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検索対象: SFマガジン 1972年10月号
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1. SFマガジン 1972年10月号

ー最も初期のバットマン ( 上 ) ( 下 ) の「裁くのは俺だ」を、まわし読みしている場面がある。 わかりのように、黄金時代というものは、ある形式が生ま そして、この時期は、「・ ( ットマン」コミックスの最後のれると、すぐにやってくるということなのだ。逆にいえ 黄金時代に重なるのである。私が、これまで、ながなが ば、その形式の初期の、幼年期の段階で、その形式の最良 と、ビーター ・ポグダノヴィッチの映画について書いてきの部分は、出つくしてしまうということでもある。 たのは、このためなのだ。 では、「ハットマン」についてはどうか。 「アメージング」と「ファンタスティック」の編集長テッ ヒーロ 最初のスー 「スーパーマン」が、コミッ 「・ほく ド・ホワイトは、厳しい言いかたをしている ク・ブックに登場したのは、一九三八年だが、一般に、一 、くットマン・コミックスの は、確信してるんだけれども 九四〇年代のはじめから、一九五〇年代の前半くらいまで最良の時期は、一九四〇年から四六年までだと思う。この を、〈コミ 判断は、ノスタルジアにひたりこんでいるためだとは思わ ック . ・フッ ない。だって、・ほくがはじめて・ハットマンを読みだしたの クの黄金時は、一九四〇年代の終りで、それ以前の作品については、 代〉という。それからずっと後になってから、接したのだから。たとえ すごみ これでもおば、初めの頃は、悪役のジョーカーよ、、、 をし力にも凄味のあ る凶悪な悪 漢という感 じだったけ れど、後に なるにつれ て、悪の要 亠系より、も、 道化役とし ての要素が 強くなって くる。そう なると、つ まらない」 禺然だ 3 が、このテ AND 3 第第き慮朝

2. SFマガジン 1972年10月号

豪ををきト したが、法律の細かで厄介な条項に追いつくのが精一杯で、最高評 議会の最新の解釈がルバイルの完全な潔白を証明していると指摘す ることができるだけでした。グテット人たちが裁判の歴史をすべて 完璧に記憶していることは私の経験からして事実のようです。 「しかし地球人ォズボーン・・フラッチにポルノグラフィーを売った と自分で認めたのではないか ? 」星間伍長は遂に怒鳴りました。 「ポルノグラフィー、 ポルノグラフィ ー」ル。ハイルは瞑想しまし た。「それは、安つぼく煽情的でみだらなもの、劣情をかきたてる わいせつ性と定義されるのだね ? 」 「むろんだ ! 」 「では伍長、質問させてくれ。あんたはその写真を見ただろうね。 煽情的で劣情をそそると思ったかね ? 」 「むろん感じはしない。残念ながらグテット人に生まれたわけでは ないのでね」 「それは」ルバイルは冷静に反撃しました。「オズ・ホーン・・フラッ チも同じだ」 その時都合よく特別に回送された巡察船で引取隊が到着しなかっ たとしても、パー Ⅱチ日ルー伍長はこの窮地から抜けだす賢明な方 法を思いついたはずだと私は思っています。彼は現在、生まれた星 でも最も狡猾な法律家のうちに数えられている更に理屈つ。ほい六人 のアメポイドと戦っています。ルッフ第六惑星の警察はグテットの 法廷で腕を磨いたルバイルを扱いかね、勝ち目がないとみて最良の 代表者たちを送りつけてきたのです。 数では圧倒されていましたが、ホイ様、思い返して下さい、ルバ イルは地球を離れてからずっとこうした事態に備えていたのです。 ひねくれた知性を鼓舞して最大の働きをさせることが、自分の生命

3. SFマガジン 1972年10月号

THFJ, 、 WOR し新 30F SF 。 COMICS 、くが気楽に現われて、なにやら訳のわからぬ不思議な超兵器 みにでてきたからである。私たちの知らないことが、し 、・、ツトマンを、はるかなる惑星に、あっさ をつかったり らでもあるのだ ) 、・、ツトマン、力し りと運ぶようになってしまえば、もう くらアタマをつかっても、意味のないことになる。彼は、 バットマンの凋落 結局、単なる狂言まわしとして、宇宙空間を、右往左往す 一九五〇年代の後半から、・ ( ットマンは、最初の、そしる役になりさがってしまう。悲惨なり・ ( ットマン。 いや、いくら荒唐無稽の設定でも、おもしろければい ておそらくは最悪の、大きな変化をとげた。まず、ジョー ーしい。だが、「そのために い。しをとらえるものがあれ・よ、 ペンギンといった、古いなじみの悪人たちの影が薄 くなり、それにかわって、やたらと登場するようになったは、それなりの秩序だったリアルな自己の世界を持たなく てはならない。つまり、必然性のある小宇宙を形成しなく のが、なんと、宇宙人である。 ところが、「・ハットマン」の宇宙人は、 ・、ツトマンが / 。、トロールしていると、空飛ぶ円盤が降てはならない。 りてきて、黄色い鬼のような宇宙人がとびだし、なにやらなんの必然性もなく、現われるのである。もう、〈夜の熱 射ち合いをはじめる。どうやら、宇宙人の男ふたりが、ひ気〉どころではなく、ここには、真実味のある世界など、 とりの女性 ( 宇宙人 ) をめぐって恋のさやあてを演じ、決まったくないのだ。一見、宇宙を舞台に、スケールが大き くなったようにしながら、これが、想像力の驚く・ヘき欠如 闘の舞台として地球を選んだらしい また、・ ( ットマンとロビンが、宇宙人に捕まり、未知のでなくて、なんであろう。 惑星の動物園にいれられたり、宇宙人が、ゴッタム・シテ恐らく、折からの宇宙プームに合わせ、にぎやかに〈宇 とにかく、宇宙冒険と、ありとあ宙〉を安売りして、刺激を強くしようとしたのだろう。一 イの市長になったり らゆる種類の真実味のない怪物たちが、次から次へとくり度、刺激竸争がはじまると、作品の質の低下ぶりには、・フ だしてくる、安手のコミックスになってしまった。宇レーキが効かなくなる。・ ( ット・ウーマン、・ ( ット・ガー 、くット・マイトと称する ルまでが登場し、そしてついに′ 宙人、怪物、ロポットなどの・ハーゲン、セールである。 ーマン」におけるムクイ ーマンといっしょ異次元世界のおどけ者 ( 「スーパ ーマンなら、少くとも、スーパ ズトプルクに相当する ) が登場するのを見たとき、ああ、 スーパーマ . ンは、その出生か の活躍なら、それでもいい。 と、目をおおいたくなったものだ。 らいっても、いわば宇宙人であり、はじめから的なキこれでもうダメだー こうして、最高の味わいを誇ったコミックスは、空しく ャラクターなのたから、一、宇宙大活劇の主役になっても、不 うす ・ヒーロー薄っぺらで、派手やかな、子どもだまし以下の最低の作品 思議ではない。だが、・ハットマンは、 . スョパ になってしまったそして、次の変化は、一九六四年にお ではないのだ。悪漢の性格を分析し、手がかりを調査し、 ・、ツトマンとい、つ 要するに、アタマをつかいながら、犯人を捕えていく過程こった。これを〈 = 、ールック〉 こ、・ハ一ットマンのおもしろさがあった。ところが、宇宙人宇宙人は、、姿を消し、 . 同時に、あらゆる安もののじ ちょうらく ーー 45

4. SFマガジン 1972年10月号

はねながらものうげに動いています。 すね。一揃い買いたいと思いますが、いかほどでしよう ? 」 二枚目では水槽の片側から塩水が滴り始めており、一「三の偽足グテット人は、プラッチが教えている高等学校の化学実験室で手 7 が不審そうにそちらへもたげられていることを除けば、最初の写真に入る必須化学薬品に換算して代価を請求しました。ル。 ( イルは薬 とそれほど変ってはいません。想像の余地をなくすため、塩化ナト 品を切望していることをはっきりと説明し、自分がここにいること リウム分子のスケッチが写真の右上の隅に二重焼付けされていまを誰にも知らせるなと警告しました。 す。 「そでないと、貴公が明晩ここに来た時、真写はどっかいっちま おれもいっちまうぜ。それに貴公にはそいつに迷惑をかけたこ 三枚目の写真では、グテット人は塩性溶液の水面近くに恍惚とし コン・フルネ て漂い、体は最大限に膨張し、数十本もの偽足が突き出されてうちとを弁解でけねえそ。わかるり ? ふるえています。染色質のほとんどは核の赤道近辺の染色体に集中ォズボーン・・フラッチはル。 ( イルが売買交渉をもちかけた物を買 されています。アメー / 冫 ・、ことっては、これが疑いもなく最も煽情的い備えることを全く気にしていないようでした。彼の共同体の基準 な写真なのでしよう。 では、それは些細な量にすぎず、極端に安かったのですと彼は言い 四枚目では、核のなかの染色体の中間に刻み目がっき、二組に分ました。もちろんそれまでも、自分の実験のために学校の薬品を流 かれようとしていますーーそして五枚目ではその分割が完了し、二用した時にはいつもそうしていたように、彼は几張面に後で自分の つの核は生殖しつつある個体の両側に分かれ、細胞質の体全体がそポケット・マネーから研究室に返済しました。しかしその写真は、 の中央で圧縮を受け始めています。六枚目は、この結果として生まアメポイドから聞きたしたいと思っていた事柄のごく僅かな部分に れた二人のグテット人が欲望を充足させた後の惓怠感をあらわしてすぎなかったのですと彼は認めました。プラッチは有効な商業契約 塩水の水槽から出るところの写真です。 を取りきめた後で、この訪問客がどこから来たのか、彼がどんな世 界に住んでいるのか、また文明が〈秘密監視状態〉の最終段階にあ ルバイルの腐敗行為を推し測っていただくために、グテット警察る生物について、理解できる共通の関心事があるのかどうか知りた が私に告げたことをあなたにもお知らせします。ルバイルはアメポいと思っていたのです。 イドの未成年者にその写真を売りさばいただけではなく、彼らの信しかしながら、交換が滞りなく終るやいなやルバイルは彼を欺い じているところでは、彼は自分で写真を撮ったのであり、モデルは たのです。時間がより自由になり、落ちついて宇宙の様子について 彼の兄弟ーーそれとも姉妹というべきでしようか ? なのだそう議論できるようになった時、グテット人は明晩帰るそと・フラッチに です。あるいは彼自身とただひとりの兄弟の写真なのでしようか ? 言いました。当然ながら、地球人が写真を持って帰るやいなやルバ この問題には様々の、実に様々の混乱した様相があるのです。 イルは変換機に燃料を詰めこみ、その原子構造に必要な基本原子核 ・フラッチは最後の写真をルバイルに帰して言いました。「そうでの再編を施し、再び超空間駆動機をフルパワーで働かせるとゴウク

5. SFマガジン 1972年10月号

劇場公開されたあと配給権が消減し現在マポロす天才ぞろいだから見逃さないよう注意しょ シの T' 映画となっている『 The Ouartermass う。なんせ「地球の静止する日」が『地球 Xperiment 』 ( 原子人間、初期のハマー。フロの最後の日・大宇宙からの挑戦』、「惑星からの モービル石油の円盤第二弾が三月から放 映されています。どこか人里はなれた湖のほと 怪奇映画の最高傑作といわれる ) 『 Village 侵略」が「妖怪合成人間の恐怖』、「魔獣大陸」 of the Damned 』 ( 光る眼、記録映画のよう が『客船大怪獣ダコへドラの襲来』、「空りにアダムスキ型が着陸、金属音がきこ えて光子ロケットのような光が点減するとロポ にリアルな侵略恐怖映画で「呪われた村」の映飛ぶ戦闘艦」が『宇宙からの訪問者戦闘艦アル 画化。映画のベストワンにあげる人もいる ・ハトロス号の戦い』、「博士の異常な愛情」が ットと宇宙人 ( ? ) の会話がきこえてくる。 ほどの名作ですが輸入されているのにスポンサ 『核戦争最後の日』、「トリフィドの日」が 「故障 ? 原因は ? 」「わかりません」「燃料 ーがっかず六年間も眠ったままになっている ) 「恐怖の植物人間地球発狂大侵略作戦』にヘン は ? 」「あるんですが」「もっとよく調べろ。 ・ハ力。オイルオイル・ 『 X the Unknown 』 ( 怪獣ウラン、初期のハマ シーンしちゃうからね。この夏の珍題名ベスト ・ : 」「はア、そうです ー。フロの映画 ) 『 The Beast from 20.08 ワンは七月に放映した犯罪映画でなんと『猟か」ロポットのすき透った頭の光がついたり消 Fathams 』 ( 原子怪獣現わる、プラッドベリの奇に狂った情怨の復讐・謎の全裸美女連続殺えたり。「おまえもオイル切れじゃないか ? 」 しにしえの 世界最初の原子怪獣映画。特撮はハリーハウゼ人』。命名者は東京チャンネル。、 ロポットの光が消えて「はい、どうも・す・ ン ) などが出番を待ってるけど、テレビ局のオ大蔵映画もハダシで逃げるものすごいタイトル ・」地面にオイルかんが一つ「エン ジサマがたはヘンテコリンな放映題名を考えだ です。チャンネルにはげましのお便りを出そ ジンには、よいオイルが必要です。モービルオ モービル石油 " 第ニ弾 ① ③ ④ ② ー 5

6. SFマガジン 1972年10月号

″そいつは知っている。わたしよりもずっとよく知っている″ し、行ける限りの遠くまで行き、そこで腰を落ち着け、決して疲れ 「だが、そのすべてをだよ : : : 最後のつながりまで、最終的な成 ることを知らぬ永久につづくほどの忍耐で待ちつづけていたのだ。 分、つながりぐあいだ、すべての何十億もある : : : 」 その生き物はかれに話しかけた。 ″そいつは知っている。すべての生命で最初に必要なものは、それ ″あなたは助けのことを話した。な・せ助けを ? あなたはこの別の 自身を知ることだからな″ ものを知らない。なぜあなたは助けたいと思うべきなのだ ? ″ 「そしてそいつは、われわれにその情報を、その遺伝暗号をくれる ダニエルズは答えた。 : くれるだろうか ? 」 「それは生きている : : : それは生きており、・ほくは生きている。そことができるか : れで充分ではないのか ? 」 ″あなたは無遠慮なやつだな″と、そのきらめいている生き物は言 った。ただその言葉は、無遠慮というよりもっと激しいものだっ ″わたしにはわからない″ と、生き物は言った。 た。″そんな情報はほかのものに与えたりしないものだ。それは下 「・ほくはそう思うよ」 品であり野卑なことだ。 ( この言葉もまた正確には下品と野卑では と、ダニエルズは言った。 なかった ) それは、ひとつのものの自分を、他のものの手にわたし てしまうことだ。それは窮極的に無目的な降伏だ″ ″それで、あなたはどうやって助けられるつもりだ ? ″ ダニエルズは言った。 「・ほくはきみに、遺伝学のことを話した。説明できるかどうかわか らよ、 「降伏なんかじゃないよ。あいつが閉じこめられているところから ″あなたの心からその言葉を知ったよ。遺伝の暗号だな″ 脱出する方法さ。そのうち、・ほくがきみに言った百年間に、ぼくの 「この別のもの、石の下にいるもの、きみが守っているもの : : : 」種族のものは、その遺伝暗号からもとのものとまったく同じ別の生 き物を作りだすことができるようになるはずだ。完全な正確さで複 その生き物は言った。 ″守っているのではない : : わたしが待っているものだ″ 製するんだ」 「きみは長いあいだ待っことになるよ」 ″だが、あいつはそれでもまだ石の中にいることになるそ″ ″わたしには待っためのものが備えられている。わたしは長いあい 「その一方のものだけだよ。もとのやっさ。もとのほうは、岩が侵 だ待った。わたしはもっと長いあいだ待っことができる″ 食して流れてしまうのを待てばいい。だがもうひとつのほう、複製 されたほうは、もう一度生きることができるわけだ」 ダニエルズは言った。 だが、石の中にいる生き物のほうが救出されることを望んでいな 「いっか、石は侵食され流れてしまうだろう。だがきみは、そんな に長いあいだ待たなくてもいいんだ。この別の生き物は自分の遺伝かったとするとどうなるのだ、とダニエルズは考えた。もし、そい 3 つが自分から意識して石の下に入ったものだとしたら ? もしそい 暗号を知っているか ? 」

7. SFマガジン 1972年10月号

: しかし、もっと重要なことは、現在もうつっていないという事実「わからないな。まったくわからない。どうも信じられないことだ : と なんです。もし・ほくが幻影を見ているのであれば、カメラは現在のと思いますよ。しかし、もしそこに何かがあるのだとすれば : ころで、あなたは恐ろしくなったことがありますか ? あなたはそ 写真をとっているべきでしよう。しかし、はっきりしたのは、カメ ラがうっすべきものが何ひとっ存在していないということです。・ほのことこ、、 冫しまではずいぶん落着いており、当然のこととしておら くは、カメラがおかしいのか、それともまちがった種類のフィルムれるようだ。しかし、最初はきっと恐ろしかったはずですが」 を使ったのだと考えました。それで・ほくはカメラを何台も変え、 「最初は、ふるえあがりましたよ。おびえただけでなく、肉体的な ろんな種類のフィルムを使ってみましたが、事態は変わりませんでおびえ : : : 自分の安全に対する恐怖、永久に脱出できない場所へ落 した。写真をうっすことはできなかったのです。何かを持ってかえちこんでしまったのだという恐怖 : : : そういったものだけではな ろうともしてみました。花があるようになると、・ほくは花をつみまく、自分が気違いになってしまったのではないかと恐ろしくなりま した。花をつむのになんの苦労もなかったんですが、現在にもどっした。そして、淋しさです」 「どういう意味です : : : 淋しさとは ? 」 てみると手には何も持っていないんです。・ほくはほかのものも持っ てかえろうと試みました。・ほくが持ってかえれなかったのは、花の 「それは正しい言葉しゃないかもしれません。場ちがい。いるヘき ような生きたものかもしれないからだと考え、それで生きていないでないところにいる。人間がまだ現われておらず、何百年もたたな ものを試してみました : : : 岩石といったものです : : : でも・ほくは、 ければ現われない場所にさまよっている。ひとことで言うなら、ま 何ひとっ持ってかえることができなかったのです」 ったく異様なところにいるので、ちちこまってふるえていたいとい 「写生してみるのはどうでした ? 」 う思いです。その場所ではなく。そこでは・ほくがまったく異質のも 「それは考えてみましたが、やってみたことは一度もありませんでのなんです。いまでもときどき、そんな想いがすこしします。もち した。絵のほうはぜんぜんだめなんです : : : それに、・ほくはそんなろんそのことはわかっており、しつかりしていようと思いますが、 ことをしても役にたたないと思ったんです。画用紙も空白のままもときどきまだその感情にとりつかれるんです。・ほくは、別の時代の どってくるだろうからです」 空気や光には場ちがいの者 : : : もちろん、それはみな想像なんです が」 「でもあなたはやってみなかった」 「そうとばかりも言えないな」 ダニエルズは答えた。 「ええ、やってみたことはありません。ときどき、・ほくは現在にも「でもいまは、最大の恐怖はもう去りました。完全になくなったん どってきたあとでスケッチをしてみました。いつもではなく、ときです。・ほくが気違いだという恐怖はです。それにはもう確信があり どきです。記憶によって。でも、お話ししたとおり、・ほくは絵がうます」 「どうして確信できました ? どうして人は確信を持てるものなん まくないんです」 5 6

8. SFマガジン 1972年10月号

「穢らわしい醜悪で老獪な堕落者め」警察の主任が舌を鳴らしてこ件を満足させるため充分巧妙に造られてはいましたが、地球のよう う呟いたのを私は耳にしました。 な非常に原始的な惑星向けに設計されたものではなく、船を離れて ホイ様、私がどう感じたかお知らせするまでもないでしよう。才は長期間効果的に使用することは不可能でした。 気と想像力にあふれたアメポイドの犯罪者が地球のように文化的に 私の遠隔巡察署が彼の着陸の通知を受けており、極めて細かでう は軽薄な惑星で捕えられずにいるのです ! 私は北アメリカにいるかつな法律違反を待ちうけていることを彼は知っていました。違反 すべての調査員に、警戒体制に入り有節触手を充分に広げて待機すしたならば私たちが襲いかかりーー九弁式巡察船は容易に彼を捕捉 るよう司令しました。 できるので、通常の正式な外交続きの後に彼はグテットへの道を戻 ることになったでしよう。当初計画したように人間の供給センター ルバイルはこの通信のほとんどを船の受信機で聞いていました。 を素早く攻撃し、必要物資を入手することができないのは明らかで 彼ま物々交換に望みを託しました。取引可能な人物を捜しだ 当然ながら彼のした最初の行動は、方向通知機を取り除き、グテッした。 , 。 一 1 スそス ト警察が彼の位置をつきとめられないようにすることでした。次いしてどうあってもその男に交換物を提供し、ルバイルの船が宇宙の で再び暗くなるのを待って、非常に困難ではあったでしようが、小 警察力の及ばない辺鄙な場所へ行くために必要な量の燃料を入手し さな船をその都市の他の場所へ移しました。 / 。 彼まこれもまた気づか なければなりませんでした。しかし船内のほとんどすべての物は船 れることなくやってのけたのです。 の運行に欠かすことができませんでした。更にルバイルは、①銀河 に絶対に地球の住民に技術的 彼は新住宅建設計画のために接収された、事実上居住者のいない文明の天理と存在を暴露せず、また、 ) スラム住宅区を本拠と定め、自らの問題を考えるためそこに落ちっ刺激を与えずに交換を行なわねばならなかったのでした。 きました。 ルバイルは後になって、この問題を細胞核がただの襞の塊になる な・せならば、ホイ様、彼には厄介な問題があったからなのです。まで思案したのだと告白しました。彼は船首から船尾まで二度三度 と船内を綿密に調べましたが、人間が興味を持ちそうな物は重要で 彼は巡察隊といざこざを起こしたくはなかったのですが、直ちに 多量の燃料に偽足を伸ばすことができなければ死んでしまうところあったり、啓発的すぎたりでした。そうして諦めようとしたその でした。燃料は地球を離れるためばかりではなく、それを供給しな時、彼は発見したのです。 彼の最後の犯罪による盗品こそ、彼が求めていた物だったので ければ早急に機能を停止する変換機のためにも必要でした。グテッ トの船はむしろ原始的といえるものですから、廃棄物を再使用できす る空気や食物に転換する装置を備えていたのです。 時間は限られており、供給源はほとんど存在しないかのようでし グテットの法律では、ホイ様、御存知の通り、犯罪に関するすべ 6 た。船に常備されている宇宙服は常に変動する生物の特異な必要条ての証拠は公判時まで被告により保管されます。これには非常に複

9. SFマガジン 1972年10月号

を救うただひとつの方法でした。同族のアメポイドが再び偽足で彼か ? ある種の犯罪の ? を招んだならば、彼は衰弱した原生動物と化したことでしよう。 「間違いなく」ル。ハイルは思慮深く言いました。「引取隊は要点を 7 ル。 ( イルとグテットの引取隊との間にはさまれた警官の運命がどっいている。ある種の犯罪が起きたのは確かだろう だがそれは れほど不幸なものとなるか、パー チ日ルー伍長には判っていまし俺がしたのではない。ォズボーン・プラッチが今 : : : 」 た。彼は前者から後者へ、囚人から法律家へと走り使いをし、動き星間伍長パー日チルーの頭は完全に混乱していました。 のとれない泥沼に足をとられ、錯綜した深い割れ目に落ちていった彼は地球に指令を送り、オズボーン・プラッチを逮捕せよと命し のです。 たのです。 引取隊は偽足を空つぼにしたままでは帰らないことを決断しまし 日チ " ルーがプラッチを捕える以上のことをしなかったの た。成し遂けるためにはーー先の失敗した警官たちによって権利をは、〈長老〉をも含めた私たち全員にとって幸運でした。地球人は 付与されたルバイルの罰の先請求権を主張し、引取隊が主導権を握物的証拠を何も持っていなかったのです。〈秘密監視状態〉にある って彼を再拘置せねばなりませんでした。ル。 ( イルはと言えば、私世界で、特にこの種の事件で誤認逮捕が起こったことを考えると、 たちの部隊のなかで不自由な立場に置かれることばかりでなく、引ホイ様、私の血はほとんど液体に返りそうになるのです。 き渡し自体に反対し、同族の市民から保護されるべきであるとし ところがその上パ 日チ日ルーは、オズボーン・プラッチをル。ハ て、同じく巡察隊による逮捕を無効にしようと決意しました。 イルの隣りの独房に投獄するという大間違いをしでかしたのです。 疲れきってもうろうとしていたため極度の嗄れ声になっていたパ あなたもお気づきになるでしようが、すべてはアメポイドの自己満 " チ日ルーは、最終的に細長い触手を伸ばして自分を引取隊のと足のために細かく計画されたことでありーーー年若い私の補佐官のこ ころに引きあげ、注意深い考察の後に、ルバイルが地球滞在中に一とも充分計算に入っていたのです。 切罪を犯していないという結論に達したことを引取隊に伝えまし 日ルーがプラックに対して最初の尋問をする頃には、地 こ 0 球人はすでに隣りの男から要旨を聞いていました。しかしそれはご く簡単なものでした。 「そんな・ハ力な」ス。ホークスマンが彼に告げました。「犯罪は起こ ったのです。完璧で非のうち所もないポルノグラフィー・、 カ販売さ「ポルノグラフィー ? 」彼は最初の質問に答えて繰り返しました。 れ、あの惑星に出回っているんです。犯罪があったに違いありませ 「ポルノグラフィーとは何のことでしよう ? スミス氏と私はしば んー らく初等生物学の教科書を作る仕事を一緒にしていて、全体に新し チⅱルーはル。ハイルのところに戻り、打ちひしがれて、こい挿絵を使おうと考えていました。若者が即座に理解できる大きく れはどうなのだと尋ねました。彼はほとんど嘆願するように言った鮮明な写真を捜し出してーーおそらくリ = ーヴ = ンホークの頃から のです。犯罪を構成する要素がすべて揃っているのではないだろう多くの教科書に二度三度と使われている不鮮明な絵だけは使うまい

10. SFマガジン 1972年10月号

したことほど悪どくはない。 彼が考えたしたのはすてきな計画だったが、たった一つだけまず ひどく簡単なことたった。私たちは長いこと、家畜の成長にテス いことが起こった。ある日、研究所から緊急電話がかかった。彼が 3 ・チ = ープ技術を導人している。アリゾナにある孵化牧場は十 = 電話にでると、所員が、賭はすべて失敗した、と言った。しだいに ーカーあり、一年間で、テキサス州が十年で消費するより多くの牛出力が落ちてい 0 たのだ。彼女の入「ている特別タンクは、冷凍能 肉をうみだしていた。医者たちは、私の生殖細胞をとり、それらを力を失 0 た。彼らがそれを発見した時、身体は摂氏一度ぐらいのと 成長させてい 0 た。やがて、それらは、生命維持タンクに移されころに数時間おかれていたのだ 0 た。デ = ーナは他の死体と変わる た。牧畜と同じだ。ただし、こっちはもっと気まぐれなものだっところのない、たたの死体にな 0 ていた。外見は前と同じだ 0 た た。私は、フレイジアに、保存室をすえつける地点を決める仕事をが、長い年月、彼らが保 0 てーーあるいは、保とうと努めてきた、 まかせた。保存室は探知できぬように、非金属物質で造られること彼女のわすかな生気はなくなっていた。 になっていた。私は彼に、その場所を私に言ってはならない、と命彼には大きなショッ クだったが、そもそもの始まりの時程ではな じた。これで、誰にも、秘密を私から聞きだして、私の名をかたっ かった。三十年以上、時がたっていた。彼は死と生きることを学ん て、そこに踏みこみ、おもちゃの家を壊すことはできない。なぜなでいた。彼女は彼の生活の最も大きい部分を占めていた。昔のこと ら、私もそれらの家がどこにあるのか知らないのだから。 だ。彼は、夜眠られぬままに横になって、彼女の声や、家に帰った 最初の複製人間は、二十年で成熟するようにな 0 ていた。この年時かけよ「て来る表情を思いだしたものだ 0 た。だが、すべては過 月は、私が考えだしたのだ。私が彼に概要を説明し、彼が私から引ぎさ 0 たことだ。ず 0 と昔読んだおとぎ話の思い出にすぎない。そ きつぐ。彼らは頭をかいて、〈老人〉は誰が考えるよりもず「とよして、永遠に失われた。 く若さを保っている、と言うことだろう。そして、彼が盛りをすぎ 彼はフレイジアに、死体に防腐処置をほどこして埋葬するよう命 たら、次の複製人間の用意ができる。医学が子供の解凍を許すようじた。だが、その時には、フレイジアは少し気が狂 0 ていた。彼は になるまで、この鎖は続いていくのだ。医者どもは長いこと時間か医学を信じなかった。奴らが解凍問題をさらに続けて研究するよ せぎをしてきた。だが、永遠に時間かせぎはできない。彼らがそれう、彼は望んた。〈老人〉がそうしようとしなかったので、彼は、 をやめたら、私はすぐに応じられるようになっているのだ。 ある男を殺す、と言った。そして、去った。 そこでテー。フは終わりだった。私はユタ州の無人の鉱山の抗道の 〈老人〉は葬儀に参列した。墓が閉ざされる寸前、一つの考えがう 中で正気づいた。タンクは側抗にはめこまれて、完全におおわれて かび、棺を開けよ、と命じた。開けてみると、中はカラだった。と いた。情報が私を待っていた。食料と、フレイジアが最後に来た時 いうより、ほとんどカラだった。金のかたまりでできた、インドの 二〇二〇年ごろーーーまでの世の移り変わりが簡潔に書いてあっ寺院の小さな模型が人っていたのた。おそらく、フレイジアの冗談 た。物語りの残りは、〈老人〉の記録から私が組みたてたものた。 だろう。昔はいい奴たったが、今は歳をとりすぎている。〈老人〉