/ ロみたいに片つ。ほだけスニーカーをぬいで、ひう一方の足にジー 「ヴィクなんていうの ? 」 ハンまきつけて。「名前なんていうんた ? 」 「ヴィクさ。たたヴィクさ。ほかにゃないよ」 「クイラ・ジューン・ホームズ」 「じゃ、おかあさんとおとうさんの名前は ? 」 。 ( ンを下へさげた。「ハ力なこときくな 「変てこ」 おれは笑いだして、ジー よ」おかしくて、また笑ってしまった。彼女はかなしそうな顔をし「オクラホマではふつうの名前だって、おかあさんはいってたわ」 「そこから来たのか ? 」 た。こっちはまた頭にきた。「そんな目つきしやがると歯ぶっとば すそ ! 」 彼女はうなすいた。「第三次大戦の前にね」 彼女はひざに両手をおいた。 「しや、おまえのおふくろ、もうかなりの年じゃんか」 ( ンを足首のところまでおろしたが、スニ 1 カーがじゃまに 「そうよ。でも二人とも元気よ。だと思うわ」 なって、なかなかぬけない。片足で・ ( ランスをとると、片方のスニ おれたちは全然うごかないで話していた。寒いんたろう彼女は ーカーをぬいだ。四五をかまえたまま、スニーカーをぬぐのは、ち ふるてる。「さて」そばにすわろうとして、おれはいった。「そ よっとした芸当だ。たけど、ひとつはうまくいった。 ろそろーーー」 いちばんいいとき もう腰から下は、かたくなったあれから何から丸出しだ。彼女は ばっきやろう ! プラッドのちくしようめー ちょっと前かがみにすわってる。両足はかさねて、手をひざにおい にとびこんできやがる。・フラッドは板としつくいのあいだを、ほこ ている。「そいつ、ぬげよ」と、おれはいった。 りをまいあげて走ってくると、尻でプレ 1 キをかけてとまった。 すこしのあいだ動かなかった。よけいな手間をかける気かな、と「今ごろなんだよ ? 」おれはどなった。 思った。だが、すぐうしろに手をやると。フラをはすした。シームが 「だれにいってるの ? 」女がきいた。 はずれたとき、。 ( チッと音がした。それから腰をうかすと、 「こいつだよ。プラッドだ」 ーを足のほうにたぐった。 「その大 ? 」 ふいに、その顔からおびえた感じがきえた。穴があくほど、じっ ・フラッドは女をちらっと見て、そっ。ほを向いた。そして何かいし とこっちを見つめてる。やっとその目がプル 1 だということがわか かけたが、女が口をはさんだ。「では、みんながいうの、ほんとう った。ところが、これが気持わるいくらい変てこなんだけれど : なのね : : : あなたち、動物と話ができるって ? ・ ? なんでとびこんで できないんた。ためというんじゃなくて、なんていうか、やる気「おまえ、スケの話を朝まできいてる気かい ふわきたか知らなくたっていいのか ? 」 はあるんた、見りやわかるとおり、だけど、こんなかわいい っとしたのに見つめられてみろーーーどんなソロに話したって信じや「話せよ。なんで来たんだ ? 」 「ヤ・ハいことになったぜ、アル・ハー しないだろうーーーふっと気がつくと、おれは話しかけていた、ウス 7
たかな。腹がへ、ったぜ、ヴィク」 そこへクイラ・ジューンがや・つてきた。プラッドは彼女を見て、 おれは彼女を見あげた。日はしずみかかってる。プラッドが腕の 9 目をつぶった。「いそいだほうがいしわ、ヴィク。ねえ、早く。ド なかでふるえた。 ロップシャフトからあがってくるかもしれなくてよ」 彼女はプ . ンとふくれつつらをした。「あたしを愛してるんなら、 おれは・フラッドをだきあげようとした。死んでるみたいに重い 早くしてよ」 「いいか、・フラッド、聞けよ、これからシテイへひとっ走りいっ だけどプラッドをおいては行けない。それは、たしかだった。あ て、食いものとってくるからな。すぐもどる。待ってろよ」 たしを愛してるなら , ーーポイラーのなかで彼女はきいたつけ、愛っ 「あそこへは行くな、ヴィク。おまえがおりてった日、偵察に行って何か、知ってる ? てみたんた。あのジムでおれたちが死んだんじゃないってことを、 連中は知ってたよ。どうしてわかったのかな。ワン公どもが、にお 小さなたき火だった。チンビラどもがシティのはずれまででてき いをかぎだしたのかもしれん。ずっと見はってたけど、つけてはこたとしても、見つかりつこないくらいだ。煙もでていない。プラッ なかった。夜になると、このあたりはヤ・ハいからな。ほんとヤ・ハ ドが食べおわると、おれはその体をかかえあげて一マイル先の通気 からな。ほんと : : : ヤ・ハいカ 孔まではこんだ。そして、その小さなねじろで、ひと晩すごした。 ・フラッドはぶるんと体をふるわせた。 ひと晩じゅう、おれはプラッドをだいていた。プラッドはぐっすり 「しつかりしろよ、・フラッド」 と眠った。夜があけると、おれはもっとていねいに傷のてあてをし 「だけどシティじゃ、おれたちは完全にマークされてる。もうもど てやった。きっと立ちなおるだろう、なにせ強いやつだから。 れやしないよ、ヴィク。どっか行かなきや」 ・フラッドはまた食べた。前の晩ののこりが、たっぷりあったから それで道はなくなった。もどることはできないし、・フラッドがこだ。おれは食わなかった。腹はすいてない。 んなふうじゃ、ほかへ行くこともできない。それに、おれは知って その朝、おれたちは焼け野原をてくてく歩きだした。新しいシテ イを絶対に見つけるんだ。 いた。たしかにソロとしてはよくやってきたほうだけれど、それも ・フラッド ・フラッド・、・ ・、いたからだ。まさか女役にゃなれやしない。そしてこん カひっこをひいてるので、道はなかなかはかどらなかっ なところで食いものは見つかりつこない。・フラッドの傷のてあて、 た。頭のなかでなりひびく声がやむまでには、ながい時間がかカ それから食いもの、なんとかしなけりや。なんか栄養があ 0 て、てた。彼女の声は、何回も何回もおなじ質問をくりかえしていた。愛 っとり早いもの。 って何か、知ってる ? 「ヴィク」クイラ・ジ = ーンが、今にも泣きそうな、かん高い声で ああ、知ってるとも。 いった。「行きましようよ ! 大はだいじようぶよ。いそがなくち少年は犬を愛するものさ。
くはなったけれど、ゲロでくさいったら。 紹介所からでると、れいのみどりのパトロール箱がホイットべッ 「行こう ! 」 ドみたいにすっとんでくるところだった。ケープルがっきでている 9 いやがってふりほどこうとしたけれど、おれはふみこたえ、べッ が先つぼはミトンじゃなくてフツ・クになってる。 ドルームのドアをあけた。ひ「ばりだしたところで、杖をついて立片方のひざをつくと、三〇ー〇六のつり皮を腕にまきつけ、じ「 っているルーとでくわした。杖をけとばしてやると、屁こきじじい くりねらいを定めてフロントのでかい目玉にぶつばなした。一発、 はすっころがった。ホームズ夫人がおれたちを見た。亭主は何してズガーンー るのか、ふしぎがってるらしい。「おくにいます」おれはそういっ 命中したとたん、目玉は火花をちらしてはじけとんだ。みどりの て、正面のドアにむかった。「天罰が頭にくだりましたよ」 箱は道路をそれて、ミル・エンド・ショッ。フと書いてある店のウィ 鼻のまがりそうにくさいクイラ・ジ、ーンをひつばって、通りに ンドにつつこむと、キーキーガシャガシャ音をたてながら、まわり でた。吐くものもないのにまだゲーゲーやりながら、泣いている。 じゅうに火と火花をまぎちらした。カッコイイ。 下着がどこへ行っちゃったのか心配なのだろう。 クイラ・ジューンの手をとろうとふりかえると、いなくなってい 銃は、職業紹介所の鍵のかかった箱のなかにはいってる。その前 た。通りのむこうから自警団が押しよせてくるのが見える。ルー・、 に下宿屋にまわり道して、ガソリン・スタンドでかつばらってきた ・ハッタの化けのみたいに、そばで杖ついて。ヒョンビョンとんでい 金てこをポーチの下から出した。そして共済組合のうらをぬけて商る。 店街にはいると、まっすぐ紹介所をめざした。事務員がひとりとめ ちょうどそのとき銃の音がはじまった。でかい、ズーンとひびく ようとしたが、そいつの頭を金てこでたたきわ 0 た。ルーの部屋に音。クイラ・ジ = ーンにや 0 た四五た。見あげると、一一階をぐるり ある箱の錠をこじあけ、三〇ー〇六と、四五と、ありったけの弾、ととりまくボーチの上に彼女がいた。まるで。フロのようにオートマ ス。 ( イキ、ナイフ、道具入れ、全部かついだ。そのころには、クイ チックを手すりにあて、群れのまん中ねらってガンガン撃ってい ラ・ジューンもすこしはまともになっていた。 る。四〇年代のリバブリック映画のワイルド・ビル・エリオットそ 「どこ行くの ? どこ行くのよ ? ああ、 つくりだ。 だけど、ばかやろうだよー ほんと、ばかやろうだー にげなき 「おいクイラ・ジューン、うるせえな、。、。、。、。、、うなよ。、 ゃいかんときに、あんなことして時間つぶしやがってー しょに来たいっていっただろ : : : おれは上に行くのさ、ペイビー 外からそこへの・ほる階段を見つけて、いっぺんに三段ずつの・ほっ いっしょに来たけりや、 くつついてたほうがいいそ」 た。クイラ・ジューンはにやにやケラケラ笑ってる。そして群れの しいかえす力もないほどおびえてる。 なかから、ひとりにねらいをつけては、舌べろの先を口のはしから 四五をやると、手にとって穴のあくほどながめた。 つきだし、目からぼろぼろ涙をこ・ほして、ドーン ! と撃つ。する っ
彼女はこぶしを口にあてた。おれはげたげた笑ってやった。「そ んな野郎のキンタマはちょんぎっちゃえよ、おばはんよう」まるで 9 上にある土の重さが、肌にったわっ、てくるようだった。 食いものはみんな人工だ。人工豆、合成肉、インチキ鶏、にせトケツから火をふいたみたいにとびだしてった。 ウモコシ、いかさまパン、味もなにも砂食ってるみたいで食いもそんなふうに何日かすぎた。おれは町をふらっき、連中は話にき たり、食いものを持ってきたりした。だがピチ。ヒチしたスケは全然 のなんてもんしゃない。 上品 ? ばっきやろ、あんな礼儀とかいう見せかけの嘘つばちをよせつけようとしなかった。町中のやつらと話がつくまでおあずけ 見たらゲロはいちゃうぜ。こんにちは、ナントカさん、カントカさなのだ。 プリキ罐から出るに出られず、ちょっと頭がおかしくなったとき ん。ゃあ、こんにちは。ジニイちゃん、お元気 ? どうですか、 気は ? 木曜の教会の集まりにはいらっしゃいます ? 最後にもあった。閉所恐怖症とかいうのにおそわれ、、下宿屋のポーチの贐 いところでがたがたふるえていた。 - よケやくおさまると、今度はや は、おれまで下宿の部屋のなかでひとりでぶつぶついいはじめた。 たらにイライラして、やつらをどなりつけ、つぎにはふさぎこみ ! こんな清潔で、きちんとした、甘っち上ろい生活をつづけたら、 男は死んじまう。男の連中がみんな立たなくなって、タマのついてそのつぎはおとなしくなり、それからはただ・ほんやりしていた。 ここからズラかることを考えはじめたのは、それからずっとあと ない、穴・ほこだけの赤ん・ほしか生まれないのも、こんなことしてり オ前に・フラッドに。フードルを食わせてやったのを思いだしたとき ゃあたりまえだ。 最初の一「三日、みんなはおれを爆弾かなんかを見るような目でから、それははじまった。あれはどっか下の町から出てきたにきま ってる。たたドロツ。フシャフトからはあがれない。とすれば、出口 見ていた。おれが爆発したらおもしろいや。連中の家のきれいな白 しビケ ' ト塀も、ウン「と血でべとべとた。だがそのうちたんだんがほかにあるけだ。 とうとう連中は、町全体のようすをくわしく見せてくれることに 連中もおれになれてきた。ルーはおれを商店街につれていき、どん よっこーー・不作法なことはせず、よけいなことはしなければという なソロだって一マイル先から見つけそうな、まっさらのズボンとシオナ + ツを買ってくれた。メズという、こないだおれを殺人鬼とよびや条件でだ。みどりのパトロール箱が、いつもどこか近くで見はって がった女まで、うるさくつきまといはじめ、最後には髪をかってやた。 るといいだした。文明化したように見せるんだそうだ。だけど、お ついに出口が見つかった。べつにおどろくほどのことじゃない。 れにはこの女のねらいはわかってた。おふくろって感じなんか全然あるにきまってるものがあっただけだ。 ないんだから。 そのあと、おれの銃のかくし場所がわかり、用意ができた。ほと んど。 「どうしたんだよ、マンコちゃん ? 」おれは皮肉をいってやった。 「亭主がかまってくれないのかい ? 」
た。それから目をあげると、いちどにしゃべりだした。「おお、ヴ下着おろせ、足をひろげるんだ」おびえきった目で、おれを見る。 ごめんなさいね、あんなことするのいやだ 「やるんだ。出たけりゃな」 イク、ごめんなさい ったの、でもしかたがなかったのよ、そうするようにいわれていた クイラ・ジューンはいわれたとおりにした。おれはその足をとっ し、あたし、こわかったの、愛してるわ、だからあなたがっかまえて、ひざを折りまげ、股のつけ根まで見えるようにひろげさせた。 られたときいたとき、うれしかったわ、でもここきたなくないでしそしてドアのわきに行くと、小さな声でいった。「。ハ。ハをよぶん / ノかいってるようなところじゃないでしょ ? 」 だ。。、。、だけ」 おれは彼女をだいたままキスしてやり、安心しろといってやっ長いあいだためらっていたが、とうとう大声でよんだ。こんなと た。それから、おれといっしょに出ないかときくと、何度もうなずきたから、べつに作り声をだすこともない。 いて、あなたといっしよならどこへでも行くわ、といった。だけて、おねがい ! 」そして、かたく目をつむった。 はいってきたアイラ・ホームズが、娘のあれに目をやって。ほかん ど、ここから出るには、きみのパパを傷つけることになるかもしれ ないというと、おれが最初に見たときのあの大きな目で彼女はじっと口をあけたところで、ドアをしめると、頭に力いつばいぶちかま した。頭がちょっとへこみ、血がべッドカ・ハーにとびちった。そし と見つめた。 一しつけの点じゃ、クイラ・ジューン・ホームズはあのお祈りをどてパパはたおれた。 ズシッー なりちらす。ハバの娘とはとても思えない。 という音を聞いて目をあけた彼女は、両足にとびちっ た血を見たとたん、かがんでフロアにゲロゲロはきだした。これじ 何かずっしり重い、燭台とか、混棒みたいなものはないかときい てみたが、彼女は、ないと答えた。おれはべッドルームをひっかきや、アーロンをよびよせるのには役にたちそうもない。おれはドア をあけて首を出し、「アーロン、もうしわけないけど、ちょっと来 、。、パのンツクスが見つかった。 まわした。たんすのひきだしから べッドの頭板から大きな真鍮の玉をぬいてソックスに入れ、重さをてくれないか ? 」といった。アーロンは、ホームズ夫人と話してる ルーを見た。べッドルームでは何がおこっているのでしようかね たしかめた。 ノーカうなずいたので、彼は部屋に 彼女は目を丸くして、おれを見つめた。「いったい何をはじめるえ、とでもいってるんだろう。レ・、 はいってきた。クイラ・ジューンのむきだしの茂み、壁や天井の 血、フロアにのびたアイラ、それだけ見て、叫・ほうと口をあけたそ 「ここから出たいんだろう ? 」 うなずく。 このところで、おれはぶちかました。息をとめるのに、あと二回ぶ ちかまし、横にどかすのに胸ぐらをけとばさなきゃならなかった。 「じゃ、ドアのかげにかくれるんだ。おっと、ちょっと待てよ。 クイラ・ジューンはまだゲロゲロやってる。 いこと思いついたそ。ペッドにのれ」 彼女はペッドに横になった。「ようし、スカートあげろ、それから彼女の腕をつかむとべッドからひつばりあげた。それでおとなし 0 、 0 、 3 9
いらにあるだろうから」彼は立ちあがって、伸びをした。 れなかった」 「こんどやってくるもう一 4 「クローンなんだよ」とカフがいった ビューは苦しそうにいった。 つの開発チ 1 ムも」 彼よ一つの空気ポンべだけになっ 「おれは行くべきじゃなかわた。、 , ー ても、まだ一一時間分の空気を持っていたんだよ。おれがでかけたと「すると、やつばり ? 」 きに、・むこうがこっちへ向かっていることだってありうる「あれじ「あっちは十二体のクローン。・ほくらといっしょに〈。 ( サライン〉 号でやってきたんだ」 や三人ともが連絡をなくすことになる 3 おれはおびえてたんだな」 カフはランプの小さな黄いろい暈の中に坐り、それをすかして彼 静寂がもどり、マーティンの長い柔らかないびきが、それに間の の怖れているなにものかを見つめているようだったーーー新しいクロ 手を入れた。 1 ン、彼の属していない複合分身を。こわれた一組のとり残された 「あなたはマーティンを愛してるの ? 」 一個、よるべのない破片、慣れない孤独の中で、どうしてほかの人 。ヒューは憤りの目を上げた。「マーティンは友だちだ。ずっとい 冫しいかも知らずに、これから彼は十二人のクロー 間に愛を与えれま、 いやつなんだ」彼は言いやめた。やや っしょに仕事してきたし、 あってから、「そう、おれはやつを愛してるよ。な・せそんなことをンの絶対的で閉鎖的な自己充足と顔をつきあわせねばならないの だ。それはこのあわれな青年にとって、あまりにも大きな負担にち きく ? 」 ビ、ーは行きがけに、相手の肩に手をおいていった。 カフは答えずに、ただ相手をじ 0 と見つめた。彼の顔つきは一変がいない していた。まるで、これまで見たことのないなにかを、はじめてち「隊長はきみに、・クローンとい ? しょにここへ残れとはいわないは らと目にしたかのようだ 0 た。声までが変わ 0 ていた。「どうしてずだ。き 0 と地球へ帰れるさ。それとも、せつかく〈さいはて〉の 一 - 員になったんだから、このままおれたちといっしょについてぎて そんなことが : : : どうしてあなたがたに : こっちは大歓迎だ。いそいで決める必要はない。だし・ ーには答えられなかった。「わからない」と彼はいっ だがピュ うぶ、きみならやっていけるさ」。ヒューの静かな声は尾をひいて消 た。「ある程度は経険かな。おれにはよくわからないよ。たしかに、 おれたちはそれそれ孤独なんだ。暗闇の中では、手をつなぎあうしえた。彼は上着のボタンをはずしながら「疲れき 0 たようすですこ し肩をまるめていた。カフは彼を見やり、そしてこれまで一度も見 力ないじゃないか」 カフの奇妙な凝視は、それ自身の激しさで燃えっきたように、床なか 0 たものをそこ・に見た。彼を見たのだ。オー = ン・。ヒ = ー、ひ とりの仲間、暗闇に手をさしの . ・〈・ている人間を。 に落ちた・ 「おやすみ」ビ = ーはそう呟くと、寝袋の . 中へ . 這いこんだ。すでに 「疲れたよ」とビ = ーはいった。「ひと苦労だったあの黒いほこ なかば眠っている彼は、ちょっとの間をおいそ「暗闇りむこうか りと泥の中でやつをさがすのは。ー地面のあっちこっちでロがばくば くやづ . ているし : 三・おれはもう寝る。、母船からの連絡が六時かそこら、カフがおなじ祝福の言葉を返してきたのに気がっかなかた 9
と、そいつはたおれるのだ。 もう夢中だ。 そばまで行ったとき、彼女はやせこけた自分のおふくろをねらっ ていた。引き金をひく寸前に、頭をうしろからぶんなぐったので、 弾は横にそれた。おふくろさんはダンスするようにちょっととびあ カったが、どんどんやってくる。クイラ・ジューンがいきなりふり ドロツ。フシャフトから一マイルはなれたところへ出た。フィルタ むいた。殺しに飢えたような目が、おれを見た。「はずれちゃった と ( ッチボルトを銃でふきとばして、そとには、だし しゃなしか」その声には、おれさえゾクッとした。 ・キャグニー た。下のやつらも、これで思い知っただろう。ジミ 四五をもぎとった。ばかやろう。こんなに弾をムダづかいしやが には近おらんほうがいし どうせ勝ち目はないんだから。 クイラ・ジューンをひきずってビルのうらへまわると、さしかけ クイラ・ジーンは力をつかいはたしてた。ムリもない。だけど 屋根の倉庫を見つけた。その上にとびおり、彼女を待った。 彼女は鳥みたいに笑いさえすりながら、とびおりた。その体をう青天井の下で夜ねるのはヤ・ ( い。ひる日なかだって出会いたくない けとめ、倉庫のドアをすこしあけて、連中がビルのなかまではいつような化けものが、どっかにいるかもしれないからだ。もう・そろそ ろ暗くなりだしてる。 てるかのそいた。どこにもいない。 クイラ・ジ、ーンの腕をつかんで、ト。ヒーカの南側のヘりへつつ おれたちはドロップシャフトをめざした。 ・フラッドが待っていた。 ばしった。ぶらっきながらさがしたかぎりでは、それがいちばん近 ぐったりしている。だが、おれを待っていたのだ。 い出口だった。つくまでに十五分かかった。はあはああえぐだけ かがんで、頭をかかえあげた。・フラッドは目をあけて、聞こえる で、子猫みたいに力がでない。 「よう」 か聞こえないくらいの細い声でいった。 出口はそこにあった。 しいやつだ・せ。「かえ おれは笑いかけた。ちくしよう、やつばり、 ふとい通気孔た。 ってきたそ、おい」 金てこで留めがねをこじあけ、はいりこんだ。はしごが上にむか ・フラッドはおきあがろうとした。だが、できなかった。傷口は見 っていた。やつばりだ。あるにきまってるんた。修理や掃除はしな られたものじゃなくなっていた。「何か食ったのかよ ?. おれはき きゃいけないんだから。あたりまえじゃんか。の・ほりはじめた。 な力しながい時間がかかった。 : それとも、おとといだっ 「いいや。きのうトカゲつかまえたよ : つかれての・ほる気がなくなってしまうと、クイラ・ジ = ーンはい つもこうきくのだった。「ヴィク、あたしを愛してる ? 」そのたび に、愛してるよ、と答えた。ほんとのことだし、それで彼女にの・ほ る力がわくからだった。 0 5 9
んとはいっているのをたしかめた。そして予備のクリツ。フをガード 「早くしろ、も 0 たいぶるな 0 て。どうしたんだよ ? 」 プラッドは「 >A O の正面のドアのはうをふりかえった。「愚の上においた。ここからだと、ジム全体が見わたせる。 連隊さ。ビルをとりまいてる。十五人か二十人、 - もっといるかもし 。フラッドは「正面ドアのわきの暗がりにうずくまっている。もし れん」 できたら、愚連隊といっしょにいる犬をさきに撃ってくれ、と・フラ 「どうしてやつらにわかったんだろう ? 」 ッドはいった。そのほうが行動がしやすくなるからだ。 プラッドはくやしそうな顔で、うつむいた。 それもむずかしいけれど、もっと大きな心配ごとはほかにもたく 「なんだよ ? 」 さんあった。 「ほかにもかぎつけたワン公が小屋のなかにいたんだな」 たてこもるのだったら、入口がひとっしかないとなりの部屋のほ 「やつばり」 うがつごうがよさそうだった。だがチン。ヒラたちがもうビルにはい 「どうする ? 」 りこんでるかもしれないので「・残ったうちのいちばん有利な場所と 「やつらを追っぱらうだけさ。何かほかにやること思いっかないか いうことで、ここをえらんだのだ。 静まりかえっている。クイラ・ジューンも物音ひとったてない。 「ひとつある」 彼女をなっとくさせるのに、たいせつな時間をかなりつかってしま おれは待った。プラッドはにやっと笑った。 った。おれといっしょにたてこもるほうが、二十人を相手にするよ ーパンあけろよ」 「パパやママの顔をもう一度見た り、どれくらい安全かしれない。 いんだったら : : ・こと、おどかしてやったのだ。それからは彼女も おとなしくなった。 4 静かだ。 そのとき、二つの音が同時に聞こえてきた。プールのほうから、 この女、クイラ・ジューンのほうは、、 力なり安全になった。レス しつくいをふむプーツの音。低く。それから正面ドアの横のほうか リング・マットを十二、三枚かさねてシェルターを作ったからだ。 これで流れ玉にあたる心配はないし、連中がわざわざさがしまわるら、金具が木にぶつかる音。生けどりにする気らしい。ようしいや れるならやってみやがれ。 ようなことをしなければ、まず見つかりつこない。おれはガードか また静かになった。 らつるさがったロープをの・ほると、プローニングと予備の弾を二つ かみほど持って、ガードの上にすわった。こんなときには、・フレン ・フローニングを、。フールのドアにむけてかまえる。おれがはいっ ィート十インチとして、そこ かトンプスンみたいな機関銃を持ってればいいのにと、ほんとに思たとき、あけたままだ。背たけが五フ う。四五口径をしらべると、弾倉がいつばいで、薬室にも一発ちゃ から」ブット半たけ下をねらえば、そいつの胸板をぶちぬける。頭 っ 4 7
りという町なんだ。そのうえソロをにくんでる。愚連隊がしよっち ・フラッドは長いあいだだまっていた。おれは返事を待った。とう ゅう押しかけて女を強姦し、食料をかっさらったものだから、下でとう・フラッドはいった。「すこしぐらいはね。いるかもしれない も対抗する策をたてたんだ。殺されるそ、おまえ ! 」 し、いないかもしれない 「そんなこと、なんで心配するんだよ ? おれがいないほうがずつ わかった。おれはプラッドに背を向けると、黒い金属の柱にそっ と楽にくらせるって、いってやがるくせに」これにはプラッドもケてまわりはじめた。とうとう壁のスロットをさがしあてると、プレ ションとなった。 ートをさしこんだ。低い・フーンという音がして、柱の一個所がみる みる丸くひろがった。はじめ見たとき、そんなところにつぎ目は見 「ヴィク、いっしょになってから、もうそろそろ三年だよ。楽しい ときも苦しいときもあったが、今度のは最悪だ。おれは、こわいんあたらなかった。。ほっかりとあいた入口に、おれは一歩ふみこん だよ。かえってこないんじゃないかと思ってさ。腹をへらして、おだ。ふりかえると、・フラッドがこちらを見ていた。おたがいに見 : だけつめあった、そのあいだ中、柱は・フーンと音をたてていた。 れをやしなってくれるやつをさがしに行かなきゃならない : ど今ではソロもほとんど組にはいってるから、こっちははんば犬「じゃあな、ヴィク」 「気をつけろよ、・フラッド」 だ。もう若くもないし、この怪我ではね」 それは、おれにもわかった。ちゃんと筋がとおってる。おれだつ「早くかえってきなよ , 「まかしとき」 て、もしソロ暮らしができなくなって組にはいったりすれば、はん 「ようし、行け」 ば大だーー・ホモのチンビラどものいうなりになって尻をまくらなき おれは前を向き、中にはいった。うしろでアイリス・ドアがしま ゃならない。だけど今おれの頭にあるのは、あのスペタ、クイラ・ ジューンの裏切りだけだった。それといっしょに、ふつくらしたお つばいや、だいたとき彼女があげたちっさな声のことが思いうか んだ。おれは頭をふった。下へおりるのは、おとしまえをつけるた めなのだ。 「どうしようもないんだ、・フラッド。行かなきや、おさまらないん最初からわかっていたことなのだ。感づいてもよかったのだ。上 はどんなふうか、都市はどうなったのか、それを見たくてあがって ・フラッドは大きく息をついて、しょ・ほんとうつむいた。いくらい くるスケは、むかしからときどきいた。そういうひとりが、おれの ってもだめだとわかったのだろう。「ヴィク、おまえ、あのスケに前にあらわれた。だから、あのうだるようなポイラーのなかで、お 3 どんな目にあわされたか、ちゃんとわかってないんだよ」 れにもたれかかりながら話したいろいろなことを、信じたのだ。女 8 おれは立ちあがった。「なるべく早くかえるよ。待ってるか ? 」と男があれをするのを一度見たいと思っていたこと。ト・ヒーカでや 7
彼女はプラシをおいて服の山のなかから。 ( ンティーをとると、すわがるなよ、おれはただ寝たいだけなんだ、と、 しいたくなってしま るっとはいた。それからプラをとって、つけた。あんなふうにつけう。 ( こんなのは、はじめてだ。今まではスケに何かいったことな 7 るとは知らなかった。うしろ向きにウエストにまきつけ、シームのんかなかった。つつこんで、それでおしまいだったのだ ) ところをくつつけあわせる。それからカツ。フを前のほうにまわす たけど、すぐどうでもよくなった。おれはうしろ足で彼女をひっ と、引っぱりあげ、まず片方、つぎにもうひとつをすくうようにし かけて、服の上にけたおした。四五でねらいをつけると、彼女のロ て入れ、最後に肩にストラップをあげる。ドレスに手をのばしたと がちっさな 0 のかたちにあいた。「ようし、ちょっとあそこ行っ き、おれはぬき板としつくいをどかし、ドアをつかんだ。 て、レスリング・マットとってくるからな。そのほうが気持いいだ 彼女はドレスを頭の上にあげると、両手を生地の内側に入れた。 ろ、え ? 動いたりしたら。この ( ジキで足をぶっとばす・せ。どう そして頭からかぶり、ひきおろそうともがいているとき、おれはド せつつこまれるんなら、足ぐらい大事にしなよ」いったことが通し アをカまかせに引っぱった。板やしつくいがごそっと落ち、ドアが たかどうか、おれは返事を待った。とうとう彼女はゆっくりとうな にふい音できしった。彼女がドレスをぬぐ前に、おれはとびかかつずいた。オートマチックをかまえたまま、ほこりをかぶったマット ていた。 の山のところへ行くと、一枚ひつばりだしこ。 女は悲鳴をあげかけた。おれの手のなかでドレスがさけた。彼女女のそばまでひきずって行って、きれいなほうが上になるように には、ものの落ちる音やきしる音の意味さえわからないうちになにひっくりかえし、四五のとっさきで、女にそれにのれと指図した。 もかもおこっていた。 彼女はマットの上にひざを折ってすわると、両手をうしろにまわし 狂ったような顔つきだった。そう、狂った顔だ。大きく見ひらい た格好で、おれを見つめた。 ジ た目。影になっているので何色かわからない、顔たちはととのって ーパンのチャックをおろし、ぬぎかけたとき、彼女がへんてこ いた。大きめのロ、かわいい鼻、おれのとよく似た自たっ頬骨、右な目つきでこっちを見てるのに気づいた。おれは手をとめた。「て の頬にエクポがひとつ。おれを見つめた。すくみあがってる。 めえ、なに見てやがんだよう ? 」 そのときーーこれが、ほんとおかしいんたけれどーーおれは何か おれは頭にきた。なんだか知らないけど、やたらに頭にきたの 0 - 」 0 いってやらなくちゃいけないと感した。何をいうって、そんなこと は知らない。なんだ「ていいのだ、とにかく、すくみあが 0 てる彼「あなた、名前なんていうの ? 」と、彼女はきいた。ソフトな、な 女を見ると、こっちがおちつかなくなってくる。だからといって、 んかふわっとした感じの声だった。喉のおくのほうにふわふわした どうしようもないんたけれど。つまり、おれは犯そうとしてるんだ毛が生えていて、それを通ってでてきたような声だ。 し、その相手にむかって、こわがるなよなんていったってしようが おれを見つめたまま、答えを待っている。「ヴィクさ」と、おれ ないわけだ。考えてみれば、ただのスケなんだ。なのに、おい、こ はい 9 た。まだ何かいうのを待ってるような顔。