式にの一 結サご珠 抵似たようなものだ。通りいっぺんの説明からは何も知りえなかっ 名ュ 2 一邦一 計のに真を 白リた新方書住 。 5 ニの森一 集跡」る日力の一し両の た。が、わたしは、な・せかよくわからない理由で、表紙の写真から一 。 4 大一 分 0 。追 ! 贈明圧ド→ま田定葉んで「 ロと一へ のイフち横規てせ選にす町 号走オ亜令よ素命ラ一立 つま抽方ま松 目をそらすことができなかった。写真は白黒で、画面の粒子は荒れ 月作脱「美命友酵生アユに尾し従、 し。のし高 様の ニ位梶対にま日記り郡 ていた。まるでビントだけをあわせただけの、素人写真みたいだ。 の首の。に , か末下贈北二一 年 調め」す篇 1 も月はお河俊上一 他の観光写真のように、美しくも、芸術的でもなかった。色あせ - 1 2 3 -4 -0 ー 8 . 好集 ~ で , て 6 月を県尾様一 順 回を ~ 象月 2 つは今篇 日柴市勉一 た、そして野暮ったい、奇妙な雰囲気みたいなものが、わたしを麻 - 毎標を現今にあ切。ク制山沢一 く日き下篇締呈ッ 1 岡竹一 痺させたのだった。この犯行現場の証拠写真みたいな、一枚の写真 - が : : : 。何か哀愁にみちた、何物にもかえがたい、独特の世界をつ一 00 っ 0 介 0 れ 0 の 0 っ 0 っ 0 CO 0 ・ 0 0 ・ 0 ・・・ 0 ・ 0 0 0 ・ 00 0
いー その数は やく三分の一に へったとはいえ ニ万はくだら ないよ、つだ 北を上鳥ニさ ん部し越の時ら の群間に でヘ きな関山はの ただ東越ち い自衛隊は ( ~ 国道一ニ 0 号 ) ー号線にわたって YJ ) 一カササギを 】 Ju むかえ打った ( ) 一万羽の カササギが 打ち落された つ - 、わ しちゃ おられん 道路も駅も一バイ なのよ駅で 立往生した所を 焼かれるわ : ああ、おまえかー 情勢が悪化したんだ物を すぐ荷物まとめて いなかのおばあちゃん・響・ ( ( ー , ~ ( とこへにげろ 大火事になるぞ 人問を・ネギと いてタレつけ / たべられるって ほんと ? ・ 日 4
「装甲車とは何のことた ? 」 亡んだのだ。ここにはもう何も残ってはいない」 ニ一べは頭をかかえてうずくまった。ダウたちの言葉を信じたらよ「しつかりしろ。ニべ ! 」 いのか、それとも自分の経験を信じたらよいのか、どちらが現実に機体の下部から着陸用の車輪がのび出す軽いショックがったわっ おこったことなのかニべには判断もっかなかった。装甲車の攻撃でてきた。機体が傾斜をさらにましたとたん、床を通して接地の・ハウ 一機のロート・ダインが破壊されたことも、《クルーガー》の近ンドが突き上げてきた。 くで墜落したロート・ ダインからかれ一人が這い出たことも、ま「着いたそ ! 」 た、そこで長老パッに出逢ったことも、さらにはあの巨大な電子頭期待と不安にみちた声がわいた。 脳《クル ーガー》の残骸も、すべてひとときの幻だったというの 『現在位置を知らせる。西経一四一度二八分。南緯八十一度三分 だろうか ? そんなことがあるだろうか ? だ。各自、方向探知機の基点に記入せよ』 「そんなことがあってたまるか ! 」 長老パッの声がスビーカーから流れ出た。皆はニべの周囲から離 ニべははね起きた。皆の手が周囲からのびてきてかれをもとのよれて ( ッチへかけ寄った。器材をおろすためのウインチがカラカラ うに床におし倒した。 と回りはじめ、船倉の奥からパレットに乗った輸送車がすべり出て ,$IJ こ 0 『タギとダウは武器を持って先行しろ。目下、レーダー、集音器と もに異常なし。サーチライト照射はじめ。照明弾発射、ハッチ開け 廃墟またはクリフコナッ 0 3 そわぬば玉の闇なれば人、出でて言う。 とおきみおや 遠祖の魂は帰りぬ、と。 音もなくハッチが開き、深緑色の壁のような空の一部が見えた。 濃い大気を半透明のガラスのようにかがやかせてサーチライトの太 「目標二時二十分。コースに入る。二、 三、四。フラツ。フ ! 』 い光芒が通り過ぎた。一瞬、その緑を青白く染め変えたのは照明弾 『目標二時二十分。コースに入る。二、 の閃光であろう。一人、また一人、なかまたちは背を丸め、足音を 三、四。フラツ。フ ! 』 ステア 操縦室の応酬がラウド・スビーカーにのってそのまま船倉まで流しのばせて ( ッチの踏板をわたって船外へ消えていった。操縦室の 長老たちもすでにかれらのあとを追ったのか、ラウド・ス。ヒーカー れてきた。機体はゆるやかに傾いて高度を下げはじめた。 からは水の流れるようなかすかなノイズが聞えているばかりだっ 「よせ ! 引きかえそう。これ以上近づいては危険だ ! 」 ニべはさけんだ。その手を足を、皆がしつかりとおさえつけてい 心を喪わせるような静寂があたりを支配していた。ニべは唯一の かれ 「ほんとうなんだ。火星に引きかえそう。われわれの祖先はここで持ち物である《幽霊》のカプセルを苦心して機体から運び出した。 こ 0 227
も、これは一般読者にはとして読まれなかった。ヴォネガット エンサイクロペディア・ファンタスティカ 、よっていたし、題材であるド 自身、自分は作家ではないとしし。 レスデン爆撃が、当時ドイツ軍の捕虜になっていた作者の体験とい ている。「 : : : 実現可能である、と読者が認めることにより : : : 」うのでは、として宣伝する必要はまったくなかったからだ。 なんてひねってあるところがおもしろい。つまり彼にいわせれば、 一方、ナポコフの『アーダ』は、北アメリカにロシア人の国があ 。塒間旅行でも多元宇宙でも、「これは科学的に可能だと思うよ」とる架空の世界を舞台にしている。そこでは原爆は存在せず、電話は 読者がいえば、もうそれは。ヒュア・ファンタジイではなくだと禁止され、プルーストは十九世紀の作家であり、人びとはぜんまい いうわけだ。四半世紀前の。ハル。フ時代には、これはたしかにみ仕掛けの乗物で旅行する。用語を使えば、明らかにパラレル・ ごとな定義づけであったろう。だが、作家たちの多くが、 ()0 の生ワ 1 ルドものだが、ナポコフなど『ロリータ』以来まったく関係な みだした途方もないアイデアを、その科学的可能性などには頓着せかオ っこし、雑誌にもまったく取りあげられなかったので、昨年 ず、純粋な思考実験あるいはエンターティンメントの手段として使来日したプライアン・オールディスから傑作だと聞くまで、ぼくは いだしている現在では、もはや通用しない。それに固執しようとしこの小説の存在を知らなかった。これをとして紹介している文 、リスンとオールディス共編の『年刊傑作集』 た結果、この評論は最初の十ペ 1 ジ目で致命的な馬脚をあらわしは章は、、 じめる。 第三巻 The Year's Best Science Fiction 3 以外には、ウォル、 昨年アメリカでベストセラーになった三つの長篇小説をとりあイムのこの評論しかない。いずれにせよ、一般読者がと見なか ったことは確かだ。 げ、それらがな・せサイエンス・フィクションであって。ヒュア・ファ この二冊がなぜなのか、ウォルハイムの説明を読んでみよう。 ンタジイではないか、というナンセンスな証明をえんえんとくりひ 「人間をあやつる異星人のアイデアは、 v-æの ろげるのだ。マイクル・クライトンの『アンドロメダ病原体』、カ『屠殺場五号』 ート・ヴォネガット・ジュニアの『屠殺場五号』 Slaughterhouse ものである。大衆はすでに太陽系外の知的生命存在の可能性を信じ Five 、そしてウラディ 、、ル・ナポコフの『アーダ』 Ada である。 はじめているーーまた、時間の流れを行ったり来たりする能力の可 『アンドロメダ病原体』は、どなたもご存じだろう。これは、一般能性も。ヴォネガットは、それらの仮説を的に証明することも の新聞雑誌の書評欄でもとして扱われたから問題はない。 忘れていない。ゆえに、 この作品はである」 『屠殺場五号』は、第二次大戦中、十三万五千の死者を出した連合 『アーダ』 「そのなかに一個所、登場人物の一人が、アメリカ つまり、われわれ 軍のドレスデン爆撃を、時間の流れからはみだした一人の中年男をにイギリス人が植民したパラレル・ワールド 主人公にして描いた作品である。作者の分身ともいえる主人公は、 の世界、ーーの可能性について長いあいだ擬似科学的な思索にふける 中年男の記憶と意識を持ったまま、過去と現在と未来に存在する自部分がある。この作品が、ビュア・ファンタジイではなく、の 分の肉体のあいだをめまぐるしく往復する。やがて彼は、空飛ぶ円領域にはまりこむのは、そのためである。なぜなら、ナポコフはこ 盤で地球にやってきたトラルフアマドール星人に誘拐され、彼らのこで、これまで数多くの作家が論じてきた仮説ー・ーこの宇宙に 動物園に入れられてしまう。外見は明らかに仕立てだけれどは、無数の地球を含む無限の。 ( ラレル・ワールドが存在するという ( 一 0 ページよりつづく ) 嶬Ⅲハ“Ⅲ円Ⅲ・Ⅲ以いⅢ川ⅢⅢ当Ⅲ当Ⅲ告
何本かの可能性は、あまりにも過酷だった。 だす。は かなり手前味噌の感じのする彼の文章から、エッ これまで原子 センスを抽出すると以上のようになる。そして、この最 力がもたらす 後のパラグラフは、あとに続く論の基調にもなって 数々の未来を いる。しかし一見罪のないこの考えが、やがてどういう 空想してき 結果を生みだすか ? まあ、ごらんいただきたい。 、刀 そのほとんど 続く章は、ファンとして。フロとして彼が歩んできた道 は・ハラ色の予 の簡単な説明。実質的な貢献という意味では何ともいえ 言であり、原 ないが、月着陸の成功を多くの人びとに確信させ、その 爆などという だめオ「ーー実現を速めるのにが一役買 0 ていたのは確かだろ 恐るべき兵器 う、と控え目に語る。そして、その証拠の一つとして、 がいきなり実ウラディーミル・ナポコフ著『アーダ』 こんな文章が出てくる。 現する可能性 を扱った作品は稀だった。ところが、じっさいには最悪の未来が現「アメリカの最初の七人の宇宙飛行士のうち少なくとも二人は、青 春時代、の読者であったことを認めている。また聞くところに 実となったのだ。 「かりに出席をオーケイしたとしても、どう話せばいいのか ? 今よると、月へ最初に飛んだ三人のうち一人は、出発の前日、エース ・ライス・ / ・ブックス版のエドガー 、ロウズを読んで過したという 世紀最大の喜ばしいニュースだーーー今日から、われわれはユート。ヒ アに住むようになるのだ。そういうべきだろうか ? それとも、世 ( それは『月の地底王国』たろうか ? ) 」 ( 傍点訳者 ) 界が互いに政治思想を対立させたまま分裂している今の段階で、こ の恐ろしい兵器が、老政治家や想像力貧困な老将軍の手に握られて そして話はいよいよの定義と分類に移る。 いるのは、はなはた危険たと認めるべきなのかフ 「サイエンス・フィクションとは、現在の知識には反するが、未来 わたしの頭の中ではこの二つのヴィジョンがはげしくぶつかりああるいは過去のある時期において科学的に実現可能である、と読者 った。そして、けつきよく結論は出なかった。正直にいって、その が認めることにより成立っファンタジイの一分野である。 ビュア 前に気が減入ってしまったのだ」 純粋ファンタジイとは、実在せぬ空想の題材を扱い、それを読者 ウォルハイムは出演をことわり、かわりにその種の問題の専門家がみすからの意志で一時的に受けいれることにより成立っファンタ ジイの一分野である」 であるジョン・・キャンベルを推薦する。 ウォルハイムは、一九三五年、彼があるファンジンに発表したエ あの時点で、そこまで見通すことができたのは、によってつ ッセイをひつばりたし、と。ヒュア・ファンタジイをそう区別し ちかわれた世界観のおかげだろう。だが三〇年代のを読んで育 ( 一四〇ペ 1 ジにつづく ) ち、未来に希望を持っていた彼にとって、世界がその日選びたした 4 0
くだりの大冒険も 1 ちょうどキャプテン・フューチ 要因ではなかったことに注意したい。事実かれらのかたりはじめられる。 発生原因は、現実のこの世界状況以外になにもない ハーネスの「・ハラ」が、紅を出発への色としているヤーに出てくるような合成人間や獣人が登場するの のだ。そこに、としてのリアリティが生じる。のに対して、この作品は黒を死減の色に設定していで、けっこう面白く読めた。 そこへいくと、今月紹介するもうひとつの作品る。主人公ローガンは、かれ同様に二十一歳をむか人口の激増とともに、きみたちはやがて、二十一 「ローガンの逃亡」は、自分の置かれた環境に対すえたジェスカという女性とともに逃亡を開始する。歳を境としていやおうなく生涯を閉じねばならぬ時 る嫌悪感を最初からあからさまにしている点で、 い刻一刻水圧に侵されていく水中都市、ヒッ。ヒーまが代を経験するだろう。そしてそのとき、きみたちは かにも作りものという感じがぬぐえない。 「ローガいのロウティーンが巣食う「寺院」、北極の牢獄、 良い問いかけだが、悲しいかな若者の心を ンの逃亡」を読んでどうしても喰いたりなかった点密林と化したワシントンなどを転々としながら、サ捉えるだけの力量に欠ける。問題提起の大きさと、 は、作者自身が創りだした環境設定を、あまりに安ンクチュアリを求める二人に、四十二歳になってな読んで損をさせない物語の面白さを売りものにする 易に否定しさってしまう態度なのだ。つまりこうだお手に植わった水品が黒化しない奇跡の男バラードゴランツ社得意の商品とだけいっておこう。 1 ネスと、 しし / ーランと 、どちらも地味な ーー年々大増化する人口を維持しきれなくなった地 - と、叛逆者を追いつめるマン機関の代表者フラ 球は、ついに二十一歳以上の男女を虐殺する制度のンシスとが絡んでくる。苦労の結果、いまは放棄さマイナー作家だが、な・せか・ほくはどちらも好きだ。 発足に踏みきる。全市民の生活暦をすべてコンビ、れた宇宙船に乗りこんで地球を脱出できることにな ( ーネスの場合は、作家には数すくない美学を ーターに記憶させ、誕生の際各人の手に植えこんだ . ったとき、二人は宿敵フランシスの罠に落ちる。愛語れる作家であるし、ノーランはなによりもプラッ ドベリ的な童心がなっかしいのだ。 水品片が黒に変わったときその人間を殺すのだ。抵するジェスカをロケットに乗せたローガンは、ひと 最後にひとことつけ加えておこう。「・ハラ」の主 抗する人間のために、マン (Deep Sleep Man) りフランシスの構える銃の標的となるーーーのだが、 と呼ばれる殺人機関が組織される。そのマンのこのフランシスという男が実はスラードその人だつ人公のひとりアンナ・ヴァン・トウイルにあらわれ た一対の角は「ある果てのない視覚次元を獲得する」 ひとりが、たまたま二十一歳となって死ぬことに疑たことが、最後の最後で暴露される。 問を感じたところから″ローガンの逃亡“がはじま家庭生活も美徳もない若者の世界に、やがて大きにいたった。松果腺上の視覚を第一二の眼として使用 る。さすが世界一のプラッドベリ・ファンを自称すな変革がおとずれることを予知した唯一の老本 ( ラすることによって、人間は時間という次元を眺甲す るノーランの作品だけに、その出だしはプラッドベ 1 ドは、来たるべき世界のための新人類を選びだすることが可能になる。その眼は、すくなくとも米来 リその人を思いたさせる。「われわれが一緒にそだために、手のこんだ追跡劇を展開してきたというののお・ほろげな情景をとらえることができるにちがい った、すべての友に捧ぐーーーフランケンシュタインだ。こうなると、環境設定もへったくれもない。要ない。それでは、白い・ハラと名づけられた背中の瘤 いったいどんな紅い・ハラになったろうか ? とミッキーマウスに、 ( 中略 ) アスタウンディングするにこのサタン的な人物ハラードを際立たせるたは、 とアメージングと、ファンタスティックと : : : & めの小道具として〈二十一歳までの世界〉が持ちだ シンポリズムの考察を愛し、思索することをもの に、そして愛をこめて『地球の緑の丘』に」そされたにすぎないのだ。ただし物語自体は息もっか一ともせぬ、勇敢で壮烈な〈新読書人〉にすすめたい んな巻頭言のあと、物語は第十章から ( 第〇章まで ) せぬほどス。ヒーデイだし、北極の牢獄から脱出する一作品である。 0 0 0 0 0 U) 「スキャ 5
ス陸軍の兵士たちが、農場を襲って 、第き ~ , 食物を掠奪するところを見た。ま た、あとを追ってきた″フン族″の クラシック・マシーンのプームに乗った企画 トイに襲われて、必死に撃ち 力いくつか目につく。既報の『ツェッペリ 合い ついに敗走させた。 ン』もその一つだが、人力飛行機にとりつかれ た青年を描く奇妙なミステリーが完成した。ロ 「谷聞の奥にある農場にたどり着い てみると、ジョンの実兄のデビット トこよる『 Brewster ート・アルトマン製作監督ー 。、トリック・ホルト ) は機関銃を Micloud's FIying Machine 』でヒューストン かまえて受人れを拒絶した。ジョン市名物の屋内野球場の地下室に立てこもって、 一家とロジャーだけは認めるが、ほ人力飛行機製造に熱中する青年に接近する人間 かの人問は帰ってくれと冷たく突放は次々に怪死する。な・せ死ぬのか、やがて意外 した。農場はサクや、、ハラ線で要塞の ようになっていて、デビッドや農夫テレビ映画「」 たちが機関銃やダイナマイトをかま えて守っていた。 ジョンはここまで苦難を共にした のないところでは住民自らの手で自衛せよと命人々を放り出すことができなかった。交渉は決 裂し、怒った。ヒリーはデビッドを射ち倒した。 一行がヨークシャーにさしかかると、農民自猛烈な撃ち合いのあと、。ヒリーも死に、再び平 衛隊が通行を拒否した。車や武器を奪われ、野和がもどった。ジョンは二人の死体を丘に埋 原に放り出された。ロジャーは歩いてでも農場 め、神に祈りをささげた。何年かかるかしらな へ行こうと、先頭に立った。 いが、この平和な、人目につかない農場で、危 どの農家も銃で武装し、侵人者を寄せつけな機が去るまで暮していかなければならない。ビ かった。空腹のため感情が高まり、。ヒリーは痴 1 ルスが衰えて、再び地球がミドリをとり戻す 話ゲンカで恋人のクララを射殺した。 のはいつのことか。 農民に見つからないよう山道やウラ道を歩き 脚色はジェフアソン・。、 / スカルとショーン . つづけた。同じように安住の地を求めてさまよ フォレスタル。製作、監督のコーネル・ワイル うグルー。フにいくつも出会った。そのなかで女 ドは「明日にでも現実化しそうなこのを、 や小さな子供をつれた三十人ほどの集団をジョ できるだけリアルに、記録映画を作る手法で描 ンの一行に合流させることになった。 いた」と語っている。パナビジョン。ィースト 何日も野宿したあと、ようやく北イングラン マンカラー。日本版は一時間三七分。原作は早 トの谷間の入口にさしかかった。ここでイギリ 川書房から刊行の予定。 なは : い啗 1 第を新第 78 ー