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検索対象: SFマガジン 1972年12月号
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1. SFマガジン 1972年12月号

として顔を売り、連戦連勝して年期の入った博奕うちたちを驚かせ 令子は今にも走り出しそうな様子で言う。 「まあ待ちなさい。近くは近くでもかなり厄介なところだ。おいそていたのだ。 昭和三十年近くなって、米兵や三国人たちの間で伝説的に語りつ れと連れ帰るわけには行かないんだ」 がれていた。その奇蹟的な日本人賭博師の存在が、のある部 「焦らさないでよ、兄さん」 門の関心をひいた。 「総理大臣の家にかくまわれているらしい」 それは強力なを持っ超能力者ではないだろうか。伏せられ 「何ですって : : : 」 たカードを読み、ダイスやルーレットの玉を、手もふれずに自在に 二人の女が一緒に叫んだ。 「情報の出どころはたしかなところだ。まず間違いないだろう」 操ることのできる念力を持っていれば、どんなゲームも思いのまま 「どうしてそんな : : : 」 に勝ち抜くことができる。オプライエンも、その頃本国で透視やテ 「僕はいっか令子さんに言ったろう。トミー の博奕がいけなかったレキネシスの実験を、飽きる程やらされたという。 やがてそのような強力なエス。ハーは、現在のところ常人には存在 「ええ覚えてるわ」 しえず、ただ工の血を受けた者の中になら、僅かにその可能性があ 「やはりそれが原因だった」 るということが証明された。しかも、日本のヒは、欧米のエよりは 清田はそう答えて唇を噛んだ。 るかに濃い血をうけついでおり、理論上は、適当な念力増幅装置の たすけをかりれば、或る物理的な場から場へ、念カ移動することも 可能たと考えられはじめた。 九 オプライエンの見た強烈な白光の爆発現象が再び問題になり、そ その頃、東京は米軍人及びその関係者や、フィリビン、韓国、台れは何者かが次元移動をした際の衝撃波によるのではないかと推定 、わゆる第三国人たちの天下だった。アル・カボネの流れされるに至った。 湾など、、 を汲む元シカゴ、ギャングの誰それが東京を繩張りの内に加えたと米国防省は急拠虎の子のエ体質者の中からオプライエンを選んで か、今ではフィクションとしか思えないような事態が、実際に起っ日本に派遣した。オプライエンは局員として東京の山王ホテ ていた。銀座通りや今の晴海通りなどが、兵隊たちによってポーカルに入り、日本に存在する可能性が強い強力なエ体質の人物を探し ・ストリートとかハニー・アヴェニューとかいうアメリカ式の求めることになった。 仇名で呼ばれ、それが結局は定着してしまうのではないかと思える 自己の特異性をよく理解し自覚すれば、エは同じ体質の者を簡単 程だった。 に見わけることができるのだという。多分それは一種の精神感応が 7 ともなうからだろう。 新橋トミーは、そうした中で生活していた。天才的ギャン・フラー

2. SFマガジン 1972年12月号

中学の頃だったと思うンですけど「セクサロイに、今、一番の内的クラ グもめくういのス時館鼓業房子高絡 ド」が大好きで特集なんかも眞ったものです。受イマックス目イナースペ , たて舞歌ル 8 会産工美 7 連 夜のしのをドス スプ恵一御 ースにおける思考実験の 験をひかえた今でも、ゼプラ・ハンツや九州 いのちト雪歌ンリ 時産、カイ橋 7 上 ロポットの「ごっつあん」なんていう台詞もはっ可能性が存在すると思 白そたン粉美ヤク 3 並 一テ高一の 3 封 。私ゼい讃キの後杉綾オイ きり憶えています。そういえば、セクサロイドのう。それに、文学的な可ス フェ 園同 マ夜すはレ白 , 人午 シマものメガネもゼプラ。ハンツの愛用者な能性においても、・現 御手 スのまれプ。 , ら大 日 プれそがんでが ク市切 んだな、小生もこれからゼ・フラ。ハンツを買いに行代感覚とリアリティが、 イわ , スせ上なスび 原円 にー くことにします。邪神クトウルーとゼプラバンツはたして、内的宇宙の探ク ・なら一ま路げマっ 月 ア プこたロれいあスよ 相で とに栄光あれ " " 求に、必要不可欠のもの T2 イおっクした見リち ( 新潟県新発田市中央町三の四の三 か ? ( すべての分 , が降タも冷をク カオ 2 子 定 日スがンかは空で 予 ニは美 斎藤浩一郎 ) 野を含む ) が、一番の可 ( オ 四マ雪サのち夜 or.n 中 細恵 能性をもつ、文学形式でい 月スも , たたいすいの時場催援フン詳橋さ 下 あると評者が認めるならー リしにれ私暗ま白灯日会主後コ 「総括 ! 新しい波 ! 」に関する ば「な・せ、その現代感覚ー 反イデアの論理構成。 マガジン九月号、エッセイ風論評、「総括、とリアリティに固執することによって、内的宇宙 広告 新しい波 ! 」の提起した、「新しい波」の概念をの広がりⅱ個人のオリジナルなクライマックスの お願 読んで感じたことは、 山・スベキュレイテイプ・多種多様な形態を否定するのか ? そして、・ フィクションに関する、評者の、著しい偏向であ反体制的でなくてはならないのか ? ( 可能性の 昨年度、大阪にて開催しました第十回日本大 った。まず、第一にあげることのできる、 z ・思考実験がそれ自体、未来の必要性を感じなくな 会 (Q<—OOZ ・ 2 ) は、おかげさまで無 以前の ( いわゆる ) に関して、本来、ったなら、はたして、その体制的問題が必要だろ 事終了し、公式レポートも、本年七月をもっ の根本たる思考実験に対しての必要上のアプロうか ? ) こんな疑問を感じた。ぼくは、現在の状 て、参加者への発送をほば完了しましたが、 ーチ、それが生みだしたと見るべき、 Z ・の姿態で判明しうると仮定したなら、全面的にこれら その内三名分が住所不明で返送され、また、 を、特に、 ( これは、・ほくが、・ハラ 1 ドを尊敬しての Z ・を認めうると思うが、同時に、それは、 当日の参加申込者への発送先が不明で、大会 いるという事も考慮に入れても ) ・・・ ( ラー内的クライツクスのイナースペ 1 スに対する理委員会の手許に残っています。左記の方々は ド等、英国の作家達による、全く革新的運動の結念的な融合であると思う。 至急当方までご連絡下さいます様お願いしま 果、 ( つまり、本来のの思考的要素を、理念 ( 千葉県船橋市三咲町四ー二の一三松田和博 ) す。ご連絡有り次第、折返し公式レポートを 的存在として、取り上げたという事 ) 生まれでた 発送致します。 現実であるといっているかのようだ。ばくは、 cn 十月、十一月の両号に掲載された「ヒューゴー の革新の必要性は、内在的なものだと思う。っ・ネビュラ賞特集」をふり返ってみて矢張、最も 鎌田牧子神崎龍一一宮坂敏章佐々木広 まり、それ自体が含む、自己矛盾の結果だという気に入ったのはライ・ハーの「凶運の都ランクマー 野村好正羽塚陽子速水賢一山田英志 ことだと思う。スベキュレイションは、評者の言ル」だった。十月号を見てライ・ハーとあったから 山崎裕司米田守宏森北夫手島 う様に、確かに、オリジナルとしてしか存在しえ「フアファード & グレイマウザー」かなと思って ( 順不同・敬称略 ) 田中紀美子 ないが、それ自体、オリジナルとして存在する価いたが矢張そうだったのでヤッタヤッタという感 値は、内的なクライマックスであると思う。そのじだ。しかし、これはあくまでも僕の主観的判断 Q+*OOZ ・ 2 大会委員会 点でアメリカ ( 世界で最も病める国であると思うであって ( 僕のヒロイック・ファンタジイ狂いを 〒京都市伏見区石田大山町五ー一「 が ) 、それ自体の含んでいる自己矛盾の、内的クのぞいてみて ) 再度考えてみるとき・ラフ 四ー一一 0 一高橋正則方 ライマックスに、ばくは一番期待したい。そこアティが光っていると思う。彼の豊富な見識とフ いい日いいい日いいⅡ日日日い日ⅱい日日いい日日いい日い日

3. SFマガジン 1972年12月号

なほどの度の大きさや、軌道要素の特興さ、斜角の大き した天空からはなかなか脱出できず、したが さ ) をすべて計算しても、まだ海王星のふるまいの気まぐれさ って、ここ当分は発見の見込みがないという を充分には説明できないことがわかり、このことから、第川番 わけである。 惑星の存在がいわれはじめたのは、すでにかなり以前のことだ では、そんな第川番惑星の位置をどうして った。しかし、海王星の公転周期は一六五年、冥王星のそれは き見 推定することができたのか。 大発 二四八年で、そのごく僅かな摂動を詳細にしらべてみるために ここに登場するのが、数ある彗星中でもも は、観測期間が短かすぎ、データが足りなすぎる。 っともポビュラーで、にもしばしば登場 よ惑 星番 ー彗星は、これにかわるものとして登場したのだ。ハリ しーーしかも、あと十年あまりのちには、危 〒ー彗星の観測はすでに二世紀にわた 0 てつづけられていたし、 うく地球と衝突しそうになった一九一〇年の 星公転周期は七一 ~ 二年、しかも軌道が細長いために惑星よりは 大接近以来久々の接近をしてくるハリー彗星 惑 るかに大きな摂動を受けるーー・こうして、この摂動の原因を未 ー彗星は頭部の直径六万五 なのである。ハリ の 知の惑星に求め、数値をコンビューターに入れてみたところ、 大一 〇〇〇キロ、近日点に近づいたときの最長時 最 観測値とびたり一致する結果が得られた、というわけである。 の尾の長さ一億キロという宇宙の大モンスタ 系 その後、プラディ教授たちは、他の海王星族の彗星たち ーで海王星族に属する。つまり、この彗星の 陽一 太 = ォル・ハース彗星、ポン・・フルックス彗星の軌道変化をコンビュ 遠日点が海王星の軌道の近くにある彗星群の ーターによって計算し、おなじ結果を得たというのだ。 メン・、 / ーだが、・フラディ教授らの研究グルー かくてついに、にしか実在しなかった第番惑星は認知 プは、このハリー彗星の公転周期がしばしば されようとしているわけだが : : : そこで思いだすのは、アイザ 計算とかなり狂う点に着目し、何かの未知な ック・アシモフが、すでに十年前その『空想天文学入門』の〈冥王星のかな 要素があるにちがいない、と考えた。そして、その未知な要素として、第川 た〉の中でこれを予測し、名前を提案していることだ。アシモフはこの惑星 番惑星の存在が浮かび上ってきたのである。 に、地獄の住人、死者の魂の運搬係カロンの名を、そしてその衛星には地獄 この経緯は、第 7 惑星天王星が発見されて以来の海王星、冥王星の発見の の番犬ケルべロスの名をつけよう、といっている。たしかに、はるかな太陽 経緯によく似ている。天王星の連行が計算どおりにいかず、一部ではニ、ー トンの万有引力の法則を疑うものまででてきたが、結局、天王星の軌道運動系外空間からやってきた宇宙船が、まず地獄の番人力ロンと番犬ケルペロス ー ( 冥王星 ) と王妃プロセル。ヒナ ( こ に出迎えられ、ついで地獄の王。フルート を狂わしているのは、さらに遠くにある第 8 惑星のためだろう、ということ になり、その研究から海王星が発見された。そして、この海王星もまたよろれまた未発見の冥王星の衛星としてアシモフが提案しているもの ) の玉座に 近づくというのは、なかなか雄大な情況ではある。 めくことがわかり、その研究から冥王星が発見されたのだった。 ところがその後の観測によって、冥王星の存在やその特異な性質 ( 不自然 SCIENCE JOURNAL 5

4. SFマガジン 1972年12月号

の長篇が、いよいよこの秋から再公開されるけプリンの、最も的、というよりそのも 年前に発表している。これがチェコやカナダに ののような CModern Times 』 ( モダン・タイ 輸入されてあのモントリオール式マルチスクリ ど、再公開といってもこの十年間、一日本には、 ムズ ) がトツ・フ・ハッターにえらばれたが、一九 ーンを生んだのであります。この人、こんな作愚作といわれる最後の作品の「ニューヨークの 三六年、今から三十六年前に作られたこのトー 品を五十本以上作っているけど、どれも的王様」以外は、まったく存在しなかったのだか キー初期の作品を現在見ても、ぜんぜん古さを ら、若いファンの大半は見ていないとおも でたいへんナウなムードなのです。 感じないばかりか、カラーワイドで作られる。 うのです。 鋭い直感力で歴史を先見していた天才チャッ今の映画よりもはるかにを感じるので テレビには絶対に放出されないチャップリン : 顔中メッタメタ。でも吸い取紙式のナフキ 正常なあいだはいいが、すぐに狂って 「モダン・タイムズ」の作業させなが 止らなくなって : ・ ンだけは最後までもっともらしく動いている ら工員に食事をとらせる自動食事機 第 : 第導な第マる第を彎 、第第ツをこ

5. SFマガジン 1972年12月号

この一種の循環の観念は、大地の上で生きるものはすべてそうだ が、天然自然の諸現象にもあてはまったのである。 雨 : : : 。大地より陽炎となって昇っていた水が、ふたたび地上へ この、古生代の終期ごろより、中世代にわたって、長い地史学的もどってくる。帰郷するのである。太陽もそうだった。大地のはる な時間の間、その存在を推定されている南方大陸の名は、ゴンドワか東より昇って、大地の果に帰るのである。このように、彼らの経 ナと呼ばれている。むろん、ゴルド ( たちこのいまは姿なき蒼き種験するすべての現象で、この循環の観念で説明できないものはなか っこ 0 族が、そのとき、ここを何と呼んでいたかは不明である。名前など たたあらゆる生成の母体であり、・かっ生成されたものが立ちもど つけられていなかったのかもしれない。この者たちにとって、この っていく場所である、大地のみは別格だった。大地は、永遠にあり 大いなる陸の世界は、それ自体、ひとつの世界であったからだ。よ もや荒涼たる大地のつづくその果に、この陸塊をとりかこむ青い中つづけるものであり、全ての現象の原因となる普遍的な存在だっ た。そして、彼らの思想によれば、この大地は、あるとき、天と地 生代の海原があろうなどとは、想像だにしなかったにちがいない。 この超古代的種族は、自然というものが神と名づけられる存在を超の混沌とした状態より分離したのだ。それゆえ、天と地は、なお無 えて古くあるように古く、その古き悠久の時間の中で全き自然と合限の大地の彼方、地平線上においてつながっているのである。 また、それがな・せ分離したかといえば、天は軽く、地は重かった 体しつつ生きていたと思われる。 はや、種族それ自体の記憶さえ、乾ききった大地の長大な歴史からである。従って、重きものは大地に所属し、軽きものは天に所 と共に忘れさられていた。あたかも、彼らの存在そのものは自然物属する。たとえば風だ。風は目にはみえず、軽いものだ。水。水は と見分け難き逼塞ぶりであり、幾十万年、幾百万年、否ひょっとす大地に所属するとき重いが、暖められるとき軽くなる二面的性格を もった存在である。それは、火の軽い性格を与えられて、変化する ると幾億年かもしれないのた。 その長くゆるやかにつづく時間の経過のうちに、大自然とこの種と考えられた。 彼らはこうして、あらゆる現象、事物に対して、彼らなりの合理 族との融和がおこなわれたのであろうか。それゆえにか、いまは、 彼らはこの大いなる大地より、諸々の地上の生き物共が、そこより的な解釈をあたえていた。その解釈によって彼らは納得させられ、 また、確固たる世界観を抱いていたのだ。 生まれきたったように、産まれたのだ、と信じきっていた。 たた、ひとつだけ説明しきれないものがあった。いうまでもな たとえば、砂とかげが、赤ちやけた台地の砂漠の中の卵から生ま れてくるのと同しだった。そのように、自分たちの祖先もまた、土く、対岸の鏡の世界である。″鏡は事実、不可思議な現象を、と の中より這いたしてきたのだ、と思いこんでいた。そして、死ねばきおり示すのであった。 その第一が、声だった。声はなぜもどって来ないのであろうか。 ふたたび、大地へと還っていく。生まれた場所へもどりゆくのだ。 2 205

6. SFマガジン 1972年12月号

く産登山秘録〉完結嵩 産霊山秘録 半村良画 = 武部本一郎 生きとし生けるものの願いをかなえる産霊山 その存在が国際的に明らかになるにつれ ヒは世界政治の暗黒の渦中へまき込まれていく ! “卩第を・ - こっ・ - をを第 第ミド第

7. SFマガジン 1972年12月号

女の赤ん坊の着物ばっかし やたらに縫ってよ。もし 男だったら、どうする ? 赤いものばっかし男の子に 着せるわけにやいかねえせ」 「ご心配なく。男の子は 生まれません」 おまきは絶対の確信に みちてい、猪之吉の目を 白黒させた。 「だって、おめえ : ・・ : 生れ る赤ん坊が男か女かなん てのは、それこそ当るも八掛 当らぬも八掛だあな」 「赤ちゃんの名は、お蝶と つけるわ。 しい一、ーしよ、 おまえさん」 おまきは、亭主の抗議を歯牙にもかけずにいった。 はたで聞いているお時は、冷たい風にあたったような身震いが 、之出た。おまきに予知能力がふいに顕われたことを知った からである。 以来、おまきは奇矯な言動で家人を驚かすようになった。突然、 近いうちに大火事が起きるから、 を - 予言を口走るのである。 一手付金をかえして普請をことわったほうがいい などと真面目にいうのである。来年は、諸国に 一一たいそうな不作凶作が見舞い、大騒ぎになるだろうなどという。 失せ物の所在なども巧みにいいあてたりした。 それくらいならまだよかった。十ニ月に入ると、意識不明の うわごとじみたことを大まじめで口外するようになり、杉田屋の 一おかみさんは気が触れたのではないかという噂を立てられ るほどになった。 昨夜、えこういんの一言観音さまが夢枕に立ち、近々江戸 市中を灰麈に帰す大火がある、と告げただの、火事場装束のさむ らいが四六人も切腹するだの、実にとんでもない話をするから であった。 だが、お時にとっては、たわ言と聞き流せなかった。えこう いんとは回向院のことである。しかし、寬永十七年の当時、 一本所・牛島新田に回向院は存在しなかった。 回向院は、十八年も後の明暦三年の大火事に大量の焼死者を 葬った万人塚のことなのであった。火事場装束のさむらい うんぬんにいたっては、大 0 年もさきの赤穂浪士の一件である。 元禄時代の事件なのだ。 おまきは、あきらかに予知能力をはたらかせているのだが、 それを正しく理解するだけの知性に欠けていたのであった。周囲の 人間にいたっては論外だった。歴史の知識を持つお時だけが、 おまきのたわ言の真の意味を理解することができたのだった。 ー 08

8. SFマガジン 1972年12月号

たぶん、軍部の代表もひとりは立ち合わせる必要がある、ということではなかったのか と思う。あるいは、わたしが招かれたのは、いつだったか、すべての政治家がまぬけで堕 5 ( 湯響第落しているとは限らない、と言 0 たことが報道されたせいかもしれない。わたしは、まぬ 事けでない政治家は堕落しており、堕落しない政治家はまぬけであることを個人的意見とし 第て付け加えたのだが、この部分は報道されずじまいだった。ともかく、ある晴れた春の 0 ゾ箋 ( 、 ) 可ト、鸞を第一、糴当 0 ~ ~ 朝、わ 0 = ただ 0 とり 0 軍人と 0 民間人 = 囲まれ立 0 = 」。政治家連中と科学者 とはすぐ見分けがついた。きようは科学者の出番だった。政治家の方は珍らしくおどおど ク第を - 瞰 ~ ( 亠第、外弯遠慮しているようだ「た。 ノーウッド教授がーー彼はわたしでさえ評判を聞き及んでいるほどの有名人である " 第曩・を ' 開会を宣した。 「紳士諸君ーと彼は言った。「ならびに」ーーーとわたしにほほえみかけて 「サンズ将 軍、隣の部屋にまいります前に、若干の説明をした方がよいかと存じます。みなさんはこ - 第一、 - ( 〕 ~ 第〔一 0 ~ 一 ~ ~ 一 ~ 一 ( 【 ~ 、鼕、 . 0 集 = 。 0 重要性。 0 = う 0 、も、を計画 0 実際」関」、く 0 = 「これまでのいきさつをまだご存じでない方もいらっしやることでしよう。 今まで極秘に行なわれてきたのですから、それも当然です。な・せ極秘にされてきたかと申 しますと、それは、これが、わが国はもちろん、いかなる国にもかって存在しなかった最 高の兵器に関することだからであります」 わたしはがっかりした。民間人に限って、軍人は新兵器の話を聞くのが好きだと信じて いるのだ。むかしから、軍隊を統率しなければならない者にとって、新兵器など、それが いかに必要であろうと厄介物以外の何物でもなかったというのに。 「現在のわれわれの研究は」ノーウッド教授は続けた。「ひどく奇妙なきっかけで始まり ました。レオナルド・ダ・ビンチの発明のスケッチの展覧会からすべては始まったので す。スケッチを見て、わたくしはダ・ビンチの見事に時代を先取りした発明に感嘆せざる をえませんでした。彼は発明家に期待される以上のことを成し遂げたのです。一般に発明 家というものは、それまでに作られたものの堅固な基盤によりかかっております。彼らの 0

9. SFマガジン 1972年12月号

ロゲヅト天文学の急ビッチな発達によってここのところ太陽系諸惑星の謎わめて困難だろう、といっている。予想される新惑星の実視光度は、十四等 がつぎつぎに解明されーー・あるいは新しい謎を生んでいる。とくにこの一、 以下である。 二年は、プメリカのマリナー・シリーズとソ連の火星シリーズによって火星 冥王星は十五等だから、これよりは倍も暗い上に、おなじような密集した の状況が、同じくソ連の金星シリーズによって金星の様子が刻々明らかにさ恒星を・ ( ックにしていた。それでも発見できたではないか、という議論が当 れつつあるし、一方外惑星の方も、アメリカのパイオニア川号がやがて木星然起ってくるが、新惑星の場合は、同じというわけにはいかない についての新しいデータを送信してくることが期待されているが、今度はコ それというのも、新惑星の公転周期が、非常におそいからである。冥王星 ン。ヒュ 1 ターが、この一〇〇年の太陽系天文学の一つの課題であり、それだ のそれが、二四八・四年であるのに対して、新惑星は五一二年ーー二倍以上 けにの世界ではもっともポ。ヒ、ラ 1 な、人気のある天体だった第川番惑おそいわけだ。つまり、第川番惑星は、冥王星が恒星に対して移動する割合 星の存在を、ほ・ほ明確に捉え得たというニュースがもたらされた。 の半分も見かけ上の運動を行なわない べつのいいかたをするなら、新惑 ニュ 1 スそのものは必ずしも新しくはなくすでに四月末から五月始めにか星は、月の直径だけ天球面で位置をかえるのに、十カ月ちかくの日数を必要 けて、わが国でも主なる新聞がアメリカ・カリフォルニア大学のローレンス とするわけである。冥王星の場合、発見者のトンポーは、同じ空の一角を時 ・リスーモア研究所が、ハー 1 彗星の軌道偏差の研究を進める中に第川番惑 間をへだててとった写真を、閃光比較器という機械にかけて瞬間的に比較し 星の存在をかなり正確に推理することができたと発表したというニ = 1 スをてみた。もし、両方の写真がまったく同じならばーーーっまり、写された星の 掲載していた。 光点が、まったく動かず、同一のものであれば、そこに写っているのは動か この発表を行なったのは、リ・ハ 1 モア研究所の天文学者ジョゼフ・・・フない星ーーー恒星であるということになる。もし動けば、それは星そのものが ラディ教授で、発表によるとこの新惑星は、太陽から平均九〇億キロメート 移動したということになり、それが恒星以外の星ーー惑星か、小惑星か、彗 ル ( つまり、海王星までの平均距離のほ・ほ二倍、従来の太陽系のフロンティ星かであるということになるのだ。 アであった冥王星の遠日点よりも、さらに三〇億キロメートルのかなた ) の しかしこれは、いうに易く、行なうに難い作業である。わずかの空間を写 距離にあり直径は土星の約三倍 ( 三八万キロメートル ) あり、太陽をめぐる した写真にも最低一万六〇〇〇個の光点が写っていて、それが動くか動かな 周期は、五一二地球年であるという。われわれから最も遠い位置にある冥王 いかを判別することは、よほどの熟練と忍耐とを必要とする。事実トンポー 星が、直径一万四四〇〇キロメートルと推定されているから、なんと二六四が、ローウエル天文台で冥王星を発見したのは、。ヒカリングやローウエルに 倍強ということになる。ちいさい冥王星がとうに発見されたのに、こんな大よってその位置がかなり正確に計算されてにいたもかかわらず、予想された きな惑星ーーーもしこの計測が正確ならば、もちろん太陽系最大の惑星 ( 木星時から十数年後だったのだ。 の二・六倍強 ) になるーー・が、な・せ今日まで発見されていないのか。 もう一つの不利な条件は新惑星が、一一一〇度という極端な軌道傾斜角を持 これについて、・フラディ教授は、第川番惑星の現在位置が、無数の恒星の っていることだった。つまりは他の惑星たちとまったく異なる天空の一角を ひしめく銀河の、もっとも観測しにくい部分にあり、恒星の光によって、よ回っているわけで、そのため今日まで発見されるチャンスがなかったのだ。 わい新惑星の光がかき消されてしまうためで、おそらくは今後も、発見はき しかも、公転周期が非常におそいのだから、おなじような明るさの星の密集 連サイエンス、ジャーナル」第番惑星カロン発見 ? 加藤喬 4

10. SFマガジン 1972年12月号

阻止する。しかしそれはかれらを抹殺することでじゃありません。 「わが社では、ありとあらゆるタイプの願望成就型の夢想を扱って かわりにあなたはかれらに思いやりと情けを示す。テレバシー きましたよ」マクレインは言った。「正直なところ、これよりもっ 9 というのは、かれらの意志伝達手段ですがーーーによってさえ、あなと極端な話だって聞いたことがあります。もちろんわが社で扱えま たはかれらがやってこなければならなかったわけを理解している。すとも。いまから二十四時間のうちには、かれはたんに地球を救っ いまだかって、他の知覚ある有機体が、このような人情味ある態度たと願っているだけじゃない、心底からそれが実際にあったことだ を示すのをかれらは見たことがない。そこでかれらはその感謝をあと信じるようになっていますよ」 らわすために、あなたとある契約を結ぶのです」 警察幹部は言った。「ではさっそくとりかかってもらおうか。そ クウ = イルは言った。「おれが生きているかぎり、地球には侵入の準備として、われわれはすでに、もう一度かれの火星旅行の記億 しないってわけだ」 を消去する処置をとった」 「なんの火星旅行です ? 」クウェイルは言った。 「そのとおり」インタープランの幹部に向かって、医者は言葉をつ づけた。「おわかりでしよう、これはかれの性格にびったりなんで だれもそれには答えなかった。そこで、不本意ながらかれは、そ すよ。このとおり、わざと冷笑的な態度を装ってはいますがね」 の質問を棚上げすることにした。それにどっちみち、警察車がすで しだいに満足感がつのってくるのを覚えながら、クウ = イルは言っ に到着していた。かれ、マクレイン、そしてインタープランの幹部 た。「すると、たんに存在しているだけで、たんに生きているだけの三人は、それに乗りこみ、ほどなく、シカゴへ、リコール株式会 で、おれは地球を外敵の支配から護っているというわけだな。言い社へ向かっていた。 かえれば、事実上、地球でもっとも重要な人物ってことになる。指 「今回こそは失敗のないようにしてもらいたいものだな」警察幹部 ま、 一本あげることなしにだ」 かっしりした、神経質そうなようすのマクレインに向かって言 「そのとおりですよ」医者は言った。「そしてこれがあなたの精神った。 構造の基盤、生涯にわたる幼年期の夢なんです。深層意識にたいす「失敗がありうるはずはないと思いますがね , ひたいにじっとり汗 る薬品の働きかけがなか「たら、あなたはけっしてこれを思いだすを浮かべて、マクレインは言「た。 「これは火星ともインタープラ ことはなかったでしよう。しかしそれはいつもあなたのなかにあっ ンとも関係はない。ただひとりで他の太陽系からの侵略を防いだと た。深く潜在してはいたけれども、けっして失われることはなかっ いうだけのことですからーそれからかれはいまさらのように首を振 たのです」 った。「それにしても、子供ってやつはなにを考えつくかわから 坐ってじっと耳を傾けているマクレインに向かって、警察の高級ん。それもたんなる道徳的な高潔さによってであって、腕ずくじゃ 幹部は言った。「どうだ、きみ、いま説明されたような記憶をこのないんですからね。変わってますよ」かれは大きなリネンの ( ンカ 男に植えつけることができるかね ? 」 チーフでひたいを試った。