ー物第 に成功して、適当な世界を探すことになっても、一い世界を探せるのだ。 船内の科学者たちはある異常に気づぎはじめる。っ つの惑星を調査するのに二年はかかる。彼らの生きだが、物語はここで終わらない。・フリッシュの書ぎつぎに遭遇する島宇宙のタイプが奇妙なものに変 ているうちにそんな世界が見つかるという保証はな評にあった「仰天すべき」クライマックスは、このわってきたのだ。星間ガスがすくなくなり、見える あとに用意されている。 のは老年期の星ばかり。そう、宇宙が老いてきたの ここでレイモントは一案を思いつく。いまの高速つぎの星雲団の縁まできたとぎ、それが船のすでだ。タウがあまりにもゼロに近づいたため、宇宙の で島宇宙を横切れば、広い範囲と長い年月にわたるに獲得した厖大なス。ヒードを完全に減速できるだけ老化がそれと認められるようになってきたのだ。 データが短期間で手にはいる。その中からもっともの大きさがないことが、発見される。なまじ中途半クリスチーネ号は、伝説のフライング・ダッチマ 有望な惑星を選び出し、いったん通過したあとで、端な減速をすると、つぎの深淵が乗りきれなくなンのように、なおも飛びつづける。 減速して舞いもどってくればいし 。それには現在のる。スビードが大きすぎるため、コースを自由に変「島宇宙が外をかすめていく。ほんの数万。ハーセク ものより高性能の観測機器が必要だが、それを作るえることもできない。前方のどこかに十分な大きさしか離れていないので、闇の中に大きくありありと 専門家も資材も揃っている。そして、新しい目的をの星雲団が存在することを祈って、まっすぐ飛びつ見える。もとの形をとどめないまでに崩れ果て、混 持っことが、意欲の復活につながるかもしれない。 づけるしかないのだ。 沌とした形。。 とんよりとした赤が、縁に近づくにつ この計画は成功する。だが、ようやく銀河系をあここがいいんたなあ。どこがいいかというと、た一れて血塊のように黒ずんでいる。それはゆっくりと とにしたとき、皮肉なことに、その新しい観測機器だもう破れかぶ 視野から消えた。っ のもたらした情報が、彼らの希望をうち砕いた。行れで飛びつづけ ぎの島宇宙を通過す 誌ポール・アンダースン特集号 く手の深宇宙が、予想していたほど希薄でないのるところがい る一瞬、船は暴風に だ。たぶん、おとめ座星雲団を超えたむこうなら、 コースにあ 遭ったように揺れ た。こんどはなにも 完全に近い真空状態が得られるかもしれない。島星たった世界にと 宙の濃度は、六千万光年を超えると急激に落ちるかってはに 見えない」 やがて、決定的な らだ。船は一路突進をつづける。観望鏡 ( もちろん超低空された以 事実が明らかにな ドッ。フラー効果の補正装置がついている ) から見る上の災難だが、 る。宇宙の収縮がす 外の光景は、映画『二〇〇一年宇宙の旅』の最終シ五十人が生きの ークエンスのようにファンタスチックだ。 でに始まっているの びるためには、 だ。終末までには、 ついに勝利の日がくる。完全な暗黒の中で、クリ宇宙大公害など 船内時間で余すとこ スチーネ号は慣性飛行をつづけながら修理を完了す構っちゃいられ る。減速の用意はできた。あと数週間の無重力状態ないのである。 ろ三カ月しかない。 を我慢すれ・ま、 絶望に突きおとさ ーいよいよっぎの星雲団で彼らの新しこの頃から、 0 0 0 - 0 0 ( 0 0 .4 ま . をすをみ。 0 みを N を ~ 0 第 nta リ 20 Sciénce 日面①叫 , / 00 , 水 4
の時分にはジョ ( ンセンも自分が捕虜として島にいるのだというこ気がつくと、しかし、彼はすでに切られてしまった電話に向かって とに気がついた。一瞬、彼はかっとなったが、しかし週給五万ドル喋っていた。かけ直してもむだなのはわかっている。かわりにジ ハンセンのほうへ電話をかけ、そのことを話した。ジョハンセンは の捕虜稼業はそれほど悪いものでもないと考えると、その怒りはた ちまち鎮まった。労働者二人と技師一人は別な考え方をし、到着し話が気に入らないようだったが、それでも伝言の復誦だけはして、 て二日後には早くも不満をいだいた。彼らはある夜、とっぜん消電話を切った。コナントはこのジョ ( ンセンという男が好きだっ え、そのおなじ夜に浜辺で五発、銃声が鳴った。疑問をただそうとた。彼はジョハンセンが生きては決して本土に帰らないということ を、一瞬、ちょっとばかり気の毒に思った。 する者はなく、トラブルはもうそれ以上は生じなかった。 コナントはキダーの電話に驚きながらもそれを隠し、例によって これはどうやら捨てて置けない問題にな だがキダーのほうは いやらしいくらい陽気に振舞った。「これはこれは ! 何か、わた ってきた。彼の武器が厳密に防御的なものであるかぎり「彼は事実上 しにしてあげられることでもできましたかな ? 」 すこしも脅威ではない ~ だが発電所が操業を開始したときは、彼は 「そうなんだ」キダーは言った。その声は低く、完全に感情を欠い注意しなければならない相手になる。コナントとしては、疑問の余 ていた。「ほくの研究所の建物の北五百ャードのところに、島を横地なく自分の味方でないかぎり、天才を周囲に置いておくわけには いかないのだ。動力伝送機とコナントの非常に野心的な計画とは、 切る白線が一本引いてあるから、こいつを踏み越えないようにきみ の部下たちに警告してもらいたい」 キダーがひとりそっとして置かれるあいだだけは安全なはずだ。キ 「警告 ? しかし「 - あんた、かれらにはちゃんと命令してあるはずダーはさしあたっては、政府の派遣する調査官の一行からよりコナ たがないかなる理由があろうともあんたの邪魔だけはしてはならントからのほうが、なんといっても好意的な待遇が期待できるのた ということを承知していた。 んと」 「命令はしてあるだろう、それよ、 ぐししたか、 , こんどは警告してく キダ 1 は島の北端で仕事がはじまって以後一度だけ自分の囲い地 れ。研究所の建物のまわりには電場が設けてあるから、そこに、は いる生きものはぜんぶ殺されるそ。わたしは良心に従って、殺人たを出たことがあったが、それをするには未熟な外交術を精いつばい けはしたくない。無断で立入りさえしなければ、けっして殺される駆使しなければならなかった。発電所の動力の源泉を知り、それが ことはない。労働者たちにそれを告げてもらいたいんだ、いいオ よ誤用されたときどんなことが起りかねないかを知っているキダーは コナントに掛け合って、巨大な伝送機の完成がちかづいたら、それ 「ああ、それだったら、キダー」銀行家は説き聞かせるように言っの視察を許可してくれるように頼んだ「、コナントへの結果報告を自 た。「それだったら、まったく不必要だったな「きみは闖入者に悩分が研究室にぶじに戻るまでは拒否するということで生命の保証を 得ると、彼はシールドのスイッチを切り、島の北端まで歩いて行っ まされることはないよ、なぜといって , ーー」 6 5
新冑 0 幻の名作、渇望の秀作、戦後推理小説の派別体系化成る " 戦後遺産を新しい視野から発掘集 成し、純粋推理小説不毛の現況に 原点から挑む全集〃】 ^ 各巻内容〉 各価七八 0 円 第一巻本格派の系譜 大坪砂男、日影丈吉、高木彬光・ 江戸川乱歩・坂口安吾・水谷準他 第ニ巻本格派の系譜Ⅱ 仁木悦子・加田伶太郎・佐野洋・ 中村真一郎・戸板康ニ・陳鉾臣他 本第三巻ロマン派の饗宴 香山滋・三橋一夫・笹沢左保他 見 内第四巻社会派の展開 椎名麟三・松本清張・水上勉他 呈 傑作選 ( 全五巻完結 ) 現代の 全四巻Ⅱ完結 ・編集委員松本清張平 謙中島河太郎 区 4 ・わが国推理小説のメッカ「新青年」の完全再現田に * 乱歩・不木・正史・宇陀児作品など入手不可能の作品を多数収録。 束 米挿絵を「新青年」誌より復刻、往年の面影を伝えることに努めた 東南 米最終巻に創刊号から終刊号までの「収録作品総目録」を付した。 〈各巻内容〉 四六判貼箱入・各価九ニ 0 円・⑤のみ一三 00 円 ①推理小説編②怪奇・幻想小説編③恐怖・ユーモア小説編④翻訳編 : 呈内容見本 ⑤読物・資料編・ 振替東京 74493 電話 ( 727 ) Ⅱ田 ~ 8
世界計全集 安部公房 世界で初めての画期的企画 / 第四間氷期 / 人間そっくり ・電子頭脳による画期的な予言機械を軸に日常的秩序の中にある最大の悪を、未来の残酷 さを借りて暴く。文壇に特異な位置を占める著者の本格的・突然私を訪間して来た火 星人と名のる男との荒唐無稽な対話を通じて人間存在の不条理性を探求する野心的 その他の収録作品・日号の発明 / 赤い繭 / 闖入者 / 人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち / 永久運 トータル・スコープ 動 / 魔法のチョーク / デンドロカカリヤ / 詩人の生涯ーー白い恐怖 ーー・ / 完全映画 / 盲腸 / 鉛の卵 ◆好評発売中 日本の (DLL Ⅱ短篇集古典篇 ◆次回配本〈 6 月日〉 世界の U) LL Ⅱ短篇集ソ連・東欧編 * 第回配本 / 5 月日発売 定価九八〇円 自選 作品集
THE 、 " WOR ル 0 OF を SF«、 ?COMICS クレーの自己表現の方法は、クレー自身の有名なことばででは、彼は、幻想的な画家ではない。というのは、彼は、 簡潔にいいつくされるーーー「美術は、眼に見えるものを、実在のもの以外は描かなかったからである。それらの実在 0 複写して与えるものではなく、見えないものをも、見せさのものが、他の人々には、彼の幻想の気まぐれのように見 せるのである」 えることもありえたが、彼自身は、次のことをよく知って いた。つまり、それらのものは、存在の十全さを授けられ クレーの場合、目でとらえたものを、そのまま模写し て、作品に表現するということはしない。表現技法こっ 、冫いていると、われわれの通常の手段によっては、決して測り ても、型通りのわかりきった方法や、伝統的な方法に合わえない空間のなかに、また、われわれの扱いなれた時間の せてすることもしない。彼は、視覚でとらえたものを、自計算法では、役に立たないような、時間のなかに、有効に 分の内面の底を通過させ、その操作のなかで、自分の心実在するのた、と」 を、はっきりと保証させるような、象徴にして、表現す「しばしば、象徴的な現実というものが問題になる。とは る。その象徴は、単純な形をとるが、その単純さは、クレ ーが事物のかわりになっていると え、それは、アレゴリ ーの心の奥で、とらえられた、さまざまな複雑なものが、 いう意味においてではなく、クレーの絵画の造型上の現実 綜合化され、みがきあげられた結果による単純なので、そ が、つねに彼自身の現実の象徴だからである。この点に関 れは、ある高みに達した単純になっている。 しては、現実とか、象徴とかいうことばは、その通常の語 ーが、彼の感覚によって幻想の義を失っている。というのは、象徴とは、存在の十全の極 私たちは、それを、クレ 世界、夢の世界から、つかまえてきた収穫として楽しんで限の到達であり、実体と形象との、いちじるしい完成だか 見ている。実際、クレーの作品にはユーモアがある。インらである , そうだろう。 クによる素描には、宇宙人が、ねそべっているような絵ま であるのた。それは、楽しい クレーにとって、現実を描いているのでないとしたら、 しかし、クレーのような作品を見るとき、幻想的でああれほどの作品を、あれほどの澄明さで、ゆるぎなく創り り、象徴的であるーー・ーということを、つい、気安くいってあげていくことはできないだろう。それらを、事物の内面 しまうが、それは、通俗的に、夢の世界を描いている、とをも含めた、十全の姿として、創り出すことができるとこ いうことではすまなくて、クレーは、描こうとするものろに、クレーの天才はある。 の、すべての姿を、見える部分たけでなく、そのものの内 クレーのような天才にとっては、「幻影の扉」は、いっ 的存在をも描こうとして、これは、結果的に、到達した象でも、現実のものとして、描くことが、できたのにちがい 徴的な表現なのである。 ナい。いつも、事物の向う側を、見ることのできた者にと このいきさつについては、マルセル・・フリョンの論を、 っては、幻影の扉は、木戸御免なのた。つまり、言いかえ 引用しておく。 れば、あやふやな、中途半端ではない、確固とした幻想 「通常、幻想的という言葉に、人が与えているような意味を、彼は、作りあげることが、出来ていたのである。その
のだったのかー 「さようなら、幼いローザ」 ローザは知った。再びゲリラは立ち上がった。民間人の多くはゲ ローザはいった。そして暗闇の通路を抜けて外へ出た。外でも、 リラに味方をし、ゲリラは政府軍を倒すことができた。そして、そ赤い巨大な太陽が、戦闘最後の日を見送 0 ていた。あの太陽が時間 れ以後、国家は生まれることなく、・ ケリラは戦い続け、一般市民はを停めていてくれる 産業を再建しながら今日に至った。ゲリラは細かく分派を生んでい き、殆んど戦闘意欲を失い、いっか非戦闘者との間のル 1 ルを持っ ローザは終戦協定の行われている自由会館から、約五百メートル ようにな 0 て、戦中の繁栄の時代がやづてきた。ゲリラの戦闘は交離れた廃墟に陣をと 0 た。そこには間もなく新しいビルが再建され 通事故のようにルールによ 0 て処理され、殆んど無意味なものとなるようで、半分の整地が終「ており、建材が積まれていた。約三メ った。この無意味な戦争を最終的に終らせようとしたのが、新しい ートルの鋼材は、素晴しい。 ( リケードになった。ローザは鋼材の上 終戦協定である。 に昇り、前方に小さな鉄柱を積み上げてパリケードを完全なものに おそらく、今度は″ゲリラ狩り″もないかも知れない。無理に政した。 府権力を作り上げなくても、現在ある体制がスムーズに国家として クラスター氏がいっ登場するか判らなかった。しかし、ロ 1 ザに 成立するだろう。あるいは素晴しい平和がやってくるのかも知れな とって待っことは、決して苦痛ではなかった。彼女はいつもこうし て待った。待っ時間が一時間のことも、一週間のこともあっただろ 「だけど、私は殺し屋よ、国家なんかいらないわ ! 」 う。ローザにとっては殆んどその時間の判別はつかなかった。ロー ローザは呟いた。 ザは待っ間に様々なものをみることができた。鋼材をはっていくア 彼女は起き上がり、デニムの戦闘服を着ると、今度は帽子を忘れ 崩れたビルから突き出しているコンクリートの壁、上空の強い ずに被った。銃は自動小銃を選び、弾を二帯肩にかけた。ロナルド 気流に流される雲、幹たけが 3 メートルばかり残された街路樹、歩 を覚えている下腹部が、まだ重く感じられたが、歩き出すといつも道に転がっている自動車の・ ( ックミラー、焼け野原に新しく立てら のように身体が軽くなり、自動小銃も軽ライフルも変らない程度にれたコカコーラと仁丹の広告塔、人が住みついている廃車になった 思えた。部屋を出る前に、もう一度時間を失っていた彼女の空間を・ ( ス、新築の総プラスチック高層ビル、そして赤い太陽。太陽は間 もなく沈もうとしていた。 眺めた。そこは長い間彼女を育て続けてきた世界である。彼女はい つもそこを出て、狩りをして戻ってきて眠ったのだ。そこは国家と薄闇にヘッドライトを輝やかせた黒い自動車が一台走り去った。 いう時間の始まりと共に閉ざされる、あり得ざる空間であった。赤逆方向から自由戦闘団の旗をなびかせ、数人の団員を乗せたトラッ い光が、壁を豊かな褐色に映し、小さなべッドと、簡易椅子と本箱クが走ってきた。そして、完全に日が暮れた。クラスター氏の車に 3 を悪魔礼拝の教会の小道具に変えている。 ついては、ローザもよく知っていた。今朝、あるいは昨日、それと 、 0
1 、 4 を折れてもまだ、頭と頭のぶつかる音は潮駁のようにかすかに鳴り 響いていた。 「今、わたしはあなたを尾行しているわけではありませんよ」おれ と肩を並べて歩きながら、尾行者が弁解した。「一緒に歩いている だけです」 「そうです。もしかすると、尾行しているのはわたしの方かもしれ ない」おれはそう言い返した。 案の定、彼は悲しげに、空を見あげて叫んだ。「苦しめないでく ださい。いやなことをいつばい思い出すではありませんか。性病的 にいまわしい別の世界のことを」 「なあに。わたしたちは別の世界のことなんて、完全に知ってはい ないんですよ。今まで別の世界だと思っていたのも、実はこの世界 の一部だったのかもしれません。いや、おそらくそうでしよう」お れも空を見あげてそういった。 「しかし」彼は眼を丸くしておれを見た。「脱走をあきらめたわけ じゃないんでしよう。やはり、この世界から逃げ出すつもりなんで しよう」 「別の世界がないのなら、この世界から逃げ出すことはできないし ゃありませんか」おれはにやりと笑った。「わたしは、逃げ出そう とすることはもうやめました」 「ははあ。それは」尾行者の顔には安堵と困惑の表情が同時に浮か んだ。「それは、それは。でも、ほんとですか」 「本当です」おれはうなすいた。「逃げ出すことをやめ、わたしの 精神力によって、この世界を改造するのです。この世界と、わたし の内的世界をびったり同じ状態にしてしまうのです。換言すればこ の世界を、わたしの精神で包みこんでしまうのです」 8
そんなふうに応用するわけにはいかんし。これはだれにもできるこり合わせるといった風変わりなことをいろいろとやってのけたもの とじゃない。 ナ間違いも犯したが、おなじ種類の間違いは二度と犯さなかっ た。あまりにも長い時間顕徴鏡にとりついていたため、心臓がその さて、よわったそ。自分の進化のスピードを上げるわけこよ、 顕微鏡を通じて彼自身の血を汲み出しているという幻覚をふりはら んし、かといって、他人の心を加速してやるというわけにもいか どこうのに、まる二日間研究を休まねばならぬ破目におちいった。彼が ん。ほかにうまい方法はないものかな ? ないはずはない 試行錯誤的なやり方をけっしてしなかったのは、そういう方法を締 かに、なんらかのかたちで、答がなければならない」 そんなわけで、ジ = ームズ・キダーがもつばら努力を注いだのはまりのないものとして否定していたからだ。 こうして、彼は数々の成果を得た。まず最初からついていたとい その解答を見出すことであって、光ポイフや植物学や原子物理学に ではなかった。ノ。 彼よ実際的な男たったにもかかわらず、やや形而上うことだが、それよりも、確率の法則を公式化し、それを素朴なか こちこ直して、これこれの実験は試みても無駄たなどといった細か 学的な側面からこの問題をとらえていた。だが問題に取り組むにさナ冫 いしては、彼は一流の論理を駆使する完璧なやり方で臨んだ。くるいことまでが分かるようになったとき、彼はますます幸連だったと いえるだろう。時計の蓋ガラスの上の不透明な粘性流動体がひとり 日もくる日も彼は島をさまよい歩き、仕事が思うにまかせぬもどか しさを、カモメに貝殻を投けつけ、ふんだんに罵言を吐き散らすこでに動きたしたとき、彼は自分が正しい軌道の上にあることを知っ とで慰めた。そしてようやく彼には部屋にこもり、思いを凝らすとた。それが自分で食物をさがしはじめたとき、彼は昻奮しはじめ た。それが分裂し、何時間かして再分裂したのち、各部分が成長し きがおとずれた。そうなってはしめて彼は情熱的に仕事にとりかか てさらにまた分裂したときは、かちどきをあげた。生命の創造に成 っこの。こ。 功していたからた。 彼は自分の専門分野、生物学で、主として二つのことーー・遺伝学 彼は自分の頭脳の生んだ子供たちの世話をした。汗たらけになっ と動物の物質交替ー、ーに問題をし・ほって研究をすすめた。彼はさま て大奮闘を演じた。彼はさまざまの振動をあたえる浴槽を設計して ざまの知識を獲得し、それを貪慾な頭脳に詰めこんたが、その多く は現在手を染めている問題とは関係なく、ほとんどが彼のもとめて彼らにあたえ、種痘と投薬を行ない、霧を吹きかけた。なにか一つ いるものではなかった。彼はしかし、それまで知らなかったか、推手を打ったびに、つぎの行動の指針が得られた。液槽と試験官と培 測したことのなかったわずかばかりの問題について、わずかに得た養器からまずアメー・ハ状の生物が、ついで繊毛をもっ極微生物が生 その知識を蓄積し、やがて研究をすすめるのに必要な既知のファクみだされた。そのあと急速に彼の仕事ははかどって、眼点と神経包 タ 1 をひととおり完全にそろえてしまった。そのア。フローチの仕方嚢をもっ生物がつくり出されたかと思うと、つぎには勝利の中の大 は彼独特のもので、およそ非正統的だった。リンゴとナシを掛け合勝利ーーー一個ではなく多数の細胞をそなえた正真正銘の胞胚生物が わせたり、一辺一 ogM 、ー 1 を加え他辺には。。を加えて方程式を釣得られた。腹足類を進化させるには多少時間がかかったがいった 4
た。キダーはイデオロギーの面でいちじるしい独創性を発揮した。 で、温度や酸素含有量や湿度などをさまざまに変化させた。また、 彼はたとえば、二酸化炭素を過剰にし、わざと彼らを殺した。するすなわち彼はやり遂げる必要がないということを条件としてなら ・よ、不可能な仕事をいくらでも思いつくことができたのである。た と生き残ったものは、その身体の抵抗力を次の世代にったえるのだ った。彼は定期的に一つの密閉区画から他の区画へと卵を移し、種とえば新人類に多孔性の物質で退避小屋をつくる方法を自分たちだ 族の血になるべく多様性を保たせるようにはかった。このように制けで考え出させたいと思い立った。すると彼はむりやり暴風雨を引 き起して居住区の一つを襲わせ、そこの住民を参らせることで、退 御された条件のもとで、動物は急速に進化しはじめた。 こうして、これが彼の問題に対する解答だった。人類の知的進歩避小屋の必要性をつくり出すのだ。新人類たちは彼があらかじめ片 を十分にはやめることにより、彼の途方もない頭脳が渇望する情報すみに積んでおいた防水用の薄い物質で雨を防ぐ退避小屋を考案す をそこから得ようと考えたが、それは無理な注文だった。だが自分る。キダーはすかさず、その脆弱な待避小屋を冷たい空気の突風で 冫冫しかなかった。そこで彼は一つの吹き倒してしまう。新人類たちはこんどは風と雨の両方に耐えられ の進化をはやめるというわけこよ、 新しい種族をーーものすごい速度で発達し、進化して、やがて人間るような待避小屋を組み立てる。キダーは急激に温度を下げ、新人類 たちがその肉体を適応できないようにした。かれらはちつぼけな火 の文明をしのぐにいたり、その連中から彼がまなぶことのできるよ うな種族を創造した。 ばちで待避小屋を温めた。キダーはこんどは逆に温度を上げ、新人 彼らは完全にキダーの手中にあった。地上の正常な大気は、かれ類たちを焙り立てた。何人かの死者が出たが、利発な少年の一人が らにとって有害で、四世代目ごとに彼はそれを彼らに証明すること強固な絶縁性の建物を立てたが、それは三層のゴム類似の物質を、 を怠らなかった。彼らは彼から逃亡を企てることはなかった。彼その中間層に何千もの穴をあけて使い、そこにエアー・ポケットを らはあてがわれたその生を人間の何百倍もの速さで生き、進歩し、生じさせたものだった。 このような戦術をもちいて、キダーは形こそ小さいが高度に発達 小さな試行錯誤の実験を繰り返した。彼らは人類にまさるものをも っていたが、それはキダーの導きがあったからだ。人類は実際に科した一つの文化を強引に発展させた。彼は一つの区画には旱魃を、 学を発見するのに、六千年、そしてそれを活用するにいたるまでにそしてもう一つには洪水を発生させ、そのうえでその二つの間の仕 はさらに三百年を要した。ところがキダーの創造した生物はたった切り壁を取り払った。壮烈極まるめざましい戦争がおこなわれ、キ ダーの手帳には、戦術と武器に関する情報がぎっしりと書き込まれ の二百日で、人類と同等の知能水準に達した。そしてその後は た。それからまた、ふつうの鼻風邪を予防するワクチンが開発され このキダ 1 が発作的につくりだしたもののおかげであの偉大な故ト たーー現在の世界でこの病気が完全に撲減されているのは、そのワ ム・エジソンでさえまるで家内工業の職人なみにしか見えなくなっ クチンのおかげだが、それが一般に用いられるようになったわけは 3 キダーは彼らを " 新人類。と呼び、彼のために働くことを強制し銀行の頭取、コナントがたまたま、そういう風邪を引き込んでから
男の思念は、獣の心に痛いほど食いいった。これは挑発にちがい末であった」 勇士は、ここに来あわせた事情を説明し、ここかしこに倒れてい 2 。こちらが仕かけるのを待ち、勝負の結着をつける。この誘い にのってはならぬ。獣は、ためらっていた。内心の動揺をかくすたる兵士の死体を、悼ましげに見まわした。 め、右に左にとびまわり、かたく守っていた不動の姿勢をくずし美濃の乳近の稲置という。石占の横立は、その名に聞きお・ほえが た。だが、男は、微動もしない。 なかった。悪魔のような獣をたおした勇士であるから、さだめし名 よそ 獣の心に、憤怒の炎がもえあがった。押さえてきた兇暴な殺意のある人かと思ったが、きわめて低い位の他所者でしかなかった。 やさか みずがきおおきみ が、このうえない侮辱をうけ、とどめようもなく膨れあがった。 美濃の国は、かって水垣の大王の世に、八坂入彦の王子によって 巨大な体軅が、身軽に宙をとび、男の顔めがけて襲いかかる。男征服され、大和王家の支配のもとに入った。そのとき降伏した豪族 まがね は避けようとせず、切先を直立させて剣を突きだす。真鉄の刃が、 たちは、大和に真物をさしだし、その位をうけた。しかし、かれら とびかかる獣の喉に吸いこまれ、月光にひらめいた。 が本国でもっている権力にくらべて、授けられた位は不当に低いも つぎの瞬間、銀火色の剛毛につつまれた獣の体は、断末魔の叫びのであった。稲置という位は、大和の土地では、一村の長くらいの 声とともに、横ざまに倒れこみ、二足三足もがいてから動かなくな名声しか持たない。だが、かれら豪族たちは、位の低さにもかかわ った。男は、大きく息をはいてから、獣の喉を串刺しにした剣をぬらず、本国では旧来の領土をほ・ほ完全に支配していた。大和から美 きとり、すぐ平静にもどった。月光に照らしだされた男の表情に濃に進駐した八坂入彦は、これら豪族の勢力を、完全に解体するほ は、死闘の影は残っていなかった。 どの力を持っていなかったからである。 ちちか 石占の横立と宮戸彦は、銅鐸のかげからとびだし、男のまえにか石占の横立は、こういった事情を考えあわせ、ようやく乳近の稲 けだした。 置に対する偏見をあらためた。名目上の位の低さとはかかわりな 「ありがとうござった。おかげで、命びろいいたした。わしは、穴く、この勇士が、かの地の名家の長であり、広大な領地をもっ豪族 師の長、石占の横立と申す」 であることを、ようやく老人は理解した。 石占の横立が礼をのべると、大口の真神を斃した勇士は、剣を腰すでに夜は明けはじめ、空は白みはじめていたが、美濃の乳置と におさめながら答えた。 石占の横立は、さまざまなことを話しあった。宮戸彦は、二人のか いなき ちちか おうすみこ 「わたしは、美濃の国の乳近の稲置という。さきほど、飛鳥の里に たわらにあって、小碓の王子の世話をしていた。 おいて、村長から、この怪物のことをきいた。里の長の話では、わ 穴師の長は、美濃の稲置の人柄に、すっかり惚れこみ、ついに大 しより先に、一隊の大和の兵が、止めるのもきかず、出発したとい事をあかした。ことは大和王家の内輪に関する大事である。それを あきびと うことであった。五十人ばかりの商人の一隊が、ことごとく食いこ打ちあけるのは、よくよく稲置の人柄を見こんでのことであった。 ろされたことがあるときいたので、後を追いかけてくると、この始「いかがであろう ? ひとつ、この小碓の王子を預っていただけま