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検索対象: SFマガジン 1972年11月号
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1. SFマガジン 1972年11月号

その上の曲りくねった狭い階段をの・ほり、望楼にあるきみの部屋に かけこむ。 とっとめた。パイロット、農園管理者、ハンター、兵士などを しながら、この太平洋ですごした長い年月が、そうした言葉を 彼に教えたのだ。 あくる朝、彼はふたたび水平線上にむらさき色のかげを見出 この物語は、ある男が、だれにも決して口外しないという誓 した。こんどのそれは少し大きく、彼が計算した方角にほとん いをやぶって、わたしに話してくれたものである。男の手のな どびたり位置していた。この九日、彼こよ、 「 / 冫をいかだにそなえ かで いや、ロのなかで、というべきだろうかーー物語がど 力し つけられたちつぼけな櫂を使う理由は何ひとっ思いあたらなか れほど歪められたかは、わたしには知るすべもない。だが大筋 った。だが今こそ目標ができたのだ。ランサムは最後の水を飲 においては、それは真実であり、わたしは耳にしたままのかた みほすと、規則正しい、力強いリズムで海面をかきはじめた。 ちでそれを諸君に伝えることにしよう。これは、その男から聞 のヘさきが浜辺の砂にのり 櫂の動きは、彼の乗ったゴムボ 1 ト いた物語である。 あけるまでとまらなかった。 フィリツ。フ・ランサム船長がその島を見つけたのは、漂流を はじめて九日目のことたった。海のもくずと消えた船をのが れ、救命いかたにたどりついて、たったひとり今まで生きのび 朝。きみはゆっくりと目をさます。両眼がやにつぼく、べッドの てきたのである。水平線上に島がむらさき色の細い線のように上のライトがつけつばなしになっている。階下には誰もいない。き ルを出し、キ 現われたとき、あたりにはすでにタ闇がおりはじめていた。そみはひとりでボウルとミルクと砂糖入りのオートミー の夜、ランサムは一睡もしなかった。自分の見たものが信じらッチン・マッチでオープンに火をつける。そうすれば開いたオー・フ れなかったわけではない。彼のさめきった精神は、ひと目見た ンのロのそばで、本を読みながら朝食をとることができるからだ。 だけでそれが島であることをさとったが、かわりに彼の頭に渦オー ールがなくなると、きみはボウルの底にのこった甘いミル クとオー まきはじめたのは、さまざまな事実や推測だった。自分がニュ ルのかけらを飲み、ママの機嫌をよくするためにコ 1 ギニア近海のどこかにいることはまちがいない。それをもと ・ポットを火の上におく。ジェースンが服を着終っておりて に彼は、このあたりの海流についての知識と、九日間にわたるくる。話したくはないようす。コーヒ 1 を飲み、オー・フンでシナモ ン・トーストをひときれ作る。きみはジェースンが出かける物音に いかだの動きを考えあわせた。また、彼がこれから着く島はー ー着くかもしれない島、とは考えなかったーーーまず十中八九、耳をすます。しだいに遠のいてゆくエンジン音。それから、きみは 水ぎわ数フィ ートのところまでジャングルがうっそうと茂ってママの部屋にあがる。 7 ママは目をさまし、天井を見つめている。けれども、まだ起きあ いるだろう。原住民がいるかどうかはわからないが、彼は自分 8 がる気にはなれないらしい。ママのどなり声がとぶ確率を少しでも の知るかぎりの・ハザール・マライ語とタガログ語を巴いだそう

2. SFマガジン 1972年11月号

ーそれでおれの名はマリアン。子へイズリップ、マリアンという」 ところどころに白く塗 9 た石のケルンのある細い道、その道にそ ってひとりの若い男がやってきた。油断のない目つきに慎重な歩き老人はうなずき、のど・ほとけをひくひくさせた。「この土地は ぶり、肩にかついだ袋のなかでは、なにか赤いものがちゃぶちゃぶな、ごらんのとおり、鍋とかまどと庭草ぐらいしかない貧しい土地 鳴っている。周囲の土地は、庭や、囲いのある畑、花の咲きみだれじゃ・、、 カこれでも、かくいう老い・ほれのものじゃ。ローナン、とい る果樹を示していた。かすかに羊のめえと啼く声。若い男のやや大うのがこの土地の名でな、わしは、慣習により、ただ″ローナン きめのロもとがすぼまって、かれは考えた。このような土地に、、 しズ″と呼ばれておる。いかにも本名はべつにある、じゃが、このと かによく作物が実ることか : : : そしてその収穫を手にするのはだれおり年寄りで、病人でもあるということに免して、それを言わせる ・ころう - かと のは勘弁してほしい。どこその悪者が小耳にはさんで、わしに害を 。あそこに井戸があ 道路を曲がったところで、かれは一軒の小さな木造の家に出くわなすためにそれを利用するといかんのでな : ・ した。扉のかげから、赤くただれた目をした老人がのそいていた。 る、水はあそこで汲むがよかろう・そう。そうじゃ。それから、 道路を近づいてくる足音を聞いて、老人はかびくさい寝床から起き《カナラス国》の過去および現在の名声についてはーーーえへん、あ だしてきたのだが、足音の主がどんな人物か見てとると、その目が はん、おほん・・・、ーーどこにそれを知らんものがおろうかの ? かの勤 ぎよっとしたように大きくなり、痩せこけた脚はふるえた。 勉にして用心ぶかい国、他のさまざまな治療法とあわせて、地理の 「幸運があんたに恵まれますように、爺さん」なにも持っていない 呪法、手工芸の呪法、魔術の呪法などが、明らかに盛大に行なわれ 手のひらを見せながら、若い男は言った。「おれはただ焚火のできているあの国のことを ? じゅうぶんじゃよ、じゅうぶんじゃ。水 る場所を捜してるだけなんだ。運に恵まれてうさぎの仔を二羽ばかのことを言っておるんじゃよ、お若いの。うさぎの仔はもう死んで りしとめたんで、焼いて朝飯にしようかと思ってね」 おって、いまさら溺れさすには及ばんのじやから」 老人は、頭と、短く刈ったあごひげを振りたてた。「そりや、 しか若いうさぎのシチューは、甘く、風味がよかった。これでりつば ん、お若いの、うさぎの仔はな、裸火で焼いたりしちゃいかんよ。 な昼飯ができたと言いながら、ローナンズはその汁にパンの皮をひ すくなくとも、にんじんと、玉ねぎと、にらねぎと、月桂樹の葉と たした。それから、いかにも満足そうにけっぷをして言った。「あ いっしょに、ちゃんとした鍋でとろとろ煮こむべきものしや」 うさぎをにんじんといっしょに畑に置いとくよりも、鍋 つははー 溜息と微苦笑とともに、若い男は肩をすくめた。「あんたはまるでそいっといっしょに煮たほうがなん・ほかましか知れん ! ところ でうちの親父みたいな口をきくんだな。親父ってのは、なにを隠そで、お若いの、おまえさんはなんでここに来なすったのかね ? 」 う、《カナラス国》世襲領主たる太公で、この《カナラス国》は目 ーかれは腐りかけた大歯にひっかかった肉片を指でひつばりだした 「この、《国》とも呼べんようなちつぼけな飛び地、″かれ引 下のところまったく連に見はなされているが、《大遺伝子転移》以 ら″ , すなわち《矮人》の王たちの、慈悲ぶかい保護下にあるこの . 前は、これでもなかなか勢力のある国たったのさ。ああそうだー

3. SFマガジン 1972年11月号

じまス究ミ・すい編れ方注賞集よ 「ああ。明日になっ ジェースンはため息をつく。「ようし、そこのドラッグストア は生一研ハ場とトさ多のラ篇い者 6 にユの州登んイ録のとユ短い訳 8 たいいな ? 一分だけだそ」 たらな。今夜はだめ 国ヒ業イになナ収そびビとが か年 , 企ノ界 ・と , 人ネ 判 だ。冖豕に羽くころに スーパーマーケットほどもありそうな大きなドラッグストアだ。 わたれ大リがンぎでの の評 でつま某イすモつまくは 0 、 1 、 ~ は、ママは眠ってる ガラス製品や文具雑貨が店のおくまで何列もきらびやかにならんで 」か生のに 。で一ぎイ多でた ( 者 語どに州もらうデっジち作し後 いる。ジェースンはタ・ ( コ売場に行き、ライターの石油を買う。きだろう。わざわざお 物ひスイとかよ , にタま色ま缶に のんサノとばるは」ンち異み特 他ばキリ供かあのトアたのこ こすほどのことじゃ みは回転書棚から本を一冊とって、彼のところへ持ってゆく。「こ のちティ子なもたツフ , こい日 2 の。のとけビらはたく E れ買ってい ない」おこしたりし ジェースン ? 」 島の歳得人す代こづ一か力いには の況 2 取 4 で年た象オ成描席 0 彼は本をとりあけ、もとの棚にもどす。車に帰ると、彼はもどしたら承知しないそ、 士不 , をととし印「構を 2 博「れ号人こ , 表く一なた点第篇 とジェースンの声が たはずの本をジャケットの下からとりだし、きみにわたす。 ス。ま士夫うは発強ジトれ接と長 デすい学もいのをにロ一優のご , d すばらしい本だ。ずっしりと重くて厚く、べージのヘりは黄色く語っている。 「で , の在とた篇者ソレと想み冊ー 0 , 家ら学現るめ短読ントき幻 , 2 は作か工 ′いじにをアスめとのに 染めてある。つやのある硬いポール紙を使った表紙には、・ほろを着「うん」 フるす械しでは誌在・ 。ら実ので ルれま機職んき雑存ルすひ現もす た男が怪物と闘っている絵。怪物はゴリラに似たところもあるし人「ママの部屋にはい ウさいで就住書性のナでの , たも山 ・介い学ににを男彼ジ群能めし本 るなよ」 間に似たところもあるけれど、両方あわせたよりもっと恐ろしい ン紹と大部ン説えもリ篇才集逸行 一て」ン発ト小まてオ短なをそ単で その絵は多色刷りで、猿人は真赤な血をたらしている。男はたくま「うん」 ろノ ジめれト開ルるつのた面目こ ジャガーは「・フル しくハンサムで、黄褐色の髪はジェースンのよりすこし明るく、あ ン・フルン・フルルル・ ごひげは生やしていない。 : こといって道をつつ走る。白い波頭が月の光のなかにうかび、ア 「うれしいか ? 」 車はもう町をはなれている。街路灯がないので、絵を見るには、 スファルトのすぐそばまで流木がうちあげられているのが見える。 車のなかはちょっと暗すぎる。きみはうなずく。 「・ほくにはふわふわしたすてきなママがいていいな。知ってるか ? ジェースンは笑う。「そういうのをキャン。フっていうんだ。知っ ママの上にのると、大きな枕に寝てるみたいだ・せ」 てるか ? 」 夜中悪夢にうなされ、さびしくてママのべッドにもぐりこみ、そ きみは肩をすくめ、親指でページをめくりながら、今夜自分の部のふわふわしたぬくもりに体をすりよせたときのことを思いだし 屋でひとりそれを読むときのことを考える。 て、きみはうなずく・ーーその反面、ジェースンがなんとなくママと 「なあ、・ほく、おじさんが・ほくにいし 、ことしてくれたってママに話きみをあざけっているような気がして、しやくにさわる。 すんたろうな ? 」 家は暗く静まっている。車がとまるより早く、きみはジェースン 「う、うん、 いよ。いってほしい ? 」 のそばをはなれる。彼より先に玄関にとびこみ、大階段を、ついで

4. SFマガジン 1972年11月号

た。「それからおまえら、ほかの《でくの・ほう》めらもだ。おまえ る気配を聞くか、感じるかしたのだろう、ちらりとふりかえって、 マルの姿を認めた。とっさにかれは同僚の腕をつかみ、うしろをふらは、悪党であり、敵であり、ならずものであり、お尋ね者であ り、服従拒否者であり、略奪者であり、われわれの王と、王冠と、 りむかせた。「待て、ラフリン。あの通報を覚えてるか ? 」 ラフリンは毛虫眉を寄せて、うなずいた。「覚えていなくてさ。官杖を誹謗する悪質な犯罪者たる男をかくま 0 ているんだそ。われ われはそれにたいし抗議するとともに、そやつの身柄引渡しを要求 どうやらこの男こそ、われわれの話すべき相手らしいぜ、ゴーリ する。覚えておれよ、きっと取りもどしてみせるからな」 ン。おい待て、そこの男、王たちの名にかけて止まるんだ ! 」 マリアンは舌を突きだし、また両膝を曲げてみせた。 だがマルは身軽にスキップしながら言いかえした。「そもそもそ んな通報は誤報に決まってるさ。第二にこれは身許誤認のいい例警備官のひとりが言った。「なら要求するがよかろう。たぶん引 だ。第三に、おまえたちの王の名は、おれにはこれっぽっちも意味き渡してもらえるだろうぜーーおまけをつけてな、《どんがらが はない、連中の家来になったことはないんだからな。そして最後にん》やその一味というおまけを」 《矮人》たちはそれには答えず、背を向けてポニーのほうへもどり かけた。だがその途中でひとりがくるっとふりむくと、マルに向か 「おい待て ! 待てというのに ! 」 って人差し指を突きつけた。「きさまに言っとくがな、若いのー 「ー・・ー最後に」と、マルは、《矮人たち》よりさらに異様な風体の 男たちのそばに寄りながら、「おれは現在おまえたちの《地区》だもしきさまに多少でも歴史の呪法というものの知識があ「たら、わ いや、知 6 てたはずだ・ーーわれわれ《矮人》 が国だか知らんが、そこにはもういない。だから、さあ、おれを止かっていたはすだ められるものなら止めてみろ、《がにまた》のごろっきめらとはおの体型こそ、全人類の原体型そのものなんだってことをな ! おれ まえたちのことだ ! 」そしてかれは、かれらをからかって、両膝をたちに言わせりや、きさまらのほうこそ気の毒みたいなもんさ、あ の《大遺伝子転移》の後遺症に苦しんだ連中の子孫なんだから」そ 外にひろげて見せた。 《矮人》たちは憤怒の唸りを発して、同時に背中の剣に手をやりなしてかれはいま一度こちらに背を向け、それきり二人とも二度とロ がら、曲がった脚で進みでようとしたが、境界をはさんで対峙したをきかず、ずんぐりしたポ = ーにまたがって、速歩で道路を遠ざか 警備官たちが、数歩かれらに詰めよって、いとも不興げに睨めつけっていった。明かるい陽光のなかに、塵の微粒子が舞った。 マリアンは向きなおって、自分のほうを無表情に観察している異 たので、かれらもそれ以上進むことを断念した。 「まあいい 、それならここはひとまず引きさがるとしよう」一呼吸様な風体の男たちを一贅した。それから、胸もとに手をつつこみ、 いわば宙に向 して、ラフリンが言った。「そうまでして追いかけることに固執す紙入れから一通の書状をとりだして、さしだした : 7 るつもりはないからな。しかし忘れるなよ、そこの《でくの・ほう》」かってだ。というのも、相手はだれもそれを受け取ろうと手を出す 0 かれは眉ひとっ動かさぬマリアンに向かって、その蔑称を投げつけそぶりを見せなかったから。一瞬とまどったすえに、かれは言っ

5. SFマガジン 1972年11月号

が、かれの顔が見えたことは、いまの土の塊りを投けたと覚しい人も躍起になって喚きたてているのか、かれらには判然としなくなっ 物にたいして、明らかに即座の抑止剤として働いた。その男は、手ていた。というわけで、最初はひとりずつ、やがて、仲間が立ち去 にもうひとっ土くれを握って、一種の怒りのダンスを踊っているとるのを見るとあとはいっせいに、かれらは騒ぐのをやめて散ってい ころだったが、その腕たるや並みはずれて長く、隆々たる筋肉が盛った。 りあがっていた。胸や胴は樽のようだったし、頸はほとんど肩のな だが、マルに土くれと脅迫の両方を投けつけた人物だけはそうで かに埋まり、獅子鼻の顔には怒りが躍っていた。 はなかった。高い知性を持っているとは言えないにしても、この男 「そこをどけ ! 」その男は喚いた。もっともさいぜんの怒声にくらは明らかに根っからの白痴ではなかった。マルがこの巨砲の近辺に べると、わずかに警戒の調子が強くなっていたかもしれない。 「どはなんの用もない人間だということを、かれはよく承知しており、 け ! 出ていけ ! さわるな ! 殺すそ ! のど、かっきるそ ! 」あくまでもかれをそこから追いはらう気でいるのだった。仲間の離 これを聞くと、一味のほかのものたちは、親分の言動に勇気を得反にもくじけず、かれは解体しかかった短ズボンをひつばりあげな てか、男も女もいっせいにこぶしを振りながら、かれのうしろに詰がら、一歩マルに詰めよって脅すように両手をふりあげた。 めかけてきはじめた。 「どけと言ったら」かれは怒号した。「どかねえと、ぶん投げて、 「のど、かっきるそ ! 出てけ ! さわるな ! どんがらがんー ぶち殺すそ ! 」 どんがらがん ! 」 「そう言うおまえさんはだれだね ? 」マルはたずねた。 たちまち暴徒どもは、この感傷的言辞にすっかり感激して、かれ男の面上に驚きの色がひろがった。明らかにかれはいいままでこ らにとってもっとも馴染みぶかい単語をがなりたてだした。「どんのような質問をされたことがないばかりでなく、自分の身許に疑念 がらがん ! どんがらがん ! どんがらがーん ! どんがらがーんを持たれたことよりも、それが広く世間に知られていなかったこと にショックを受けて、がつくりしてしまっているのだった。 マリアンは平然と突ったって、かれらが喚くのにまかせていた ややあって、ようやくかれは気をとりなおして言った。「おれが が、そのうちかれらは、しだいにこれに興味をなくしはじめたようだれかって ? キャピン・モグにきまってるじゃねえか ! それが だった。いまやかれは、かれらにとって見慣れた物体となっていたおれだよ」そしてさらにこれを強調するために、声を高めて叫ん し、それにかれが動きも喋りもしないうえ、それ以上かれらの関心だ。「モグ ! モグ ! キャビン・モグ ! 《どんがらがん》と大 を引くようなこともしないので、だんだんかれらはかれに飽きて砲組みんなのキャ。ヒンさ ! それがおれだー き、やがて、ひとりまたひとり、疑問というにはあまりに漠然とし マリアンは、極度の驚きと、感服と、卑下と、なるほどそうだっ ていすぎる、いわば低級な困惑ともいうべき感情が、かれらを圧倒たのかという表情とを、ごちゃまぜにして顔に浮かべることをおの しはじめた。もはや自分たちがなぜここにいるのか、なぜこんなにれに許した。「おお、あんたがキャプテン・モグか ! 」 2

6. SFマガジン 1972年11月号

白い歯の見える微笑が、マリアンの淡褐色のひげのあいだからこり、もう一度引き返してそれをたずねることを考慮したが、けつき ・ほれた。「ようし、よし。のつけに爺さんが貧乏だと予防線を張っよくやめることにした。「あんな変屈な老いぼれが、なににしろ呪 0 2 てたわりには悪くないな。どころか、この《地区》の豊かさがうら法のたぐいを知ってるはずがあるものか」そうかれは自分に言い聞 やましくなるほどだ。そこでーーーわざわざここまでついてもどってかせた。「おれの知りたいこの重大問題の答は言うに及ばずだ。だ きてやったことの礼としてーーその前に、あんたのかわりに丘のてがそれにしても、あいつの言ったあのことたけは心に留めておかに っぺんまでの・ほって、ようすを探ってやったことはいわずもがなだやならんな、《往古の沼地》の注排水を行なっているという、例の さあ、はやくいま言ったものを、この袋に詰めこんでもらおう夢みたいな装置のことはーーひょっとするとそいつは、あの爺さん か。ぐずぐずするな ! ますその燻製とやらをここに詰めこめるだの夢物語だけじゃないかもしれんから ( それにしてもあの爺いめ、 け詰めて、ついでに、こことここと隙間に、乾燥果実を押しこんでまんまとおれからうさぎを半分まきあげやがった。いまいましい野 もらおう。いや、いや、なにも言うな。おれはことのほか遠慮ぶか郎だ ! ) ー・ーーあるいはそういう呪法が存在するってことは、もっと ほかのなにかがあるってことかもしれん。はつ、はつ、いまに見て い男だからね、これ以上ここにいてくれとおれに泣きつくと、爺さ んの負担がますます重くなる、それじや気の毒だと思ってるんだ。ろ」 巨大な砲車が通ったあと、道路は深くえぐれてでこ・ほこになって そうそう、黒ビールを一壜くれるというんなら、喜んでちょうだい するよ。蜂蜜は、つぎの機会まで遠慮しとくとしようか。ようし。 いた。そのわだちのなかの汚物の塊りのまんなかに、無分別にも車 あんたに幸運が恵まれますように、ローナンズ爺さん。もうひと輪と道路のあいだに頸をさしいれた男がひとり横たわり、そばでひ とりの子供が、マリアンに向かってびいびい、きいきい泣き声をあ っ取引をしておこう。おれがこここ、 冫したこと、ここを通りかかった ことは、《矮人》どもには話すには及ばんぜ。かわりにおれも黙っげていた。けれども子供は立ちあがって歩こうとはせず、男と子供 は、二人そろってマリアンの見まもる前でこときれた。ちょうどか ててやろう、爺さんがあのおそろしい《がにまた》という名前を、 れらのロに噴きだしたあぶくのようにはかなくーーー金髪はあまりに くりかえし口に出したことはなーーやつらに責められんかぎりは、 の話たが。さて、それじゃあ、ーーおてんとさまがあんたの上に照り色が薄くて、月人の髪のようにほとんど白に近く見えるーーーおなじ ますように、そして、《山鉾どんがらがん》の影が避けられますよく色の薄い、だがこれは淡い、淡い水色の小さな、小さな目ーーー一 種のやぶにらみに似たうつろな表情ーーーそしてゆるんだ愚鈍そうな うに ! 」 ロもと。白痴の父と白痴の子、というのがマリアンの印象だった。 言いすてるなり、からからと笑って、かれは老人を最初発見した ときの位置に残して歩み去った。うつかりして、あの質問をしてこそして、なぜこの父子が大砲組に加わったのかとかれは考え、そし なかったことに気がついたのは、また丘のてつべんまで登りきってて歩きつづけた。 からだった。かれはしかめつつらをして、長い口髭をひねりひね暖かい日で、ビール壜はたちまち空になった。最後にそれを口に

7. SFマガジン 1972年11月号

きみは首をふる。 れないうちに」 ランサムは呆心したように彼女のあとに続き、二十あまりの女の人、「プラック先生はおかあさんを助けようとしていただけ 杭に刺しつらぬかれた大柄な獣人の死体をまたぎこえた。 なのよ、タックマン。あなたにはわからないでしようけれど、おか あさんはね、何種類ものクスリをまぜて、いっぺんに注射したの。 それはとてもいけないことなのよ」 きみはページの隅を折り、本をおく。がらんとした寒い待合室。 かけ足で通りすぎる人びとが、ときどききみにほほえみかけるけれ 二人は去り、きみは本をとりあげて、ペ 1 ジをばらばらとめく ど、きみはさみしくてたまらない。長い時間がたってから、灰色のる。けれども読みはしない。きみの横から、デス博士が口を出す、 髪の大男と青い制服を着た女の人が、きみの話を聞きにくる。 「どうしたんだ、タッキー ? 」彼の服は焦げくさいにおいがし、ひ 、こよ血がひとすじ流れている。だが彼は微笑し、タ・ハコに火を その女の人の声はやさしいけれど、学校の先生みたいでどこか近たし冫を つける。 よりがたい。「眠いでしようね、タックマン。でもおやすみする前 に、ちょっとあなたとお話していいかしら ? 」 きみは本をつきつける。「この本、もうあと読みたくないよ。博 「うん」 士はきっと最後に死んでしまうんだもん」 「わたしを失いたくないか ? 泣かせるね」 灰色の髪の男がいう、「きみのおかあさんに誰がクスリをあけた 「最後死ぬんでしよう、ねえ ? あなたは火のなかで焼け死んで、 のか、きみは知らないか ? 」 ランサム船長はタラーを残して行ってしまうんだ」 「知らない。・フラック先生がママに何かしていたよ」 デス博士は微笑する。「だけど、また本を最初から読みはじめれ ク 彼は片手をふる。「いや、それじゃないんだ。知ってるかい ば、みんな帰ってくるんだよ。ゴロも、獣人も」 スリだよ。きみのおかあさんはたくさんクスリを使ってた。誰があ 「ほんと ? 」 げたんだろう ? ジェースンかい ? 」 「知らないよ」 「ほんとうだとも」彼は立ちあがり、きみの髪をもみくしやにす 女の人がいう、「おかあさんはだいじようぶだそうだわ、タックる。「きみだってそうなんだ、タッキー。まだ小さいから理解でき マン、でも治るまでちょっとかかりそうねーーーわかる ? これからないかもしれないが、きみだって同じなんだよ」 しばらくのあいだ、あなたはたくさんの子供たちといっしょに大き な家に住むのよ」 「うん」 大男、「アンフ = タミン覚醒剤 ) だ。何か思いださないかね ? そ んな言葉を聞いたことがないか ? 」 7 9

8. SFマガジン 1972年11月号

S F にとり組む仏大物作家 205 CN ) いうことは他作家への影響が大きいだろう。 が , メルルのような作家が SF を書いていくと ・ぶルジャベルひとりといっても過言ではない フランスには純粋な意味での SF 作家はルネ 残酷なストーリイ。 のかという , むしろ人口の問題に重きをおいた この狭い地球上で人間がどのように生きていく たらす脅威よりも , 今後人類がふえつづけると 長篇はこれらとはおもむきがちがい , 原爆がも がよく知られているが , このメルルの一千枚の フ』 , フランスのパルジャベルの『荒廃』など やユージン・ーティックの『フェイル・セイ 破減物では , ネヴィル・シュートの『渚にて』 いをはじめるのである。 ヴィルで , 生き残りたちが原始時代のような戦 も攻めてくる。こうしてフランスの片隅のマル を手に入れようと襲いかかってくる。兵隊たち や , 同じように助かった人間たちが城の貯蔵物 しかし , エマニエルとその仲間が地上に出る 人間は助かる。 びすべてが無に帰してしまう。だが , 地下室の ルの周囲は一瞬のうちに , 森が燃え , 村々が滅 原爆戦争がおこり , 世界は破減する。マルヴィ 中になってしている。この平穏の日に , 不意に 萄酒を飲みながら , 村会議員選挙のはなしを夢 室でエマニエルもその幼年時代の仲間たちが葡 その復活祭の日に , マルヴィルの古城の地下 だと思う。 こ 2 , 30 年でほろびるというのがメルルの考え 来で , 「イルカの日」も 1973 だった。人類はこ 祭の日にはじめる。メルルの SF はすべて近未 Malevi1 といい , 破減テーマで 1977 年の復活 メルルのこんどの新作 S F は「マルヴィル」 「卒業』のマイク・ニコルスが映画化中。 おうとするサスペンスフルなはなしで , 現在 イルカに英語を覚えさせて , これをスパイに使 「イルカの日」は動物のなかでいちばん利巧な SF を書いている。 有名であるが , 1967 年に「イルカの日」という の週末』や『死はわが職業』などが翻訳されて ロペール・メルルはわが国では『ヅイコート れの創作活動はこのことばを裏付ける。 ール・メルルはしている。事実 , ここ数年のか 明日のロマンである」という意味の発言をロペ のが S F である。 S F は“ヌーポー・ロマン " 「行き詰ったロマンに新しい息吹きをあたえる 世 S 情 陥ち かれ はた の必 。た 、を 保を を然 しろ 望的極徴 、答 に度 し公 にす れをよ か悲 あ許なみ だれ惨道 ら個 はな び人 のを用法 い本 い密 れあ をあ すげ る地 に知 務カ しが で虐 問刻いな が足 しそ せれ でん っ散 恵な ら混人れ て人使先 にた聞な いな い理 した と陽 懸こ いが ど部 どた 頭カ い上 にん 家き がれは の照 のわ 味も 食軒 料た べお 徴け のか利て る法 憲炊 にな がや で服 思か にそ しだ は推 う そ で は き み れ で お 別 る よ 幸 き に ま ま い 案 に た る 答 あ り う る か も し な い と う り れす護 る と は 、な し と 申 し 。け 運満げ みねナ ば よ し と は な っ た け ど も 存 外 そ か に そ 自 の 下 に る か 、ぎ か な る だ域わ も ら り れん乱王を と き ふ と か いかれがん の 、れ ま し れなな用大 意 で 、でて も く と わ に さ な い 、不人 意 だ カ : と し て は 、矮そ え ら の あ う 、き し、 が ら っ の 民 に 。商問 と し て の 、要ナ し、 ま し 、て し、 の と と 内 り容話 に し、 差 つかれ っ ら と と で き の 題 に っ し、 て え へ お ほ 残 念 ナこ う の も ま 、男 の し た ( と 冫よ 力、 たす不 自 。分冫 で ね 。太 あ な た の に り ま よ う に マ ノレ は や う っ る む わ け 以 で き み き み の 質 の 答 な て い る た れ な 結 上そ果使呪 生 む と は 、れな て る の だ か ら び て の く な く と の と ら が を イ吏ー 、わ ず 即 よ そ へ 退 し く る ん カ : ら が ん の 発 を ぬ カ ; し て で 食 ら料 発力 る 具 に し て る と に ろ れ 、を っ よ 、ち こ歩れ み 、つ でた軒 そ の き とき 象て 対れ をの流 と拾が揚 収い気 た態匂意 れ事の て ぱ 0 、 う ら こ の の 不必 、曷三し ち あ る き れ を 行 く 々 か は の ひ と 派 手 、住 宅 向 て 々 と よ ち け し て し し、 だ う ま う う だ け に と ど め す よ う に F 考分そ案 えのれ が探をて 報浮索考み かな慮た

9. SFマガジン 1972年11月号

シがんいぎの世よ 。りたつつ 代はも まっている : : : 例えば易経だ : : : それは・ほくの人生と非常がそこ , 読たす髪 , し 論 , たうロディ十実そ眸す降しだと まを日一ひうンはりに長たで に深くからみ合っており、・ほく自身が書いた話のように感議もしょはダウ三 , がす四れ座来。ハ よイなに知説のま じさせ、しばしば現われるちょっとした皮肉は自分自身にのク生しの一 てッ誕でたロルとすでがさのく一りしラス彼に小こはな ロてといク一う歳のか長じペおでンクらた当る , のは かかわりあった特別な喜びとなるのだ。 い本あてもで つもしこだ , ポままた驚集同なとるイツ における最上の伝統 ( ( インライン・スタージョ にとのたぎたしれ冠しら編は的るえ ( ドカて , てしる , よソしくいそいか ィップ・・ディック ) 係児然いべ 0 てさ弱刊、はて命か、ー ン、フランク・ハ 関。端当てうあい像の創うにい革わと人一行な書。て何 のす異もしいも書想れをい後つにもた本オ、発はがんめ。 において、ポールの小説は、その他のどのようなものに加 クまのれ稿もでうがまイと年に常らいも的 / ででとせ求る ッ えるのであれ、いろいろな科学的、哲学的、そして人間の 楽そ寄と長こ者生デだ 2 司 ドョかてに較まどこまにす , 牙り集。集ンダきのの「価し外比 . ンないれ通 方向における本格的な洞察の倉庫であり、それらがこの話ロて音 とれとば特し編す編ト一とそその評映意うてジ野たし共 , 史う反 , いうン分じもがに 2 の組立ての中にうまく埋めこまれているのた。こういうさ学れ月はでで腕スロの な文え今の者氏敏ボク歳しが女いをでとよアな感か一者 とたルと代ろクのフ殊 , の。ヒ若 r-k 小説の特徴はぼくにとって非常に重要なものだ : : : それ , にれ考 , 聞刊スの昨 ツのか 時こッみ , 特と は・ほくの心を訓練し、ぼくを新しい方向において考えさせ近発ぞをて新創ムば 4 もがっしリ アイデア 最活れとさクのア半四そ彼もまメたのとマ好ではこなヒ界う てくれ ( そしてひとたび新しい考えが脳に入ると、それは アート・フォーム 二度と真実な意味において失われてしまうことはなく、常に必要と文化ーーヨ消費物資と大衆的芸術様式ーーは大量に存在し、アメリカ する瞬間に、すばらしい霊感がとつ。せん困惑させられる意識のようの芸術様式と生きかたに対する日本文化のそれほど明らかではない が非常に意味のある継続的な衝撃は存在するものの、会話と称 に現われようとするものだ ) 、・ほくのゆっくりした自己学習の。フロ よ、こ埜寸しいということだ。・ほくら セスを鼓舞し、こうして窮極的にはぼくの人生における方向に影響し得るほどのものは少ないか、オし冫 インスピレーション ・ハック・アンド・フォーズギブ・アンド・ティク 感、洞はもっと多くの行き来、与え取ることを必要としている。現 を与えるものなのだ。これはこそ人生における霊 サイト 察、指標を見つけるべき唯一の場所であるということではなく在の状況は、たえず両方からサー・フをくりかえされているが、一度 : ・ほくのそういったものを見つける主要な場所のひとつが偶然そも打ち返されたことのないテ = スみたいなものだ。 ・ほくは褒め讃えてもらえるようにこういった考えを投げ出してい うなっていることだ ( そしてこれは常に、・ほくがそれを求めている スタッフ まくにそれらの考えを投げ返してくれ からではない。・ほくはこういった代物を面白いからこそ読んでいるるのではなく、あなたがたがに るようにという期待のもとに投げ出しているのだ。は・ほくの理 だけだ ) 。 アイデア 最初このエッセーを書いたとき、・ほくはつぎのような言葉で始め解する言語、考えとか感情が移され受け取り得る形式だ。だから・ほ た。「ぼくがこのエッセーを書いているのは、日本人作家がもっとくは日本のを読みたい。なぜなら、ぼくが、世界に対する自分 ホワイト を書いてくれるように元気づけるためだ」と。実のところ・ほくの豊かな白色アメリカ人的な見地はそれ自体不正確なものであり、 インターチェンジ アザ・アイズ は、日本とアメリカのあいだにおける文化と人間の本当の交流他国人の目をとおして見る経験によって広げなければいけないとわ ワン・ウェイ・ まくにこの経験を与えてくれ が欠けていることに失望している。どちらの方向にも一方通行的なかっているからだ。もしあなたがたがに プレゼント・ディ ないなら、われわれはアメリカに現在の盲目さのままを続けさせる 流れは大量にあるが、つまり、日本における今日の生活に西欧 9 9

10. SFマガジン 1972年11月号

調に進みすぎていた。以前のうさん臭さが復活したのである。つぎるでつやのない軽い軽石でできているようだった。しかし、アンテ りよう つぎに現われる遺物はこれ以上もなく完全であり、石化はこれ以上・ロスは戻ってきて、ェシルがアナグマを料るのを手伝った。 「テレンス、もしきようの最初の石で背すじが寒くなったんなら、 もなく順序立っていた。 ート・ダー第二の石では、当然、髪の毛が逆立っ・ヘきだよ」ハワ 1 ド・スタイ ート」ちょうど日の入りに、マグダリーンがロ ' ハ 岸のすンリーサーがしった ビーに呼びかけた。「あの川を四百ャードほどくだった、川 「逆立つ、逆立つ。煙突石の層にあるにしてはどの石も新しすぎる ぐ上にある牧草地、その古い柵を越えたところにーーー」 が、あの最後のやつは侮辱としか言いようがない。あの石はまだ二 「ーーアナグマの穴があるというんだろう、マグダリーン ? とう とう、ばくにもお鉢が回ってきたか。遠くの見えないものが見える百年と経っていないのに、その上には一千年もの地層が重なってい とういう時間の堆積になってるんだろう ? 」 なんて。もし、カービン銃をさげて、あそこまで静かに近寄ればる。あそこでは、・ ( こっちが風下ときているおかげで ) 、ちょうど・ほくが着くころに彼らは匂いのきついアナグマの肉を食べ、品質劣悪なウイスキー アナグマが中から首を出し、そいつの目のあいだをぶちぬける。やを飲み ( 施主のアンテロスは、その品質の劣悪さに気づいていなか ったが ) 、そして麝香の匂いは彼らのまわりにも、彼らの内部にも つは五十ポンドの大物だ」 ート。とうとうあなただけまとわりついた。焚火は時おり怒ったようにばちばちと爆ぜ、その 「三十ポンドよ。さあ行ってきて、ロ・ハ たびに炎が高く燃えあがった。ばっと跳ねあがった火明りで、テレ は、ちよびり理解を見せてくれたのね」 ードックは、あの黒い帽子に似た奇妙な岩が、ふたたび煙 「しかし、マグダリーン、アナグマの肉はすごく匂うよ。とても食ンス・・ ( 突のてつべんに乗っかっているのを見た。昼間には、たしかにそれ えたもんじゃない」 「余命いくばくもない女に、最後の食事ぐらい好きなものを食べさを見たおぼえがある。だが、彼が日蔭にすわって休憩したときに は、もうそれは見えなかったし、それを確かめようと煙突そのもの せてはくれないの ? さあ、行ってきてよ、ロ・、 ートは行った ~ この距離では、カービンの銃声もほとんど聞によじ登ったときには、絶対にそんなものはなかったのだ。 ワード」 ートが死んだアナグマをかついで「まず第二章、それから第三章と聞かせてちょうだい、ハ きとれなかった。まもなく、ロ・ ェシルがいった。「そのほうが順序がいいわ」 戻ってきた。 「料理してちょうだい、ェシル」マグダリーンは命じた。 「そうしよう。さて、第二章 ( きよう見つかった中で最初の、いち ばん低いところにあった、おそらくいちばん古いと思われる岩 ) 「はいはい、わかりました。それで、もし料理法を知らなければ、 , は、 ' これまでそれが書かれたのをだれも見たことのない言語で書か アンテロスが教えてくれるのね」だが、アンテロスはそこにいなか ハートは、日が暮れた円塚の上で背をまるめている彼を見れている。、そのくせ、それを読むのはさほどむずかしくない。テレ ンスにさえ見当がついて、気味悪がったぐらいだ。それは、アナダ 出した。この奇妙な男は、声もなくすすり泣いており、その顔はま 2 3