彼女が、わずかに不審なひびきをこめて言った。 うになっている。そして、それが悪しき方向に用いられようとして 「な。せです ? 」と俺は言った。 いると一日うことです」 「教会を訪れたことがですか ? それが、そんなに奇妙なことです「誰も、それを阻止しようとしない ? 」 かな」ーー彼は若い妻の手をとって掌に包み込みながら淡々と答え 「かって人間が核エネルギーを解放したとき、誰がそれを阻止しょ うとしました ? このような場合、人間は、新らしい玩具を買って 「私は、折にふれて、ここに神と対話をしに来るのですよ」 もらったばかりの子どもと同じです。それが壊れるまで、あるいは 「しかしあなたは、神は超自我のうちにあると言われた筈だがー 飽きるまで、いじくり回すのを止めないものですよ」 「そう : われわれは神の領域をこえて、あまりにも遠くに行 「まだ、あなたは悲しんでいるようですね , と、俺は呟いた。 オーヴァ き、ある意味では巨大になった。それゆえに、″超越せるもの″の 、え」首長は空をあおいで答えた。 存在がいっそう実感出来る。われわれは謙虚にならざるを得ませ 「私はじつは恐れているのです」 ん。原点に立ち戻って、絶対神とはなんであるかを考え直したいも 俺はその首長の横顔に見入った。俺の内部で記億の焦点が合おう のです。 としていた。ユダヤ系の高い鼻梁のカープ、深い思弁をたたえた落 教会は、そのためには恰好の場所です。この内部には何百年にもちく ) はんだ眼、秀でた額 : ・ : ・俺はその。フロフィルから、頬と顎を覆 わたる人間のおろかさ、そして敬虔さが滲みついている。この建物う髭を剃りおとしてみた。ふいに、記憶のフラッシ = がかちっと静 は、いわば思考の檻なのです」 止し、ひとりの男の顔がストツ。フモーションした。 「神をそんなふうに決めつけるのは、冒じゃなくって ? 」と彼女 それは、二十年前ありとあらゆるマスメディアをにぎわせた顔だ が一一一一口った。 った。ノーベル文学賞を受けて一週間後、とっぜん行方を絶った作 「その言葉は」首長がおだやかに答えた。 ート・ロ 1 ゼン・ハーグ。メキシコの洞窟の奥に融け込むよ 「人間の魂を抑圧するものに対して使うべき言葉だよ」 うに消えたアン・フローズ・ビアスを思わせる奇怪な消減だった。自 サイケデリア 「神の領域をこえたと言われるがー俺は言った。 殺説、亡命説 ( むろん幻覚共和国もそのゆくさきの強力な推測の地 「具体的に教えて下さい。あなた方はいったいどんなエネルギーをだった ) , ーーどれをとっても必然性を充たすものはなかった。 開発したんです ? ゅうべのようなトリツ。フ・インで、どんなトリ 彼は若くから一家をなしたユダヤ系の作家で、主として晩年の作 ップをしていると言うんです ? 品「千年王国の終焉」が、受賞の対象になったと言われている。 「それは私の口からは申し上げられない。あなたには、生きてこの これは一種の未来小説で、テクノロジー文明への深い洞察と、人 国から出てもらいたいのでね。 ただ、これだけは言える。われ 間性の堕落への澄んだ諦観が、そのモチーフを構成していた。 われの一部は、有史以来人々が夢に希って来た能力をたくわえるよペ トロニウスの「サチュリコンーさながらの、爛熟し甘い腐臭を放 チェック
彼女はほとんど顔色を動かさなかった。 銀髪の男はしずかに答えた。 「交易をおのそみですか ? 」首長が言った。 「われわれは外へ飛ぶことをはじめたのです。知覚の果てを越えて 「ことしは良い毛皮が少ないのですが : : : 最近、野獣がめつきり減ね」 りましてね。上質のグラス ( マリファナ ) よ、 。しかがです ? 」 「自我の中心に、神はいましたか ? 」俺はいくぶんかの揶揄をこめ 「毛皮は少しで結構。今から荷を重くしたくないのでね。こちらて訊いた。 は、昔なじみの奴と、新薬がたっぷりある。要るたけ置いて行こ 「ほんとうに、あなたはその答えを、お聞きになりたい ? 」 う。ただ、あなたと少し話をしたい 「この国に立ち入るようになってから、いちどははっきりした答え 「いいですな。私もあちらの状況についていささか興味がある」 を知りたいと思っていましたよ」 俺たちは、スターシャインの給仕でタ食をしたためた。鹿の 「そう : ・シャドウはまともに俺を見据えた。第三の目 シチュー、大麦のかゆ、自家製のチーズとヨーグルト。 が、生けるもののようにぎらりと光った。 「前に会ったことは ~ 」俺は食後のグラスを吹かしながらさりげな「神はわれわれの自我の、未知の領域に閉じ込められていた。われ く訊いた。 われは、それを解き放ったのです。鎖につながれたフロメテウスを 「さあ。ないでしような」首長 , ・・・ーープルー ・シャドウと名乗ったー解き放つようにね。 : : : 神とは、つまり″カ石です。エネルギーを ーは、柔かい徴笑を浮べて言った。ふしぎなとらえどころのない微統べるものです。われわれの超自我が、かれと和解を結んだのです 笑ーーあちらの人間には絶えてみられない微笑だ。 よ」 「どうです、外惑星の探査は、もうすべて成功しましたか ? 土星「そして、何が起りました ? 」 に基地がつくられたと聞いてから久しい 「われわれは、この現実世界を紙のように突き抜けて、時間と空間 リツ・フ 「これは驚いた。そんなことに興味がおありとは」と、俺は言っのふしぎな谷間をかいま見ました。じつにすばらしい旅行でした。 同時に悪夢のような経験でした : : : 」彼の声は尻っ・ほみになってか 「いま、冥王星めがけて有人宇宙船が飛んでいるところですよ。木すれた。 星からは、鉱物資源を積んだ貨物船が到着しはじめている」 「 : : : 戻らなかった者も数え切れない : 、 . リツ・フ 「興味はあります。われわれもいつも旅行している。その行きつく「薬をやれば、超次元への旅ができることはわかっている . 俺は言 っこ 0 先を競っているようなものですからな」 マインド・トりッ 冫。し力ないでしょ 「精神旅行とロケット旅行とでは、競うわけこよ、 「俺もむかしは、アシッドでよくラリったものだ。しかし酔いがさ う」 めれば、俺は元の通りへ ・ツドに横たわっていて、ひどい吐気がして 4 「もう精神内部への旅はおわりました」 止まらない始末。俺はそのときの反動がたまらなく嫌でね。どうせ ドラッグ
「なろん。死んでいる」ロスはくり返した。いま頭は完全にはっきイナード、新らしい軌道の用意は ? 」 りしていた。カ 1 ティスが死んだ瞬間に、もやが睛れたのだ。スパ 「できています。船長」 0 ー、カ ングラーを死体のそばに残して、かれはデスクにもどると、計算を温度計は一一百をかすめた。冷却装置が苦痛を訴えだした ながめた。 その苦悶も、短く終るはすだった。 氷のような明晰さで、ロスは船の位置をつきとめた。予定されて数分のちに、「レヴェリエ」は水星の地表を離れーー容赦なく迫 いた位置より、三百マイルも向日側よりに降りていたのだ。計器類る太陽を尻目にーー惑星をまわるかりの軌道にはいった。 は正常だったのだが、誰かの目があざむかれたのだ。プレイナード 船が執道に乗って、みながかたずをのんでいるころ、ロスの心に が毅然として、「安全」だと保証した軌道も、実のところは、カー ひとつの疑問がわいた。〈な・せだ ? 〉どうしてプレイナードの算定 ティスがはじいたものと似たりよったりの、危なっかしいものだっした軌道は、かれらを安全帯でなく、危険地帯に降ろしたのだろう たのだ。 か ? なぜ・フレイナードと戸スはそろいもそろって、もっともかん かれは外をながめた。キ + タビラーはおおかた帰りついていた。 たんな初歩の宇宙航法であゑ発射パターンを計算できなかったの 温度は百六十七。時間はじゅうぶんにあった。数分の余裕を残しだろう ? それに、どうしてスパソグラーは正気を失ってしまった て、ぶじ飛びたてる。これも溶けるレーダー塔から受けた警告のおのだろうーーー哀れなカーティスが自殺する間だけ ? かげだ。 ロスは同じ疑問が、みなの顔に浮かんでいるのを認めた。〈なぜ だが、な・せこういう事態が起きたのだろう ? その答えはわからだ ? 〉 なかった。 かれは頭の芯がむずむずするのを覚えた。するととっぜん、ひと 耐熱服をつけて巨人にふくれあがったクリソスキーが、レウエリ つのイメージが答えとなって、かれの心を力強くよぎった。 ンとファルプリッジを乗船させた。一一人は宇宙服を脱ぎすてると、 それは向日側の二つの鋸状の山にはさまって、ちかちか輝ゃいて ふらふらとよろめいてくずおれた。そのさまは、煮たったばかりの いた大きな溶解亜鉛の池だった。こいつはそこに、何千年も存在し 二匹のざりがにに似ていた。 ているのた。これからさき何千年、、いやおそらく、何百万年もそこ ロスは言った。「暑さで消耗しきっている。クリンスキー、二人に横たわっているだろう。 を離陸椅子にいれてくれ。 ドミニク、きみはまだ服を着ているだろ池の面は震えていた。池に降りそそぐ太陽の光りは、人間の目に う ? 」 耐えられるものではなかった。 宇宙飛行士が気閘の入口に現われて、うなずいた。 亜鉛の池に激しく打ちつける輻射ニネルギ 1 ーー太陽の輻射熟は 「よし。下に降りて、キャタビラーを船倉にいれてくれ。置き去り苛酷でとどまるところを知らない。しかもさらに、新たなエネルギ にするゆとりがないからだ。大至急だそ。そしたら発射する。・フレ ーがそそがれたのだ。つぎのような含蓄のある電磁エネルギ 1 が。 ロ 4
ている低くたれこめた霧の方へ移っていった。何も見えず、何も聞興奮して浅い息をつきながら、彼女はそ 0 と爪先だち、庭の石塀 2 こえない。 の方へ向った。高さは六フィートあったが、その格子垣の下にコン 6 夜の中で、動くものは何一つなか 0 た。はずかしい、そうは思 0 クリートのべンチがとりつけられていた。もの音は、壁の向う側か たものの、あの感覚は依然としてとどまっていた。 ら聞こえてくる。彼女は、体を丸めてべンチに登った。そして、つ 「もしここに誰かいるのなら」彼女は考えた。「そっと呼びかける草のかげに顔が隠れるようにしながら、頭をもちあげて、外を見 て、そして姿をみせたら大声をあげてやるわ。そうしたら、ハイン ホッファーさんが聞きつけてくれる」 街灯は半プロック離れていたが、・ とうにか見わけられた。男が一 「ねえ ! 」彼女は小声で、しかし周囲の暗がりには充分通るほどの人、通りのむこう側の暗がりの中に立 0 ていた。明らかに・ ( スを待 声で言った。 っているのだ。彼は、紙袋から。ヒーナツツをとり出しては、そのカ 答えはない。彼女は両腕を頭の後で組み、もう一度静かに、媚びラを通りに投げすてていた。これが、あの音の正体だ 0 た。 を含んだ声で言った。 彼女は格子垣の後ろから、意地悪く、男をみつめた。 「いらっしゃい、わたしをつかまえなさいよ」 「もしあなたがやってきて、壁ごしに覗いてたとしたら」彼女は考 背後の生け垣から、彼女をむさぼり食おうとする黒い怪物がすべ えた。「両目をえぐり出してやるつもりだったのよ」 り出してくる。楡の木かげから、ヒョウがとびかかってくる。湿っ 「ハイ」男が言った。 た闇から出てくるサキ : ( スが、彼女の血を凍らせるーー何もおこ 丿ーザは硬ばり、じっと立ちつくした。その男に彼女の姿が見え らなかった。彼女は、ひとり悦に入っていた。 るはずはない。彼女は暗闇を背にして、しかも影の中にいるのだ。 「いらっしゃいな、一口かじってごらんなさい」 それとも彼は、あのくだらないひとり言をきいたのだろうか ? がつがっとかみくだいてしまう大猿もあらわれはしなかった。 いや、ただ咽喉のつまりをなおそうとせきばらいしただけだろ 考えすぎていただけだわ。彼女はそろそろと体をのばし、起き上う。 がると、濡れた体に貼りついていた草の葉を払いおとした。雨の中「 ( イ ! 」彼は再び言った。 での奇妙な儀式は終り、彼女は疲れ果てていた。ゅ 0 くりと、彼女彼女の顔は、垂れさが 0 ているつる草に隠されている、そして、 は家の方へ歩いていった。 音を立てずに動くことはできなかった。彼女は、視線を向けたま その時、もの音がきこえた・ー・遠くの方、とぎれとぎれに、何かま、その場に凍りついていた。彼は姿はほとんどわからない。黒い をくだくようなかすかな音。彼女は、家の暗い影の中で立ちすくんレーンコート、 黒い帽子、細い影。彼はわたしをみているのだろう だまま、耳をすました。紙がガサガサいい・ 何かがはじけ : : : か か ? 彼女は激しいおびえを感じていた。 けらが通りに落ちる。これが、短い間をおいてくり返されていた。 突然、紙袋を溝に投けすてると、その男はふち石を離れてぶらぶ
ありさえすれま、、 。しますぐにでもそれを書きはじめるのだが。あのだ」一瞬置いて、かれはつけたした。「そしてまた同時に、行かな リコ 1 ル株式会社のようなインチキ会社に気をつけるよう、ほかのかったような気もする」 人びとに警告してやることは、明らかにかれの義務というべきであ「どっちかに決めなさいよ , る。 「どうして決められる ? 」かれは手を振った。「おれの頭のなかに というわけで帰宅するやいなやかれはヘルメス・ロケット・ポ 1 は、二通りの記億が刻みつけられてるんだ。一方は現実で、一方は タ・フルの前に坐り、引出しをあけて、カーポン紙をさぐった。ふそうじゃない。だがおれには、どっちがどっちだかわからん。きみ と、その手が、小さな見慣れた箱に触れた。かれが火星で注意ぶかを頼りにしてなぜ悪い ? まさかやつらだって、きみにまでちょっ く火星生物を詰め、のちに税関の目をごまかして持ちこんだあの箱かいを出したはずはあるまい」せめてこれぐらいのことは、かれの ためにしてくれてもいいはずだーーーたとえいままでなにひとっして あけてみて、思わずかれはわが目を疑った。箱のなかには、六匹くれなかったにしても。 の死んだ火星産の寄生線虫と、かれらの餌である数種の単細胞生物カ 1 ステンは平静な、自制の利いた声音で言った。「ダグ、いっ かはいっていたのだ。それらの原生動物はからからに乾からび、埃までもそんな夢みたいなことばかり言ってると、わたしたちの仲は まみれになっていたが、それでもかれはそれに見覚えがあった。たおしまいよ。わたし、出ていくわ」 しか、火星の黒い巨大な岩のあいだからそれらを採取するには、ま 「おれは困っているんだ」かれの声は、嗄れて、ざらざらしてい る一日かかったはずだ。すばらしい、啓発される発見の旅だった。 た。そしてふるえてもいた。「ひょっとすると、精神分裂症になり 《だがおれは火星には行かなかったんだ》ーーーかれは気がついた。 かかってるのかもしれんな。そうじゃないことを願ってるが、しか とはいえ、いつぼうにおいて しーーそう、それが答かもしれん。とにかく、そう考えればすべて カーステンが、薄茶色の紙袋を山ほどかかえて、部屋の戸口にあ説明がつく」 らわれた。「こんな昼日中から、なんで帰ってきたの ? 」例によっ手にした食料品の包みをおろすと、カーステンはつかっかと戸棚 て、彼女の声は非難がましかった。 に歩みよった。そして、押し殺したような語調で、「わたし、ふざ 「なあ、おれは火星に行ったのかね ? 」かれはたずねた。「きみなけてんじゃないのよ」と言うと、コートを出して腕を通し、アパー ら知ってるだろう」 トの入口へ向かった。「そのうち電話するわ」そう彼女は抑揚なく 「行かないわよ、もちろん火星になんて行けるもんですか。あんた言った。「じゃあさよなら、ダグ。なんとか早く立ち直ってくれる だってそれは知ってるんじゃない ? いつだってあんたは、行きた ことを期待するわ。本心からそう願っててよ。あんた自身のために くてめそめそしてるんじゃなかった ? 」 かれは言った。「それがなあ、おれは行ったような気がするん「待ってくれ」かれは絶望的に言った。「せめてこれだけでも答え ね」 6 8
「あれ、アポロ十一号だったかしら。私もテレビでみたわ」 のではないと思ったのだろう。幕府は勘定奉行の下に神宝方という 清田はそう言い合う二人の顔をみつめながら、煙草をくわえ、ラセクシンを置いてその回収した神器の保管に当らせた。同時に寺 イターをらしこ。 社奉行の下に神道方と古筆見という研究機関を設けたが、それはす 「あとで外へでてみてごらん、一一人とも。今夜は丸い綺麗な月が出ぐ有名無実のものになってしまったらしい。明治維新の時、その幕 ている。 はアポロ十一号であの月へ行って来たんだ」 府の最高機密が新政府にわたされ、現代まで連綿と引きつがれて来 「ええっ : たのだ。ただ惜しいのは、産霊山のことが科学としてではなく、政 治権力の道具として保存されてしまったことだ。日本を支配する権 「ほんとなの、それは」 「そこが産霊山だと確認し、地球の芯の山との違いがどうだか調べ力者は必ずその秘密を握らねばならないというのが、日本の政治の るのに、トミー のように純粋に近いヒをたよる以外、今の科学は方習慣のようにさえなっていたのだから、無理もないだろうが : : : 」 「そうすると、徳川の将軍たちは芯の山より少しズレたところにい 法を持っていないのさ。アポロ十一号は、本当は四人乗りの存宙船 たわけじゃないの」 だったんだよ」 令子が言った。 女たちは声もなく息をのんでいた。「米ソとも目的は産霊山だ。 もしソ連がさきに行っていたとすれば、多分なんとかスキーという「うん。家康は日光だと信じていた形跡がある。勿論日光は産霊山 ような名の、 トミーと同じような体質の男をのせていただろう。たのひとつだし、戦後のアメリカ側の研究では、世界にも例のない特 だ、アメリカの方が産霊山研究に関しては一歩も一一歩も進んでい 別なタイ。フの産霊山らしいということだ」 た。その原因は日本に進駐したことだった。終戦の時、日本は日本「特別なタイ。フの : : : 」 の芯の山を奪われない代償として、アメリカにありったけの三種の 「まあちょっと待て。順に話して行こう。とにかく、そうして徳川 神器を渡してしまったからなのさ。ほら、トミ 1 がよく言ってたろ家は江戸に腰をすえた。探し求めた答えの、正解のほんとうのすぐ う。ヒがワタリに使 0 た依、吹、師の三つ一組の道具だ。あ近くにね」 れは念力の増幅装置らしい」 「今の皇居だわね」 「兄さんの部屋に昔の珠と鏡が飾ってあるわね。あれのことなの」 令子が言う。 「そうだ。あのふたつはトミーが日本中探しまわってやっと見つけ「うん。徳川が三百年もつづいたのは、ひょっとするとそのおかげ た三種の神器のかたわれさ。ヒにったわる産霊山の秘密を知って江だろう。しかし、もっと正解に近い場所を掴んでいたらしい大名が 戸に本拠地を移し、日光に東照宮をたてさせた徳川家康は、各地の いる」 産震山にあったヒの三種の神器を恐れて、それを全部回収してしま「誰 : : : 」 った。そんなものがあっては、いっ徳川幕府が潰されるか知れたも「真田家だ。明治新政府の一部は勿論産霊山のことを知っていた。 9 3
夫婦仲むつまじい工ロンゲイテッドマン ( 上 ) 巨大化したエラスティガール ! ( 下 ) 、 - ・を多い 0 口下竃第 第伊第をÄ. らを 0 ーす優リ第、 第まを . を 0 : 第 0 ' をみ E 。 OU をもト - 、、 ON 義壥 : 工 WERE : 筬リを YOt3 . 、 000000 、 ' 0 ・ : を「 0 、 0 、 0 丸第第す て第 . 第 0 つ 0 下砂 7 、第い第す - すい、 , ーをマ、 0 をの 0 にドを を隊ー、いイ ) ・第一い、、、」ーを第、からだを申ばしてし くシーンで、そのと き彼は、いままさに キスをしようとして いる恋人同士のあい だを首をのばして通 ~ 第一、 00 一 ~ 、り 0 け。つあゑ 宀 ( すると、どういうこ とがおこるかーーーーふ たりのくちびるが合 ン ) おうとしている。そ のあいだを、プラス チック・マンの首が こ伸びていく。当然、 に、女のくちびるは、伸 びつつあるプラスチ ック・マンの首に触 れてしまう。だが、 そのときも首は、伸 ギャグの連続ではないかと思うほどよく出来ている。そしびている途中なのだ。したがって、首のうえに押されたキ て、人間というやつは、もうどうしようもないな、と思 ス・マークも、 っしょに伸びていくことになる。 う。ガーターを求めて、群がる人びとの狂乱ぶり、ことあ首のうえを、横に伸びて残ったキス・マーク この場 るごとに付和雷同してさわぐ連中ーーそうした、・ こくふつ面を見たとき、私はあまりの・ハカ・ハ力しさに唖然としてし うの人たちの姿が、メチチャクチャなほど実にいきいきとまった。こんなマンガを、必死になって ( 楽しんで ) 考え 描かれている。 ていたマンガ家のアタマのなかは、どうなっているのだろ ところで、私が、とりわけこのエビソードが気にいってうか、と。 いる理由は、実は、ここにとんでもない場面を発見したか私も、空中にうかぶ、透明人間につけられたキス・マー らなのである。それは、別に、本筋には関係がないのだけクについては考えたことがあるけれども、首のうえで伸び れど、。フラスチック・マンが、夜の街を、容疑者を追ってていくキス . ・マークまでは、思いが及ばなかったのであ , をこ 円 0 ー
が風上でグラスを吸っている。指をぬらして立て、風向きを調べた。俺は何も感じなかった。奴は犯すべからざる不文律を犯したの ローヴァ た。かすかな風が、向いの崖の上から吹きおろして来る。 だ。傍にライフルが落ちている。毛皮猟師が使うありふれたレ・、 誰がそこにいるにしても待ち状せの。フロでは・ない。自分の所在をアクションのライフル。拾い上げて弾の残りをはじき出し、死体の 大声でわめいて知らせてるようなものだ。俺は目を細め、逆光をか顔のうえにかがみ込んだ。 いぐって崖の稜線に目を走らせた。 寒さに凍えた青白い顔。奇妙なほど青く澄んだ目をいつばいに見 ジャンキ 何かがきらっと光った。それは、奴が肩に当てなおしたライフルひらいている。ヘロイン中毒者特有の目だ。顔じゅう覆った黒い髯 の銃身の反射だった。次の間、たてつづけに奴は射ち出したのだ。 の先に、氷の結晶がこびりついている。 たた、奴が狙ったのは俺ではなかった。スターシャインの斑ら馬が どこかで見た顔たった。立ち上り、記憶をさぐる。寒さで記億の 鋭い悲鳴をあげて棒立ちになり、それからゆっくりと前脚を折ってノイロン、回路が凍っているらしい。無意識に太陽を仰いだ。思い出 びざまずいた。大抵の場合、自分の馬が射たれるのを目のあたりにした。とたんに銃声がとどろき、俺は右肩を巨大なハンマーで殴ら して温和しくちちこまっていられる″交易屋″はーーーむろん他のどれたように感じ、半回転しながら雪の上に叩きつけられた。 . し事 / . し んな野外旅行者も 意識がとぎれる前、俺は視野のすみに、洞穴の真上の崖つぶちに が、奴の計算は外れた。一瞬、俺は視界に真紅の霧が立ちこめる立ちはだかっている狙撃者をみとめた。奴は背後から、楽々と標的 でも狙うように俺を射ったのだ。 のを見たが、唇を噛んでその恐りをやりすごした。それから銃のパ パワーをマキシムにあげ、照準を定め、ひややか ターンをし・ほり、 あまりの激痛で意識が戻った。俺の肩の、灼熱の痛みの噴火 に奴を射った。 口を、何かが押しひろげようとしている。かろうじて瞼を持ち上け 最初にライフルが落ちた。続いて短い悲鳴があがり、雪煙をあけると、皮プーツが、息を吐きかければ届く距離にどっしりと突っ立 て奴が落ちた。にぶい音が谷にこだました。 っていた。それに続く鹿皮のズボン、粗皮の上着、さらにその上 に、俺を見下ろしている顔、苛酷な神のような顔がお・ほろげにゆが 俺はゆっくり立ち上り、歩いて行った。後で考えれば奴の計算は それほど間違いでもなかったのだ。少くとも俺は奴がひとりだったんで見えた。それは・フロンドの髭で縁どられていた。 かどうかを確かめる冷静さを欠いていたのたから。 奴はライフルの銃ロで俺の傷口をしきりに小突いているのだっ 最初に馬を調べた。首筋を三発射たれ、虫の息だ。延髄にビームた。この男たちが何者か、すでに俺は悟っていた。数日前、峠で俺 たちを襲った″放浪者″の片われた。 を射ち込み、楽にしてやった。耳を伏せてしまっているシエナンド 乾いた声が降って来た。 アの頸をやさしくなで、しずかに話しかけてやる。 彼女がおちついたのを見届けてから、落ちた人間の方に歩み寄っ「奴たちに止めを刺さなかったのはまずかったな、ええ ? 尤もス 5 リムの奴は今度は本当にくたばったようだがな」 た。頭の奇妙なねじ曲り方を見れば、死んでいるのは明らかたっ
マグダラ おまえが殺される / メになったわけを 知ってるだろう おまえは 与えられた 仕事もせずに 男から男へ とびまわっては 遊び呆けて : おまえの あだなは 毒まむした . それじゃ 主人も愛想が つきるのは 当然だせ おれには おまえと逃げる 勇気はとっても ねえ : 0 0 0 シッシッ ついてくるなこいっ ・ % ホロロさま・ このメス離れません そう・ さよなら いいてはないカ 私をしたって ついてくるのだ 2 ウッフー ネ工′ー。ン 以下次号 H ー K ー′ 0
たとえばこれを現代のファンが読めば、さてはミュータント なものをとりたした。 一族、といきなり常識の枠をとびこえた解釈に結びつけるに相違な 「笏ですな」 、 0 客は即座に言った。笏は元来備忘用に文字を書いた紙を貼って手 に持っための道具である。幅二寸、長さ一尺二寸の木の板で、衣冠 産霊とはムスビと訓じ、ムスは生を、ビは日又は火を意味する。 あれ ムスビ信仰は日本民族固有の『生』に対する原始信仰に発している東帯に身を正す時、右手に持って容儀をととのえる。 とされ、新選姓氏録の神別氏族の租神中、約三分の一がムスビの出「あ : ・ : ・」 自であるという。 客は目を丸くして清田をみつめた。その古びた笏には直接文字が 「山科家本の発見者は奈良の古美術商の、例の岩下宗兵衛氏です。記してあった。古びて墨跡も枯れている。 岩下さんはその道の大家ですから迂濶なことはしていません。この 上部に忍の一字。下部に御名、御璽。 おおぎまち 紙がはさまっていた個所もちゃんと記録してありました。これがそ「正親町天皇の真跡ですよ」 の写しです」 「どうしてあなたがこんなものを」 清田はゼロックスのコ。ヒーを差し出した。「参ったな、これは」 「まあそれはあとにしましよう。どうお思いになりますか」 客はそれを一読して頭を掻いた。 「日の民の項のところにはさま客はためっすがめっして唸った。 っていたんですか」 「忍ねえ : : : まさか : : : 」 「ええ。花押が光秀のものだということも、九分どおり証明できそ「あなたは小説家じゃないですか。素直にお読みになったらどうで うです。もちろん光秀の書体であることの確認作業も進行中です」す」 「とすると、光秀と山科言継との関連はどうなるんです。たしか私清田は笑顔で言う。「忍者の忍ですよ。ヒは当時の宮中では、い やしいという卑とも、あらずの非とも字をあてられていたようで の記憶では、あの筆まめな言継卿が明智光秀に言及しているのは、 - 」と 天正十年六月二日の日記の中で : : : 」 す。異の者という呼名もあったそうです」 「そうです。本能寺の変の記録です。光秀は親京都派の大物で、当「するとこれは忍者のしるし」 「しかも天皇のね」 然言継卿の日記にも数多く出て来るはずなのに、意外に記述が少い 「勅忍ですな」 のです。その理由の説明にはならないでしようが、ちょっと珍しい ものがあるのです」 「ええ。まさにおおせのとおり勅忍です。勅忍室下の時にその笏が 下賜されたのです」 清田はそう言って立ちあがり、部屋の隅の金庫の扉をあけた。 「これを見てください」 「正親町帝といえば : : : 」 清田は戻って来ると紫の袱紗包みをといて細長いしやもじのよう「それもまさしく山科言継が権大納言をつとめた時期」 3 一